戦後初期会議録

組織名
琉球臨時中央政府立法院
開催日
1951年09月03日 
(昭和26年)
会議名
立法院全員協議会 1951年9月3日
議事録
立法院全員協議会議事録

 一九五一年九月三日(月曜日)
 午前十時十分開会

議 題
 一、沖縄群島内に於ける無籍者の実態並に受入について
  (証人)
   沖縄群島政府総務部長
        幸地 新藏君
   沖縄群島政府総務部
        饒波棟次郎君

○仮議長(松田賀哲君) 今日およびしましたのは、例の参議公選について特別委員会の方でお聴きしたいことがありまして、この特別委員会といいますのは、従来こういう選挙関係は行政法務委員会でやっておりましたが、色々な関係で例えば委員の一人の嘉陽参議が今度アメリカに行かれますので人数も少い、それに今度のものは重大であるという意味合で特別委員会を作った訳でありますが、大体は行政法務委員会を拡大したようなものになっております。その委員長が城間参議になっておりますので、城間参議からおたずね、或はお願いすることに致したいと思います。然るべく知恵を貸していただきたいと思っております。
○城間盛善君 私から二つ位お伺いしたい点がありますが、その前にこの問題は新聞紙上で御承知のことと思いますが、この前民政官から立法院議員の公選計画について立案して提出せよという指示があったのでこの特別委員会でその準備を進めている訳であります。その問題に関しまして選挙権を有する有権者の選挙権の行使というような問題がありますので、この方面につきまして所管の総務部長さんにお伺いしたいと思います。
 一つは現在、殊に沖縄群島には他の群島から色々な人が流れ込んでいるといわれております。そしてその中には無籍者と称されているように籍を有っていない人が沢山いるという風に噂されておりますが、これにつきましてインフオーメイションをおきかせ願いたいと思います。実際にいるものであるかどうか。実際におるとしたらどの位ですか、普通の行き方で行くと今迄の選挙人名簿の作成方法になりますと、結局住居が条件になると諒解しておりますが、結局茲に入って来て一定の仕事に就いておっても選挙人名簿に洩れて選挙権を行使出来ないという風な人がいやせんかという風な懸念がありますので、先ずそういったことがあるかどうか若しあるとしたらどの位の数がおるかということをお聴かせ願います。
○総務部長(幸地新藏君) おっしゃるように相当無籍者があるのでないかと想像致しております。それは矢張り正式の手続を踏んでいないのじゃないかと思っております。正式の手続を踏めば入籍が出来て選挙名簿に登録され選挙権の行使も出来ると思うのであります。その正式の手続を踏んでいないのが相当あるのじゃないかということは、おっしゃるように想像はつくのであります。然しその的確な数字は我々の方でも掴めなければ、警察の方でも掴めていないようである。概数がどの位あるか分りませんが、あるのではないかということはいえると思います。
○城間盛善君 自分でも想像出来るし、色々話も聞いておりますが、相当数じゃないかと想像されるのですが…。
○総務部長(幸地新藏君) それは御承知の通り群島組織法の第四条第二項ですか、それによって四島間は出入は自由に許されていると思いますから、こっちの方に暫く住居を構えたい。或は生活の本拠を持ちたいということがあれば、それ相当の正式の手続をして来れば入籍も出来るし、又当然名簿にも登録されると思うのですが、それがしてないのです。
○仮議長(松田賀哲君) 大島からこっちに来たいといって、家を借るなり何なりすればすぐ届出れば受付ける訳ですか。
○総務部長(幸地新藏君) 臨時戸籍措置法によりまして入籍地の市町村長の証明を得て、例えば那覇市に入りたいなら那覇市長の受入の証明を取ってそして大島の自分の居住地の町村に行って転籍証明と配給停止証明を貰って、一通は残し一通はこっちに持って来て入籍する訳です。
○仮議長(松田賀哲君) 入れてもよろしいという承諾がなければいかん訳ですね。その承諾が簡単に得られますか。
○総務部長(幸地新藏君) それは市町村長の権限になっておりますが、貰えるのじゃないかと思います。
○仮議長(松田賀哲君) 無籍者が多いということは、それが簡単に得られないからじゃないですかね。
○総務部(饒波棟次郎君) 今迄は受入れるとなると土地なんかも割当ててやっておったものですから町村長は自分の町村の開放地を見込んでからでないと出来ないのです。そういう関係で少しむつかしかったかも知れませんが、今後は土地にしても地主対借地人になりますから易くなるか知れませんが、今迄は土地割当の関係もありましたので、臨時戸籍措置要綱で矢張り承諾書を以てやることになっております。
○城間盛善君 結局無籍という状態によって実際持っている選挙権行使が出来ないということが多いように思われますが、こういった尊い選挙権を行使させる方法がないもんだろうかということを伺いたいのです。つまりそういった戸籍の手続は群島政府市町村長の権限であって我々からどうこういうことは申されませんが、何か選挙権を行使させる方法、例えば軍カンパンに居住している有権者は本来の居住市町村に帰って投票するという風な便宜が与えられているのですが、他の群島から海を渡って来た人達は恐らくそういうことは実行不可能ではないかという感がする訳でありますが、その居住地で何とかこういった人達が選挙権を行使出来る方法はないもんだろうかということをお聴きしたいと思います。
○総務部長(幸地新藏君) それは旧法を適用すれば出来るのじゃないですか。例えば六ヶ月なら六ヶ月一定の場所に居住しておれば選挙権を与えておった訳ですが。今の群島間もそれを適用して、その居住の証明がつけばいい訳かな…。
○総務部(饒波棟次郎君) それは結局御承知の通り選挙法というのは実態を主としている所謂生活の本拠がどこにあるかということを主としている。戦前は無籍者というものはなく、ただ住居の用件(要件カ)が六ヶ月以内に転籍届出をやっているかどうかということが異議申立の主体になっている籍は寄留届であろうが何であろうが出している籍はあるがただ六ヶ月以前に籍を持っておったかどうか、或は生活の本拠があるかどうかということが問題の焦点になっておりましたが、籍は六ヶ月なくても異議申立によって縦覧期間内に名簿の修正も出来ることになっておったが、現在は私共の考では大体六ヶ月以上も同じ所に住む人は大体真面目な職にいる人であろう。そういう方は大体籍は移されているのじゃないか、配給とかの関係もありますから、そういう人は六ヶ月に満たんとしても本当に住居を構へてから六ヶ月以上になるということが隣組、家主、或は区長の証明で名簿を修正を今までの選挙法ではやっておった。但し他府県からの琉球人の帰還者は六ヶ月に満たなくても与えることになっている。又、軍カンパンは戦前の判例によっても一種の出稼で、生活の本拠をそこにおいているのでないので本籍地に選挙権があるということになっておったので軍カンパンも矢張り一種の出稼であるという見解をもっております。
○仮議長(松田賀哲君) 他の群島から来た人でこっちで選挙権を行使したいというので積極的に異議申立をしている人がおりますか。
○総務部(饒波棟次郎君) それは矢張り町村でないと分らないのでありますが、例えば真和志村にはありました。元の工務部長さん、あの方が入籍の月日から見た場合には六ヶ月に満たないのですが実際には入籍手続が遅れたのであって、実際は六ヶ月以上になるというので地主と隣組、区長の証明で選挙権を賦与したという例もあります。
○仮議長(松田賀哲君) 大島、宮古、八重山の人から沢山来たということはありませんか。
○総務部(饒波棟次郎君) そういう例があるということはまだ聞いておりません。
○総務部長(幸地新藏君) 名簿確定は町村の選挙委員がおりまして、そこで決定しておりますから、一々調査をしなければ分らん訳です。
○仮議長(松田賀哲君) 前の選挙に於て自分らは選挙権を行使したいけれどもそれが出来ないといったような多数の叫びということはなかった訳ですか。
○総務部(饒波棟次郎君) それは特別に表面に現われてのことは聞いておりません。
○田畑守雄君 今度の選挙法がどういう風に住居規定が変って行くか分らんが、この点は例へば旧法では六ヶ月という、生活の本拠を持っているものは選挙権を与えることになっておりますが、場合によっては三ヶ月になるかも知れませんし、二ヶ月になるかも知れない状態にあると見ねばならん訳ですか。相当知識のある者はこれは自らめいめいでやっている訳です。ところが余り選挙とかそういう方面に関心を持たない連中がどっちかといえば多く来ている訳ですが、こういう人々は大島にしても、宮古、八重山にしても郷里に於ては既に削除されているのです。この人はこっちにはいないということが分れば各町村に於ても配給の関係がありますので削除されるのですが、そういう人々はなくなく沖縄に居住して一所に落着いている者もそういう手続が非常に困難のためにやれないということを往々聞く訳ですが、そうなった場合折角の住民権というのが、自分の権利を行使することが出来ないというような憂目を見る場合もあるし、又沖縄群島にしても若しも人口の比率によってやる場合被選挙者の数にも関係することだし、色々そういうようなことが、隘路が将来生じて来ると思うのですが、大島方面から来ているものとしてはこの際出来るだけそういう様な緩和策を講ぜられないものかという気持を持っているものですから…。
○総務部(饒波棟次郎君)この点に関しましては公安委員会でも先日、各町村の受入状況の実態を調査してどうしてもこれは各町村事務と関係がありますので、そういう方面の或る程度の緩和策が講ぜられたらという意味で今調査中でありますが、然しただお前は何ヶ月になるかということでなしに手続することになれば矢張り或る程度町村事務に差支えない程度はやってそこの籍にのせるという方法は是非必要ではないかと考えられます。
○田畑守雄君 そういうようないくらか証明し得るものは、責任者がどうしても持っていなければいかんでせうね。
○嘉陽安春君 問題はこうなると思うのですが、兔に角形式的に考へれば、仮に選挙が二月なら二月に行われるとしてその一ヶ月前に仮に選挙法が公布されるとした場合に、その選挙法では、三ヶ月前から住居を有しているものは選挙権があるということになれば補充選挙名簿になるでせう。そうした場合に、問題は三ヶ月住んでおったということで申立てて来る訳ですが、--来ない人は問題でないから--一応出て来た場合、さて三ヶ月以前から住んでおったかどうかという証明問題になって来て、仮に六ヶ月になると余計さかのぼって来る訳でせう。その時から受入られておって--そういう意味で問題は今の中から既に緩和策なり、それは早くやっておかなければ選挙人名簿調整の時に余計に問題になる訳ですから--その時から申出て来た場合にさて選挙法による三ヶ月であるか六ヶ月であるか選挙法で定める期間、例えば六ヶ月前に受入れられておったかどうか、然し六ヶ月前には受入が緩和されていない。目前に迫っている問題だから、その緩和策--寄留届の問題になるが、これを市町村長が受入れる場合に、その場所を持っているかということまで必要とし市町村長の受入という行政上の政策と戸籍法上の籍を明かにする意味での寄留なり--寄留届をしなくても証明出来るが--その場合受入ということは結論は受入がむつかしいものがあり、民心がそういう観念を持っていて結局はむつかしいものだと観念してしまって受入れされる措置をとっていないということが常識的にあるのじゃないかと思いますがね。そこのところがどの位緩和されてこうだということは早く今のうちから結論を出し周知徹底さしておかんと…。
○総務部長(幸地新藏君) 御承知の通り選挙のあるなしに拘らず、五十三年度の選挙名簿は八月三十一日で決定になっている訳です。それに対しては今の居住期間六ヶ月によって決定されている訳ですが、今あなた方が構想されているところの選挙法がどういうものが出来上るか予知出来ませんから、それに対する名簿を作るべきかどうかということに対しては、どういう風にすべきかということは我々としては今何も考へておりません。
○城間盛善君 結局選挙権を行使させるためには選挙名簿に載せなければならない。選挙人名簿は戸籍を基礎として作る。居住市町村の籍に載っていなければ名簿から洩れるということになる訳ですな。
○総務部(饒波棟次郎君) 戸籍を主体として調査しております。
○城間盛善君 問題は結局こういう人達に、(無籍者)に選挙権を行使させるためには先ず受入れなければいかんということになるのですな。
○総務部(饒波棟次郎君) 一応は今からでも遅くはないということで受入れさせて補充名簿が出来ると仮定します。当然一般名簿は出来ているがあれは異議申立によって出来ることになっておりますから、直ぐに異議申立が出て来るわけですが、実際受入れて期日が六ヶ月に満たん場合でも異議申立にのって隣組の証明、区長さんの証明で調査をすれば出来ますから、そういうものも或る程度考へられるのじゃないかと思いますが、然し全然無籍者に与えるということはちょっと困難ではないかという気がします。
○総務部長(幸地新藏君) 同時に矢張り異議申立の期間がありますし、それから異議申立のあるなしに拘らず、裁判の判定の期間がありますから、そういう点も考慮に入れなければいかんと思います。
○城間盛善君 つまり異議申立をするにしても兔に角籍に入っていなければ工合が悪いということになるのですね。
○総務部(饒波棟次郎君) 従来の選挙法では生活の本拠が何ヶ月というのが主体だったが現在の過渡期に於てはそういうことは研究問題だと思う。御承知の通り真面目な生活をしておりますれば少くとも、配給を取って行かなければ食えないのじゃないかということも想像されますから、これ位の手続はそういう人なら必要として入籍していると思います。
○田畑守雄君 それも実際御説の通りと思うのですが、ところが同じ真面目といっても限界がある訳なんですが、警察部に行って聞いて見ると実際数は大島の例を申上げますと約二万人位来ているだろうといわれています。ところが選挙法は生活の根拠が町村単位になっているのですが、こういう連中が他町村に転々して移転しているかどうかということも疑問ですし、同一町村に居住している連中が多いのじゃないかと思います。ところが、食糧は足るやという問題が出て来るのですが、配給は受けたくてもそういう手続を取り得ない人が大分あるように考へられる訳ですよ。こういう人々を出来る限り入籍していただく、これは一方に於ては救済にもなるし、同時に亦各群島の経済状態から見ても離島はどうしても来るなといわれても沖縄を中心として流れて来なければならない状態にあるものですから、こういう機会を捉えて群島で何とか善処していただきたいという気持を持っているものですから…。
○総務部長(幸地新藏君) 公民権を行使しようというならば矢張り入籍をしなければいけない…。
○田畑守雄君 要するに受入態勢になる訳ですがそれをこの機会に善処していただきたいとお願い申上げるのです。
○総務部長(幸地新藏君) 第一回の知事会談にも私達は問題として出しておりますが、各群島でも無籍者を出さんように配給面をうまく都合がつくようにして貰いたいということは要望されてそうしようという話合になっているが今以てなかなかそれがうまく行っていない。
○田畑守雄君 出て来る者はそういうことを念頭に置いていない訳ですよ。沖縄に出さへすればという焦りで、正式な手続、--転出証明書であるとか身元証明であるとかいうものを取らずにぽっと出て来る。そういうものの必要感が身にしみないもので行きさへすれば何とかなるだろうという考へ方の者が多い。それと斡旋する連中が簡単に連れて来るというようなことで、そこに非常に知識的な欠陥が生じている関係もあるし又受入態勢が十分出来ていないという隘路もある訳なんです。
○城間盛善君 結局受入れなければ、籍に載っていなければどうもむつかしいということになるのですね。結論はそうすると受入ですかね。私も暫く経験を持っているのですが、受入の方法条件、これは終戦直後の収容キャンプから原住地に帰るあの時分の指令か何か知れませんが、一定の規定があって本籍地ならば無条件に帰れる。ところが本籍でないところに行くには相当にむつかしい条件があって、その条件が出て来るのは土地の割当、配給の問題などに原因があったと思うのですが現在は客観情勢も変って来ておりますが、受入条件というのは現在も踏襲されているのですか。
○総務部(饒波棟次郎君) 大体踏襲されております。
○城間盛善君 何か指令が出ておりますか。
○総務部(饒波棟次郎君) 臨時措置法、これを見ますと、受入には受入承諾書、転籍届を出せばいいということになっておりますが、現在は各市町村長の権限によりまして、配給停止証明書も取っておりますし、或はところによっては身元証明書も犯罪防止のために取っているようであります。又身元引受人を取っているところもあります。その理由は、大体他群島から来られる方は非常に市内でも住所が変るらしい。それで納税の義務なんかを与えても何処へ行ったか分らんというのが非常に多いらしい。そういう関係で那覇市に於ては身元引受人を決めているらしい。
○嘉陽安春君 戸籍を作るといへば寄留届みたようなものになっておりますが、そういうのと寄留届を受入れる手続をいうと思うが、それが戦後の各市町村別の行政の立場上から各市町村別の受入方針があって実質的な土地の割当等、政策があると思うが、そういうところは群島組織法の第四条によって群島政府自体としての、今までは戦後の特殊事情のために各市町村に--群島としての受入政策でなしに--移動ということが考慮されて、市町村長が政策を以てやっておった。ところが群島間の交通が自由だということになれば群島政府として各市町村毎の受入政策が各市町村毎にあるような気がするが、群島政府としてその点を、そういう政策を認めんことになるのか、或はその辺のところは問題になりませんですか。
○総務部長(幸地新藏君) 群島組織法の第四条第二項が公布になる前は群島間の出入は一々軍政府の許可を得たものでありますが、これが自由に許すという風に改正になったので、今の受入の条項がこういう風に訂正になった訳です。群島間は軍の許可がなければ出来なかったものが、撤廃されて自由に出入することが出来たから受入をするにはこういう風な臨時措置法というものが出来た訳ですよ。
○城間盛善君 訂正になったのは群島組織法公布後ですね。
○総務部長(幸地新藏君) 群島内はその通りやっているのです。町村によって或は特殊の条件があり得ると思います。それはその町村の特殊事情によって--全般的な問題ではないのですから、その特殊事情のあるものが町村にあれば群島政府としても認めなければいかんと思う。然しその特殊事情を必ずしも一般に適用することはまだ考慮しておりません。
○仮議長(松田賀哲君) そうすると結局六ヶ月以上そこに住んでいるという証明さへあれば選挙権の行使が出来るという訳にはいかんのですか。
○嘉陽安春君 選挙法では別に寄留届が出ているかどうかということが問題ではない。これがあれば証明するにしても便利だということであって実際にそこに生活の本拠を持っているかどうかということが問題である。
○城間盛善君 選挙法ではそこに居住しているということが証明出来ればいい訳ですが、要するに居住の証明というものはその基礎が受入にあるという訳ですね。
○嘉陽安春君 実態の把握がむつかしいから形式上の証明があれば載せるという風にしか事務は進まんだろうと思います。
○仮議長(松田賀哲君) その実態というのが隣組長、或は区長あたりの証明では出来ん訳ですね現在のところは。
○総務部(饒波棟次郎君) 籍はあっても実態はそうでない例はありますが、全然無籍者が異議申立によってやったという例は聞いておりません。選挙法に於ては実態をつかむのが本体ですから、それでいいだろうと思うのですが、その辺はこれからの研究問題になりはせんかという気も致します。
○総務部長(幸地新藏君) 選挙名簿は大体戸籍簿に拠って作成されておりますから、そしてその縦覧期間がありまして六ヶ月以上住居を持っているという場合には異議申立が許さるべきだと思います。そしてその場合には、家主、隣組長、或は区長の証明を貰う。そして選挙管理委員会が実態を調査して名簿を修正する。それには個人が異議申立をして行かなければいかん。管理委員会は戸籍によって一応は調査して行くのが建前であります。
○城間盛善君 選挙法によっては居住の実態がつかめればいいが、そのつかむ方法としては短期間でも入籍していなければ手がかりがないという訳ですね。
○田畑守雄君 隣組であるとか、区長さんとかいう人が本当に親切な人でなければ、選挙人自身に於ても異議申立とか、甚しいのは名簿を見るということもしない人が多い現在ですから、その辺のところを一つ出来れば群島政府として何か町村に注意を喚起していただきたいと思います。と申しますのは、今度行われる選挙ははじめての全琉の選挙であるので出来る限りそういうようになおして貰って…。
○仮議長(松田賀哲君) 籍がなくても六ヶ月以上居住しておれば現在受付けているのですか。
○田畑守雄君 実態だから受付けなければいかん訳です。それを受付けないというのは一つの違法です。
○仮議長(松田賀哲君) 現在は委員会で戸籍を盾に取ってやっている訳でせう。だから受付けていないのじゃないですか。
○嘉陽安春君 選挙管理委員会で実態調査ということは出来んから一応受入者の名簿をつくる。そして縦覧期間を設けて、自分のがそれに載っていなければ自分は受入にはなっていないが、実態は、要するに生活の本拠を持っているということであれば名簿を修正するように選挙法ではなっているが、然しその趣旨が民衆にも徹底していてそれを分っていながら異議申立に行かないのか、或はそういうことが分らないのか、そこは問題になりますね。
○仮議長(松田賀哲君) 現在異議申立をしても簡単には載せていないのじゃないですか。
○田畑守雄君 選挙というものは利害関係が伴うもので異議申立をしても載らない場合もあるし、何もしないのが載る場合もある。実に選挙は微妙なものでありまして、そういうことをいうべき性格のものではないけれども大体に於て区長が確かにこうだということを証明すれば通ります。個人の異議申立と見做してですね。
○総務部長(幸地新藏君) 委員会は異議申立があれば当然登録をするが、発効するかしないかは委員会にかけて決定する。異議申立をしても登録しないということはあり得ない。
○仮議長(松田賀哲君) 現に簡単にやっている訳ですね。
○嘉陽安春君 選挙法の理論としては明白なんですが、そこに一般の民衆の感じなり、啓蒙が徹底しなければいかん。
○城間盛善君 問題は二つになるのじゃないか。選挙人名簿を作る場合にも基礎は戸籍である。その受入が終戦直後のようにむつかしいものではなくて緩和されてより多くの人が選挙権を行使し得る人がふえて来たということがいへますね。これが緩和されればされるほどよくなる。実際問題としてはうんと緩和して貰えば選挙権の行使が楽になるということがいえます。もう一つは有権者の選挙権の行使に対する熱意があればその方面からの自覚があって異議申立をする。この両方が相俟ってはじめてよくなる…。
○総務部長(幸地新藏君) 同時に戸籍に根拠をおきませんと、居住に根拠をおきませんと、単なる旅行者が二重権を持つことになる。こういうことは余程慎重にしなければならない。それを如何に正しく行使させるかということが問題なんです。
○仮議長(松田賀哲君) 二重行使ということになると結局籍が必要になって来るのですか。
○城間盛善君 受入の問題ですね。今は土地の割当ということもないしその点は心配はいらん。配給の問題はどうですか。つまり受入を自由にした場合には配給所が困る。配給食糧が不足する。然しこれは理屈からいへば例へば大島なり宮古におって配給を受けておったものが、そこから出て来て沖縄で配給を受けるということであれば理窟からいへば同じなんですが、実際問題はどうなるのですか。
○総務部長(幸地新藏君) 実際問題としてはダブッて非常に困っている。例へば大島から二万人も来ているが、二万人の食糧配給停止を向うがやっているかということが非常に大きな問題になる。大島から二万人来たとした、実際はここで飯を食っているが配給停止証明が来ていない。向うにそのままある。従ってこっちが不足するという現象があり得る訳です。だから、今の移動というものは配給停止証明と常に対をなして来る。
○城間盛善君 元の市町村長の転出証明、配給停止証明をとって来れば直ぐ受入れているのですが、市町村によっては特殊事情はあるが、終戦直後よりは緩和されているのですね。
○総務部(饒波棟次郎君) 事実は大体似たりよったりと思う。
○田畑守雄君 那覇市が特にむつかしくてどこに隘路があるか知らんが入りずらくてこぼしているのですよ。郷里では配給は停止になっている。ここに来ては貰えんという連中が多いのです。そういうような隘路は当分は簡単には解決しないでせうが、出来るだけ早く解決して貰わんと離島から来る連中は困る訳です。
○仮議長(松田賀哲君) それは一つには向うから来た人が配給といっても米と油位のもんだからという気持でいるのじゃないかな。本当に必要を感ずるならば団体的に運動をやるのじゃないですかね。
○田畑守雄君 経済的に逼迫しないということもあるし、又自己の職業を隠したい人も多いでせうし…。
○仮議長(松田賀哲君) そうしたら税も納めなければいかんでせう。
○城間盛善君 受入の困難というのは終戦後の色々の事情から来ているが、それが最近では事情も違って来たし群島組織法によって居住の自由権も認められているから、群島政府で各市町村に指示して緩和する様には出来んもんですかね。
○総務部(饒波棟次郎君) 各町村の受入関係の資料を集めましてそれに町村の事務に差支へない程度に緩和して行きたいということで資料を集めております。公安委員会からも来ておりますので…。
○城間盛善君 今調査中であれば何れ緩和される見込はつく訳ですね。
○総務部(饒波棟次郎君) 調査を進めております。町村に照会を出して今集めつつあります。
○総務部長(幸地新藏君) 何れはしっかりした戸籍簿を作らなければいかんと思って研究を進めているのですが、それには厖大な経費と日数を要する訳です。そういう点も考慮して改正しなければいかんと思って調査を進めております。いつまでも臨時措置法ではいかんのです。
○仮議長(松田賀哲君) 群島政府で、兔に角全琉の選挙がはじめて行われるのですから、早く選挙権を獲得するようにして貰いたいといった様な啓蒙運動を新聞なんかでやって貰えんですかね。
○総務部長(幸地新藏君) 少し時期が遅いのじゃないですかね。本名簿を作成、確定してしまっているのですから。
○仮議長(松田賀哲君) 補充名簿ででも出来ますよ。
○城間盛善君 選挙法が出た場合には補充名簿の作成ということが起り得るかも知れませんね。それに備へてでも調査研究をして受入を緩和しようという風に公安委員は公安委員の立場から、そういう処置を取られたらしいが、選挙権の行使という面からもそういうことを促進していただきたいと思う。
○総務部(饒波棟次郎君) 補充名簿は選挙が決ってから異議申立をして選挙管理委員会で決めるようになっている。
○仮議長(松田賀哲君) 本名簿は決っても現在六ヶ月住んでおればいい訳ですから、それは補充名簿にのせる訳でせう。だから今の中に宣伝しておけばいい…。
○田畑守雄君 町村長会あたりに群島政府から呼びかけていただきたいとお願いする次第ですよ。
○仮議長(松田賀哲君) 外にございませんか。ないようですから、これで散会します。
  (午前十一時二十分散会)

  出席者
   仮議長  松田 賀哲君
   参 議  城間 盛善君
    〃   嘉陽 安春君
    〃   田畑 守雄君
    総務部長 幸地新藏君
    総務部 饒波棟次郎君


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