戦後初期会議録

組織名
沖縄群島議会
開催日
1951年06月14日 
(昭和26年)
会議名
第8回沖縄群島議会(定例会) 1951年6月14日
議事録
第八回沖縄群島議会(定例会)会議録

一九五一年六月十四日(木)午後一時開会
◎知事(平良辰雄君) 今回招集されました第八回群島議会は、皆さんの御出席によって本日只今議会が成立する運びと相成っております。予ねて御通知申上げた通り議案は第四十六号議案から第六十号議案まで十五議案になっております。どうぞよろしく御審議をお願い申上げます。尚この機会に新たに財政部長が任命されましたので、皆さんに御紹介申上げます。仲宗根秀俊氏でございます。宜しく御願い致します。
◎財政部長(仲宗根秀俊君) この度不肖私が財政部長の重職を仰せつけられましたが、もとより浅学菲才の私がこの重職を果し得るかということにつきまして懸念しているものでありますが幸いにして皆さんの絶大なる御指導御援助を得て努力し御期待に副いたいと思います。どうぞ宜しく御鞭撻の程を御願い致します。

  午後一時七分開議
◎議長(知花高直君) 開会致します。出席十八名、欠席二名であります。一名は旅行、一名は病気欠勤であります。

◎議長(知花高直君) 諸般の報告を致します。
 第七回沖縄群島議会に於きまして議決されました学校々舎建築並びに愛楽園の増改築に関する陳情書及び坐礁船体並びに桟橋バーヂ取除き方の請願書につきましては、議長においてそれぞれ発送の手続をとりましたから報告致します。
 第六回議会において議決になりました民住宅復興促進のため日本杉材輸入方についての請願書及び協同組合法並びに農水金庫の実現促進の件陳情、それから第七回議会において議決されました坐礁船体並びに桟橋バーヂ取除き方の請願書に対し沖縄民政官府からそれぞれ回答が参っておりますので、書記長をして右回答文の朗読を致させます。
 (書記長「新垣良正君」朗読)

沖総第三一七号
 一九五一年五月十八日
   沖縄群島知事 平良 辰雄
沖縄群島議会議長 知花高直殿
  住宅建築用杉材輸入促進陳情について
第六回沖縄群島議会(定例会)において三月二十七日議決になつた首題については、民政官へ陳情のところ、今回沖縄民政官府から本職宛に別紙の通り回答がありますので御了知願います。右通知致します。

 別紙
   琉球列島米国民政府
      沖縄民政官府
米民沖経財
   一九五一年五月一日
首題・覚書第二百四十二号による家屋建築復興促進を期するための日本産杉材の輸入に関する件
宛先・沖縄群島政府知事
1 最近における予算政策の変更に鑑み、該件は琉球貿易庁及びその他輸入団体の関心事であると思はれる。
2 該件に関して若し、特別な困難がありたる場合は沖縄民政官府経済部に連絡するようお薦めする。
 右首席民政官の命に依り通牒する。
  副 官
   軍務団大尉
   ルウイス・ピー・オーア
 同封物件
 1 覚書第二百四十二号
 2 請願書
 3 手形登録

沖総第三七九号
 一九五一年六月十二日
   沖縄群島知事 平良 辰雄
沖縄群島議会議長 知花高直殿
  協同組合法及び農水金庫の実現方促進陳情について
首題については、さきに民政副長官に陳情のところ、今回沖縄民政官府から本職宛に別紙の通り回答がありますので御了知ありたい。
右通知します。

 別紙
   琉球列島米国民政府
      沖縄民政官府
米民沖経財
 一九五一年六月一日
 副官 軍務団大尉
    ルウイス・ピー・オーア
沖縄群島知事殿
  協同組合法の発布と協同組合銀行設立に関する申請について
一、協同組合法の発布及び琉球協同組合銀行設立についての促進方追加報告と題する一九五一年四月二日付貴覚書第一七九号を以つて御進達の件に対し左の通り回答する。
二、最近協同組合の設立に関する法規が琉球列島米国民政本部から発布された。
三、協同組合銀行については一九五二会計年度分の見返資金を実質上計上してあると琉球列島米国民政本部では述べている。一九五二会計年度の農水産業の長期又は短期間の信用貸付金の申込に対して貸出をするために見返資金で充分な貸付資金をとつてある。かやうな貸付施設は琉球銀行及び復興金庫に集中して設けてある。
 農水産業協同組合銀行設立が適当であるかどうかは後日更めて考慮する。
 右首席民政官の命に依り通牒する。

沖総第三一六号
 一九五一年五月十八日
   沖縄群島知事 平良 辰雄
沖縄群島議会議長 知花高直殿
  海浜に坐礁した船体並びに桟橋バーヂ撤去陳情について
第七回群島議会(臨時会)において四月二十七日可決なつた貴職陳情の首題については、民政官に副申のところ今回沖縄民政官から、本職宛に別紙の通り回報がありますので御了知願います。
右通知します。

 別紙
   琉球列島米国民政府
      沖縄民政官府
米民沖経商工
 一九五一年五月八日
  海浜に坐礁せる大小船舶の撤去方に就いて
   副官    軍務団大尉
    ルイス(ママ)・ピー・オーア
沖縄群島知事殿
一、首題の件に関する一九五一年五月四日付貴覚書第二八二号は受領しました。
二、「廃棄資材」と題する一九五一年五月三日付の当官府の文書を参照して頂き度い。
三、尚同文書に記載してある会社は一年以内に前記坐礁船舶や廃棄資材を撤去する契約を結んである。

◎議長(知花高直君) 日本に於ては琉球からの全輸入品に対して関税が撤廃せられ五月一日から実施せられたのでありますが、これは偏えに総司令部、日本政府、国会、在日先輩諸氏の特別なる御配慮の賜であります。つきましては議長名を以ちまして右関係先に感謝状を五月八日付で発送致しましたから御諒承お願い致します。書記長をして右感謝状を朗読致させます。
 尚右に関しまして在京の高嶺明達氏から議長宛に書面が参っておりますから併せてこれも朗読致させます。
 (書記長「新垣良正君」朗読)

宛・総司令部 琉球民政長官
  日本政府 首相 吉田茂
  日本国会 衆議院議長
       参議院議長
  在日先輩 高嶺明達 神山政良
       比嘉良篤 島  清
発・沖縄群島議会議長
題・琉球からの全輸入品に関税撤廃の件につき感謝状
 琉球よりの輸入品に対する輸入税が全面的に撤廃され五月一日から実施されることになり茲に吾々の熱願が叶えられ誠に喜びに堪えません。
 北緯三〇度以南の南西諸島に対する日本の行政権が停止せられて以来琉球は関税定率法の適用についても外国と見做され、その生産物の日本輸入品に対しては輸入税が課されていたのであるが、今回この関税障壁が始めて完全に撤廃せられ琉球経済復興の前途に明るい希望が与えられた訳でありまして これ偏えに 総司令部、日本政府並に国会、在日先輩諸氏の特別なる御配慮の賜だと感謝感激致しているのであります。
 沖縄群島議会は沖縄全住民を代表し茲に深甚なる謝意を表するものであります。
  一九五一年五月  日
   沖縄群島議会議長
        知花 高直

 琉球からの輸入品に対する関税撤廃の件につき御鄭重なる御言葉を戴き、吾々は只為すべきを為したに過ぎませんのに却て恐縮に存じます。
 今次関税の撤廃は区々たる品目に対するものでなく地域を指定しての免税は全く例のないことで、之は全く琉球の経済が実質的には日本経済の一環たるを認められたる結果であり誠に意義深いものと思います。既にこの根本精神の確立を見たる以上日琉間経済交流自余の隘路の打開も決して難事とは考えられませんので此上共御努力を期待致します。
  昭和二十六年五月十八日
        高嶺 明達
沖縄群島議会議長
   知花 高直殿

◎議長(知花高直君) 知事から議長宛に公文が参っておりますから書記長をして朗読致させます。
 (書記長「新垣良正君」朗読)

沖総第三九三号
 一九五一年六月十四日
  沖縄群島知事 平良 辰雄
沖縄群島議会議長 知花高直殿
  沖縄群島議会提出議案について
第八回沖縄群島議会(定例会)において議会の議決を得たいので別紙の通り議案を送付致します。

○議長(知花高直君) 書記をして議案を配付致させます。
  (書記議案配付)

○議長(知花高直君) 議案の第六十一号(五番議員提出)を陳情第一号と致します。次の第六十二号議案(五番議員提出)を陳情第二号に、次の議案第六十三号(三番議員提出)は陳情第三号に、その次の議案第六十四号(四番議員提出)を陳情第四号に夫々訂正していただきます。

◎議長(知花高直君) 本日の議事日程を報告致します。
  議事日程第十二号
 第一、今期議会の会期を定めること
 第二、今期議会の会議録署名人選挙
 第三、沖縄群島監査委員任命承認方について
  (知事提出議案第四十六号)
 第四、一九五二年度沖縄群島歳入歳出追加更正予算について
  (知事提出議案第四十七号)
 第五、群島並びに地区選挙管理委員会委員及び職員諸給与条例制定について
  (知事提出議案第四十八号)
 第六、群島並びに地区選挙管理委員会職員定数条例制定について
  (知事提出議案第四十九号)
 第七、沖縄群島登録税条例制定について
  (知事提出議案第五十号)
 第八、沖縄群島登記手数料徴収条例制定について
  (知事提出議案第五十一号)
 第九、沖縄群島土地台帳条例制定について
  (知事提出議案第五十二号)
 第十、沖縄群島家屋台帳条例制定について
  (知事提出議案第五十三号)
 第十一、登記再開前に企業免許を受けた会社の取扱いに関する条例制定について
  (知事提出議案第五十四号)
 第十二、沖縄群島道路条例制定について
  (知事提出議案第五十五号)
 第十三、沖縄群島植物防疫条例制定について
  (知事提出議案第五十六号)
 第十四、沖縄群島農業改良委員会設置条例制定について
  (知事提出議案第五十七号)
 第十五、沖縄群島農業研究指導所設置条例制定について
  (知事提出議案第五十八号)
 第十六、沖縄群島市町村税条例の一部を改正する条例について
  (知事提出議案第五十九号)
 第十七、知事の専決処分事項指定について
  (知事提出議案第六十号)
 第十八、主食配給制度の存続並に主食の輸入確保に関する件につき陳情書を提出することについて
  (五番議員提出陳情第一号)
 第十九、日琉貿易方式に関する件につき陳情書を提出することについて
  (五番議員提出陳情第二号)
 第二十、住民立退移動に関する件につき陳情書を提出することについて
  (三番議員提出陳情第三号)
 第二十一、農家への臨時食糧増配方に関し陳情書を提出することについて
  (四番議員提出陳情第四号)
 以上であります。

○本日の会議に付した事件
 日程第一、今期議会の会期を定めること
 日程第二、今期議会の会議録署名人選挙
 日程第三、沖縄群島監査委員任命承認方について
  (知事提出議案第四十六号)
 日程第四、一九五二年度沖縄群島歳入歳出追加更正予算について
  (知事提出議案第四十七号)
 日程第五、群島並びに地区選挙管理委員会委員及び職員諸給与条例制定について
  (知事提出議案第四十八号)
 日程第六、群島並びに地区選挙管理委員会職員定数条例制定について
  (知事提出議案第四十九号)
 日程第七、沖縄群島登録税条例制定について
  (知事提出議案第五十号)
 日程第八、沖縄群島登記手数料徴収条例制定について
  (知事提出議案第五十一号)
 日程第九、沖縄群島土地台帳条例制定について
  (知事提出議案第五十二号)
 日程第十、沖縄群島家屋台帳条例制定について
  (知事提出議案第五十三号)
 日程第十一、登記再開前に企業免許を受けた会社の取扱いに関する条例制定について
  (知事提出議案第五十四号)
 日程第十二、沖縄群島道路条例制定について
  (知事提出議案第五十五号)
 日程第十三、沖縄群島植物防疫条例制定について
  (知事提出議案第五十六号)
 日程第十四、沖縄群島農業改良委員会設置条例制定について
  (知事提出議案第五十七号)
 日程第十五、沖縄群島農業研究指導所設置条例制定について
  (知事提出議案第五十八号)
 日程第十六、沖縄群島市町村税条例の一部を改正する条例について
  (知事提出議案第五十九号)
 日程第十七、知事の専決処分事項指定について
  (知事提出議案第六十号)
 日程第十八、主食配給制度の存続並に主食の輸入確保に関する件につき陳情書を提出することについて
  (五番議員提出陳情第一号)
 日程第十九、日琉貿易方式に関する件につき陳情書を提出することについて
  (五番議員提出陳情第二号)
 日程第二十、住民立退移動に関する件につき陳情書を提出することについて
  (三番議員提出陳情第三号)
 日程第二十一、農家への臨時食糧増配方に関し陳情書を提出することについて
  (四番議員提出陳情第四号)

◎議長(知花高直君) 只今から本日の会議を開きます。
 議案の提案見合せを致しました理由について知事から発言を求められておりますので之を許します。
◎知事(平良辰雄君) 住宅特別会計の関連議案を引込めましたのは、これは軍に今迄ずうっと折衝しておったのでありますが、軍でも大体方向としてはいいけれども、もう少し内容を検討して更にもう一遍練り直して来いという話がありまして、今期議会には間に合わないので、次の議会に、更に練って、琉球銀行も一緒になって案を練るということでありますので、米国民政府の考え方は、この住宅資金については委員会制度をとる。我々も始めからそういう考を持っているが、委員会制度をつくって群島政府から三名外部から二名を入れてやったらどうか。そうなると、そういう条例も作らなければいかんし、又予算関係も一千万円、我々の計画は毎年々々二百五十万円宛で、一千万円を群島政府が持ち、四千万円は復金から借りて五千万円の予定で出したのですが、この予算関係もどういう風にするかはっきりして貰いたい、そしてこれを全部建築費に廻すことはどうかと思う。それは琉銀に対する一つの保証として持ったらどうか。そういう場合にはつまり二十五%になりますが、二十五%でなくてもいいんぢゃないか、或は二十%でもいいんぢゃないかという考も持っているようで、その点もう一遍練り直すので引込めた訳であります。どうぞ御諒承願いたい。その他の二案については関係部長から御説明を願いたいと思います。
◎経済部長(呉我春信君) 砂糖及び砂糖容器の検査の件でございますが、従来砂糖の品質検査は日本法規によりましてやっておりますが、それを更に日本法規との関連彼是を研究したいと考えまして実は今期議会に提案を見合せたのであります。更にもう一つはこの品質或は容器の規格統制に対してはこれは重要な問題でありますが、又告示で以てできるということも可能でありますが、この重要な部分を議会に提出して審議して貰うという意味も含んでおりますので、それも条例に取入れて、告示をせんで条例に取入れてやりたい、斯様に考えまして、実は提案を見合せた訳であります。御諒承願います。
◎警察本部長(仲村兼信君) 消防条例を今期議会に御審議願うつもりで予定しておったのでありますが、これは一つは群島議会が成立しない以前即ち去年十月頃消防法に附随した消防規則というものを出して貰いたいということで草案を致しまして軍に提出したのであります。ちょうど軍の方で審議中に群島議会ができましたので軍の方でも群島議会もできたし、軍布令で出すかどうかについて検討を加えておったようであります。その後議会ができたから、これは議会に知事から提案して条例で出したらよからうという示唆を受けまして、この議会に提案すべく準備しておったのでありますが先週になって、又こういう風に変ったのであります。これは琉球全体に及ぼさなければならない性質のものであるから、その方法として知事から議会に諮問をする、その答申によって知事は副長官に申請をしてくれ、軍は更に審議をして、これを全琉球に及ぶように布令を作りたいというお話がありましたので、そうなれば勢い多少条文にも変更を加えなければいかんし或は罰則にも検討を加えなければならない箇条がありましたので、この議会には間に合わないというので見合せた次第であります。御諒承願います。

◎議長(知花高直君) 日程第一の今期議会の会期を定めることについてを議題と致します。今期議会は特に来週の土曜日即ち来る二十三日迄会期を十日間に致したいですが御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って今期議会の会期を十日間に可決致します。

◎議長(知花高直君) 日程第二の今期議会の会議録署名人選挙の件を議題と致します。本件は選挙の手続を省略致しまして議長指名と致すことに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って議長は五番議員石原昌淳君、十九番議員崎山起松君二人を指名致します。御両君に御願い致すことに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様に決しました。

◎議長(知花高直君) 日程第三の沖縄群島監査委員任命承認方について、知事提出議案第四十六号を議題と致します。書記長をして議案の朗読を致させます。
  (書記長「新垣良正君」議案第四十六号朗読)

議案第四十六号
  監査委員任命承認方について
 沖縄群島監査委員会委員の欠員補充のため左記の者を議会閉会中に任命したので議会の承認を求める。
  一九五一年六月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
    記
  金 城 研 一
◎議長(知花高直君) この方は予ねて諒解済となっておりまするが、原案を承認することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者多数)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って議案第四十六号は原案通り承認することに可決致します。

◎議長(知花高直君) 日程第四の議案第四十七号を議題と致します。書記長をして議案の朗読を致させます。
  (書記長「新垣良正君」議案第四十七号朗読)

議案第四十七号
  一九五二年度沖縄群島歳入歳出追加更正予算について
 群島組織法第百五十九条の規定に基き一九五二年度沖縄群島歳入歳出追加更正予算を別紙案の通り定めたいので議会の議決を得たく提案する。
  一九五一年六月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
 一九五二年度沖縄群島歳入歳出追加更正予算案
 (一九五一年十一月二十二日付沖縄群島公報第五十二号に登載済に付省略)
 (注 七七頁に掲載)
○議長(知花高直君) 当局の説明を求めます。
◎財政部長(仲宗根秀俊君) 一九五二年度沖縄群島歳入歳出追加更正予算について、提案致しました理由を御説明申上げます。只今提出になっております一九五二年度群島歳入歳出追加更正予算につきまして今回の追加更正は行政費には関係はしておりません。殆ど全部が補助金のみの補正になっております。即ち一九五二年度の補助金の当初予算額は総額四億五千三十六万三千三百三十一円九十四銭でありましたが、今日迄にそれに対する米民政府からの予算令達額が二億一千八百四十九万百八十二円になっておりますために、当初予算額に比して二億三千百八十六万六千百四十七円の減額になっております。その内訳を申上げますると、弘報室におきまして当初予算額が九万円のところを令達額が十万三千円となり一万三千円の増となっております。
 総務部においては当初予算額が二千万円のところを令達額が二千七百八十万円で七百八十万円の増加になっております。
 文教部においては一億五百万円のところを割当令達額が八百十一万六千円となって九千六百八十八万四千円の減額になっております。工務部におきましては一億七千万円のところを令達額が七千二百四十一万五千九百四円となり差引九千七百五十八万四千九十六円の減となっております。経済部においては当初予算額が四千五百六十九万八千七百五円でありましたが令達額は全部ないのであります。当初予算全額の減となっております。法務部においては当初五百万円のところが五百六十八万一千二百八十円の令達でありまして六十八万一千二百八十円の増になっております。厚生部においては七千四百九十三万二千六百九十円の当初予算額が七千五百十五万五千円の令達額で二十三万三千三百十円の増になっております。合計しますと前に申上げた通り二億三千百八十六万六千百四十七円の減になっている次第であります。部によって増額もあれば、又減額になっているところもありまして大体において当初予算額は結果から申しますと、単なる予想額に過ぎないのでありまして、行政費予算の如く執行予算とはいえないのであります。尚今後の追加割当額も全く予測がつかない状態にありまして、それが追加になりましても一々その使途を明示されますので現在割当てられた額が即ち予算額であるということになります関係上、只今申上げました割当額の二億一千八百四万円を一応五十二年度の補助金の予算額と看做して、これによって今回の追加更正予算にしたのであります。この減額になっている部分に対しては目下各部で交渉中でありますので追って今後も追加割当が来ると思いますが、その場合には、その都度更に追加更正の処置をとりたいと考えております。
 大体以上説明を申上げましたが詳細については尚御質問によって御答えしたいと思います。
◎議長(知花高直君) 議案第四十七号は審議未了のままに致します。

◎議長(知花高直君) 日程第五の議案第四十八号を議題と致します。書記長をして議案の朗読を致させます。
  (書記長「新垣良正君」議案第四十八号朗読)

議案第四十八号
  群島並びに地区選挙管理委員会の委員及び職員諸給与条例について
 沖縄群島選挙管理委員会並びに地区選挙管理委員会の委員及び職員諸給与条例を別紙のように制定したいので議会の議決を得たく提案する。
  一九五一年六月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
 群島並びに地区選挙管理委員会の委員及び職員諸給与条例
 (一九五一年七月二十八日付沖縄群島公報第三十一号に登載済に付省略)
 (注 八〇頁に掲載)
○議長(知花高直君) 当局の説明を求めます。
◎総務部長(幸地新蔵君) 御説明申上げます。
 群島並びに地区選挙管理委員会委員及び職員の諸給与は五十一年度迄民政官府において支給されておったのでありますが五十二年度から群島政府が支給することになったのであります。従って委員及び職員の給料並に旅費の支給規則の表がありますので別紙によるような提案をした訳であります。給与額は別紙に定めてある通りでありまして予算の範囲内で知事が決めることになっておりますが、これは選挙がない時には事務が少いし、ある時は相当多忙を極めますので給与に弾力性を持たせてあるのであります。以上御説明申上げます。
◎議長(知花高直君) 第四十八号議案を審議未了のままと致します。

◎議長(知花高直君) 日程第六の議案第四十九号を議題と致します。書記長をして議案の朗読を致させます。
  (書記長「新垣良正君」議案第四十九号朗読)

議案第四十九号
  群島並びに地区選挙管理委員会職員の定数条例について
 沖縄群島選挙管理委員会並びに地区選挙管理委員会の職員定数に関する条例を左記の通り制定したいので議会の議決を得たく提案する。
  一九五一年六月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
    記
 群島並びに地区選挙管理委員会職員定数条例
 (一九五一年七月二十八日付沖縄群島公報第三十一号に登載済に付省略)
 (注 八〇頁に掲載)
○議長(知花高直君) 当局の説明を求めます。
◎総務部長(幸地新蔵君) 簡単に御説明申上げます。これも選挙法第十条によりまして選挙管理委員会には書記を置くことができるようになっております。中央選挙管理委員会には二人、地区選挙管理委員会には一名を置きたいという希望を以ちましてこの条例を提案致したのであります。
◎議長(知花高直君) 第四十九号議案は審議未了のままと致します。

◎議長(知花高直君) 次ぎは日程第七の議案第五十号を議題と致します。書記長をして議案の朗読を致させます。
  (書記長「新垣良正君」議案第五十号朗読)

議案第五十号
  沖縄群島登録税条例制定について
 群島組織法百四十条の規定に基き、登録税に関する条例を別紙案の通り制定したいので議会の議決を得たく提案する。
  一九五一年六月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
 沖縄群島登録税条例案
 (一九五一年七月二十八日付沖縄群島公報第三十一号に登載済に付省略)
 (注 八一頁に掲載)
○議長(知花高直君) 当局の説明を求めます。
◎財政部長(仲宗根秀俊君) 提案の理由を御説明申上げます。七月一日から登記所の事務が開始せられます関係上登記事務に関する登録税徴収条例制定の必要を認めまして、本案を提出した次第であります。本案は大体において現在日本で執行していますところの日本の登録税法を準用致しまして、それにこちらの実情に即する様取捨選択を致しまして作成したのであります。但しその中に日本の登録税法に決められたもので現在こちらでそれを織込んでいないものが、船舶の登録についてでありますがこれは先に群島条例第八号を以て決められております関係上それを削除してあります。それから弁護士の登録、医師、薬剤師、獣医などの登録についても各民政府の布令で規定されておりますので、その方も削除してあります。尚現在ないのも削除致しまして、将来こういう該当事項があった場合にはその都度それを追加規定することに致しましてその分も省いている訳であります。
 税率につきましては日本の現在適用しております率を準用致しました。税額についてはその価格に掛けた税の三分の一の額を相当と認めましてその額を計上してあります。
 大体において日本の現在行っておりますところの登録税法を参考にしてやっている訳であります。宜しく御審議を願います。
◎議長(知花高直君) 第五十号議案は審議未了のままに致します。

◎議長(知花高直君) 次ぎは日程第八の議案第五十一号を議題と致します。書記長をして議案の朗読を致させます。
  (書記長「新垣良正君」議案第五十一号朗読)

議案第五十一号
  沖縄群島登記手数料徴収条例制定について
 一九五〇年四月十四日付米国民政本部特別布告第三十六号に基いて登記所を再開することになつたので、登記手数料徴収条例を別紙案の通り制定したいので議会の議決を得たく提案する。
  一九五一年六月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
 沖縄群島登記手数料徴収条例(案)
 (一九五一年七月二十日付沖縄群島公報第二十九号に登載済に付省略)
 (注 八五頁に掲載)
○議長(知花高直君) 当局の説明を求めます。
◎法務部長(知念朝功君) 去年の六月十四日の米国民政本部特別布告第三十六号が土地所有権の証明を終えたら登記所を再開するようにということを明示しているのであります。それで登記所は治安裁判所又はその近くということになっておりまして、場所もこの布告で示されているのでありますが、この登記を再開するに当りまして単に土地ばかりではなく、先程も財政部長から登録税に関しまして御説明がありました通り家屋、船舶その他のことに関しても登記を始めるのであります。登記が出来ますと不動産登記法、非訟事件手続法その他の法令による登記簿の謄本又は抄本の交付、登記簿又はその附属書類の閲覧を求めるということが出て来るのでありまして、そういう場合の手数料を徴収するためにこの条例を提案致したのであります。宜しく御審議願います。
◎議長(知花高直君) 第五十一号議案を審議未了のままと致します。

◎議長(知花高直君) 日程第九の議案第五十二号を議題と致します。
 書記長をして議案の朗読を致させます。
  (書記長「新垣良正君」議案第五十二号朗読)

議案第五十二号
  沖縄群島土地台帳条例制定について
 一九五〇年四月十四日付米国民政本部特別布告第三十六号に基いて登記所を再開することになつたから土地台帳条例を別紙案の通り制定したいので議会の議決を得たく提案する。
  一九五一年六月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
 沖縄群島土地台帳条例(案)
 (一九五一年七月二十日付沖縄群島公報第二十九号に登載済に付省略)
 (注 八六頁に掲載)
○議長(知花高直君) 当局の説明を求めます。
◎法務部長(知念朝功君) 提案の理由を御説明申上げます。只今申上げましたように登記を開始致しますが、その登記の中でも主なる土地に関しまして登記をするには先ず土地台帳から謄本を貰って、そして登記をするということになりますのでどうしても土地台帳というものを先ず制定しなければならないと思われますので、この条例案を作りまして議会の御審議を御願いする訳であります。
◎議長(知花高直君) 第五十二号議案を審議未了のままと致します。

◎議長(知花高直君) 次ぎは日程第十の議案第五十三号を議題と致します。書記長をして議案の朗読を致させます。
  (書記長「新垣良正君」議案第五十三号朗読)

議案第五十三号
  沖縄群島家屋台帳条例制定について
 一九五〇年四月十四日付米国民政本部特別布告第三十六号に基いて登記所を再開することになつたので家屋台帳条例を別紙案の通り制定したいので議会の議決を得たく提案する。
  一九五一年六月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
 沖縄群島家屋台帳条例(案)
 (一九五一年七月二十日付沖縄群島公報第二十九号に登載済に付省略)
 (注 九二頁に掲載)
○議長(知花高直君) 当局の説明を求めます。
◎法務部長(知念朝功君) これも土地についてと同様で提案致したのでありますから宜しく御審議を御願い致します。
◎議長(知花高直君) 第五十三号議案は審議未了のままと致します。

◎議長(知花高直君) 次ぎは日程第十一の議案第五十四号を議題と致します。書記長をして議案の朗読を致させます。
  (書記長「新垣良正君」議案第五十四号朗読)

議案第五十四号
  登記再開前に企業免許を受けた会社の取扱いに関する条例制定について
 一九五〇年四月十四日付米国民政本部特別布告第三十六号に基いて登記所を再開することになつたので登記再開前に企業免許を受けた会社の取扱いに関する条例を別紙案の通り制定したいので議会の議決を得たく提案する。
  一九五一年六月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
 登記再開前に企業免許を受けた会社の取扱いに関する条例(案)
 (一九五一年七月二十日付沖縄群島公報第二十九号に登載済に付省略)
 (注 九七頁に掲載)
○議長(知花高直君) 当局の説明を求めます。
◎法務部長(知念朝功君) この条例を制定していただくために提案致しました理由は、今日琉球に効力を有しますところの商法第五十七条には「会社は本店の所在地に於て設立の登記をなすによりて成立す」という規定がございます。それで現在沖縄において株式会社又は合名会社、合資会社の三種類の会社が設立されているのであります。これ迄登記所がなく非訟事件手続法第五章以下の商業登記というものを行なっていなかったために実際商法の上から考えますと、沖縄の現在の会社は成立していないものと考える外ないのであります。成立していないのに拘わらず法人として既に企業を開始しているのもありますし、色々他の債権者との関係も生じて来ているようなことでありまして、この登記を開始します時にこれらの会社が登記を受けますれば、その日から成立するということにしてしまったんでは登記を受ける以前におけるこの会社の地位というものが全然分らなくなるのであります。法律上どういう風な地位を有するものか全然解決がつかないものになりますので又解決がつかないようになりまするというと登記以前の諸取引関係というものが全然根拠を失って経済界が非常な危殆に瀕することは明らかでありますので実際には登記の日が成立の日になるのでありますけれども、企業免許を受けてその会社が事業を開始した日を以て成立したものと看做そうと商法の第五十七条の規定をこちらの現実に合わせるためにこの条例によって一定の効果を、実際に法人という資格を与えようというのがこの条例案の眼目であります。何卒御審議を御願い致します。
◎議長(知花高直君) 議案第五十四号を審議未了のままと致します。

◎議長(知花高直君) 日程第十二の議案第五十五号を議題と致します。
 書記長をして議案の朗読を致させます。
  (書記長「新垣良正君」議案第五十五号朗読)

議案第五十五号
  沖縄群島道路条例制定について
 群島組織法第二条第二項の規定に基き沖縄群島における道路に関する条例を別紙案の通り制定したいので議会の議決を得たく提案する。
  一九五一年六月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
 沖縄群島道路条例案
 (一九五一年七月二十日付沖縄群島公報第二十九号に登載済に付省略)
 (注 九七頁に掲載)
○議長(知花高直君) 当局の説明を求めます。
◎工務部長(渡嘉敷真睦君) 提案理由を簡単に御説明申上げます。現在道路の維持管理の責任がはっきり致しておりませんので、この道路条例を制定致しましてその維持管理の責任をはっきりしたいというのが第一の理由であります。即ち軍道路は何処から何処迄、群島道路は何処から何処迄、市町村道路は何処々々という風にはっきり決めまして、その維持管理の責任をはっきりしたいというのが第一の理由、二番目の理由と致しましては道路を認定する根拠がはっきり致しておりませんので道路認定の根拠をはっきりしたいという考え方から、ここに提案致したのであります。第三の理由と致しましては罰則を制定致しまして、道路行政の完璧を期して行きたいという風に考えております。何卒御審議を御願い致します。
◎議長(知花高直君) 議案第五十五号を審議未了のままと致します。

◎議長(知花高直君) 次ぎは日程第十三の議案第五十六号を議題と致します。書記長をして議案の朗読を致させます。
  (書記長「新垣良正君」議案第五十六号朗読)

議案第五十六号
  沖縄群島植物防疫条例(制定カ)について
 群島組織法第二条第二項の規定に基き沖縄群島における植物の防疫に関する条例を別紙案の通り制定したいので議会の議決を得たく提案する。
  一九五一年六月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
 沖縄群島植物防疫条例(案)
 (一九五一年六月二十八日付沖縄群島公報第二十五号に登載済に付省略)
 (注 一〇一頁に掲載)
○議長(知花高直君) 当局の説明を求めます。
◎経済部長(呉我春信君) 提案の理由を御説明申上げます。輸出入植物の防疫につきましては戦前もこれを施行しておったのであります。終戦後今日迄放置されておったのでありますが、最近は外国との往来或は船舶の出入などで非常に有害な色々のものが入って来るような危険性が多分にあるのであります。例としましては最近バイラス病とか、芋象虫とか、これは戦前にはなかったのでありますが、最近この病菌も徐々に発生を見ておるのであります。これは外部から入ったものと見なければならんのでありまして、これの被害につきましては私から申す迄もないのであります。尚一面この防疫を行ないませんと、こちらで産するものが外国に売れない。日本その他の国では沖縄がこういう状態になりまして非常に警戒をしているような現状であります。従いましてこの防疫陣を強化致しませんと貿易関係にも一大支障を来すという心配がありますので、これを規定致しまして、今度これを施行したいということで提案したのであります。先般日本の農林省から病害虫の専門家が五名見えておりますが、その中の横浜防疫所長の話では、これだったらこちらのものは一本も入れない、非常に危険性があるということを語っておったのであります。現在では瓜実蝿関係でトマト、瓜類は日本では入れないということになっているのでありますがこういうものの発生によってすべてが差止められた場合は経済的に非常な打撃を受けますので、今回提案致しまして皆さんの御審議を得たいと思っている次第であります。
◎議長(知花高直君) 議案第五十六号を審議未了のままと致しまして、暫時休憩致します。
  午後二時十五分休憩

  午後二時三十分開会
◎議長(知花高直君) 開会致します。日程第十四の議案第五十七号を議題と致します。書記長をして議案の朗読を致させます。
  (書記長「新垣良正君」議案第五十七号朗読)

議案第五十七号
  沖縄群島農業改良委員会設置条例(制定カ)について
 群島組織法第二条第二項の規定に基き沖縄群島における農業改良委員会設置に関する条例を別紙案の通り制定したいので議会の議決を得たく提案する。
  一九五一年六月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
 沖縄群島農業改良委員会設置条例案
 (一九五一年六月二十八日付沖縄群島公報第二十五号に登載済に付省略)
 (注 一〇四頁に掲載)
○議長(知花高直君) 当局の説明を求めます。
◎経済部長(呉我春信君) 本条例の提案理由を申述べます。この条例の狙いは従来の農業技術の指導は非常に一方的であった。即ち理論の指導が主体であったのであります。従って農家はこれにひきずられて行くというような状態であったのであります。それも色々疑問視されているような状態でありますので今後はこれを改めて農家の自主的な経営に即した指導をやって行きたい、これが狙いであるのであります。従来の方法では今後自主的な経営能力を有する農家が生れて来ないような気が致しますので、この面も取除きたいというのがこれの狙いであります。尚優秀な技術も各地方に於いてはこれを受入れ得ないような状態にある場合が多いのでありまして、それぞれ各地方の特異性を活かして行こうということも、その理由になっているのであります。従いましてこの指導は画一的であってはいけないと考える次第であります。今回これを規定化致しまして積極的にこれらの農業技術の指導に乗出して行きたいとこういう考えから提案致したのであります。従来これは農林省に設置されておるのでありますが現状は有名無実でないかというような批判を受けているのでありまして現状の儘ではこういう批評を受けるのは尤もでありまして、その原因は色々あるのでありますが、農林省のこれの設置に伴う予算が非常に遅れたという点が最大の原因ぢゃないか、尚又上部機構と致しまして上部の委員会即ち群島農事委員会の組織もなかった単に官庁と直結しておったので、こういう面にもいくらかの原因があったのぢゃないかと考えているのでありますが今度はその予算も農林省に計上されておりますので、大体群島政府として補助金も得られる見通しをつけておりますので、今後これを積極的な運営を促して行きたいと斯様に考えて提案した次第であります。よろしく御審議を願います。
◎議長(知花高直君) 第五十七号議案を審議未了のままと致します。

◎議長(知花高直君) 日程第十五の議案第五十八号を議題と致します。書記長をして議案の朗読を致させます。
  (書記長「新垣良正君」議案第五十八号朗読)

議案第五十八号
  沖縄群島農業研究指導所設置条例(制定カ)について
 群島組織法第二条第二項の規定に基き沖縄群島農業研究指導所に関する条例を別紙案の通り制定したいので議会の議決を得たく提案する。
  一九五一年六月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
 沖縄群島農業研究指導所設置条例案
 (一九五一年六月二十八日付沖縄群島公報第二十五号に登載済に付省略)
 (注 一〇六頁に掲載)
○議長(知花高直君) 当局の説明を求めます。
◎経済部長(呉我春信君) 農事(ママ)指導研究所は与儀、東恩納、名護三ケ所あったのでありますが、四月一日以降与儀指導研究所は中央政府の管轄に入りましたので、今度東恩納、名護の指導研究所を設定することを規定化したのであります。これは無論ずうっと前から続けてあるのでありまして、所属がはっきり致しませんでしたが、今日所属がはっきり致しましたので今回規定化し提案致した次第であります。
◎議長(知花高直君) 議案第五十八号を審議未了のままと致します。

◎議長(知花高直君) 日程第十六の議案第五十九号を議題と致します。書記長をして議案の朗読を致させます。
  (書記長「新垣良正君」議案第五十九号朗読)

議案第五十九号
  沖縄群島市町村税条例の一部を改正する条例について
 沖縄群島市町村税(条例カ)(一九五一年三月十九日条例第十号)に土地税の納期について特例の規定を追加する必要があるから、この条例の一部を改正する条例を別紙案の通り制定したいので、議会の議決を得たく提案する。
  一九五一年六月十四日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
 沖縄群島市町村税条例の一部を改正する条例(案)
 (一九五一年七月二十日付沖縄群島公報第二十九号に登載済に付省略)
 (注 一〇六頁に掲載)
○議長(知花高直君) 当局の説明を求めます。
◎財政部長(仲宗根秀俊君) 市町村税条例の改正についての提案理由を御説明申上げます。
 市町村税条例の土地税の納期は第一期五月、第二期十一月となっておりますが御承知の通り土地所有権認定証明書の交付が遅れた町村があります関係上土地税の徴収及び納税令書などの諸準備がどうしても納期の五月末迄に間に合わない町村が多いのでありますから五十二年度に限って土地税の納付期日を各市町村の条例で各市町村に適応するように制定させて行きたいとこういう理由で提案した訳であります。
◎議長(知花高直君) 議案第五十九号を審議未了のままと致します。

◎議長(知花高直君) 次ぎは日程第十七の議案第六十号を議題と致します。書記長をして議案の朗読を致させます。
  (書記長「新垣良正君」議案第六十号朗読)

議案第六十号
  知事の専決処分事項指定について
 左記事項を群島組織法第三十三条の規定による知事専決処分事項として指定してもらいたいので、議会の議決を得たく提案する。
  一九五一年六月十四日
   沖縄群島知事 平良 辰雄
    記
一、既決予算以外に米国民政府より補助金令達ありたる場合の予算追加の件
  理 由
 補助金は、米国民政府の資金の関係で、その都度使途を指示して追加令達されているが、この場合一々議会を招集して予算追加の議決を求めるにおいては、その間予算執行ができなくなるので、これを知事において専決処分せしめるを適当とする。
○議長(知花高直君) 当局の説明を求めます。
◎財政部長(仲宗根秀俊君) この理由書にも書いてあります通り大体民政府からの予算令達は民政府の資金の関係上これ迄の例と致しまして、一年分を通じて令達はしておりません。その都度資金の関係を見て追加或は四期に分けるとか二期に分けるとかいったようにして来まするし、又来たら直ぐ執行せよという示達も来るのでありまして、そのために議会を招集してすぐ正当な手続を取るということは困難な事情にありますので一応は知事だけにおいて予算の追加更正をしておいて、そして群島組織法の第三十三条にも規定されてあります通りその事項に対しては次回の議会で報告するという風にやった方が事務の執行面、経費の面からいって適当ではないかと思ってこの案を提出した次第であります。
○議長(知花高直君) 本議題の質疑に入ります。
◎新里銀三君 これも研究して見たらどうですか。
◎議長(知花高直君) それでは議案第六十号を審議未了のままと致します。

◎議長(知花高直君) 日程第十八の陳情第一号を議題と致します。書記長をして陳情案を朗読致させます。
  (書記長「新垣良正君」陳情第一号朗読)

陳情第一号
  主食配給制度の存続並に主食の輸入確保に関する件につき陳情書を提出することについて
 主食配給制度の存続並に主食の輸入確保に関する件について別紙の通り陳情書を提出致したく議会の議決を得たいので提案する。
  一九五一年六月十四日提出
     五番議員 石原 昌淳
宛 ・琉球民政副長官
経由・沖縄民政官
発 ・沖縄群島議会議長
題 ・主食配給制度の存続並に主食の輸入確保に関する件
 現在民政官府当局より農林省に対して主食配給制の存廃可否に就いて御諮問があつたと謂ふことを承つています。茲に本議会に於ても主食の主(重カ)要性に鑑み左記事項につき御配慮下さる様お願い致します。
    記
 主食需給の現状に鑑み絶対必要量の輸入確保に就いては尚一層の御尽力を御願い致しますと共に配給制は之を存続して戴きたい。
  理 由
 自由販売制を施行した場合
 1 海上輸送難
 2 物価の暴騰、暴落
 3 食糧の偏在
 4 輸入主食の時期的偏傾
 等の弊害を伴ふ公算大で住民食生活の不安定が予想せられる。
右第八回沖縄群島議会の議決に依り茲に陳情致します。
 一九五一年  月  日
  沖縄群島議会議長 知花 高直
○議長(知花高直君) 提案者の説明を求めます。
◎石原昌淳君 本案は七月一日から食糧が百二十円レートの換算になる。それを機会に食糧配給制の存廃の可否が農林省から政府の方に諮問があったということでありますが、又このことが新聞にも報道されましたので一般に現在の社会状勢の上から大きいショックを与えておりますので、ここにこの問題を取上げた訳であります。現在の社会状勢の上から世界的にどの国も食糧の確保に努力している。従って需給のバランスがとれず非常に食糧の確保が困難な事情にあること、及び船腹が比較的不足しておりましてこういう情勢下によく食糧確保のための註文は致しましても適当な時期にこれを確保することが余程困難な情勢にありまして、この際食糧配給制を廃することは買溜め等による価格吊上げなどで不安定を招きますし、食糧の偏在を来し一般の食生活の上に不安を与えることは、やがて民心の不安を来す基であって現在の情勢下においては、尚配給制を持続して貰うことが必要であり、この点を軍に陳情したいという趣旨であります。尚こういう情勢下に於きまして進んで積極的に食糧の確保に十全の配慮を尽して貰いますように陳情致したいという趣旨であります。
○議長(知花高直君) 暫時休会致します。
  (午後二時五十分休会)

  (午後二時五十一分開会)
○議長(知花高直君) 開会致します。陳情第一号の質疑に入ります。御質問ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎宮城久栄君 この案の理由のところはもう少し詳しく説明をして陳情したらどうかと思っておりますが、例えば輸入主食の時期的偏傾というのはよく分らん、もう少し説明を加えた方が向うでも理解しやすいと思うがどうでせうか。
○議長(知花高直君) これは訳する関係でなるべく縮めてくれということを要求してあるのですが……。
 暫時休会致します。
  (午後二時五十三分休会)

  (午後二時五十八分開会)
◎議長(知花高直君) 陳情第一号を審議未了のままと致します。

◎議長(知花高直君) 日程第十九の陳情第二号を議題と致します。書記長をして陳情案の朗読を致させます。
  (書記長「新垣良正君」陳情第二号朗読)

陳情第二号
  日琉貿易方式に関する件につき陳情書を提出することについて
 日琉貿易方式に関する件について別紙の通り陳情書を提出致したく議会の議決を得たいので提案する。
  一九五一年六月十四日提出
     五番議員 石原 昌淳
宛 ・米国琉球民政副長官
経由・沖縄民政官
発 ・沖縄群島議会議長
題 ・日琉貿易方式に関する件
 既往一ケ年における日琉貿易の欠陥から生ずる琉球の経済的損失に就きましては洵に遺憾に堪へない次第でありまして、新しく設定される協定に当りましては少くとも日本は琉球に輸出する金額に達する迄自由に琉球から輸入する仕組になる様御配慮下されたい。
  理 由
 琉球経済の維持上重要な役割を持つている琉球の輸出品は主として時期物であり、琉球は従来の貿易構造上主として日本に輸出しておるが従来の貿易方式では日本の$資金の管理上発せられる輸入公表に支配せられて琉球の輸出貿易振興を著しく阻害していたこと。
右第八回沖縄群島議会の議決に依り茲に陳情致します。
 一九五一年六月  日
  沖縄群島議会議長 知花 高直
○議長(知花高直君) 提案者の説明を求めます。
◎石原昌淳君 簡単に提案の理由を御説明申上げます。沖縄自立経済確立のために輸出産業の振興が極めて重要であり、各種産業の振興に大きく影響することも今ここに喋々する迄もないことであります。更に琉球の貿易がその殆ど全部を日本に頼っておりますことも戦前戦後を通じての事実でありますし又将来もその線を辿るであろうということを考えます時に対日貿易の改善こそ輸出貿易振興の鍵であると信ずるのであります。ところで対日貿易の現状は貿易協定で琉球物産を協定品目に入れることがむつかしいのであります。例えば協定によることができましても日本の輸入公表或は外貨予算の枠或は公表の時期その他色々困難なことがありましたために生育途上にある琉球の輸出産業の振興発展のために大なる障害をなしていますことは今年のキャベツの輸出問題が適例であります。これは貿易品協定品目に入れることができましたので商人も農民も対日輸出を目標に生産しいよいよ出荷時期になって輸入公表その他の関係で時期を失し甘藍は市場に氾濫しまして生産原価を割るというような始末で折角の輸出産業としての大きな期待は逆に輸出産業に対する大なる不安になって、今後の発展育成のために大なる障害をなしておりますことは事実の通りでありまして、ここにその手続を簡略にし不安なく成育途上にある琉球の輸出産業を発展さして行きますためには、現在の琉球の貿易の状態は大なる輸入超過になっておりますし、対日輸出については日本に対する輸入額の範囲内に於ては従来のようなむつかしい段階或は手続をとることなく簡略に容易に敏速に貿易取引が出来るように特別の御措置をとっていただきたいという要望を致したいのであります。御審議の上御賛成を得て陳情致したいと思います。
◎議長(知花高直君) 陳情第二号を審議未了のままと致します。

◎議長(知花高直君) 次ぎは日程第二十の陳情第三号を議題と致します。書記長をして陳情第三号を朗読致させます。
  (書記長「新垣良正君」陳情第三号朗読)

陳情第三号
  住民立退移動に関する件につき陳情書を提出することについて
 住民立退移動に関する件について別紙の通り陳情書を提出致したく議会の議決を得たいので提案する。
  一九五一年六月十四日提出
     三番議員 稲嶺 盛昌
宛 ・米国琉球民政副長官
経由・沖縄民政官
発 ・沖縄群島議会議長
題 ・住民立退移動に関する件
 米軍において戦略上沖縄群島内の土地を使用するに対して吾々住民は十分に協力を致し便宜を取計うべきと信じます。此の場合住民の立退移動の止むを得ない事情の起ることも亦考えられることであります。処が終戦以来六ケ年米軍の御厚情のお蔭で一定の住民地に安定し将来の復興に輝かしい希望を以て努力しつつある今日立退移動の命に依り新しく居住地を求めて新生活の建設に再出発することは洵に同情に堪えないものがあります。殊に四月一日以後土地の所有権が認定せられその移動先の土地選定に就きましては地主との関係や土地代又は借地料の都合もあつて従来の如く単に知事や村長のみの力では如何とも為し難い事情を考えなければなりません。吾々は今後米軍に対する全住民の協力体制を強化する為め及び住民の生活安定を図る為め左記事項御配慮下さる様お願致します。
    記
 一 住民立退移動の節は軍と関係市町村当局とは予め密接な連絡を図り関係市町村当局や関係住民に対し移動先の土地の世話並に立退経費や新住家建築費に関し何等心配の及ばないやうに取計つて貰いたい。
 二 軍に土地を使用せられた住民は所有権認定と共に借地料を支払はなければなりませんので軍使用地の費用弁償は早急に支給して貰いたい。
 三 立退移動に関しては予め住民に予告をなしその準備を整えさせて貰いたい。
右第八回沖縄群島議会の議決に依り茲に陳情致します。
 一九五一年六月  日
  沖縄群島議会議長 知花 高直
○議長(知花高直君) 提案者の説明を求めます。
◎稲嶺盛昌君 只今読上げました通りでありまして、これは別に詳しく御説明申上げる迄もないだらうと思いますが、この度相当の範囲に亘って立退移動を命ぜられたところがあるということは各位もよくお分りのことと思います。
 その中には一部は正式の文書を以て一部は口頭を以ての命令でありますが、この命令を受けたところの数というものも相当数に及んでおります。その立退命令を受けた住民の心配は我々第三者が見るに堪えないような大きな心配を以て右往左往しているような現状であります。それで折角避難地から現在の移動地に軍の許可によって移動して来てその間五ケ年孜々として働きまして今日生活の安定を得て、これからいよいよ現住所を基にして復興面に努力している今日忽ちここに移動の命を受けて新しく又生活の再建設に出発せなければいけないというその事情を本人の身の上になって考えた場合には誠に忍びないところがあります。ところが米軍の戦略上の関係がありましてこれは如何ともし難い事情ではありますが、ここに掲げている問題は是非とも軍において世話をして面倒を見ていただきたいと切に希望したい訳であります。即ち今日は土地の所有権が認定せられまして従来の如く知事や村長のみの力によって、その土地を簡単に得られるのではなく地主との関係や、借地料の関係、所有権の関係又は経費の関係がありまして簡単には参らないのであります。それから立退につきましても移動当時に造った家屋をこれから立退く段になりましてこれを取壊した時には殆んど使えない材料が多くて新しく移動先に行っての新築家屋は資材から一切全くの新築状態になるのが大部分ではないかと思います。従ってその経費と申しましても今日の建築資材の暴騰によりまして随分素晴らしい額に上ることでありませうし、尚又その資材の入手難という隘路もある訳であります。それと同時に部落とか親類縁者が大てい一緒に立退く訳でありますから地方においては一部落内に一、二軒の家屋を建設する場合には戦前からの隣保班の相互援助的な精神を発揮致しまして親類縁者隣保班が共同して造ってくれますが、こういう立退は殆んど一部落立退になりますのでそういう風な人手を借りる、援助を受けるということも非常にむつかしいような状態であって、その経費の面から、色々建築資材の入手難等の面からこれはどうしても軍の援助を受けなければならないのぢゃないかと思うのであります。更に理由の三番目は立退には一定の準備期間を与えていただかんといかんのぢゃないかと思いますのは、これは大体において軍使用地、御承知の如く黒線内に現在でも住民が入っておりますが軍の使用予定地になっている今度移動命令を受けたところで全く軍の使用予定地外のところがある訳であります。そういう風なことを聞かされた場合に軍近くの人はいつ何時こういう目に合うか分らないと実に不安な状態にあります。それで私はこういう風な点は軍で十分なる世話をしていただく、そこの関係町村や又は関係個人に経費並に精神的な苦労の及ばないように親心を以て是非世話していただきたい。これは将来沖縄住民挙って米軍に対する協力体制の強化の意味から致しましても亦住民の生活安定の上から致しましても是非これをお願い申上げたいと以上の理由を以てこれを皆さん方の御審議を仰ぎたいと思っております。
◎議長(知花高直君) 陳情第三号を審議未了のままと致します。

◎議長(知花高直君) 日程第二十一の陳情第四号を議題と致します。書記長をして陳情案の朗読を致させます。
  (書記長「新垣良正君」陳情第四号朗読)

陳情第四号
  農家への臨時食糧増配方に関し陳情書を提出することに就いて
 クララ颱風被害の影響に依り食糧窮迫せる農家への臨時食糧増配方に関し別紙の通り陳情書を提出致し度く議会の議決を得度いので提案する。
  一九五一年六月十四日提出
     四番議員 仲村 栄春
宛 ・米国琉球民政副長官
経由・沖縄民政官
発 ・沖縄群島議会議長
題 ・農家へ臨時食糧増配方に就いて
 昨年十一月襲来致しましたクララ颱風被害の影響は今日農村に於ける農家の食糧事情を極めて窮迫せる状態に陥れました。依つて沖縄群島議会は左記理由を具申致しまして農家への臨時食糧増配方御配慮下さる様お願い致します。
  理 由
 一 クララ颱風の被害は寒冷と降雨量の不足及潮害の為苗がなく早期植付けを不能ならしめ今日では甘藷作不適な二月、三月植の未熟藷を若掘りせなければならない。若掘の続行は長期間に亘る農村の食糧不安である。
 二 四月以降の降雨過多と日照時の減少は甘藷の生育に不利な条件であった。
 三 暴風被害応急対策の馬鈴薯は収穫期の降雨過多の為腐敗し食糧不安の緩和にはならなかった。
 四 食糧に困窮せる農家は屑発芽芋や蘇鉄食を初める様になった。蘇鉄の食用採取は成育停止期である十一月から三月迄が適期で成育期間は有毒素含有量が多く危険とされて居る。
 五 生育盛りの生徒児童の中にすら中食の欠食者が激増して学校の授業短縮の要望せられる様になつた。
 六 高価な輸入素麺が主食代替として農家の生徒児童、軍労務者の中食に使用せられる様になつた。
 七 一部農家に保有せられている甘藷はその数量が少い為生産地価格と那覇の消費地価格が同値で高価である。
 以上の様な農家の食糧事情を御酌み取り下さいまして六月七月間農家補給農家に対しましても臨時食糧増配方要望致します。
附記
 宿命的に毎年襲来を予想せられる暴風災害に対し食糧不安なからしめる様備荒食糧の保有方重ねて要望致します。
右第八回沖縄群島議会の議決に依り茲に陳情致します。
 一九五一年六月  日
  沖縄群島議会議長 知花 高直
○議長(知花高直君) 提案者の説明を求めます。
◎仲村栄春君 ここに書いた通りでありまして特に申上げる迄もないと思いますが簡単に御説明申上げます。恩納村の学校に授業短縮が要請せられたのがきっかけとなりまして農村の至るところに於いて農家に食糧不安が刻々と世論化せられて来たのであります。この食糧不安はかねてクララ颱風の直後から四、五、六月において農村は最も食糧の窮迫する時期である。従ってこの時期に食糧の増配が望まれておったのでありますが、この要望を達することが出来なくて大島諸島から北部地区の各村或は各部落を通じて大島の藷が輸入せられておったのでありますが、これも今や杜絶え今は既にこの陳情の中にも書いてありまするようにところによっては収穫洩れの屑藷が畠に芽を出した所謂「ミーンム」を採取したり、或は蘇鉄を採取してそれを食用に供しようと致しております。併も我身にも代えたい我子の学校のお弁当も持たすことが出来ない。その理由は既に新聞紙で報道せられたように藷がない或は藷があっても小さくて弁当として持って行くのに恥かしい、又お粥しか食べていないといったような農村の食生活に対して何としても六月、七月の期間において臨時増配をしていただかなければ若掘が次々となされて長い期間に亘る農村の食糧不安が招来されるであろう。こういった心配からこの陳情書を出したいと念願をしているのであります。幸い皆さんの御審議を得て御同意を得まして陳情したいと思います。
◎議長(知花高直君) 陳情第四号審議未了のままと致します。
○議長(知花高直君) 暫時休会致しまして委員会日程その他を御報告致します。
  (午後三時十七分休会)

  (午後三時四十五分開会)
◎議長(知花高直君) 開会致します。
 議案第四十七号、第四十八号、第四十九号、第五十号、第五十九号、第六十号及陳情第三号はその審査を総務財政委員会に付託致します。それから議案第五十一号、第五十二号、第五十三号、第五十四号は法務警察委員会に付託致します。議案第五十五号は工務委員会に、それから議案第五十六号、第五十七号、第五十八号及陳情第一号、第二号、第四号はその審査を経済委員会に夫々付託致します。

◎議長(知花高直君) 十五日、十六日は総務財政委員会、十八日は法務警察委員会、十九日は工務委員会、二十日は経済委員会を夫々開催して頂き、付託事件の審議をやって貰います。
 本会議は二十一日午前十時開会致します。
 本日はこれで散会致します。
  午後四時散会
出席者は左記の通り
     議 長 知花 高直君
議 員
 与儀 清秀君  稲嶺 盛昌君
 仲村 栄春君  石原 昌淳君
 普天間俊夫君  宮城 久栄君
 平良 幸市君  玉城 泰一君
 松本 恭典君  長浜 宗安君
 山川 宗道君  祖根 宗春君
 山城 興起君  新里 銀三君
 新城 徳助君  野原 昌彦君
 崎山 起松君
知事       平良 辰雄君
副知事      山城 篤男君
総務部長     幸地 新蔵君
財政部長     仲宗根秀俊君
経済部長     呉我 春信君
工務部長     渡嘉敷真睦君
法務部長     知念 朝功君
文教部長     屋良 朝苗君
警察本部長    仲村 兼信君
総務副部長    稲嶺 成珍君
財政副部長    久場 政彦君
経済副部長    知念忠太郎君
工務副部長    西銘 順治君
文教副部長    仲宗根政善君
厚生副部長    大森 泰夫君
主計課長     板良敷朝基君

 一九五一年六月二十一日(木曜日)午前十時開会
◎議長(知花高直君) 開会致します。
 出席十五名、欠席五名であります。
◎議長(知花高直君) 諸般の報告を致します。
 (仲村栄春君出席)
 読谷村議会議長仲本政公氏から本議会宛請願書が参っておりますので書記長をして朗読致させます。
 (書記長「新垣良正君」朗読)

   請 願 書
 当村楚辺区は部落に移動してからここに五ケ年、生業に励みながら感謝の日を送つていますが最近住民立退の噂が出ましたので非常に心配致しています。それで区民代表並に村当局は各方面に居すわり陳情を致しておりますので、吾々議会の方も左記事情を訴え群島政府並に群島議会に善処方御高配を請願する次第であります。
 何卒其の筋へ御折衝下さいまして吾が村民並に全住民を救つて戴きます様全議員連書(署カ)を以つて茲に謹んで御願い申上げます。
  一九五一年六月十四日
  読谷村議会議長 仲本政公(印)
 沖縄群島議会御中
  議会議長   仲本 政公(印)
  同副議長   天久 源吉(印)
  議員     大城 伊清(印)
   〃     知花 義雄(印)
   〃     宮城 照明(印)
   〃     宮本万次郎(印)
   〃     知花 英夫(印)
   〃     宇座 周作(印)
   〃     吉田新太郎(印)
   〃     与久田幸吉(印)
     記
 一 楚辺区は現在人口二、四三六人、戸数五三四戸を擁し、之だけの移動居住地は容易に見つかりません。
 二 土地所有権が認められましたので移動すべき宅地を求めることが六ケしい。
 三 住宅地代や輸送費や家屋再建費用の用意が殆んどありません。
 四 現在の住宅資材は大体腐朽しており、又釘づけであるが故に取りこわして再建すれば九割位の資材を足さねば建築できず経済の不如意から再建できず、途方にくれる者が沢山でると思われます。
 五 食糧不足の今日移転に多量の人夫と食糧を要すると共に耕作は遅れ極度の食糧不足を来し餓死するものがでる心配があります。
 六 移動により耕地が減り食糧生産の少なくなることを心配するものであります。
   お 願 い
 一 住宅地外の空地に施設をお願いして、住民は現在のまま居すわりができる様にお願いします。
 二 どうしても仕方がなければ部落の半分位でも残して戴いて住民を安心させて戴きたい。

◎議長(知花高直君) 学校々舎建築促進方について那覇地区中等学校生徒代表並に全島高等学校生徒会から議長宛、それぞれ陳情書が参っておりますから、書記長をして朗読致させます。
 (書記長「新垣良正君」朗読)

   陳 情 書
 六、三、三制を採り入れた新教育は幾多の隘路に直面しています。とりわけ校舎建築問題は一喜一憂、その難航は全島を悩ましている由々しい問題であります。
 殊に颱風期を迎え、梅雨季に雨洩る仮校舎で勉学している私達の現状は実にみじめなものであります。戦争中、ギヤップによる学力低下は終戦後六年を経た今日でも依然回復されず校舎不足や設備不充分等と相俟つて全島に教育の危機を叫ばす所以もここにあろうと思います。御当局でもあらゆる手段を尽して校舎問題対策に腐心していられますが客観的事情はこれに解決の道を許さないのでありませう。
 併しかかるボロ校舎で勉強する私達は一生懸命で不自由な条件を克服して学業の進歩を期してはおりますが、私達は何故安心して勉強できる本建築校舎が早急に建築し得ないのか疑問をさえ持つ様になりました。
 映画館や大会社等、大廈高楼は続々建つけれども何故学校々舎は建たないのでありませう。真に憂慮に堪えません。現在の仮校舎はテントの腐朽甚だしく雨の日には教科書、机はおろか室内隈なく雨水に濡れ夏の炎熱には太陽光線の直射を受け殆んど勉強が不可能であります。教室内は土間で雨天の際はじめじめして湿気が多く、夏季は黄塵粉々として眼も開けられぬ状態、それに採光が悪く、為に近視眼になる生徒もできる事だろうと懸念しております。又颱風には一たまりもなく吹き飛ぶような弱体で、大体二、三年を経た仮校舎ですから支柱も殆んど腐朽し、土台の土質のもろい関係で、一雨毎に土も流され全く土台の用をなしていません。万一、颱風で倒壊した場合は二、三週間は激しい仮校舎作業の労務に当るのは勿論、授業は全然できません。仮校舎なるが為に音楽科では折角持合せのピアノが使えず、粗末なオルガンで間に合せ、家庭科に於いては、数台あるミシンも使用できません。仮校舎には一物の設備も不可能であります。
 私達の夢は立派な永久校舎の中で総ゆる設備の完備した教室(参考書、楽器、技能科用具、家庭科備品等)で明るい朗らかな中に張り切つて勉強したり、遊んだりする日は何日のことだろうとそればかり待ちのぞんでいます。
 現在ある仮校舎でも全生徒を収容するのに充分ではありません。二部教授、三部教授で大変困つています。
 恒久校舎の建築は児童、生徒の学力増進は勿論、沖縄の社会道義の昂揚に繋がり、文化沖縄の興隆に深い関係があろうと思います。早急に永久校舎建築を完成し、安心して勉強できます様にお願い致します。
  一九五一年六月十四日
  那覇地区中等学校生徒代表
 那覇中校 三年 真栄田 修
 同       真栄城美枝子
 小禄中校    照屋 正雄
 高良中校    赤嶺 武男
 同       上原 鈴子
 城岳中校    一色 順栄
 同       新城加代子
 真和志中校   宮城 孝夫
 同       佐辺 純子
 みなと中校   仲里 政成
 同       波平 恒子
 沖縄群島議会議長 知花高直殿

  学校々舎復旧についてのお願い
 正規学校教育を受け学徳を身につけて、郷土の復興に寄与するところがなければならないと、奮い起つ若い人々の数が目立つて多くなつて来ます。
 私達のすぐ身近に新しい世代の要求に即して新制の中等学校や高等学校が創設されました。
 私達はそれ等の学校に学ぶ機会に恵まれたことを深く喜び且感謝しています。
 私達は可能な限りの努力を傾けて一日も早く郷土の復興に参与したいと熱望しています。
 この重大な使命を自覚する私達は若い時代のこの日この時の一刻も無駄に過したくはありません。
 私達の周囲には教育の重大さを真剣に叫んで下さる大人の人達も日を逐うて多くなりつつあります。しかしこの私達にとつて最も大切なものの一つである校舎がそれらの心ある人達の叫びや私達の熱望があるに拘わらず一向に復旧の槌音が響かないのは何としたことでせうか。
 私達は雨の日でも風の日でもおちついて勉強のできる校舎を一日も早く建てて欲しいと思います。
 それについて私達の協力が必要ならば進んでお手伝い致します。これは全島高等学校全生徒の願いであります。
 全島高等学校生徒会を催して校舎復旧についての意見や希望を述べ合いました。別紙の記録がそれであります。
何卒充分に御賢察の上私達の願いを一日も早く叶えてやつて下さい。
  一九五一年六月十三日
      全島高等学校生徒会
 沖縄群島議会議長 知花高直殿
  (別紙記録は省略)

◎議長(知花高直君) 十四日の本会議で委員会付託になりました案件に対しましてそれぞれ委員長から修正案の送付がありましたので書記をして修正案を配付致させます。
  (書記修正案配付)

◎議長(知花高直君) 本日の日程を報告致します。
  議事日程第十三号
 第一 十一番議員(具志頭得助君)、二十番議員(仲里誠吉君)請暇の件
 第二 主食配給制度の存続並に主食の輸入確保に関する件につき陳情書を提出することについて
  (五番議員提出陳情第一号)
 第三 日琉貿易方式に関する件につき陳情書を提出することについて
  (五番議員提出陳情第二号)
 第四 農家への臨時食糧増配方に関し陳情書を提出することについて
  (四番議員提出陳情第四号)
 第五 住民立退移動に関する件につき陳情書を提出することについて
  (三番議員提出陳情第三号)
 以上であります。

○本日の会議に付した事件
 日程第一 十一番議員(具志頭得助君)、二十番議員(仲里誡吉君)請暇の件
 日程第二 主食配給制度の存続並に主食の輸入確保に関する件につき陳情書を提出することについて
  (五番議員提出陳情第一号)
 日程第三 日琉貿易に関する件につき陳情書を提出することについて
  (五番議員提出陳情第二号)
 日程第四 農家への臨時食糧増配方に関し陳情書を提出することについて
  (四番議員提出陳情第四号)
 日程第五 住民立退移動に関する件につき陳情書を提出することについて
  (三番議員提出陳情第三号)

◎議長(知花高直君) これから本日の会議を開きます。
 (新城徳助君出席)
 日程第一の十一番議員(具志頭得助君)と二十番議員(仲里誠吉君)の請暇の件でありますが、会議規則第五十三条によりまして七日以内の請暇は議長の許可になっておりますが、七日を超えたら議会に於て許可しなければならんようになっております。御承知の通り十一番議員(具志頭得助君)は只今上京中でありまして、二十番議員(仲里誠吉君)は病気のため届出があり、今会期一週間を超えておりますので議会として両君の請暇を許可したいと思いますが如何ですか。
  (「賛成」「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めまして十一番議員(具志頭得助君)二十番議員(仲里誠吉君)の請暇を許可することに可決致します。

◎議長(知花高直君) 日程第二、第三、第四の陳情案件は全部経済委員会に付託致されております。
 依って関連致しますので二、三、四、つまり陳情第一、第二、第四号を一括して議題と致したいが御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めまして陳情第一号、第二号、第四号を一括して議題と致します。書記長をして修正案の朗読を致させます。
  (書記長「新垣良正君」修正案朗読)

陳情第一号
  主食配給制度の存続並に主食の輸入確保に関する件につき陳情書を提出することについて
 主食配給制度の存続並に主食の輸入確保に関する件について別紙の通り陳情書を提出致したく議会の議決を得たいので提案する。
  一九五一年六月十四日提出
     五番議員 石原 昌淳
宛 ・琉球民政副長官
経由・沖縄民政官
発 ・沖縄群島議会議長
題 ・主食配給制度の存続並に主食の輸入確保に関する件
 琉球民政官府当局より農林省に対して主食配給制度の存廃の可否に就いて御諮問があつたということを承つています。茲に本議会は主食の重要性とその需給の現状に鑑みまして配給制度はこれを存続して戴き且つ絶対必要量の輸入確保については尚一層の御尽力を賜りたくお願い致します。
  理 由
一 自由販売制を施行した場合予想せられる弊害
 1 買溜、売惜しみ等に依る主食の偏在と価格の変動
 2 主食の食糧以外への流用
 3 賃銀生活者、中小商工業者、零細農漁民等の生活不安の増大
二 主食輸入確保の重要性
 琉球は主食の大部分が輸入に依存する現状に鑑み輸入の遅延は全住民生活の不安を招来する。
右第八回沖縄群島議会の議決に依り茲に陳情致します。
 一九五一年  月  日
  沖縄群島議会議長 知花 高直

陳情第二号
  日琉貿易に関する件につき陳情書を提出することについて
 日琉貿易に関する件について別紙の通り陳情書を提出致したく議会の議決を得たいので提案する。
  一九五一年六月十四日提出
     五番議員 石原 昌淳
宛 ・米国琉球民政副長官
経由・沖縄民政官
発 ・沖縄群島議会議長
題 ・日琉貿易に関する件
 琉球経済発展の上に重要なる地位を占める輸出産業の助長育成の為め日本からの輸入額に達する迄は自由に対日輸出ができる様特別な御措置方御配慮願いたい。
  理 由
 琉球経済の発展の為め大きく期待せらるる対日輸出産業も現在の貿易方式では今年の甘藍輸出の例の如く時期を失し折角増産はしたものの生産費を割る大損失を招来し成育途上にある輸出産業の振興発展を著しく阻害している。
右第八回沖縄群島議会の議決に依り茲に陳情致します。
 一九五一年六月  日
  沖縄群島議会議長 知花 高直

陳情第四号
  農家への臨時食糧増配方に関し陳情書を提出することに就いて
 クララ颱風被害の影響に依り食糧窮迫せる農家への臨時食糧増配方に関し別紙の通り陳情書を提出致し度く議会の議決を得度いので提案する。
  一九五一年六月十四日提出
     四番議員 仲村 栄春
宛 ・米国琉球民政副長官
経由・沖縄民政官
発 ・沖縄群島議会議長
題 ・農家への臨時食糧増配方に就いて
 昨年十一月襲来致しましたクララ颱風被害の影響は今日農村に於ける農家の食糧事情を極めて窮迫せる状態に陥れました。依つて沖縄群島議会は左記理由を具申致しまして農家への臨時食糧増配方御配慮下さる様お願い致します。
  理 由
 一 クララ颱風の被害は(寒冷と降雨量の不足及潮害)苗がなく早期植付が出来ず現在は二月、三月植の未熟藷を若掘りしてをる。若掘の続行は農村の食糧不足が続くことになる。
 二 四月以降の降雨過多と日照時の減少は甘藷の生育に不利な条件であつた。
 三 暴風被害応急対策の馬鈴薯は収穫期の降雨過多の為腐敗し食糧不安の緩和にはならなかつた。
 四 食糧に困窮せる農家は屑発芽芋や中毒の危険ある蘇鉄食を初める様になつた。
 五 生徒児童の中には中食の欠食者が激増して学校の授業短縮を要望した事例もある。
 以上の様な農家の食糧事情を御酌み取り下さいまして農家補給農家に対して臨時食糧増配方要望致します。尚宿命的に毎年襲来を予想せられる暴風災害に対し食糧不安なからしめる様備荒食糧の保有方重ねて要望します。
右第八回沖縄群島議会の議決に依り茲に陳情致します。
 一九五一年六月  日
  沖縄群島議会議長 知花 高直
○議長(知花高直君) 本議題三件共夫々委員会に於て慎重に審議されたと思いますので、委員会に於ける審査の結果について委員長の報告を求めます。
◎玉城泰一君 陳情の第一号、第二号、第四号、何れも経済委員会の付託になっておりますが二十日に委員会を開催致しまして、協議致しました。丁度委員長の二十番議員(仲里誠吉君)が欠席でありましたために私が代って委員長の職務を行いましたので私から御報告を申上げます。先ず陳情第一号でありますがこの提案の趣旨につきましては提案者の五番議員(石原昌淳君)から詳細に亘って説明があった通りでありまして、更に繰返す必要を認めません。
 委員会の方でも提案の趣旨に賛同致しましてこれを採択することにして討議を進めたのであります。先ず委員会では第一に主食の配給制度は今後も尚引続き存続して貰い度いということ、今一つは主食の絶対必要量の輸入については今後一層御配慮を願い度いということ、その二点を主眼と致しまして陳情書を提出することに意見が一致したのであります。
 何分配給制度を今後とも継続しなければならないか、何故輸入主食の確保が重大であるかという理由につきましては只今の御手許に差上げました修正案を御覧になればお分りのことと思いますので省略致したいと思うのであります。
 原案の趣旨と修正案の内容は大体同じであります。大同小異であります。而し簡潔にする意味で多少原形とは変っております。
 左様う御承知を願います。
 陳情第二号であります。この陳情の趣旨は日本から沖縄が輸入する商品代の金額の範囲内に於ては現在のようにむつかしい貿易の手続を取ることなしに自由に沖縄から日本の方へ輸出することが出来るように例えば日本から一千弗の商品を沖縄が輸入したならば沖縄から一千弗の範囲内に於て自由に輸出が出来るように特別なる御配慮をお願いしたいという意味の陳情であります。その理由は私から申上げる迄もなく、既に甘藍の輸出問題について時期を失している。
 手続が余りに複雑であるがために時期を失して捨売しなければならなくなり、農家が非常な損害を受けたということによって明かであります。その事実を訴えて陳情したいという訳であります。最近日本視察から帰りました崎山起松議員の話によると日本政府に於ては沖縄の復興問題について非常な関心を持ち、同情しているやうな状態でありまして、この陳情は十分実現の可能性があるということを聞いて委員一同それに対して期待を持っている訳であります。慎重御審議の上御賛同を願いたいと思います。
 尚陳情第四号でありますがこの趣旨につきましては提案者の四番議員から詳細に亘って説明があった通りでありまして、クララ颱風の甘藷作に及ぼした影響が漸く此の頃具体的に現れて来たために、農家の方では食糧事情が非常に逼迫している。それで農家に対して臨時増配をして戴き度いというのが内容になっております。
 最近に於ける農家の実情に鑑みまして誠に適切な陳情であると委員会では認めましてこれを採択し多少の修正を加えてこれをお手許に差上げた通りの修正案に意見が一致した訳であります。三つ共甚だ簡単ではありましたが先に提案者から夫々詳しく説明がありましたので簡略に一応委員会に於ける審査結果の報告を終りたいと思います。尚御質問に応じて御答え致したいと思います。
○議長(知花高直君) 陳情第一号、第二号及び第四号の質疑に入ります。
◎新里銀三君 非常によい提案でありますので全部賛同をするものであります。此の陳情につきまして単に文書だけでやった方が効果があるか、又は議長と政府の方から係官が一緒になって軍の係官に陳情した方がいいかと思いますが其の辺の御検討を願い度いと思います。
○議長(知花高直君) 御趣旨に副うように取計い致します。
◎崎山起松君 陳情第二号に対しては本員が泡盛原料の輸入に関し総司令部及び日本政府の関係筋その他に折衝の体験から致しまして、意見を述べて各員の御賛同を得たいと思うのであります。日琉貿易は過去の実績から申しましても輸出入のバランスが取れなく、片貿易の感じが致すのであります。無論これに対しては琉球の輸出産業が少いことその他種々の原因がありませうけれどもせめて琉球からの輸出品は輸入の総金額の範囲内で自由に取引が出来るように全面的に日本はこれを受入れていただきたいことを飽迄も私は要望したいと思うのであります。
 此の輸入品受入の鍵は日本の通産省及び為替割当委員会の権限でありまするが、日本政府としては琉球全域を日本の一環として取扱う方針を国策としているし又琉球の復興及び産業の助長育成に対しては飽迄も親心が窺われるのであります。又米国琉球民政府その他関係筋に於きましては琉球の自立経済に対して飽迄も関心を持たれ且つこれに対しましては御協力御援助を仰いでいる点から致しまして本員はこの陳情は飽迄も可能性があり且つ沖縄の自立経済輸出産業の振興に大いに効果あるものと思いまして賛意を表する次第であります。
◎新里銀三君 只今の十九番議員(崎山起松君)の御意見に賛同するものでありますが矢張日本政府としては琉球を日本の一環として考えていると云うことは結構でありますが現在の社会情勢はこれを許さないのでありますが、この自由と云うのはエルシーを組んでいるものであるか、そうでなくて例外として沖縄は何人でも自由に持って行けると云う意味でありますか、提案者の御意見は如何なるものでありますか。
○玉城泰一君 現在の貿易の実績はエルシーを組んだり輸出入に制限を加えたり色々制約がある訳であります。そう云う事一切を皆含まないで日本から入れた金額に達するまでは戦前同様に取扱って貰いたいと云う意味の自由であります。
◎議長(知花高直君) 質疑を終了致しまして討論に入ります。御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って委員長の報告の修正案通り一部修正の上可決致します。

◎議長(知花高直君) 次ぎは日程第五の陳情第三号を議題と致します。書記長をして修正案の朗読を致させます。
  (書記長「新垣良正君」修正案朗読)

陳情第三号
  住民立退移動に関する件につき陳情書を提出することについて
 住民立退移動に関する件について別紙の通り陳情書を提出致したく議会の議決を得たいので提案する。
  一九五一年六月十四日提出
     三番議員 稲嶺 盛昌
宛 ・米国琉球民政副長官
経由・沖縄民政官
発 ・沖縄群島議会議長
題 ・住民立退移動に関する件
 米軍において戦略上沖縄群島内の土地使用に対して住民は十分に協力を致し便宜を取計うべきと信じます。処が終戦以来六ケ年米軍のお蔭で一定の居住地に安定し将来の復興に努力しつつある今日立退移動の命に依り居住地を求めて再出発する住民の立場は洵に同情に堪えないものがあります。
 殊に四月一日以後土地の所有権が認定せられその移動先の土地選定に就きましては地主との関係や土地代又は借地料の都合もあつて従来の如く単に知事や村長のみの力では如何とも為し難い事情を考えなければなりません。吾々は今後米軍に対する全住民の協力体制の強化と住民の生活安定を図る為め左記事項御配慮下さる様お願い致します。
    記
一 軍の指示による住民立退移動に際し軍は予め群島政府当局と密接な連絡を図り関係市町村当局や関係住民に対し、土地立退経費、移築費等に関し何等心配のないように取計つて貰うこと。
二 軍は立退移動後の借地料を早急に支払つて貰うこと。
右第八回沖縄群島議会の議決に依り茲に陳情致します。
 一九五一年六月  日
  沖縄群島議会議長 知花 高直
○議長(知花高直君) 本陳情第三号は総務財政委員会に付託してありましたので審査の結果について委員長の報告を求めます。
◎稲嶺盛昌君 総務財政委員長具志頭得助君が日本に旅行不在のため委員会に於て互選により本員が仮委員長の職務を行いましたので本員から只今議題となりました陳情第三号住民立退移動に関する件につきまして総務財政委員会に於ける審査の結果を御報告申上げます。
 本案は六月十四日の本会議に於て総務財政委員会にその審査を付託されましたので、六月十六日政府会議室に於て本委員会を開催、委員五人出席の下に政府関係主務部長の出席を求めその審査を行ったのであります。本案は本員の提案で提案の理由は十四日の本会議に於て本員から御説明申上げた通りでありまして即ち軍命による立退移動は住民の立場を考えます場合に誠に同情に堪えないものがあります。殊に土地所有権が認定せられました今日地主との関係、土地代借地料等にからんで従来のような取扱方ではいけなくなり我々民の力では解決出来ない実情にあります。それで軍の御力におすがりしなければなりませんので、本委員会はこれを採択することに致しまして陳情文の審査に入ったのであります。ついで質疑を省略致しまして討論に入りました処長浜委員は陳情文は飜訳の都合もあり出来るだけ簡潔明瞭にした方がよいので原案の陳情文中、無駄な修飾語は削除して只今書記長が読み上げました通りの修正意見を述べられたのであります。他の委員も長浜委員の修正意見に賛成せられ本委員会は御手許に差上げた修正案の通り可決したのであります。
 以上甚だ簡単ではありますが御報告申上げます。
○議長(知花高直君) 只今委員長から報告がありましたがそれに対して何か質問或は御意見を拝聴致します。
◎仲村栄春君 要望は記の一、二となっておりますが十四日の協議会でも十六番議員(新里銀三君)から要望がありましたように、今後住民地域に対する施設計画はその地(他カ)域に変更して住家の移動を最小限度に食止めて頂くように第三項に迫加をしていただいたらどうかと思うのであります。
 その理由は既にこの本文並に第一項に於ても謳われております通り既に所有権が認定せられました以上住家の再移動即ち住家以外であったら何ら他に地域を求めることは必要はないのでありますが、住家に関する限り再び新たなる移動先の地域を定めなければいけないと云う、最も困難なる事態に遭遇するのであります。更に今一つ沖縄に於て最も住家の条件として考慮せらるべき問題は暴風に対する施設であると思います。少くとも終戦後移動した各々の住家に対しては不十分なりとは云い乍らも、それぞれ暴風に対する最小限度の施設は大方なされておるのでありまして、新しい地域への住家の建設は再びこの施設を要求し無駄な労力の消耗、たとえ第一項に於て移動に要する物質的な援助があって全くこれに対する心配がないにしても、労力的精神的に及ぼす影響は極めて大きいものであります。依って第三項に只今申上げました今後の施設計画に対しては能う限り住民地域を避けて、その他地域に変更して頂くように要望を入れたら如何かと思います。
○議長(知花高直君) 暫時休会致します。
  午前十時四十分休会

  午前十時四十七分再開
◎議長(知花高直君) 開会致します。陳情第三号の修正案に御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って陳情第三号は修正案通り可決致します。

◎祖根宗春君 只今可決になりました陳情第一号、第二号、第三号、第四号、これに対して群島政府当局に善処方希望を述べて見たいと思います。この四つの陳情は何れも時期的にせっぱ詰った急ぐ問題で沖縄住民が非常に関心を持った問題であります。
 従いまして議会としてもこれを取上げ委員会に於ても慎重審議し、且つ非常に短い時間にこの四つの議題を一括審議して可決したのでありますから、この四つの問題について関係機関に議会の意思をよく伝えていただいて、一刻も早くこれが実現出来るように御努力を願い度いと思います。此の中の第一号は軍は既に食糧の自由販売をやりたいと云うような意向を色んな方面から伝えられております。若しもそれが決定してからこう云う陳情をしたのでは遅いと思いますから軍の自由販売に対する決定の前に速かに議会の意志表示をして戴き度いと思っております。若し自由販売でなければならないと云う風に軍の意向が向いつつあるとすれば、それに対しての対策を議会としては講じなければなりませんので、当局としても此の問題をよく御研究願いたいと思います。
 それから陳情第二号の日琉貿易の促進方の件でありますが、此の問題も差当り非常にむつかしい問題で専門的な知識や或は統計を集めてもっと慎重審議致しまして、日琉貿易の根本問題迄で触れるのが順序だと思いますが、而しそこ迄でまだ十分に研究が画されておりませんので差当り日本から沖縄に輸入した分だけのものは沖縄から自由に輸出出来るような、そう云った手続面から云っても決済面から云っても自由に簡単にもっと早く時期を失しないように輸出させて貰い度いと云う事で、その一部面だけを取上げているが、それに関連して弗建で行くか円建で行くか、どう云う決済の方式をやるか、或は貿易協定の問題をどう云う風にやって行くかと云う事は今後に残された大きな問題で委員会でも議会でも触れておりませんので、此の残された問題についても政府の格段の御研究を願い度い。陳情第三号に付いては此れも沖縄の政治問題の大きな関心事でありまして、殊に経済問題の伴う或は民心の安定、不安定に関する大きな問題でありますので継続的に此の問題を慎重にそして機敏に住民が安心して行くように格段の御努力を願いたい。現在知事初め各関係部長、職員も御尽力している事は新聞紙上を通じてよく見ておりますが、我々議会の意のあるところを特に関係当局に伝えて戴きたいと思います。
 それから陳情第四号の食糧事情でありますが此れは一般的な問題を陳情として取上げておりますが、この沖縄の五十六ケ町村の中でも特にひどい町村と、ひどくない町村と色々食糧事情の窮迫の事情は多少デコボコはあると思いますが、就中農村は全島到る処クララ颱風に依って全般的な共通の悩みを持った食糧窮迫の事情にありますので、これは一日々々遷延することによって益々零細農家、漁民、俸給生活者、中小工業者が非常に食糧に不安不足を来たしておりますので、この点も尚関係当局に詳しい資料を、全島的な資料を持寄りまして議会の陳情の趣旨を織込んで一刻も早く此の食糧の増配、食糧事情の緩和について御努力を願いたい。以上当局に対する要望を述べておきます。
○知事(平良辰雄君) 只今御要望がありましたが陳情の一号から四号迄に付いては群島政府としてもこの線に沿うて既に陳情もやっているのでありまして、此が出まして又我々の陳情を応援する恰好になって大変力強く思っております。
 殊に移動の問題については最近強く陳情しまして或程度向うの方でもそう云うことを考えているようでありまして、近い中に何とか具体的な報らせがあるかも知れないと思っております。
 尚又自由販売のことについては既に群島政府では出してありますし、尚貿易関係でありますが、これは正式な陳情はまだやっておりませんのですが然し貿易庁との関係で、そう云う面に推進して行きたいと云うような話合はやっているのであります。尚御趣旨に沿うて、此の陳情については群島政府としては全面的に賛成でありまして、又これを推進して行き度いと考えておりますから御諒承願い度いと思います。
◎議長(知花高直君) 本日の会議はこれで終了致しまして明日は午前十時から本会議を開くことに致します。
 本日はこれで散会致します。
  午前十時五十七分散会
出席者は左記の通り
     議 長 知花 高直君
議 員
 稲嶺 盛昌君  仲村 栄春君
 石原 昌淳君  普天間俊夫君
 宮城 久栄君  平良 幸市君
 玉城 泰一君  松本 恭典君
 長浜 宗安君  山川 宗道君
 祖根 宗春君  山城 興起君
 新里 銀三君  新城 徳助君
 野原 昌彦君  崎山 起松君
知事       平良 辰雄君
副知事      山城 篤男君
総務部長     幸地 新蔵君
財政部長     仲宗根秀俊君
経済部長     呉我 春信君
工務部長     渡嘉敷真睦君
法務部長     知念 朝功君
文教部長     屋良 朝苗君
厚生部長     宮城 普吉君
総務副部長    稲嶺 成珍君
財政副部長    久場 政彦君
経済副部長    知念忠太郎君
工務副部長    西銘 順治君
警察本部次長   西平 宗清君
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