軍用地関係法規11
米国民政府布令第109号「土地収用令」
米国は、琉球列島の土地の使用及び占有に関し、ある程度の必要を有するので、且つ、この必要に応ずべ き琉球法規がないので、米国が琉球列島においてその責任を遂行するために必要な土地の権利の取得及び それに対する正当補償に関する手続を定めることは適切、且つ、必要であると思考されるので、次のとお り布令する。
第一条 暫定的に又は無期限に使用すべき土地の権利の取得に関しては、米国軍隊使用期間に代り、沖縄 工兵管区地区工兵隊が民政副長官の特定の認可を得て、その処理にあたる。
第二条 特定の土地、その他不動産の権利が取得されるべきこと及びその取得に関し、所有者との協議で 意見一致をみることができないことが確定したときは、民政副長官は米国の名において次のとおり処 理せしめる。
1 当該土地又は不動産の所有者に対し、収用の告知をなすものとし、これには当該財産の識別、取得さるべき権利及びそのための権限を明示する。告知には、なお、該財産の評定価格及び正当補償の認定金額並に所有者は告知の日から30日以内に米国の申し出を受諾するか又は拒否しなければなら ない旨を記載する。拒否する場合は、所有者は前記30日以内に文書をもって、その旨民政副長官に 訴願することができる。前記の訴願がなかったときは、当該権利は所定の額で米国に譲渡されたものとみなす。訴願に際しては、正当補償に関する争点のみを決定するものとし、且つ、この訴願により米国は収用宣告の権利を阻止されないものとする。
2 必要な土地の権利を協議により譲渡する場合は、当該土地又は不動産の管轄登記所に譲渡書類を提 出して登記しなければばらない。
3 必要な土地又は不動産の所有者がその権利を譲渡しないで、第二条第一項の告知後30日を経過した ときは、民政副長官は直ちに正式の収用宣告書を当該管轄登記所に提出して登記させ、且つ、該権 利に対する正当補償金として沖縄工兵管区の地区工兵隊によって決定された金額を琉球銀行に供託 させる。
4 収用告知及び第二条第一項の規定により訴願がなされるときは、民政副長官はこれを第三条の規定による琉球列島米国土地収用委員会に附議して審理決定させる。訴願中、土地所有者は、その権利 に対する供託金の75パーセントまで引出すことができる。
5 ライカム司令官において、米国が告知後権利を取得するまでの間に、土地又は不動産を使用し占有 する緊急の必要があると認める時は、民政副長官は該地区からの立退命令を発する。
第三条 ここに、琉球列島米国土地収用委員会を設置し、その委員は琉球列島民政副長官により任命する ものとする。委員の過半数をもって同委員会の定足数とする。委員会は、その議事及び処置の公的且つ恒久的な記録に必要な記録文書を保管し、業務の遂行にあたって適当な便宜を興えられるものとする。
第四条 委員会は、琉球列島民政副長官又は上級当局から附議されたすべての事件にかかわる財産の価格 及び正当補償を決定する権限を有し、なお、審理を行い、適当な証人及び証據を求め、且つ、帳簿及 び記録文書を提出させる権限を有し、その他土地又は不動産収用の目的に関し、準司法機関及び記録 裁判所としての権限を行う。
第五条 委員会が審理決定を行ったときは、文書により民政副長官に提出し、民政副長官は、その旨、関 係所有者及び沖縄工兵管区地区工兵隊に通知する。工兵隊は、琉球銀行への供託手続を行う。
第六条 第二条第一項の供託金には、収用土地内の農作物、墓、建造物乃至当該土地の他の改良に対する 損害賠償を含むものとする。
第七条 この布令は、1953年4月3日から施行する。
民政副長官の命により発布する。
民政官
米国陸軍准将
ゼイムス・エム・ルイス