戦後初期会議録

組織名
琉球臨時中央政府立法院
開催日
1951年10月18日 
(昭和26年)
会議名
第1回立法院本会議 1951年10月18日
議事録
第一回立法院本会議会議録
        第五十六日目

 一九五一年十月十八日(木曜日)
 午後二時四十五分開議

議事日程
 一、立法院規則について

○仮議長(松田賀哲君) これから本会議を開きます。
 十月十八日附で城間盛善参議から決議案の発議がありました。議題はお手元に刷物として差上げてあります立法院規則についてであります。事務局長をして朗読致させます。
  (事務局長比嘉良男君「立法院規則」朗読)
○仮議長(松田賀哲君) これは立法案としてでなくて決議案として発議されたものであります。先ず発議者の城間参議に一応提案理由その他の説明をお願い致します。
○城間盛善君 提案者としまして提案理由、それから今までの経緯を先ず初めに申上げまして、それから案のあらましの内容を御説明申上げます。
 先ず経過を御説明致しましてそれによって同時に提案の理由も申上げて行きたいと思います。立法院規則は既に一九五一年五月十六日の会議で議決になったものであります。これを英文に訳して民政府の連絡官に提出致しておきましたが、連絡官のセイファン博士がこれを研究された結果、この規則の中には法によって定むべきものが含まれている。それでこの規則は院の議事又は運営そういった規則だけに止めて法的性質を有するものは別に立法した方がよかろう。その意味からこれを除いて純粋の規則だけに止めた方がいい、こういう風な御意見を添えてこちらに廻って来た訳であります。それで別に却下されたというのと違いまして、ただそういう風な勧告を受けた訳であります。それでこれをどういう風な手続で連絡官の言われるような趣旨に従ってやって行くかということにつきまして、二、三の方法を考えた訳であります。--この時分はちょうど私がアメリカから帰りまして間もなくのことで行政法務委員長になったその近辺のことでありましたが--七月十四日の全員協議会にお諮り致しまして結局前に決議した立法院規則の改正で行こう。こういうことに全員の意見が一致した訳であります。そしてその研究を行政法務委員会に附託することになりました。それからこの改正案の立案になった訳であります。これを立案するに当りましては調査室の調査員にさしたのでありますが、委員長として私がこういうことをやりたいといって第一にセイファン博士から指摘されている法に俟つべきものは省略する。第二にそれに追加すべき条項があれば追加する。そして追加すべきものでも大きなものであれば、これは別に規則を制定して行くようにする。例えば傍聴人に対する規定とか或は公聴会の規定、こういったものは直接これに加えずに別個の規定を作る。こういう方針で原案の基礎となるべき案を起草したのであります。つまり原則と致しましては、前に決議した立法院規則を改正して行こうということにありますので出来る限り既に議決されたものを基礎として原形に大きな変化を来さないようにということで一部最小限度の改正に止めようということで改正案の立案に当らせたのであります。でありますから先程申上げました通り規定が非常に細かくなる、或は相当の条項を加えなければいかんといったようなものは別個に作る、こういうことにした訳であります。そして審議すべき原案が出来ましたので、七月十四日、全員協議会で決めてから十余日を過ぎた時分でありますが、そこで行政法務委員会を開きまして、今迄申上げました、私の考えました原則を承認して貰って、それによって出来た改正案の研究にかかりその後委員会としては前後五回に亘って改正原案の研究審査を続けたのであります。相当な修正を加えたり書直したりして最後の五回目の委員会でやっと原案が纏まったのであります。ついで九月十七日にも全員協議会の開催をお願いしまして、そこで委員会の改正案を審議したのであります。長時間に亘って詳細な審議をしていただいた結果幾分の修正が出ました。こうして確定したものを翻訳して再び連絡官に提出して意見を求めたのであります。連絡官がそれを研究されまして昨日の連絡会議で、これはこのまま議決して規則として施行してよろしいという確言を得たのであります。これは普通のSOPの段階を経ずにこのままでよろしい、民政官のOKの文書なしにすぐ決議して実施していいということが昨日の連絡会議ではっきりしたので今日ここに発議した訳であります。これは最初に決議した後連絡官から修正してくれと言われてから相当の日時を経過致したのであります。これだけの日時を要した理由を附け加えたいと思いますが、この期間中に休会がございました。第二にこの期間中に立法院としては立法院議員の公選計画を樹立するという重大な任務がありまして、その間立法院規則に手を入れる機会がなかった訳であります。そしてその合間合間に九月十七日--まだ立法院議員公選計画案の審議中でありましたが--に全員協議会で纏めましたので、連絡官に提出致しましたが、連絡官も我々の提出した公選計画案の研究で相当時間がかかって、そこで相当の時間をくいまして、やっと昨日決った次第でありまして、彼此の事情で相当遅くなっております。以上が今までの経過でありますが、セイファン博士の指摘した個所その他この改正案で元々規則と変ったところのおよその説明を申上げ、同時に提案の理由になると思いますので附加えたいと思います。前の議決した規則の第二章立法院の会期及び休会この章はこれは指令によりまして立法院の会期は法律を以て定めるということがあるので別に立法してくれというセイファン博士の勧めがありましたので第二章は全部省略致しました。従って立法院の会期に関しては別に定めなければいけないということになります。要するに先程申上げた通り立法院規則としては院の議事運営に関する規定のみに止める。法律的な性質を有するものは全部立法もしくはその他の方法に委ねるという趣旨に従って第二章を省略したのであります。元の第三章ここでは第二章になりますが、役員及び経費の章がありますが、役員はそのままで一部ちょっと変っておりますが、経費の分だけを省略致しました。経費は行政部を拘束するというのでこれも矢張り立法によるべきものだという連絡官の意見であります。
 それから第三章の中に事務局の職員の任命に関する規定があったがこれは事務局設置法、任用法そういった法によるもので、既にそういった法も出来ているので省略致しました。元の第四章委員及び委員会、改正案では第三章になっておりますが、ここは大体に於てそのままでありますが、ただ一つ元の第二十七条に公聴会に関する規定を省略致しました。その理由は公聴会を開き得るということは指令で明かになっておりますが、第二十七条はただ公聴会の開催が出来るという規定でありますので、実際にこれを実施する場合にはもっと詳しい規定を作らなければいけない。ここに追加すると長くなりますので、先程申上げましたように最小限度の修正という意味でここでは省略し公聴会に関しては改めて公聴会規程というものを立案して又発議したいと考えております。こう考えました理由は公聴会を開くに当りましてはアメリカ辺りでは非常に簡単にやっておりますが、沖縄ではそれに馴れておりませんし、日本の国会で公聴会の規程がありますが相当に詳しい規定を設けて運営しているのであります。ここでは日本の国会でやっているような規程を設けてやった方が公聴会の運営上適正な運営が出来るのじゃないかとこう考えまして日本の国会の公聴会規程を参考にして改めて公聴会規程を作って発議致したいと思っております。大体調査室では原案をまとめてあります。そういう訳で公聴会規程の一ヶ条だけはこの改正案から省略致しました。
 次の第五章会議(改正案第四章)これも大体そのままでありますが、ただ読会という規定が指令にありますので一読会、二読会、三読会これに関する規定を追加しました。
 次の第六章質問の項でありますが、これはセイファン博士の意見によりまして三権分立の建前から主席への質問ということは穏当でないから削ってくれという指示がございました。若し立法院として主席の話を聞きたいという場合には院議によって主席を招待する。こういう方法を取る。その招待した場合に主席が応ずるか応じないかは主席の任意である、三権分立の建前からいえばこの程度しか出来ないということで第六章は全部削除してあります。
 次の第七章(改正案第五章)請願についてでありますが、この請願に関する規定が非常に細か過ぎる。こういう細かな規定を作っておくと立法院が自ら請願を取扱う場合に自縄自縛に陥って立法活動に支障を来すような虞れがありはせんかという懸念がある。請願に関しても出来るだけこれを少くして立法に関する請願という風に制限しその取扱方如何によって或はそのままに済ましたり、採上げるべきものだけを採上げて行くという風に弾力性を持たせた簡単なものに変えたのであります。
 改正の要点に加えまして発議理由も同時に述べたつもりでありますが以上で説明を終りたいと思います。慎重御審議をいただきたいと思います。尚各条項についても幾分変ったところがありますが、これは御審議の最中でも御説明申上げたいと思います。
○仮議長(松田賀哲君) これはどうしますか。決議案だから三読会をやらんで…。
○城間盛善君 読会は要らんと思いますが、立法院運営に関する規定でありますので一般的な御質疑を願いまして後で逐条審議までは行って…。
○大濱國浩君 旧規則の第八章は削除になったのですか。
○城間盛善君 これは第六章証人及び証言のところに出ております。尤も書き換えてあります。御参考になると思いますので改正案の条項と元の規則の条項とを引合せてみたいと思います。第一条そのまま、第二条(元の八条)、第三条(九、十条)、第四条(十一条)、第五条(十二条)、第六条(十四条)、第七条(十六条)、第八条(十八条)、第九条(十九条)、第十条(二十条)、第十一条(追加)、第十二条(二十一条)、第十三条(二十三条)、第十四条(二十二条)、第十五条(追加)、第十六条(二十四条)、第十七条(二十五条)、第十八条(追加)、第十九条(二十八条)、第二十条(追加)、第二十一条(三十条)、第二十二条(追加)、第二十三、第二十四、第二十五条(追加)、第二十六条(三十条)、第二十七条(三十二条)、第二十八条(三十四条)、第二十九条(三十五条)、第三十条(三十七条)、第五章請願(書換)、第六章(書換)。
○仮議長(松田賀哲君)  一般質問は外にございませんか。
○冨名腰尚武君 立法院規則の旧規則の第十三条の議長の選挙というのがなくなって改正案第五条仮議長の選挙に一括されておりますが、これは七月十四日に行われた全員協議会での会議録を読んで大体経緯は諒承したのでありますが、旧規則でこういう風に決めた訳は、アメリカ的な行き方として大統領、副大統領若くは知事、副知事制を設けているのはその任期中に不幸があった場合に再選挙を行わない、副大統領というものは大統領が死んで副大統領が大統領になった場合に更に副大統領の選挙をしないという建前があるので、行政主席が死んだり若くは仕事が出来ないような情況になった場合にこれは当然いなくなるという観念で所謂仮議長でなしにその後の任期をひきつづきやって行く議長が必要ではないかという意味でこういう議長が出来たのではないかと思いますが、軍に対して行政副主席が欠けた場合には、行政副主席は再任命するかという質問をなされたことがありますか。
○城間盛善君 軍に質問をしたことはありません。
○冨名腰尚武君 会議録を読みますと任命されるということを前提として御審議になっておりますが、その点について今少しく念を押されたらどうかという感じがしますが、そうなれば副主席制度をとった理由が分らない。欠けたらいつでも任命出来るならばそういうことをする必要はない。アメリカの場合は再選挙をしないというのが根本の理由になっていると思います。こちらの場合は任命するというかも知れないけれどもそこのところは、そうすると副主席制度を設けたのは意味がないと思うし、その点はセイファン博士に連絡をとった方がいいんじゃないかという気がするのですが。
○城間盛善君 只今の点について御説明申上げたいと思います。これは委員会でも相当問題になりまして結局全員協議会で纏まった問題でありますが、アメリカの制度に倣って主席副主席を任命してあるという訳で、これはアメリカと同じように考えれば主席が欠ければ副主席が主席になる、そこに議長がなくなるのでその議長はアメリカでは選挙してやらしているそういうことを考えれば、任命であるということともう一つは指令第五号でしたかあれに議長の選挙ということを規定してありますが、その項の中に副主席が欠けた時という文句がはっきりあります。議長の任務を遂行出来ないような場合にはその期間だけ議長を選挙するという言葉があったのでそういう風に決めた訳ですが、然し軍の意向も一応聴くということも必要だとは思いますね。
○冨名腰尚武君 請願の項ですが、請願はセイファン博士の勧告によると細か過ぎるから大雑把にした方がいいという意見でこういう風に改められた訳ですが、私は旧規則の第七章第四十一条第二項、これがむしろ立法趣旨としては一番の狙いであって民から請願された住民の意思を保障する。住民を保護するというところに請願の章を設けた意図があると思います。従って参議三人以上の要求に対して、これを握り潰すことが出来ないようにするところに狙いがあると思うので、こう簡単にするといくらでも握り潰しが出来る。民意を完全に酌み入れなくてもいいような形にむしろ改悪されていると思いますが、これは思い過ごしかも知れませんが、セイファン博士の勧告を全体的に見た場合に立法院が出来る限り行政主席を拘束しないようにといったような意図がある。それから、こういった風に住民側からの住民の問題についても余りうるさくならないようにという意図がある。これはひがんで考えればいくらでもひがんで考えられるので、はっきりいうこともどうかと思うのですが、元々この規則は日本の国会法に準じてやっているので国会法に於て少くとも住民の権利を擁護するために特に取上げられたらしく思われる点はせめて規則に盛って行くというのが旧規則の狙いであったという風に記憶しております。そういったような狙いが全部消されている。例えば主席に対する質問権というのはこれは住民の立法機関としての権利擁護のために質問の章があるのであって、これも全部削除ということになると三権分立といいながら国会が行政に対して何ら住民の意思を代表して特定の意思を主席に対して申出るといったことが全部出来ないような形になると思います。その点が私としては、今度の改正案にいささか不安を抱かせる点があるのであります。勿論法令化すべきものが多々あるという点は正に然りで、そもそもこの旧規則を決める時に最初立法院法と出ようとしたのか。立法院の内部規定を法にするということはおかしいというので途中から規程としたということもあったのでその面での規制は兎も角、質問の項なんかで主席を拘束するからいけないとか、請願の項で細かいから立法院が自縄自縛に陥るのじゃないかといった考え方をして住民からの請願を阻むといった風にしてしまうという風な面はどういう風に考えて行ったらいいかもう少し論議して見た方がいいと思います。もっとも日本の国会法はイギリス風の議院内閣、立法部が行政部よりも上位の形にある。従って国会は内閣を監視するという解釈もとれる訳で、アメリカ式にはっきりした三権分立になった場合に主席を拘束することはいけないということに解釈が一致するならばこれはこれでもいいと思います。請願の場合もこの条文を非常に善意に実施した場合には、私の危惧はないだろうと思うのですが、ただ適当な委員会に於て処理せしめるといった場合にこれを悪意を以って処理することでもあった場合には少しく住民にとっては工合が悪いのじゃないか。殊に今後どういう形になるかは分りませんけれども、我々の上に臨むものと住民の問題がしばしば起って来る時に出来るだけ住民の請願というものは立法院で阻却されないような形をとっておいた方が望ましいとこういう風に私としては希望するものであります。
○大濱國浩君 旧規程の第四十条は請願の制限はありませんが、改正案の方は立法請願にして制限してあります。
○冨名腰尚武君 立法事項という風に制限することはいいと思います。はっきりアメリカ法に則ってあくまでも三権分立を固持して行くというならば…。
○大濱國浩君 第四十条は、改正案の第三十一条に対しては御異見ははございませんですか。問題はその処理方法ですね。
○仮議長(松田賀哲君) これは決議案で三読会をやらんことにしましたから御意見なり動議なり直ちにおっしゃっても構わないと思いますが、一応質問をしてやることに致しませうか。
○冨名腰尚武君 第十条の常任委員会のことですが、立法案、決議案、請願、陳情などを審査する、とこうなっているが、委員会自体としては立案が出来ないのですか。立案は矢張り参議がやるのですか。
○城間盛善君 委員会活動は本会議の決議によって委託されたものという風に限定して考えている訳ですが、実際に発議する場合には参議が発議するということになるのです。
○冨名腰尚武君 発議したものに対して委員会が修正案を作成する…。
○城間盛善君 委員会の修正案は後に出ています。第二十六条委員会の修正の動議というのがあります。
○與儀達敏君 これは立法院の基本になる法規でありますから明日逐条審議に移ったらどうですか。一応は目を通して慎重に研究したらどうですか。
○田畑守雄君 疑義の点があればそこだけを残して明日から逐条審議に入った方がいいと思いますね。そしてその間に特に疑義の点があってセイファン博士に連絡しなければならない個所に城間委員長にお願いして連絡して貰うことにした方がいいと思います。
○與儀達敏君 新しい議会が出来た場合にこれによって運営しなければならないのですから、こちらとしてもそのつもりで、かくあるべきものということであれば、修正をして然る後にセイファン博士に連絡をするようにした方がよいと思う。
○仮議長(松田賀哲君) どう致しますか。
○冨名腰尚武君 議事の整理上その方がいいと思います。一つの項目を審議する際に他に跨る問題が起って来ると思いますから、矢張り逐条的にやって行った方がいいと思います。
○仮議長(松田賀哲君) いつやりますか。
○田畑守雄君 明日午前十時からどうですか。
  (「賛成」と呼ぶ者あり)
○仮議長(松田賀哲君) 御異議ないようでありますから明日午前十時から本会議を開きます。
 これで終ります。
  (午後三時四十三分散会)

  出席者
   仮議長  松田 賀哲君
   参 議  與儀 達敏君
    〃   城間 盛善君
    〃   冨名腰尚武君
    〃   大濱 國浩君
    〃   吉元 榮光君
    〃   田畑 守雄君
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