戦後初期会議録

組織名
琉球臨時中央政府立法院
開催日
1951年09月25日 
(昭和26年)
会議名
立法院全員協議会 1951年9月25日
議事録
立法院全員協議会速記録

 一九五一年九月二十五日(火曜日)午前九時四十五分開議

議事日程
 一、立法院議員公選計劃答申について

○仮議長(松田賀哲君) これから全員協議会を始めたいと思う。議題はお手元に差上げてある立法院議員公選の事についてであります。これは先程から特別委員会を組織して御審議をお願いしてあったわけであります。それで委員会の成案が出来て今度の本審議にかける前に全員協議会をしたいという申出であったので開催することにしました。まず項目別にざっと検討していきたいと思う。
  (立法院事務局長比嘉良男君「答申案前文」朗読)
○城間盛善君 これは民政官に提出する公文書の形式になっていますが、とにかく八月三日附のルイス書簡でこれに基きこういう計劃を作ったわけです。立法院としてはこの書簡に対する答申として民政官宛出すべきものでないかと思っています。これが結局メッセージ第三号に対する立法院の計劃ということになると思うが改めて主席宛の公文を還付すればすむんじゃないかと思う。この中、一は公文のしきたりで文句はないと思うが、二のb項の中の議会は群島政府の中に含まれるから取っていいと思う。政党代表があればこれに含んでいいと思います。これに対する説明はこれで終ります。
○仮議長(松田賀哲君) 一つおききしたいが(b)の所だが議会をいれる必要はないといわれるわけか。
○城間盛善君 群島政府と書いてあるからいいと思う。
○嘉陽安春君 議会もいれ政党代表もいれた方がいいじゃないか。群島で一々違うから…。
○仮議長(松田賀哲君) 集ったのは皆いれた方がいい。
○城間盛善君 いいでしょう。議会の次に政党代表といれましょう。
○仮議長(松田賀哲君) (b)の二行だがこれは関係者、つまり学識経験者なんかに世論を適確に把握させるようにしたのか。
○城間盛善君 立法院参議をして把握させたというつもりだが…。
○嘉陽安春君 はじめの「参議をして」とせずに「立法院参議は」とする。
○城間盛善君 二行目の「会同せしめて」を「会同し」にして後は把握するように努めたとする。
○與儀達敏君 世論の動向を「把握する」ようにがいいじゃないか。
○城間盛善君 それでいいでしょう。
○與儀達敏君 (c)の専門の門もおかしい。
○城間盛善君 この門は口のない門ですね。
○與儀達敏君 「専門的研究」というのもおかしい。
○城間盛善君 「専門的研究に努力すると共に」を取ったら…。
○仮議長(松田賀哲君) それがわかりいい。所でルイス書簡だが我々に直接来ていましたか。
○城間盛善君 主席宛です。
○仮議長(松田賀哲君) そうなればこの答申案の宛も直接向うにやっていいかな。
○吉元榮光君 これに主席宛の文書をつければいいじゃないか。
○仮議長(松田賀哲君) だから宛は主席宛にして英文で書けばいいわけだ。我々が直接民政府とタッチするのは原則として出来ないじゃないか。
○嘉陽安春君 タッチ出来ないというのは文書上の手続きで内容からいえばいえるですがね。だから主席経由という形は文書の連絡事務じゃないか。
○仮議長(松田賀哲君) だから宛は主席宛にするんですよ。
○祷 清二君 それが本当のようだ。
○嘉陽安春君 内容的にどうかな。主席としてはその文書を我々に取ついだだけですよ。
○吉元榮光君 これは立法ではなく答申案だから普通の立法とは趣が違うんじゃないか。
○仮議長(松田賀哲君) そうだがこれを主席宛英文で書いて向うが「このように私宛来ている」といえば目的を達するんじゃないか。
○與儀達敏君 主席を経由して出してもいい。
○仮議長(松田賀哲君) 私は直接交渉は出来ないのだから主席を差しおいて交渉するというのはどうかな。
○城間盛善君 私はですね、この一、二の文句は次のページの計劃に入れてその上に主席宛の公文をつけて出すということも一応考えて見たんだがね。
○仮議長(松田賀哲君) そうですか。
○城間盛善君 そうした場合議長の署名がどこにくるかと思ってね。
○嘉陽安春君 ルイス書簡は主席宛だが主席経由で立法院宛ともいえるよ。その場合主席は文書の受理をやる。いわゆる気附け何々殿というのが軍の書き方じゃないか。
○仮議長(松田賀哲君) だからこっちも主題は向うにしても宛は主席にすべきじゃないかな。
○嘉陽安春君 主席はそれを受理すると左の通り立法院から来たので送付しますという形になるんだね。
○仮議長(松田賀哲君) そうです。向うの副申をつけて出すということになる。
○城間盛善君 この内容で宛をすぐ主席に切換えた場合一枚目を取って二枚目から先を向うに出されたら困るな。
○仮議長(松田賀哲君) だから主席に出す場合はこの内容全部が主席宛だよ。だからこれを抜くということはないだろう。
○田畑守雄君 その場合更に一枚上につけ加えられるだろう。
○仮議長(松田賀哲君) その場合この一枚目は答申案の内容の序言とでもいえるわけだ。
○城間盛善君 日附けも議長名もとって、それを次のページにもっていってその上に主席宛の文書をつくってそこに議長が署名すると…。
○仮議長(松田賀哲君) その方がいいじゃないか。
○田畑守雄君 宛だけ消して答申だということをはっきりさせて一応主席の所にやるという形でやったら…。
○嘉陽安春君 これを消したら主席から軍に行く場合は主席発となるから如何にも主席が出したようになる。矢張り立法院からの答申を取次いで貰いたいという文書をつけてやらないと主席が答申した形になる。
○仮議長(松田賀哲君) いや答申の署名者は私になるわけですよ。
○嘉陽安春君 そうです。だから主席宛の答申ではなく軍宛の答申に署名するわけですから主席にはこれを軍に送って貰いたいという意味じゃないかと思う。この宛を取ると立法院が主席に答申して主席がそれを出すということになると立法院の意志と主席の意志を無理にくっつけたことになる。
○田畑守雄君 立法院の権威のためにもこれはつけるべきだ。
○城間盛善君 これはこのままにしてその上に主席宛の文書をつけるようにした方がいいな。主席は只取次にすぎないという意味で…。
○仮議長(松田賀哲君) それで結構でしょう。
○城間盛善君 それと同時にメッセージ第三号の回答も終ったという形にした方がいい。
○仮議長(松田賀哲君) そんならそうしましょう。
○城間盛善君 次の立法院議員公選計劃だがこの名称は今は参議だが公選後は議員といった方がぴったりすると思ってこうした。
  (事務局長比嘉良男君「1、議員の定数」朗読)
○城間盛善君 まず代表する人口の大きさだが三万に一人というのが適当だという考え方から三十一名という数が出た。(b)は立法院が最高の立法機関という意味で委員会活動なども多くなるに違いない。現在の九名よりは多い方が立法院の活動も順調にいくしそれから現在各委員会の委員も切りつめて三名になっているがこれも四、五名にふやして内部組織を強化するという意味から三十名か三十一名が適当じゃないかという行き方。(c)は経費問題だが年額五百万円としたら大体まかなわれると推定してこの程度なら財政上適当と思う。以上の三点に立って三十一名と決めた。只文句は少し直さんといかんが…。
○仮議長(松田賀哲君) ここでお聴きしたいが三十一名は三万に一人となるとどういう風にしたわけか。
○城間盛善君 九十三万四千人以上だから一という端数が出たわけだ。
○與儀達敏君 この1は議長採決とも関係があるからね。
○仮議長(松田賀哲君) 議長の権限などは答申案にない訳だね。
○城間盛善君 そうです。現状通りかも知れませんしアメリカの上院的に副主席が議長になるかも知らんしその形態は触れていない。
○仮議長(松田賀哲君) この(b)だが今御話があったように九名では委員会構成も困るという意味になるんだがそれがここにはっきり現れているかな。具体的に書いた方がわかり易くないかな。
○城間盛善君 これでわかると思うがな。
○與儀達敏君 これでいいでしょう。
○仮議長(松田賀哲君) それから(c)だが五百万円というのは財政局長にでも意見をきかれたのか。
○城間盛善君 きいてありません。調査室で計算したものです。
○仮議長(松田賀哲) 歳費とか旅費でしょう。
○城間盛善君 そうです。
○嘉陽安春君 この点表現を変えんといかんじゃないか。公選立法院の運営に関する費用としたら事務局まで含めたものにとられたら困る。
○城間盛善君 そうだな。これははっきり書いた方がいいかも知れん。
○仮議長(松田賀哲君) 五百万円では少いわけだ。
○吉元榮光君 「現在、立法院参議の人件費は」とした方がいいじゃないか。
○城間盛善君 そこははっきりさせた方がいいだろうな。
○嘉陽安春君 公選後の立法院議員の待遇も現在の立法院参議の待遇と同等以上を維持すべきものと考える。したがって立法院議員の費用は大体こうなるという風にしたら…。
○仮議長(松田賀哲君) しかし財政上妥当だというのは変だよ。これは取りたい。というのは財政局長の意見を聞かんなならんし、又選挙の費用がいくらいる。その収入はどこからということまで考えんと…。この(c)の要旨は現在の立法院参議の費用とにらみあわせて妥当だというのであって財政上の問題ははいっていないよ。
○城間盛善君 現在の参議に要する費用は年額約百五十万円だが公選後の立法院議員の待遇も現在の参議と同等以上を維持するものとして公選立法院議員の費用は年額約五百万円程度に留るのが適当と考えたとしましょうか。
○嘉陽安春君 現在の参議の給料、旅費とせんでわかるかな。
○吉元榮光君 立法院としてなく参議としてあるからわかると思うがね。
○城間盛善君 現在の参議の給料、旅費などに要する費用はとはっきりした方がいいじゃないか。
○仮議長(松田賀哲君) 現在の参議の費用は百五十万円と書いてあるからわかるんじゃないかな。
○嘉陽安春君 (a)だが「全琉の人口から見た」というのは取った方がいいじゃないかな。
○城間盛善君 そうだな。
○嘉陽安春君 その場合は「議員数」になるんじゃないか。議員数と各議員の代表する人口数との比率の意味じゃないか。
○仮議長(松田賀哲君) するとどうなります。
○城間盛善君 「琉球の総人口に対する適当な議員数を考慮すると同時に各議員の代表する人口の適正を期した」となる訳だ。
○與儀達敏君 (b)も「基礎をおいた」とすべきだ。
○仮議長(松田賀哲君) 次にいこうじゃないか。
  (事務局長比嘉良男君「2、選挙区」朗読)
○城間盛善君 現在の群島選挙区では小さすぎるというのが世論であるということを第一にもって来た。そんなら何を単位とするかというので戦前の郡を考えた訳だ。この中大島と沖縄の南部は二に分けた。
○田畑守雄君 (c)の「奄美群島の大島は」ではなく「大島郡は」ではないか。大島本島を二つに分けたようにしている。
○嘉陽安春君 (b)の(1)の大島郡としたら…。
○大濱國浩君 「前記(1)の」でもいい訳だ。
○嘉陽安春君 現存の小選挙区とは群島選挙区でしょう。何も群島選挙区の建前でやらねばいかんということはないんです。要するに小選挙区がいかんというのであって現在の群島選挙区は群島選挙のための選挙区であって立法院の選挙のためではないというようにしたら…。
○城間盛善君 小選挙区ではとでもするか…。
○嘉陽安春君 「選挙区が余りに小さくては」として「これを拡大したい」というのも辻褄が合わない。なるべく大きい方がいいというのが世論であるから或程度大きなものにしたいと書いたら…。
○仮議長(松田賀哲君) 所で戸別訪問だがこれはアメリカでは公然なものではないか。
○城間盛善君 群島選挙法では禁止されていますよ。
○仮議長(松田賀哲君) (b)は郡を単位とした意味にとれないか。だから単位を強くいいきると郡を単位としてしまったということにならないか。「郡を考慮するのが」ぐらいの所でいいじゃないか。
○吉元榮光君 (c)、(a)は(b)の附属にして但し書にした方がいいじゃないか。これは(b)の説明だから…。
○城間盛善君 以上の諸点を考慮に入れて八選挙区に分けたとせんでいいかな。
○仮議長(松田賀哲君) 2、の前文に八選挙区に定めとあるでしょう。八ということは消してしまった方がいいじゃないかな。
○城間盛善君 では「2、選挙区」としてaは「選挙区を定めるには次の諸点を基礎にした。」として(a)を(1)として(b)は(2)として次の小さい(1)、(2)、(3)、は(a)、(b)、(c)とする。次にbとして「以上の考慮に基き次の八選挙区を進言する」となる訳だね。
○仮議長(松田賀哲君) この最後の備考はどうなりますか。
○城間盛善君 消しますか。
○田畑守雄君 いやいやそれは困る。
○嘉陽安春君 そうすると第一に入れんといかんじゃないか。
○田畑守雄君 それがはっきりするね。
○嘉陽安春君 第一選挙区に十島村が入っているから備考は消してもいいじゃないか。
○仮議長(松田賀哲君) 我々の態度としてはどうしたらいいかな。
○田畑守雄君 全然除くという訳にはいかんでしょう。
○城間盛善君 北緯三十度を境界とすると書くか。なぜ十島村を含むかいわれたら条約の批准がまだすまないからといえるから…。
○仮議長(松田賀哲君) 特別委員会としては効力がまだ発生していないから現状通りやるのが妥当だという意味だね。
○與儀達敏君 そうです。
○仮議長(松田賀哲君) そうなれば備考はいらんと思うがね。
○城間盛善君 では消しましょう。
○嘉陽安春君 備考は書くならもっとくわしく書くか削るかだ。
○仮議長(松田賀哲君) これは選挙までにはっきりすれば問題はないわけだね。全体としてはこの備考を入れた方がいいと思うな。
○城間盛善君 第一選挙区の次に現行の北緯三十度を琉球の境界とするとしましょう。
  (事務局長比嘉良男君「3、人口との割合」朗読)
○城間盛善君 人口との割合だが三万人に一人を原則とした。その場合に沖縄と他の群島との差が余り大きすぎるという訳で、単に三万に一人とすると沖縄だけで法定の定足数に達する事もあるというわけで単に人口割だけでは具合が悪いということで、他の群島には地域性を加味しさらに琉球諮詢委員会が発足した時各群島の諮詢委員は六・三・一・一という比率も考慮した結果次の通りなったのであります。地域性の加味ということは計算の場合、沖縄以外の群島は三万で割ってコンマ以下の端数は切上げ沖縄の場合は切捨てたということで地域性を加味したということになっています。
○仮議長(松田賀哲君) 備考にでも切捨て切上げを書いておけば地域性を加味していることがわかるんじゃないかな。というのは三万に一人としたとすると全部人口三万の割でしたということになって地域性を考慮していないということになるだろう。実際は考慮しているわけだからそこは現わす必要があるんじゃないかな。
○與儀達敏君 それは現わさん方がいい。便宜主義に見える。諮詢委員の割合は六・三・一・一だが本当は六と四だった。それを六と五にわけて一が離島の地域性を加味したということになっている。
○城間盛善君 表現の方法は三万に一人を原則とする。「但しこうこうだ」とする訳だ。
○嘉陽安春君 沖縄だけで法定の定足数に達するというのは消した方がいい。但し群島別の地域性を加味し且諮詢委員会の数も勘案した。
○城間盛善君 「加味し且琉球諮詢委員会当時の各群島別比率も勘案した結果各選挙区から選出すべき議員数を次の通り定めた」となる訳だ。
  (事務局長比嘉良男君「4、任期」朗読)
○城間盛善君 任期については各知事の意見が二年、四年となっていましたが二年という任期の考え方の基礎はいずれ基本法が制定されるということを予想してその場合は議会を改選した方がいいということになっています。そこで委員会はこの問題を検討した結果ただ単に立法院だけを改選しても意味はないのでその場合に行政主席も公選されることになるなら解散するのも重大な意義がある。その点不明だから現在通り四年が適当だろう。但し選挙の時期は九月か十月が適当だというので最初の任期は四年に満たないが一九五五年の十月としたから初回の任期は三年七ヶ月となる。それ以後は四年が任期となる。初回から四年とするといつも三月になって予算審議や農繁期で困るからとして三年七月としたいというのが委員会の意向であります。
○仮議長(松田賀哲君) 今の要望事項が入ったので大変いいことだと思うが私としては二年ぐらいが適当と思っていた。こういう時勢だから余り長いことはどうかと思っていましたが要望事項がありますから三年半でいいと思います。
  (事務局長比嘉良男君「5、公選施行の時期」朗読)
○城間盛善君 四月一日以降速に招集出来るようにということがルイス書簡にありますのでそういう限度があるからそれまでには選挙しなければいかんという事ですが知事の意見では十二月、一月、二月と出ていますが十二月後三ヶ月も待たねば招集しないわけだから具合が悪い。その場合の考え方の一つには旧正という年中行事がある。その期間は出来るだけ避けて運動期間の中に入り込まないようにという考え方で結局三月の第一日曜日、三月三日としたのであります。又その頃選挙すれば四月一日という条件にも間に合うと考えている。
○仮議長(松田賀哲君) これは今度の公選施行でしょう。それを入れんでいいかな。
○城間盛善君 そうだね。
○仮議長(松田賀哲君) 初回公選の時期とでもせんと…。それから前に戻りますが任期の所に初回議員で途中で脱落した人の場合はどうか。
○城間盛善君 それはこれには入らない訳だ。
○嘉陽安春君 後任者の総選挙と総の字を入れましょうか。
○仮議長(松田賀哲君) それがはっきりしますね。さあ、一応これで終ります。午後は二時から始めます。
  (午後零時十八分閉議)

   本日の出席者
    仮議長 松田 賀哲君
    参 議 與儀 達敏君
     〃  城間 盛善君
     〃  大濱 國浩君
     〃  祷  清二君
     〃  吉元 榮光君
     〃  嘉陽 安春君
     〃  田畑 守雄君
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