ねずみ駆除大作戦1967 ~ 一斉駆除週間とイタチ

『病害虫防除 天敵導入野鼠』琉球政府農林局農産課(R00058681B)

農林局 特産課/農産課「農業災害及び病害虫に関する書類」から、1967年のねずみ駆除に関する文書を紹介します。

『病害虫防除 天敵導入野鼠』(R00058681B)には、ねずみ一斉駆除週間と、ねずみの天敵であるイタチの導入に関する文書が収められています。

 

ねずみ一斉駆除週間

下の文書は、農林局農林課が作成し、1967年7月18日付で農林局と厚生局で決裁された「ねずみ一斉駆除週間実施要領について」です。

従来のねずみ駆除は、農林局が「野鼠」、厚生局が「家鼠」とそれぞれで実施されていましたが、沖縄のねずみは「野鼠、家鼠とも同種であるので、その徹底を期すため別紙案により週間を定め、組織活動により駆除の推進をはかる」とし、各市町村長に対して実施要領が指示されています。

実施要領です。

「2.実施事項」には、各機関ごとの役割が記されています。

農林局と厚生局は、「緊密な連けいをとり、ねずみの総合的駆除の推進をはかり、農林局、厚生局、各系統機関をつうじて適切な指導を行う」こととし、具体的には、「新聞、ラヂオ、テレビ、その他の方法により広報宣伝」、「関係団体との連絡」、「効果の判定」などにあたります。

市町村は、「農林、衛生の主管課(係)並びに農協、パイン会社、製糖会社、倉庫会社等の地区組織の連けいを密にし一斉駆除の推進をはかる」とし、具体的には、「管内の実施計画および広報」、「死そ及び捕殺したねずみの適切な処理」、「駆除成績の報告」などを行います。

そして、農業改良普及所と保健所は、「協力し市町村の指導」にあたり、「映写会、座談会、講習会等の開催」などを行います。

実施時期は、1967年の9月と11月、翌68年の1月と3月の計4回、それぞれ1日から10日までとなっています。

 

ラジオ放送原稿

「実施要領」には「新聞、ラヂオ、テレビ、その他の方法により広報宣伝」とありましたが、1967年9月の一斉駆除週間用に準備された、ラジオ放送の原稿が残されています。

 ここでは、ねずみが農産物などにもたらす被害の大きさと、「全琉一斉に駆除実施週間を設定しネズミ駆除の徹底を期す」ことを述べたうえで、ねずみを効果的に駆除するために、その種類と特徴が解説されています。

それによると、ねずみは世界で250種、日本では、本土で60種、沖縄で8種が知られており、沖縄では、クマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミの3種類が農作物に被害を与えているとのことです。クマネズミとドブネズミの特徴をまとめると以下のようになります。

クマネズミ ドブネズミより小さく耳が大きい。尾は頭胴長よりも長い。 一般に天井裏、物置など乾燥したところをよく好む。物をよじのぼる性質が強い。さとうきびの被害はほとんどがクマネズミによる。
ドブネズミ 体が比較的大きいが耳がやや小さく、尾は頭胴長より短い。 家内で最も普通に見られるが、天井裏や戸棚に入ることはまれで、台所の流しの下、下水道、ごみ捨場などじめじめしたところを中心に活動する。
「ねずみ駆除の方法」としては、ねずみが「どのようなものを好んで食べるか」を知ることが「極めて重要」とあります。

「ネズミは、生息する地域によって餌に対する好みも異にするので、魚屋のネズミは魚を好み、米屋のネズミは米を好むといった具合に」、地域や環境に密接な関連があるため、「毒餌」作りには「地域のネズミの好むものにあったものを作ること」が「最も必要」だとされています。

 

ねずみの天敵イタチの導入

ねずみ一斉駆除週間では、ねずみの特性、とりわけ餌の好みを知ることが重視されていましたが、この頃、ねずみ駆除の有効な方策として期待されたのが、ねずみの天敵であるイタチの導入です。

イタチは沖縄の外から「輸入」する必要があったため、イタチの導入には、本土関係機関との折衝がともないました。1967年9月13日付の農林局の文書では、「沖縄における野鼠駆除の抜本的対策」として1965年からイタチを導入し、「効果をあげている」と記されています。そのうえで、1968年度は3,500匹のイタチを導入する計画であるとして、関係各機関に協力を依頼しています。

イタチは鹿児島で捕獲したようで、鹿児島県林務部長には捕獲許可について、日本政府の林野庁長官には、鹿児島県からの捕獲許可の申請に対して、それぞれ「御高配」を賜りたいとしています。

 

また、農林省門司輸出品検査所の鹿児島支庁長に対しては「輸出品手続」について、農林省動物検疫所の鹿児島出張所長に対しては「輸出検疫」について「特別な便宜」をお願いしているほか、琉球政府東京事務所長に対しても「促進方取り計られたい」としています。

捕獲したイタチを沖縄まで輸送することも、簡単ではなかったようです。下の文書は、1967年10月20日付で農林局が税関長に宛てた「イタチの早期通関依頼について」です。

「野生の動物であるため輸送中のへい死が高く、鹿児島県から現地(石垣、宮古、久米島、伊平屋)までの輸送を迅速にする必要がある」として、「通関に対しては特別のお取り計らいにより早急にしていただきたい」とあります。

 

1968年度のイタチの導入実績をまとめた下の文書によると、1967年10月30日から1968年1月20日までのイタチの「船積頭数」は「2,774頭」(雌315、雄2,459)となっています。

鹿児島~那覇間の輸送中に206匹、さらに「現地放飼」までに75匹が「斃死」し、斃死率は9.6%にのぼったことが記されています。

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