戦後初期会議録

組織名
宮古群島議会
開催日
1951年08月18日 
(昭和26年)
会議名
第6回宮古群島議会(定例会)[2]
議事録
 一九五一年八月十八日(土曜日)午前十一時四十五分
◎議長(玉城玄教君) 開会します。出席議員は八名、欠席一名であります。
 次に議事日程を御知らせ致します。今度の議会の会期を三日として明日までとなって居ります。今日の日程は陳情書を朗読し、知事会議の様子について知事さんが報告、午後は陳情書に対する各委員会を開き明日は午前十時から開会致します。
  (書記長伊川長壯君農連よりの砂糖消費税全廃に対する陳情書並に食糧危機対策施行についての陳情書の朗読をなす。)
○議長(玉城玄教君) 知事さんから知事会議に於ける報告があります。
◎知事(西原雅一君) 皆様方の質問事項についていろいろと拝見致しますと、全群島と関連した事が多いので、御参考までに六月二十八日の四知事会談に於けるこちらからの要望事項や四群島の中央政府に対する要望事項の概略を申し上げます。
 疑問の焦点となるのは、臨時中央政府を強硬(固カ)なる中央政府に代えることにあって、それについて論議されたが、沖縄は強硬に主張し八重山も賛同しましたが、私としては、誠に皆様方に対し申し訳ないことではありますが、議会を招集して議会の御意見を聞くのがあたり前であると思ってはっきりは申し上げることができませんでした。
 中央集権を基にすべきか、地方分権的にすべきであるのかと云うようなことが考えられるので、民主的立場から、知事一人の意見ではどうにも出来ないし、私は即答しないで、軽々しく時期尚早であると答えたわけです。それに対し、沖縄は中央集権を主張し、大島は宮古と同じような意見があったので、結局は流会という形となったわけです。尚七月一日にルイス准将をお招きしてそのことについて御伺いしますと、沖縄の臨時中央政府は強固な中央政府を樹立する準備期間(機関カ)として成立しているというような御話でした。
 次に私が皆様方に申し上げたいことは、去る六月二十八日に陳情した事項が今度の議会で皆様方の質問に対し、どれだけの効力を発するかということに関係がありますので参考までに御知らせ致します。
 先づ本群島としての要望事項は文教、総務、経済、法務、財政、工務等に分れているが、
 総務部関係では、
 一 中央政府の事務を各群島に於て実施する場合は中央政府の出張所或は支庁を置かずに群島政府知事をして代行せしむる事とし、それに要する費用に対し助成金を交付すること。
 二 管内自治団体、経済団体或は個人等に対する補助や文書に依る照合等についても群島政府を経由してなさること。
 三 中央政府に宮古の人材を多く採用して貰うこと。
 財政部関係
 一 三段階税制即ち中央税、群島税、市町村税を全琉的に早急に確立を図ること。
 二 軍布告、命令に基づく税制も各群島同様に取扱いたい。
 三 地方の財政状況を勘案した財政交付金制度を中央政府で考慮せられたい。
 四 中央税で適当な附加税制度を制定したい。
 五 財政法、財務令は従来みた様、四群島政府の統一した全琉的なものが欲しい。
 経済部関係
 一 中央政府内に経済安定本部的機構を早急に設置して各群島の経済自立計画の推進とそれに要する事業資金融資の円滑を計ること。
 二 移民問題の全琉的解決の機構を設立すること。
 三 農林省、貿易庁の各群島内の支部を全廃して、それ等の機構を各群島知事の管轄下に入れ、その助成と協力のために群島政府に助成金交付の処置を講ずること。
 四 全琉的糖業政策を樹立すること。
 五 農水金庫の設置を促進すること。
 六 セメント、肥料、種苗、農薬等の農業用資材を要求に応ずるように適当の輸入計画の立案と実施を図ること。
 七 物産検査制の全琉的統轄実施。
 八 家畜商免許の全琉的統一を図ること。
 九 乾繭場の強化、復旧。
 十 爆発物使用の取締りの確立。
 十一 漁港の拡充強化。
 十二 生産施設の根拠ある調査。
 十三 輸出産業の積極的助長並保護。
 十四 工業研究所の設置。
 十五 貿易指定港の拡張。
 十六 土地開拓事業も知事の管轄下に。
 十七 米の自由配給は時期尚早に付各群島に米穀管理委員会を設置して配給の方法、量の規制等について権限を与える制度を確立すること。
 十八 一九五〇年十月より一九五一年三月までの農林省の予算が群島政府に移管されたが、俸給のみが支払済でその他は未払であるから、その点早急に精算すること。
 文教部関係では、
 一 註文した教科書の取寄せ並配給を至急にしていただきたい。
 二 ガリオア資金による購入物資の品目価格を早急に通知。
 三 自費留学生の便宜。
 四 研究教員の派遣、国民指導員の派遣。
 五 琉大に水産、工科、商科の増置。
 厚生部関係では、
 一 慈善病院、結核療養所及保健所を中央政府の管轄下に置くこと。
 二 社会事業を中央政府に移管。
 三 予防用薬品の保管、配給管理は中央政府の監督下で。
 四 衛生機関の施設管理等を中央政府でなす。
 法務部関係では、
 一 民政官府より制定された法令の解釈の統一をするために施行規則を設けることを要望する。
 二 民主的日本法令を琉球の法として採択すること。
 工務部関係では、
 電話網の拡充強化を図ること。
 以上は宮古群島としての要望事項だが特に四群島として纏まった意見としては、
 一 外資導入委員会を設置すること。
 二 輸出産業の日琉貿易の改遷。(ママ)
 三 郵便貯金の資金化。
 四 農水金庫の早急な設置。
 五 予備費について。
 六 県有地、建物、その他の財産について、群島財産管理に移管する。
 七 自動車登録については、工務部所管とすること。
 八 農林省の末端機構を廃止して群島政府に移管する。
 九 恩給支払について群島政府よりも促進する。
 十 各群島政府間の相互協力機関の設置。
 十一 税務行政の改革。
 十二 開発委員会を設け八重山を解放する。
◎議長(玉城玄教君) 今日はこれで散会します。
 引き続き宮古旅館で委員会を開きます。(午後零時十五分)

  財政委員会 午後一時
○平良金一君 これから財政委員会を開催致します。
 農連よりの砂糖消費税全廃についての陳情文が出て居りますのでお諮り致します。この問題は農民の死活問題でありますから慎重に御審議下さい。
○福里芳夫君 予算は七〇二、四〇〇円で、糖水(ママ)税三九五、一〇〇円計一、〇九七、五〇〇円となって居ります。
○玉城玄教君 砂糖消費税は、沖縄では六七、六七六丁の予想となって居りますね。そして殆んど島尻郡との事である。
○砂川玄仁君 尚八重山には砂糖消費税はないようです。現在宮古では税金一丁に付八十円でその他樽皮代一五五円となり、包装料が二十円、その他検査料等を加えて三百円となります。それではほんとに農民としてやり切れない、何とかして貰いたい。
○下地敏之君 この砂糖消費税は廃止したがよいと思います。
○福里芳夫君 輸出の面でこの消費税を徴収すれば各方面に影響しますから何とか出来ないものでせうか。
○財政部長(島田文雄君) これを廃止すると急激に財政面に影響を及ぼすと思うがどうでせうか。
○副知事(東風平惠令君) 廃止しなくて財源のある場合は取らないことにして、ない場合は取るようにしたらどうでせうか。
○平良金一君 そういうようなことはしないで、取らないとして、全面的に廃止したがよいでせう。
○玉城玄教君 砂糖消費税をとらないでも煙草税だけは取れるでせう。
○財政部長(島田文雄君) 予算の半分位にでも何とか出来ないものでせうか。
○知事(西原雅一君) 沖縄はどうでせうか。
○玉城玄教君 全然取って居りませんね。
○下地敏之君 全廃に賛成です。
○平良金一君 大部分賛成のようですから、砂糖消費税は取らないことにしませう。
○財政部長(島田文雄君) 全廃ということにしないで税率を改正してもらいたいです。
○知事(西原雅一君) 途中だもんですから、税率を決めるのであれば四十銭位にして下さい。
○下地敏之君 大体今までにどの位徴収してありますか。
○財政部長(島田文雄君) 今は未だ徴収して居りませんが、これから取るつもりであります。
○砂川玄仁君 当局に伺いますがこういう陳情書を委員会に提出する以上、この問題は不採択か採択かということについて事前に打ち合わせ、研究して居られんですか。もう少し信念のある腹でなくてはいけないと思うが。
○嵩原惠典君 結局財政部長としては、これを廃止すれば財源を見つける見通しは全然つかないということですね。
○福嶺紀仁君 取らないことにしたらどうですか。
 (「賛成」の声あり)
○平良金一君 それでは全廃の意見が多いようですから全廃することに致します。どうも有難う御座います。

  経済委員会
○福里芳夫君 引き続き多良間村から提出された食糧危機対策施行について陳情に付委員会を開催致します。具体的にどの位にしてくれというようなことはありませんが、その点御考慮下さって慎重に御審議下さい。
○池城朝清君 それでは多良間村の実情を申し上げます。
 村は長い間の饑饉続きであって、ものはあってもそれを買う金がなく困って居ります。要は資金問題であり、今の金詰りのままでいけば餓死者が出るのでないかと部落会でも心配して居ります。現在のままで自給出来る戸数は今の処三%位であり、後二、三ヶ月をどう過ごすかという現状で早急に沖縄とか宮古、八重山あたりからどんどん苗を取って植えていかなければならないのでないかと思って居ります。そういうわけですから皆様方の御力で購入資金について何とかして貰いたいと思います。
○下地敏之君 結局この二、三ヶ月が大変ですから何とか貸付けをしてくれということでせう。
○知事(西原雅一君) そういうわけでせう。
○池城朝清君 昨年は土木工事があったので非常に助かりましたがね。
○砂川玄仁君 話はよく分って居りますが政府としては実状を調査したことがありますか。
○副知事(東風平惠令君) 経済部の根路銘技官をして実状は調査してあります。
○下地敏之君 何とかしてやらなければいけないでせう。
○福嶺紀仁君 近頃平良市に多良間の人が多く入っているという事からも、多良間村が如何に困っているかが伺われます。
○池城朝清君 もし資金を借入れることができ、その返済について、この四ヶ月後迄に返済出来るかどうかということになりますが、村長さんの御話では今の十二月植え、七、八月植えがとれるからその間を何とかしてもらえさえすればというお話でした。
 もう一つは土木事業、例えば校舎建築修繕等をやって何とか優先的に早く工事でもやってもらいたい意向です。
○嵩原惠典君 経済部長にお尋ね致しますが、集団農場の芋は植付面積と収穫の比較についてはどうなりますか。
○経済部長(眞喜屋惠義君) よく調べてありませんから分りません。
○福嶺紀仁君 五十万の予算があるからそれから半分の二十五万位程度出してあげたらよいでせう。
○知事(西原雅一君) 出すとしてもその運営方法はどうですか。
○下地敏之君 多良間の農業組合が主体となってその組合自体に委せたらよいと思う。
  (「その方がよい」の声あり)
○福里芳夫君 それではこの問題は意見が纏っていますからこれ位にしてこれで終ることに致します。

  工務委員会
○砂川玄仁君 伊良部から道路橋梁、学校等についての熱意謚るる陳情文であります。どうぞ慎重に御審議下さい。これを見ると是非復興費でやってもらいたいと云って居りますが、どうも伊良部の道路は凹凸があり尚その上に狭いので困りますね。
○嵩原惠典君 特に佐良浜の道路(上に上る道路)は実に危険ですね。私はあまり危険なもんですから向うを廻る時は歩行します。駐在があるということは交通安全からしても適当な処置であると思って居ります。
○砂川玄仁君 この問題は委員会として取り上げるのでなくて群島政府の計画によって復興費の予算の範囲内で実施するように一任致したらどうでせう。
  (「それがよい」の声あり)
○砂川玄仁君 これで委員会を閉じます。
  (織物組合長池村恒章君から緊急を要する問題として陳情文を朗読す。)
○知事(西原雅一君) この問題は財政当局で委員を出し組合と当局と連絡をして材料を蒐集し通産省宛に内容を陳情するようにしませう。
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