戦後初期会議録

組織名
宮古議会
開催日
1948年02月08日 
(昭和23年)
会議名
第7回宮古議会[1]
議事録
第七回宮古議会会議録

一九四八年二月八日午前十時第七回宮古議会を宮古民政府に招集す

  附議事件左の如し
議案第二十六号 一九四八年度宮古民政府歳入歳出予算議定に就て
議案第二十七号 一九四七年度宮古民政府歳入歳出追加予算に就て
議案第二十八号 一九四八年度特別会計公益質屋歳入歳出予算議定に就て
議案第二十九号 一九四八年度特別会計船浮開発事業歳入歳出予算議定に就て
議案第三十号 一九四七年度特別会計船浮開発事業歳入歳出追加予算に就て
議案第三十一号 一九四六年度宮古民政府歳入歳出決算認定に就て
議案第三十二号 宮古民政府モータープール特別会計設置に就て
議案第三十三号 一九四八年度特別会計モータープール歳入歳出予算議定に就て
議案第三十四号 税法改正に就て
議案第三十五号 教育法制定に就て
議案第三十六号 生活保護規程に就て

◎議長(與儀達敏) 開会宣告(午前十時三十分)
◎議長(與儀達敏) 報告致します
 本議会に於て参与及書記を命ぜられし者左の如し
  参 与
    官房長  下地 惠位
   文教部長  砂川 惠敷
 財務会計部長  平良 義雄
   農林部長  與儀 喜文
   警察部長  下地 寛忠
   逓信部長  富山 常仁
   厚生部長  下地  徹
   工務部長  下地 明高
 商工水産部長  勝連  勇
   経理部長  池村 實秀
   防遏課長  謝敷 宗吉
   総務課長  垣花 惠用
  書 記
         垣花 惠三
         波平 惠喜
○議長(與儀達敏) 出欠を報告致します、出席十七名 欠席四名であります
◎議長(與儀達敏) 議事録署名人の選出方法に就てお諮り致します
  (「議長指名」の声あり)
○九番(亀川惠信) 議事録署名に就て希望を申上げます、議事録は当然議会に於ける議員と当局との記録で他日証拠物件となるのであるからその記録は慎重に正確に記録せねばならない
 ところが正確に速記することは非常にむつかしく私の大学時代の経験から推して先生の講義を書くのに無我夢中記号等を用ひても充分に出来なかったのであります、殊に本議会に於ける書記は専門家でない、それで署名人の責任は重大であると考へますから署名人選定は慎重にしていただき度い、熱意と責任の有る議員を選定して貰ひたい
○八番(伊志嶺玄良) 只今の九番の意見はもっともな意見であります、然し議事録は速記録とは異い(ママ)、其要点さへ記したらよい、署名人は簡単に議長指名にして貰ひたい
○十七番(砂川玄仁) 亀川議員の最後の話では従来の署名人は誠意でなかった様に聞えますが然しそうでは無い、私達現在の議員は全部信念の人であり熱意のある人々であると信ずる、従来如何なる人が署名議員であったか知っている筈だ、議会の権威のため署名人云々は考へる必要はない、議長指名にしたい
  (「賛成」の声あり)
◎議長(與儀達敏) 議事録に対しては要点を洩らさず出来得る限り正確に記録する様努力致します、署名議員の選出方法は如何に致しますか、議長指名で御異議はありませんかと諮りしに
  (「議長一任異議なし」の声あり)
 御異議はない様ですから議長で指名します、九番(亀川惠信)と十一番(砂川徹雄)に御願ひします
  (全員拍手をする)
○議長(與儀達敏) 只今から知事の挨拶があります
◎知事(具志堅宗精) 本日第七回議会を招集し来年度予算案につき御審議をお願ひし茲に私の庶政に対する所信を被瀝し各位の御協力を仰ぎますことは私の最も光栄と存ずる次第であります
 申すまでもなく施政の根本は民生の安定でありましてこれに就而は私は就任以来微力を捧げて参りましたが幸にマクラム軍政官並に将兵各位の絶大なる御援助に依り一九四七年度月末現在に於ける食糧の放出、実に六、四三七、三二一封度、衣料一七六、一五九点、雑貨に於きましては八六五、五二六点、燃料五、九四九ドラム(ママ)に達し戦災後の民生を潤すこと寔に絶大でありましてこれに加ふるに議会各市町村当局並に各業界の積極的努力に依り農林水産業並公衆衛生面の復興著しく農村資源の基幹をなす畜産に於きまして馬の飼育頭数戦前八、四八九頭に比し六、一八一頭、豚の戦前一二、六三七頭に対し一〇、三四九頭となり夫々戦前に立戻らんと致して居ります、又移出高に於きましては豚に於て二、三〇一頭金額に致しますれば二、〇五四、四〇〇円となり、水産に於ては鰹節生産高四四一、五二三斤、郡外移出高二三四、六三六封度貿易庁取扱に依る代金受領額七、二九九、三八〇円に上り郡経済を著しく培養していますことは御同慶の至り之全て軍政官殿の御懇切なる御援助の賜でありまして茲に深甚なる謝意を表する次第であります、今後更に各種施設の復旧並生産資材等漸次整備致しますならば寔に前途洋々たるものがあるのであります
 私はここに戦災より奮起し各生産資材の欠乏に耐へて遮二無二活躍せる各市町村当局並郡民各位に深甚の敬意を表する次第であります、然るに一面日用雑貨の入手難、薪炭材、建築資材の欠乏と通貨の膨脹、これに加へて昨年末に於ける風潮害に依り高物価は愈々深刻を呈し、ために非農家大衆の生活は脅威を受けること甚大でありまして真に憂慮に堪へない次第であります、のみならず軍政府よりの本年六月以降食糧放出の禁止指令は八万郡民の自給体制への厳重なる至上命令でありまして、現在昨年末の風潮害に依り収穫八十五%以上の減収を予想せらるる三、四、五、六月の主食欠乏期を控へてこの自給体制の確立は八万島民にとって死中に活を求める聖業と云はねばなりません
 幸に郡民各位の熱意に依りまして新宮古建設期成会も結成せられ自給体制実践の基盤は育成せられつつあり、又軍政官マクラム中佐殿の絶大なる援助に依って大野越荒蕪地二四五町歩の開墾も嶄新なる機械力に依りまして着手される運びとなり裏城辺二一四町歩、崎田川地区三五町歩、西飛行場三一町歩の開拓事業も本年中に実施される見込みで近く測量開始を見る筈でありこれが完了せば集団農場一七四町歩と共に八万郡民の偉大なる自給源となり得ることと確信する次第であります
 私は是が非でもやり抜かねばならぬこの宿題を本年度の政策の根幹として各位と共に八万郡民打って一丸となって完遂せねば止まない決意であります、猶島内生活を脅かし島内全生産の癌となっていますのは薪炭の問題でありますがこれは船浮林の開発事業を忍苦万難を排してやり抜くことに依って解決出来るのであります、現地の各主任者、労務者の意気と敢闘は感激に余るものでありまして必ずや郡民各位の御期待に副ひ得ると確信致します、本年度は処女林の開発でありますので事業遂行上極めて難事であり八万郡民の協力と自覚とが絶対に必要であり私は全郡民の奮起を要望して止まないのであります、猶事業計画については予算案に依って御検討を御願ひ致したいと思ひます更にマラリア病に依る生活の脅威も言語に絶するものでありまして昨年の患者数平良市七、九八六人、城辺町六、六六九人、下地村五、八六五人、計二〇、五二〇人でありこれに依る死亡者は三二六人で二%となって居ります、このマラリアに依る増産の低下は図り知れないものがあります、これの撲滅策としてマラリアの猖獗を極める地区に於ける防遏組合の徹底的強化並慈善病院の分院を設置しそれに呼応して排水路の浚渫、新設作業を継続し軍政府より放出される多量のアテブリン、DDTの撒布に依ってこの悪疫を芟除したいと思ふのであります、然し何と云っても執拗なる風土病でありますのでこれが徹底的撲滅は島民全体の間断なき病魔退治の敢闘精神と衛生思想の強化が根本でありまして現地市町村民を網羅せる防遏組合並各市町村当局の献身的活動を期待して止まない次第であります、猶南静園の復旧がマクラム中佐殿の御努力に依り早急に実現し既に竣工せる病棟五棟総計一五〇坪近く完成する病棟三〇棟三〇〇坪収容人員三〇〇人でこれが完成の上は未収容患者を収容することが出来ることになり島民の保健衛生上慶賀に堪へない次第であります、扨て低物価政策に就てですが、高物価の是正は島嶼経済の現状に於ては至難事中の難事でありまして物価の安定は生産の増大を強力に図ると共に通貨を勘案し郡内非生産品たる日用雑貨の正式ルートよりの移入を増強すると共に消費面の自粛を堅持する以外に方法がないのであります、生産増強面に於きましては荒蕪地開墾に依る耕地七一八町歩と共に生産計画に依る作付の適正を行ひ集約化農業改良の奨励に依る反当増収を図り、併せて防風防潮林の増殖に依る農作物の保護等に全般的増強をなし他面に於ては八重山への健全なる自由移民を企図し人口と生産と消費を徐々に調整し併せて水産業の飛躍的発展を期するため極力軍政府に援助を御願し漁具資材の購入に努力しているのであります、幸に軍政府当局の御努力に依りまして冷凍施設も計画され鮮魚の移出も考慮せらるる気運にあります、又織物工業の復興の動脈たる工業組合も来年度は立上る筈でありまして生産並授産面も増大を期待せらるる筈であります、更に外地との取引に就ては貿易庁の台湾貿易の実施が近く実現せらるる模様であり、その時はマッチ、種子、セメント其他日用雑貨が輸入せられる見込みであります、猶当地水産物と台湾米とのバーター実現もする覚悟であります
 価格に就ては各種業者との折衝に依り自粛値を決定致しているのでありまして魚類、工具、自動車賃、渡船賃等夫々約一五%より三〇%程度の切下げを実施致しているのであります、以上申述べました通り低物価政策は有ゆる方面に関連し総合的解決が必要でありまして来年度に於きましてはこの点に於ても一段の努力をなす積りで居ります
 次に明年度に於て極力努力を要請されるのは自主財政の確立であります、明年度予算は税収入四、一一七、三一八円、税外収入三、三四八、三二八円、歳出九、九九一、三一三円で約二、五二五、〇〇〇円程度の配給物資取扱益金にその不足財源を求めていますがこの配給益金に代る新財源を来年度中に於て創意せねばならぬわけであります、新財源として考へていますのは船浮林の確保並に貿易品の増大を期すると共に一、四五〇、〇〇〇円程度の財源を求めねばなりません、このため来年度中に海人草採取事業、煙草専売を計画し、着手すれば自主財政の確立は充分出来得るものでありまして私はここに全幅の努力を捧げたいと考へて居るのであります、それから予算に就きましては来年度の歳出は九、九九一、三一三円の中人件費四三七万一千余円、事業費四七一万余円で総額に対する四七%、事務費九〇万九千余円の九%、人件費が約四四%であります
 次に申上げたい事は時代に即応して教育の充実、普遍化を期し次の時代を新しい楽土を荷ふべき青少年を作りたいと存じ来年度よりの六・三・三学制を採用実施すべく予算化致してあります、新制中学、四高校の出発、真にその整備は今後郡民の努力に俟つこと実に大であります、形を作って如何様な魂を入れ名実共に備った学制にするか、今後郡民各位の蹶起精進が要請される訳であります、私は各位並全教育者各位と共にこの画期的にして障碍多き学制を強力に押し進め新宮古建設に一路邁進したい決意と覚悟であります
 以上所信の概略を申上げてこれに附帯する諸案件は予算案に於て申上げたいと思ひます、何卒議員諸公に於かれましては慎重御審議の上新宮古建設のため御健闘並に御協力下さる様切望致す次第であります
○議長(與儀達敏) 只今から議案を配布します
  (書記議案を配布す)
◎二十一番(玉城玄教) 開会劈頭に於て先づ米軍政府への感謝状決議の動議を提出致します、我々は終戦後の極度の窮乏を米軍の温き御同情に依りまして食糧を初めとし衣料、燃料、医療其他有ゆる物資を放出下さいまして日常不自由なき生活を送っている、これ一重に軍政官の御温情と深く感謝致しているのであります、然るに最近食糧の欠乏を見ている、之に対し郡民の新たなる決意を披瀝すると共に尚一層の米軍の援助を仰ぐ陳情と併せて感謝決議文を提出したい、文案は当局に一任することにして全員の御賛同を得たい
◎議長(與儀達敏) 只今二十一番より軍政府に対し感謝決議文を提出したいと云ふ動議がありますが如何ですかと諮りしに
  (全員「異議なし」の声あり)
 御異議は無い様ですから決定致しまして文案は私の方で作成し再開の議会で御審議を御願ひの上提出することに致します
 次は日程に就てお諮りします、本日は全議案上程説明の後明日より個人研究に移り度いと思ひますが何日間に致したらよいでせうか
◎八番(伊志嶺玄良) 只今配布になった議案全体を見ますると非常に厖大であるから議事の進行上三日間の個人研究が必要であると思ひます
◎議長(與儀達敏) 八番より三日間の個人研究が必要と云ふ動議がありましたが御異議はありませんかと諮りしに
  (全員「異議なし」の声あり)
 御異議は無い様ですから九、十、十一日の三日間は個人研究をして十二日より再開致します、それでは議案を一括上程致します
◎五番(砂川惠知) 議案審議に移る前に希望があります、今議会は一九四七年の清算をなし、それを基礎にして新年度の建設的な計画を為せねばならぬ議会でなければならない、私達は過去の実跡(ママ)を検討して改善を要すべきものは改善して新しい計画を樹立するために民政府のこれまでやって来た事業並に事業報告、財産調、動産は別として機械類の不動産等を報告して貰ひ度い、知事の挨拶にも色々ありましたが各方面に於ける詳細なる報告を御願して今後の参考に資したいと思ふ
○番外(総務部長與儀達敏) 事業報告、事務報告及財産目録は各部で準備しているが用紙の関係で未だ出来ていませんので十二日の再開の日には差上げる様に致します
◎議長(與儀達敏) 議案第三十一号を除き全議案を一括上程致します(議案の各号を逐ふて読み上げる)
 議案第二十六号並に第二十七号の説明を番外より致すことにします
○番外(総務課長垣花惠用) 先づ最初に御了承御願ひ申上げ度いのは予算書の様式に就てでありますが従来の経常部、臨時部と分けて作成して居りましたが軍政府へ提出の場合は各部別に編成せねばならぬので今度からはそれに応じて経常部、臨時部をなくしてあります
  (次いで第二十六号、第二十七号議案を詳細に亙り説明す、次いで議案第二十八号、二十九号、三十号に就て、番外厚生部長下地徹、工務部長下地明高より各々詳細に説明を為す)
○議長(與儀達敏) 正午ですから休会致し昼食後午後一時より開会致します(午後零時十分)
○議長(與儀達敏) 開会宣告(午後一時四十分)
 午前に引続き議案を説明します
  (議案第三十二号、三十三号、三十四号の説明を番外工務部長下地明高、直税課長高里幸太郎、間税課長小禄寛一、各関係議案の説明をなす)
◎番外(総務部長与儀達敏) 酒造税法改正に次の事を追加して記入願ひたい、歳入の追加を計るとあるのを「軍政府命令に依る食糧自給体制の確立併用(而カ)酒の醸造制限をなす」を追加して下さい、猶酒造税を三倍に引上げてあるのは軍政府よりの酒の醸造を三分の一に減らす様命令があったので三分の一に減らして民政府財源に一大支障を来すので税を三倍にしてあります
◎議長(與儀達敏) 提出議案第三十五号、三十六号は十二日再開の日に説明を聞くことにして本日はこれで散会したいが如何にと諮れば
  (全員「異議なし」と云ふ)
 御異議がない様ですから本日はこれで散会致します (午後二時三十七分)
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