戦後初期会議録

組織名
宮古議会
開催日
1948年02月18日 
(昭和23年)
会議名
第7回宮古議会[8]
議事録
   二月十八日
◎議長(與儀達敏) 開会宣告(午前十一時十分)
◎議長(與儀達敏) 出欠報告を致します、出席二十名、欠員一名です、参事会選出に就て選挙方法を御諮り致します
◎十九番(砂川惠一) 口頭選出にして、亀川惠信、下地盛壽、島尻秀信、砂川徹雄、塩川寛誠、粟國浩和、砂川惠一以上七名に御願ひしたいと思ひます
  (「賛成」の声あり)
◎議長(與儀達敏) 只今十九番の意見には異議ありませんか
  (全員「異議無し」と云ふ)
 御異議がない様ですから十九番の意見に決定致します
○議長(與儀達敏) 議案三十一号審議のため休会します
◎議長(玉城玄教) 開会宣告
 議案第三十一号一九四六年度宮古民政府歳入歳出決算認定に就てお諮り致します
◎八番(伊志嶺玄良) 委員附託にして新しく選出された参事会にして貰ひたい
◎十九番(砂川惠一) 私は不賛成であります、私は新しい人より現在の人でやった方がよいと思ひます
◎十一番(砂川徹雄) 私は八番に賛成します
◎議長(玉城玄教) 只今、新しい人にさせると云ふ意見と現在の人々にさせると云ふ意見があるが如何に
  (「新しい参事会にさせろ」と云ふ声多い)
 それでは八番の発議の通り新しい参事会に附託して認定して貰ふことにします
  (「異議なし」を全員云ふ)
 これで議長を退きます
  (議長席より二十一番席につく)
◎議長(與儀達敏) 議案二(三カ)十一号を除き全議案を一括上程します
◎二十一番(玉城玄教) 議案二十六号一九四八年度歳入歳出予算が本年の有ゆるものに滲透し基軸をなすことは誰も知ることで、これを動かすものは人間である、予算の運営が上手に行くことによって本郡の復興、楽土建設も又上手に行くことと思ひます、知事は下級官庁に対する指導、部下に対する指導を強化して予算運営上遺憾なからしめん様に善処して戴きたい、増俸するには総花的増俸ではなくその人間の勤務情況を精密にして信賞必罰、真面目なものは抜擢増俸されたい
 議案二十九、三十、三十三号は事業に対する予算であって経費に充分注意し赤字を出すことなく郡のため強力な活動をして貰ひたい、議案三十四号税法改正に対しては法規にとらわれることなく実状に則した課税をされたい、議案三十五号教育法は当局の大英断で教育によって宮古の画期的新生面が出来るので喜びに堪えない、有ゆる方面から困難を伴ふと思ふがそれを克服して完璧を期して戴きたい、議案第三十六号生活保護法は人選に注意し、保護を受けるべき者が受けず受けんでもよいものが受けると云ふ様な片手落のない様充分注意し万全を期せねばならん、以上希望を述べて議案三十一号を除き全議案を二読会、三読会を省略確定議に附したい
  (「賛成」の声あり)
◎十一番(砂川徹雄) 二十一番に賛成するが希望をのべて賛成したい、復興第二年目の楽土建設に向ひ多くの事業が計画されているが殊に二十九号の船浮開発事業は八万郡民の期待するところにして学校の復旧問題、薪炭問題、住宅問題、低物価政策の実現等、この事業の成功がなければ解決不可能である如何なる万難を排しても成功せねばならぬ、当局は全郡民の期待に副ふ様努力して戴きたい、以上希望を陳べ賛成したい
◎議長(與儀達敏) 二十一番、十一番より議案三十一号を除き全議案を読会省略確定議に附したいと云ふ意見があるが異議はないか、と諮りしに
  (全員「異議なし」を呼ぶ)
 それでは全部確定議にします
◎二十一番(玉城玄教) 愈々公選も近づきつつある本郡の黎明が只今施行されんとする公選によって生ずるものであって郡の将来のため期待する人を選ばねばならん、此の選挙に対し取締りの任に当る方は選(検カ)挙よりも事前に予防すると云ふことをしなければならない、従来の選挙に於て、一警官ににらまれ、選挙に支障を来たした例もあり斯様な事がありとするなら、この選挙は心配で公正明朗なる選挙を実施して欲しい、選挙に対する警察署長の心構へを八万郡民に発表して戴きたい
 それからインフレになって新円がだぶついているので貯蓄方法を講じなければならない、郵便貯金、簡易保険の方法を研究し貯蓄心の高揚をして貰ひたい、これに対する知事の気持を伺ひたい、金融機関の設置も必要で金持ちの芋の買ひだめや、現在植へてある芋に対し予め購入資金が投げられ物価を釣上げているのは農民の金のないことを立証するものにして収穫時には農民の手に入らないと云ふことは本郡の食糧確保の面からも考慮され彼等農民に対する資金融通は急務であり、又有ゆる事業に対しても金融機関の急速なる設置を要望するものである、もう一つは服装問題だが男は軍政府の恵みにより服装は大体よいが女の服装に対し考慮されていない、又自覚していない、終戦前の和装になる傾向があり、今まであったものならいざ知らず、四、五千円もする着物を買ふのは考へものであり殊に嫁入り前の娘を持つ親は一大驚(脅カ)威を抱いている、何とか文化面から考へて充分研究し実情に即する服装の制定をする様、当局の英断を要望する、次建築であるが吾々はもう少し資源を考へて本郡の粘土を資材にして煉瓦を作り住宅問題の解決をする様技術と当局の新しい熱意を希望し又意向を承り度い
○番外(警察部長下地寛忠) 第七回宮古議会に於て議員の態度は和気藹藹たるもので厖大なる予算の審議に対する熱意を見、感謝を覚え、この美しい光景が楽土宮古に貢献すること大なりと信じ八万郡民の代表たる議員であるので八万郡民が議場を通じて当局を鞭撻し一入光明をもたらすものと感激に堪へない、又特に警察に理解をもたれ待遇改善して下さったことに対して厚く御礼申上げ署員を激励層一層努力する決心であります、私も公僕の一人であり警察も民衆と共にあり八民(万カ)郡民の不為になる様なことはしたくない、警察が従来と変った点は以前は政党の走狗とも云はれ、一巡査が私情に絡れ一候補者のみを監視していた例もあったと云ふことを先輩から聞かされ残念であった、又警察署長としても検挙一点ばりで多数検挙することが敏腕な署長の試験的な様なもんだったためそこに無理があり功名のためには手段を選ばず民間から誤解を受けたこともあったそうで現在は検挙より防犯を第一とし防犯協会の活動を期待しています、そのために各部落に部員を派遣して選挙座談会を開き一人でも違反者が出ないやう徹底を期しています、従来は選挙情報が熱心に蒐集されていたがその情報は確実だった、私は情報は蒐集しない方針です、蒐集すると秘密を守る様にしても洩れる、洩れると無理をして候補者のためによくないので情報蒐集はしてない、今度の公選には戸別訪問が許されたのでその方がよいと思っている、密告者等があったときは買収がなくとも犯罪取締りをせねばならず本人を来て貰って取調べる訳ですが、なくともそのまま帰したら警察の権威にかかはると思ふと、そこに無理をして人権蹂躙をなし今まで民衆が誤解されていたので私共は証拠一点張りでやりますから我々の苦しい立場を理解して下さって皆様の御協力を御願ひします、猶選挙運動に関し注意したいのはポスター等は日本製の紙を使って貰ひたい、アメリカ製の紙は現在配給がなく若しアメリカ紙を使ったら経済違反になるからです、親心を子知らずとか沢山の警官の中には思はしからざる者も出るかも知れないが、こう云ふ者は遠慮なく言ふて下さい、その他知事の御方針によってやりたいと思ひます、警察官には限りがあり七十名で八万郡民を相手にするので不行届の点もあるだろうがこの点は又郡民の御協力を仰ぎたい
○知事(具志堅宗精) 十一番、二十一番の質問に対し答弁します
 議員諸公に於ては数日に亙り熱心にこの厖大なる予算案を審議されて感謝に堪へません、サラリーマンの優遇に対しては特に御同情をよせられていることに対しては目頭の熱くなるを感じます、私共は一致団結して郡の復興、楽土建設に邁進して郡民の御期待に副ふ様努力します、議案も読会省略で決定して下さいまして感謝しています、予算運営に就ては遺憾ない様皆さんの期待に副ふやう運営します、増俸にしても抜擢増俸せよとの御意見でしたがもっともな事だと思ひます、この事に就ては勤怠表により信賞必罰をやりたいと思っています
 特別会計の運営に就ても万全を期して皆様の御期待に副ひたい、税法改正に就ても適正公正なる負担を御願ひしたい、教育改正は郡の発展のため大きな問題なので粉骨砕身努力したいと思ひます
 生活保護法ももっともで公正妥当なる運営をしますがこれには市町村長の御協力を御願ひしたい
 船浮開発事業に対しても一生懸命努力して立派な開発を期したい、今先二十一番の選挙に対する警察部長からの詳しい答弁がありましたが警察部長の答弁通り立派な精神で明朗公正なる態度で公選に臨みたい、警察は予防警察をするのが建前であるから予防を重点とし法は法なきを以て理想とするの精神で飽く迄も明朗公正なる取締りをする方針です、貯蓄問題ですがだぶついている新円の吸収も必要で逓信部長と相談し万全を期したい、金融機関も琉球銀行の設置に伴って活溌になると思ひます、無尽業に就ても考慮しています、又市町村に資金を割当てて農業物も買受けたい、これは早急に実現したいと考へています
 服装改善も考慮致します、今の服装は和装、琉装、洋装の三本立であるから何れ皆様の智慧を拝借して考へたい、次は住宅問題ですが本郡の林業五ヶ年計画案も愈々軌道に乗りつつあり、西表三千町歩の森林開発と共に解決出来るものと思ひます、煉瓦製造も考慮していますが下地村に石材があるから、これを建築用材にしたらどうかと云ふ財産管理課からの報告があったので利用価値を考へています
○十七番(砂川玄仁) 提出議案は議了済と思ひますから一般質問はこれで終ったらどうか
◎議長(與儀達敏) 上程議案は全部読会省略確定したからこれで閉会致します(午後零時十分)

 一九四八年二月十八日
宮古議会議長  與儀 達敏(印)
  議会議員  亀川 惠信(印)
  議会議員  砂川 徹雄(印)
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