沖縄県公文書館 復帰50周年企画展

軍用地政策の変遷

軍用地関係法規5

軍政本部特別布告第36号「土地所有権証明」

 沖縄群島住民に告げる。
沖縄に於ける土地所有権の申請は過去3ヶ年の間、1946年2月28日附軍政府指令第121号主題「土地所有権関係資料蒐集に関する件」に従い村或は字土地所有権委員に提出せられ、各村長は各村及び各字に五名から なる調停委員会を設置し該委員会は所有権請求の効力を認定するため紛争を聴取し沖縄民政府に対し、各村長から土地所有権の申告及紛争の聴取も充分に完了し、土地所有権の証拠となる証明書の発行を進める時期に達している旨報告された。故に余、琉球諸島軍政長官米国陸軍少将ゼイ・アール・シーツはここに土地所有権の認定及証明を促進援 助し、土地の使用及び所有権に関する一切の問題の解決に当り公正的処置を助長するため沖縄住民が当地 に於ける土地所有権の認定、証明及び登記の計画を進め完成するよう布告する。

第一条
1946年2月28日附軍政府指令第121号による土地所有権申請の提出は1950年6月30日以前に行うべきもの とし、此の日は村或は字土地所有権委員会に対する土地所有権申請の最終期日にする。其の後の所有権の主張は訴訟として当該管轄巡回裁判所に於いて訴求しなければならない。

第二条
1950年2月1日附軍政府指令第1号により設立された中央土地所有権認定委員会の委員は各村土地所有権 委員会に於ける土地所有権申請の蒐集、調査及び地図作成の正確性を確定するため其の帳簿を審査する。 村土地所有権委員会の仕事が基準要件にかなえば中央土地所有権認定委員会に土地所有権の未記入証明用 紙を村土地所有権委員会に交付し証明計画を遂行するよう指示する。

第三条
1.村土地所有権委員会は未記入証明用紙を受理した後、字土地所有権委員会の助力を以て、土地所有権 申請人の申請書原本に含まれる資料及び申請人が所有権を検証した前所有者の氏名及び取得の日附に 関する申請人の申述に基づいて、先ず争のないものから未記入証明用紙の空白部分に記入をする。当該財産の位置を記述する申請人の原図は相違点を指摘する註と共に証明書に転記する。その後署名を除いて完成された土地所有権証明書は一括保管し公示を以て30日間一般の縦覧に供される。其の間に異議ある者は同一の土地に対して権利を主張するための書面による申請通知を村字土地所有権委員会 に提出する機会を与えられる。各村委員会は予め其の通知を指定期間を公示する。
2.一定の土地に対し申請が2件以上もある場合は所有権証明書を発行しないで、村所有権委員会は申請 人に対し権利に関し争あること、関係申請人の氏名及び権利認定のためには当該巡回裁判所に訴訟を 提起する必要のある旨を通知する。所有権証明書の代りに此の通知の写を土地登記簿に綴込み。権利 確認の宣告によって最終的決定を見るまで留置き、有効な所有権証明書は其の時、裁判所の決定通り 真の所有者に交付される。

第四条
1.村土地所有権証明書を公示して縦覧に供した後、該証明書に異議又は争がない限り、村長はこれを承 認して署名捺印し、申請人たる土地所有者に交付しなければならない。
2.証明書原本により通知用謄本三通を作成し、その一通には表面に「土地登記所」と明記し他の一通には「税務署」更に他の一通には「中央土地事務所」と記入し、村長は各通を表示された関係庁に送付 する。

第五条
かくして署名された証明書は適法な土地所有権の証拠として認められる。但し、其後当該裁判所の正規裁 判手続によりそれに優先する所有権が認定される場合はこれに従わず、かかる場合は当該裁判所から確認 された其の所有権は村長の発行した争のある証明書に優越する。

第六条
1.承認された土地所有者に対し優先的所有権の主張をなし、彼の所有権の有効性を争おうとする者は 巡回裁判所に訴え提起しなければならない。そして土地の真の所有権は裁判所の正規の手続と宣告 によって決定される。
2.此の場合、手続中の裁判所の書記は土地登記所、税務署、中央土地事務所に訴訟が続行中である旨 の通知書を送付する。この通知書は総ての関係者に該土地所有権に関し訴訟が継続中であり、該所 有権は係争されている旨を通告するものである。
3.所有権に関する紛争を解決する裁判所の宣告は其の判決によって認定された土地の真正の所有者を 記録上表示しなければならない。
4.現在認められている土地所有権が裁判所の最後の宣告によって無効とされる場合には、土地登記簿 にその旨を記入し、所有権証明書には裁判所の宣告の権限文と日付を含む註と共に「無効」と記入 しなければならない。かくして土地所有権の有効なる証明書が土地登記所によって発行される。
5.手続費用算定の問題は裁判所の裁量に委ねられる。 第七条 土地所有者は新し土地所有権証明書を受領した後、それを土地登記所に於いて登記する義務を負う。

第八条 一定の土地に対する所有権の申告又は主張がない場合、又は土地所有権証明書の受領者がいない場合には、当該土地はその土地の所在地の村長が不在者のために管理する。

第九条
村長又はその任命する代理人はその管理する土地を次の手続によって管理する。 1.管理に属する土地についてはすべて地図を添付し30日以内に中央土地事務所に報告する。
2.土地は、その所有者のために最も利益になるように利用し、その収益は村長が受託者又は管理者として所有者のために保管する。
3.村長は土地の利用及び管理に関し受託者又は管理者としての機能を充分になす権限を有する。村長はその土地に対する所有者の利益を減少する行為を認可してはならない。
4.村長又はその任命する代理人は土地所有者に対して受託者としての責任を負い、収入を徴収し、税を支払い、土地の維持改良のために支出をすることができる。但し一定の土地に対する支払がその 土地から生ずる収入を超え、又は一定の土地から生ずる余剰収入を税の支出以外に他の土地のため に使用してはならない。収入の上がらぬ土地に対する税は積立てられた収入から成る受託者の予備 金から支払い、貸金の形にして其の土地に賦課する。その税としての貸金はその後所有者又はその 承継人によって支払われるまでその土地に対する留置権を構成する。
第十条
1.土地登記所は再開し、沖縄民政府行政法務部の組織内に於て通常の職務を遂行する。登記所に於て は土地所有権に関する記録を永続的公簿に記入し、所定の手続に従って所有権証明書を発行する。 登記簿は治安裁判所の建物内若くはその近くに存置する。
2.各土地登記所では新しい揃いの完全な土地登記簿を備え、現在の土地所有権計画により当該村長によって登記される土地所有権証明書はすべて当該登記所に於て登記される。爾後すべて土地の譲渡、 処分、負担又は担保の設定若しくは法律関係の変更のある場合は、それを生ずる書類の写しを行為 後30日以内に当該登記所に提出し、登記所は通知用謄本を税務署及び中央土地事務所に送付しなけ ればなならい。

第十一条
沖縄民政府管下に「中央土地事務所」を設け、該事務所は沖縄群島の土地に関する一切の資料を総括して編 集し且つ土地所有権を示す正確な地図を作成する該事務所は村土地所有権委員会の仕事を調整し且つ土地 登記所の遵守すべき統一された手続について進言を及す、該事務所は各村長によって管理される土地の利 用及運営並にこれから生ずる収入について勧告を及す。政府機関が土地を取得するにあたり発行する書類は中央土地事務所を経由するものとし、且つ該事務所はその取得を記録するものとする。

第十二条
1946年2月28日付軍政指令第121号により組織された村及各字の土地所有権委員会は1951年2月28日其の 任務を完了し機能を停止して解散する。土地所有者の土地所有権申請書原本は地図及その他の当該土地に 関する資料と共に適当に編綴して中央土地事務所に送致される。

第十三条 事情を承知し乍ら、又故意に不正の事実を主張して土地所有権証明書を取得したり、土地所有権証明書の発行 に関連して故意に虚偽の陳述又は申請を及す者は5万円以下の罰金又は2年以下の懲役に処せられる。   
 本官署名年月日     
  1950年4月14日
                                         琉球列島軍政府長官       
                                         米国陸軍少将          
                                            ジョセフ・アール・シーツ

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