戦後初期会議録

組織名
宮古群島議会
開催日
1951年05月19日 
(昭和26年)
会議名
第4回宮古群島議会(定例会)[2]
議事録
 一九五一年五月十九日(土)
 午前十時五十分開議
◎議長(玉城玄教君) これから開会致します。出席議員八名、欠席議員一名(池城朝清君)、早速ですが追加議案第七十四号が出て居りますので配付致します。説明して下さい。
◎副知事(東風平惠令君) それでは追加議案第七十四号を説明致します。嵩原重夫氏の不慮の災難は群島として誠に悲しいことでありますが、先日宮古開発に適している人を選出し中央政府へ履歴書二部を提出するようにとの中央政府より電報がありましたので、議案を提出したわけであります。布告第三号を以て立法院の議員は中央政府の参議、諮詢委員会の中から民政府副長官が任命することになって居りますので選出しましたが、現在これと云う適当な条文がありませんので、前の規定により補助委員であった与儀達敏氏を推薦致したわけです。与儀先生は人物、手腕、力量、学歴から申し上げても最も適当な方だと信じ推薦致した次第です。どうぞ御詮議の上御承認を御願い致します。
○議長(玉城玄教君) 只今の説明によりまして、この問題は緊急を要するものでありますから宜しく御詮議下さい。
◎嵩原惠典君 四月一日琉球仮中央政府の発足にともない、早急に吾々宮古群島の為、人材を送り出すことは急務であります。かかる時にあって大所高所から眺めまして立派な人物でありますので、三番は全幅し本議案に対して賛成致します。
◎議長(玉城玄教君) 三番議員(嵩原惠典君)は本案に賛成のようですがどうですか。
  (全員「賛成」の声あり)
◎議長(玉城玄教君) それでは満場一致で本議案は確定議に致します。引き続いて第一読会を開きます。尚第一読会を開くと同時にやってもらいます。
◎砂川玄仁君 議会に於ける質問、要望事項は民の声であり、政府への協力と激励を鞭撻するもので如何に政治の実践面に重要であるかよくお解りと思いま。その点考慮なさって要望事項五つ、六つ御願い致します。
 先づ第一に前の議会に於て六番議員からもあったと思いますが、宮古の文化向上は電信網の復興であります。郵政庁を激励鞭撻するようになっていると話は聞いて居りますが果してどうなっているか。
 第二は食糧対策問題であります。食糧対策資金としての五十万円は既に前議会で通過しているとなると出すことができるとの事ですが、本当かどうか、若し出すことができれば食糧を購入して貯蔵する方法を考えるべきである。
 第三は肥料問題であります。各議員が何時も話している通り、肥料は農民にとって渇土に雨を欲すると同様最も大切でありますが、果してどうなっているか伺いたい。農民は非常に心配して居り不安をもって居ります。当局としてはどう考えているか、話に依ると沖縄本島にはないと云う事も聞いている。
 第四は五番議員がおっしゃった様に我々が不安を感ずるのは判事の補充問題であります。この問題は早急になさねばならぬ問題でありますが、今日話はどの程度進んでいますかそれも伺いたい。
 第五、次に三月七日の沖縄タイムス紙によるとまだある豚便所云々がありますが、その記事を見ると郷土の事が思い出されます。その当時五〇万円そこそこの経費で作って改良した筈だが、その後はどうなっているか。現在もやっているかどうか、若し不心得者があるとすればどういうふうにしようと考えているのか、又趣旨に副うように貫徹する対処があるかどうか。
 第六は第一回目の議会に二番議員が要望した経済部に畜産、農林、蚕糸を設置する問題に関して、尚肥料問題に不安を抱いている今日有畜農業で自給肥料に俟たねばならぬ時があるかも知れないが、その点どう考えているか。朝鮮問題も悪化している今日、是非とも畜産課、農務課、蚕糸課の設置は必要である。どう考えているのか伺いたい。
 第七、次に航路の延長問題である。沖縄では内地船がどんどん入り、沖縄まで手をのばしているが、宮古には戦前の様には入って来なくなっている。知事はその点についてどう考えているのか。勿論貿易の施設がない為に貿易港にはなって居ないが、なんとかして内地船の航路が出来るようにしてもらいたい。これは一般大衆の声であるから当局の誠実さを披瀝して欲しい。
○番外一番(東風平惠令君) 去る議会で通信網の完備で要望し、又文書でもお願いし、更に郵政庁の平川さんと折衝して予算について懇談をした。尚知事としても中央政府の関係当局とも連絡して万全を期す考えである。次に食糧対策による五〇万円は何時でも出せるかどうか。これについては事が国際的になり事重大でありますので、定期的に来る「旱魃」暴風雨等のため、食糧の切迫する場合に処する資金として、その時に使用する考えである。次に肥料問題であるが、知事として沖縄に行かれてもその輸送には非常に力を尽くして居ります。然し沖縄が順調にとり入れることにより宮古にも来るようになる。それには船舶問題が必要となるのであるが、現在の国際状態に於ては戦力物資が優先的にやるようになっているのでむつかしいが、中央政府の活撥な動きにつき、充分連絡して努力する考えである。次に七番目の航路の延長問題であります。結局宮古の産業が戦前の域に達して居ないので、荷物を積込がなく、又直行して輸入と輸出の関係で延長が認められないが、砂糖の輸出とか水産物の輸送も予想されるので、その点充分と考慮致します。
○知事(西原雅一君) それについて多少つけ加えてお話申し上げたいと思います。何番かは忘れましたが、多分市内の通信網の拡充強化を図るだけでなく、各町村の通信網についても考慮して欲しいとの事がありましたが、現在市内でも電話は不完全で不便を感じて居ります。去年の四月郵政庁が出来まして、むこうとしてもそれに対しては善処して居りますが、第一に市内の通信網も不充分であり、又外の町村についても経済的にしろ、施設的にしろ不便を感じているだらうとの話である。その点については絶えず議員の要望事項に対し希望通りする積りであり、根気強く折衝する考えである。又現に郵便局もないという村もあるので、それを考慮する考えである。次に第二の判事の補充問題でありますが、事は人の問題でありますから出来るだけ学識経験のある者をと思っている。巡回裁判だけでは満足が出来ないし、不満を感じて二、三の人にも聞いて直接面接している状態であります。都合がありましてこちらでは案はありますが、今の所はっきりと申し上げることは出来ません。近く解決するよう努力する積りであります。
○経済部長(眞喜屋惠義君) 九番議員の第五と第六の質問について御答え致します。豚舎改善はその後どうなっているかということは新しい群島政府として取り上げねばならない大きな問題である。改善後更に元に戻っているということを聞いて抜打的に調査をなし、現場において注意を与えると同時に各市町村の委員を上げ警察と協力して元に戻らないようにしている。更に話だけでなく、もっと重大なことである飼料問題であるが、只今飼料難に限(陥カ)っているので懸念している現状です。然し量だけでなく質の問題であり、味を如何につけるかということを畜産係と研究指導所をして充分なる研究をさせている。次は豚舎改善と同時に改良便所についてであるが、現在、その点を考慮してセメントがどれだけ必要かということを市町村に問い合はせてその方に振り向けたいと思って居る。若しそれ等について、不心得者があると罰則に照らして処置する方針である。次に畜産課、農林課の設置問題ですが、御意見は御尤もだと思います。四月一日から農政課を設置してあります。畜産課を設置しないのは、畜産課は有畜農業であり割に面積の広い所で利用しなければならないので、独立ということはむづかしい。八重山みたいな所であれば畜産課を以て独立させることは必要であります。然し宮古ではむづかしいと思う。宮古の畜産は農業に付随して行く農政の一部であるから、独立敷設しないで農政課として設け、研究指導するようになっているから、今後充分に指導が出来ると思う。
◎砂川玄仁君 経済部長に御尋ね致します。現在農政課に畜産係は何名おりますか。
○経済部長(眞喜屋惠義君) 現在二名であります。
◎嵩原惠典君 一九五一年度の宮古群島政府の予算書によると歳入二〇、八四〇、三九〇円で税収入として一六四、〇二一、一〇一(ママ)円となって居り、歳入総額に対する税収入約七三(七八カ)%であり、確実に徴収されるとの事である。税収入が確実に徴収されることは政府の財政政策上から最大なことである。その点について果して郡の財政は健全であるかどうか伺いたい。更に税外収入についてはどう考えているか。
 次に九番議員のお話にもあったが、それに関連して畜産業の問題であるが、現在農民は経済に切迫して居ります。それで農村全体は農水金庫を早急に促進して貰いたいとの希望ですから早急に取計って貰いたい。従ってそれにより経済面の意欲を増すことが出来るのである。その状勢に於てその任にある郡の農業の方向をどうもって行くかは重大である。どうしても有畜農業でなすべきであり、充分に研究して欲しい。豚の問題に例を取り上げて見ると、現在豚が非常に減少して居ります。勿論理由は飼料とか、颱風の被害とか、豚舎改善の不徹底、豚疫等にあると思うが、果して発生前の総数は幾位か、戦後の総数について大体の数をお知らせ下さい。更に政府としては優良品種を輸入することに就いて将来発展を期する考えをもって欲しい。因みに豚を移出した最高期にあった時の輸入(出カ)総額と現段階に於ける輸出総額を御知らせ下さい。
 次は教職員異動問題であるが、去る狩俣校の監査委員会に於ける態度は当然だと思うが、一事実のみならず郡下各学校も如何なる勤怠をしているか知らせてもらいたい。それに次ぐ怠慢振りはどの程度であるか、大体勤怠表の報告したものによると。逃亡者が二十五名、未収容者が十二名と報告されて居ります。
 癩の予防は先づ第一に隔離であります。当局として逃亡者に対して如何なる方法で処置しているか伺いたい。更に結核問題でありますが、軍政府の理解ある同情によって次第によくなって居ります。然し結核とかその他の伝染する病気は治療より予防が大切であり、かからないように予防対策をすることが大切である。日本ではBCGのワクチン予防薬がよいとのことですが、輸入する計画があるか。今にして百年の大計を立てないと我々の子弟は最悪の危惧の念にかられるのであるが、当局としてはどう考えているか、果して当局の施策ありや否や伺いたい。
○財政部長(島田文雄君) 一九五一年度の税収入は確信があるかどうかという質問でありますが、私から御答え致します。本年度の税収入としての予算は一六四、〇二一、一〇一(ママ)円で総予算の七八%となり、この分では健全な税収入と思われます。財政が堅実となるのは、収入の増加によることは明らかで重大な問題であります。次に納税問題でありますが、あくまでも自主的財政確立をなす考えであり、精神運動の展開をなし、納税思想の普及、後援会、懇談会又は納税週間等を設けて普及を図る方針であります。尚強力な納税組合を設置して各市町村とも連絡し、一〇〇%の目的を以て抽象(徴収カ)団体の強化を図りたいと思います。
 次は滞納処分でありますが、租税の強化をなし、新しい布告等に基づき、徴税刑法等を利用して十二分に徴収して行くつもりであります。租税の徴収の根幹はどこまでも、税制の改革をして行く処にあり、税法に弾力性をもたせ、所得税、特別行為税の改革につとめたいと思います。
 次に租税の均衡を保つため、税外収入についても、納税成績等とにらみ合わせ、各部分から十二分に検討して強化を図り、歳入減を考慮して完全収入にして行く考えをもって居ります。以上をもって一層の努力をなし、税収入、税外収入に邁進する考えであります。
○経済部長(眞喜屋惠義君) それでは三番の質問に対し御答え致します。一九四九年度においては一一、一六六頭で、一九五〇年度には六、三二一頭、一九五一年度の一月三十日調査によると四、八四五頭となって居ります。戦前に於ては一二、〇〇〇頭で、現在四月では五、三八四頭となって居ります。この数字によって将来の畜産業に対して農業が有畜農業でなければならないということが分り、畜産を農業に包含すべきであり、当然その線に添うようにするには豚でありまして、大いに優秀な豚を繁殖させて行きたいと思います。政策的には豚の輸出を全く禁止して居ります。馬も屠殺用のみを移出させて居ります。豚の移出頭数は一九四八年度は一、二三〇頭で金額で云えば六、〇一五万円(ママ)で、一九四九年度は一、六八五頭で五五万五千円であります。
○厚生部長(宮國泰誠君) 南静園の患者が逃亡して未だ収容されていないのが居り、現在逃亡者は二十五名、未収容者が十二名であり、実に大きな数であるとの質問で折角南静園を作っても、何にもならないとのお話のようですが、不肖私が就任して逃亡者を出さないように努めて居ります。去年は、私の留守中に患者が二つに分れた大きい「トラブル」が起こり、例年よりも多く出して居りまして誠に遺憾に思います。逃亡者を出さないようにするには施設面に於て娯楽、文化、衛生機関等、生活を楽しむようなこともやって居ります。周囲に柵を囲らすことは大切であるが、軍政府の話によると刑務所見たいになるとの言により止めて居ります。宗教的、道徳的な精神方面とか軍の布告遵守、徹底とかをなし、癩病の伝染する危険性がないように自発的に指導して行く考えである。体の病気は精神的な影響が大きいので、特に勤務している職員は献身的にして、職員と患者とは相対立することはさけ、どこまでも融和を図るように指導して居ります。現在園内は一般社会の通貨と同じように園内通貨を使用させて居ります。又患者間には自治会をこしらえ許可なくして出たものは処罰するような方法をとっている。吾々が逃亡者に対しての処置としましては、直接的対策として家庭を調べて居ります。二十五名という数字、十二名という未収容者の数は宮古には居ないのが多く、大体は池間、佐良浜の密航船から姿をくらまして居ります。それから未収容者の中でも老衰、歩行困難、又は畠の中に小屋を作って収容しているのもある現状にして家の人が取締って居ります。
 次にTBの問題でBCGの予防接種薬についてでありますが、BCGワクチンが大いに効果があることは多くの学者の認めて居り、日本に於ても発病率が半分に減り死亡者が一〇分の一に減っていると云うので大量生産にかかっているが、去年東京に行き厚生省に行って何とか宮古にも飛行機で送ってもらう方法等いろいろやって見たが、価格が高く取れない又製造して一ヶ月立てば使用できないとのことですから、保管等はとてもむつかしいのです。必要量をして三十歳以下の未感染者を見積り実施しようとしたが相当量要るので少なくとも三十歳までに行かなくても、就学前の子供にでもと予算を計上してやりたいと思います。
○文教部長(垣花惠昌君) 郡下の各学校の勤怠はどうなっているか又指導方針はどうかとの質問でありますが、文教部に来まして各学校を視察し、無欠勤、無遅刻を極力注意して居りますが、現在各学校とも怠慢でないと考えて居ります。私自身としても無欠勤無遅刻をモットーとして居ります。誰しも自分の部下を可愛がることはあたりまえでありますが、無断で遅刻したり、欠勤したりすることは取締らねばならないと思って居ります。今後共時間を守って真面目に自分の職務に努力して貰うようにしてあります。
○砂川玄仁君 暫らく休会したらどうですか。
○議長(玉城玄教君) それでは一寸休会致します。
◎議長(玉城玄教君) 開会しまして日程をお諮りします。午後二時から本会議を続行し、明日は合同研究、明後日は本会議に致しますかどうでせうか。
  (「賛成」の声あり)
 午前中はこれで終ります。(午後零時四十五分)
○議長(玉城玄教君) 只今から開会します。(午後二時十五分)午前に引き続き御質問のある方は御願い致します。
◎下地敏之君 議場で質問しようと思って居りましたが問題が少ないのでこちらで御尋ね致します。
 一 増俸問題について、三月の定例会で既に増俸は議決を経て居り、予算も組まれているが、未だ充分決定しない、果してどうなっているのか、その為に不安を感じている人もあり、又ある人々は揉み消したのではないかと云う人もある。一旦議会で議決したものを揉み消しすると云うのは何かの関係でそうなったと思います。果して、増俸するのかどうか、今尚延滞した理由はどこにあるのか。
 二 次は映画館の騒音防止問題であるが、電気発電所の騒音関係で市民が困っている状態ですが、何とかできないものでせうか。騒音防止策として、知事としては市の住宅、商工業地域の指定することが出来、認可することが出来るから建築物法の制定がなければならないと思う。建築物法によると市街地に於ての住宅建築は知事の認可を受けなければならないから、建築物の構造、種類、使用率は一々検査して施工せしめるようにしてもらいたい。そして例えば、映画館なら果してこの地が適当であるかどうかと云うことを五ヶ字だけでも場所の決定をして貰いたい。
 三 次は、経済部の問題である。午前中にも有畜農業を中心として論議が交されているが、酪農の計画がないか、単なる農家の余し物を以て豚を養うより一歩進んですぐは出来なくてもその計画を必要とする。小笠原諸島の如きは、酪農を以て生活をしているし、森永製菓等もやっている。宮古ではそれが出来ないものかどうか、畜産素材のままで出すということは結局、畜産業の前途について危険な所となる。自立経済計画書にも農産加工が表れているが、畜産の加工をどうするのか、それと関連して酪農をやる計画をもっているかどうか、同時に技術的な考えであるがこれは車の両輪のように酪農を伴う上に必要であるが、酪農業に対する技術的なやり方は不幸にして少なく、畜産加工に就いては技術的にもないと思うが果して居るのか居らないのか、居るなら居る、居ないなら居ないとはっきりしてもらいたい。
 四 もう一つは、製糖会社の問題であるが、南部琉球製糖会社の問題は今まで片付いていないがどうしたのか、一体島内資本をあつめる組織さえ出来ないでないか、その話は前からも計画され、協議もされているが、その計画の実際について未だ承ってもいないがどこまでその問題は進んでいるか、何時頃まで出来るという見通しはついているのか、早く準備を進めてやらないと危惧の問題として農村に影響するからガリオア資金の借入でもするようにしてもらったらと思うがその見通しを説明してもらいたい。
 五 それから六月二十三日の山東丸の被害の当時救助の為一四万の金が使われている。その時、米を民政府はとった筈であり、然も警察まで発動されて保良部落民まで捜査して取り上げた筈だが、その真相は分っていない。その米は何袋位であったか、又その処分方法についても伺いたい。聞く所によれば山東丸の乗組員は各旅館に分宿して居り「米を廉価でやるから」と云う話であったというが、その処分方法等について郡民の納得の行くように説明して欲しい。
 六 次は、きりう丸の賃借料であるが、このきりう丸は没収船で、調べによると毎月二万五千円か二万円支払うと云う約束であり、色々な物や援助等の費用を加えて二四万円ばかりを軍政府にお願いして、賃貸料から順々に払ふことになっているというがその真偽はどうか、もう一つはきりう丸を預っている内に那覇で破損をしたが、政府は軍の了解もあって修繕し、その金額約七〇万円をごっそり軍(群島カ)政府の負担ということになり、その内から払うことにしてあるとの事だがそれはとんでもない話だ、すでに議決された条例にもある通り、議会の議決が必要であると思う。財産処分、債務の負担も同じである。七〇万、八〇万の負担が群島政府の負担として知事の一存でやったりするのは違法だと思う。果して七〇万の負債を背負う契約になっているかどうか。又果して七〇万の負担が実際に入っているのかどうか、又その調書があったかなかったか、なければ認定する考えはないか。もう一つはそういう負担を群島政府がするためには、議会の決議をうけないといけないと思う。何も前の責任を現当局は負う必要はないと思うがそれについてどう考えるか。
○副知事(東風平惠令君) 五番の質問に答弁致します。増俸問題が議決を経て遅れているとか揉み消されているとか云う話だが、それは年度変りに農林省の職員が各群島政府に移管になり、農政課が設置になったことや、又裁判の費用は全部群島政府が負担することになっている等の問題、林野庁の機構が変ったこと、あらゆる面から見通しがついていないのでそうなったわけです。時期を見て必ずやる考えであり、又時期が遅れても四月分からやるという知事の考えであります。その点御諒承下さいますよう御願い致します。
 次には町の騒音取締りという問題でありますが、市街地の建築物を指定して知事の認可によってやるということには賛成であります。終戦後において沖縄の実状からするならば、平良市も市に昇格するような根拠のない市になって居ります。その施行については研究を要す問題であるから中央政府とも連絡して全琉的に足並みを揃え、五番の質問に副っていく考えであります。それから製糖工場の問題でありますが、既に事業計画の提案も出来上っているが、問題は日本から関係の重役が見えられてからと云う現状になって居ります。技術の問題ですが、資本と技術は日本からその堪能な方がいらっしゃってから考えたいと思います。オーブルスビーさんの話によりますと、宮古は後廻しになるらしいが、実現可能であるということで、宮古に於けるガリオア資金によって早く実現するつもりであります。次は、きりう丸の問題でありますが、この船は決して軍が群島政府に下さったというわけではありません。群島政府が月二万円で貸すと云う、軍政府の承認を得て契約して作ったわけですが、一九四九年の六月二十日に馬天港に於て遭難をして居ります。それでそれ相当の修理費がかかったわけであります。その船の実用的価値をうけるため、長さを延ばしたいと云うことを軍政府に話すと賛成であり、その考えは良いことであるとの認可を受けました。七二万九千九百円費用を投じてやりました。そしてその費用は群島政府が負担するのでなく、民政官府が負担し、修理、管理に費用がかかった残りは保管しておくようにとの指令があったのです。そして一九四八年十二月から一九五〇年六月まで納付し傭船料単(噸カ)当り月五千五百円と云う額に決定致しました。それから九拾(ママ)六月は使用料を取らないと云うことになって居ります。それでその費用を出してその船をとってくれとの話があったので、その話は終結を待つように話がついて居ります。修理費がそれだけかかっているかどうかと思っていらっしゃるかも解りませんが、それは間違いありません。それから条例に基づいて契約をやり、変えるようにとの話がありましたが、成程、群島組織法によると、群島財産の処分は議決を経てやるべきである。しかし、軍政府から命により契約をやったものは、群島組織法に基づかなくてもよくはないでせうかと考え強いてやりかえなくてもよいと考えます。
○経済部長(眞喜屋惠義君) 酪農の件についての御質問のようですが、群島として酪農を研究する問題に対しては、畜産業の根本的政策から考え、宮古は面積の割に人口が密なのでその余剰面積が少なく、農業は自然条件として有畜農業になると同時に酪農には重点的にやらなくなるのです。酪農が外貨獲得のためにも生活の文化度合を高めるのに必要でありますが、農業実地条件としてはむつかしいので有畜農業で落ち着くのです。尚吾々としては酪農は望むべきものであるが、何故酪農がむつかしいかと云えば品種においても飼育法においてもむつかしい。根本の飼料八〇%、群島外から取らねばならない。又宮古群島内では市場販路がない。若し酪農を群島内で考える時は日本及世界の市場を対象とすべきであるが宮古は外の適地に勝らないので宮古群島としても琉球にしか延ばされず、結局消極的にしかできない。酪農の技術についてであるが、宮古に少ないことはおっしゃる通りであるが、九州で酪農の専門学校卒業生が居りますので、具体的にどの程度に推し進めていくかは時期を見て計画致します。次に畜産加工であるが、是非必要である。然し出来るだけ価値のあるものを出さねばならないと思う。そして宮古に於ける有畜農業を強く折り込んで畜産加工にして出す考えである。四番目の製糖工場問題であるが、副知事の御答えに付随して話を進めて行きたいと思います。製糖会社の計画の内容ですが、機械その他については推定価格では、ガリオア資金を借り入れることが出来ないので、政府が作った一つの概略的な数字を入れて民政官府に報告しましたが、明高君が商務官として民政府の指示により日本に行って調査して居りますから、具体的に機械の値段の(とカ)運営の見通しを調査し、具体化して行くことになって居ります。何れにしても、政府側としては協力して行き、計画する程度にしか出来ないので、民自体の盛り上る力をかりて強化して熱意のあるものにしてやる考えである。次に山東丸の処分の件ですが、私が調査した処に基づいて数字的にお答え致します。
 一九五〇年六月二十六日に米の受入高は二〇三俵でその中濡米が一三八俵です。
 六月二十七日-二十九日(払出高二〇三俵)
 内訳 自由販売-一三八俵(正味四四俵)代金三八、九四〇円
 旅 館-三一俵-三五、四〇四円
 庁 員-二八俵-二七、五〇〇円
 傭車料-  六俵  現品支給七月十五日-八月三十日(受入高一四三俵)
 全部自由販売(佐良浜から取った不良米)
     代金 二六、五三〇円
 石炭 七一六袋二一、四八〇円
 金額総計 一四九、八一四円也
 財政部の支出
  船員一五六名に対し
  旅館賃---一三二、〇〇〇円
  石鹸代---- 三、一二〇円
  救助用副食物代-四、〇〇〇円
  雑品代-----一、二〇〇円
  傭車料-----三、四五〇円
 財政部に残っている。
  その他-------五〇〇円
 計 一四四、二七〇円 差引額五、五四四円
◎砂川玄仁君 只今五番議員から質問があったが、きりう丸、山東丸の米の問題は余り知らない人が一番疑惑をもっていると思います。例へばきりう丸の百七十万円余の傭船料が色々のものに支払っているのでないかとか、又は負債をもって居るのでないかということが一つと、もう一つは自分勝手に大きくしたのではないかというような疑いをもって居ると思うが今の答弁によって初めて解りました。又米の山東丸の問題についてもそれを売って選挙費用に使ったのではないかとも思われて居ります。当局としては今の答弁によりはっきりしましたが、若し政府が疑惑を持たれると破滅の基となるから世の中に新聞なり公報なりをもって、又は其の他の方法で熟知すべきであると思うが意志があるのかどうか。
○副知事(東風平惠令君) 今のきりう丸、山東丸の問題について、五番や九番からの質問等がありましたが、吾々は疑惑の眼で一般大衆が見ているとすれば、実際について公報その他の方法で知らしめる考えである。
○砂川玄仁君 政治は知らしむべしです。
◎嵩原惠典君 只今漁期に入っているが、良成績でないというが例年に比較して水温が低く餌の不足によりそうなっているらしく、特に餌は爆発物の使用によるものが大きいと聞いている。当局としてはその取締についてどう考えているか。或は爆発物を使用した検挙数はどの位あるか伺いたい。監査委員の話によると慈善病院の会計記録が不正確と云うが、その処置について御伺い致します。
○宮澤薫(署僚) 三番から爆発物の処置の質問がありますが、昨年の十一月、今年の二月に五五フィート、二二フィート、二五フィート、三隻を以て保安にあたって居りました。そして一週間三回、水連とも連絡して五五フィートでは来間、大神等の近海を警戒して居ります。二二フィートは現在修理中であります。一月から三月までの検挙数は三件だと思って居ります。最近は魚のその検出方法を改めまして、取って来た魚の検視について研究して居ります。二二フィートをば検出警ら艇として池間に廻し、充分警戒致したい積りです。
○厚生部長(宮國泰誠君) 二、三慈善病院の会計が不正確であるとの二、三の監査委員からの報告らしいが、それは多分、分院のことでないかと思われます。それで調査によると、上野、西城、福嶺が悪いようですから、厚生部としては各村の会計の事務官補をよんで、会計の取扱いを聞き将来こうあってはいかんと会計簿の取扱いについて指導して居ります。そして本院の事務長と連絡し、本院と同じような方法でとるよう注意して居ります。従来も注意を与えて居りますが今後も充分監督して行く積りです。
◎砂川玄仁君 第一回の定例会で一般質問はつきたと思いますが、本日はこれで第一読会は終了しまして明日から合同研究に移りたいと思います。動議を提出します。
 (「賛成」の声あり)
◎議長(玉城玄教君) 明日は午前十時から合同研究を致します。それでは之で散会します。
 (午後三時二十五分)
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