農薬の安全性(1)農薬安全使用対策指導要領

資料:『雑書 1969年度』(R00100012B)

宮古地方庁経済課の「農業災害及び病害虫に関する書類」から、農薬の安全使用に関する文書を紹介します。

『雑書 1969年度』(R00100012B)のなかに、農林局農林部農産課が1968年8月に策定した「農薬安全使用対策指導要領」が綴られています。

 

この要領は、「農薬が農業生産の向上と安定に大きく寄与している反面、農薬の種類の複雑化と使用量の増大に伴い人畜、水産動植物農作物等に対する危被害が問題となつている」ことから、「農薬に関する正しい知識や適正な使用法、低毒性農薬の普及を推進し」、農薬使用の被害を未然に防止することを目的としたものです。

 

「急性中毒」や「慢性中毒」のおそれのある農薬を使用する際の対策や、農薬散布者の健康管理、水質汚染の防止、薬剤の残留毒性などについて、注意を呼びかけています。

農薬中毒の主な原因としては、素手で作業したり、散布途中で喫煙したり、散布後に十分手を洗わずに食事をしたりといった「散布者本人の不注意」によるものが多いほか、「不健康状態」での散布や、マスクなしでの散布といった服装の問題も指摘されています。

 

また、「服装を整え、その取扱いは慎重に行ない、不健康な人、著しく疲労している人などは散布作業に従事しない」、「朝夕の涼しい時期を選び2~3時間で交替する」、「作業後、酒を飲んだり夜ふかしをしない」、「農薬容器の入替えが原因で家庭必需品と間違えられ、誤食の事故発生となつているので容器の入替え保管は厳禁する」といった注意事項も列挙されています。

 

この当時、農薬が広く普及する一方で、農家においてはその適切な取扱いや安全性に対する認識が、まだ不十分であった様子がうかがえます。

 

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