戦後初期会議録

組織名
八重山群島議会
開催日
1952年02月15日 
(昭和27年)
会議名
第8回八重山群島議会(定例会)[1]
議事録
第八回八重山群島議会(定例会)会議録

第八回八重山群島議会(定例会)会議録
一 会期
  一九五二年二月十五日から一九五二年二月二十一日まで七日間

三 議事参与
 知事     安里積千代君
 副知事    當銘 正友君
 財政部長   崎山 信邦君
 経済部長   眞榮田 登君
 工務部長   宮良 英副君
 厚生部次長  三島 保夫君
 会計長    宮良 永益君
 主計課長   浦崎永八郎君
 財産管理課長 石垣 直文君
 事業課長   前新 雄三君
 企免所長   竹原 孫恭君
 経済部次長  石垣 英政君
 工務部次長  宮城 光雄君

四 書記長及書記
 書記長    田盛 正雄君
 書記     漢那 用知君
 書記     宮良 安宗君

五 会議に付したる事件の題目
 知事の施政演述
 議案第二号 廃庁に伴う財産の処分に関する条例制定について
 議案第三号 群島財産処分について
 議案第四号 公有水面使用料徴収条例の一部改正について
 議案第五号 八重山群島政府旅費支給条例の一部改正について
 議案第七号 一九五二会計年度八重山群島政府一般会計歳入歳出補正予算の審議について
 議案第八号 一九五〇年度八重山群島政府一般会計歳入歳出決算認定について
 議案第九号 一九五〇年度八重山群島政府特別会計歳入歳出決算認定について
 議案第十号 工務部各事業所一九五〇年度貸借対照表収支決算書認定について
 議案第十一号 群島財産評価委員委嘱について承認を求める件
 議案第十二号 一九五二会計年度八重山群島政府特別会計中央診療所歳入歳出補正予算の審議について
 議案第十三号 群島財産評価委員委嘱について承認を求める件
 旧日本軍のトラック払下げ代金の返還について
 石垣市の水道工事費について群島政府が解消され琉球政府の地方庁設置されるに当り、議会より中央政府、琉球民政本部へ陳情書提出について
 知事の退職慰労金について

一九五二年二月十五日開会

議事日程第一号
 午前十時二十五分開議
第一 知事の施政演述
第二 議案第十一号 群島財産評価委員委嘱について承認を求める件

 議決の顛末
◎議長(潮平寛保君) 五番議員が未だ出席されませんが議員の過半数御出席なっていますから開会いたします。(午前十時二十五分)
○書記長(田盛正雄君) 参与の報告をいたします。参与は各部長、主計課長、財産管理課長、事業課長、会計長、出納長となっています。
○議長(潮平寛保君) 今期議会の会期をお諮りします。
○佐久眞長助君 会期を七日間としては如何でしょう。(来る二十一日まで)
  (「異議なし」の声あり)
◎議長(潮平寛保君) 御異議ないようですから会期は来る二十一日まで七日間と決定します。次には日程をお諮りします。
○佐久眞長助君 政府として緊急を要するものがありますか。あればそれを先にして、もしなければ議案の番号順に審議しては如何ですか。
○議長(潮平寛保君) 議案第十一号は第二号議案、第三号議案と関連するように思われますから、第三号議案の次に持って来ては如何ですか。
  (「異議なし」の声あり)
◎議長(潮平寛保君) 御異議ないようですから議案第十一号は第三号議案の次に、その他は議案の番号順に上程することにします。
 次に知事の施政演述をお願いします。
  (施政の概況について演述があった。その大要は次の通りである。)
◎知事(安里積千代君) 議員各位には定例議会を招集しました処、御多用中よく御出席下さいまして政府当局として感謝申し上げます。
 曩の定例議会、臨時議会以後の政府の諸般の施政概況につき御報告いたします。
 御承知の通り年度も迫っておりますし、殊に群島政府が琉球政府へ統合されるという極めて複雑な時期に立至っている今日であります。
 例年の二月定例会ならば翌年度の政府の各般の施政施策や、その計画及びそれに伴う翌年度予算等について御審議を願うわけでありますが、今回は三月末を以て群島政府は中央政府に統合される関係から政府として新しい事業の計画なく、従来の計画実施の事務処置と引継ぎ、移行事務の円滑を期し、専念している次第であります。
 如何にして円滑に琉球政府へ諸般の引継ぎを完了するかについては政府として熟慮の上計画もしているのでありますが、これに対しては議員各位の御協力を仰ぐべき多くの問題もありますので、本議会においては、これに関連する問題について提案をしてあるのであります。
 軍が群島政府を廃止し、統合政府樹立される意図を十分御了察下さいまして、本群島政府の移行事務、引継事務が滞りなく立派になされるよう各位の御協力をお願いする次第であります。
 以下政府行政の内容について概略を申し上げます。
  総務部関係
 群島政府が琉球政府へ統合されるにつきましては、前定例会、臨時会にも申し上げたのでありますが、これに関する指示された書簡について申し上げます。一九五一年十二月一日にはルイス准将から群島政府財産の処分について次のような指令がありました。
 「群島政府若しくは臨時中央政府の取得した動産若しくは不動産は、それが補助金、或はその他によって得られたものであると否とを問わず琉球列島民政官の事前の承認を得ることなく、これを売買し、若しくはその他の方法でこれを譲渡することはできない。本指令は特に再分配を要するものとして政府に譲渡された財産については、これを適用しない。」となっておりまして財産の処分についての事務処理をいたしおります。
 これに関連して十二月七日には同じくルイス准将より各群島知事宛に臨時中央政府並びに各群島政府の財産目録の報告方指令があったので、政府は一月三十日群島財産を明らかにして提出してあるのであります。
 十二月十三日には琉球政府へ機能引継ぎの件で書簡が与えられてあります。その書簡の趣旨は、
 一 現在の臨時中央政府が群島政府解消後執行することになっている群島政府全機能は一九五二年四月一日までにこれが引継ぎを完了すること。
 二 群島政府活動の執行権が一九五二年四月一日前に琉球政府へ引継がれた場合は、群島政府は同引継ぎ活動に対する一九五二会計年度割当債務負担予算を引継ぎ支出する。
 三 一九五二年四月一日現在で琉球政府は群島政府から引継がれたすべての活動に関する完全な行政機能を執る。
 四 群島政府当局は、その職員の内、琉球政府に雇用される以外のすべての者を解消するに必要な措置をとる。
 となっていて、これに対する計画を一月三十日までに民政官に提出して認可をうけることになっていたのであるが、本群島政府は一月十五日に提出済となっています。その計画は臨時中央政府においても根本的の計画が出来ていなかったのであります。即ち中央政府として機構はどうするか、それに伴う人員はどれだけ要するか、地方庁の機構組織はどうするかということまで具体的な計画が出来ていなかったのであります。近頃になり漸くこれらの事がらが具体化して来たようでありますが、自分も知事としてこの件については本群島の立場から、地方庁としてその組織機構とこれに要する人員については計画報告し、先般の那覇出張中にも折衝して来ているのであります。
 次に政府が廃止され、機構変更されるために余儀なく退職する職員に対しては、退職給与金を支払うよう十二月二十六日付ルイス准将より書簡があり、次のような趣旨の指示があります。
 一 退職金は三ヶ月分を超えてはならない。失職する群島政府職員の俸給額は各受給者の最近六ヶ月間の俸給額の平均をもってこれを定める。
 二 退職金は個人所得税を免除する。
 三 退職金は関係群府がこれを支払うものとする。退職金需要額を評価し、且つ在職期間を基にして支給率に関する計画及び財源計画を、一九五二年二月十五日前に出来るだけ早く提出せねばならない。
 四 中央政府へ転職する職員には退職金は支給しない。
 五 政府の職をなすものは、そこから給与を二重に受けることのないよう、厳に注意相成りたい。
 というようになっています。
 政府としては失職者ないよう、又地方的な利益が失われることがないよう、現職員を地方庁員として残留せしめ、又、今後中央進出を目指す者は琉球政府へ送り出し、全琉的に活躍させるつもりでいます。
 この件については全琉から成る人事銓衡員によって銓衡されることになっており、目下当政府からも派遣して折衝中でありますからこの四、五日以内には確たるものが出来ることと予想されます。政府の機能引継ぎや、退職給与金等の計画とその処置に当ってば、予算の補正や財産の処分等を必要としますので後で各位の御審議をお願いします。
  立法院議員選挙について
 来る三月二日執行される立法院議員選挙につきましては、先の臨時議会で選出決定になりました群島選挙管理委員会委員によって目下選挙事務が処理されつつあります。
 政府としては政府独白の立場でこれに協力をして選挙が公平適正に執行されることを期し、委員会の事務が円滑に処理されるよう期待しているのであります。
 この選挙に際し、知事自身が立候補をしているので、そのために選挙が曲げられ、又は部下職員が拘束され、或は義理づけられる等のことがないよう特に訓示を与えておいてあるのであります。
 選挙法については新しく公布されたものであるため、疑義の点もあったのですが、委員会において研究され解明が与えられて事務が処理されています。
  経済部関係
 一 農事懇談会
 政府は昨年十一月三十日、十二月一日の両日に亙り、石垣市、大濱町の篤農家懇談会を開催し、多大の成果を収め、更に十二月十三日には農林省と共同主催で農事懇談会を催し、群島農業に大きな示唆と刺戟を与えたのでありますが、竹富町、与那国町は地理的関係で参加を見ることが出来なかったので一月から各離島の農事懇談会を実施し、政府の農業政策の徹底を期すると共に、近く統合される中央政府へ政策具現の方途を推進する農民の声を結集する機会を得たのであります。
 二 黒糖検査及び黒糖移出の状況
 政府は先に議会において議決なりました砂糖及び容器検査条例に基く諸般の態勢を整え、移出黒糖の検査の実施中であります。本日までに検査した状況は特等九〇〇斤、一等二五、六九二斤、二等一〇、七二四斤、三等二五、三一六斤であります。戦争前八重山産黒糖の品質が劣悪で昭和十四年の総移出黒糖中一等は一二パーセントに過ぎなかったのでありますが、本年は四〇パーセントに向上していることは農民の技術が向上したあらわれで喜びに堪えません。
 政府は更に製糖技術の向上によって黒糖品質を改善いたすべく、黒糖品質改善研究会を大濱町礎辺において二月五日、石垣市、大濱町の分を開催し、近く竹富町黒島においても実施する予定であります。
 更に日本の通産省の発表によると黒糖移入の琉球オンリーは二月中で打切られる模様でありますので、各町村農業協同組合を通し製糖を急ぐよう督励している次第であります。
 三 牧野組合の法人化について
 本群島においては十ヶ所の牧野組合が存在していたのでありますが、これらはいずれも任意組合であったのでありまして、政府は牧野法に基く牧野組合の再組織を企図したのであります。幸にして牧野組合代表の陳情もあり、積極的な牧野組合法人化の要請に応え、政府が産婆役をつとめ、白保、伊原間、久良、平久保、嘉彌真の各牧野組合の結成を了え、尚竹富町、与那国町においても結成の傾向にあります。
 かくて原始的な本群島の牧野経営は組合の法人化により、科学的施設が施され、放牧牛馬の繁殖は逐年その数を加えていくことを期待するのであります。
 四 放牧試験地の設置について
 かねて政府においては八重山農業における牧場の重要性に鑑み、放牧試験の実施を計画したのでありますが、この度、農林省の助成を仰ぎ大濱町宮良字有地シヤ原に二〇町歩の敷地を決定し、各種施設を建設中でありまして、石塘の築造においては各牧野組合員三百人の献身的労力奉仕がなされ、且つ又大濱中学の労力奉仕もなされているのでありまして、八重山畜産の振興に寄与された各位の御熱誠に対し、知事として深甚の感謝を表する次第であります。
 五 一九五一年における貿易収支のバランスについて
 昨年度における本群島貿易の概況を特に数字的に報告致します。
一九五一年一月から十二月までの収入勘定
 △収入(移 出) 四三、三五四、四六〇円  一二〇円一弗換算
                           三六一、一八七弗
 △支出(移輸入) 四六、三一七、二〇五円二五銭(ママ)  〃
                        四四七、七三二.六二弗
 △輸入超過                   八六、四四五.六二弗
  収入(移出)の内訳
   農産物  一〇、八三九、九一七円 弗換算
                     九〇、三三三弗 二五%
   水産物  二七、一六六、七八三円 二二六、三九〇弗 六三%
   畜産物   四、五二九、一二〇円  三七、七四二弗 一〇%
   林産物     八一八、六四〇円   六、八二二弗  二%
  支出(移輸入)の内訳
   一般商人 一五、四五五、〇〇〇円       一二八、七九二弗
   食糧局  一八、一〇五、〇〇〇円       一五〇、八二六(ママ)弗
   農連    五、五四七、五九七円五〇銭 一〇八、〇三六.六二(ママ)弗
            (肥料のドル換算四五円
             その他   一二〇円)
   水連   一、二五一、六六四円七五銭   一〇、四三〇弗
   琉石   五、九五七、八〇八円      四九、六四八弗
 右のようになっていて前年十六万弗の移輸入超過であったのに比して本年は移輸入超過は半減している状況であります。
  法務部関係
 本年一月三日軍の指示で裁判所、検事局、刑務所は中央政府に移管された旨電報がありました。移管に関する指令が未だ来ていないので詳細ははっきりしないのでありまして、これは一応組織法が改正されたことになったのであるか、これもはっきりしないのであります。又一月三日以後における手数料、登録税等の収入はどうするか、経費の支出はどうするかということも指示がないのであります。
 一月三日以降組織法から消えたものなら、群島政府が収入支出することは違法であるから、当然中央政府が収入も支出もすべきであると沖縄政府とも意見一致しているのであります。この件につきましては、何らかの指示があることとは思いますが、それまで経費支弁を放置出来ないことであるし、疑義はありますが何とか考えなければならないことですから、群島政府が立替支出しているような状態であります。
  厚生部関係
 一 一九五二年一月三十一日太平洋科学局派遣のグディング少佐団長及び結核科ギルバードペスケラー中佐、眼科ロバートRトロッター博士、寄生虫科ケルバートセレービー氏各専門家一行来島につき、八重山群島内医療関係者の学識向上をはかる目的で関係者多数の集りを願い、二月一日情報館に於て医療補習会を実施いたしました。当日受講者七十余名でありました。
 補習会の後、眼科ロバートRトロッター博士は竹富島へ視察し眼病患者多数の検診をなさいました。更にグディング少佐と厚生部長一行は名蔵、川平、白保、伊野田、星野のマラリア現状並びに保健所敷地の視察をなさいました。
 二 防疫関係では昨年十二月十八日崎枝にヂフテリア患者が一名発生、同月二十三日初診届出たのであるが即日血清治療したにかかわらず死亡したが、これは発病後診断を受けるまでに、四、五日経過したのであって、当局としては即時防疫対策を講じ、群島下一斉にヂフテリア予防注射を行い、目下第二回目実施中で昨年二月頃蔓延したことを思い起して防疫陣の万全を期しております。
 三 救癩事業について
 公衆衛生浄化の犠牲となって愛楽園、南静園に収容治療する本郡出身癩患者に対し、去年八月以降慰問金品並びに各学校から慰問文を募集した処、三八、一四四円二〇銭が集まりましたので、之を愛楽園に二三、〇〇〇円、宮古南静園に一五、一四四円送って郡民の心からなる慰問を行っております。しかし年々のことであるし、将来は予算化する必要があります。
 尚一九五〇年以降昨年末までに宮古へ一六名、沖縄へ八名、合計二四名を送り衛生環境の浄化を期しております。
 四 保健所
 今年度における公衆衛生行政上特筆すべき事がらは、保健所の設立であります。
 昨年十月二十二日発足以来群島内全地域に亙ってクリニック予防接種、環境衛生の指導等活溌な活動を展開しています。
 しかし備品の不足等もあって保健所事業運営上まだまだ不備な点もありますが備品は近く日本内地から到着することになっています。到着次第結核、性病の集団検診、予防接種、母子衛生の全面的教育が出来ることと思います。保健所発足以来健康相談に預った人員が五八五人、僻陬な地域で簡単な診療を施したのが三二七人、講演会を持つこと二九回という記録であります。
 石垣保健所の敷地も決定し、建物の公入札も終え、二月九日工事に着手し、伊野田支所も工事認可となって着工したのであります。これによりまして八重山の保健衛生面に寄与することが大であると思います。
 五 マラリア防遏事業について
 マラリア防遏事業は八重山産業開発事業と密接な関係を有する事業であるだけに、群島民の関心を持つこと大でありますので、その成績を数字的に挙げ概略的に申し上げます。
 1 一九五一年中の急性マラリア患者数は七四名(十二月三十一日現在調)この発病者を発見し得たのも係員が有病地巡邏を従前より三倍以上も巡回し、その上巡回診療班とも相提携して患者の早期発見に努めた結果であります。それはマラリア撲滅事業上大いに効果をもたらしたのであります。しかし前記の発病者は、石垣島、西表島の一部有病地に発生した。その原因は二、三年前群島外より来た自由移民が多数を占めており、蚊帳不完備の家庭が相当ありました。一九五一年二月の調査によると、有病地部落で蚊帳のない家庭が二七八戸もあり、その家族が、八八七名である。皆貧乏暮しであるから購入能力がない、それで安価で仕入れる方法も講じてみたがそれも思わしくなかったのであります。
 又、慢性マラリア患者(脾腫患者)数は一九五一年には一四二名、一九五〇年度は一三九名[但し春一回実施、秋は実施していない(推定)二七八名以上と思われる。]一九四九年には五七二名である。故にマラリア患者総数は一九四九年五八九名、一九五〇年は推定三一三名、一九五一年には二一六名となり年々減少している。しかもマラリア防遏に使用したアテブリンは僅か六三一、七三九粒であり、之を一九四九年度の二、一八一、六三八粒に比して三分の一の量にも足りない。これは、先般来島されたカムロイ軍医中佐の御注意と、又一面従前無料配布であったアテブリンが有料配布となった為であります。しかし政府としてはアテブリンによる外、他の防遏方法も講じて努力し、先程申し上げたような成績をもたらして来ているのであります。これは一つに有病地住民のマラリアに対する理解と協力の賜だと感謝しています。本年一月より現在までのマラリア発病者は一名(再発者)であります。
 2 来る夏季マラリア流行防止対策として次の通り施行しています。
  (イ)有病地部落中でも危険地帯部落を特に指定し、夏季同様の週二回の予防服薬をせしめ、防蚊剤リーベランドの使用薬、油、DDT粉末の撒布等を実施せしめています。
  (ロ)夏季対策として指定部落の学童に対し、ビタミン剤を給与し、体力増強をはかっています。
  (ハ)有病地部落住民に対し、冬季期間における一斉採検血を施行してマラリア原虫保有者の検索に努め、治療服薬の徹底を期して夏季のマラリア流行を防止することにしています。
 3 最近における有病地人口の増加状況を申し上げますと一九四九年 五、五〇〇名 一九五〇年 六、〇九三名 一九五一年 六、二四三名以上の通りで一九四九年に比して、七四三名の増となっております。
  工務部関係
 前四ヶ年に施行された土木建築関係の工事の件数は二四件、その施行額一五、九三二、四七二円に対し、この一年の件数は、土木二七件、建築五一件、計七八件で復興費は三三、八〇三、〇〇〇で実に四ヶ年間の二・一倍に相当し、これを一年一年の割に比較するとき八ヶ年の歩みに匹敵しているのであります。建築は全工事施行中で年度に完了する予定でありまして、入札による剰余金四六三、七〇〇円は更に学校(小浜小学校、崎枝分校)の建築に使うべく申請中であります。
 更に施行中の土木建築工事は、セメント、鉄資材等の値上りに伴い一大影響を受け、かねての契約金をもってしては、到底工事完成は不可能な状態にあるため補助金の予備費より六七三、三一〇円を以て値上りのカバーをして貰うよう陳情中であります。又川良山線道路と厚生寮の工事を目下申請中であります。
 次に一九五二年度復興工事費並びに工事種目の内容について申し上げます。
 一九五二年度復興工事費
 四一、二四三、〇〇〇円
 内訳
予備費       七、四四〇、〇〇〇円
土木        五、五〇〇、〇〇〇円
建築       一三、七〇六、〇〇〇円
繰越工事費    一二、五〇〇、〇〇〇円
復興補助費     一、〇九七、〇〇〇円
ルース颱風補助   一、〇〇〇、〇〇〇円
         三三、八〇三、〇〇〇円
土木工事  完 成  施工中  未着手  剰余金
 道路    四    二    一
 桟橋    一    一        四七四、八〇〇円
 水タンク       一
建築工事  完 成  施工中       剰余金
 学校    一五   二〇       四六三、七〇〇円
 一般建築       五
△前四ヶ年完成土木建築工事件数二四件、施行金額一五、九三二、四七二円
△一ヶ年完成土木工事件数二七件、学校、病院、郵便局、公共建物件数五一件
 以上のようになっています。
 工務部の運輸所、鉄工所、配電所、製材所の各事業所は群島政府が中央政府へ統合されるに当り、政府がこれを経営管理することは不適当と認めますので、この際民営に移管、又は公共団体へ払下げ譲渡したいと考えるのであります。
 この件についての詳細は議案審議の際申し上げたいと思います。
  財政部
 予算関係について申し上げます。
 一 本群島は他群島に比して人口が少く負担力において貧しいのであります。しかも島嶼が散在しておる関係でいきおい経費も嵩むのが本群島の特殊的状況でありまして、政府財政は決して豊かではあり得なかったのであります。
 しかし、群島民各位の涙ぐましい御協力、御理解を得て政府財政は計画通り順調に運びつつあり、他の群島に比し、堅実に近い歩みをしてスムースに行っていることは群島民と共によろこび、且つ感謝している次第であります。
 二 地方財政調整交付金について
 先の議会で議決になりました地方財政調整交付金の予算計上額四十万円の交付は未決定でありましたが、先日条例に基く委員会を組織(政府側三名、市町側四名から成る)し、昨日委員会において検討され答申を得ております。
 委員会の答申額は、条例によって知事が決定することになっていますから、知事としては答申なった数字の根拠を十分究め、各市町の財政状況を吟味して、速かに適正なる決定をして市町に交付するつもりであります。
 この交付金によって幾分市町財政の調整がなされ、懸案が達せられることを各位と共にうれしく思うのであります。
 三 予算補正の大綱について
 1 琉球政府に引継いでも同政府として別に行政上必要でないと思われる財産を処分して財源を見出し、解職の余儀ない職員に対し、退職給与金を支給すべく計上したこと。
 2 裁判所、刑務所、検事局が一月三日付で、琉球政府に移譲されたので、その不用予算を他の必要経費に充てたこと。
 3 景気の後退等によって間接税の減少が見込まれるが一方、商工課の雑収入の増加によって補ったこと。
 4 曩に前議会において陳情のあった竹富、与那国の航路補助金、波照間、竹富両中学校職員任用の件を採用して予算に計上したこと。
 以上予算の概綱(ママ)報告いたします。
 本群島議会は今期を以て最後の議会であろうと思われます。来る四月から六月までの予算は延長し、政府はそのまま六月まで存続する形になりますが議会はどうなるか未だわかりません。
 もし、議会も存続するとせば、又その間に議会も開かれることになりましょうが、組織法が改正されぬ限り、議会としては、機能を持つものと思います。何れにせよ、機能発揮の定例会は、この議会を以て最後とするのでありまして、各位におかせられては名残惜しまるることとお察しします。
 終りに一言申し上げたいことは、この度の立法院議員選挙に際し、自分も立候補することになりまして、去る二月一日議会議長に三月二日を以て知事を辞職する旨届出をしておいてあります。選挙法によりますと公職にある者が立候補するときは、選挙当日を以て退職せねばならぬことでありまして、知事が退職する時は三十日前までに群島議会議長にその旨届出をすることになっております。議会議長はその届出を受理し、退職すべき日を決定して群島選挙管理委員会に通告し、群島選挙管理委員会は次の知事選挙の告示をすることになりますが、群島政府廃止になる今日、知事選挙はないのですから、それについては何とかの指示があることと思います。自分として三月二日を以て選挙における当選にかかわらず知事を退職せねばならぬことですから、各位と議会を共にするのも今議会が最後でないかと思われまして、私にとりましても又感慨深いものがあるのであります。
○議長(潮平寛保君) ただ今の知事の演述に対する御質問を願います。
  (別に質問なし)
◎議長(潮平寛保君) 御質問はないようですから質問を打切りとします。知事の演述中にありました知事の退職届出について私から申し上げます。一九五二年二月一日に群島知事安里積千代氏より次のような退職届出がありました。

  退 職 届
私儀この度立法院議員に立候補のため一九五二年三月二日退職したいと思いますから群島組織法第八条第四項により御届致します。
 一九五二年二月一日
      八重山群島知事
         安里積千代
 八重山群島議会議長宛

 そこで同日これを受理し、群島選挙管理委員会へ左記の通り通告しておいてあります。

八議第六号
 一九五二年二月一日
   八重山群島議会議長名
 八重山群島選挙管理委員会委員長宛

 群島知事退職届出について通告
 左記の通り八重山群島知事安里積千代より退職届出があるので一九五二年二月一日これを受理し退職すべき日を一九五二年三月二日と決定したから群島組織法第八条第四項に基きこれを通告する。
    記
  退職願の通り記載してあります。

 以上知事の退職届出について各位に御報告いたします。
 次に議案の審議に入る前に議事録署名議員をお諮りします。休憩いたします。(午前十一時十五分)
  (休会中に次の話合があった。)
 一 会議録署名議員は六番議員、七番議員とすること。
 二 先程定めた日程を変更し、議案第十一号群島財産評価委員委嘱について承認を求める件を最初に上程審議すること。
 三 本日の午後と明十六日、明後十七日は休会して議案の研究をし十八日開議すること。
◎議長(潮平寛保君) 開会いたします。(午前十一時二十分)
 会議録署名議員は、只今話合った通り六番議員、七番議員にお願いします。
 議案第十一号を先に上程いたします。
  (書記長(田盛正雄君)議案第十一号群島財産評価委員委嘱について承認を求める件を朗読する。)
○書記長(田盛正雄君) 議案中の機械類の評価委員中新垣良樽を慶田盛英夫に取替ましたから御訂正を願います。
○議長(潮平寛保君) 取替る理由は何ですか。
○副知事(當銘正友君) 機械類の評価員に新垣良樽氏をお願いしたのですが、本人は沖縄へ旅行中で日数を要するものと認められ、財産処分の事務処理に支障を来しますから慶田盛英夫氏にお願いしたいと思うのであります。
◎議長(潮平寛保君) 議案第十一号について御異議ありませんか。
  (「異議なし」の声あり)
◎議長(潮平寛保君) 御異議ないようですから議案第十一号は原案通り可決いたします。休会中に話合った通り、本日はこれで休会し、十六日、十七日まで議案研究をして十八日の午前十時開会いたします。(閉議午前十一時二十五分)

  本日の会議に付したる事件
日程第一 知事の施政演述
日程第二 議案第十一号群島財産評価委員委嘱について承認を求める件
出席者左の通り
議 員
 議会議長(三番議員)
        潮平 寛保君
   〃副議長(六番議員)
        大山 眞整君
   〃議 員(一番)
        石垣 用中君
   〃議 員(四番)
        佐久眞長助君
   〃議 員(七番)
        久部良正三君

議事参与
 知 事    安里積千代君
 副知事    當銘 正友君
 財政部長   崎山 信邦君
 工務部長   宮良 英副君
 経済部長   眞榮田 登君
 厚生部次長  三島 保夫君
 主計課長   浦崎永八郎君
 財産管理課長 石垣 直文君
 会計長    宮良 水益君
 企免所長   竹原 孫恭君
 工務部次長  宮城 光雄君
 事業課長   前新 雄三君
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