戦後初期会議録

組織名
八重山議会
開催日
1949年10月04日 
(昭和24年)
会議名
1949年10月4日臨時八重山議会
議事録
一九四九年十月四日臨時八重山議会会議録

   臨時八重山議会会議録
一 招集日時 一九四九年十月四日午前十時
二 招集場所 八重山民政府会議室
三 提出諮問案
 諮問案第十四号 市町村制施行令制定の件
 諮問案第十五号 地方自治委員指名の件
四 出席議員
  大濱 孫彦  柴田 米三
  大田 守松  崎山 英保
  喜舎場永珣  金城 正康
  大濱 賢仁  新城 永吉
  仲本 信幸  山城 興常
  山里 長敬
五 欠席議員
  玉代勢太郎  與那國 修
  成底眞加良  大濱 用立
  池間 榮三  阿良 正二
  幾乃  伸
六 出席参与
  各市町長 各部長 会計課長

◎知事 御挨拶申上げます。議員各位には御多忙中にもかかわらず多数お出下さいまして、誠に有難うございます。本日は新市町村制によるところの市町村制施行令制定の件、地方自治委員指名の件の二件について諮問致し度いと思いまして招集したわけであります。出席議員十名であられますから早速開会致します。
  (総務課長出席議員十名 欠席議員八名 欠席議員の氏名朗読)
◎議長 開会致します。(午前十時四十分)
 本会議録署名者を誰に致しますか。
○十七番議員 議長に一任致します。
◎議長 それでは署名者を大田議員、喜舎場議員に致します。速記者を竹田事務官、池宮城統計官にしてあります。
  (総務課長諮問案第十四号朗読)
◎十七番議員 動議があります。折角議員が集っておられますから、此の際に先般議会で決議した事業部移管の問題を当局におはからいし、話合をすすめていき度いと思います。議員各位はどうですか。
○議員一同 賛成
◎議長 ではそう致し度いと思います。しかし此の問題は後に廻して最初に本日提出した諮問案から進めていってはどうですか。
○議員一同 そうしたらよいでせう。
  (総務課長市町村制施行令朗読)
◎議長 最初に、全部朗読致しますか。それとも逐次やっていく様にするか、如何ですか。
◎五番議員 逐次審議した方が良いでせう。
◎十七番議員 少しお聞きしますが、昨年公布になった新市町村制は、日本のものをやきなおした様にあるが、それと同じでありますか。
○議長 だいたい同じであります。ただ内容に巡回裁判所とあるを治安裁判所になし、告知及びと云ふ文句を入れただけであります。
○総務課長 南部琉球軍政府に意見を提出して出来上がったものであります。
◎十七番議員 宮古で市町村長会議があって、その会議で加除訂正したものであるのか。
○石垣市長 そうであります。
◎五番議員 新市町村制が施行されたので、それによる施行令を定めようと云ふのであるのか。
○議長 そうであります。(一九四八年七月二十一日付、沖縄軍政府の指令を朗読)今日皆さんに審議してもらふ施行令は南部琉球も北部琉球も同じであります。ただ研究してもらい度いと云ふ理由で提出しましたものであり、施行令中第十四条、十五、十六、十七条の数字が違ふのみであります。(訂正した点を指摘する。)
◎五番議員 第一条からやって下さい。
  (総務課長第一条朗読)
◎十八番議員 その協議により定めた者が、とあります。それはどう云ふ事でありますか。
  (議長説明をなす。)
◎五番議員 二つ以上の場合は一人で行ふのか。
○議長 第三項に書いてあります。(第3項朗読)
  (総務課長第二条朗読)
○五番議員 よろしいでせう。次をやって下さい。
  (総務課長第三条朗読、第四条朗読)
◎十七番議員 選挙管理委員の事ですね。
○総務課長 そうであります。
○十七番議員 進行してください。
  (総務課長第五、六条朗読)
○議長 質問ありませんか。
○五番議員 進行して下さい。後で質問致しませう。
  (総務課長第七、八、九、十、十一、十二、十三、十四、十五条朗読)
○星町長 第十五条は原文が正しいのではないかと思います。
  (議長第十四条、第十五条の訂正箇所を指摘)
○星町長 第十五条は、第九条、第十二条及び第十四条に訂正した方が至当であると思ふがどうですか。
○議長 第十五条の第二項を星町長の通り訂正致します。
○五番議員 第十七条中、第九条、第十条、第十五条、第十六条の規定に訂正したらどうですか。
◎議長 休憩いたしまして其訂正箇所を検討してみたいと思います。
◎議長 開会致します。第十七条中、第九条、第十条、第十五条、第十六条に訂正致します。
○五番議員 訂正した条文をもう一度読んで下さい。
  (総務課長第十五条、第十七条を朗読)
○五番議員 第三章に入って下さい。
  (総務課長第十八、十九、二十、二十一条朗読)
◎五番議員 第二十一条の一項の納期の一定した収入を説明して下さい。
  (総務課長説明をなす。)
◎議長 第二十条は異議ありませんか。
◎十七番議員 これはそうなると過年度収入を認めないか、それとも次年度繰越金を認めないかでありますね。
○星町長 そうではありません。
○五番議員 認めないと云ふ意に解せられるがどうか。
○議長 それはまだはっきり致しませんので、休憩して研究してみたいと思います。
◎議長 開会致します。
 第二十条の各年度において決定した歳入を以て、他の年度の歳出に訂正致します。市町長、参与の方々はどうですか。
○市町長 よろしいでせう。
  (総務課長第二十二条、二十三、二十四、二十五、二十六、二十七、二十八、二十九、三十、三十一条朗読。三十二、三十三、三十四、三十五、三十六、三十七条朗読)
◎十番議員 八重山民政府は予算の形式を款、項、目に区分していなかったがどうか。
○議長 民政府に於ては軍政府の認可を経なければいけないのでありますからそうしてあり、又民政府の予算の形式は軍政府から示されて来ていましたのでそうしてあります。それで市町は款項目に分けてやらなければいけないと思います。
 第三節に進行して良いですか。
  (総務課長第三十八条、三十九、四十、四十一、四十二条朗読)
◎五番議員 第四十二条の規則は誰がつくるか。
○議長 八重山民政府でつくります。
◎五番議員 施行規則は議案に出さないで引込めたが、どうしたんですか。
○議長 施行規則は事務上の事で、市町と共に、計らって研究した結果知事で決めてよいから出しませんでした。
◎五番議員 条文はこれで終りか。
○議長 日本の地方自治法には第五章として請求権があるが尚研究の余地があると思います。沖縄には此れをやっていないので研究してみたいと思います。
◎七番議員 第九条に市町村長の職務を代理すべき吏員とあるがその吏員はどう云ふ様に決められますか。
  (星町長説明をなす。)
○議長 休憩致します。
○議長 開会致します。
◎五番議員 全議員、異議がありませんから修正した点を認めて決定してもらい度い。
  (総務課長修正した条文を朗読)
◎議長 全議員御異議があられませんからこれを以て決定致します。
  (総務課長諮問案第十五号朗読。自治委員会関係条文を朗読する。)
◎議長 議会で一人決めて下さい。
◎十四番議員 議会の選出した人と、知事の指名した人と同一人である場合があるがどうしますか。
○議長 そう云ふ事がない様にとの事で知事の指名する人は議会の選出された後に決定したいと思います。
◎議長 中々意見も纏まらないと思いますので幸い昼食の時間ですから其間にお決めになられたら良いでせう。休憩致します。昼食に致します。
○議長 開会致します。
◎五番議員 議会の意向が将来の八重山自治完成に向って有為な人物を選んだのであります。満場一致を以て新進気鋭の若者宮城信勇氏を推薦致しました。
○十七番議員 予め電話をして本人の承諾を得てあります。
◎議長 議会指名の地方自治委員は決まりましたから、十七番議員の事業部移管の事について何か御質問がございましたら云ふて下さい。
◎十七番議員 私は事業部民移管の事について、新聞紙上や参事会、議会のあるごとに其件についていつも意見を述べている事はみんなが御承知の事と思います。希望として申上げ度い事は、鉄工部は元旧日本軍の使用していたと云ふ事で軍政府の管理財産になっているが、此の財産は八重山民政府が直接日本軍から譲り受けたものではない。日本軍から譲り受けたのは八重山造船株式会社で、八重山民政府は造船株式会社から一〇〇、〇〇〇円で買ったものである。それ故に一〇〇、〇〇〇円と云ふ金を出したからには明らかに八重山民政府の財産であると私は思ふ。
 私は、八重山民政府がもう少し積極的に出て此の財産に関しヘイズ大佐に申上げて、其れを民政府の財産である事を認めて貰ふ様努力すべきだ。このままにしておけば講和会議の後そのままになる恐れがあるから知事さんの意向を伺い度い。
○議長 休憩致します。
○議長 開会致します。
○総務課長 前臨時議会を招集してから本臨時議会を招集するまでの間に参事会を招集する事二回にして其議決要領は次の通りであります。(議決要領報告をなす。)
  (竹田事務官参事会に於ける議決事項、印刷課、造船部の移管について議事録を朗読)
◎五番議員 沖縄連絡所はその後どうなっていますか。
○議長 市町の分担金は石垣市のみが市議会の承認を得ています。農業団体が二五、〇〇〇円、水産業会が二五、〇〇〇円、商工団体が一〇、〇〇〇円でこれだけは出して貰ふ事になっています。敷地は元一高女の跡で四五坪貰える様になっています。
◎十番議員 水産会は別にやる様になっているがどうですか。
○議長 水産会は別にやる様でありますが、寄付金は出して貰ふ様になっています。
◎五番議員 四五坪は決定致しましたか。
○議長 花城武男氏より官房長宛の書簡にもありましたが又新聞紙上にもあり最近沖縄から帰った企業免許所長の話によりはっきりしています。
◎五番議員 真和志村より借りる様になっているのか。
○議長 そうです。
◎十七番議員 民政府当局では水路問題について産業部で積極的に踏査しておられる事に対し感謝していますが、結局は開拓庁と軍政府にお願いしなければいけないのではないかと思います。当局は此れに関し、調査を完了した上、設計図を出して陳情されるだけでありますが、大島では色々の問題に関し率先してわざわざ沖縄まで出かけている様でありますが、吾々八重山は色々の問題に関し、おくれがちでありますが此れに対する当局の意向を伺い度い。
○議長 十七番議員の事業部民移管の問題はこれでうち切りか、若しありましたら此の問題から片づけたいと思います。
◎十七番議員 否、そうではありません。まだあります。事業部の民移管問題は参事会にかけたのみであるが、それは当局ではその後をどうするのか。
○議長 運輸課は委員会の答申書の通り現在の儘になります。電気課は当分保留しなければいけません。又移管にならない、其他のものはやはり従来通り民政府が運営していかなければなりません。それは貸付したら其貸付料は全部軍政府へ納金しなければいけない様になっています。納金する事は事業部民移管の趣旨である健全財政の確立へ反するからであります。
◎十七番議員 鍛冶班は譲り残されている様にありますがそれはどうされますか。
○議長 事業部長の方で説明して下さい。
○事業部長 鍛冶班は一部鉄工部のものでこれも簡単には出来そうにありません。
◎五番議員 早く片付けた方が良くはないかと思ふ。鉄工部にあるものはそれを借りた人が、鉄工部より借りたら良いでせう。
◎十七番議員 造船部も早く移したら良いでせう。
○議長 早急にやります。
◎十四番議員 参事会で決めてもらった移管についてもう一度具体的に説明して呉れ。
○議長 それでは休憩して説明致す事にします。休憩致します。
○議長 開会致します。
○総務課長 桃原用好氏、桃原用喜氏、宮良両氏の陳情書が来ていますから朗読致します。(朗読をなす。)
◎七番議員 全部で六〇、〇〇〇円で建物のあるのと、ないのとが違ふのはやっぱり場所によるのでせうね。
○事業部長 そうであります。
◎五番議員 委員会並に政府の誠意を知らないで駄々をこねる様であったら、入札にした方が良くはないかと思ふが、事業部長どう考へるか。
○事業部長 権利金を出す人を尊重して、その人々の為にもう一度研究してみたいと思うのであります。
○議長 (去る三月の議事録を朗読)一応陳情書が来ているので読まねばならないと思って朗読した。
◎十七番議員 参事会の提案は当局の提案を妥当だとして決定した。陳情書は読んだだけで公開しただけで済ますか。それとも取り上げるのか。
○議長 それで此の問題をどうするか全議員にお聴きしてやる積りであります。
◎五番議員 決めたんだからその積りで受ける様にしてゆき度い。陳情は意味をなさないと思ふ。
◎二番議員、十四番議員 参事会に委任したから、参事会で決定した事に賛成する。
◎議長 陳情書は公開したのみに止めます。
◎十一番議員 鳩間の灯台運営費に就て申上げてみたいと思います。船舶の運行には灯台が必要である事は私が申上げるまでもありませんが、予算には一五、〇〇〇円計上されているがこれでは使命ははたされないと思います。逓信部長さんは五〇、〇〇〇円あれば十分だと言ふておられます。それで後三〇、〇〇〇円位追加して貰えば結構に出来るんではないかと思います。予算にしばられて出来ないならば、水産奨励金より割いてもらい、それが出来なければ郡の水産、海運関係者から資金を出してもらって、運営に十分を期してもらいたいと思います。それに対する当局の御答弁をお願い致します。
○議長 予算の追加更正は不可能であります。水産奨励金は産業部に関係がありますから、産業部長から御話下さい。
○産業部長 ごもっともな事だと思います。業会(界カ)の人々とも話合った上皆の人々が賛成であれば奨励費からでも出してやり度いと思います。
◎十一番議員 これは国際的なものでありますから是非やって欲しいと思います。若しこれが出来ない様でしたら一般業者にでもお願いし度いと思います。
○知事 この問題に就ては水産奨励費でなんとか出来るんではないかと思いますが、それが若し出来ない場合は、ここではどうすると云ふ事ははっきり申上げられません。
◎十七番議員 灌漑対策に就石垣島を初め郡下に用水路の設計をしておられる様でありますが、一日も早く実現されん事を住民は希望しています。当局の計画と抱負、今迄の経過をお聴きし度い。
 尚此れの実施に当っては開拓庁と軍政府にお願いしなければいけないのでありまして、ただ設計図を送るだけの事でなく、沖縄本島まで行って必ず其実現に努力して貰い度いと思います。
○産業部長 灌漑設備の問題に対しましては先の議会にも申上げました様に是非此の年度内に実現してみたいと思いまして設計図を開拓庁に送ってあります。産業部は毎日その実現を期すべく重点的に調査を進めています。現在其応急対策として平田原の灌漑に手をつけました。これまで悩んで来た平田原のことで排水路を崩して用水路と一面になし貯水池としたのであります。それは平田原の組合員とブルドーザーによりなされたのであり、後一日位ブルドーザーが動いたら出来上がったのでありますが故障のためそのままになっています。故障のなおり次第すぐ手をつける考へであります。
 野路水はダムに故障があるのでセメントが一三袋もあれば出来るのですぐセメントをやり現在手をつけつつあります。
 古見には三十人の竹富の人々が移住しています。其れ等の人々からも灌漑排水のため是非ブルドーザーを貸して下さる様にとの事でありますがそれも現在故障で出来ません。
 白水の水をせきとめて、パイプで長間地帯に持って来る設計測量をしたのでありますが、川良山の中央でそれがとうてい前に引く事が出来ず、西廻りすると、今度は野路水の坂で止まりますので東廻りにして、バラビ道の水と一緒にしてやろうと云ふ測量の結果になりました。
 バラビ道のダムも可能の様ではあるが果して成功するか否か疑問であります。それは石垣市に執行方をお願いしてあります。
 大濱は前里山に戦前計画したのがあるので明後日から出かけ測量踏査をなす計画であります。
 与那国は「ホアン」の用水を計画しています。その他にもう一つ準備しています。
 以上申上げましたがそれ等は吾々の力により出来るものもあり、開拓庁の力によらなければ出来ないものもあるので、文書のみでなくして沖縄出張の人々にも頼み又自分の沖縄出張の機会がありましたら是非お願いする積りであります。
 幸いにして前民政府の土木課長小波津氏が今回開拓庁に就職され、家財整理の為八重山に来ておられますので、その人にもうんとたのんであります。又小波津氏のお話によれば開拓庁でも八重山の問題を取り上げている様で近く実現する可能性はあるんではないかと思われます。
 それ等もすべては郡民各位の熱意と協力によらねばその実現は出来ないのでありまして官民一致団結して開拓庁、軍政府に当らねばならないと思います。又一方強力なる委員会を組織してその促進運動に努め度いと思います。
○十七番議員 同感であります。
○議長 時間もだいたいすぎています別にございませんか。
◎十七番議員 事業部鉄工班及造船部鍛冶班は移管する様にするのが急務ではないかと思います。何んべんもくりかえし申上げる様でありますが、以上申上げ度いと思います。
○議長 外に何もございませんか。
○議員一同 ありません。
◎議長 それでは閉会致します。
◎知事 本日は長時間に亙り、慎重に討議して頂きまして有難うございます。皆さんのご期待に副ふ様努力致します。
  閉会(午後三時二十分)

 上記の通り相違ありません。
  一九四九年十月二十五日
  八重山議会議員
        喜舎場永珣(印)
        大田 守松(印)
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