戦後初期会議録

組織名
宮古議会
開催日
1948年07月28日 
(昭和23年)
会議名
第8回宮古議会[2]
議事録
  七月二十八日
○議長(與儀達敏) 午前十時五分議長開会を宣し、出欠議員の報告を書記をしてせしむ
  (書記、出席十八名、欠席三名なる旨報告す)
◎十八番(嵩原重夫) 一昨日の午後にやることにした一般政務に対する質問を赦して貰ひたい
◎議長(與儀達敏) 只今十八番より一般質問をしたいと云ふ動議がありますが如何に
  (「異議なし」の声あり)
 それでは本日は先づ軍政府に対する陳情文の審議決定をなし引続き一般質問に移ります、文案を読上げます、挿入或は削除すべき所があれば御訂正を願ひます
  (議長次の通り文案を朗読す)
  陳  情  書
米国軍政施行以来我々八万郡民は温情溢るる軍政府のお救ひの手によって年々莫大なる食糧、衣料、医薬その他雑貨の御放出を受け今日迄飢えず凍えず各々その生を安んじて参りましたことは偏へに歴代軍政官殿を初め軍政府諸官の特別なる御厚情の賜でありますことは全住民斉しく肝に銘じ感激に堪えない所であります
然るに本年一月以来の変体的気象状況は隔月(別表の通り)毎に執拗な旱魃を繰返し殊に三月、五月の旱魃は作物の生育を阻害すること甚だしく之に加へて今次の颱風の被害は愈々九月、十月の主食に致命的打撃を与へ九月以降土地生産食糧僅かに一週間をやうやく支へるという惨擔たる状態に立到ったのであります
このまま推移せば全住民飢餓に彷徨すべく我等寔に深憂に堪へないものがあります
もとより八万島民蹶然起って鍬を把りこの危機克服に懸命の努力を払ふ覚悟でありますが既に事態は人力を以て如何とも仕難い程深刻であります
希くば軍政官殿におかれては我々の苦衷を御賢察賜り天恵乏しき住民に御温情を垂れ下され全面的に食糧増配方特別の御高配を賜り飢餓より御救助あらんことをここに議会の決議を以て謹んで懇請致す次第であります
 右決議す
 一九四八年七月二十八日
     宮 古 議 会

◎二十一番(玉城玄教) 軍政府に於ては食糧の配給はa・b級には大量に配給し、c・d級には少いがカロリーと云ふ点から考へるならば、それでもよいが只今はc・d級も非常に苦しい実情にありましてc・d級にももっと増配して欲しいと考へるのであります、文案中の「全面的増配」とはその意味であるか、若しその意味ならばこの文案通り賛成致します
○議長(與儀達敏) その意味であります
◎二番(下地盛壽) 只今された文案に「全面的」にではなく「c・d級」にもと挿入した方がよい思ひます
○知事(具志堅宗精) 此の度の食糧問題に対しては軍政官も非常に御心配されまして自ら実地調査をしているのでc・d級と殊更に入れるよりも「全面的」とした方がよいと思ひます
 猶配給については総て軍政府の権限であったが今後は知事にその権限は附与されることになっています、それで増配許可がなれば郡民の為に出来るだけc・d級にもやる様に致します
○番外(経理部長池村實秀) 今まで食糧の配給についてはその実情に応じて困っている者にはc・d級にも相当に配給してきています、八月の配給は麦粉をc・d級に、a・b級には主にコーンを配給する様考へています、それでc・d級が本当に困っていると云ふ正確なる調査は農林部でないと私等には十分に出来ないので農林部より資料の提供がありますれば充分c・d級にも増配し得るのであり陳情文に殊更c・dにもと入れる要はないと思ひます
◎議長(與儀達敏) 只今知事並に番外よりc・d級と明記する必要はないとの意見がありますが如何に致しませうか
  (全員「賛成」を唱ふ)
 では異議ないものとみてこの陳情書を決議致します
  (議長再び陳情書を朗読す)
  (全員起立し、拍手を以て陳情文を決定す)
 陳情文は後で刷物にして御上げ致します、これから一般政務に対する質問に移ります
◎十九番(砂川惠一) 知事さんにおいては就任以来高邁なる政策を樹立されまして理想郷楽土宮古の建設に一路邁進されその御努力に対し八万郡民斉しく感謝感激しているのであります
 猶先般沖縄に於ける四長官会議に於てもその時は私も上沖中でありましたが実に絶賛を受けているのでありまして郡民として嬉しく感激したのであります、郡民に代り私から感謝申上げる次第です
 最初に農林部長に対し現在窮乏して食糧危機を如何に打開するかこの対策を伺ひたい、次は事業部長に対し聴きたい、民政府は昨年来現在迄多額の復旧費を戴いているにも拘はらず遺憾乍ら進捗していない、例へば学校復旧には一五、〇〇〇石要る筈ですが、その供給高は三、〇〇〇石にも足らないと云ふ状態で其為復旧が延びている、本年も後半年しかなく、冬期に向ふと天候に支配されて仕事のはかどらないのは明かでありましてこれに対する部長の対策は如何、猶沈没船既決契約者は沈没船内にある木材は虫が入って使用することは出来ないと云ふことを言ふているが、ある人の話によるとそんなことはない完全に使へると云ふ人もあります、事業部長はこの点厳密なる再調査をやって貰ひたい、それから引上げているガソリンは民政府直営で契約者とはいくらかの分合でもって引上げているやうだが彼等の引上げたガソリンは一缶四、〇〇〇円もすると云ふ、実に低物価政策を逆行しているがこれでよいか、以上事業部長の答弁を聴きたい
 次は財務部長にお聴きしたい沖縄には戦前銀行が三つもあり金融機関として各々活躍していましたが現在は琉球銀行の一つだけでそれも創立早々で資金に乏しく融資が行渡らず事業振興を沈滞させているがこの金融機関には如何なる対策をなし各種産業、農業等個人への融資を取計ふか伺ひたい
○議長(與儀達敏) 十九番の質問に対し各主管部長の答弁を御願ひします
○番外(農林部長与儀喜文) 現在の食糧急迫状況は昨年末より今年の上半期にかけて気候状態が不順で各種作物の収穫が不成績に終っています、殊に甘藷作が悪く今年上半期収穫は成績不良であります、其他の作物にしても例へば大豆は成育期間中に降雨なく収穫量は僅かに三%しかなかったのであります、又昨年十一月、十二月の季節外れの颱風で八月、九月、十月植の甘藷は甚大なる被害を受け更に、一月には降雨量三三粍、二月は一五一、五粍、三月に四、五粍、四月一七七、八粍、五月が六六、七粍、六月二八粍、七月は五日六日二日間の暴風と共に二〇粍でありましてそれに加へて潮害もあり郡内の作物の過半数は駄目になったのであります
 現在救済を要する戸数七、六〇六戸、人口三五、六八五人でこれは平良市のa・b級と大神、池間、保良、新城、多良間、来間、佐良浜等食糧危機に直面しているのでありましてこれが対策として非常食糧対策費として一、〇〇〇、〇〇〇円を計上致してあります、食糧購入は郡内からは不可能でありまして郡外よりの移入を考慮致しまして各市町村の農業組合と連絡し早急に買出しを実施計画しています、隣郡八重山も今度の七月の暴風の被害は大でありますが幸にも水稲は収穫後で被害は少いのであります、それで八重山とも交渉致しまして移入を計ると云ふ外に道はないのでありまして同時に軍政府にも増配方を依頼陳情するとこの様に考へております、猶又生産拡充については郡内生産を主として立体的に増産を計りたい、その為には種畜の増強に待つ外はなく終戦後は質よりも量と云ふ考へでありましたが現在では量も戦前に近いので今後は方針を変へて量より質が農業経営上必要なのでその計画を進めていますが立体的農業は天候不順、雨量の少いところでは困難でありましてそれで平面的には郡内の荒蕪地の開拓計画を進めています、然し、立体的□平面的増強でも自給自足には不充分でありまして八重山の荒蕪地開拓の為二万余の人口を移すと云ふことが非常に重要であります、民政府直営で開拓すればこれが打開は出来ると思ひます、これに対しては軍政府の御了解を待って実施し生活の安定を計りたいと考へています
○議長(與儀達敏) 次に復興事業部長の復興事業の将来の見通し、沈没船引揚問題についての御答弁を御願ひします、ここで一寸御願ひしたいのは議員、参与の質問答弁は要領を簡潔に中心点を明(ママ)っきりして議事進行上御願ひします
○番外(復興事業部長東風平惠令) 復旧事業に要する原木は一〇、三二六石で現在迄に一、九〇二石差引八、四二四石を生産致しますれば復興費は完全に消化し得るのでありましてこの八、四二四石はどうしても十二月迄には生産致す考へでありますが現地を実際に調査した結果運材問題、住宅問題、食糧問題等の難点がありこの状態の儘では到底不可能であります、幸に食糧問題は配給権が知事に移ったので何とか解決出来るものと考へます、これまで労務者も食糧買出しの為半月位しか従業しなかった様な状態でありました、南西丸も船浮の方に廻航されたのでこの問題は心配ないと思ひます
 猶又この提出議案が原案通り通過しますれば運材、住宅、製材等の隘路を打開し、毎月一、六八五石十二月までに八、四二四石の生産は充分可能であり私達は必ずこれを成遂げると云ふ精神を持っています、何卒この予算を原案通り議決して下さいます様お願ひ致します、引揚船については事業部ではなく財務部であります
○番外(総務部長與儀達敏) 沈没船からの木材引揚げについて総務部長として御答へ致します、この問題については毎月の議会倶楽部においても論議されて来ています、沈没船には相当な木材が満載されていると云ふ噂があり引揚者へは早速着手する様厳命致してあり、一回は引揚げましたが用材としては虫が相当に付いていたので使用出来ないものばかりでしたので一応中止しています、若し話の通り現在の契約者が偽りをもって使へる木材を使へないと云ふているなら契約は解いてでも郡復興の為他の人で希望者があればやって貰ひたいと考へて居ります、唯問題は果して噂通り木材を満載しているか、していてもその木材が使へるかどうかであります
○番外(財務部長) 十九番の質問に対し御答へ致します、南西諸島の金融機関が戦争によって全滅し融資の面に於て困っていることは事実であります、幸に琉球銀行が設立せられ五月一日より業務を開始し本郡にも支店の設置を見て居りますが何分にも開業早々で機能を充分に発揮することが出来ず不充分であります、先般打合せ会へ出席した折、支店長の貸付権限についてお聴き致しました所、個人に一〇、〇〇〇円、市町村に五〇、〇〇〇円、民政府に一〇〇、〇〇〇円と云ふことを話したが私はこれだけでは少いからその一〇倍の権限を附与されて各種事業を振興する様希望を申上げた所、総裁も現在のところ三〇〇、〇〇〇円の貸付権限しかないと云ふことでした、然し次第に仕事も進めば支店長の権限も拡大され郡民の便に供し得ることと考へます、猶金融機関の設立の考へ如何とのことですがそれに対しては今考へては居りません現在では無尽が活躍して居ります
◎十七番(砂川玄仁) 第一にお聴きしたいのは現在の宮古の状態は今を如何にするかと云ふことで民政府が率先して立上りこれを明(ママ)きりして貰ひたい、食糧の見通しは如何か、郡外移入は可能であるか如何を聴きたい
 二番目に沈没船からの積載物資引揚げは着手してより一年以上もなるがその当時の話では全学校を復旧し更に一般官庁等も建築出来ると云ふ話であったが今日に至るまで姿を見せないのは何処に原因があるか更に十九番の質問もあった通り引揚げの出来る可能性のある人にさせる意志はないか、この点もはっきりして貰ひたい
 三番目に西表に手をつけてから何ヶ月になるか、先程復興事業部長はこの予算が通れば計画通り生産が出来ると言明したが予算が通ればその執行上の責任は部長にあるが部長はこれで出来なかった場合腹を切っても郡民に対しては其責を負ふことは出来ないと思ふがその覚悟はもっているか、机上予算ではなくして実際にこの予算で出来るか如何か、又実際の状況を聴かせて貰ひたい
○知事(具志堅宗精) 郡民の安危に関係する問題ですから十七番、十九番に対して私から御答へ致します、食糧問題の解決は本郡として現に直面している大問題でありまして人口は戦前の五五、〇〇〇人が七五、〇〇〇人となり二〇、〇〇〇人も増加しているのであります、宮古は戦前も月に台湾より米五、〇〇〇袋、沖縄からは芋粕等を移入して食糧対策はやって居りましたところが交易の不自由である今日、自給自足も不可能でありまして現在では只管軍政府の御同情により生活しているのであります、その故に人口問題の解決は急務でありまして八重山の肥沃なる地域へ二〇、〇〇〇人移住せしめ八重山の宝庫を開き共に栄える為是非許可して戴き度いと軍政府に陳情致しましたが今は待つやうにとおさへられています、これは軍政府で直接にやる様な話もあり開拓庁は既に数千万円の予算配布も受けてあるとのことであります、此の外食糧生産対策としては海洋の開発を図ると共に集農附近の荒蕪地を開拓する考へで現在トラクターも二台来ているので機械力で大いにやりたいと思っています、これに対して郡下のブローカーを増産面にふり向けるならばもっとも効果的だと思ひます、然しこの様な問題は軍政府の同情がなければ食糧問題、移民対策も充分出来ないのでありまして軍政府の完全なる了解を得て実現致したいと考へています
 猶又先般の暴風被害は風速僅かに二九米に不拘非常に大きな被害でありましたがその原因は防風、防潮林の乱伐であります、それで五ヶ年計画を以て本郡の緑化を図るため本年末で約一二〇町歩に一、〇〇〇、〇〇〇本の木麻苗(ママ)を植付ける見当でありますがこの事については又皆さんの御援助御尽力を御願ひ致したいのであります
 非常食糧対策費として一、〇〇〇、〇〇〇円計上致してありますが食糧の郡外移入の可能性については私も心配致しているのでありまして、この点は一人民政府のみならず一般郡民並に議会も御心配のことと思ひます、八重山も先般の暴風では甚大なる被害を受けているやうで食糧の移入は見込うすいですが、然し手を替へ品を替へて沖縄は勿論大島等からも入れてこの予算消化に努力したいと思ひます
 引揚物資の関係ではいろいろなデマや利権屋の策動があって実に不愉快極まるものがあります、この契約は私の手でしたのではなく前任者が契約したもので遅々として事業が進まないのは潜水夫の問題であります、早く引揚げる様に議会でも又毎月の倶楽部会に於ても要求されているが一回は引揚げて見たが概して使用不能なものばかりでした、これは皆様にもお目にかけたのであります、然し確かに建築用材があると自信を持つ人があるならその人に責任を持たせてやらせたいと思ひます
 西表の伐採については当局は全智全能を上げて努力しているが予算と資材の関係で皆様の期待に副ひ得ず誠に申訳ないと思っていますが最近幸にもレール八キロを獲得しましたのでこれを敷設しましたなら材木の山出しも容易であると確信するのであります、然しこれを敷設するにはどうしても道路造らねばならんのでこれには軍政府にお願ひしてブルドーザーを使用したいと思っています、斯様な計画の下に、予算は提出してありましてこの事業については私が全責任を持つものであり万一不成功になればその時の決意は持っているのであります
 とにかく私は軍政府並に郡民の試験台に立たされて居りまして全精神を打込んで努力しています、幸に皆さんの御協賛を得ましてこの予算が通過したら船浮の開発は期して待つべきもの大であります
◎十七番(砂川玄仁) 只今知事さんの信念と熱意に燃ゆる答弁でよく了解しました、もう一つ厚生部長にお聴きします、公益質屋の窓口を通して現在の世相はよく分ると思ひますが次の点についてお聴きします、公益質屋創立以来現在までの流質物はどの位か、俸給生活者の入質件数、入質物の鑑定法並に金銭取扱はどうしてやっているか、その他食糧問題に対する厚生部長の対策をお聴きしたい
○番外(厚生部長奥平朝親) 質物は出来るだけ流質せしめないやうに注意していますので現在のところ流質物はありません、俸給生活者の借入はあるがはっきりした件数はわかりませんから只今主事の方で調査させます、鑑定は主事の方で間違ひない様に致して居ります、金銭取扱も主事の方でやっています
 それから食糧対策は人口問題と常に併立する問題でありまして民政府としては八重山に自由移民の計画をしています、その他北部農場等の開墾も考へています、八重山への集団移民についてはゲスリング軍政官に交渉致しました所暫く待てとの返事がありましたので今は控えている様な状態であります、猶俸給生活者の入質件数は一二三件であります
○番外(総務部長與儀達敏) 第五項の食糧問題に対する質問は要救護者に対する質問だと考へます、要救護者、その家族、欠食児童にはその機に臨んで適宜に致し無償配給もして来ています、今回の通貨切替の際も配給致しているのであります
◎九番(亀川惠信) 現今の諸物価の高騰振りは正に悪性インフレの様相を呈し、郡民の生活は逼迫しているのであります、去年の今頃の物価と比較して今の物価指数は二・三倍、物によっては五・六倍も騰って居り郡民特にサラリーマンの生活は苦しい状況にあるのであります、加ふるに漁村に於ては例年にない漁業の不振で困って居り農村に於ては皆さんの見られる通り八方塞りの状態であります、郡民結集して食糧問題の解決に邁進していますがこれに対し根本的物価の安定政策を伺ひたい
 次に楽土建設は外面だけでなく内面的にもやらねばならない問題で現今一般民衆の心理は物欲、黄金万能主義になり人心は浮薄になり堅実味を欠いているやうな状態で酒の消費量は戦前より増している様な傾向があり甘蔗作は増大しているが酒の原料と化し主食たる甘藷作は減少の一路を辿りつつあります、かかる現状は実に重大問題でありまして公務員は真面目に率先垂範日々の生活を是正して貰ひたい、物の少い今日消費節約は勿論貯蓄奨励の実績を上げる等斯様な精神分野に於ける知事の方針をお伺ひしたい
 もう一つは人物養成についてであるが一人の優秀なる人物が民衆をして強大ならしめると云ふことは私の駄弁を要するまでもないことでありまして現在の宮古の人物は低下の一途をたどり将来に暗影を投じているのであります、本年一月頃沖縄に綜合大学が出来るとの話がありましたが実現されていないのは遺憾に堪えない、日本留学も駄目になった様でこれが実現方を議会の総意として軍政府に猛運動をする必要があると思ひますが知事さんの御意見は如何に、それから南静園の問題ですが同園の設備は南西諸島で一番劣っていると云はれている、外観は整備されたが内容は貧弱で一八〇名の患者に対して医者一人、看護婦一人では余りにも貧弱すぎるのであります、殊に斯様な特殊な病院に於ては研究心の強い医者が必要でありまして外国では現在ダイヤリン、プロミン等の新薬が発見せられて居りましてその治癒率は軽患者に於ては約五〇%の成績を上げているといはれています、これは設備がよくて治療期間が長くそれに医者が研究的にやっていると云ふことに原因するが幸にも南静園にはこの度福田先生をお迎え致しました事は非常に嬉しく思ひます、福田先生は大島の福田医院の副院長をしていられた方で斯様な重要ポストよりはるばる来られた氏に対し吾々は全面的に協力いたしたい、猶南静園は充分なる治療設備をして戴く必要上約一、〇〇〇、〇〇〇円の予算計上をすることになっていたが今議会に間に合はずに出来なかったと云ふことで後四、五十万ばかり計上して貰へるなら内容外観共に立派になると考へます、この点知事の御同情をお願ひしたいのであります
○知事(具志堅宗精) 物価の安定政策は皆さんの御知恵をお借りして改善致したい、物がないから物価も騰るんぢゃないかと思ひます、本郡の甘藷の平均収穫高は坪当平均四斤であるが城辺西北部の或部落では、石ころ、やせ地と云ふ悪条件を克服して坪当収穫一三斤にまで増収したと聞いています、物価安定策も物の増産を基礎にして考へられるのでありまして郡民がやる気があれば現在の倍の収穫は為し得る思ふ、全郡民が蹶起して物を数倍獲得しようとする精神が必要であります、必ず出来ると思ひます、一例として私の体験でありますが昨年十月の暴風で私の植えた甘藷もやられたが早速中耕、除草等して手入れしましたら坪当一〇斤の収穫を得ることが出来ました、要は農民の努力によって増産も出来ると思ひます
 それから低物価政策だが現在燃料は一ドラム時価で四、〇〇〇円もするものを軍政府の配給は僅かに二二円余でやっています、それで燃料は低物価政策に協力する者に優先的に配給することにして差当水産会を通して配給しその代り魚は安く郡民に配給されるやうに致してあります
 其他大工の労務賃銀等驚くほど高いのであり一日も早く軍政府に猛運動をして物資の入手を計りたいと思ひます、然し今度の通貨切替でも事実が証明している通り宮古の経済は必ずしも不安定とは云へないのであります、八重山の通貨は八〇、〇〇〇、〇〇〇円内外であるが宮古は多くて四〇、〇〇〇、〇〇〇円程度で財政状態は宮古が堅実であると思ひます、目下自由貿易の促進運動をしているのでありますが自由貿易をするにしても金を入れるよりは物を入れると云ふことをして貰ひたいのであります、自由貿易はオール琉球ばかりでなく日本、台湾等ともして物資の獲得を計りたいと思ひます
 猶又必要以上のブローカーは寄生虫的存在でありましてこれは増産面に転向させ消費面は抑制したい、これは私の赴任当初からの懸案でありまして新設料理屋を禁止した所以も又そこにあるのであります、民政府直営事業も郡民生活が安定するまでは必要でありまして鉄工場、木工場、鍛冶屋の設置を為し農器具其他農家必需品を生産して廉く供給すると共に出来れば湯屋、食堂、簡易ホテル等の設置も計画して低物価政策の一助としたいと思ひます
 文化生活面に於ては社会課に人材を得て居り課長の活躍を期待して居ります
 人物養成については軍政府にも交渉しまして日本留学の促進方を陳情すると共に高等学校、農林学校、水産学校、図書館等の強化を計画しています、図書館の内容充実については郡内には未だ貴重な図書があると云ふことを聞いているのでこれが購入費として五〇、〇〇〇円計上してありますが猶必要であれば予算は惜しまずにやるつもりであります、沖縄大学についても沖縄出張の度毎に軍政府要路の方々と折衝しているのであります
 南静園の御話は尤でありますが私は他所の療養所の設備は見て居りませぬが勿論現在の設備で充分とは考へて居りませぬ、南静園は今やうやく外観だけ出来たのであり内部の充実はこれからであります、軍政府も関心を持たれまして医療薬品は勿論、器具其他電気設備品等時価にして二〇、〇〇〇、〇〇〇円以上はする機材を下さって居り徐々に設備は強化されるものと思ひます、食糧も福田さんの話では他に比較して少いとのことで軍政府に折衝しまして近く二、八〇〇カロリーにすることになっています
 現在郡民は四四〇カロリーで南静園には約七倍に当ります、その他医師、看護婦の増員も考慮致して居ります
○議長(與儀達敏) 只今正午でありますから午前中は一応これで打切りまして昼食することにします
 食糧問題を中心に文化問題等熱心な質疑応答がありましたが大体重要な事柄はこれで済んだものと思ひますが午後は如何しますか
○二十番(豊里寛傳) 午後も引続き一般質問をやって貰ひたい
○議長(與儀達敏) それでは午後も一般質問をすることにして午前はこれで終ります(正午)
○議長(與儀達敏) 開会致します(午後一時)
◎十一番(砂川徹雄) 本郡食糧問題解決の鍵は一日も早く大々的に造林することにより解決出来ることと信じます、それ故に各市町村に対し公有林、私有林の造林計画を為さしめる方法はないか、計画ばかりでなくこれを実際に強力に実施する方法はないか、それから浦内牧場の経営方針をお聴きしたい、収穫後の甘藷の貯蔵方法は何とか出来ないものか、猶或程度の雑穀の生産計画が必要で米の外に麦、大豆等の生産計画を聴きたい
 通常議会で農産加工場設置の話が出たがその後如何なっているか、八重山への移民は中止になったやうだが実施の見通しはついているか
 公益質屋の昨年八月より今年の七月迄の取扱件数、各市町村別の取扱状況、金額、担保の種類、それから将来煙草を専売制とする様だがその準備として現在如何なることをしているか以上お聴きしたい
◎十八番(嵩原重夫) 先の議会倶楽部で農林部長は西表に水田適地があると云ふことだったが食糧事情の逼迫している今日何故に手をつけないか、その理由を聴きたい
○議長(與儀達敏) 十一番、十八番の質問に対し主管部長の答弁をお願ひします
○番外(農林部長與儀喜文) 造林事業は今後五ヶ年計画で全郡緑化を計るつもりで公有林は既に出来ていますが私有林、部落有林の計画は目下調査中であります
 浦内の牧場には去年野田さんより妊娠牛一〇頭の外に二頭購入致しまして只今浦内牧場に放牧中であります、猶調査の結果山羊飼育にも好条件の地帯でありまして一五頭飼育致して居るのであります、只今の牧場の隣をイナリ牧場と云ひ浦内牧場を拡張し一八〇町歩として牛を主とし併せて山羊も飼って本郡畜産の増殖を計るつもりであります
 甘藷の貯蔵は困難で研究中であります、農産加工は主任技官を置いて準備中であります、雑穀の生産計画は本郡は気候条件からして昔から粟作が主で貨幣制以前は納税も粟でした時代もあったので粟の増産計画も考へています、又台湾産の落花生を集団農場で試作中でこの作物は肥料関係もよいし油も取れるし滓は味噌醤油の原料となり且つ三期生で暴風、旱魃にも対向性(ママ)強く本郡には有利であります
 農産加工場は資材難の為当初予算九〇、〇〇〇円では不可能で追加して貰って完備したいと思ひます
 猶十八番の質問の浦内水田問題は計画してあるが軍政府より移民の中止命令がある為当予算には計上してありません
○番外(総務部長與儀達敏) 農産加工場が完備するまでには二〇〇、〇〇〇円要りますので本年度は当初予算で間に合はせてやりたい、それから移民は軍政府の援助を得て浦内等に年次計画を以て早急に実現したいと思ひます
 公益質屋については厚生部長よりあります
○番外(厚生部長奥平朝親) 昨年八月より今年の七月二十日までの取扱件数は五、二二七件金額にして一、七八三、六二〇円、一件平均三四一円となって居ります、市町村別取扱件数は平良市五、〇二五件、城辺町一二四件、下地村七二件、伊良部村六件、多良間はありません、貸付金額は最高五〇〇円を規定してあります、質物は衣料、時計、上布原料、毛布、金指輪その他で衣料が主に多いのであります
○議長(與儀達敏) 煙草専売について主管部長答弁を願ひます
○番外(経済部長本永透) 煙草専売は只今準備期でありまして栽培、加工、専売法等を先決問題として先づ栽培適地を研究せしめて居ります、作付計画は現在一町歩を予定し各市町村の適地を選定してやって行くつもりです、又専売法施行規則を必要と考へまして草案準備をしています、乾燥法、加工技術は目下研究中でありまして植付は九月頃が適期でありますのでそれまでに法案を作り実際にやる考へであります
◎十一番(砂川徹雄) 各市町村の施業案である私有林、公有林の造林実施計画を聴きたい、もう一つ煙草専売実施の場合は栽培を如何するかと云ふことが問題だが試験栽培をする必要があると思ふがその点は如何か
○番外(農林部長與儀喜文) 五ヶ年計画の実施案は平良市二四四町歩、毎年五〇町歩宛、城辺町五〇九町歩、下地村八六町歩、伊良部村一五〇町歩、多良間村六四町歩計一、〇二七町歩の造林計画をなしています、種子は郡内で自給する必要がありますので母樹林を保有し万全を期しています
○番外(経済部長本永透) 煙草栽培は直営してやる必要があるので各市町村に割当指定してやりたいと考へています
○知事(具志堅宗精) 十一番の質問に対し民政府の根本方針を私からも御答へします、大体専売法その他の行政法規は国利民福を基礎として人民の為にあるのでありましてその精神を以て安くて良い煙草を郡民に提供して郡民の負担を軽くしたいと云ふ考へで煙草専売を実施したいのであります、事業であるから若干の収益はあるかも知れないがそれも結局は民へ還元されるわけで無理がなく窮屈がない様なゆとりのある法を作り共に栄えると云ふ方針でやりたい、いづれ草案出来たら皆様の御審議を御願ひしたい
◎二十番(豊里寛傳) 地方に慈善病院の分院を設置する計画はないか豚に人糞をやるのは非文明的で非常に恥べきことであり豚嚢虫予防上からも豚便所の改良は急務であるがこれに対して計画はないか
 宮古には現在漁船が四〇隻、病院が二〇軒もあると聞いているが製氷は保健衛生上から見ても是非必要であります、今回の追加予算に製氷施設費として約一八〇、〇〇〇計上してあるがこれで出来るか、又ブローカーをなくすと云ふことだが彼等に正業を与へる準備は出来ているか猶市町村交付金の基準は如何なる方法でやっているか
○知事(具志堅宗精) 各市町村に慈善病院分院の設置計画はしているが医者が居ない為未だ実現出来ない、各市町村で医者を探すなら何時でも設置致します豚便所の改良については豚嚢虫を根絶する上からも必要でありこれは私の署長時代でも取上げてやったこともあります、理想としては内務省の定めた便所がよいが応急の方法としては沖縄で米軍がすすめている方法を取り豚舎と便所を切離せばよいと思ひます、沖縄で薦めているのは土を掘り用済みしたら蓋をし満てばそこは埋めて又作るといふふうにしています、何れにしても要は郡民の熱意の問題であります
 製氷施設費の一八〇、〇〇〇円は附属資材の購入程度の費用で主要資材はアメリカから入る予定で八月一ぱいでは入手することと思ひます
 ブローカーは生産増強面に向ける考へで先づ織物振興費として一〇〇、〇〇〇円計上してあるので婦女子はこの方でも仕事は出来るだらうし又荒蕪地開拓等も自分の力でやる意志があればさせるつもりであります
○番外(総務部長與儀達敏) 市町村交付金は種類を一、二、三種に分け第一種は市町村の課税力により第二種は財政需要費並に人口により第三種は特別なる事情により査定交付しています、特別なる事情とは天災地変等を意味しています
○八番(下地シズ) 質問取消
◎十四番(粟國浩和) 配給基準のa・b・c・d級に非常に不公平な点があるから各人の資力、市町村民税を見て級別して貰ひたい
 猶又現在の物価指数は二十五年前と比較すると一五〇倍乃至二五〇倍にもなっている、二十五年前三〇円給料を取っていた者は今は二、三千円も取らねば生活は出来ないがそれは財政状態が赦さない、それで俸給生活者に対しては食糧等を増配して優遇する様には出来ないか、それから食糧危機の迫っている今日八月分は繰上配給を為し状況によっては九月、十月も繰上配給してその中食糧事情が好くなれば一ヶ月は停止する様にでも臨機の措置をして貰ひたい
○知事(具志堅宗精) 俸給取の待遇は適当に考慮したいと思っています、配給の特別配給をしたら一般より誤解を受けますのでこれは出来兼ねます、繰上配給の件は経理部長の方で手続きしているから不日許可があると思ひます、九月、十月は食糧不足だから増配を考へています
◎十四番(粟國浩和) 文教部長にお聴きします、現在市内にある既設中学校は各市町村にある新設中学校と教科目も資格も同様であると考へますが既設中学校は解散してはどうか、聴くところによると既設中学の生徒は高校入学の時は優先的に出来ると父兄は考へているらしいがそれは事実であるか
 次にこれは議会倶楽部でも知事さんに御願ひしたことだが平良市の桟橋使用料は余りにも高い、桟橋は起債して作ったものであってそれから使用料を取るのに悪いかと云へばそれまでだが大平良市が未だ徴集したこともない桟橋使用料を貧弱町村から搾り取ると云ふことは友好的立場から考へても甚だ面白くないことで平良市は予算化してあるしこれを削るのも困ると思ふから民政府で若干の補助をして郡外からだけ徴収して郡内は撤廃する様に知事さんの力でして貰ひたい
○番外(文教部長砂川惠敷) 学制改革に伴ふ学級の処理は日本に準じてしたもので已むを得ないことと思ひます、然し既設の中学校、女学校の生徒が郡の優秀生を集めているとするならば今解散するのは惜しい気がします、生徒も又各市町村に戻るのは好んでいない、猶大体高等学校に進学すると思ふが無条件の進学は考へていない、地方中学校も同様に希望者は全部受験せしめる、然しその大多数は既設中学の生徒が入学するんぢゃないかと思ひます
◎十四番(粟國浩和) これは将来の問題だが試験方法は如何なる方法でやるか、今の中学の先生は、大部分が高等学校の先生で自分が一年から三年まで預った生徒だから情実的に入学せしめると云ふ様な事は考へられないか
○番外(文教部長砂川惠敷) 試験方法は試験委員を選定してやります、猶情実的云々の話は考へたくない
○知事(具志堅宗精) 十四番の質問に御答へします、桟橋使用料の高い原因は請負制度であるからと思ふが一応地元町村の方で市当局と交渉して見てはどうか、将来自由貿易にでもなれば現在の桟橋では小さくて仕事が出来ないと思ひますので将来はポー岬附近に防波堤も兼ねて造りLS・FS等も自由に着ける様な施設をやって見たいと思ひます、その実現の暁は郡内からは一文も使用料は徴収しない事を言明します
○十四番(粟國浩和) 私は桟橋使用料については質問はしていません、お願ひしています、知事さんが中に立ってやって戴きたいのであります、平良市には猶出来る事なら補助でもやって欲しいと云ふお願ひです
○知事(具志堅宗精) お話はよくわかります、補助も色々と検討を要するものでその点御了承をお願ひします
◎十五番(砂川佳久) 食糧問題と関連して糖業についてお聴きします、糖業は食糧問題と至大な関係を持つが甘蔗の作付は如何なっているか、それからジャバ、キューバ糖は話に依ると非常に安いと聞くので本郡糖業に影響がありはせんかと云ふ不安があります、それに対する指導方針、糖業の見通し等をお聴きしたい
 猶現在家畜の郡外移出が禁止せられているので移民するにも無家畜移民となっている、これは移民者にとって重大問題であって軍政府と交渉して移民には特例を設けて戴きたい、それから日軍の乱伐した為山が殆どない、その為に台所を預る婦女子は否男も薪取りに行く為労力の大半を薪取に向け食糧増産に大きな支障を与へている、吾々は知事さんのお陰で西表船浮の大森林から薪炭を不足なく入手出来るものと考へていたが一寸入荷を見ただけでその後姿を見せぬが現在如何なっているか以上お聴きしたい
○番外(農林部長與儀喜文) 従来糖業は換金作物として重点を置いて居ましたが終戦後食糧自給の関係で食糧作付に転換しました、然しここ二、三年の間に相当甘蔗作を増してあります、今年は五〇〇町歩で郡内の消費と酒の原料としてこれだけあれば足りると云ふ確信の下にやったのであります、砂糖の郡外輸出は沖縄の復興が進捗せず自給が出来ぬので少しは出せると思ひますが沖縄の従来の統制値段では到底輸出不可能と思ひます、八重山にも出したいが容器の問題で大量輸出は困難と思ひます
 容器の原料は船浮に大量あるが復興資材に重点を置いているので容器の需要に応ずることは出来ないが将来容器が入手出来れば移出は当然するつもりであります、猶郡内食糧は自給し得るだけの生産も出来ない、これにはどうしても郡外から移入せねばならない
 移入方法もバーター制にするのが得策でバーター物資の必要もあり、そのバーター物資としては畜産に重点を置いているが畜産増強も飼料問題で甘蔗は葉が飼料にもなるので家畜飼料としては甘蔗作は是非必要で十分に飼料の供給源となる面積を増やす方針であります
○番外(総務部長與儀達敏) 郡外引揚者の家畜持出しは一時禁止されて居たが其後軍政府と交渉の結果本当の引揚者であるか否かを確かめてから許可すると云ふことになり現に実施しています
○番外(事業部長東風平惠令) 薪の配給が停滞しているのは輸送其他労務者の問題で此の提出予算が可決出来たら宮古全体に月々の所要量を配給することが出来ると思ひます
◎五番(砂川惠知) 宮古織物工業組合復活について希望を申上げます、本郡の織物業は産業界に大きな役割を持っていたが戦争により殆ど全滅の状況であります、移出向の上布でなくとも一日も早く復活して現在困っている衣料問題、失業者対策等を解決したい、昨年五月創立委員会が出来て郡一円として資金の募集も出来たがいろいろな都合に依って現在では中止の状態であります、やらうと思へば今日明日でも設立出来る準備は出来ているから此の際知事さんを中心として知事さんは生みの親として実現して戴き度い、この復活によって経済の安定、失業問題、人口問題に大きな貢献を為すことと思ひます
◎十八番(嵩原重夫) 織物工業組合の復活は宮古の人々の生活に大きな影響を与へ先刻から論議されている婦女子のブローカー問題もこれに依って解決出来ると思ふのであります、定款も出来まして組合員の募集もして設立準備は出来ていますのでこの際組合員総会でも開いて知事さんが産婆役の労を取られまして実現して戴き度いとお願ひします
○知事(具志堅宗精) 五番と十八番にお答えします、私は赴任の折宮古の織物業振興発達については当時の軍政府総務部長レートン中佐と覚書を手交して来たのであります、当初より相当の関心を持って居ったのであるが時期至らず現在に至って居ます、ところが最近織物組合設立について妙な気配があります、民政府が手を入れてやれば又平良市農業組合の問題同様にごたごたが起りやせんかと心配しています、然し民政府は民政府としてやるつもりで予算にも一〇〇、〇〇〇円計上してあるがこれも寧ろ皆さんの燃え上る力でやって貰ひたいと思ひます、それが出来れば民政府としても十分なる補助は考慮しています
◎十三番(友利清俊) 経理部長にお聴きします、現在宮古のトラック業者は約一〇〇名居りまして各々郡の復興事業、交通に貢献しているがタイヤー、部分品等がないためにその修理に非常に困っている、莫大なる費用を投じて探出して使用しているがそれも廃品に近く修理修理で運営に困っている状態です、沖縄には日軍、米軍の自動車の部分品が多いと聞いているが軍政府と折衝して入手することは出来ないか
 次は農業団体についてだが郡内漁業界は郡水産会が出来てすばらしい成績を上げているがこれに反してどう云ふわけか農業組合郡連合会は未だに生まれない、私は不思議に堪えない、先程知事さんは織物組合には手は入れたくないと云はれたが農業会だけは知事さんが中心なら早ければ早いほどすぐ出来ると思ひますがこの点知事は如何なる考をもっているか、以上お聴きしたい
○番外(経理部長池村實秀) 自動車部分品入手方については吾々は絶えず軍政府に申請して努力しているが何時入るかわからない、入手出来たら民需用として廻はす考へであります
○知事(具志堅宗精) 自動車部分品入手については経理部長より話のあった通りであります、再び軍政府に折衝して早急に入手出来る様に致したい
 農連設立については、知事も市長も同様だが郡民の福利以外には何もないと思ひます、織物組合でも農業組合でも下からの燃え上る力がない限り駄目である、産業機関に対しては私としては余り干渉せん様にしています、農連の設立についても関係者の熱意が必要で関係者から援助の希ひがあるならば敢然として援助したいと思ひます
◎二十一番(玉城玄教) 実業教育機関が整備されつつあることは喜びに堪えない、水産、農林高等学校が出来て立派な成績を上げ水産宮古、農林宮古の建設に貢献することも近き将来に在り喜ばしいことであります、然し猶一つ必要でありますことは高等工業の必要であります、科学の基礎の上に立ちまして農業の機械化、全宮古を科学的に建直すと云ふことは必要でありまして科学工業の促進、民政府内でも科学指導者の必要であることは私一人のみならず皆が欲しているのでありましてこの見地からしても工業学校の設立は急務であります、宮古は従来工業に無関心であり今頃残念がっても追つかないが今後出来得る限り科学を発達せしめ文化宮古を建設したい、その意味で高等工業設立の期成会でも作ってやりたいが知事の御意見は如何かお聴きしたい
 次はマラリアの駆逐問題でありますが暴風、旱害は食糧に一大打撃を与へたがこれはマラリア駆逐に絶好の機会でありまして一段と今力を入れて貰ひたい
 猶移民の問題ですが歴史の教へるところに依りますれば移民は部落単位が成功している、二二四年前、保良から長間へ移民して成功している、これは為政者の力を意味するものであり移民は部落単位にやる必要があります、宮古はミヤークミソパラと昔から云はれ三万人の人口が適当であるが現在は八万人の人口でこれには無理があり食って行けない、それ故移民は確乎不動の郡是としてやる必要がある、ところが軍政府は今移民をすることをおさへている、それなら吾々は今□(何カ)を為すべきか、何を考へるべきか、今は準備の時期である、その準備として学校教育に移民と云ふことを入れて準備教育をやる必要があると思ふ、高等学校には移民指導者の養成も必要であるがこの点についてお聴きしたい
 更に六・三・三学制は出来たが新制中学の校舎を建築することは現在の貧弱市町村の財政では到底不可能でありまして中学校だけは知事さんの手で是非作って戴きたい
○知事(具志堅宗精) 高等工業設立の意見は至極同感である、問題は適当な教授がいるかどうかであるが時期を見て適当な施設を持ちたい、人材の問題は重要であって官公吏の養成所も作って宮古の為にやると云ふ様な公僕精神を打込みたい
 新制中学の校舎建築問題は市町村の財政に応じて出来ないと云ふところは民政府でやってもよい、校舎用としてのコンセットは沖縄には六〇棟分位あるがこれは二ヶ年位しかもたぬとの話でこれで建築するのは考へなければならぬと思ひます
 マラリア撲滅についてはDDT、アテブリン等を貰ひ受けて一生懸命にやっているがこの軍政府の熱意と援助があれば四、五年では根絶出来ると思ふ、マラリアと癩の根絶は移民問題にも根本的に重大でありまして大いに力を注ぎたい
 移民については軍政府としましてもオール沖縄として大規模にやる方針らしく今はおさへているけれど不日軍政府の力で出来ると思ふが民政府としては軍政府の方針についてゆくのは当然ですが皆様の協賛を得まして自由移民として五戸単位で二五世帯を送り出す考へであります、移民教育も文教部長の意見を聴いて学校で逸早く実行に移したいと思ひます
○番外(文教部長砂川惠敷) 移民教育はその重要性から去年校長会に於ても協議しまして各学校に実施案を送る予定でしたがいろいろの手違ひで今まで実施案が出来ていません、目下研究中であります、然し各学校もその必要性から今でもやっているが只実施案がないだけであって今後同案が出来次第歩調を揃へてやる考へです
◎議長(與儀達敏) 本日は今朝から熱心な御討議をなされ感激致して居ります、既定の時間も来ていますから今日はこれで休会致します、明日は合同研究会を午前十時から祥雲寺で致します(午後四時三十分)
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