戦後初期会議録

組織名
沖縄群島議会
開催日
1950年12月14日 
(昭和25年)
会議名
第2回沖縄群島議会(定例会) 1950年12月14日
議事録
第二回沖縄群島議会会議録(定例会第一号)

一九五〇年十二月十四日(木曜日)
◎議長(知花高直君) 第二回沖縄群島議会定例会は本日を以て招集されました。よって知事から議長宛に文書が参っておりますので、書記長をして朗読いたさせます。
  (書記長「新垣良正君」沖総第一〇七号朗読)

沖総第一〇七号
 一九五〇年十二月十四日
   沖縄群島知事 平良 辰雄
沖縄群島議会議長 知花高直殿
  群島議会定例会提出議案について
 一九五〇年第二回沖縄群島議会(第一回定例会)に於て議会の議決を得たく別紙の通り議案を送付致します。
 議案第三号 沖縄群島公安委員選任同意について
 議案第四号 臨時琉球諮詢委員会委員任命賛同について
 議案第五号 沖縄群島警察本部長任用条例について
 議案第六号 一九五一年度沖縄群島歳入歳出追加更正予算について
 議案第七号 予算外支出をするため一時借入をすることについて
 議案第八号 特別商品税条例について
 議案第九号 沖縄群島副会計長及び副出納長定数条例について
 議案第十号 沖縄群島政府職員定数条例について
 議案第十一号 沖縄群島に於ける治安裁判所の数、所在地及び管轄区域に関する条例について
 議案第十四号 沖縄群島監査委員会事務室設置条例について
 諮問案第一号 鳥島の帰属及び名称について

○議長(知花高直君) 今期議会に提出の議案と諮問案を書記をして配付致させます。
  (書記議案配付)

◎議長(知花高直君) それでは本日の議事日程を報告致します。
  議事日程 第三号
 第一 今期議会の会期を定めることについて
 第二 今期議会の会議録署名人の選挙
 第三 沖縄群島知事の政務報告
 第四 臨時琉球諮詢委員会委員任命賛同について
 第五 沖縄群島警察本部長任用条例について
 第六 沖縄群島副会計長及び副出納長定数条例について
 第七 沖縄群島政府職員定数条例について
 第八 沖縄群島に於ける治安裁判所の数、所在地及び管轄区域に関する条例について
 第九 沖縄群島議会事務室設置条例について
 第十 沖縄群島議会委員会設置条例について
 第十一 沖縄群島議会常任委員会委員選挙について
 第十二 沖縄群島監査委員会事務室設置条例について
 第十三 鳥島の帰属及び名称について
 第十四 一九五一年度沖縄群島歳入歳出追加更正予算について

○本日の会議に付した事件
 日程第一 今期議会の会期を定めることについて
 日程第二 今期議会の会議録署名人の選挙
 日程第三 沖縄群島知事の政務報告
 日程第四 臨時琉球諮詢委員会委員任命賛同について
  (知事提出議案第四号)
 日程第五 沖縄群島警察本部長任用条例について
  (知事提出議案第五号)
 日程第六 沖縄群島副会計長及び副出納長定数条例について
  (知事提出議案第九号)
 日程第七 沖縄群島政府職員定数条例について
  (知事提出議案第十号)
 日程第八 沖縄群島に於ける治安裁判所の数、所在地及び管轄区域に関する条例について
  (知事提出議案第十一号)
 日程第九 沖縄群島議会事務室設置条例について
  (議会議長提出議案第十二号)
 日程第十 沖縄群島議会委員会設置条例について
  (議会議長提出議案第十三号)
 日程第十一 沖縄群島議会常任委員会委員選挙(についてカ)
 日程第十二 沖縄群島監査委員会事務室設置条例について
  (知事提出議案第十四号)
 日程第十三 鳥島の帰属及び名称について
  (知事提出諮問第一号)
 日程第十四 一九五一年度沖縄群島歳入歳出追加更正予算について
  (知事提出議案第六号)

  午前十時二十五分開議
◎議長(知花高直君) 開会致します。出席議員十八名、欠席議員二名であります。
 日程第一の今期議会の会期を定めたいと思いまするが如何致しますか。
○平良幸市君 今期議会に出されました議案は重要な追加更正予算の案も含まれているものであります。相当研究を要するものと思います。
 それで明日研究して明後日ということになりますと、明後日が土曜日になりますので結局金曜日と土曜日、明日明後日を休み十八日再開して十九日迄を会期に定めたいと思います。結局六日間を会期と定めたいと思っております。
○議長(知花高直君) 只今八番議員からの動議に御異議ありませんか。
  (「賛成」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めまして、今期議会の会期を六日間に決定致します。

◎議長(知花高直君) 日程第二の議事録署名人二名を定めたいのですが如何致しますか。
○宮城久栄君 議長で指名していただきたいと思います。
○議長(知花高直君) 七番議員(宮城久栄君)の動議に御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議なしと認めます。よって議長は八番議員(平良幸市君)と十一番議員(具志頭得助君)を指名致します。御二人にお願い致すことに御異議ございませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議なしと認めます。よって御両名にお願い致します。

◎議長(知花高直君) 日程第三沖縄群島知事より政務の報告を致させます。
◎知事(平良辰雄君) 群島政府の政務の概要について御説明を申上げます。
  十一月四日知事に就任致しまして、先ず着手致しましたことは各部首脳部の陣容整備でありました。これは十一月中旬迄に大体発令、その後は組織法に規定されております通りの政府職員の整理縮減につき本庁並に廨庁につきまして各部長と協議の結果これも十一月一杯で断行致しまして、ひとまず組織については完了の形になっております。
  先ず第一に総務部主管事務について御説明申上げます。
  今回の人員の整理状況は現在政府職員本庁三百五十人、廨庁六千三十四人でありまして、整理された人員本庁が百二十八人、廨庁が百五十六人、計二百八十四人となっております。行政整理の後に考慮致しましたのは職員の事務能率の向上を期して残存職員の待遇改善に努力し、今日迄暫定的な給与を致しておりましたのを全職員を通じて布令第七号に基く所定の給与を支給するよう財政面ともにらみ合せて実施を計画致しております。他面整理職員の救済についても退職金を三カ月分支給することに取計ってあります。
  議会の運営につきましては出来るだけ活撥にその機能を発揮することが出来るように計って行きたいと考えております。
  市町村の行政については従来の監督行政の観念を排し市町村の自治の伸長をはかりたいと考えております。なお群島組織法の公布に伴いまして現行市町村制にも幾多改正を要する箇所も認められますのでこれについては慎重検討を加え改正案について軍にも進言したいと思っております。
  今回十二月一日を期して国際連合により国勢調査が実施されましたが、その準備として本年四月頃から市町村に対し講習会の開催、指導員の派遣等万全を期したのであります。調査につきましては調査員の努力により計画通り順調に進められており集計迄にはなお数カ月を要する見込でありますが、部分的結果はその都度発表されると思っております。統計調査は政策樹立の基盤になりますので本年八月に市町村統計事務取扱規程を公布しましたが、これと対応するために府中統計事務取扱規程を制定し統計事務の合理化を図っているのであります。
  次に労務関係について申上げます。労務の実態を検討しますと、終戦後各方面よりの帰郷等により今年六月末現在沖縄の人口五十八万六千四人となっているのでありまして、戦争直前の一九四四年の人口四十九万一千九百十三人に比較しますと八万八千六百九十二人の増加ということになり多数の失業者が出来ることと考えられますが、実際は思ったより少く可働者の二パーセント約四千人程度でありまして、これを更に分析しますとこのうち約二十五パーセントが六十五歳以上の者であり、その他の者も短期の失業者が多いように見受けられます。然らば戦前よりも増加した八万余の人口は如何なる業により生計を維持しているかということになりますが、大体に於て軍作業により賄われていると推察せらるるのであります。現在軍作業が約四万人ですから平均家族数一戸四人と見た場合約十六万人の者が軍作業により生活しているということになるのでありまして、戦前より増加した八万の人口を遙かに上廻っているということになります。これで失業者は案外少ないということでありますが、ここに見逃せないのは潜在失業者即ち仕事はあるが就業しない者、或は不完全就業者等が調査の結果相当あるようであり、これは将来相当研究すべき問題ぢゃないかと思うのであります。現在の労務行政は複雑多岐で特に軍との関係もありますので民としてタッチ出来ない部面もあり今後はその完璧を期するために労務関係法規の制定、軍部隊内の労務管理、職業紹介機関の拡充、労務現業事務の民移管、労務者保護政策の樹立などに努力したいと考えているのであります。
  企業免許事務所の内容につきましては、四十八年十月特別布告第三十三号及び同日付指令第三十九号によって免許制実施の緒についたのでありますが、軍政府が免許制を実施した趣旨は企業の統計資料を取ること、復興の阻害並に公序良俗を乱すような企業に対し或る程度統制を加える点にあるのであります。最近同種の企業が盛に起り一部の人はこれに業数の制限を加えることを要望している向もありますが、適当な企業であれば抑圧することなく免許を与えて行きたいという方針をもっているのであります。
  第二に財政部主管について申上げます。自立財政への推進は群島政府に課せられた重要課題であります。政府としては、住民の負担に応ずる税制を確立し併せて公営事業による適正なる税外収入も目論み自立財政への基礎を固めて行きたいと思っておりますが、これは今後の問題で次年度からその実現を見るように努力したいと考えているのであります。で、ここでは本年度提案予算について概略御説明申上げます。本年度追加更正予算編成の骨子は経費の節減と収入予算見積の是正であります。既定予算に比して提案予算は約四百万円の節減になっております。歳出について申上げますと、節減致しました主なるものは人員整理による人件費の節減で、その額は千四百四十五万余円となっているのでありますが、他面新規事業と致しまして保健所の設置があり物価騰貴による油脂燃料、食糧品、医療器具、薬品等の値上りによりまして歳出面は著しく膨張しましたがため結局は総額に於て四百万円の減になったのであります。歳入について申上げますと、本年度に於て軍作業員の勤労所得税の徴収が期間的にズレたため四カ月の収入予定額が来年度に於て徴収されるためその額約二千七百万円の減収となったのでありますが、他面税外収入特に病院関係収入が一千万円の予定であったが約二倍額に当る一千九百万円を増収することになりまして、結局は歳入総体に於て約四百万円の減収になったのであります。徴税成績は従来余りにも低調であったのでありますが、十月、十一月とその収入状況が好調の一途を辿りつつあり、これは群島組織法の公布により住民の自治に対する責任感が漸次昂揚せられつつあることを示していると思うのでありますが、その後賦課徴収機構の刷新充実を図ると共に徴税方法の改善をはかり財政の堅実を期して行きたいと考えているのであります。
  次に復興費円予算関係について御説明を申上げます。群島政府が樹立せらるる迄は旧民政府管下にあって然も復興費予算から一部的又は全般的な支出を受けていた。又各部課はそれぞれ単独に軍政府当局と交渉しまして予算を受理支弁して一種の特別会計のような形式をとり知事及び財政当局も関知せざるようなことが往々にしてあったのでありますが、今回群島政府管下にあるものは、総ての復興予算からの支出は一括して軍補助金として知事を通じ政府の歳入として一般会計に繰入れ各該部課への支出も他の政府支出と同様一般会計から支出するという会計事務の一元化を軍当局に交渉したところ軍も賛意を表したので、今度の追加更正予算の編成に際し復興費負担の数字が適確に把握され且つそれぞれの軍係官との了解のできた部課のみを一応一般会計の歳入歳出に振込んだのであります。例えば二項にありまする文教部の教員訓練所、英語学校などの五分の四軍負担、学校備品費の三分の二軍負担、婦人課の三分の二軍負担、弘報室の三分の二軍負担、保健所の二分の一軍負担、社会事業課の一般救済三分の二軍負担、厚生園の五分の四軍負担となっており更にまだ数字上の明確を欠く故、軍との折衝了解の上次の議会に追加更正して一般会計に繰入れるべく準備中のものが工務部、これは全額軍負担、成人教育課、これも全額軍負担、財政部の会計課、これは一部軍負担、警察部は半額軍負担、以上の四つであります。
  市町村税法はいまだにその制定を見ないで、市町村財政は不安定のままに放置されている現状で誠に遺憾に存じている次第でありますが、群島組織法の発布を見ましたので近く成案を得まして議会に提案して多年の懸案であります地方税法の確立を期して行きたいと考えております。市町村財政調整問題についてはいろいろ論議されており現在の地方財政の状況よりしまして、地方財政の調整の必要性は痛感せらるるのでありますが、これは中央税及び地方税の制度の確立と関連して考慮して行きたいと考えているのであります。
  第三に経済部主管について申上げます。経済部は今回の群島組織法により新しく出来た部でありまして、従来の商工部と琉球農林省の直営事業でありました林業、調査、食糧の三局以外、即ち農務、水産、耕地、畜産の人件費及び事業費が移管されて農林省の助成の下に運営されることになったのであります。経済部の担当する自立経済計画については、目下各課に於て立案作成を急いでおります。これは経済企画委員会などの組織を持ち民政府並に民側権威者から委員を選び五十二年度より三カ年の計画を樹立致したいと思っており目下準備中であります。農務行政について申上げますと、農業研究指導所でありますが、これは農林省の助成を得て与儀、東恩納、名護の三指導所を設置し、それぞれ群島内の北部、中部、南部の農業啓発と農事の研究に当らせつつあるのであります。又農事の改良及び普及を図るために農事改良普及委員を設置しまして地方農村の農業技術の向上を画策しております。蚕糸業については、沖縄は天恵的に養蚕に適していますのでこれが復興を促進することは沖縄経済自立の上からも適切な事業と思いますので一市十三カ町村に駐在技術員を設置、養蚕農家の経営指導に当らせております。糖業問題につきましては、沖縄復興は糖業を除外しては考えられないと軍も本問題に深い関心を持つようになっておりますので漸次具体的に解決されるかと思っております。現在農林省並に群島政府の考え方としては将来の国際市場競争裏に処するためには分蜜糖の大規模生産計画がなされねばならない。そのためには沖縄南部に七百五十トン、中部に三百五十トン級の工場を建て、他に含蜜糖も造らす計画を致しておるのであります。農業資材は琉球農連が取扱い沖縄群島の分は沖縄農連で取扱っておりますが従来の農業資材については農村の希望せざる物品の入荷があったのでありますが、次回からはその発註は農村の希望数量を基礎としまして致すことになっております。
  次に水産関係について申上げますと、漁船は現在動力漁船数が二百三隻、くり舟が二千二百十一隻で戦前、昭和十五年度の動力漁船数七十八隻に比べて二・六倍の増加、くり舟も同じく昭和十五年の二千百十一隻に比較し当時の数を超えております。戦後特に大型船が増加し三十トン以上の漁船がその三十パーセント以上もあるのであります。漁獲高について見ますと、昭和十五年度の七百三十二万二千三百八十九ポンドに対し一九四九年度の水揚量は千四百三十一万六千五百十七ポンドで倍量の漁獲をあげております。本年は十月末現在で八百四十万ポンドあげておりますが、戦後の人口増加と輸入食糧品不足でなお一般民衆に充分な水揚量ではないのでありますが、今後は鮮魚の増産と水産物の加工などによって輸入食糧品の輸入を逓減するよう努力しなければならないと思っております。水産物加工施設につきましては、一九五〇年ガリオア資金によりまして本部、渡嘉敷、座間味、渡名喜の四カ所に共同加工場が設置され利用されつつあります。これは主としてかつを節製造に利用されていますが、今後は製油、缶詰、魚粉等の加工施設も考慮さるべきであると思うのであります。漁港については暴風時の避難港として本部港のみが見るべき施設がありますが、糸満、那覇、馬天、各離島など何れも施設が不充分でありますので船溜施設とともに避難港の修築は早急を要するものと考えられるのであります。水産物貿易については海人草、貝殻、かつを節など一九五〇年度で約八十三万六百ポンド価格が三千九百四十六万九千円、五十一年度計画は二百三十二万六千ポンド価格八千五百三十三万二千六百円を見込んでおり、極力計画通りの輸出を致したいと思っております。
  なお水産関係と密接なる製氷施設は本部工場で日産十五トンの製氷があるのみで漁業の生産能率に非常な隘路をなしていたが、最近糸満に会社が出来十五トンの製氷を出し幾分緩和されているのであります。なお現在製氷所の工事中のものが那覇に三十トン、糸満に十五トンありますので来年の氷の需要量は充分あると思っているのであります。然し水産の現状を見ますに沿岸漁業の資源枯渇による水揚量の減少は漁民の収入減となり殊に油脂類の値上りは益々経営難に陥らしめているので今後の対策としまして、魚族の保護育成、魚巣築磯等の施設、爆発物毒物の使用取締の強化、漁区の拡張と遠洋漁業の振興、漁民の技術向上と科学的漁撈法の採用、水産物加工施設の整備、水産者に対する融資と漁業資材輸入の促進、漁民罹災救済の方法、鮮魚水揚場の施設と市場の規正などその計画或は改善に一段の努力を払わなければならないと思っているのであります。
  次に畜産関係について申上げます。現在家畜の頭数は戦前に比較しまして遙かに少いのでありますが、終戦直後に比べますと相当増殖されているのであります。然し大家畜である牛馬などは戦前の数に遙かに達しておらず、今なお前途遼遠であります。よって政府の施策も勢いこの方面に指向されねばなりませんが、馬匹の活動範囲は現在著しく狭められておりますので乳牛と役牛に重点を置き特に乳牛による酪農経営が望ましいのではないかと思っております。戦前沖縄は約五千頭の畜牛を大島から移入してこれを肥育して毎年三千頭を日本に移出していたのでありますが、この事業の今後の是非につきましては日本に於ても戦前の馬産中心主義が畜牛に切替えられつつあり畜牛の価格も漸次下落の傾向にありますので沖縄牛がこれに対抗し得るか相当研究すべき問題であります。ここに前述の通りの酪農経営の絶対性が叫ばれる所以であるのであります。然しこれは一朝にして達成されるものではないので、そのために踏むべき段階としては過去におけるわれわれの役牛飼育繁殖に対する技術を充分に活用しまして大島からの畜牛移入は継続してこれを肥育し島内消費に振り向けるとともに一部は現地米軍にも納入の方途を講じて、役肉牛の利益を図り日本、米国から乳牛を輸入し漸次これを乳牛に転換しようとするものであります。
  次に家畜伝染病についてでありますが、家畜伝染病の農家経済に及ぼす影響は実に大なるものでありまして、例をとって見ると本年一月から六月迄に約三千頭の豚が伝染病の犠牲になりましたが、これを一頭五千円と見て実に一千五百万円の損失になり農家の畜産事業を混乱に陥らしめ養豚熱を低下せしめる結果となったのであります。家畜伝染病の常在地ということは文明国の恥であり是非ともこの汚名は払拭したいと考えているのであります。その対策は暫定的に予防接種を全島洩れなく実施致したいと計画しておりますが、これは予算にも計上されております。なお現在予防液類は全部米国及び日本から輸入されておりますが、将来はぜひ沖縄で生産されなければならないと考えているのであります。
  次は工業方面について申上げます。従来工業企業に関しては資材機械の不備不足、金融面及び輸送面の不円滑が生産上の大きな隘路となっていたため極力これが排除に努めるとともに品質の改良、生産の増加、コストの引下げを目的に生産的基盤の整備に努めて来たのであります。目下実施、実現を期している事業としては瓦、煉瓦製造機械の発註割当についてでありますが、これは五十年度のエロア資金より発註された約四十万ドル分が着荷してその割当につき審議中のところ最近支障なく決定し各業者がそれぞれ軍との買付契約を了し目下施設中であり、木工場機械については各種木工用機械類約七万二千六百ドル分が入荷して割当決定の上、各工場でそれぞれ契約書作成中であります。これによって生産の増強とコストの逓減が期せられると信ずるのであります。又これから計画せんとするものについては輸出品工業の促進、島内ドル獲得工業の育成、或は工業品自給の達成に努めたいと思っているのであります。そのため工業関係として地下資源の調査なども一応取上げる問題と考えているのであります。
  次に商務関係でありますが、まず商業ドル資金獲得のため対外人への販売業並にサービス業の助長育成であります。これが対策は島内品の外人向販売業及びサービス業の許可斡旋、外人向中央市場の設立、指導斡旋などに努めたいと思っております。
  次に商業金融と深い繋りをもち、将来物資の保管確保に貢献する倉庫業の助成、育成をしたい計画であります。なお山野、近海に散在するスクラップの処理についての財政的考慮、度量衡検定制度の確立など商業関係事業も相当重要問題があるのでありまして、これから慎重なる対策を樹てなければならないと思っている次第であります。
  その他に経済部関係で耕地事業が残っておりますが、これは開拓事業に関する実際面の事業を担当すべき農林省農地局にて実施していました沖縄本島四工事地区、即ち石川、越来、大里、辺土(ママ)を継承して施工しており、石川地区工事ダムは本年度で完成の予定であります。
   (新城徳助君出席)
  第四番目に工務部所管について御説明を申上げます。工務の性格は四十八年四月二十三日ライカム軍政本部文書「改訂再組織法」によって従来二重の性格をもっていたのでありまして、即ち一は軍政府工務部の直轄の下に復興費による戦災復旧事業を施行し、二は知事の指揮下にあって行政費による工務行政を担当して来たのでありますが、去る十一月六日沖縄軍政官府通牒によって資材課を除く工務部が一元的に知事の直轄になったのであります。この文書によってそれぞれの事業計画は知事が主導権を握り事業の内容によって一部又は全部を民が負担することになったのでありますが、負担の比率については事業の性質乃至民力の度合によって出来るだけ民に重荷を懸けないように努力して行きたいと考えているのであります。
  次に建築事業関係については建築事業費として割当てられた本年度当初予算は労務費、資材費合せて七千四十二万一千余円で現在迄に認可された計画は棟数百十六、坪数五千二百二十八坪、経費にして二千六百二十九万九千円でありまして、そのうち六十九棟は完成、後は工事施工中であります。
  土木、耕地復旧事業については、事業の第一目標を戦災の復旧に置き、それに特殊事情、例えば新設部落に対する土木又は耕地復旧の基本施設を勘案して予算額及び工種を決定する方針で十一月以降軍指定以外の公道維持費(二十二カ路線)五百八十八万余円、急施を要する公道工事費三カ所二百三十二万八千余円、町村工事費十一カ所三百八十二万五千余円、港湾工事費四カ所百五十七万三千余円計千三百六十万七千余円の事業計画を樹て軍に申請する準備が完了しております。以上四項目は全額復興費から出してもらうよう折衝するつもりであります。
  右の外去るクララ台風による災害公道費、災害町村工事費、軍指定公道維持費約二千九百万円についても計画されておりますが、この方は別途に軍に予算を支出して貰うよう折衝するつもりであります。
  公共施設事業の一つ、電気事業でありますが現在米軍払下の発電機で点灯事業に或は工業用動力としており且つ電機資材の不足と入手難のため正規の電気事業を実施するに至らず技術的見地から見た場合、誠に不完全な状態にあるのであります。更に現在使用中の民間発電機は老朽に達し余すところ後一年位の寿命しかないようでありますので政府としてはこの際強大なる発電所の設置について研究を進めたいと思っているのであります。なお当面の問題としては電機資材、電気器具の購入斡旋について具体的案を樹てる方針であります。
  水道施設につきましては、本秋の那覇市及びその近郊に於ける水飢饉は飲料水不足で生活の脅威を受けたのみならず消火及び衛生面からも或は大きく国際的都市としての立場から見ましても、その施設の整備は急務であると考えますので政府としては都市計画の線に沿って上下水道の施設の復旧を研究したいと思っております。
  次に陸運事業でありますが、日本製の車輛の輸入状況は四九年末初入荷以来現在迄に九百四十九台、今後の輸入についてはガリオア資金を以て車と部分品の購入をすることになり、相当購入申込もありますが、これは申込の内容を充分に検討の上割当てるつもりであります。米軍委託車輛の運行については一九四七年三月軍指令第十一号による陸運規則を適用して来ましたが、委託車輛の返還によりまして本年十一月十七日同法規は廃止になりましたので民間車輛に対する関係法規を目下立案中であります。
  なお官営バス事業についてでありますが、これは住民の輸送難を緩和し併せて税外収入を図る意味からこの事業の経営を研究して見たいと思っているのであります。
  次に海運事業についてでありますが、現在群島政府管下に船籍港を有し運航している船舶は運搬船、漁船合せて千八百三十隻あります。数に於ては戦前に倍加しておりますが小型が多く軍貸下げの舟艇LCM或はLCV、LCCなどは後暫くの寿命しかなくこれなどの代船については急速に解決しなければならないと考えているのでありますが、現在沖縄における造船技術及び設備は百トン級迄造船可能でありますので造船資材さえ入手できれば島内で造船し産業面と海運面を活溌にすることが出来ますので資材購入方法を考えてその実現を図りたいと思っているのであります。又現在米国製エンヂンを使用している木造船が五十七隻もあり燃料節約と附属品の入手難を考慮するときは今後焼玉エンヂンと取換える必要がありますので同エンヂンの入手方法についても努力したいと思っております。
  次に船客及び貨物運賃を規定する四十八年二月軍政府指令第十五号が本年二月に廃止になりまして、その民船運賃は統一を欠いて業者及び一般民衆に不便を与えておりますので近く協定運賃又は暫定運賃を設定しようと思っております。
   (与儀清秀君出席)
  第五に文教関係を申上げます。学校制度の六三三制は既に実施され沖縄の教育制度は一応整備しております。今後はその内容の充実発展に向って邁進しなければなりませんが、その目的とするところは、人間の尊厳性に根ざす人格の完成を期す新教育を普及徹底し、沖縄民主社会を建設する人間を育成するに外ならないのであります。然るに現在教員の資質は戦前に比べて低下して、而も生活難に追われて、一面又校舎その他の設備は不備であり、児童、生徒は戦前に比し一面に於ては秀れた点もありますが、全般的には学力が著しく低下している現状にあります。それ故に教員の質の向上をはかり、校舎その他の設備を充実させることが現在沖縄教育の急務であると考えるのであります。校舎の問題は前述の通り工務に於て計画中でありますので再述しませんが、教育の成果を挙げるには次の諸点にあるだろうと、実施計画をなしつつあるのであります。即ち内部の機構を改革して視学制度を廃し、指導主事制を設け指導面を強化する。これは、あくまでも教師の自主制、自発性を重んじ、指導助言を与える役目であります。次には教員の資質向上のため再教育を実施する、これは只今四ヵ所の教員訓練所に於て初等学校の教官補の再教育をしております。次には教員養成所機関を設置すること、これは目下琉大に教育科が設けられておりますが、純然たる教育機関ではないのであります。次には教育の科学的研究調査をすること、これは沖縄教育の実態を調査し、教育の基礎資料にするのであります。
  次には文教関係で社会教育面がありますが、沖縄の社会を民主化し生活を改善し一般教養を高める上から社会教育は極めて重要でありまして学校教育を興し、推し進める上からも社会教育は軽視できません。よって社会教育課を設け従来の成人教育課に更に婦人課を包括して社会教育を推進することに致しました。社会教育課は図書館、博物館、成人学校、洋裁学校などを管轄し成人会、青年会、婦人会を指導し又巡回映画を通じて一般民衆の社会指導に当っているのであります。
  更に職業教育、移民教育についても重視しなければなりませんが、特に移民は沖縄にとって大きな関心事でありますので青少年の教育にも移民に関する教育を織込まねばなりません。教育資料を集めて編纂計画中であります。なお文教関係の基本法についてはこれを確立し沖縄教育の目標を明示するとともに各種学校の法令施行規則を制定し漸次その運営に万全を期していきたいと計画中であります。
  次には厚生部関係であります。従来の公衆衛生部に新たに社会事業課を編入しております。部の事業を大別して治療医学、予防医学、社会事業の三方面に分けることが出来ます。治療医学方面では、まず一般疾病治療であります。これが施設としては綜合病院三、地区病院五、診療所八十九を以てこれに当っておりますが、産婆については個人の自由企業を許しているのであります。二に特殊疾病治療であります。これが施設は癩療養所、結核病院、精神病院がありまして費用は全額軍負担になっています。三は薬品配給機構であります。全琉住民用薬品は薬品課に於て一括受領して各群島に割当て配給しておりますが、薬価は現在一ドル対二十四円の割で軍に支払っておりますが、五一年度の一月からは一ドル対百二十円になる予定でありまして、これについては極力現状に止めるべく軍に折衝中であります。予防医学方面について申上げますと、環境衛生としては全島に十衛生地区を置き、各衛生課長を配し市町村衛生の指導に当らせております。食品衛生としては全島に十九人の獣医を配置し、それぞれ屠場や肉市場などの監督検査に従事させているのであります。その他、将来予防医学の中心になります保健所につきましては現在那覇、越来、名護に建築進捗中で来春一月は開設の予定になっております。
  社会事業方面については、事業施設と致しまして、沖縄厚生園が主要で、近い将来に於て沖縄盲学校が開設の運びになっております。社会福祉と致しましては、ララ学校給食と一般ミルク給食を実施しています。
  なお不具者については義手義足、保促(ママ)事業を軍民ともに計画中であります。一般扶助については自活不能者に対し食糧並に給与品或は現金扶助を行い、罹災者についてはその都度現品補給の扶助を行っているのであります。
  第七に法務について申上げます。従来法務部は行政法務部の中に含まれておりましたが、群島組織法の制定に伴い法務部として独立致しました。法務主管事務中今後力を注ぐべきことは、土地所有権認定に関する事務の促進と土地の登記並に各種登記の実施の件でありますが土地所有権の認定に関する事務は来年二月末迄に完成するように目下努力しており、なお土地の登記やその他の登記については登記簿その他附属用紙類の数量が厖大であるため軍政府を通じて日本から入手方折衝中であり、入手次第登記所を開設して登記事務を開設すべく準備中であるのであります。
  なお最近自動車の交通事故や殺人強盗などの暴力事件が激増しつつありますが、これ等の取締や科刑については警察部と連絡を密にして、又判検事会同を開いてこれが対策を講じ社会の不安を一掃するように努力を続けております。次に十八歳未満の少年犯罪者が昨年の警察部の調査によりますと群島管内に七百六十八人いるということになっており、これら少年犯罪者の指導保護関係(機関カ)として感化院を設立すべく計画を進めております。
  第八に警察部主管の事項について申上げます。警察部は今回群島組織法の規定によりまして公安委員会により運営されることになりますのでその内容についても漸次変更されて行くと思いますが、現在の状態についてお話を致します。初めに警察官並に警察職員の定員と経費の問題でありますが、これまで警察官の定員は他の警察職員を含めて千五百人で、その経費負担の割合は軍が三分の二、民が三分の一でありました。ところが本年十一月十日付軍政官から知事宛書簡によりまして、十一月一日以降その定員を千百名に減じてその負担も軍民折半の割合で運営することに変って来たのであります。
  次に交通保安課の設置と交通専務警察官の問題であります。本年十一月二十一日付沖縄軍政官府から知事宛書簡「民警察部の交通整理について」、同日付書簡「民警察による交通取締」によりまして、警察部に交通保安課を設置すべく準備中であります。交通専務警察官については、枢要道路二十カ所に配置し、交通整理に当っているのであります。
  次に特別警察隊設置についてでありますが、軍政長官の命によりまして、警察部長統轄下に千五百人の特別警察隊を置くことになりましたが、その任務は専ら軍施設の監視で、警察権の行使は出来ないが、軍施設内での犯人検挙の権限などが許容されています。十二月から来年四月迄毎月三百名宛が八週間の教養訓練の実施を受けることになっております。費用は全額軍負担であります。
  更に消防課の新設でありますが、これにつきましては主管部で検討準備中であります。
  なお警察行政の民主化云云はよく一般にも論議せられたのでありますが、何れ公安委員が選任されますれば、ますます実社会に即応した民主警察の運営を期する覚悟であります。
  以上群島政務の大要につきまして御説明を申上げましたが、更に詳細については御質問に応じて各部長、課長から説明させることに致したいと存ずる次第であります。

◎議長(知花高直君) 知事の政務報告に対する一般質問に移ります。
◎新里銀三君 只今の知事の詳細緻密を極めた政務報告を聞いて感謝にたえない。機構の改革、特に今回の行政整理の人事について断を下されたことは現知事でなければならんというように感謝しております。なお政務報告に述べた各部の計画については微に入り細にわたっているのでぜひ実現を願いたいものであります。
  只今の御説明に質問致します。予算について病院関係の収入の一千万円の予算が一千九百万円の約二倍に増えているが、こういうものは出来るだけ群島政府の立場からは、病床に呻吟しているものを気の毒がって出来るだけ一般庶民のことも考えて、こういう収入は減収の方法をとったらと考えております。
  工務部の予算関係で軍では民の予算編成半ばの十一月六日に工務の再編成について軍から来たといっているが、人件費は資材課以外全部負担しなければならないでしょうか。来年三月迄の人件費だけでも一千五百万円かかると工務部ではいっている。道路維持について十日位前の新聞を見ますと民が修理するということになっているが、実に莫大なもので一千万円位の修理費が掛りますが、民の負担は莫大なものになる。現在予算半ばでありますが、これにつきまして来年三月迄はやって貰うように交渉して頂きたい。
  バスの官営事業、これは税外収入を取ることは期待できないと思います。出来れば民に経営させて政府は管理すればよい。民に経営させて適正課税をやって群島政府の予算に編入した方がよいと考えます。
  知事の御説明でたくさんの家が出来たといわれているが、それは知事が就任されてからか、それ以前の引継ぎか、金額や実施の状態を伺いたい。
◎平良幸市君 日程について動議したいと思います。知事が一時間に亘って述べられた説明に対し質問や意見がたくさんあると思いますが、これをやると予定の日程では終らないと思いますが、月曜日に廻したいと思います。
  (「賛成」と呼ぶ者あり)
○知事(平良辰雄君) 只今の問題について答弁したいと思います。病院収入の一千万円しかなかったものが倍になっているのはこれは軍命に依て薬価が上がるということが一つの原因である。薬価は来年一月から一弗対百二十円にするというが、百二十円を基礎にしたものではない。現在の薬価と上がって来たその分だけの薬価の上がった分は含めてある。病院収入の方法に依てもう少し上げられるという自信を持ってやった。急激な薬価の変動はみてない。近い中に自由開業も許されるということになれば、病院経費が二千万円、三千万円も掛っているのに収入一千万円では、もう少し能率的に仕事をするということも考えられるので、だんだんそれに近づけていかなければ従来の自立経済も樹てられないからと計上している。
  工務の予算は年度半ばにおいて従来軍が負担しておったものを民に移すということは到底できるものではない。軍の予算は一応決っている。人員も縮小している。直ちにやることは到底できない。予算に含めないから研究して欲しいということで、われわれとしても今度の予算には計上してない。道路の維持費は民ばかりが使用するものでもないので、当分は軍でそれを維持して欲しいと主張している。バスの官営でありますが、考えように依ては理論は立つ。民間事業が能率は上がる。民営事業が独占してはいけないから民営事業を牽制するためにも公営を置いて一般大衆の公益を計るという考え方もある。財政面からいうとバスを民営にして税をとることもあるが、ただ歳入を図ることだけでなく、一般大衆の福利増進の意味から民営も官営もやって一般に批判させるのがよい。今のところ具体案はないが、何れ成案を得たら議会にかけたい。以上簡単に申上げて各部長から補足して頂きます。
○厚生部長(宮城普吉君) 従来一弗対五十円にして八十パーセントは軍の負担、二十パーセントはわれわれで負担、一弗対百二十円に換算するようにして二十パーセントをわれわれが負担、八十パーセントを軍が負担、薬品代が二・四倍上がった。今の二倍になったというのは自然の増加であって、自然にいくと二・四倍にいく。患者の食料も値上がりになって一日五円のが十円になった。
◎議長(知花高直君) 先刻八番議員(平良幸市君)から動議がありましたが、知事の報告に対する質問は多多あると思いますが、政務報告に対する質問や御意見は予算とともに最終日に廻したいと思いますが異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。よって左様に決しました。
  日程第四の議案第四号を議題と致します。
  (書記長「新垣良正君」議案第四号朗読)

議案第四号
  臨時琉球諮詢委員会委員任命賛同について
臨時琉球諮詢委員会委員に左記の者を補充任命致したいので議会の賛同を求める。
 一九五〇年十二月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
    記
 真和志村三原区十一班
          松田 賀哲
 南風原村津嘉山区一八七番
          金城 金保

○議長(知花高直君) 本案の質疑に移ります。
◎具志頭得助君 議案第四号については学識経験その他において適当の人物と賛意をもっている。これは知事が議会に推薦をやって更に知事が軍に推薦してやったと思っているが、現在は議会の賛同を求めるとなっていますが、方法について伺いたい。
○知事(平良辰雄君) 諮詢委員の任命については軍政府からの指令で民政議会の賛同を得て、軍政長官の認可を得て、知事が任命する。前の部分はどうやっていたか分りませんが、知事が議会に諮る前に軍政府に出して調べてみると賛同を得、意見を徴すということもあって軍が早くといっているので、議会の賛意を徴するということで待っておりますが、なるべく早く賛同を得たい。議会の承認を得てからと考えております。
◎新里銀三君 琉球諮詢委員は重要なものでありますからその経歴を発表できましたら発表願いたい。
○知事(平良辰雄君) 只今履歴書を持って来ておりませんので、私の知っている分をお知らせします。
  松田賀哲氏は東京の高等商業を卒業して那覇商業の教員、民政府の商工課長をやった。
  金城金保氏は東京農大の卒業で学校の教育にも携り農林学校、県庁の行政面にも携って農業組合の指導課長もやって最近は南部農林の校長、農事試験場長をやった。
◎具志頭得助君 御両人とも農業、経済に共通するので賛意を表するものである。皆さんの御同意を願いたい。
◎宮城久栄君 十一番議員(具志頭得助君)の意見に同意を表する。希望としては同意を求めるときは略歴を準備してほしい。
◎議長(知花高直君) それでは質疑を終了致します。討論を省略致しまして表決に付します。原案を可決することに御異議はありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。よって可決致しました。

◎議長(知花高直君) 日程第五の議案第五号を議題と致します。
  (書記長「新垣良正君」議案第五号朗読)

議案第五号
  沖縄群島警察本部長任用条例について
沖縄群島警察本部長任用に関する条例を左記の通り制定致したいので提案する。
 一九五〇年十二月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
    記
  沖縄群島警察本部長任用条例
沖縄群島警察本部長は、警視に任命されてから一年以上を経過した警視又はそれ以上の階級にある警察官の中から、沖縄群島公安委員会が、これを任命する。
   附 則
 この条例は、公布の日から施行する。

○議長(知花高直君) 本議題の質疑に入ります。
◎宮城久栄君 警察本部長任用条例についてでありますが、私はよく分りませんのでお尋ねしますが、警視の任命は誰がやりますか。警察本部長は警視に任命されて一年以上経過した者からとありますが、群島政府においては誰が任命しますか、伺いたい。
○警察部長(仲村兼信君) 前民政府時代は警視銓衡委員会があった。委員会は知事、他の部長、警察部長も含みます。候補者を委員会に提案して委員会で決定すれば初めて知事が警視を任命するということになっております。
○宮城久栄君 その手続きは群島組織法が公布になっても生きていますか、なくなりますか。
○警察部長(仲村兼信君) 従来その制度には根拠になったものがなかったので暫定措置としてやっていた。現在警察官任用令案を軍に伺っている。これが認可ができれば自然消滅になります。
◎祖根宗春君 名称についてでありますが、群島組織法第百二十六条によりますと、警察本部の長である警視総監となっているが、条例は警察本部長になっているがどれが本当であるか。また警視に任命されてから一年以上を経過した警視又はそれ以上の階級にある警察官の中から、とありますが、何か基準がありますか。それ以上の階級のものとはどういうものであるか。
○警察部長(仲村兼信君) 私は英語はよく知りませんが、最初は警視と思います。その次の訳では何れでもよい。警察本部長、警察長にも訳せられるということになりました。警察長より警察本部長の方がよいというので、また警察長は警察部長と間違えるかと思ってその方にしました。
  第二の問題で一年以上ということには基準はない。警察本部長は、警視に任命されてから一年以上というのは警察の行政にあって、警察行政に携った者でなければならんというので一年以上としてある。それ以上とあるのは警視の上に次長、警察部長もある。更に将来の問題として日本のように警視正、警視長という階級も考えられる。
◎議長(知花高直君) 質疑を終了致します。討論を省略致しまして表決に付します。原案を可決することに御異議はありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。よって原案を可決致します。

◎議長(知花高直君) 次は日程第六の議案第九号を議題と致します。
  (書記長「新垣良正君」議案第九号朗読)

議案第九号
  沖縄群島副会計長及び副出納長定数条例について
沖縄群島は(ママ)副会計長及び副出納長の定数に関する条例を左記の通り制定したいので提案する。
 一九五〇年十二月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
    記
  沖縄群島副会計長及び副出納長定数条例
沖縄群島は、副会計長及び副出納長の定数を各々一人とする。
   附 則
 この条例は、公布の日から施行する。

○議長(知花高直君) 本議題の質疑に入ります。
  (質問者なし)
◎議長(知花高直君) 御質問がなければ討論に移りますが、これを省略致しまして表決に付します。原案を可決することに御異議はありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) それでは御異議ないと認めます。よって原案を可決致します。

◎議長(知花高直君) 日程第七議案第十号を議題と致します。
  (書記長「新垣良正君」議案第十号朗読)

議案第十号
  沖縄群島政府職員定数条例について
沖縄群島政府職員の定数に関する条例を左記の通り制定致したいので提案する。
 一九五〇年十二月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
    記
  沖縄群島政府職員定数条例
第一条 沖縄群島政府職員の数は、左の通りとする。
     六、三九三人
第二条 沖縄群島政府本部職員の数は、左の通りとする。
       三五〇人
第三条 沖縄群島政府廨庁職員の数は、左の通りとする。
     六、〇四三人
   附 則
 この条例は、一九五〇年十一月四日から施行する。

○議長(知花高直君) 本議題の質疑に入ります。
◎祖根宗春君 提案書類を伺いますが、一条、二条、三条の政府職員定数でありますが、この定数の数字が適当であるか、ないか、やり得る自信があるかどうか伺いたい。
○知事(平良辰雄君) 無論適当な数と思っております。今のところ出来るという自信を持っております。
◎宮城久栄君 三条の廨庁職員の数でありますが、これは一旦条例で決定して困るのは毎年変動がありますが、その都度条例改定なさるのでしょうか。
○知事(平良辰雄君) 仕事が増えたりするので、その場合は無論改正します。今のところそういうことはないと思います。
◎議長(知花高直君) 質疑を終了致します。討論を省略致しまして表決に付します。原案を可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議なしと認めます。よって原案を可決致します。

◎議長(知花高直君) 日程第八議案第十一号を議題と致します。
  (書記長「新垣良正君」議案第十一号朗読)

議案第十一号
  沖縄群島における治安裁判所の数、所在地及び管轄区域に関する条例について
沖縄群島における治安裁判所の数、所在地及び管轄区域に関する条例を別紙の通り制定致したいので提案する。
 一九五〇年十二月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
別紙(注 公布条例と照合の上、句読点を挿入した。)
  沖縄群島における治安裁判所の数、所在地及び管轄区域に関する条例
第一条 琉球軍政府特別布告第三十八号第二条に基き沖縄群島における治安裁判所の数、所在地及び管轄区域を別表の通り定める。
第二条 裁判所の管轄区域の基準となった警察署の管轄区域に変更があったときは、裁判所の管轄区域もまたこれに伴い変更される。
第三条 前二条の規定により管轄裁判所が定まらない地域がある場合には、この条例の改正により、その地域を管轄する裁判所が定められるまでは、群島知事がその裁判所を定める。
   附 則
1 この条例は、公布の日から施行する。
2 この条例施行以前において塩屋治安裁判所に係属している事件についてはこれを名護治安裁判所にした訴の提起とみなす。

○議長(知花高直君) 質疑に入ります。
  (質問者なし)
◎議長(知花高直君) 御質問がなければ討論に移りますが、討論を省いて表決に付します。原案を可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。よって議案第十一号を可決致します。午前はこれで散会いたしまして午后一時に開会いたします。
  午前十一時五十九分散会

  午後一時五分開議
◎議長(知花高直君) 午前に引続き開会します。出席議員十八名、欠席議員二名であります。日程第九議案第十二号を議題と致します。
  (書記長「新垣良正君」議案第十二号朗読)

議案第十二号
沖縄群島議会事務室設置条例を別紙の通り制定致したい。
 提案理由
  群島組織法第五十条に依り附置すべき議会の図書室に就ては議会の運営の完璧を期し、その活動を益々活溌ならしめんがため名称を議会事務室として設置し職員を常置致したい。
 一九五〇年十二月十四日提出
    沖縄群島議会議長
          知花 高直
別紙(注 公布条例と照合の上、句読点等を挿入した。)
  沖縄群島議会事務室設置条例案
第一条 議会運営の完璧を期し、その事務を処理するため議会事務室(以下事務室と称す)を置く。
第二条 事務室に左の職員を置く。
  書記長 一人
  書 記 若干名
  速記士 二人
 職員は議長がこれを任免する。
第三条 事務室においては左の事項に関する事務を処理する。
 一 会議録の調製に関する事項
 二 図書の保管に関する事項
 三 文書の記録、編纂及び保存に関する事項
 四 公印の管守に関する事項
 五 文書の収発に関する事項
 六 経理に関する事項
 七 その他議会に関する事項
第四条 書記長は議会(ママ)議長の命を受けその事務を処理し、職員を指揮監督する。
第五条 書記は書記長の指揮を受け印刷、会計、その他庶務に関する事務を分掌する。
第六条 速記士は速記に関する事務に従事する。
第七条 書記長事故あるときは上席職員がその事務を代行する。
第八条 書記長は左の事項を専決処分することができる。
 一 職員の身分調査に関する事項
 二 職員の管内の出張命令に関する事項
 三 職員の時間外勤務に関する事項
 四 職員の休暇及び旅行に関する事項
 五 軽易な報告、照会及び回答に関する事項
 六 その他軽易な事項
第九条 本条例に定めるものの外必要な事項は群島政府処務規程の例による。
   附 則
 本条例は、一九五〇年十一月二十日よりこれを(からカ)施行する。

○議長(知花高直君) 議案第十二号の質疑に移ります。御質問ありませんか。
◎祖根宗春君 書記は何名にされますか。
◎議長(知花高直君) 今は二名。
◎祖根宗春君 第三条の七項までを見ると事務処理だけに留っているが、議会の常任委員制、臨時委員会が出来たり、統計とか、資料調査とかを集めなければならんときに事務室の職員をして集めさせることもあると思いますが。
◎議長(知花高直君) 七項のその他の事項で運用したいと思います。
 御質問ありませんか。
  (質問者なし)
○議長(知花高直君) 御質問ないと認めまして討論に入ります。御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議なしと認めます。よって原案を可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。よって原案を可決致します。

◎議長(知花高直君) 日程第十議案第十三号を議題と致します。
  (書記長議案第十三号朗読)

議案第十三号
 沖縄群島議会委員会設置条例を別紙の通り制定致したい。
提案理由
 群島組織法第六十条及び第六十五条に依り議会に委員会を設置し、その運営を益々活溌ならしめんとする。
 一九五〇年十二月十四日提出
    沖縄群島議会議長
          知花 高直
別紙(注 公布条例と照合の上、句読点等を挿入した。)
  沖縄群島議会委員会設置条例案
   第一章 通 則
第一条 沖縄群島議会は、その運営を活溌にするため、常任委員会及び特別委員会を置く。
第二条 各委員会の委員は議会において選任する。
2 委員に選任された者は、正当の理由がなければその任を辞することができない。
3 委員がその任を辞そうとするときは、その理由を附し委員長を経由して議長の許可を受けなければならない。
第三条 委員会は、委員長一人を互選しなければならない。
第四条 委員会は、委員長がこれを招集する。但し委員の半数以上の請求があるときは、委員長は、これを招集しなければならない。
第五条 委員長は、委員会の議事を整理し、その秩序を保持し委員会を代表する。
2 委員長に事故あるときは、委員中より(からカ)仮委員長を選挙し委員長の職務を行わせる。
第六条 委員会は、委員の半数以上出席しなければ議事を開くことができない。その議事は過半数により決する。可否同数なるときは、委員長がこれを決める。委員長は委員として表決に加わることはできない。
第七条 委員会は、その所管に属する事項につき議案を提出することができる。
2 前項の議案は、委員長を提出者とする。
第八条 委員会は、議案が付託されたときは先ず議案の趣旨について説明を聞いた後審査に入る。
2 委員は議題について自由に質疑し、意見を述べることができる。
第九条 委員会は、議長を経由して審査又は調査のため関係者証人等の出頭を求め又は関係官公署その他に対し必要な報告又は記録の提出を要求することができる。
第十条 委員会に付託した事件の発議者又は動議提出者は、その委員会に出席して説明することができる。
第十一条 委員会は審査又は調査のため必要があるときは、他の委員会と協議して連合審査会を開くことができる。
第十二条 委員会が付託事件について審査又は調査を終ったときは、その報告書を作り、委員長から、これを議長に提出しなければならない。
2 前項の報告書には、左の事項を記載する。
 一 開会、休憩及び散会の年月日時刻
 二 出席した委員の氏名
 三 付託事件の件名
 四 議事
 五 表決の数
 六 その他必要と認めた事項
第十三条 委員会は、その審査を終った事件が緊急を要するものと認めたときは、議会の会議を開くことを、議長に求めることができる。
   第二章 常任委員会
第十四条 各常任委員会の委員数及びその所管事項は、左の通りとする。但し議会の議決により員数を増減し、又はその所管事項を変更することができる。
 一 総務、財政委員会 八人
   総務部及び財政部所管に属する事項
 二 経済委員会 八人
   経済部所管に属する事項
 三 工務委員会 七人
   工務部所管に属する事項
 四 文教、厚生委員会 六人
   文教部及び厚生部所管に属する事項
 五 法務、警察委員会 六人
   法務部及び警察部所管に属する事項
第十五条 常任委員は、他の常任委員を兼ねることができる。
第十六条 二個以上の常任委員会の間において、その所属事項について争があるときは、議長は、議会に諮りこれを決する。
第十七条 常任委員会は、議会から付託された重要な議案及び陳情等について、その審査のため公聴会を開くことができる。
第十八条 常任委員会において公聴会を開こうとするときは、予め議長に連絡の後これを開かなければならない。
第十九条 公聴会において、その意見を聴こうとする利害関係者及び学識経験者等は、予め委員会において定め本人にその旨を通知する。
   第三章 特別委員会
第二十条 特別委員会は、特に重要と認めた事件を審査させるために臨時にこれを設ける。
第二十一条 特別委員会の委員数は、その設置のとき議会の議決でこれを定める。
第二十二条 特別委員会は、議会の議決により付議された事件を審査する。
   第四章 補 則
第二十三条 本条例に定めるもののほか必要な事項は、その都度議会の議決によりこれを定める。
第二十四条 本条例は、一九五〇年十二月十四日より(からカ)これを施行する。

○議長(知花高直君) 議案第十三号の質疑に入ります。御質問ありませんか。
  (「質問なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) それでは討論を省いて表決に付します。原案を可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議なしと認めます。よって本案は可決致しました。

◎議長(知花高直君) 日程第十一に移ります。ただいま可決致しました議案第十三号の二条によって各委員会の委員は議会において選任するとありますので、選挙を致したい。如何取計いましょうか。
◎宮城久栄君 議長で指名して欲しいと思います。
◎議長(知花高直君) 七番議員(宮城久栄君)の動議に異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議なしと認めます。よって議長から指名いたします。
 総務、財政委員に八名
  具志頭得助君、崎山起松君、仲里誠吉君、平良幸市君、稲嶺盛昌君、長浜宗安君、祖根宗春君、普天間俊夫君。
 経済委員に八名
  仲里誠吉君、祖根宗春君、石原昌淳君、玉城泰一君、山川宗道君、崎山起松君、仲村栄春君、長浜宗安君。
 工務委員に七名
  新城徳助君、仲村栄春君、新里銀三君、平良幸市君、石原昌淳君、山川宗道君、山城興起君。
 文教、厚生委員に六名
  宮城久栄君、普天間俊夫君、野原昌彦君、与儀清秀君、玉城泰一君、松本恭典君。
 法務、警察委員に六名
  松本恭典君、新里銀三君、野原昌彦君、山城興起君、与儀清秀君、稲嶺盛昌君。
 以上のかたがたにお願いいたします。各委員は委員長を互選してもらわなければならんから暫時休憩いたします。委員長の互選をして報告願います。
  午後一時三十分休憩

  午後一時三十二分開議
◎議長(知花高直君) 開会致します。日程第十二議案第十四号を議題といたします。
  (書記長「新垣良正君」議案第十四号朗読)

議案第十四号
  沖縄群島監査委員会事務室設置条例について
沖縄群島監査委員会事務室設置に関する条例を別紙の通り制定したいので提案する。
 一九五〇年十二月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
別紙
  沖縄群島監査委員会事務室設置条例
第一条 監査委員会の運営の完璧を期し、その事務を処理するため、監査委員会事務室(以下事務室という)を置く。
第二条 事務室に左の職員を置く。
 書記長  一人
 書 記  七人以内
2 書記長及び書記は、監査委員長の推薦により、知事これを任免する。
第三条 事務室においては、左に掲げる事項に関する事務を処理する。
 一 人事及び職員の服務に関する事項
 二 公印の管守に関する事項
 三 文書の収受発送に関する事項
 四 予算の編成及び経理に関する事項
 五 監査執行計画の樹立に関する事項
 六 監査の結果報告及び公表に関する事項
 七 群島議会、群島政府各部課及び各廨との連絡に関する事項
 八 群島政府の経営に係る事業の調査に関する事項
 九 監査委員会議に関する事項
 十 群島政府の予算編成及びその執行状況の調査に関する事項
 十一 物品の出納保管に関する事項
 十二 図書の保管に関する事項
 十三 文書の記録、編纂及び保存に関する事項
 十四 群島政府有財産及び営造物管理の状況の調査に関する事項
 十五 群島政府の財政調査に関する事項
 十六 群島政府の出納例月検査及び臨時検査に関する事項
 十七 群島政府の決算及び証書類の調査に関する事項
 十八 その他群島政府行政の一般的調査に関する事項
第四条 監査の執行に当っては、前条の規定に拘らず上司の命を承け、その事務に従事するものとする。
第五条 書記長は、委員長の指揮を承け、事務室の事務を総理し、職員を指揮監督する。
第六条 書記は、上司の命を承け、その事務に従事する。
第七条 書記長に事故あるときは、上席書記が、その事務を代決する。
第八条 書記長は、左に掲げる事項を専決処分することができる。
 一 職員の身分調査に関する事項
 二 職員の管内出張命令に関する事項
 三 職員の除服、出仕に関する事項
 四 職員の時間外勤務に関する事項
 五 職員の休暇及び旅行に関する事項
 六 軽易な報告、照会及び回答に関する事項
 七 その他軽易な事項
第九条 この条例に定めるものの外、必要な事項は、群島政府処務規程の例による。
   附 則
 この条例は、一九五〇年十一月三十日から施行する。

○議長(知花高直君) 議案第十四号の質疑に移ります。御質問ありませんか。
  (「質問なし」と呼ぶ者あり)
○議長(知花高直君) 御質問がないようですから討論に入ります。
  (討論者なし)
◎議長(知花高直君) 討論を終了いたします。原案を可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。よって議案第十四号を可決いたします。

◎議長(知花高直君) 日程第十三諮問第一号を議題といたします。
  (書記長「新垣良正君」朗読)

諮問第一号
  鳥島の帰属及び名称について
東経百二十八度十五分、北緯二十七度五十分に位する島は沖縄群島久米島具志川村に帰属しその名称を硫黄鳥島と呼称するを適当と思料するが議会の意見を問う。
 一九五〇年十二月十四日
   沖縄群島知事 平良 辰雄
沖縄群島議会議長 殿
  理 由
 同島は歴史的、政治的及び文化の面から見ても沖縄群島に帰属するを適当と思料せられ尚名称は戦前より硫黄鳥島と呼称せられている。
  (別紙参考)
    第三編 各村処誌
   第二十二章 鳥島(島尻郡誌より)
 元は国頭郡今帰仁村の運天港より西北方約六、七十浬の処に位して噴烟の上る火山島で周囲二里位の島に居ったが噴火のため移転の議が起り、明治三十七年二月に今の処に移住する様になった。鳥島移住記念碑には銘して詳述しているが、当時の島尻郡長斉藤用之助の世話により久米島、具志川村字大田の海岸地を購い此の久米島に移ったものである処が其の候補地にのせられた処が五ケ所あった。
  第一候補地が具志川村大田のイクソー毛
  第二候補地が仲里村字比嘉のイーフ
  第三候補地が具志川村字仲泊の現在の所
  第四候補地が仲里村阿嘉チヨラチ
  第五候補地が仲里村字仲村渠
 第一候補地の大田のイクソー毛が熱心な希望地であったが協議の結果纏らず第三候補地の仲泊に協停したので移住し明治三十七年二月十一日を移住記念として今でも盛んな行事が行われる。母島の鳥島は島尻郡に属し遙に大島に近いが慶長の役にも分轄されずに本県に統轄せられた処である。鳥島は硫黄の産地として知られた処で支那人は此島に硫黄山と命名したものである。明の初以来琉球王の支那貢物の一つの産する所でいつもこの島に産する硫黄を以ってあてたのである。
 旧藩時代には毎年一万六千斤の硫黄を藩庁に納めしめ又藩庁からは男女十五歳以上の者に対して男は五合女は三合五勺の扶持米を支給して硫黄の代償とし生活の保障を与えられたものである。明治十八年には政府の直轄に一時置かれ島民は毎年三百石も代償として三年分を一時に下附して島民の共有財産に向けたが現在に後になって硫黄鉱山の特許坪七万九千六百四十三坪代金参千六百八円七十八銭で一ケ年の総額が約壱万弐千弐百円位に上っていた。
 球陽尚穆王二十六年(文政十二年)の条に鳥島有硫黄地長二合広一合五勺云々とあるが一合を先づ五町と見ると鉱区の全坪数が二十七万坪あった様であるが尚穆王二十六年から明治十八年までの年数は百八年間に二十七万坪が七万坪に減じた様で古今の硫黄区の変遷が伺われる事が出来る。
 処が休息状態に向って鳥島が明治三十七年に噴火して硫黄鉱の噴出も増したので減少して居たものが再び増加した事と思うが其の調査をせないので此処に述べる事が出来ない。
 いつかの地学雑誌に次の様な意味の記事が載っていた。
 明の洪武年間に琉球からして支那に向って貢物として硫黄を献上したと云う記録が伝った。其の時琉球管下に属している島の中外に該当する島がなく此の鳥島だけが盛んに硫黄を掘っていた事が知られる。其の後寛政年間に一度大きな破裂があって島民の一部は此の島から一番近い徳島(徳之島カ)に避難して逃げた事がある。当時の破裂は灰が奄美大島から加計呂麻島に至る地方まで噴火灰がとんだ相である。
 又同雑誌に鳥島の事を記して
 島一体熔岩が少なくて極く粗末な構造に脆い砂や火山灰の崕から出来て水は土砂を透し、大雨が度々降っても直ぐ地中に滲み込んで少しも水溜りがない。唯だ泉水として湧き出る処にマエダケの二、三町でこれでは到底七百の人間の飲料水に充てる量はない。
 此島で水の欠乏を防ぐために天水溜を各個に設備し雨水を溜めて飲料水から使用水に使っている。
 此の島では天水溜め水溜瓶の数によって富の程度も知る位で財産家は何十個と云う位も瓶を列べ貧民は僅かに数個を備える有様である。
 鳥島では富の物指は水瓶と云っても過言ではない。夏季ながく旱魃して雨降らぬ時は貯蔵せる水全部涸れて窮した揚句遙々遠い徳島に小舟を漕いで水瓶を運び徳島で水を汲んで帰島する有様である。
鳥島
  東恩納寛淳著(南島風土記)
           三二七頁
 粟国の西方に当り運天港より六十七浬那覇港より百浬久米島具志川に属し久米鳥島と称す。
 周囲約二里明治初年戸数二四、人口二三九土地整理前後戸数一〇〇、人口六九八現在は四三戸一八一人(昭和十年調)戸口の増減は原因するところがある。本島は硫黄は一にこの島に仰いでいたもので硫黄山の名は既に陳侃使録に見えている。
 鳥島移住報告書によると島民は七姓の同族より成る部落であるとあるが移住当時の九十九家族について調べて見ると、国吉、糸数、仲宗根、東江、仲村渠、上間、仲地の七姓でその内国吉姓が全体の三割四分を占めている。
 これらの姓に依って察すると島尻、国頭、久米島方面からの出稼移民が最初の部落を形成したもののように考えられる。
○議長(知花高直君) 質疑に入ります。
○祖根宗春君 本議案について意見を述べてよろしいでしょうか。
○議長(知花高直君) 述べてよろしい。
◎祖根宗春君 この島は緯度、経度から見ますと群島組織法に依て、大島政府管内に属するのですが、従来の歴史からいって、それから住民の関係、土地所有権いろいろな点から勘案致しました場合、やはり従来通り沖縄群島政府の所属にしていただきたい。名称を実際の固有名詞は字鳥島となっておりますが、俗称を尊重して硫黄鳥島という名前にすることになっておりますが、現地の鳥島の部落民並に議会、具志川村も一致しておるので諮問の原案どおり答申していただきたい。
◎議長(知花高直君) お諮りいたします。答申草案起草委員を三名、議長の指名にしたいが御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めまして、祖根宗春君、玉城泰一君、稲嶺盛昌君の三名にお願い致します。暫時休憩します。
  (答申案起草委員三名退席、別室に於て協議の後着席)
  午后一時三十七分休憩

  午后一時三十九分開議
○議長(知花高直君) 開会します。起草委員長から御報告お願いします。
◎祖根宗春君 只今の鳥島の名称について答申案を読み上げます。

答申第一号
  鳥島の帰属及び名称について
一九五〇年十二月十四日付諮問第一号首題の件「鳥島は沖縄群島久米島具志川村に帰属し、その名称を琉黄鳥島と呼称するを適当とする」
右沖縄群島議会の決議に依り茲に答申す。
 一九五〇年十二月十四日
    沖縄群島議会議長
         知花 高直
 沖縄群島知事 平良辰雄殿

◎議長(知花高直君) 只今委員長から答申がありましたが、御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ありません様ですから答申案の通り決定いたします。

◎議長(知花高直君) 日程第十四議案第六号を議題といたします。
  (書記長「新垣良正君」議案第六号朗読)

議案第六号
  一九五一年度沖縄群島政府歳入歳出追加更正予算について
一九五一年度沖縄群島政府歳入歳出追加更正予算案別紙の通り編成致しましたので議決を得たく提案する。
 一九五〇年十二月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
○議長(知花高直君) 当局の御説明をお願いします。
◎財政部長(宮里勝君) 只今の追加更正予算について説明いたします。今回群島政府の樹立による□機構改革、諸物資の値上げによる経費の増加その他職員給与の引上げ等により予算更正の必要を認めましたので、茲に追加更正予算として提案致した次第でありますが、その編成に当りましては綜合予算の均衡をあく迄堅持し財政収入の確保を期すると共に歳出の合理化を図り次年度に於ては自立経済の基盤となるべき健全財政樹立の態勢を整備推進することに留意して方針を決めたのであります。即ち歳出面におきましては既決予算を根本的に分析して極力不要額及び冗費を削減し且□機構改革に伴う人件費の縮減を図り一面物価の引上げに依る必要経費の増加を計上し更に職員の生活安定を図り一層能率の増進に寄与するため給与ベースの引上げに努力致したのであります。一方歳入面におきましては税収入に相当多額の減収を予想されますが、これは税外収入の増加によって収入支出の均衡を保持致したのであります。更に予算編成の合理化を期しこれまで各部それぞれ独自の立場で取扱っていた復興費支弁による軍負担の経費につきましては軍政府補助金の形を採り一般会計に歳入歳出の形式で計上し、その全貌を明かにすることに改正し一部は予算面に計上しておきましたが、工務部、警察部等の経費については目下軍政府と折衝中でありますので速に交渉を遂げ次回に提案致すつもりであります。次に予算の内容について主なる事項を御説明申上げますと、今回新規に計上されたものは那覇、越来、名護に保健所を設置することになりまして軍民それぞれ五〇パーセントの負担で民負担一七六万円を計上してあります。
  政府関係機関としては公安委員会、群島議会及び同事務室、監査委員会及び事務室の新設を見ましたので、これらの経費をそれぞれ追加致してあります。徴税費につきましては税務機構の改革も考えられますが、取敢えず本年度に於ては内容の充実強化に留意し特に人員二十二名増加し、その経費を計上致してあります。通信課が十月以降郵政庁に移管されましたため歳入に於て二百二十万円減じますが一方歳出面に於ては八百二十四万円減ずることになり差引六百四万円の負担減となります。
  社会事業課に於ては従来民負担であった六百九万円の一般救済費が全額軍負担になりましたが、その相当額は現金救済に振り換えられることになり、その方の減額はなく結局人件費その他の経費で約百六十万円の減になっています。その他各部所管経費は何れも減少致しましたが増額した部門は営繕の油脂代の値上りによる増額三百三十六万円、財政部の徴税費の増額による五十九万円、警察部の油脂代、食糧費、人件費、刑事手当、訓練費等の増額三百八十七万円が主なるものであります。医療器具及び薬品三百三万円、食糧費百六十四万円、油脂燃料三百八万円の増額になりましたが、これは物価値上りのためで真に止むを得ないものであります。旅費百万円増額致しましたが、これは現在の日額旅費が実情にそわないので、これを実情に即するように引上げ一層能率の増進を図るために増加致したのであります。
  なお総体的に人件費の減少はだぶついた、いわゆる予算人員を実員で押え不要額を他の経費に振り向ける措置を講じた結果でありまして本庁俸給二百三十四万円、廨庁俸給八百三十一万円、教員俸給八十万円計一千百四十五万円を節約致したのであります。
  歳入におきましては税収入に於て一千六百四十一万円の減収でありますが、これは主として軍被雇傭者に対する勤労所得税の源泉徴収の期間的ずれと当初、見積額が過大に失するように認められますので、これを是正した結果によるものであります。
  然しながら税外収入に於て八百五十六万円の増加で減収をカバーして結局既決予算に対し歳入の減少は七百八十五万円であります。
  なお予備費について一言申し上げます。予備費は既決予算に於て一千七十七万円計上してありましたが、七百万円削減し給与の引上げや退職金等に充当することに致し懸案であった職員給与の引上げ全職員に対し正規の給与を支給することに致したのであります。結論と致しまして一九五一年度追加更正予算は歳入歳出ともに二億一千三百二十一万七千九百六十三円、既決予算に対する修正減即ち補正額が七百八十五万三千十九円であります。
  以上の予算の概要を説明致しましたが、詳細は御質問にお答え致すことに致しまして、どうぞ御審議の程をお願い致します。
◎具志頭得助君 最初の議会でありますから議会においても慎重を期さねばなりませんので変更して後で質疑応答したいと思いますが、御賛成願います。
○議長(知花高直君) 一寸休憩いたします。
  午后一時四十五分休憩

  午后一時四十六分開議
◎議長(知花高直君) 開会いたします。本日は質疑、応答の分をやって全員打合せてあるから各自研究、合同研究をやった方がよいと思います。
◎祖根宗春君 日本でも補正予算といっておりますから、議会も新しく発足しましたので、日本式に補正予算と決めて議会ばかりでなく、市町村も補正予算と決めてほしい。その名前についてはその通りいくのでしょうか。当局の御答弁を願います。
○財政部長(宮里勝君) 名称について、日本では更正予算と扱っておりましたが、現在は補正予算といっておりますが、最初、われわれも補正とつけてありましたが、群島組織法の第百五十九条に追加更正予算と書いてありますので、追加更正予算と変更したのであります。
◎仲里誠吉君 この予算案に対しては歳入、歳出の款項目の算定基礎を詳しく御説明して頂くようにお願い致します。
○財政部長(宮里勝君) 御説明申上げます。源泉課税の方であります。十月までの収入累計が二千百五十九万七千八十四円になっております。十一月から三月までの収入見込み三千四百六十八万三千五百円と見込んでいる。合計五千六百二十八万五百八十四円となっております。これは見込みでありますが、軍関係の勤労所得一千五百八十万円、民関係の税額一千六百八十八万三千五百円と見込んでいます。従来の実績から勘案して算定したのであります。
◎仲里誠吉君 途中質問があります。過去の実績からとおっしゃってますが、軍作業の課税対象や実数は分らないでしょうか。
○財政部長(宮里勝君) 源泉課税の八万八千円の内訳は軍関係が五万二千円、官庁その他の団体一万八千円、それ以外の分が一万八千円、合計八万八千円と見ております。
  (「議事進行」と呼ぶ者あり)
 申告所得税は十月までの累計が一千二百七十六万四千六百二円、十一月乃至三月までの累計が三千百十八万一千五百十円、五十年度十月までの実績が八百二十五万一千八百二十五円、五十一年度が四百五十一万二千七百二十七円になっています。十一月以降の見込み内訳では五十年度の分が一千百七十三万五千円、五十一年度分が一千九百四十四万六千五百十円でありまして、徴税の強化によって八十パーセントは徴収するという見込みで算定しております。
○議長(知花高直君) 暫時休憩致します。
  午后一時五十五分休憩

  午后二時五分開議
◎議長(知花高直君) 開会いたします。六号議案、質疑終了のままに致します。暫時休憩いたします。
  午后二時六分休憩

  午后二時十分開議
◎議長(知花高直君) 開会します。日程の通りの議案が審議終了いたしましたから本日はこれで散会して十八日午前十時、本会議を開催いたします。議員は暫時残って貰います。散会いたします。
  午后二時十一分散会

出席者は左の通り
    議 長 知花高直君
    副議長 稲嶺盛昌君
議 員
 与儀 清秀君  仲村 栄春君
 石原 昌淳君  普天間俊夫君
 宮城 久栄君  平良 幸市君
 玉城 泰一君  松本 恭典君
 具志頭得助君  長浜 宗安君
 山川 宗道君  祖根 宗春君
 山城 興起君  新里 銀三君
 新城 徳助君  野原 昌彦君
 崎山 起松君  仲里 誠吉君
  群島知事   平良 辰雄君
  群島副知事  山城 篤男君
  総務部長   幸地 新蔵君
  経済部長   呉我 春信君
  工務部長   渡嘉敷真睦君
  法務部長   知念 朝功君
  文教部長   屋良 朝苗君
  財政部長   宮里  勝君
  厚生部長   宮城 普吉君
  警察部長   仲村 兼信君
 知事室事務局長 宮城 寛雄君
  弘報室長   崎間 敏勝君
  総務部副部長 稲嶺 成珍君
  経済部副部長 知念忠太郎君
  財政部副部長 久場 政彦君
  工務部副部長 西銘 順治君
  法務部副部長 金城 信範君
  文教部副部長 仲宗根政善君
  厚生部副部長 大森 泰夫君
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