戦後初期会議録

組織名
沖縄群島議会
開催日
1951年01月11日 
(昭和26年)
会議名
第3回沖縄群島議会(臨時会) 1951年1月11日
議事録
第三回沖縄群島議会(臨時会)会議録

一九五一年一月十一日(木曜日)
午前十時
◎知事(平良辰雄君) 議会の招集についての御挨拶を簡単に申上げます。
  今回は追加更正予算とその他条例が五件になっています。群島政府が発足当初でありますのでいろいろな条例が、相当これからやらなければいかんのがたくさんあるのでありますけれども、それを一ぺんに出すという訳に参りませんし、また来月も議会がありますので順を追うてやりたいと考えて、これだけを出しておるのであります。中に事務局設置条例についてでありまするが、これはちょっと誤解のないようにお話申上げておきたいと思いますのは、実はこれは群島組織法によっての解釈が、われわれの解釈と軍の解釈とが喰い違っているようになっております。部局を設置する場合には軍政府の承認を受けるという項目がありますが、次の項目には部を設置する場合には条例でなければいかんという風に書いてありますのでわれわれは「局」いわゆる「オフィス」というものは承認を受ければいいというので出したのであります。軍政府でもそれでよかろうという考えのように承っていましたけれども、また研究の結果それは条例にした方がいいということでありますので、われわれとしては矢張り議会の権威を尊重する意味におきまして、それはその方がよかろうと、こう考えまして、これは民政府発足当時からもう既に実施されているような形になっていますので予算関係から、軍への報告もそのままになっている訳でありますが、形式が備わらんというので軍から注意があったので提案した訳であります。その点悪しからず御了承を願っておきたいと思っています。どうぞ慎重審議適当に御裁決していただきたいと思っております。
  以上をもちまして招集の挨拶に代えます。

◎議長(知花高直君) 開会いたします。出席議員十八名、欠席議員二名であります。諸般の報告をいたします。
  前の議会中にロスゲブ大佐からわれわれ議員に対する御訓示があったのであります。よって議会から感謝状を送付いたしておきました。それから校舎建築促進陳情書も進達いたしておきました。
  知事から議長宛の公文がありましたので書記長をして朗読いたさせます。
  (書記長「新垣良正君」沖総第三六号朗読)

沖総第三六号
 一九五一年一月十一日
   沖縄群島知事 平良 辰雄
沖縄群島議会議長 知花高直殿
  第三回沖縄群島議会提出議案について
 第三回沖縄群島議会(臨時会)に於て議会の議決を得たく別紙の通り議案を送付致します。
  (別紙省略)

○議長(知花高直君) 書記をして議案を配付致させます。
  (書記議案配付)

◎議長(知花高直君) 本日の議事日程を報告致します。
  議事日程 第一号
 第一 今期議会の会期を定める件
 第二 今期議会の会議録署名人の選挙
 第三 円予算及びドル資金の件につき陳情書を提出することについて
  (経済委員長提出議案第一号)
 第四 法務警察委員会所管事項につき陳情書を提出することについて
  (法務警察委員長提出議案第二号)
 第五 沖縄群島政府公布式について
  (知事提出議案第一号)
 第六 沖縄群島政府公文公布方法について
  (知事提出議案第二号)
 第七 沖縄群島知事室事務局並に弘報室設置条例について
  (知事提出議案第三号)
 第八 沖縄群島電気委員会設置条例について
  (知事提出議案第四号)
 第九 自動車登録、検査及び運転免許試験等手数料徴収条例について
  (知事提出議案第五号)
 第十 一九五一年度沖縄群島政府歳入歳出追加更正予算について
  (知事提出議案第六号)

○本日の会議に付した事件
 日程第一 今期議会の会期を定める件
 日程第二 今期議会の会議録署名人の選挙
 日程第三 円予算及びドル資金の件につき陳情書を提出することについて
     (経済委員長提出議案第一号)
 日程第四 法務警察委員会所管事項につき陳情書を提出することについて
     (法務警察委員長提出議案第二号)
 日程第五 沖縄群島政府公布式について
     (知事提出議案第一号)
 日程第六 沖縄群島政府公文公布方法について
     (知事提出議案第二号)
 日程第七 沖縄群島知事室事務局並に弘報室設置条例について
     (知事提出議案第三号)
 日程第八 沖縄群島電気委員会設置条例について
     (知事提出議案第四号)
 日程第九 自動車登録、検査及び運転免許試験等手数料徴収条例について
     (知事提出議案第五号)
 日程第十 一九五一年度沖縄群島政府歳入歳出追加更正予算について
     (知事提出議案第六号)
 日程追加 復興費増額に関する件につき陳情書を提出することについて
     (五番議員石原昌淳君発議 議案第三号)

◎議長(知花高直君) これから本日の会議を開きます。日程第一の今期議会の会期を定める件でありますが、如何致しますか、お諮り致します。
◎平良幸市君 今期議会に提出になりました議案は議会提出のものと政府提出のものがありますが、議会提出のものは各常任委員会で審議されたものでありますし、政府提出のものは簡単な条例案と追加更正予算、この予算も軍の予算が民の予算に繰入れられた簡単なもののようでありますので、今日一日に決定したいと思います。
◎仲里誠吉君 当局から提案した議案はなるほど簡単であり今日一日で充分に片づくと思うのですが、それ以外に各議員からの質問事項或は要望事項もかなりあると思われる。若し質問事項が少ないということであればそれは議員の不勉強であって、質問事項、要望事項が相当あると思う。また一九五二年度予算に関する分にしても次の臨時議会を待って、その席上で質問すれば出来ると思いますが、それ迄に当局に確めたいことも二、三出て来ると思います。それで一応会期を二日にして、今日は当局の提案のみを大体審議して明日は質問事項或は要望事項を申述べることにしてもらいたいと思います。時間一杯迄に、午后四時迄にすめば会期を繰上げて散会していいんぢゃないかと思います。そういう意味で二日を希望します。
○議長(知花高直君) ただいま会期一日と二日の動議がありまするが、会期一日という動議に御異議ありませんか。
  (「異議なし」「異議あり会期二日」と呼ぶ者あり)
○仲里誠吉君 もし今日一日でやらなければならないというのであれば時間を延長していただきたいと思います。
◎宮城久栄君 会期一日説と二日説がありますが、われわれが重責を果すためには、余り会期に束縛されぬ方がいいと思う。仕事を進めて見て、それでいかなければ更に日数を延ばす、という風にして予め枠にはめて仕事をするということは、大体は必要かも知れないが議事の進行によって日程にもう少しゆとりのある会議を開いて貰いたいことを希望します。
◎議長(知花高直君) それでは会期は今日一日に定めまして、その状況を見て時間を延長することに致したいと思いますが、御異議ありませんですか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議なしと認めます。よって左様に決しました。議事録署名人の選挙を如何に致しますか。
○宮城久栄君 これは形式ですか、いつも議長に指名して貰ったらどうかと思っております。
  (「賛成」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) それでは賛成のようでありますから議長から指名いたします。十一番議員(具志頭得助君)、八番議員(平良幸市君)、御両名にお願い致すことに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議なしと認めます。よって御両名にお願い致します。

◎議長(知花高直君) 経済委員長提出の議案第一号を議題と致します。書記長をして朗読いたさせます。
  (書記長「新垣良正君」議案第一号朗読)

議案第一号
  円予算及びドル資金の件につき陳情書を提出することについて
円予算及びドル資金の件について別紙の通り陳情書を提出致したく議会の議決を得たいので提案する。
 一九五一年一月十一日提出
  経済委員会
     委員長 仲里 誠吉
宛 ・ 琉球民政本部副長官
経由・ 沖縄民政官
発 ・ 沖縄群島議会議長
題 ・ 円予算及びドル資金について
一 自立経済計画は大別して物資の需給計画と資金の需給計画との二つより成る。沖縄の自立経済を確立するに必要な物資を調達するに要する資金の給源としては、
 1 民間に蓄積された資本
 2 租税収入による財政資金
 3 ドル資金(エロア、ガリオア、商業資金)及びそれより生ずる円予算
 4 外国資本
の四つである。
 1 は琉球銀行の調査によれば一億八千万円であるが戦災復興の今猶不十充(ママ)な沖縄に於ては、短期の商業金融さえ窮屈な有様であり、既に琉球銀行以外の個人金融業者の金利は二週間一割を唱えて如実に金融逼迫を反映して居りその面よりの自立経済に必要な長期産業資金面への融通は望むことは出来ない。たとえ又融通し得ると仮定してもその全額は絶対的にも相対的にも過少である。
 2 は現在でさえ行政費用を賄うのに精一杯で到底産業面に投資する余裕はない。
 4 は原則として望ましくなく仮に必要であるとしても最小限度に止めたい。
  従って沖縄の自立経済計画が依存し得る資金の主要給源は結局、
 3 のドル資金及びそれより生ずる円予算のみである。ところで物資の需給計画は結局利用し得る資金の大きさによって限定されるものである。故に合理的な自立経済計画を樹てる為には同時に資金の需給計画が樹たなければならない。
二 沖縄円の対ドル為替レートは、一=五〇より一=一二〇に切下げられた為その購買力は1/25に低下している。その上必要物資の殆ど全部が日本を主とする外国より輸入しなければならない。ところが世界市場は列国の軍備拡充による物資買付競争の為め買手市場より再び売手市場へ逆転して主要物資は日を追うて騰貴しておりそれらの物資を原料とする諸製品及び関連物資も当然騰貴を続けておる。従って沖縄円の購買力は実質的には益々低下して行く現状である。従って又自立経済計画に必要な物資の購入に当っては資本の効率を最大限度に発揮する様に細密な計画が樹てられなければならない。
三 前述の一及び二の要求に応える為には、沖縄が活用し得る資金の内容とそれについての民政府の運用方針が民間側にも知られ得ることが望ましいし、又事実その事は民間側における大きな希望となって居る。沖縄群島議会は沖縄自立経済計画を情勢の許す限り完全なものたらしめ、又実行可能ならしめる責任を有して居り、この意味において私は沖縄群島議会を代表して左の諸事項につき貴官の御教示をお願する次第である。
     記
 1(イ) 一九五一年及び一九五二年度における琉球向けエロア資金及びガリオア資金の総額
  (ロ) 琉球の復興に充当される残額(運送費、エロア、ガリオア事業に関係する民政府側職員の給料を差引いたもの)
  (ハ) その運用方針及び最近日迄の運用実績
 2(イ) 商業資金開設以来の一九五〇年迄各年度における総額及び内訳
  (ロ) 一九五一年度の商業資金の予算と最近日迄の実績
 3(イ) 一九五一年度の琉球円予算の総額及び各群島への割当額及びその内訳
  (ロ) 最近日迄の実績
  (ハ) 最近日迄の回収高
右一九五一年一月十一日沖縄群島議会の決議に依り陳情致します。
  沖縄群島議会議長
         知花 高直
◎仲里誠吉君 この提案について極く簡単に補足しまして御説明申上げたいと思います。
  提案理由は、去った議会で休会を利用しまして、御説明申上げた通りでありますが、一応その後お手許に差上げたような原稿を作って参った訳でありますが、その中で、もちろん既に御承知のことと思うが念のために極く簡単に説明を補足いたします。それは二枚目の記のところですが、記の3の(イ)「一九五一年度の琉球円予算の総額及び各群島への割当額及びその内訳」というのがありますが、それを極く簡単に御説明申上げますと、円予算は御承知の通りドル資金で沖縄に入れた輸入物資の売上代金が、日本でいうと見返り資金となる訳でありますが、これを例えば、この間もお話申上げましたように一九五〇年度の円予算の総額は十二億円でありまして、それを沖縄群島、北部琉球、南部琉球、この三つに分けるのであるから更に総額のうちこれをいろいろと仕分けをしております。明細を作っております。いま資料は手許に持っておりませんけれども、例えば琉球工業試験場、琉球火災保険、琉球生命保険、琉球弘報、水産試験場、貿易庁、開拓庁、財産管理局、農林省食糧局、成人教育課、文教学校、外語学校(留学生の分も含む)、琉球放送局、その他結核療養所、精神病院、そういったところへ割当ててあるのであります。
  それから収入予定として農業資材面からいくら、水産資材面からいくら、船舶からいくら、機械からいくら、油脂からいくらという風に矢張り予算をたてている訳でありましてそういった内訳をなるべく詳しく知りたいというのが狙いである。
  御承知のことと思いますが、それだけ補足して御説明申上げておきます。
◎議長(知花高直君) 経済委員長提出の議案第一号、質疑討論を省略いたしまして確定いたしたいのですが、如何ですか。
  (「賛成」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) それでは御異議ないと認めまして、議案第一号を原案の通り陳情致すことに可決いたします。

◎議長(知花高直君) 法務警察委員長提出の議案第二号を議題といたします。書記長をして朗読いたさせます。
  (書記長「新垣良正君」議案第二号朗読)

議案第二号
  法務警察委員会所管事項につき陳情書を提出することについて
法務警察委員会所管事項について別紙の通り陳情書を提出致したく議会の議決を得たいので提案する。
  一九五一年一月十一日提出
   法務警察委員会
     委員長 山城 興起
宛 ・ 琉球民政本部副長官
経由・ 沖縄民政官
発 ・ 沖縄群島議会議長
  陳 情 書
沖縄自立経済政策上必要と認める事項並に法律体系の民主化を図るため左記事項の早急実施方御取計い相成りたい。
    記
 一 軍使用地に対しその使用料の弁償につき民意を徴し適正な価格を設定して早急に使用料を支払って貰いたい。
 二 米国琉球民政府の管理している戦前の市町村有地並県有地を市町村又は群島政府へ管理移譲方を早急実施して貰いたい。
 三 終戦後において民主化された日本の諸法規中沖縄の社会事情に即したものを取捨選択し沖縄の法律として取上げて貰いたい。
右一九五一年一月十一日沖縄群島議会の決議に依り陳情致します。
   沖縄群島議会議長
         知花 高直
○議長(知花高直君) 提案者の説明を求めます。
◎山城興起君 これは前の議会で委員会付託になりまして、法務警察委員会の方で案を練ったのでありまするが、皆さん御承知だろうと思いますが、それにちょっと補足しておきます。
  一番の「軍使用地に対しその使用料の弁償につき民意を徴し適正な価格を設定して早急に使用料を支払って貰いたい。」これは民政府が玉城村にあった時から世論としても出ておりますし、また前の民政議会にも取上げておられるようであります。軍は、これは弁償するということはときどきいったのでありますけれども、それが実現方が遅れておったのであります。自立経済もこれからたてて行かなければならないという時期におきまして、軍にその土地を使用されている各個人は非常に困るのでありまして、われわれとしても是非早急にこの実現方を陳情してやってもらいたい。こういうような考えを持っているのであります。然し軍の方でもこの使用料に対しては払うということでありまして今日の新聞には一月から払うということでありますけれども、われわれとしては一応陳情して見たいと思うのであります。
  二の「米国琉球民政府の管理している戦前の市町村有地並県有地を市町村又は群島政府へ管理移譲方を早急実施して貰いたい。」これは戦前県又は市町村はそれぞれ県有地又は市町村有地に対しまして相当の金を注ぎ込みまして施設をしたり或はそれから出たところの費用なんかはそれぞれの県又は市町村が収入として取っておったのであります。ところがこれが戦後米国琉球民政府の管理になっておりまして、何らこれからの収入といってもないし、又米国の民政府が管理しておりまして、われわれとしては何も手をつけることは出来ないのであります。これも群島政府が群島組織法によって発足し、また市町村制法によって市町村が発足した以上、これは群島政府、市町村に管理移譲するのが当り前ぢゃないかとこう考えましてこういうところの陳情をする考えであります。それから三番の「終戦後において民主化された日本の諸法規を全面的に受入れ(ママ)沖縄の社会事情に即して(ママ)取捨選択し沖縄の法律として取上げて貰いたい。」これは終戦後沖縄におけるところの法律は殆ど日本の旧法を適用しているような状態でありまするが、然し現在終戦後六ヵ年目にもなりましていろいろの方面におきまして沖縄の社会事情に適しないところの諸法規があるように窺われますので、どうしてもこれは改正しなければならない事情に立ち至っているのであります。それに致しましても日本は終戦後マッカーサー司令部によりましていろいろ民主化されるように指導されまして、殊に憲法は民主的憲法で旧来の日本憲法とは格段の差があるところの民主的方法で決定されているようであります。従って統治の根本法である憲法に建前と致しまして、それから発生したところの民法、刑事或は訴訟法或は商法、その他の諸法規も殆どが民主化されまして新しい法律が出来上っているようであります。いま沖縄の方ですぐ日本の法規をこれも改めよう、あれも改めようという風にちょびりちょびりやっていたんでは法はすべて関連性をもつものでありまするが故にすべてにひっかかりを生じて参りますので、これは風俗習慣その他の社会事情は或る程度日本と違うのは事実でありますけれども、これを一応取寄せて、そして項目を中心として沖縄におけるところの法制の権威者が集って、そして沖縄の社会事情に即して取捨選択をして沖縄の法としてこれを取上げていきたい。こういう方針で行きたいという考をもちまして委員会の方でも取上げている次第であります。どうかよろしく御審議の程をお願い致します。
○議長(知花高直君) 質疑に入ります。
◎宮城久栄君 陳情の手続の方法でありますが知念の民政府時代はすべて陳情は知事を通じてやる。勝手に陳情をしてはいかんという関所を設けられた前例があります。この一号、二号議案は直接、知事を経由しないで議長から民政官府に、次に民政本部の副長官となっていますが、それでよいかどうか。政府当局の御意見を承りたい。
○知事(平良辰雄君) それは、よく、すぐは分りませんが群島政府を経由したって一向差支えないと思っております。必ずしも群島政府を経由せんで直接出す必要もないと思いますが、どんなもんですか。
◎仲里誠吉君 宮城議員の只今の御質問は御尤もだと思いますが、それにつきましては先達ての議会に於て具志頭議員の御質問に対して私がお答えしました点を御参考願いたいと思う。それは日本政府に於て一九五一年度の予算は大もめにもめたのでありますが、野党側は与党のたてた予算案に大半反対で政府の予算案修正のために独自の立場から予算案を作成してそれをマッカーサー司令部のリード予算課長と交渉しています。交渉の結果は必ずしも認められた訳ではありませんけれども、肝心な根本的な予算自体ですら議員側か向うの軍政府、マッカーサー司令部へ直接交渉することが許されている。従って沖縄に於てもこの議会が議会の名に於て、人民の意思の機関であるところの議会の名に於て軍に陳情することはむしろ先例を開くという意味でやるべきである。それから問題が極めて重要であるのでこの重要性を軍に意識してもらうという意味でもこういった形式をとった方が妥当ではないかと思います。それだけ意見を表明しておきます。
◎長浜宗安君 二号議案の記一の項について疑義がありますので質問します。
 群島政府公報にこう書いてあります。マ司令部から琉球列島民政副長官に対する指令-琉球政治の基本方策と見られる同指令書の中にその三頁G項に「米国政府が永久的に必要とする土地購入費を米国特定資金から出して貰えることを条件としてこの種資金を左の諸目的のために使用する-」とある。この米国特定資金から出して貰う条件は、沖縄人としては土地を売るという条件の下に土地の使用料を払うという感じがするのでありますが、当局はどういう風に解釈しておられるか、その点質問したいと思います。
  (十番議員(松本恭典君)、十七番議員(新城徳助君)出席)
◎新里銀三君 委員会でこういう決議をした理由は、土地はどんな事情があっても米軍に売らない。売って使用料として請求しようということではない。全住民の意向も大体如何なる条件であっても土地は売らない。使用はさせるけれども、小作にさして小作料を取ろうと云う立場に於て、どこまでも小作料式にやろうという意味でやったのですが、その辺当局の御意見を伺いたいと思います。
○法務部長(知念朝功君) これは議会側の提案でありますので、これはかえって議会側から御説明を願った方がよいと思います。
○知事(平良辰雄君) 今の御質問は軍からの指令の解釈の問題のように思いますが、これはいま差当り私のところでは充分な解釈を持っておりませんが、然しこの案については別段土地を売るとかいう問題は出て来ないのぢやないかと思いますが、使用料を払って貰いたいということで土地を売ることにはならんと思いますが、それは皆さんの御意見によって考えていただきたいと思います。
◎仲里誠吉君 只今の長浜議員の御質問の中に軍からの指令を引用されていますが、それは見返り資金を利用して軍の必要とする沖縄に於けるいろいろな資本、そういったものを購入するということが謳われております。これは軍からの指令であれば致し方がないが、然し見返り資金は、その性質からして如何に軍がそういうことを謳っても当局で研究をしていただきたいと思う。見返り資金というのは厖大なものでありまして、如何に軍が必要であるといっても、講和会議に於て沖縄の国籍が決定する以前に於て固定資産を購入するということは極めて不合理ではないかと思います。権力による占領というのであれば、これは権力関係であるからして、やむを得ないのでありますが、見返り資金を利用して、これを以て固定資産を永久的に購入するという軍からの指令はわれわれにとって極めて重要な内容でありまして、これは当局に研究方をお願いします。なるべくそういった強権を発動しないように、というよりはそういう条項は削ってもらうようにお願いしたい。日本の場合には見返り資金は特別会計で処理されているが、貿易特別会計の中に上って、それから見返り資金特別会計の中に繰入れられる訳であります。この見返り資金特別会計に繰入れられると、その運用計画については日本政府がする。然しそれを許可する、しないはマッカーサー司令部がやる。尤もその運用の中にも公企業へいくら私企業へいくらということになっているが、これは米国政府の投資でなくて、日本政府の投資であると解釈している。これはあくまでも日本政府の投資であるけれども、日本の均衡予算を達成し、見返り資金を運用する根本的方針の一つである民生の安定、国債の償還、そういったところから軍の許可を得て、あくまでも資金の正しい配分、或は正しい使い方(効率)を出来るだけ最高限度に発揮するという意味でマ司令部が許可していると思うが、沖縄では見返り資金で軍が必要とする固定資産を購入することは沖縄の全住民にとって極めて重大問題であるので群島政府当局の深甚な研究を要望するものであります。この提案に対する希望を申述べます。それは一の「軍使用地に対しその使用料の弁償につき民意を徴し(注 欠落により挿入)適正な価格を設定して早急に使用料を支払って貰いたい」。第一項にこういうことがあるが、この適正な価格ということでありますが、これは極めて曖昧模糊として、漠然としていると思います。これはあくまでも、理論的にいうと綜合物価水準を基礎にしまして、例えば戦前、昭和十二年を基準にするならばその後の物価の総体的の値上りが何パーセントであるというので、それに基いてむしろ適正な価格はこちらで決定すべきではないかと思う。軍で不当にこれを適正価格であると名前をつけて極めて安い低い値段をつけたら困る。この適正価格というのはこれは科学的な数字がない限りは極めて主観的であって、数字によって裏付されない限りは水掛論に終る。こちらが適正と思っても向うが適正とは思わない。向うが適正だと思ってもこちらが適正とは思わない。これは科学的な数字によって所謂適正な価格はこちらで決定すべきものだと思う。御参考迄に申上げたいのであるが、財政部の地方財務課の方には土地の賃貸価格に関する資料がありますから、古い資料がありますから、それを参考にしてなお詳しく検討して適正価格は政府と議会側で研究して軍に出していただきたい。これだけ希望します。
◎稲嶺盛昌君 先程の指令の中にも、この適正価格というものは民政府の副長官に於て決定をしてそして指定した期日に支払うということになって、向うがちゃんとそういう権利があるという風に指令が出ている手前これは一応お願いの形にしてこちらから適当と認めるものを議会側で決めて行くのでなくて、向うがそれを決定する権利があるように指令が出ているのだから、軍政下の今日やむを得ないものと思いましてお願いするのが適当ではないかと思います。それから二号議案の第二の公有地の問題に関しましても、これは占領国として無償で占有する権利があるとこの指令にははっきりと謳われておりますので、この点もあくまでもお願いの態度で行く外はないと考える次第であります。そして一、二の公有地については先程山城議員からも御説明がありました通りどうしても自立経済確立の建前から致しましても、また軍使用地の多い地方の住民の個人又は市町村財政の立場からしてもどうしてもこれは必要な事項と思いますので陳情致したいと、こう思います。これの三の民主化の方面に関しましても一般の世論になっている関係上、人民の民主化を確立して行くためにはどうしてもそれに伴う法規が整備されることが必要と思いますのでこの第二号議案に対してはこの通り陳情いたすようにお取計いをお願いしたいと思います。
◎仲里誠吉君 この提案に対して私も勿論全面的に賛成でありまして、諸手を挙げて賛成すると同時に、議会としても強力に軍に当らなければならない問題だと思う。然し一番の問題で土地の価格の設定に関する権利は軍が保留している。われわれとしては軍に陳情しか出来ない。その程度に止めたいという御意見であるが、只今の御意見をあくまでも理論的に解釈すると、占領されている側はどのようなことをされても不服もいえない御無理御尤もであるという、それ程まで極端な御意見ではないと思うが理論的にいうとそういうことになる。この適正な価格の問題というのは仮に軍が設定の権利を保留しているにしても然し意見具申をする途は拓かれていると思う。それが民主主義である。従来の沖縄群島に於ける如何なる官庁を見るにしても、軍が政策を決定する前には当局の意見をいわない。貿易庁辺りでは意見具申をしてそしてその具申した意見の殆ど九十パーセントに近いものが受入れられている。そういう訳で議会側に於て設定する適正価格なるものもこれは要求ではなくて、議会側ではこの程度のものが適当と思う。従って軍に於てもこれを参考にして独自の立場に於て決定していただきたいという、これはあく迄も意見の具申であります。従来の平良内閣以前の民政府に於ても陳情は絶えずやったのであるが、それは自主的ではなくて住民側からの強力なるところの圧力に従って他動的に陳情したのでありますが、その陳情の大半が何らの科学的な数字の裏づけがなかった。従って当時の当局としていい得るものは「よろしくお願いします、よろしくお願いします。」又自信がないからただ感謝感激ばかりする。それは科学的な数字に関する自信がなかったところから出ると思う。それが今度は新しく内閣も変ったのであるから、平良内閣は、かなり、或る程度理論的な内閣であるということはわれわれも認めたいと思っている。こういう意味からいっても物価水準も出せば出せるのである。早い話が米の物価水準はすぐ出ます。財政部にも数字がないのでなくてあるのであるから、それを有効に操作されて、議会に於ても当局に協力を求めて適正な価格を設定して意見具申として出すべきではないかと思います。
○知事(平良辰雄君) これは適正な価格という風になっておりますが、この適正な価格についてはいま具体的にこういうのが適正な価格であるといったことは矢張り政府が具体案を作って軍と折衝する外はないと思う。そして政府が具体案を作る場合には議会にもかけなければならないと思う。そういう意味で適正価格ということは誰でも納得が行くものであるという風な考え方で陳情書を出しておけば、政府としても具体的に委員会を開いてやる、議会にもかけるということは政府自体でやらなければならない問題だと思っている。土地の売却の話もわれわれは沖縄住民全体の利益を擁護するためにそれに関して相談があった場合にはそれをなるべく売ってもらわんような方法も考えられるのでありましてそういう問題は後の問題にして、議会と当局とが具体案を作り上げていくという方法にならなければ、この議案が価格の決定とかいったもの迄行くとなればむつかしいのぢゃないか、又これをどういう風に、例えば議会でやって貰いたい、委員会を作ってやって貰いたいということを織込むとなると又更にやり直さなければならないことになるのぢゃないかと思いますので御参考のために申上げます。
◎祖根宗春君 一、二の問題については原案通り賛成いたします。只今一の問題について、この価格問題については何れ当局にも研究して貰う、更に陳情する場合には価格設定については民側の意向も是非参考に徴して貰いたいということを陳情文をあげる時に附帯的にお願いしておいた方がいいと思います。
 二(三カ)の問題は非常に重要な問題であって、軍政下に於ける軍の布告、指令、布令、覚書と、この陳情文の日本の法規を全面的に受入れ適用して貰いたいということの理念をはっきりさせて貰わなければいかんと思いますので、その点について法務警察委員会に御説明をいただきたいと思います。
  質問の内容は、群島組織法、税法、軍から発せられた布告、指令、布令、覚書、たくさんありますが、これは沖縄に於ては憲法にも匹敵するものもあれば、日本の法律に匹敵するものも現に軍が施行しておりますが、そういうものを日本の法律で取換えるのであるか、或は軍がやっていない、制定している以外の法律を日本からもって来てそれを援用するのであるか、その適用の範囲も理念的にはっきりさせていただいた方が、われわれが立法機関として法律の制定についてもはっきりさしておかなければならない点があるのでその点をお伺いする次第であります。
◎山城興起君 沖縄は米軍政下にありまして、軍の布告、布令というものは絶対われわれとしては動かせないものでありまするが、だんだん民主化されて参りますというと結局沖縄の法として沖縄に適する法制を持って来ないというと、また作ってやらないというと非常に社会事情に適しないものがありまするので、現在すぐという訳にはいきませんが、その点はなかなかむつかしい問題ではありますけれども、そういう要望をやっておかないというと、いつ迄も日本旧法に頼っていてはいけないから沖縄の事情に適したところのものを取捨選択してやって行こう、そういうような委員会の意向もありまして、まだ詳しいところ迄委員会の方でも打合せはしてありません。軍の方にそういう風な要望をしてそして改廃を軍の方にも認識させておこうぢゃないかというような話合になっているのであります。
◎仲里誠吉君 三番の問題は本議員の提案にかかるものでありますが、本議員は経済財政の委員会に属しているので法務警察の委員会には所属しておりませんのでどのような討論が交わされたか私は知らないのでありますが、この案文としてここに掲げられたものは提案者の意図するところとは少しかけ離れておりますので希望を申上げます。これは警察委員会に対する希望であります。この案文を見ると「終戦後において民主化された日本の諸法規を全面的に受入れ(ママ)沖縄の社会事情に即して(ママ)取捨選択し沖縄の法律として取上げて貰いたい」この案文自体が矛盾している。全面的に受入れということを謳っていながら後半に於ては取捨選択という言葉が使われています。これは第二回議会に提出した文句は控をもって来ておりませんけれどもこういうことであります。つまり日本の法律体系の中民主的と認められるものを受入れて貰いたい。民主的なものを受入れて貰いたいのであって全面的に受入れて貰いたいという意味ではなかったのであります。しかもこれは議会及び群島政府側は手を拱ねて何らの研究もしないで軍によって判定して貰うという意味ではなくて、議会及び当局双方が研究して戦後の日本の法律体系の中何れが民主的であるか。最初は民主的であってもこれがファッショ的に改悪されたのがある。公務員法、労働組合法のような民主的なものが後で労働調整法というものに改悪されている。そういうものは受入れる訳には行かない。提案者の意図するところは現在の日本の法律体系の中何れが民主的であるか、それを議会及び当局で決定して軍にこうこういう法律は必要であると思われるからこれを全面的に取入れてもらいたい。これをこういう風に修正して沖縄で施行するような措置を講じてもらいたい。こういうことであります。差当り沖縄で必要なのは、思いつきであるが、憲法は暫く別として民法、商法、財政法規、警察法規、地方自治法、経済法規就中外国為替管理に関する法規、これは尤も大部分は貿易庁でほぼそのように執行しておりますし群島政府としてはそこまでタッチする権限はないと思いますが、然し意見具申をすることは出来るという意味でありますが、ただ無闇に何でもかんでも全面的に受入れてもらいたい。そして軍の手で決定してもらいたいという意味ではありませんから……。
  提案者として改めて法務警察委員会に希望します。この問題はあく迄も自主的に解決して貰いたい。即ち議会側に於て、法務警察委員会に於て如何なる法律を取入れるべきであるか、これは自主的に決定してもらいたいのであります。再審議をお願い致します。
○議長(知花高直君) 暫時休憩いたします。
  午前十一時五十五分休憩

  午后〇時十分開議
◎議長(知花高直君) 開会致します。
 議案第二号は討論を省略して原案の通り可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めまして可決いたします。

◎議長(知花高直君) 日程第五の知事提出議案第一号を議題と致します。書記長をして知事提出議案第一号を朗読致させます。
  (書記長「新垣良正君」議案第一号朗読)

議案第一号
  沖縄群島政府公布式について
 沖縄群島政府公布式に関する条例を左記の通り制定致したいので議決を得たく提案する。
  一九五一年一月十一日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
    記
  沖縄群島政府公布式
第一条 沖縄群島政府法令は、沖縄群島政府公報に登載するをもって、公布式とする。
第二条 沖縄群島政府法令は、特に施行の期日を掲げるものを除くの外は、公布の日から起算し、満七日を経て、これを施行する。但し、離島地に在りては、沖縄群島政府公報が市町村に到着した日から起算する。
   附 則
1 この条例は、一九五〇年十一月四日から適用する。
2 沖縄民政府公布式(一九四六年五月二十日沖縄民政府令第二号)は、廃止する。

○議長(知花高直君) 本議題の質疑に入ります。
◎新里銀三君 第二条の公布起算日の満の問題であるが、離島に在っては公報が市町村に到着した日から起算するとありますが、例えば今日議会で可決して今夜中に船が出た場合は沖縄本島より早く施行になる訳ですが権利義務に関する問題でありますので早くやったために有利になったり、遅くなったために不利になることがありますが私の記憶では満を入れずに何日目、離島では到着しなくても二十日迄に発効するということがあったと思うがそれに対する当局の御見解を承りたい。
  公安委員長の山田委員長から身柄の拘束についても判事の拘留状によって時間的にもよく守るということでありましたが、事件が起ったら時間内に取調べ検事局に送って裁判に付します。元は日本の法律では裁判は天皇の名に於てこれを行うとありましたが現在の沖縄の裁判はどういう立場に於て、誰の命令によって裁判を行うか、知事の名に於て行うのか、法務部長の名に於て行うのか、裁判を誰の名に於て行うのか伺いたい。
○知事室事務局長(宮城寛雄君) ここに満七日を経てこれを施行すると書いてありますが又離島地にあっては群島政府公報が到着した日からこれを起算する。日本の法令に於きましてもこういう文句を使っているようであります。又離島地の施行日につきましても最近の法令附則はそういう風な起算日を定めているようであります。
○法務部長(知念朝功君) 別に明文の規定はないのですが強いて解釈するならば裁判所の名に以(ママ)て裁判するか、法律の名に於て裁判するか何れかになるだろうと思いますが基準すべきところのものはありません。
◎仲里誠吉君 裁判所の問題ですが、誰の名に於て裁判するかという問題ですがこれは勿論理論的にいえば人民の名に於て裁判すべきものだと思う。民主主義に基く独立国家に於ては主権はあくまでも人民が握っているのであるから当然人民の名に於て行うべきであるが沖縄では軍政下にあるので若し裁判所があく迄もそういうのが必要であるならば、法文の上で謳う必要があったり或は裁判所でそういう言葉を出して謳う必要があるとすれば、これは本議員の希望であるが民主主義の名に於て裁判してもらいたい。それだけを要望しておきます。
◎宮城久栄君 議長に御注意申上げます。議題外の意見を述べることを押えてもらいたい。公布式の問題から裁判の問題になる。(笑声)
◎新里銀三君 宮城議員のおしかりは御尤もかも知れませんが、沖縄群島政府の公布式によって法令が施行された時には権利義務はどうなりますか。身柄を拘束し裁判に付し罰金刑にする場合にはその裁判は誰が行うかという根拠をついたのであって密接不離な関係があると思うのであります。(笑声)
○宮城久栄君 ちょっと喧嘩みたいになりますが、もう少しお互議員は常識をもって議案を審議して貰いたい。すべてが公布式に含まれる、そうなるといつまで経っても問題は尽きないと思う。常識をもって判断してもらいたい。(笑声)
◎議長(知花高直君) 質疑を終了いたします。討論を省略して原案を可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議なしと認めます。よって左様に決しました。

◎議長(知花高直君) 日程第六の知事提出議案第二号を議題といたします。書記長をして議案の朗読を致させます。
  (書記長「新垣良正君」議案第二号朗読)

議案第二号
  沖縄群島政府公文公布方法について
 沖縄群島政府公文公布方法に関する条例を左記の通り制定致したいので議決を得たく提案する。
  一九五一年一月十一日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
    記
  沖縄群島政府公文公布方法
第一条 沖縄群島政府法令は、沖縄群島政府公報に登載し、これを公布する。
第二条 告示、諭告及び必要と認める訓令は、沖縄群島政府公報に、これを登載する。
   附 則
1 この条例は、一九五〇年十一月四日から適用する。
2 沖縄民政府公文公布方法(一九四六年五月二十日沖縄民政府令第二号の一)は、廃止する。

◎議長(知花高直君) 本議題は質疑討論を省略いたしまして原案を可決いたしたいのですが、御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議なしと認めます。よって本案は原案通り可決いたしました。

◎議長(知花高直君) 日程第七の知事提出議案第三号を議題といたします。書記長をして議案の朗読をいたさせます。
  (書記長「新垣良正君」議案第三号朗読)

議案第三号
  沖縄群島知事室事務局並びに弘報室設置条例について
 沖縄群島知事室事務局並びに弘報室設置に関する条例を別記の通り制定致したいので議決を得たく提案する。
  一九五一年一月十一日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
    記
  沖縄群島知事室事務局並びに弘報室設置条例
第一条 沖縄群島政府に知事室事務局並びに弘報室を置く。
第二条 知事室事務局は、左に掲げる事務を掌る。
 一 儀式に関する事項
 二 外事に関する事項
 三 諸法令の公布に関する事項
 四 文書に関する事項
 五 飜訳に関する事項
第三条 弘報室は、左に掲げる事務を掌る。
 一 琉球民政府並びに政府の諸政策の普及徹底に関する事項
 二 政府の諸政策に対する世論調査に関する事項
 三 情報、教育的諸企業(出版、劇団、映画、劇場、写真業)の規制に関する事項
   附 則
 この条例は、一九五〇年十一月四日から適用する。
◎議長(知花高直君) 議案第三号は質疑討論を省きまして原案を可決いたしたいのですが御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○宮城久栄君 これは既に軍政府と了解済でありますか。(知事「はい」)それでは原案賛成であります。
◎議長(知花高直君) 御異議がないと認めます。よって議案第三号可決確定いたします。

◎議長(知花高直君) 日程第八の知事提出議案第四号を議題といたします。書記長をして議案の朗読をいたさせます。
  (書記長「新垣良正君」議案第四号朗読)

議案第四号
  沖縄群島電気委員会設置条例について
沖縄群島電気委員会設置に関する条例を別紙の通り制定致したいので議決を得たく提案する。
  一九五一年一月十一日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
別 紙
  沖縄群島電気委員会設置条例
第一条 電気事業の計画並びに発電、送電の合理化を図り、もって豊富低廉なる電力の開発を期し、その行政事務を円滑ならしむるため、沖縄群島電気委員会(以下委員会という)を置く。
第二条 委員会は、知事の監督に属しその諮問に応じ左の事項を調査審議する。
 一 発電及び送電の計画並びに電力料金その他の重要事項
 二 電気事業設備の統制に関する命令又は処分に関する事項
 三 電気事業譲渡に関する事項
 四 公益上の理由により事業経営の許可、取消又は停止処分に関する事項
 五 電気料金認可の基準に関する事項
 六 特定供給の許可の基準に関する事項
 七 その他電気事業法施行に関する事項
2 委員会は、前条(項カ)の事項について、知事に建議することができる。
第三条 委員会は、委員長一名、委員十一名以内をもって組織する。
第四条 委員長は、工務部長をもってこれに充てる。
2 委員は、左に掲げる者の中から知事が、これを任命する。
 一 群島議会議員
 二 関係各庁職員
 三 学識経験者
 四 電気使用者
 五 電気事業者
3 前項第三号乃至第五号に掲げる委員の任期は三年とする。
第五条 委員長は、会務を総理する。
2 委員長事故あるときは、委員長の指名した委員、その職務を代理する。
第六条 委員会は、必要があると認めるときは、知事を経て、電気に関し、学識経験ある者、その他適当と認める者から意見書を徴し、又はその出席を求めて意見を聴くことができる。
第七条 委員会に幹事を置く。委員の(長カ)推薦により工務部職員の中から知事、これを命ずる。
2 幹事は、委員長の命を受けて、事務を掌る。
第八条 委員会に書記を置く。工務部職員の中から委員長、これを命ずる。
2 書記は、委員長及び幹事の命を受けて事務に従事する。
   附 則
 この条例は、公布の日から施行する。
○議長(知花高直君) 当局の提案理由の説明を願います。
◎工務部(ママ)副部長(西銘順治君) 只今上程しました電気事業委員会の設置の目的から先ず申上げます。
  群島組織法第二条第二項によりまして、電気事業の設置管理は群島の事務になっております。従いまして、この電気事業の設置管理及びその行政事務を円滑ならしむるために、知事の諮問機関として委員会を置くというのがその目的であります。
  その提案の理由は現在全島の発電所(一月二十日現在)二百五十三カ所、電力にして六千二百三十四キロワットありますが、この発電事業は旧日本の電気事業法を適用した場合には一つも成立しないような現状にあるのであります。従いまして、この電気事業法を現在の沖縄の電気事業に如何に適用して行くかということが一つの理由になっているが第二は経済自立計画の点からして将来電力の需給関係が出ないとも限らないのでありまして、重点産業に対する電力の重点的な配分というような点からして電力の需給関係その他を一応知事が電気委員会にかけまして、沖縄の現状に即したような電気事業を運営して行きたいというのが提案の第二の目的になっております。
○議長(知花高直君) 本議題の質疑に入ります。
◎祖根宗春君 この条例が設置されて運営されて行った場合に沖縄に現在存在している既設電気営業者の処理方法について何か具体的な御意見でも持っておられれば、この際お伺いしたいと思います。
○工務部副部長(西銘順治君) これは別に政府として具体的な案は持っておりません。われわれが電気委員会を設置した目的も一応は電気委員会を設立して、それに諮って民主的な案を得たいというのがその目的であります。最初に委員会をつくり、それから成案を得たいと思っております。
○議長(知花高直君) 質疑を終了いたしまして討論に移ります。御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎仲里誠吉君 第四条の二項の五ですが、委員としてその中に電気事業者も入れてありますが業者自体も中に入れてありますが、これは非常にやり難いことはありませんか。航空便の新聞を見ると御承知のように日本でもいろいろなものに業者を入れないようにするという閣議の根本的なことが決定になっている。何も猿真似をする必要はないが、ここに業者を入れて非常に邪魔が入って審議し難い点はありませんか。
○工務部副部長(西銘順治君) 電力の再編成問題は議会でもめたのですが、われわれの見解としてはむしろ単なる事業の設置管理という意味からではなくて、反面に事業の保護育成という面もあるのでこういう面からこの事業者も入れた訳であります。
◎議長(知花高直君) 御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議がないと認めまして議案第四号を可決いたします。

◎議長(知花高直君) 日程第九の知事提出議案第五号を議題といたします。書記長をして議案の朗読をいたさせます。
  (書記長「新垣良正君」議案第五号朗読)

議案第五号
  自動車登録、検査及び運転免許試験等手数料徴収条例について
自動車登録、検査及び運転免許試験等手数料徴収に関する条例を別紙の通り制定致したいので議決を得たく提案する。
  一九五一年一月十一日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
別 紙
  自動車登録、検査及び運転免許試験等手数料徴収条例
第一条 自動車登録、検査及び運転免許試験等の手数料は、左の各号により、これを徴収する。
 一 自動車登録及び登録証交付手数料
  A 普通自動車及び特殊自動車
     一台に付 金三百円
  B 小型の自動車
     一台に付 金二百円
 二 自動車登録証再交付手数料
     一回に付 金 百円
 三 自動車検査及び検査証交付手数料
  A 普通自動車及び特殊自動車
     一台に付 金二百円
  B 小型の自動車
     一台に付 金 百円
 四 自動車検査証再交付手数料
     一回に付 金 百円
 五 自動車運転免許試験手数料
          金 百円
 六 自動車運転免許証交付手数料
          金 百円
 七 自動車運転免許証再交付手数料
          金 百円
第二条 前条第一号乃至第五号、第七号の手数料は、申請のとき、第六号の手数料は、免許証交付のとき、これを徴収する。
第三条 この条例により徴収した手数料は、その理由の如何に拘らず、これを還付しない。
   附 則
1 この条例は、公布の日から施行する。
2 自動車運転免許試験其の他手数料徴収規程(一九五〇年六月二十二日沖縄民政府令第七号)は、廃止する。

○議長(知花高直君) 当局の提案理由の説明をお願いします。
◎警察本部長(仲村兼信君) 第五号議案について簡単に御説明申上げます。自動車の登録並びに検査等を群島政府が実施することになった根本は、一昨年六月に軍から指令が出て、日本製の自動車は全部民政府の警察部に於てこれを登録するようにとの軍の指令が出ましたので、これに基いて旧民政府時代から自動車の登録並びに検査及び運転手免許試験ということを行って来たのでありますが、今回更に軍から自動車の登録並びに検査及び自動車運転手の免許試験或は免許証の交付、こういった事務を取扱う面に於て検査事務所というものを設け、そしてこの事務を取扱う面から致しまして適当な手数料を民政府の税外収入として、これをかけてもよいという軍の御了解がありましたので今回これを沖縄群島政府の条例として提案の通り実施していきたいと思っております。以上簡単に御説明申上げます。
○議長(知花高直君) 本議題の質疑に入ります。
◎具志頭得助君 自動車といいますが三輪車もこれに含んでおりますかどうか。自動車登録証再交付手数料一回につき百円になっておりますが、先日の非公式委員会であったかその席上に於ても不動産取得税というものを対象として自動車の売買が盛んに行われている。これも取得税を課した方がいいんぢゃないかという話があったが自動車の売買についても再交付の手数料百円を徴する意味であるかどうか御意見を承りたい。
○警察本部長(仲村兼信君) 私から御説明申上げます。自動車の登録証再交付手数料とありますのは、大体紛失の際に再交付するものであります。三輪車は小型自動車の中に含んでおります。売買の際は自動車登録の変更になりますのでここに示されている通りの手数料を徴することになっております。
◎石原昌淳君 本案につきましては、原案に賛成するものでありますがこれと関連しましてこの事務の、自動車関係の監督、或はその事務の所管につきまして、陸運事業については群島政府の工務部の所管であり、又こういう登録事務については群島組織法で公安委員会の所管事項となっているようでありますが、陸運事業と登録関係は不可分のものであろうと思われますし、そういった事務の簡素化或は民衆の利便という点からして群島政府の工務部所管として一元化した方が適当ぢゃないかという風に考えられますが政府のこれに対する御見解はどんなもんですか。
○知事(平良辰雄君) それは御意見の通りで、いま折衝しております。そういう風な方法にもって行きたいと折衝中であります。
◎祖根宗春君 料金の査定の基礎について何か案がありましたらお伺いしたいと思います。それから一九五〇年六月二十二日に規定されたあの時の料金と今回定められた料金との差額、そういった点もお聞きしたい。それからこういった料金を決める時には単なる手数料として、紙代とかいう簡単なもので決めるのか、或は政府の財源的な考えでこの料金を決定されるか、そこらの基本的な考え方を御説明願いたいと思います。
○警察本部長(仲村兼信君) 大体料金の基礎は戦前の百倍にした考えで、その基礎を戦前の百倍に求めているのであります。これは税と自ら異りまして、あく迄も手数料であります。そしてそれは戦前に基礎を置き今日の経済事情を勘案して高くはないという風な基礎の下に組んでいるような次第であります。この自動車の登録というものについては相当人手も要しますし、更に自動車の運転免許の如きテストには自動車も要るので相当費用がかかります。ところがこの収入を以て現在特別会計を行う考えはなく、税外収入として考えているような次第であります。
  改正前は自動車運転免許試験手数料は百円であったが、これは今回も百円であります。それから自動車運転免許証交付手数料、これは二十五円でありましたが、それが今回は百円、再交付は非常に不注意で紛失するのが多いのでそういった面の防止にもなると考えまして一律に百円にしてあります。
  それから自動車の登録及び登録証交付手数料でありますが、これは新に設定してこの項を設けて入れてあります。この登録及び登録証交付というのは自動車一台に付一回しかないことでありますので、三百円と二百円は少し高いようでありますが、一回きりのものであって適当な料金ではないかと考えている次第であります。再交付手数料は二十五円から百円に上げてありますが、これは紛失防止の意味も含めて考えている次第であります。
◎新里銀三君 現在組立自動車がたくさんありますが、これは軍の財産管理課に於て登録税と申しましょうか、二万二千円乃至二万五千円とっているのであります。それを払っておりますが更に警察部に行って登録税がかかるのでありましょうか、その辺の関連はどんなものでありましょうか。
○警察本部長(仲村兼信君) 軍が徴している二万何千円の金は登録というより向うからの払下げ料ということになっているようであります。米国財産、没収財産を払下げる代償のようであります。あれとはちょっと趣が異なるんぢゃないかと考えております。
◎議長(知花高直君) 質疑を終了いたしまして討論に移ります。別に御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。よって議案第五号を可決致します。
  午前はこれで散会いたしまして午后二時から再開いたします。
  午后〇時四十八分閉議

  午后二時七分開議
○議長(知花高直君) 開会いたします。出席議員十七名、欠席議員三名であります。

◎議長(知花高直君) 日程第十の知事提出議案第六号を議題といたします。書記長をして議案を朗読させます。
  (書記長「新垣良正君」議案第六号朗読)

議案第六号
  一九五一年度沖縄群島政府歳入歳出追加更正予算案について
 右別紙案に依り議決を求めます。
  一九五一年一月十一日
   沖縄群島政府
      知事 平良 辰雄
沖縄群島議会
  議長 知花 高直 殿

○議長(知花高直君) 当局の御説明をお願いします。
◎財政部長(宮里勝君) 御説明申上げます前に、印刷の間違いがありますから御訂正お願い致します。第二十一款予備費の追加更正予算額が二十六万六千五百八十七円三十二銭になっておりますが、三十五万五百八十七円三十二銭に、款項目の三段とも御訂正願います。計のところも三百五十一万三千百三十三円三十九銭を三百四十二万九千百三十三円三十九銭に、これも款項目の三段とも御訂正願います。第二十四款の退職金の目のところが二百三十一万三千七百五十九円の間違いであります。
  御説明を申上げます。今回提案いたしました追加更正予算は去る定例会議に於て申上げました軍補助金の中、軍と折衝の上に工務部、警察部、厚生部とも計上いたしましてなお民負担の通常行政費の若干の追加更正の必要がありましたので上程したのであります。軍補助金の中で土地調査、成人教育課関係の分は目下折衝中で次の議会に提案いたします。款を追うて説明いたします。歳入においては第二款の税外収入の増加は没収品の売上増加であります。第三款の軍政府補助金は九百二十三万九千八百四十円十九銭を計上、八千七十六万五千四百三十円五十三銭を確認したので九千万五千二百七十円七十二銭を計上した。第四款農林省助成金の八百五十六万六千三百五十一円、現に農林省において農漁村対策費として施行中の予算を群島政府助成金として軍の許可を得て政府予算にふりかえて計上したものであります。
  次に歳出について申上げます。第一款、第二款、第七款は本庁並びに廨庁の定員補充でありまして、予備費からの繰入になっております。第十六款は警察部で、前議会で民負担の分を計上して御承認を得ましたが、今回軍負担の分を追加計上して全額を示したのであります。第二項の第十一目、第十二目は四月から十月までのつまり赤字補填であって、予備費からの繰入れであります。第八項の第一目の自動車免許事務所建設費は没収品売上代金の増収で賄うようになっております。軍命に依て、軍の援助を得て建築することになっている。資材は軍から貰って、建築費だけ民の負担になっている。第二十二款、第二十四款、第二十五款につきましては退職金の方は被整理人員二百四十八名に支給すべき額が二百三十一万三千七百五十九円に確定いたしましたので、減額になっております。給与費の引上は教員の分を除き退職金の残と自動車賃借料よりこれに当てたのであります。第二十七款は前議会において御承認を得ました俸給、給料の支払支給金として琉球銀行からの借入金の利子であります。これも予備費から繰入れて計上してあります。第二十八款以下第三十四款までは工務部接待費は民負担になっておりますが、これを除いて全部軍補助金の支出面を表したものであります。第三十五款の経済部所管の農林省助成金で、今回助成金として政府支出にふりかえられた分であります。
  以上大略説明申上げました。歳入歳出の合計が二億九千四百八十七万三千五百六十六円で民負担が一億九千六百三十万一千九百四十四円三十四銭で、軍負担が九千八百五十七万一千六百二十一円七十二銭であります。よろしく御審議をお願い致します。
○議長(知花高直君) 本議題の質疑に移ります。
◎新里銀三君 今すぐところどころ読んではピンと来ないが前以てこういう案は渡してもらった方がよいと思いますから今後そういう風にしていただきたい。前議会のときの歳入歳出の計は数字的に違うところがありますが、数字の違うところの御説明をお願いします。既決予算に対する数字が違っておりますが。
○財政部長(宮里勝君) 前回の既決予算を計上してあるが、違う分は軍負担の分で、これは既に群島政府樹立前に軍から令達されたものでありその分を計上してある。
◎仲里誠吉君 これは当局への要望でありますが、十六番議員(新里銀三君)からの御質問がありましたように既決予算額として数字的に違っているが、前回の議会において審議したときのとかなり違ったところがある。もう一つは前回の追加更正予算面に現われていなかったものが既決予算の所に金額を織り込んでいる。われわれは追加更正予算にないものを審議したことになっている。前になかったものが現われていることも既決予算額が違ったこともつまりわれわれが審議しなかったものが出て来ているというかたちになっている。当然新しい項目は追加更正予算の面に現わして欲しい。前の予算面で現われてなかった項目、数字が二十八款選挙管理委員会、二十九款財政部会計課、三十款愛楽園、三十一款結核病院、三十二款精神病院、三十三款衛生のそれぞれの費用、これは前の追加更正予算に現われてないが、二次では既決予算面に現われている。二十七款の借入金利子は正直に追加更正予算面に現われている。農林省の予算も現われている。こういうものは直して欲しい。こういうものを当局から伺いたい。
○知事(平良辰雄君) 只今の御質問は尤もだと思っている。私もどうしようかと考えた。軍関係の予算は決っている。決ったものをこれに出すという話で、そうかなあと思っておったが、既決というのは現わし方がまずいのではないかと思っているが、総べて予算が決ったものであるという意味に考えていかなければならんので、従来の決った予算がこれだけであるという風に了承願いたい。まだ決議になってない予算はどれであるか、これで分ると思います。そういう風に見て欲しい。
◎宮城久栄君 いま知事並に財政部長の説明で喰い違いがありますが、前回の更正予算の既決額と今回の既決額が八千九百五十一万三千余円も違っている。これはわれわれが認めないでも認めたことになっている。こういう場合は追加更正として現わしてもらいたい。予算の事実からいっても既決というのは議会の既決とはならない。そうでないと盲で予算を見たということになっている。また借入金、これも前議会で一千万円を既決したが二千万円の利子を組んで計上されている。これはどうしたわけであるか。議決に反すると思うがどうか。
○財政部長(宮里勝君) これは別に二千万円借入れてはない、一千万円を限度として借入れる意味である。われわれの計画は一月十日に一千万円借りて三十一日に五百万円返済、二月十日に五百万円借りて二十八日に八百万円返し、三月十日に五百万円借りて三十一日に七百万円返す。最初に一千万円借りるのと、二月十日に五百万円借りるのと三月十日に五百万円借りる。こういう風に金額の延べが二千万円になる。利息の計算もその間の金額に依て計算して七万六千円になった。
○宮城久栄君 予算の一時借入であるが、五百万円借りて五百万円返し更に五百万円借りて五百万円返す。一千万円借りて一千万円返し延二千万円借りても一千万円とするか。私は合計は一千万円以内でなければならんと思う。
○財政部長(宮里勝君) 実際に一月十日に一千万円借りて、三十一日に五百万円返し、二月十日に五百万円借りて、一千万円になるが、二十八日に八百万円返し、その後三月十日に五百万円借りて三十一日に七百万円返し、一千万円の範囲内に借りている。
○宮城久栄君 一千万円借りているのに二千万円の利子をあげている。これは議決に反する。
○財政部長(宮里勝君) 琉銀としては軍の承認を受ける。その承認がまだなっていませんので、手続き上で止むを得ない。
○議長(知花高直君) 暫時休憩いたします。
  午后二時三十分休憩

  午后二時四十分開議
○議長(知花高直君) 開会します。
◎平良幸市君 歳入の三款七項の財政部会計課補助金でありますが全額軍負担になっているが減額の理由。もう一つ来年、再来年に及んでこの様に民予算に現われる土地調査、成人教育課のものであるか、民予算に現わし得るものがあるか。
○財政部長(宮里勝君) 十八万一千二百五十二円十銭の減額は、この項目は財政部の給料の補助であります。説明を見ればはっきりすると思いますが、全額軍の負担になっておって、当時は三十四名で、民から負担し、後は全部軍から負担する、定員の縮減で人員が十八名減ったので削減になった。それから成人教育課、土地調査関係以外かといっていられるが二つを補足すればよいのであります。
◎具志頭得助君 現在の民政府と財政部の計画は民政府は利子を払う、民政府が銀行に貸すのは無利子になっているが、新知事が改訂される必要があるか。戦前は支払準備金以外は全部利子をつけるという風になっていましたが、財政部長の御返答をお願いします。
○財政部長(宮里勝君) 今の利子が出てないということは国庫金を取扱っている銀行に対してはつかないのが当り前になっている。以前には国庫金手数料としてあったが現在は出さないでもよいと云うことになっている。このことに就いては軍から達しもあって、その後も相談致しましたが経緯はそうなっております。
◎具志頭得助君 借りる金は利子を払う、預けた金は利子がないのは矛盾しているが、或る一定の限度として全部利子をつけて貰う様に新しく改正する必要があると思う。
○財政部長(宮里勝君) 国庫金として預けたのは利子はつかないのであります。
○具志頭得助君 つけてよいと思いますが。
○財政部長(宮里勝君) 軍との相談の上で決め、また研究したいと思います。
○財政副部長(久場政彦君) 銀行の条例にはそう云う政府の預けるものには利子をつけないと云う条例になっています。
○具志頭得助君 これは条例をなおす必要があると思う。
◎祖根宗春君 歳出面について質問いたします。第一款の第一項の俸給、第二款の第一項の俸給、第七款の財政部の俸給、第十六款の警察部の俸給色々な人件費的なものが、大部追加更正が増えたようになっているが三百五十名の定員の欠員の補充のために増えたのか、三百五十名の定員以上のためでありますか。
○財政部長(宮里勝君) 定員の範囲内で、補充ではない。
◎祖根宗春君 退職給年金が、実際の支給金は減額になっているが内容を詳しく説明願いたい。
○財政部長(宮里勝君) 退職金の方は前議会で二百五十万円を審議願ったが、あの当時は整理の査定であって人員はいくらと、はっきりしているが、どの程度の給料を貰う人を整理するかで大体に於て二百五十万円で人員が本庁一二八名、廨庁一五六名で合計二百八十四名で二百三十一万余円に更正します。
○議長(知花高直君) 御質問ありませんか。
◎仲里誠吉君 歳出面の八頁でありますが、八頁の八項目、九項目の新に会場借用費三十日分九千円になっているが個人の建物であるか、公共の建物であるか。一日三百円はかからないと思いますが、私は英語講習会をやったが一ケ月に一千円位しか払ってない。貴重な税金で賄うのでその辺の事情を伺いたい。
○財政部長(宮里勝君) この建物は個人の建物で一日三百円程度計上しているが或はそれ以内でやるか、はっきりしないが、その辺を上げているのであります。
◎仲里誠吉君 公共建物を使って費用を省いて欲しい。村屋とか、区の事務所とか、学校とかを利用して貰いたい。農村の家で共同組合の広さの家を使うようなところはないと思いますが、広い公共建物を使って欲しい。
  (「賛成」「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(知花高直君) 御質問ありませんか。
◎仲里誠吉君 三頁の自動車賃借料は、その内の予算説明の項で自動車購入費三十四万七百三十円九十八銭となっているが、これは如何なる性質のものであるか承りたい。
○財政部長(宮里勝君) この三十四万余円は知事の乗用車の購入に当てた費用である。
○仲里誠吉君 知事の車は軍から取り上げられたか。
○財政副部長(久場政彦君) 軍の方から返還を要求して、それに代る車を上げるからと向うから知事に照会があった。
○仲里誠吉君 知事の車は何月に引き上げると云われているか、年度内に引き上げると云うのか、はっきりした場合計上する、その辺は慎重に構えて予算を計上して欲しい。
○財政部長(宮里勝君) 軍の意向では二月までには来ると云うので計上してあります。
◎議長(知花高直君) 討論を省略して原案を可決致すことに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。よって原案の通り可決します。

◎石原昌淳君 復興費増額について軍に陳情したいと思いますが日程の追加をお願いします。
◎議長(知花高直君) 御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議なしと認めます。依って日程は追加せられました。

◎石原昌淳君 復興費増額陳情書提出について動議を提出致します。終戦後六年、その間軍の絶大なる御援助によりまして、住民の努力と相俟って相当の復興は進みましたが、まだ多くの復興事業を残して居ります時一九五二年度末に自立財政確立の要請は厳粛に住民に示されて、その達成は政府始め全住民として、大きな政治課題となっています。ところで自立経済確立のためには各種産業の振興発展と共に、戦争、災害、風水害、諸施設復興の促進、基本的公共施設の整備が基盤であり、その促進が自立経済の確立の促進になることは今更私が云う迄もないのであります。然るに戦争災害その他の復興事業は工務部の調査によると土木関係九八、三〇〇万円、建築費一四三、〇〇〇万円、公共施設関係一五、〇〇〇万円、合計二五六、三〇〇万円余と云う莫大な費用を要する調査になっている。現在の経済力を以てしましては民政府では到底その達成を望むべくもない。
  こう云う復興事業を速かに達成するためにその復興費を増額して自立経済確立の促進を計ることは当面の緊急な重要なことであります。これに依て議会の賛同を得て議会として米国民政府、民政官府に陳情したいと思います。皆さんの御賛同を得たいと思います。
◎議長(知花高直君) 只今五番議員(石原昌淳君)から提案の理由の説明がありました通り、その趣意に副うように、文面は議長に一任して提出して差支ないですか。
  (「賛成」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) それでは御異議ないと認めまして、そう云うように取計います。
○知事(平良辰雄君) これと関連しますが、私の希望でありますが、十八日にもう一ぺん来ていただきます。綜合計画案ですが、これが出来なければ沖縄の自立経済は出来ない。それも通して貰うと云うことになれば結構と思います。
○議長(知花高直君) 暫時休憩いたします。
  (午后三時三分休憩)

  午后三時十分開議
◎議長(知花高直君) 開会いたします。提出議案、並びに議員からの動議に依る議案はこれで済みましたから、本会議はこれで終了して、当局と議員との間に要望すべき事項も多々あると思いますから協議懇談会に移ります。本議会はこれで終了致します。
  午后三時十二分散会

出席者は左記の通り
 議員出席者氏名
  議 長      知花 高直君
  副議長      稲嶺 盛昌君
  議 員      与儀 清秀君
   〃       仲村 栄春君
   〃       石原 昌淳君
   〃       普天間俊夫君
   〃       宮城 久栄君
   〃       平良 幸市君
   〃       玉城 泰一君
   〃       松本 恭典君
   〃       具志頭得助君
   〃       長浜 宗安君
   〃       山川 宗道君
   〃       祖根 宗春君
   〃       山城 興起君
   〃       新里 銀三君
   〃       新城 徳助君
   〃       野原 昌彦君
   〃       崎山 起松君
   〃       仲里 誠吉君
 政府側出席者官職氏名
  知 事      平良 辰雄君
  副知事      山城 篤男君
  総務部長     幸地 新蔵君
  経済部長     呉我 春信君
  財政部長     宮里  勝君
  法務部長     知念 朝功君
  厚生部長     宮城 普吉君
  文教部長     屋良 朝苗君
  工務部長     渡嘉敷真睦君
  知事室事務局長  宮城 寛雄君
  弘報室長     崎間 敏勝君
  総務副部長    稲嶺 成珍君
  財政 〃     久場 政彦君
  工務 〃     西銘 順治君
  経済 〃     知念忠太郎君
  文教 〃     仲宗根政善君
  厚生 〃     大森 泰夫君
  法務 〃     金城 信範君
  警察本部長    仲村 兼信君

一九五一年四月十三日
 沖縄群島議会議長
           知花 高直(印)
 八番議員      平良 幸市(印)
 十一番議員     具志頭得助(印)
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