戦後初期会議録

組織名
沖縄民政府
開催日
1947年12月03日 
(昭和22年)
会議名
臨時部長会議 1947年12月3日 目録詳細 画像を見る
議事録
臨時部長会議(議題――経済安定委員会の運営に就いて)

  一九四七年十二月三日(水)午前十時
  出 席 島袋官房長、総務――代理仲宗根課長、社会事業――代理稲嶺課長、文教――山城部長、財政――護得久部長、工務――松岡部長、貿易――宮里委員長、商務――糸数部長・山城・国吉、補給――平良部長、水産――玉城部長、工業――安谷屋部長、文化――當山部長、労務――當銘部長、衛生――大宜見部長、通信――平田部長、農務――比嘉部長、開拓――代理・仲原、司法――前門部長、警察――代理大嶺課長。
   尚、同日同時刻、軍政府との連絡会議あり、志喜屋知事、比嘉(秀)(善)両通訳、津嘉山企画課長は同会議に出席す。
 糸数商務部長
  挨拶。
 山城商務部員
  一、六〇〇カロリー基準とする人口換算々出表、農産物の生産量設定書、水産物の生産量設定書、配給及供出計画表、配給早見表の五表(別紙)説明をなす。
  カロリーの範囲内で食生活するように軍の達しであり、元は六段階が現在十一段階に改正され一、六〇〇カロリーを基準とします。生産者は足らない分は補給し、余分は供出せねばならない。換算人口の設定は算出表に依って区長がなし、実人員何名だが換算人口何名と決め、農水産物の生産量設定は夫々農業組合、水産組合で為し、売店は配給早見表と配給及供出計画表の作成をし、供出は主として農務、水産、農業組合、水産組合が指導監督し、配給面は商務が監督、供出不応、不正供出は部落の巡査に報告せられます。
 大宜見衛生部長
  商務の計画表には敬意を表します。要は実行です。
  食生活が安定すれば総ゆる行政が甘く行きます。
 糸数商務部長
  事務的には斯うしてゐると申した丈けで実行面に表れてゐる結果を考へた場合、従来は全部供出は出来なかった。生産者は自分で作ったものを食べ非生産者は配給物資をやってゐる。南風原、大里、豊見城の村長がみえて補給物資を非生産者にやって農家にやらんと困ると来た。農家に於いて供出がなかったから斯ういふこともやったと答へた。
  最近、やっぱり供出もして補給物資も貰った方がよいといふ事になってゐます。問題は如何にすれば実行が出来るかにあります。微力乍らやったが甘くいってゐません。甘く行く方法を御協議願ひ度い。
 大宜見衛生部長
  全供出が出来なかったのでなくやらなかった。沖縄は食糧は決して不足でない。要するに闇を抑へねばならない。統制に強権を発動せねばならぬ。
  米を食ひ満腹してゐるものもあるが配給物資さへ買へない者が居る。これは軍の責任でなく民の責任である。今日は断乎たる実行方法を打ち樹てねばならぬ。食生活なくして行政力なしとまで極言したい。
 山城文教部長
  隘路を指摘して実行が出来ないのは斯ういふ処だと調査して、それに向ったら如何。
 護得久財政部長
  先決問題は実行です。闇が正常化したといってもいい今日闇の防止をして、公定価格にするのは困難だ。困難だがやらぬといふ事は経済生活安定委員会のとる道ではない。水産・農業両組合の強化に依って配給面が整備されるのではないが、集荷を先づ先にやらねばならぬ。供給を全面的にさせるには農・水組合を急速に動員させて米、芋、野菜等を配給面に廻はすよう責任を持って貰ひ度い。
  供出しない者には配給は出来ない。
  最大の力を至してそういふ組合に対して集荷の急速を計って欲しい。
  永続させるには度々斯やうな会合を開いて色々の施策から充分出来るよう考へねばならぬ。取敢へず実行方法の根本義として組合は強力な発動をして貰ひ度い。十一月一日から物価騰貴し食生活に相当な変動を及ぼしてゐる。従来の価格では月一人当三〇円前後だったが今は幾何か。物価の再改訂が必要か。総べての生産が労務によって決定さる。幾何の労働力に依ってこの生産が出来るか最低の労務と賃銀の決定が必要です。労務者の生活といふことを勘案せねばならぬ。勤労所得者が現在のまゝで最低生活が出来るか疑問で、生活費の決定とこの金額を決めねばならぬ。
  工業部の酒の原料は殆んど得られぬ。酒の配給全然ない。沖縄の従来の習慣から労務者にとり酒は絶対必要である。密造盛で米、芋、きび等の食料で作ってゐる。ジャム等の甘味品でも作り、公然の秘密になってゐる。米、芋の価格の動揺する原因である。酒の製造の転換も考へるべきである。
  闇の不労所得相当の金額(数十万円)廿才前後の青年が数万円の財産を所在してゐる。此の収得財産を調査しこれに大きな規制をなし通貨の縮小を考へねばならぬ。此の外に安定委員会の力を強化し、審議に終始せず明朗に、決定した問題はあくまでも運営するようにして欲しい。そして司法、警察の充分なる取締をやって戴き度い。犯罪の防止をやると同時に文教・文化部が精神運動で説いて廻はる様願ひ度い。現状は物を取って来る事を親が喜んでゐる。文化運動の一端として徳義心の養成が願はしい。
  結論としてそれには日数がかゝる。即刻に凡ゆる面を強化し、今の問題を暫定的にも取極めて行き度い。芋八円五〇銭で買へると闇の必要はないと思ふ。改定価格を超過する者はどしどし処罰し之れ以上の値の売買を禁止する。闇防止週間を設定して徹底的に取締るべきである。
 島袋官房長
  レイトン中佐後任にラブリー少佐就任。賃銀、俸給の改正を軍でする。来月その指令が来るといってゐました。
  噂に依れば軍労務は十月一日から、全面的に上ったとか。
 當銘労務部長
  賃銀表はまだ六月一日のものを使ってゐます。
 大宜見衛生部長
  熊本県下の戦後の話ですが、知事が強行に闇取締りをなし生産者をしらみつぶしに調べたとのこと。
  やれば出来ない事はない。
  炭焼きが二〇日働いて知事の俸給以上だとのこと。
  文化運動丈けではどうか。警察の方で徹底的に取締る方がよいと思ふ。
  戦後三年が一番危険、来年こそ沖縄はどうなるか。
 糸数商務部長
  隘路にあることを先づ書き出してみるのが良いのぢゃないかと思ふ。
 護得久財政部長
  水産、農務の組合に動員強化を図る名案はないか。
 比嘉農務部長
  組合は集荷一点張りではない。割当れば必ず出来る。十月には十三万三千斤の芋供出、三三銭でやってゐる。
 玉城水産部長
  集荷の強化は最も重点、多い時に八十何万ポンド出た。統制が一方的でないか。全面的に強化の方法をとらねばならぬ。業者はとっても半ポンドしか食へぬ。一日一ポンドの自家消費は認めねばならぬ。農家は自分で作り食べて残りを供出する。
  凡ゆる生産部面の同時強化が欲しい。われわれは生産の実績によって舟も配給もやってゐます。
 護得久財政部長
  相関々係の物資の全面強化をしなければ集荷が出来ないといはれるのですか。
 玉城水産部長
  取締りの方の協力をやってもらへば出ます。
 比嘉農務部長
  労務賃銀を規制せぬ限り凡ゆるものがうまく行かぬ。労務の闇、飯を摂って三〇円から六〇円、大工賃三〇円から五〇円程度。
  五円六〇銭の労務に来る者がゐない。軍労務は食糧も全部もつべきだが芋を月に三〇万斤出せときてゐる。離農者が続出し荒廃地が多い(一六、〇〇〇ヱーカー)。凡ゆるものの規制、労務の規制、通貨の制限、この三つを考へねば永久にうまく行かぬ。実行出来ねば自由販売がいいと思ふ。
 大宜見衛生部長
  芋を八・五〇円に上げる前に部長会議にかけるべきと思ふ。
 比嘉農務部長
  物の価格について一遍も軍にきかれた事はない。
  ジョルダン農務隊長と、商務の将校二人が私を呼んで一人に一ポンド一日に一一八、〇〇〇ポンドの芋の供出をせよと言はれた。出来ないと答へたら、クレーグの命だが出来ねば農民は皆金網に入らねばならぬと言はれた。土地を取り上げる。農民はそれを苦痛としない。軍作業に行く。農民が闇をするなら肥料を上げると言はれた。然しそれでは闇は抑へない。それでは一斤六十五銭に上げるようにクレーグに相談して来ると言った。
  農商の将校相談して農の将校が云ふには、一ポンド六十五銭、一斤八十五銭に決めたから約三〇万斤出せと、軍政府がある間は続くだらうとのこと。
  然し以前に六週間に五八万斤出せと言はれたが目的達成は出来なかった。兎に角、やってみませうと答へ、芋の供出は私の仕事ぢゃない。経済安定委員会といふものがある。あなたもそのことについては言っていけないといっておいた。
 大宜見衛生部長
  民間では幾らですか。
 比嘉農務部長
  卸四・五〇 小売五・五〇
 糸数商務部長
  所有権は認めてゐない使用権丈けを認めてゐる。
  他の労務に依り農耕するのは昔の地主制度と何等変らない。農家に於いては自分で作ったものを食べ余裕あれば供出を乞ふと言ってゐる。賃銀生活の方よりは有利に行ってゐる。
  水産部長の先程の言に農家は食べて供出するが漁民は必要量の半分しかないと。然し補給物資は海の方には非農家と同じく全部やってゐます。
 比嘉農務部長
  使用権については、知事に依って適当に按分して耕作させるようにとのことである。可働能力者に公平に土地の分配を為し、元の地主が判然するなら之れに耕作させる。定着農家には自給の出来る程度の土地をやり、やがて移動せんとする者には少くやることになってゐる。
  実際はといふと、厳格な市町村長とルーズの市町村長あり、区長にまかせてゐるので元地主に大部分させてゐるところがあります。
 當銘労務部長
  どうしても生活が問題です。昨年の八月までは労務賃銀の闇はなかった。公定相場で物を与へるなら労銀は高くとる必要なし。労務賃銀の決定をしたいと思ふ。農耕地を離れ軍に行くものあり。
 護得久財政部長
  労務賃銀の計算は如何にしたらよいですか。
 比嘉農務部長
  配給の停止は戦前はうまくいった。
 糸数商務部長
  警察部とも密接な連繋の下に配給停止していい。
 平良補給部長
  配給停止を簡単に出来るようにいってゐるが。
 松岡工務部長
  特別布告第二十四号「雇傭と労務」が出てゐる。
  生産よりも労務賃銀の規制が先です。
 山城文教部長
  実行は末端でやるが、こんな熱のある会合を末端でもやってゐますか。
 糸数商務部長
  最末端は売店で村長にまかせて月二回位やってゐます。
 大嶺防犯課長
  方針をしっかり決めて埒からはずれる者を厳重にやるよう。製粉等一日四千円、六千円と収入あり、指令通りやってゐるかどうかの調査がほしい。未設定品を軍が決める迄暫定的にでも知事が値段を決めて、新しい物が出て来た時直ぐ規制出来るようにしたい。経済生活安定委員会の構成要員は殆んど大部分生産者である。もう一応の検討の必要なきか。
 前門司法部長
  生産者は金をためようとしてゐる。供出をしぶる、クズを作る。機構の整備が先づ必要。全住民が、ひっかかる警察での取締は不可能と思ふ。取締規則がはっきりしてゐれば今でも出来る。法律の制定にも罰則は罰則として決める。決める時充分に御研究になり、司法、警察に合議して下さい。
 護得久財政部長
  夫々の部門の規制はあくまでする。それ以上の闇価格に発展して行かないようにし、それにふれる者を司法、警察にお願ひする。
 安谷屋工業部長
  芋、八円五〇銭で労銀五円四〇銭ではしようがない。実際面を見ねばならないと思ふ。
 護得久財政部長
  今、上ったものをこれ以上、上らぬようにし、数ケ月後には全部之を均らしていく。
 當山文化部長
  重要問題につき日を改めて再開してほしい。
 松岡工務部長
  労務賃銀の値上りを軍に内々きいて貰ひ度い。
                 ――終――
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