軍用地関係法規15
琉球政府1959年立法第1号「土地借賃安定法」
(目的)
第一条
この立法は、土地の賃貸借に関し、適正な最高借賃を設定し、もって、当事者間の衡平を保持し、かつ、 経済の安定に資することを目的とする。 (委員会の設置)
第二条
土地の適正な年間最高借賃(以下「最高借賃」という。)を設定及び改定させるため、行政主席の所轄のもと に、土地借賃評価委員会(以下「委員会」という。)を設置する。
(委員会の組織)
第三条
委員会は、18名の委員をもって組織する。
(委員の任命)
第四条
委員は、賃貸人、賃借人及び学識経験者の中からおのおの同数を、立法院の同意を経て行政主席が任命する。
2 委員の任命は、最高借賃の改定の行われる年の2月に行わなければならない。
3 委員は、非常勤とする。
(欠格事由)
第五条 次の各号の1に該当する者は、委員となる資格を有しない。
一 禁治産者又は準禁治産者
二 禁こ以上の刑に処せられ、その執行を終るまで又は執行を受けることがなくなるまでの者 (委員の任期) 第六条 委員の任期は、第15条の規定による公示があった日に終了する。
(会長及び副会長)
第七条 委員会に、会長及び副会長各1名を置く。
2 会長及び副会長は、委員の中から委員が互選する。
3 会長は、委員会の会務を総理し、委員会を代表する。
4 会長が、その職務を行うことができないときは、副会長が会長の職務を行う。
(会議)
第八条
委員会の会議は、会長が招集する。
2 委員会は、委員の過半数が出席し、かつ、賃貸人及び賃借人の中から任命された委員が同数出席し なければ会議を開き議決をすることができない。ただし、会長において出席を催告しても、なお出 席しないときは、この限りではない。
3 委員会の議事は、出席者の過半数をもってこれを決し、可否同数のときは会長の決するところによる。
(庶務)
第九条
委員会の庶務は、法務局において処理する。
(最高借賃の決定)
第十条
最初に設置される委員会は1958年7月1日現在で、その後5年毎に設置される委員会は最高借賃改定の年 の七月一日現在で、各市町村別に土地台帳に登記された土地の各地目につき、等級毎に最高借賃を決定する。
第十一条
アメリカ合衆国に転貸するために琉球政府が賃借する土地の最高借賃の決定については、地目及び等級は、 アメリカ合衆国が使用を開始したときの地目及び等級によるものとする。ただし、法令の規定により、地目及び等級の変更が認められる場合は、この限りではない。
(最高借賃決定の基準)
第十二条
委員会は、次の各号の規定を基準として、最高借賃を決定するものとする。
一 田の最高借賃
田の三等地の最高借賃 各市町村の田の平均総収入に100分の38を乗じて得た額とする。総収入の算定については、規則で定める。
田の一等地の最高借賃
田の三等地の最高借賃に100分の120を乗じて得た額とする。
田の二等地の最高借賃
田の三等地の最高借賃に100分の108を乗じて得た額とする。
田の四当地の最高借賃
田の三等地の最高借賃に100分の72を乗じて得た額とする。
田の五等地の最高借賃
田の三等地の最高借賃に100分の60を乗じて得た額とする。
二 畑の最高借賃 別表第1の上欄に掲げる市町村の畑の最高借賃は、同一市町村に所在し、その畑の等級に対応する等級に属する田の最高借賃に、同表下欄に掲げる百分率を乗じて得た額とする。ただし、別表第1 に掲げてない市町村に所在する畑の最高借賃については、委員会の定める額とする。
三 塩田の最高借賃塩田の所在する市町村に所在する一等宅地の最高借賃と同額とする。 四 池沼の最高借賃池沼の所在する市町村に所在する二等の宅地の最高借賃と同額とする。 五 山林の最高借賃山林の所在する市町村に所在する五等の畑の最高借賃に百分の三十三・三を乗じて得た額を一等の山林の最高借賃とし、一等の山林の最高借賃に百分の七十を乗じて得た額を二等の山林の最高借賃とする。
六 原野の最高借賃 原野の所在する市町村に所在する五等の畑の最高借賃に百分の五十を乗じて得た額を一等の原野の最高借賃とし、一等の原野の最高借賃に百分の七十を乗じて得た額を二等の原野の最高借賃とする。
七 雑種地の最高借賃 雑種地の所在する市町村に所在する二等の宅地の最高借賃と同額とする。
八 公用地の最高借賃公用地の所在する市町村に所在する一等の宅地の最高借賃と同額とする。 九 拝所の最高借賃 拝所の所在する市町村に所在する一等の原野の最高借賃と同額とする。
十 墓地の最高借賃 墓地の所在する市町村に所在する一等の原野の最高借賃と同額とする。
十一 溜池の最高借賃 溜池の所在する市町村に所在する二等の宅地の最高借賃と同額とする。
十二 宅地の最高借賃 前各号の規定及びその他の諸種の事情を勘案して委員会が定める。 十三 その他の地目の最高借賃 前号に同じ。
第十三条
次の各号の上欄に掲げる土地については、委員会は、この立法に基く最初の最高借賃に限り、第十条の規 定にかかわらず、下欄の規定により、最高借賃を決定するものとする。
一 市町村非細分土地の登記(1955年布令第146号)に基いて登記された土地の最高借賃 二 別表第2に掲げる土地の最高借賃
三 那覇市の中、旧那覇市及び旧首里市に所在するアメリカ合衆国の使用にかかる土地の最高借賃。ただし、旧首里市の公用地、雑種地、溜池、池沼及び塩田の最高借賃を除く。
四 那覇市の中、旧真和志市及び旧小禄村に所在するアメリカ合衆国の使用にかかる土地の最高借賃。 ただし、公用地、雑種地、溜池及び塩田の最高借賃を除く。
五 別表第3に掲げる最高借賃 (最高借賃の認可) 第十四条 委員会は、第10条の規定に基き最高借賃を決定したときは、ただちに、行政主席に提出し、その認可を得るものとする。
2 前項の認可は、高等弁務官の承認を得るものとする。
(最高借賃の公示及び効力)
第十五条
委員会は、前条の認可を得たときは、遅滞なく、最高借賃を公報をもって公示するものとする。 当該土地の附近に最も多く存する地目の等級の土地の最高借賃と同額とする。
当該土地の所在する市町村に所在する二等の宅地の最高借賃に100分の50を乗じて得た額とする。 当該土地について1956年にアメリカ合衆国が評価した借賃に100分の150を乗じて得た額とする。
当該土地について1956年にアメリカ合衆国が評価した借賃に100分の180を乗じて得た額とする。ただし、 1956年にアメリカ合衆国が評価した借賃がその後に修正された土地については、その修正された借賃に100 分の180を乗じて得た額とする。 当該土地について1956年にアメリカ合衆国が評価した借賃と同額とする。
2 前項により公示された最高借賃は、5年毎の7月1日に改定されるまで効力を有する。
(最高借賃をこえる契約等の禁止)
第十六条
賃貸人は、前条の規定により公示された最高借賃をこえて借賃の額を契約し、又は受領することはできない。
2 賃貸人は、いかなる名義があっても賃借人から借地権利金又は借賃の3箇月分をこえる額の敷金を 受領することはできない。
(報告書の提出)
第十七条
賃貸人は、当該借地の所在、地番、地目、地積並びに等級及び賃借人の氏名、住所、年間借賃を記載した 報告書を行政主席に提出しなければならない。ただし、琉球政府を当事者とする賃貸借については、この限りではない。
2 前項の報告書は、賃貸借の締結の日から1箇月以内に、賃貸借がこの立法施行前に締結されている場合は、この立法公布の日から3箇月以内に、提出しなければならない。
(虚偽の記載の禁止)
第十八条 何人も、前条第1項の報告書に虚偽の事実を記載してはならない。
(改定の効力)
第十九条
賃借人が借賃の前払いをした場合において、前払借賃に対応する借地期間内に、最高借賃の改定がなされたときは、第16条第1項の規定にかかわらず、改定の効力は前払借賃に及ばないものとする。
(訴提起の禁止)
第二十条
第15条第1項の規定により公示された最高借賃については、その変更を求める訴を提起することはできない。
(罰則)
第二十一条
第16条の規定に違反した者は、1年以下の懲役若しくは300ドル以下の罰金又はその両刑に処する。ただ し、最高借賃の公示前において第16条第1項の規定に違反する行為については、この限りではない。
第二十二条
第18条の規定に違反した者は、6箇月以下の懲役若しくは150ドル以下の罰金又はその両刑に処する。
第二十三条
第17条の規定に違反した者は、10ドル以下の過料に処する。
(施行規則)
第二十四条
この立法の施行に関し必要な事項に、規則で定める。
附 則
1 この立法は、公布の日から施行し、1958年7月1日から適用する。
2 第四条第二項の規定にかかわらず、最初に設置される委員会の委員の任命は、この立法施行後でき る限り、速やかに行わなければならない。
3 沖縄群島割当土地に関する臨時処理条例の廃止に伴う措置に関する立法(1955年立法第16号)の一 部を次のように改定する。
第六条 削 除
(別表省略)