戦後初期会議録

組織名
八重山群島議会
開催日
1951年11月20日 
(昭和26年)
会議名
第6回八重山群島議会(定例会)[1]
議事録
第六回八重山群島議会(定例会)会議録

一 会期
  一九五一年十一月二十日から同年同月二十四日まで五日間

三 議事参与
 群島知事   安里積千代君
 副知事    當銘 正友君
 財政部長   崎山 信邦君
 厚生部長   崎山  毅君
 文教部長   宮城 信勇君
 工務部長   宮良 英副君
 法務部次長  野國 昌一君
 財政部次長  石垣 直文君
工務部主席次長 宮城 光雄君
 経済部次長  石垣 英政君
 厚生部次長  三島 保夫君
 地方課長   中山 正行君
 主計課長   浦崎永八郎君
 会計長    宮良 永益君
 企免所長   竹原 孫恭君
 税務署長   西石垣正行君
 指導課長   喜舎場英勝君
 公安委員長  翁長 良整君

四 書記
  書記長   田盛 正雄君
  書 記   漢那 用知君
  書 記   平得 泰次君

五 会議に付したる事件の題目
一 知事の施政演述
一 議案第七十五号 砂糖及び砂糖容器検査条例制定について
一 議案第七十六号 八重山群島登録税条例制定について
一 議案第七十七号 八重山群島政府手数料徴収条例の一部改正について
一 議案第七十八号 公有水面使用料徴収条例の一部改正について
一 議案第七十九号 一九五二会計年度八重山群島政府一般会計歳入歳出補正予算案の審議について
一 議案第八十号 一九五二会計年度八重山群島政府特別会計歳入歳出補正予算案の審議について
一 議案第八十一号 群島政府旅費支給条例の一部改正について
一 議案第八十二号 八重山群島警察本部長任免条例制定について
一 議案第八十三号 八重山群島公安委員補充選任について同意を求める件
一 議案第八十四号 群島財産取得について
一 議案第八十五号 群島財産処分について
一 群島財産取得について報告
一 地方自治委員会委員の指名について
一 復興工事の認可に関して陳情書提出について
一 竹富中学校独立認可についての陳情書について
一 八重山群島内離島航路補助に関する意見書について

一九五一年十一月二十日開会

議事日程第一号
  午前十時三十分開議
第一 知事の施政演述

 議決の顛末
◎議長(潮平寛保君) 二番議員が議員を失格されて空席となり、七番議員が不参、一番議員は追って見える筈ですから開会いたします。(午前十時三十分)前書記長眞玉橋長要氏は先般退職されたので、後任に総務部次長兼総務課長田盛正雄氏を任命してありますから報告いたします。
 次に今議会の会期を定めていただきたいと思います。
○大山眞整君 会期を来る十一月二十四日までと定め、明日は議案研究のため休会しては如何ですか。若し二十四日までに終えることができないようでしたら後で会期を延長するようにしたいと思います。
○議長(潮平寛保君) ただ今六番議員から動議がありまして、会期を二十四日までとし、明日は研究のため休会したいとのことですが如何ですか。
  (異議なし)
◎議長(潮平寛保君) 御異議ないようですから、本議会の会期を来る二十四日までとし明日は休会することに決定します。
 次に日程をおはかりしますが、議案の順序通りに上程しては如何ですか。
  (「異議ありません」「異議なし」の声連呼あり)
◎議長(潮平寛保君) 御異議ないようですから日程は議案の順に逐次上程といたします。次に知事の施政演述をお願いします。
◎知事(安里積千代君) 第六回群島議会を招集しましたところ各位には御出席下さいまして感謝いたします。冒頭に当り申し上げて置きますことは二番議員(星克君)が、この度群議を失格されましたことはまことに残念なことでありまして、我々としても遺憾の意を表する次第であります。前議会から今日までにおける政治上、行政上について多々御報告申し上げることがありますのでその概要について申し上げたいと思います。先ず政治的な問題について申し上げますと、各位も新聞紙上で既に御承知ではありましょうが、十一月五日付で群島政府の廃止、中央政府の樹立に関するビートラー副長官からの指令がありまして、琉球政治の今後の在り方について軍では根本的に新しい方針が立てられて示されているのであります。
 本年九月には講和会議が開かれて日本自体の方向が定まり、琉球の運命も方向づけられて或る期間米国を施政国とする国連の信託統治下におかれることになりました。これに対して琉球民政府としては、今まで指導し育てて来た民主主義の原則に基いて琉球民の世論を尊重し、琉球民自体の繁栄のために琉球を一円とする恒久的統一政府の新しい方針が示されたことは感謝するところであります。来年三月には立法院参議選挙が公表せられ、中央政府主席の選挙も相次いで行われるようで中央政府樹立の基礎をつくることが急速に進められることになっています。
 十一月五日付ビートラー副長官から知事宛の書簡によると次のようなことが寄せられてあります。
 「群島政府の廃止並びに政府機能の統一機構への統合に関し、講ぜられる基本的措置は次の通りである。
 一 一九五一年十二月三十一日新政府の各部は一九五一年十二月三十一日までに組織される。但し、部が完全に機能を発揮するには相当の日数を要する場合もあるものと思う。
 一 一九五二年三月二日 立法院参議選挙
 一 一九五二年四月一日 新参議就任
 一 一九五二年四月一日-一九五二年六月三十日 この間に群島政府廃止の予定
 一 一九五二年七月一日 琉球政府会計年度が七月一日より始まる。自今毎会計年度はアメリ力合衆国の会計年度と一致させるため七月一日に始まるものとする。」(以下略)と示されています。
 わが琉球は軍政下にあって曩に市町村長及び議会議員選挙が行われ、つづいて群島知事及び議会議員選挙が行われて、自治政治が許され、今又一歩進んで中央政府樹立、これに伴って立法院参議選挙執行の公表を見、全琉一円としての統合された政府で政治が行われるようになったことは、全群島の要望であり期待していたところであって、これが実現を見るようになったことをよろこぶものであります。
 これについては先の四群島知事会談の際にも、中心問題となって論議され、四知事の意見として民政府に建議して来たのであります。即ち住民を拘束し、住民に負担をかけるには民意に基く立法機関による立法でなければならないことが民主政治の原理であり、現在の立法院は民意によらない任命によってなされた組織であるから早くこれが是正されるよう要望したのであります。その結果来年三月には立法院参議の公選が行われることになり、尚次には中央政府主席の公選も伝えられて来て、四知事の意見通り、民意をとり上げられたことをうれしく思っているのであります。
 この機会に各位に申し上げておきたいことは、群島政府を廃止して統合政府が樹立されることに対し、八重山知事安里が群島知事の椅子をいつまでも保持せんと不賛成し、住民の負担を考えていない、と如何にも反対しているかの如く、某紙に掲載されたことを不愉快に思っているのであります。
 これについては政治問題として四知事会談の時の模様や各知事の意見は琉球の新聞が詳細に報道してあるので、それを御覧になれば某紙の報道が歪報であることが証明されるのであります。四知事会談の席上、自分はあくまでも各群島政府を統合政府に持っていくことは初めから終りまで力説して来たのであって、自分の意見に対しては沖縄知事も同意見であったのであります。然るに自分の意見を逆に報道されて八重山政界の一部の誤解を招きましたことは、その政治批判力の乏しきことを残念に思っているのでありまして、八重山知事が群島政府廃止に反対意見の如きは全くの歪報であることを御承知置きねがいたいのであります。八重山知事が群島民代表として、はっきりと述べた統合政府への主張が正しかったことを八重山群島名誉のため申し上げておく次第であります。
 ビートラー書簡の中にも「私共は今政府の歴史において又とない事業に着手しているのであって、この遂行の為には貴下の最大なる協力と援助を要するのである。民主主義のいつくしみ育てて来た原則に基いて私共は立派な政府を樹立することを私は確信している。」と述べられてあるのでありまして、群島政府としてもこれに示された通り、これが遂行のためには大きな協力と援助をなし、統合政府への移行がスムースに行けるよう臨時中央政府と密接な関係の下に進めているのであります。
 臨時中央政府でも全琉的な問題の統合計画が急速に進捗して来たようでありまして、財政の統合については来る十二月一日関係政府の財政代表者の参集を求めていますので財政部長が上沖することになっています。この会議で群島政府及び臨時中央政府間で過渡的措置としての財政統合策が樹立されることになるので、政府はその指令に基いて財政統合の事務を処理することにしています。
 総務部関係において、十一月七日は群島政府創立一周年の記念すべき日に当りましたので琉球民政府ではこの日を意義あらしめるべく休暇を与えておられるのであります。当日政府は群島民多数参列の下に盛大なる記念式を挙行しまして、新たな決意を固めたのであります。この記念式に際し遠く与那国の久部良議員、西表の古見議員から祝電をいただきましてこの席で有難く感謝申し上げます。
 その席上にビートラー副長官並びにルイス准将からも祝辞を寄せてあります。即ちビートラー副長官の祝辞には、「本官はここにデモクラシーの理念に基いて政治政体を確立せる貴下住民の偉大なる業績に対し心からなる感謝の意を表します。本官は過去一ヶ年における八重山群島の進歩発展並びに琉球列島統一政府に対する偉大なる貢献等を喜ぶものであります。この機会に際し、本官は心からなる喜びの意を表します。どうか、本官は貴下住民各位が民主制度の高潔なる理念及び伝統の保持に対し、常に協力精進せられんことを希望している旨お伝え下さい。」とあり、ルイス准将からも同様な意味の賞讃と感謝を与えられ、今やまさに諸士は琉球列島政府樹立の重大な仕事にのり出していることを付加えて祝辞が述べられてあります。
 中央政府樹立について現群島政府はどんなに統合して行くか、その組織機構はどうするか、現職員を如何にして吸収するか、群島の財産はどうするか等の問題はこれから考究されることでありますが、今まで群島に与えられてあった権限はできるだけこれを保持し、現職員もできるだけ吸収させ、群島民の自治機能を生かしていくよう中央政府へ折衝をするつもりであります。先日臨時中央政府から知事会談に出席方要請がありますので本日上沖出発予定でありますから将来この中央政府の機構に我々の要望を反映させるよう努力するつもりであります。
 議会関係においては、二番議員が十一月八日失格されまして遺憾とするところであります。その補欠選挙が来月執行されることになっております。
 群島議会発足して一ヶ年その間各位には自治政府の議決機関とし、よき協力者として群島自治政治の完璧を期し、誤りなく、我々をして執行させていただいてきた御尽力に対し感謝する次第であります。
 公安委員会においては、委員長翁長信全氏は一身上の都合で辞任されたので群島組織法に基き、その補充を選任してあるので今期議会の承認を受けるべく提案してありますから後で御承認を願います。
 経済部関係について、一 籾買上について申し上げます。
 本年初の議会で同意を得て設定した籾買上の政策は各農業協同組合の協力と農民の理解により順調に行われ、買入籾の量も目標に達し、政府並びに議員各位が目的とせられた目的を達し得たものと信じます。
 この政策は一は籾の暴落を防ぐことにありまして、この籾買上によって本年は昨年に比し米価の暴落を来さず、一定の米価維持を見ているのでありまして、一般農民の感謝を受けているのであります。
 この買上価格によって生産者の生産意欲をそぐことなく、又消費者としても不安なく相俟って円滑に需給が行われ、四〇円台の値を維持されて来たのはこの政策のあらわれであります。米価が投機的なものにならず、又これに伴って他の物価も落着を見せていることは、昨年から本年初頃にかけての価格の変動と比較して見ても本年の米相場の安定していることから、うなずけることと思います。最近の新聞紙上によると米価が二、三日で四五円、五〇円とはね上ったということになって政府としても憂慮し、その原因の調査を早速行ったのであります。尤も八重山に生産される米の量、移出される量、群島へ移入される量、群島内で消費される量は、バランスがとれているので不可解に思い、調査した結果は、八重山に米不足のためではなかったことが判明したのであります。それは去る暴風のため沖縄本島の米が暴騰したので、八重山から米が一時に移出されたためであったのです。八重山群島としては、自分の食糧を生産し、更にこれを沖縄群島民の食糧供給にまで寄与したことになり、沖縄群島住民として八重山群島が食糧供給に貢献してくれたと感謝されるわけであります。地元の八重山における米の量は生産米、輸入米と群島外移出、島内消費を見た場合、決して米不足を来し食生活に不安を感ずることはないのでありまして、この二、三日来の騰貴は一時的現象で沖縄へ移出するため精米所における精米が窮屈になっていたのを、八重山の米がなくなったかの如き感を抱かしめたことと、商人の思惑的な取引であったことがわかり、調査後はこれが是正につとめているのであります。
 商人の正しい商取引に対して政府は何ら束縛をするものでなく、移入される米の量とにらみ合わせて移出を許可し積出させているのであります。以前のように米が投機的に制限なくこれを移出したときは、八重山の経済を混乱に陥れ、不安が伴って来るのであって、ある程度移出量に制限を加えているのでありまして、取引者としても一時的なことにせよ、自己の利のみを考えず全郡的な利益も考えて正しい商取引をすることが望ましいことであります。
 二 農業協同組合設立と信用協同組合について、布令第四十五号によって琉球協同組合法が発布され、従来の農業組合は農業協同組合として農家の発展向上を目指し、自主的な組織を持つ組合となりました。この協同組合法の趣旨に則り、群島内の農業組合は規約や定款並びに陣容を改変し、新しく農業協同組合として出発することになりましたので、政府は各組合を指導し、十月八日の八重山農業協同組合連合会の総会を最後にその結成を終了しました。更にこの協同組合法によって新しく試みられました信用協同組合の設立については、政府は地域別の懇談会を開催してその趣旨の徹底と設立の促進を図った結果、各市町とも設立認可申請書の提出を完了しており、農林省総裁の認可があり次第、農民漁民のため、金融組織として出発し得る態勢下にあるのであります。
 三 移民の受入れについて、八重山はかねてから群島開発のために移民を受入れることが必要であることを考え、移民受入計画を作成し、関係方面と折衝を重ねて来たのでありますが、その計画の全面的実現に先立ち九月二十三日大宜味村から二〇戸、九〇名の移民が来島したので、政府はこれを石垣会館に収容し食事を給与して、大濱町伊野田に移送配置の手配をいたしました。新移住民は十月三日開拓第一歩の鍬入式を行い、新たな決意で開墾を行いつつあり、十月三十日には各人の住居の建築も完了し、落ち着きを見せています。今後共営農方面に対し十分指導いたしまして模範部落を建設させたいと思っています。
 四 煙草生産組合の設立指導について、農家の作物組織の中に換金作物をとり入れることは農家経済安定の上から緊急を要する問題でありますので、政府はその施策の一として日本煙草の栽培を積極的に勧奨するため、煙草生産組合の設立を本年十月以降指導して来たのであります。現在まで各市町に設立した組合は一二組合で組合員四三八名、栽培面積一三町六反三畝であります。煙草会社の設立もあり、その経営によって八重山の生産も活気を見せることと思います。
 五 二期作について、二期作については昨年二七〇町歩の栽培面積でしたが本年は五四〇町歩となって、農民の生産意欲が向上して来たことを示しています。
 昔の供出米制度にあっては幾ら生産を奨励してもその実績に大きな効果はなかったもので、これは飲みたくない水を牛にのませるようなものであって、農民はただ掛声のみではその意欲は起らぬのでありますが、現在は農民が自由に生産し、自由に販売できる制度の下で、したがって農民が自ら立ち上ろうとする機運が漲り来て、本群島の食糧生産に大いに貢献していることは感謝に堪えないのであります。
 六 養蚕業技術員設置について、外貨獲得上、或いは農家の換金産業として最も重要な蚕糸業を急速に振興せしめるため、先の議会で可決なりました蚕業技術員設置助成に関する条例によりまして、石垣、大濱、竹富の各市町に蚕業技術員を設置せしめて蚕繭の生産増強に当らすと共に蚕糸業の基礎である桑園の増改植及び肥培管理の徹底を図るため十月二十五日より蚕〓(繭カ)生産増強運動を目下展開中であります。更に農林省の蚕種検定所の原種検定員が九月一日から設置せられまして、従来無検定のまま配布されていた蚕種の検定を実施し、蚕糸業の健全な発達に努めているのであります。
 七 畜産
 1 種畜の導入について、畜産業の振興は家畜頭数の増加と家畜の資質向上の二面から考究すべきことであり、この意味において政府としては資質の低下しつつある畜牛界の現状に鑑み、その改良のため日本の中国地方の和牛に劣らぬ大島産牛三二頭を移入し斯業の発展を期すると共に更に相当数の移入を計画しているのであります。
 2 家畜の防疫業務について、去る九月二十二日黒島区長から東筋部落でピロプラズマ病疑似の畜牛が三、四頭発生している旨政府へ急報があったので、課長以下調査隊を組織し暴風雨を冒して急遽検診の結果、日射病、肺充血、胃腸カタル等と判明し事なきを得ました。しかしながら将来の発生にそなえ防疫計画を強化しつつあるのであります。
 3 奨励事業について、大濱町より畜産品評会開催のため政府へ審査員派遣申請があり、政府では斯業奨励のため六名の審査員派遣して審査に当らしめましたが、好評裡に終了し畜産業の発達に大いに寄与するところであったのであります。各市町ともかかる事業の計画を産業振興の面から希望するものであります。
 農業研究指導所関係について、
 1 農業研究指導所では米穀増産競技会並びに肉豚肥育共進会の開催が計画実施されて来たが先般九月八日褒賞授与式を挙行しました。米穀の増産競技会については、その成績は昨年に比し、本年は天候等の自然的支障の為、二割二分の減となっていますが本群島初めての試みである米穀増産競技会は水稲植付前の一月において開催をなし、水稲全在圃期間を通じて審査をなし、七月に終了、肉豚肥育共進会は四月に開催して百日後の八月に最終審査を終了することができて九月八日各褒賞授与式を挙行することができたのであります。式を挙行するに当っては予算が少かったが農林省より副賞として五、二〇〇円の寄附があり感謝しています。この競技会によって奨励の結果は二期作において二七〇町歩が本年は五四〇町歩に増産を見せ、大濱町では先日畜産品評会の開催があって畜産面に拍車をかけ農民に喜ばれているのであります。本年からは申込者もふえ、本年反当四石でしたが来年はより以上の成績を収めるよう期待しているのであります。
 2 農林省普及事業に対する助成金の交付、農林省においては八重山の開発のため改良普及員及び農業改良委員会に対し、助成金交付をなされることになっているので申請したところこれが認可になり、四、一半期、四、二半期の助成金の交付がありました。その内訳は改良普及員補助(俸給及び旅費)として全期分一八〇、〇一五円、今回の額一、二期分九〇、〇〇七円四〇銭、農業改良委員会に全期分二四、〇〇〇円(平均一町村六、〇〇〇円の四期分)今回一、二期分一二、〇〇〇円で、これは近く各市町へ交付される予定であります。
 普及課関係について
 1 甘蔗中間苗圃設置に対する補助、各市町甘蔗の中間苗圃を設置し、本群島糖業の振興を図ることは農家の換金産業として最も重要なことであります。糖業復興に伴う蔗作面積の拡張普及を図るために各市町に中間苗圃を設置せしめ、政府において九月上旬中旬にかけ蔗苗を無償配布をなしたのであります。その配布反別は計三反で三二、五〇〇本となっています。
 2 水稲優良品種の配布補助、水稲優良品種の更新維持を図るため、政府で委託設置した原種圃生産種籾を二期作において各市町に播種圃を設置せしめて原種を半額補助で配布しました。その石数は計六石であります。
 尚本事業は四ヶ年品種更新計画をたて来期一期作においても実施すべく目下原種の検収手配中であります。
 研究課関係
 1 農林省の試験研究助成金について、農林省では一九五二年度試験研究助成金として五二五、三三〇円の交付金が認可になり去る九月に四、一半期、四、二半期分が到着したので会計へ納入しました。その概要は次の通りであります。(1)群島政府施行の試験中一六項目について助成金として二二九、七〇〇円認可になっています。(2)尚農林省が必要と認めた一四項目に試験の委託があり、その経費として二九五、六三〇円が交付され現在その半額が到着しています。
 以上の試験は大部分既に着手して実施中であります。
 2 イモゾウ発生について、研究課圃場では従来八重山に見なかった甘藷の大害虫イモゾウが発生しているのを去る九月に認めたので、直ちに被害甘藷を焼却してこれが蔓延を防止すると共に薬剤及びその他の防除法を試験中であります。当場での発生状況は一九四七年から一九五〇年十月までに沖縄や宮古から甘藷の新品種をとり寄せて苗床を設置した所に多く、又その甘藷苗を移して植えた場所に本害虫を見受けられるのでイモゾウの当場への移入は前政府時代に群島外から種いもに附着して来たものと推察されるのであります。
 水産課関係
 1 船舶職員養成講習について、農林省水産局海事事務所と水産課共同主催の下に船舶職員の技術と知識の向上を図り、島国産業たる水産業及び海運業を振興するため講習を実施することになって九月二日から二週に亘り与那国で実施され、多大の成果を収め得たのであります。
 与那国は終戦直後闇船の本場として一時的繁栄をしたのでありますが現在の与那国は経済的不況に陥り、ために島民は目覚めて過去の不健全な経済から健全な経済に立ち直ろうとする機運が濃厚になって来ていまして、船員達も商売的な気持から脱して、正式な知識と技術を習得したいとの意欲の旺盛さが、この講習にもうかがわれて与那国町民が健実な歩みをして来たことを力強く思ったのであります。
 2 外資導入による真珠養殖について、自立経済の項目で水産業は沖合漁業と養殖業及び加工業への転換を目標としているのでこれが企業化について奨励をして参ったのであります。養殖については先般宮城新昌氏らによって八重山の資源調査が行われ有望視されているのであります。何分真珠、海綿の養殖事業については相当の資本と技術を要するのでこの条件を欠く八重山としては日本の技術者と資本を八重山開発のため誘致導入したいと折衝して来たのであります。今回これが実現の運びになって、球陽真珠海綿養殖株式会社の設立を見たことは慶賀に堪えないところであります。
 水産面における八重山の資源に対しては学問的調査による基礎の上にますますかかる企業がなされていくのを期待しているのでありますが、そのためには多額の資本を要するものでありますから我々地元の資本も出し合って将来の優秀さを勝ちとるようにしたいものだと念願して止まないのであります。これによって港湾施設も完備されて行くし、生産物処理の産業も勃興することだと思われます。
 3 漁業協同組合の設立について、農業協同組合と相関連して漁業協同組合が設立されることになりその設立促進をして来ました処黒島、鳩間、波照間の三組合が設立認可申請の手続を了しています。石垣市水産業組合では先日解散総会を完了し、協同組合設立への機運を見せつつあります。この農業協同組合、漁業協同組合がそれぞれ組織されて、今後農業、水産業の発展も期して待つべきものがあると思います。
 文教部関係について
 1 文教部では宮城部長が国民指導員として三ヶ月間渡米し視察を終え帰府していろいろの示唆を琉球の文教面に与えつつあります。
 2 又、アメリカのアンドレー中尉を講師とする英語の講習が、小、中学校英語担任教師並に其の他英語関係者に七月三十一日から九月二十一日まで二ヶ月に亘り実施され多大の効果を収めることができました。
 3 なお、この間は九大の牛島教授が講師として招聘されて沖縄に来られたのを機会に沖縄連絡所長富村氏の斡旋で八重山まで延長され、九月六日から八日まで教育測定、教育評価について講習を受けることが出来て裨益する所大であったと信じています。牛島教授が当地視察による所感として新聞紙上で発表されていることは我々にとり、灯台下暗しの感を深うするもので教育面、社会面において大いに反省し、検討して八重山文化の向上を図るべき好資料と思うのであります。
 4 各小、中学校に対しては学力テストが一斉に実施され、その結果は今まとめられつつあります。これによって八重山の生徒児童の実際に即する学習目標がうち立てられるためであります。
 5 中央政府文教局では統合政府へ移行されるに当り、文教部の統一問題もあり、その他文教関係の問題もあって文教部長の会議を持つため、出席方を通知して来たので当地からは亀谷次長が目下上沖しています。
 厚生部関係
 1 マラリア撲滅問題について、マラリアの問題は八重山開発と大きな関係をもつもので、その撲滅に対しては皆が関心を持つのは当然でありまして我々としても常に深い関心を持ち、その撲滅に努力をつづけて来ているのであります。マラリア撲滅についての現状のくわしいことは後で参与に答弁させることにしますが十月二十日の某新聞紙上にマラリア撲滅事業が崩壊しつつあって、マラリアが再び猖獗を極め僻陬地住民が再び生命や生活の危機にさらされているかの如き報道がなされたことに対し、これが調査をしました処、実情は次の通りであります。本年十月までの患者六一名の内再発患者七名、去年度は患者三五名の内再発患者なし。本年の脾腫患者六四名、去年が一三九名で差引七五名減となっています。尚某紙上に西表、白浜、祖納部落内にマラリア患者七、八十名もいると報道されたが調査の結果は一名の患者なしとなっていて、この某紙の報道が歪報であることを御承知願いたいのであります。マラリア撲滅事業の成否は採血の結果のみで論ずることは早計であると思われます。従来アテブリンによって大方マラリア撲滅事業が施行して来たのでありますが、そのアテブリンの常用者には、表面にマラリアの発生は表れて来ないが、これが杜絶をしたときはマラリアがあらわれて来るということであります。従前多数のアテブリンが無償で配給されていたお蔭で過去、ある程度マラリア患者はなかったのですが、それを以てパーセントを誤り、脾腫患者が減っていない有様であったのであります。先般軍医カムロイ少佐は「アテブリンは予防薬ではない。治療薬である。アテブリンによってマラリアが抑圧されているからアテブリン以外の方法も講じて撲滅を期するよう」勧められアテブリン使用量の多過ぎることを指摘され、アテブリン使用を控えたら恐らくマラリアは再発するが、その為に知事は政治的に非難を受けるかも知らないが右のような趣旨だからと注意があったのであります。それで政府としてもアテブリン使用を減じ、他の方法も講じて根本的撲滅の域に進もうと努力しているのでありまして、本年は昨年に比し、実質的にはマラリア患者は減少して来ています。先程申し上げた某紙の報道は曲げられた事実で一般の誤解を招いているのであります。これは重大な問題で曲げられた報道がそのままあるとすれば八重山の移民政策にも大きな蹉跌を来たすことにもなるので悪意の宣伝と言わざるを得ないのであります。
 2 接客業者の無料健康診断について、保健衛生の向上並びに取締りの見地から石垣市、大濱町の衛生関係接客業者並びに同居人及び従業者の無料健康診断を九月二十日から二十七日まで四日間に亘り、中央診療所において実施しましたが、その結果は極めて良好で検診者四七五名に対し、皮膚病二名、トラコーマ五名となっております。
 3 医師介輔及び歯科医師介輔講習について、医師介輔及び歯科医師介輔配置に関しては、先の議会で条例が制定せられましたので従来の代診が廃止され、医師介輔、歯科医師介輔を置くことになりました。そこで政府は二五名に医師介輔、歯科医師介輔の資格を与えるべく、介輔としての必要なる知識を修得させるために医師介輔は九月二十三日から十月二日まで、歯科医師介輔は九月二十八日から十月二日まで講習を実施したのであります。講習内容は必要な科目(内科、外科、細菌、病理、生理衛生、看護、薬理、調剤学、法令)講師としては八重山医師会より、医師介輔講師に宮良長詳氏、石垣用中氏の両医師、歯科医師介輔講師は柴田米三氏を依頼し、厚生部長及び医官を以て鋭意講習した結果講習員各自熱心に受講し予想外の成績を挙げたのであります。
 4 地区衛生官並びに公衆衛生看護婦講習について、保健所の発足と同時に地区衛生官並びに公衆衛生看護婦の再教育を目的として厚生部で講習を実施しましたがその状況は次の通りであります。地区衛生官講習は十一月二日から十日までで、講習内容は主として環境衛生学並びに食品衛生学、疫学で講師は保健所(長脱カ)並びに医官、薬剤官、獣医官で受講者は西表、与那国、黒島、竹富の四地区衛生官でありました。公衆衛生看護婦の講習は十月二十四日から目下継続中で講習内容は保健婦事業の大要及び臨地訓練をなし、講師は保健所長並びに医官で受講者は六名であります。
 5 社会事業について、文化の向上するに伴い落伍者が生じて来るのであるが、これを救済して最低限度の生活をさせて行くことは社会連帯者としての責務であるとし、文明国においては社会事業を重視しているのであります。軍においてもかかる社会事業を勧奨し、その面の知識を習得させるため、日本へ係員を派遣し講習を受けさせて来ているのでありまして、目下は西平事務官が渡日して受講中であります。この社会事業の一つとして政府は救癩慰問をするため、沖縄の愛楽園、宮古南静園に収容されている入園患者に対する慰問金募集の計画を立て、各方面各市町に呼びかけました処、群島民の御協力を得て、計約三万八千余円の救癩慰問金を得ることができました。その内訳は、石垣市二六、一六四円、大濱町四、二〇〇円、竹富町三、六七一円、与那国町三、九七八円となっておりまして、中でも石垣市は戸数人口に比し、二倍以上の金額に達し、市民の理解と協力がうかがわれて感謝しているのであります。この集った金は愛楽園、南静園の両方に分けて送ることにしています。尚学校当局よりも生徒児童の慰問文、各種の工作品をも相当出してもらっていることを報告します。
 法務部関係について
 1 巡回裁判所では判事が空席であるので、その任命については沖縄本島から寄越してもらうよう副長官事前の承認申請中であります。専任判事の任命についても折衝中であります。
 2 刑務所にあっては群島政府創立一周年記念に当り、琉球民政官府副長官から受刑者七名に対し減刑の恩典が与えられています。刑務所受刑者の職業輔導については従来その施設なく、又農耕土地狭いため輔導上遺憾の点が多かったのでありますが、この度政府財産である利用されなかった印刷機を刑務所に利用させ受刑者に対する職業輔導と自活のために当らせることにしてあります。これによって受刑者のこの面の職業輔導が出来、又政府としても一般としても印刷の便宜が得られることと思っています。次に警察本部に近頃司直を煩わす問題があるようでありまして、政府は政府自体として調査もなし行政的な処置をいたし、群島民の誤解がないようにするつもりであります。住民に法を守らせ、取締りの任をもつ警察にかかる問題が起ったことは実に遺憾にたえないところであります。
 工務部関係について
 復興工事関係においては一九五一会計年度分与えられた予算の完全消化につとめて来たのであります。一九五一年における建築工事は前年からの継続事業一件、本年度六〇件計六一件であります。前年度より繰越され、本年の分と一緒に施工されたものは四六件、金額にして一七、〇一四、四三一円五〇銭、内市町委託が二〇件七、二一八、四五二円五〇銭となっており、土木関係は二七件一二、五〇〇、〇〇〇円で内市町委託が四件一、四〇〇、〇〇〇円となっていますが右の内、マクラム道路、富野線、荒川橋はブルドーザーの故障のため、完成を遅れたことは遺憾でありますが、現在整備して工事に拍車をかけておりますので年内に完了の予定であります。建築面の一件は石垣市屠殺場の建築工事でこの件については新聞紙上に知事談話で発表した通りであります。五二会計年度の建築工事で認可件数は三九件、内二四件が学校建築工事で既に一四件は着手されています。土木面の申請件数は三五件で、内一一件が認可になり、内着手は四件で近日中に五件となります。次に保健所の建設については敷地が未決定であったので着手を見るに至らなかったのでありますが、近日決定して建設の運びになることと思います。工務関係の工事は多数であり、各工事の施工に当っては関係職員だけの監督では不可能でありまして、工事を請負う業者側の良心的な協力を又必要とするものであります。復興工事は従来の結果から見て委託工事は見合せ、専ら政府事業として施工していますから、その監督に当っては関係職員のみならず、土地の方々の関心と協力を必要と認めまして、地元の方々に工事の監督を嘱託し、その工事に対する責務の一端を負わせたいと考えてお願いしてあるのであります。
 財政部関係について
 今回の議会に予算の補正をすることなっていますので、後で御審議をお願いすることになっていますが、補正予算編成の概略を申し上げますと、既定予算一四〇、九五六、四七〇円に対し、二、七六四、五八〇円を削減して一三八、一九一、八九〇円に補正をしました。その具体的な数字は審議の際、係から説明する筈ですが、歳入補正の大綱を申しますと、今年は若干の余裕をもって予算の出発したのであるが次の理由によって十分なる運営をなす歳入の確保することができない現状にあります。
 一 昨年度民政官府支払による職員俸給三五〇余万円の返戻による欠陥
 一 酒の日本輸出に伴う戻税の申請があるが外貨獲得の上から八重山は免税許可するため歳入減となること
 一 酒、ビール、煙草等物品税は中央政府がその歳入として課税しているので重複課税を避けたこと
 一 群島間運輸業は特別事業税の対象外となったので歳入減となったこと
 以上のような理由で歳入補正が行われることになったわけであります。
 歳出補正の大綱について申し上げます。市町村財政調整交付金条例が先の議会で議決になりましたので政府は何とかして交付金を多く交付したいとその財産(源カ)の捻出に苦心して来たのであります。そのために財産の処分、既定予算の削減等によって漸く四〇万円程度を計上することにしたのであります。もし、誤払俸給の返戻や、酒税法の改正が通過しておれば相当多額を計上し得たと思うが、ただ今の財政力ではこの四〇万円は最大限度の額であり、努力の結果であります。その他の経費の増減は条例、実績、計画等勘案の上、必要欠くことのできないものだけに限ってあります。どうか、歳入面の減額なった理由と歳出面に努力を払ったところを御理解下さって御審議下さるようお願いします。
 群島政府が中央政府に統合されるに当り、いろいろ重要な問題もあり、二、三諮問を各位にお願いしたいと思うこともありますから御検討御研究下さって政府の意図することが通過するよう御協力をお願いする次第であります。
○議長(潮平寛保君) ただ今知事の演述に対する御質問をお願いします。
◎三番議員(潮平寛保君) 三番議員として希望申し上げます。
 知事から詳細に亘る施政演述を承り感謝いたします。
 知事は近く公用を以て上沖されると聞いていますが用務は多分、中央政府へ統合されるのでその組織機構等に対しての下打合せが行われることと思います。これに対して構想については我々としても希望を申し上げたいのであります。中央政府が樹立し、群島政府が統合されることによって本群島政府が縮小され、予算が削減されないよう御努力をお願いしたいのであります。戦前八重山支庁は、中央集権的な感が甚だしく、本庁には多数職員を擁して各支庁には少数の職員が置かれ、行政上著しく不便を来たしたのでありました。群島政府が統合されたとき、従前のような中央集権的でなく、地方分権的な方向へその組織を持っていかれるよう希望し、尚過剰職員を生じたためにその人々を失業させないよう極力中央政府に対し、吸収方御折衝を願いたいのであります。元沖縄県庁時代に宮古出身の職員が多いのに比べ、八重山出身が僅少のため八重山として実に不利不便の多かったことをよく聞かされて来ているのでありまして、かかる不利不便が生じないよう多数職員を中央政府へ送り出すべく御努力あらんことをお願いします。
◎議長(潮平寛保君) 今議会の会議録署名議員をおはかりします。この度は四番、六番議員に御承認お願いできませんか。
  (異議なし)(四番議員、六番議員承諾す。)
◎議長(潮平寛保君) 会議録署名議員は御承諾になりましたから四番議員、六番議員に決定いたします。
 日程は先程定めた通り議案の番号順に逐次上程することにします。
◎大山眞整君 本日はこれで閉議し、本日の午後と明日は議案の研究をして明後二十二日に開議しては如何ですか。
  (賛成の声多し)
◎議長(潮平寛保君) ただ今の動議に対し御賛成のようですから、本日の午後と明日は議案研究のため休会し、明後二十二日午前十時開会することにします。これで本日は休会いたします。(午前十一時五十五分閉議)

 本日の会議に付したる事件
日程第一 知事の施政演述

 出席者次の通り
一 議員
 八重山群島議会
  議 長   潮平 寛保君
  副議長   大山 眞整君
  議 員   佐久眞長助君
  議 員   古見 石人君
一 参与
 八重山群島
  知 事   安里積千代君
  副知事   當銘 正友君
  厚生部長  崎山  毅君
  文教部長  宮城 信勇君
  工務部長  宮良 英副君
  法務部次長 野國 昌一君
  会計長   宮良 永益君
  企免所長  竹原 孫恭君
  財政部次長 石垣 直文君
  経済部次長 石垣 英政君
  地方課長  中山 正行君
  厚生部次長 三島 保夫君
  公安委員長 翁長 良整君
  財政部長  崎山 信邦君
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