戦後初期会議録

組織名
沖縄群島議会
開催日
1951年06月19日 
(昭和26年)
会議名
第8回沖縄群島議会(定例会)工務委員会 1951年6月19日
議事録
沖縄群島議会工務委員会議事録

         一九五一、六、一九

第八回沖縄群島議会工務委員会
  一九五一年六月十九日
  於 工務部会議室
  午前十時三十分開会
○委員長(石原昌淳君) 開会致します。出席全員であります。
 本日の議事審査に入る前に本委員会に関係ある事項を報告致します。先般可決になりました陸運条例に対し、軍に於て陸運条例中、群島組織法違反の設定があるとのことで、工務部長、平良委員と共にロスケブ大佐と面会し直接其の真否を確めた処第十一条第六項中の公共の福祉を公共の事業と誤訳せることがフライマス氏の処にある訳文によってわかったのであります。ロスケブ大佐も公共の福祉を公共の事業との誤訳であったからとの弁解で解決致しましたから御報告申し上げておきます。
○委員長(石原昌淳君) 議案第五十五号沖縄群島道路条例制定についてを議題と致します。本案の審査について御諮り致します。本案については十四日の本会議に於ても当局より提案の趣旨の説明がありましたが、更に当局の説明をお願いし、質疑、討論をして決定した方がよいか、それとも休会をして慎重に審査研究をした上本会議に於て決定した方がよいか、御意見を伺います。
○新城徳助君 審議の方法については議会の形式のみにとらわれず休会をして一応逐条的に当局と共に審査、研究をした後、本会議に於て可決した方がよいと思います。
○委員長(石原昌淳君) 新城委員の御意見のように一応休会して、当局と共に逐条審議で研究することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(石原昌淳君) 御異議ないと認めます。依って休会をして研究することに致します。
  午前十時三十五分休会

  午後四時三十分開会
○委員長(石原昌淳君) 開会致します。今迄で永い時間休会中に於て研究討議もしたし、既に当局の説明も尽きておると思いますので説明を省略して質疑に入ります。
○平良幸市君 第一条中に「行政庁」とありますが、先程も軍より法文上の具体化を要望されておりますので此の「行政庁」を具体的に表現する事は出来ないものかと思う。又行政庁と云う具体的説明を願いたい。
 次に第九条各号に於て現在汽車のない停車場は明示されているが現実に運行されているバスの停留場の明示がないのはどう云うわけか。むしろ現実に即する意味から鉄道停車場はなくてもバス停留場があって然可きと思う。
○工務副部長(西銘順治君) 本条に云う行政庁とは群島政府、市町村、軍を一括して行政庁と云うものであるが、更に軍の中では陸軍、空軍等其の行政管轄が違うので此処でこれを具体的に表現する文句を使うことは具合が悪い。第二章によってはっきりする事と思います。
○土木課長(伊佐真人君) 第二番目の質問にお答えします。鉄道停車場を明示してあるのは近い将来に鉄道敷設も予想されるし、又早急実現方を念願するもので入れてあります。バス停留場は各号の枢要の地の中に含まれております。バスは汽車みたように一定の停車場を持たず道路上が停車場でありますので入れてありません。
○新里銀三君 第二条中の但書で「府令で特別の定めをなすことができる」とあるが府令の特別の定めとはどんなものか例を挙げて説明して貰いたい。尚立法と執行は自からその権限に於て判然す可きであると軍は強調しているが、府令で特別の定めをなすことは議会の立法権を執行機関に委かす形になると思うが如何。
○土木課長(伊佐真人君) 本条に云う特別の定めとは例えば舗道の従下水みたようなものを云うのであります。府令で特別の定をなすことは御説の通りでありますが、これに類似する条例はいくらもあると思いますのでこのままにしてはどうかと思います。
○新里銀三君 第三条であります。本条は二項よりなっております。群島組織法や、土地台帳、家屋台帳条例等は項毎に数字の2、3を項冠に附してあります。条例を統一する意味からして本条例も2、3の数字を項頭に附することにしたらどうか。
○土木課長(伊佐真人君) 御意見の通り本条例の各項に2、3の数字を附することに致します。
○仲村栄春君 第六条に私権を行使することはできないと断定してあるが、これは土地使用料等の請求する権利をもないことに解されますので私権を所有権と改めてはどうかと思う。私権と云うことは個人の一切の権利であると解する。従って道路構成のために一切の権利を喪失し、土地使用料等其の他一切の請求も出来ないと云うことになると所有者が困る。若し使用権で目的が達成し得るならば、私権を所有権と改めた方がよいと思う。此れは住民に対する大きな問題である。
○土木課長(伊佐真人君) 本条は道路を構成する敷地に対する私権の行使であって道路が出来上る迄には公共福祉のために本人の承諾若しくは収用法等により既に解決せられているので、出来た道路に対する私権の行使が出来ないと云う意味であります。
○工務副部長(西銘順治君) 私権を所有権とした場合、所有権の行使はできないが万一私権を以て地上にある施設物等を取られた場合はどうするか。むしろ私権として大きく包括した方がよいと思います。日本に於てもこの通りでありまして、本条例に云う私権の行使は今から出来る道路で道路が構成される迄は本人の承諾によるとか又は収用法によるとかで権利移行の解決は出来ておると思います。
○仲村栄春君 成程今から出来る道路に対しては割方解決はつくと思いますが、既に今迄に出来た道路に対して使用料その他土地代の請求ができないと云うことは大きな問題である。副部長は日本も私権であるとのことだが、日本と沖縄とは事情を異にしている。大方の道路は所有権認定前につくられている。
○新里銀三君 第二十九条には政府、市町村の支払の義務が規定されているが、個人の請求する権利がないと云うことは法律違反の条例設定をしたこととして批判は受けはしまいか。又軍は民に対し使用料や土地代を払うとしておるのに何が故に本条例に依って自から取る権利を放棄するのか。
○山城興起君 私権を所有権とした場合、一時に権利の請求をされても困るし、私権としても先程の説のように大きな問題であるので本条がなくても道路条例に支障がなければ第六条は削除することにしては如何ですか。
  (「賛成」と呼ぶ者あり)
○土木課長(伊佐真人君) 当分は削除しても差支えないと思います。
○委員長(石原昌淳君) 尚別に質疑ありませんか。質疑がなければ討論に入ります。御異議ありませんか。
○平良幸市君 本案は休会中に於て慎重に討議研究されましたので、討論を省略し修正意見を申し上げ各位の御賛同を得て表決に附したいと思います。
 今迄で研究討議されました修正の個所を申し上げます。
  第三条第二項の項頭に算用数字の2を附し、以下之に準じ各項毎に2、3の数字を冠すること。
  第四条第二行中「命令」とあるを「府令」に改む。
  第六条は削除する。従って六条以下各条は逐次繰上る。
  第九条中「群島内のものにつき」の次に「議会の承認を経て」を挿入。
  第十条中「路線につき」の次に「議会の承認を経て」を挿入。
  第十四条第一項第一行中「行政区画」を「市町村」と、第二行中「関係行政庁の一」を「関係市町村」と改む。
  第十九条中「管理者たる行政庁は下級行政庁」を「知事は市町村」と修正。
  第二十四条第一項中「道路の占用」の次に「若しくは使用」を加える。
  第二十五条第二行中「使用することを得る」とあるを「使用することができる」と、第三行中「管理者は」を「市町村長が」と改む。
  第二十六条中「管理者」を「知事及び市町村長」と改め、
  第二十八条第一項第二行中「管理者である行政庁の統轄する公共団体」を「群島又は市町村」と、同行中「行政区画」を「市町村」と、第三行第四行中「行政庁」を「市町村長」と、「調わざる」を「調わない」とそれぞれ改める。
  第二十九条中「市町村以下」の「以下」を削除する。
  第三十条中「第二十一条」を「第二十条」に、「第二十三条」を「第二十二条」に、「規定により設くる」を「規定により設ける」に、第三行終りの「得たる」を「得た」にそれぞれ修正。
  第三十一条第一行目より第二行目中「他の工事又は行為のため必要を生じた道路に関する」を「第十八条の規定による」と、第三行中「者をして」を「者に」改む。
  第三十二条中「第二十条」を「第十九条」に、第三行中「管理者が同条下級行政庁の統轄する公共団体」を「知事が市町村」に、
  第三十五条の全文を「第二十一条の規定による工事の費用は特別の事由ある場合他の工事につき費用を負担する者にその全部又は一部を負担せしめ(させカ)るほか道路の管理者が負担しなければならない」と置換る。
  第三十六条第二行中「第二十三条」を「第二十二条」に、第三十九条第二行中「五ケ月」を「三ケ月」に改む。
  第四十四条第二行中「第一号にあつては行政庁において、その他にあつては管理者において」を削除し、「監督官庁」を「知事」に改む。同条第一号、第二号を削除し、第三号より第十号迄で逐次繰上る。同条第二号中「第十八条乃至第二十条」を「第十七条乃至第十九条」に、次に第三号と第四号を置換える(第三号は第四号に、第四号は第三号に)、第三号中「第二十二条」を「第二十一条」に、第四号中「第二十三条」を「第二十二条」に、第五号中「第二十四条」を「第二十三条」に、第六号中「第二十五条」を「第二十四条」に、第七号中「第三十二条乃至第三十六条」を「第三十一条乃至第三十五条」に、「負担すること」を「負担させること」に改める。第八号中「第一項又は第二項」を削除する。
  第四十六条中「五千円以下」の次に「罰金又は」を加え、同条第二号中「承認を得ない」の次に「で」を挿入、第五号中「正当」の次に「の」を挿入し、「第三十九条」を「第三十八条」に、第六号中「第四十一条」を「第四十条」に改む。
  第四十七条中「知事が」とあるを「府令で」と改める。
  其の他は原案通りと致します。
○委員長(石原昌淳君) 只今平良委員からの御意見の通り本案は一部修正の上その他は原案通り可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(石原昌淳君) 御異議ないと認めます。依って本案は可決致します。

○委員長(石原昌淳君) 本日の委員会はこれで終了致します。
  午后五時三十八分閉会
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