戦後初期会議録

組織名
八重山群島議会
開催日
1952年06月30日 
(昭和27年)
会議名
第10回八重山群島議会(臨時会)[2]
議事録
 一九五二年六月三十日
 午前十一時十八分開議
議事日程第二号
 第一 議案第十八号 群島財産評価額修正承認の件

 議決の顛末
◎議長(潮平寛保君) それでは三名揃いましたから開会いたします。(午前十一時十八分)
○書記長(田盛正雄君) 参与の報告をいたします。元財政部長、元工務部長、同次長、元事業所長、元運輸所長、元事務官漢那憲徳、元事務官崎山英正、元事務官喜友名安好、以上であります。
◎議長(潮平寛保君) 営林丸払下問題を上程いたします。
◎副知事(當銘正友君) 営林丸の問題についてでありますが、前の議会ではすでに決議になっているのでありますが、元沖縄県木材株式会社社長知花高直氏からの委任で、石垣長泰氏から返還方の陳情があった事は前に申しあげた通りであります。その理由として営林丸はもともと春日丸と称して元沖縄県木材株式会社の所有であったのが前政府時代接収され、営林丸と改められて今まで政府が使用してきたものであるから所有者に返還してくれということであります。
 委任をうけた石垣長泰氏は「政府に協力するという意味で接収以来今日まで使用させてきたのだから、使用料は請求しない代り政府のとりつけたエンヂン並びに付属品共そっくり返還してくれ」ということでありますが、それについて政府としましては群府の財産として台帳にも登録されており、群府解消にあたっては払下処分することに前議会でも決議され琉球政府の承認もうけているのであります。したがって元沖縄県木材株式会社の船であったという船体の返還並びに政府の施設いたしました原動機の無償払下ということは要するに財産の処分であり、或は又群府の財産であったものが、こういう事情で群府の財産でないということにもなるので、営林丸が元沖縄県木材株式会社の所有船であったというはっきりした証拠が必要であり、又群府が施設したエンヂンその他付属品の処分についても議会の議決が必要であると思います。
◎大山眞整君 財産目録にもはっきり登録されており、政府財産として処分することも先の議会で決議になり琉球政府の承認もえているので、今更陳情書の通りそうであるということは決議しかねます。慎重に検討すべきであると思います。
○議長(潮平寛保君) 五番議員はどうですか。
◎古見石人君 同感であります。
◎議長(潮平寛保君) 私はこう考えます。営林丸は前政府が接収したものであるかどうかは知りませんが、その中に政府が資金を投じて施設した判然としたものは此の際処分をしなければならないと思います。
 それで木材会社の所有であったという船体は大事をとって処分をせずにそのまま琉球政府へ引継いだ方がよいと思います。その理由として営林丸は政府の財産として前政府から引継がれ、去った議会にも処分をすべく評価もされ処分決定になっていることは御承知の通りであります。
 ところが、陳情書の提出によって色々調査、検討をしなければならないのであります。しかしこれは短時間でできるものではなく、更に又、沖縄県木材株式会社の希望としては使用料の請求の代りに機械その他の無償払下を申請しているが、使用料の支払は妥当であるかどうか。又反対に保管料をとるべきであるかどうか、色々検討を要する問題があるので、はっきりしているものは群府の財産として処分し不明の分は琉球政府へ引継いだ方が妥当であると思います。
  (書記長(田盛正雄君)陳情書を朗読す。)
○副知事(當銘正友君) 今読み上げた通り原動機と共に返還とありますから、その点について慎重に検討ください。
◎議長(潮平寛保君) 前にも申しあげました様に処理方法としては三通りあると思います。要求通り木材会社に返すか、船体もろとも琉球政府へ引継ぐか、又群府財産と別のものをはっきり分けて従業員を救う意味で群府財産は払下処分をし、はっきりしない分はそのまま琉球政府へ引継ぐか、これだけの方法しかないと思います。
◎古見石人君 群府財産処理についてはいくどもむしかえして云われているようであるが、前の議会で決議になっているので、群府財産としてはっきりしているものは引継ぐ外ないと思います。
○議長(潮平寛保君) 五番議員は第三案に賛成というわけですね。
○古見石人君 そうです。
○大山眞整君 休憩していろいろ皆の御意見も聞いてみたらどうですか。
○議長(潮平寛保君) では休憩をいたしまして懇談をいたします。(午前十一時四十二分)
  (その間石垣長泰氏の陳述が約十五分間なされた。)
◎議長(潮平寛保君) 開会いたします。(午後二時)営林丸の処分問題について動議を起します。営林丸の処分については、元春日丸より接収したと云われる財産と、群府資金により購入の財産とに二分し、群府資金により購入の財産は従業員に払下処分しその他はそのまま琉球政府に引継ぐこと。
 理由
 一 営林丸は群府財産として前政府から引継ぎをうけ、前議会に於て評価、従業員に払下決定しているものであるが、今回沖縄県木材株式会社代表より、同社所有財産だとして無償返還の要求がありますが果して会社に返還すべき財産であるかどうか、調査研究の要があること。
 二 若し会社に返すとしても今迄要した船体の修理費、及び保管料の検討の必要もあるので、群島議会残存時間、後十時間にこれらの整理が到底できないということ。
 以上のように決議したらどうでしょうか。
○大山眞整君 異議なし
○古見石人君 賛成します。
◎議長(潮平寛保君) では満場一致でその通り決議いたします。(午後二時二分)
◎議長(潮平寛保君) 第十八号議案を上程いたします。
◎議事参与(宮城光雄君) では元工務部関係の財産評価について御説明申しあげます。本問題は前議会で評価、処分方法についても決議になっておりますが、当時の評価は三月末日までに処分すべくなされたものでありますが、それが六月末に延びたのでその間三ヶ月の間にいろいろ事情が違ってきたのであります。即ち鉄工所については軍管理財産も一括して従業員に払下げるという前提のもとに評価されたものでありますが、軍管理の分は三月末日中村金夫氏に払下げられてしまい、全く骨ぬきになってしまいました。
 更に残ったものの中からも移動溶接器等は政府が確保してしまったのでいよいよ何も魅力のない滓ばかり残っている現状であります。それで前議会での評価は軍管理の分も一体として運営されるという前提のもとにされたものであるから、これらのものを除いた残品の評価は当然変らなければいけないと思うのであります。
 それから営林丸の評価についても当時の評価委員の評価がみなまちまちであったのであります。即ち一人は一万円一人は九万円という調子であったのでありまして、平均を出して決定したような次第でありますが、その後機械も若干の損傷があり、船体等について六月にも評価させてみたところ大きな変化があるのであります。それで三ヶ月を経た今日もとの評価委員、乗組員の希望によって評価の修正をしなければならないと思いますので提案をしたような次第であります。御審議のうえ修正方決議をお願いいたします。
○議長(潮平寛保君) 休憩致します。(午後二時九分)
  (休憩中議事参与宮城光雄君から詳しい説明があった。)
◎議長(潮平寛保君) 開会致します。(午後二時二十一分)先程宮城氏から御説明になりました鉄工所の問題については原案通り決議したらどうですか。
  (「異議なし」の声あり)
◎議長(潮平寛保君) 御異議ないようでありますから議案第十八号は原案通り決議いたします。(午後二時二十三分)
○議長(潮平寛保君) 休憩致します。
  (石垣市側から浦本助役、長田市議、崎山議会議長出席、配電所石垣市移管について話合をなす。)
 石垣市側の意見
 一 配電所の今後の経営について不安があること、即ちわれわれが見通した収入が入るかどうかはっきりしない、一ヶ月に十六万円の収入しかないのに十万円の油代を支払はねばならないので経営上難点があること、以上のことを考え市民の負担ということも考慮の上契約上のことに検討を加えていただきたい。
 政府側の意見
 一 政府側としてはどこまでも今まで話合った通りをとりきめていただきたい。
 二 五月の収入は六月に入って徴収されるので、当然譲渡後といえども五月の電灯料は群府の歳入とならなければいかないこと。
 三 配電所は軍から支給された油によって育って来たものであるが、それも石垣市だけのものでなく郡全体のものであることをお考えのうえ話を進めていただきたい。
 以上の話合がなされたが、後は譲渡契約事務上のことで議会は本会議に提出する必要がない。休憩懇談中石垣長泰氏営林丸の処分決議に対して異議を申し立て、前政府に対し泥棒よばわりをなし退場を命ぜられる等があった。
◎議長(潮平寛保君) 開会いたします。(午後六時四十五分)
 事業部の監査をいたしましたところ、未収金のとりたてについては各課とも努力をされているようでありますが、それでもまだ相当残っているようであります。これに対しては債権の維持の方法を講じられて琉球政府に引継ぎを完了されるよう希望いたします。
 大体協議事項も終わったようでありますので、これで閉会いたしますが、今日まで一年有半色々群政に御努力された議員の皆様方に感謝を申しあげます。私のようなふつつか者が議長としてどうやら任務を果すことのできましたのは、偏に皆様方の御援助のたまものでありまして、ここに議長として厚く感謝のことばを申しあげる次第であります。
◎副知事(當銘正友君) 群島議会は本日をもってその使命を終り幕を閉ずるのでありますが、八ヶ月の間政府が皆さん方の御協力をえて、あらゆる分野に活撥に運営されてきたことについてここに厚く御礼を申しあげると共に、群島行政に偉大なる足跡を残された今日までの御労苦に対して感謝のことばを申しあげます。副知事としての職を今日まで大過なくつとめえたことも、群議の皆さんならびに政府職員、群島民の御指導、援助によるものでありまして、過去を振り返ってみて誠に感深いものがあります。
 ここに厚く感謝をいたします。
 野に下っても今まで育って来た政治のあり方や政策等に常に深い関心をもち、在野の推進力として、今後の群島政治確立のため微力をつくしていきたいと思います。
◎議長(潮平寛保君) われわれは今日をもちましてその任務を終るのでありますが、今後も直接、間接に常に八重山の政治に関心をもちその向上発展のために努力していきたいと思います。ほんとうに御苦労さんでありました。これで閉会いたします。(午後六時五十分)

 右会議の顛末を記載し相違ないことを証するためここに署名する。
 一九五二年六月三十日
  議会議長  潮平 寛保 (印)
   〃議員  古見 石人 (印)
   〃議員  大山 眞整 (印)
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