戦後初期会議録

組織名
沖縄群島議会
開催日
1951年03月19日 
(昭和26年)
会議名
第6回沖縄群島議会(定例会) 1951年3月19日
議事録
 一九五一年三月十九日(月曜日)
 午前十時五分開会
◎議長(知花高直君) 開会致します。
 出席議員一九名、欠席議員一名であります。諸般の報告を致します。円予算及びドル資金の件、法務警察委員会所管事項の件、以上二件について本議会からの陳情書に対して軍から回答が参っておりますから書記長をして朗読致させます。
  (書記長「新垣良正君」朗読)

 琉球米合衆国民政府
 沖縄民政官府
 一九五一年三月十二日
主題:沖縄群島議会からの嘆願書に就いて
宛 :沖縄群島知事
一、一九五一年一月二十五日付「沖縄群島議会よりの嘆願書」と題する貴覚書四十二号に対する回答
二、議会から提出せられた嘆願書に関して次の如く意見を差上げる。
 a、米国政府の占有する財産に対する使用料支払計画は現在立案中である。今沖縄に日本勧業銀行から数名の人々が来て戦前と現在の価値を比較しつつ財産評価の仕事をしている。沖縄の経済に於ける戦前から戦後の変動、円価の再評価、外国貿易、他の同盟諸国に於いては勿論各地方に於ける円の購買力如何について考慮が払われている。此の問題に就いてデイストリック(リクトか)エンヂニヤと一緒になって働いている関係者の二人は勧業銀行から来た鑑定課長の溝淵正一氏と主任調査官の佐藤新一氏である。
 b、現行の指示に従えば市町村団体有の土地は占領軍の利益を阻害せざる限り所有者に開放することが出来る。県有地も占領軍の利益を害せざる限り政府用としては無償で琉球政府機関に対しては暫定的にのみ開放することが出来る。併し政府用とはそれが所有権紛争解決のためと否とに拘わらず財産の個人事業への譲渡をも含むものだとは考えられない、市町村が土地解(ママ)放を望むなら沖縄民政官府を経由して琉球財産管理局に申込めばよい、申込書には所有権の獲得方法、前所有者等出来る丈の証拠を添えねばならない。
 c、日本の法規の採択については一九五〇年八月四日付の府令第二十二号及其の後の改正に規定せられる群島政府の権限を越えない限り議会の裁量に任せる。
三、議会提出の「円予算とドル資金に関する嘆願」に関しては次の資料を提供して要求する情報は此の度は上げないことにする。議会の参考にと添付する此の書類は役に立つ適切なるものである。
  添付書類
   1、一九五〇年十二月十一日付運営規則四号
   2、一九五一年一月十日付民政府への覚書「円資金の現状」
   3、琉球民政府書翰「計画資料」
   4、琉球諮詢委員会書翰「軍政府より資料を求む」
   5、民政府への覚書「円資金の現状に就いて」
  (添付書類は省略)
◎議長(知花高直君) 本日の議事日程を報告致します。
  議事日程第六号
 第一、知事の政務報告に対する一般質問
 以上であります。
○本日の会議に付した事件
 日程第一、沖縄の帰属問題に関し沖縄群島議会の意思表示について(三番議員稲嶺盛昌君発議)
 日程第二、知事の政務報告に対する一般質問

◎議長(知花高直君) これから本日の会議を開きます。
◎稲嶺盛昌君 議事日程追加の緊急動議を提出致します。琉球の帰属問題に関しましては、各政党夫々この問題に対して論議を進めてそして此れが社会的に表面化していると認められます。そういう見地から見まして、吾が議会としても、この問題に対する意思表示をしたがよいと思われる時期が到来したと思いまして「沖縄の帰属問題に関し沖縄群島議会の意思表示について」を本日の議事日程に追加せられんことを望みます。尚議事日程の順序を変更して本議題を日程第一とし、知事の政務報告に対する一般質問を日程第二とせられん事を併せて希望致します。
◎議長(知花高直君) 只今三番議員(稲嶺盛昌君)から「沖縄の帰属問題に関し沖縄群島議会の意思表示について」を本日の議事日程に追加し、尚日程の順序の変更方について緊急動議がありますが御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様に決しました。

◎議長(知花高直君) 日程第一、「沖縄の帰属問題に関し沖縄群島議会の意思表示について」を議題と致します。発議者の説明を求めます。
◎稲嶺盛昌君 吾々琉球に於きましては日本との関係を申しますと、民族的に考えましても言語、風俗、習慣、この外一般的な色々な問題から考えまして、学者の専門説から見ましても、日本学者の論説から見ましても、日本と同一民族であることは否めないと考えます。
 同一民族が同一政治態勢(体制カ)下におかれることは人類社会の自然の姿であると考えます。琉球が日本と統合されたその頃は幾分言語、風俗、習慣の異った点もありましたが、その後、教育の進歩に伴いまして、この方面に対しても何等、等差がない位に進んで来ましたし、政治の方面から考えても、日本他府県と同様な参政権を与えられておりますし地方自治権も他府県と同一な自治権を与えられて、最近に於きましては渾然一体となっておった形でありましてそういうような所までこぎつけたのも略一世紀間に亘るところの全住民の努力の賜でありまして、その点からも、日本につくことを希望します。
 経済的な面から考えましても、琉球の経済というものは日本の経済圏内にありまして最近戦争直前まで日本の国内経済圏内の単位として、おったのであります。沖縄の輸出する品物の多くが、日本向けの品物になっておりましたし、沖縄が島内生産で間に合わない、他から輸入するものも殆んど日本の物を輸入しておった、こういう風に経済的に密接な関係を持っております。国際情勢は琉球がどういう風な地位におかれるか分りませんが、如何なる事があっても日本を中心としたアジアの経済圏内から離れることは出来ないと思います。文化面に於いても日本文化の交流なくしては、今後の沖縄文化の発展は望めないのぢゃないか、勿論、米国やあちら、こちらの文化の輸入も必要ではありますが、主として日本文化との交流が沖縄文化の発展基礎になると思います。その他旅行や又同じ国内としても日本における居住の自由、その他学問の研究というような面から考えても日本と同一国内の立場において希望通りすることが沖縄民族の将来のためと考えられます。尚今日、日本というのが米国の世界政策を支持いたしまして、どこまでも日本(米国カ)の友邦、同盟国の立場で進んでいる関係上、沖縄が日本帰属を要望することは決して今までみたいに米国に協力したことに何等、違いは生じない、むしろ米国友邦同盟国の立場にある日本と一緒になって日本の立場として更に力強い米国に対する協力が今以上により一層発揮出来るのではないかという風に考えます。以上の理由を以て沖縄の日本帰属を希望するのであります。
◎新里銀三君 只今の問題は議会の問題として議決するのはまだ時期が早いと思います。なぜならば国際状勢や客観的社会状勢下において、本議会が、こうして議決することは坂に車を走らすようなものであります。依って本議会にこれを議決することはまだ早いと思いますから後まはしにして戴きたい。
◎仲里誠吉君 本議員は三番議員(稲嶺盛昌君)の動議に全面的に賛成する、結論だけ簡単に申上げます。要するに同一生活、習慣、同一経済体系内にある民族が結合するのは当然すぎる程当然である、よって本問題は本日の日程第一番目にもって来て、本議会の名に於いて意思表示をすることは賛成する。只今十六番議員(新里銀三君)は時期尚早であると反対を述べられたが、その時期尚早であると云われたのは客観的な状勢がどうかなっているから此の問題を提示するのは坂に車を走らせるようなものであるということを云われているが、客観状勢がそうであるからこそ、本問題を議会に上程して全住民の代表者が挙って議会の名において意思表示すべき絶好のチャンスであると思う。ダレス特使が日本に来て此の問題を取上げているし、日本に於ける吾が同胞諸君は此の問題のために奔走している、又本島内のみならず全琉球全住民が挙って要望しているからには、むしろ客観状勢は絶好のチャンスであると思う。従って二十番議員(仲里誠吉君)としても此の問題に関しては全議員が議会の名において日本帰属を主張され、決議して軍当局に意思表示されることを希望する。
 (拍手)
◎祖根宗春君 只今の動議に反対します。理由は此の問題は四党会談を二回に亘ってやった結果、決裂しまして、その次に昨日の人民党及社大党の党議として、日本帰属を決定したばかりであります。従って沖縄全住民がこの問題についてまだ真剣に利害得失、賛否いろんな点について充分に肚を練っておらない、研究もしておらない。まだ此の問題は取上げて緒に入ったばかりであります。この吾々議員二十名が果して此の帰属問題について全住民から日本帰属を主張してくれと委任されたかどうか、委任された事項ではない又吾々も選挙区民に対して此の問題について、自分等の地域代表としては地盤の意向を全面的に聞いておらない。従ってこの議会において此の余りに大きな問題を二十名の議員だけで、沖縄全民衆の意向としてこれを決議するのは時期が早いと思います。この日本帰属問題が果して本当に沖縄を救う道であるか、どうか、此の日本帰属に依て幸福になり得る将来の見透しまで充分つけて冷静な態度を以て、充分に凡ゆる角度から検討してかからなければならん問題だと思う。そうして日本に帰属しなくても、ゆききは充分出来る、文化の交流も出来る、物の売買も出来る、必ずしも日本になったから、それが出来る、付かないから出来ないという事は絶対に断言出来ないのであります。あのアメリカですら日本が戦争を吹っかけた、そして敵であったアメリカですか(ママ)ら、今日本、沖縄の面倒を見ているぢゃないか、国が異なって、民族が違ったって、そういう面倒を見ているぢゃないか、従って吾々が日本に付かないと、日本が面倒を見ないというけちくさい日本ではないと思う、日本に付こうが、つくまいが、必要であれば国が違っても友達として、交き合いをせねばならん、敢えて一緒になるならんに依て、此の問題は解決出来ないと思う。従って此の問題については、吾々議会としては、もっと慎重な態度をとって、本当に沖縄の全住民が此の問題について研究をして、本当肚構えが出来た時に吾々議会は充分に輿論を調査して、そして全住民の意志として議会で取上げて、議会で議決して処理することが穏当ではないか、こう思いますので、この議案の審議に反対します。
○議長(知花高直君) 本件に対しては大体において一方に於いては最も適当な時期であると、一方に於ては時期がまだ早いというだけのことにしかなりません。それで斯くの如き重大な問題を色々論議しなければならんのは、ちゃんと分っているので、議長は表決をとります。
◎仲里誠吉君 議長は何でも、かんでもすぐ表決に入るようなくせを持っておりますが(笑声)此の問題は只今の十四番議員(祖根宗春君)の意見に対してはこちらとしては反駁したい点もありますから、もう少し時間をかして、討論をさせて欲しい(拍手)只今の十四番議員の意見を綜合すると全住民はまだ肚が決っていない、それから全面的に聞いてもいない、つまり日本に付いた方がよいか、アメリカに付いた方がよいか、と云うことは全面的に議員側としても聞いてない、此の帰属問題は日本に付いた方が、沖縄のためになるか、アメリカに付いた方が、全住民の幸福になるか、どうか分らない、それからどちらに付いても日本或はアメリカとの往き来は自由になる、売買も自由になる、文化の交流も自由になる、又アメリカに付いても、日本に付いても面倒を見てもらえる、友交関係も持続してもらえるということがポイントであるけれども、沖縄の住民の肚が決っていないと断言出来る理由がどこにあるか、それを証明していただきたい、その次の問題、沖縄のために、全住民のために、なるか、ならんか、分らないということであるが、十四番議員のアメリカ若しくは日本に付いた方が利益にならないという理由を証明していただきたい、どちらに付いても物資の交流が自由に出来るということを言っているが、これは経済原則、政治の原則について少し認識が足りないのではないかと思はれる、帰属が決着すれば外国に行く事は極めて複雑面倒な手続きを経なければいかん、その手続きを経ても、最後においては申請するもの総てが許可されるということはない。むしろ許可されない方が多いと思う。だから外国に行く場合は移民の取扱を受けるであらうし、移民以外にしても、日本でいえば外務省の機関を経なければいかん、物の交流面については世界経済から、とき起していかなければいかんが、時間の関係上止めるとして、先程三番議員がいわれたように沖縄の産物が殆んど日本向である、これがアメリカのような文化の高い、消費生活の質の高い所へ、文化程度の低い国が(のものがカ)流れていくことは絶対に考えられない、文化の交流はアメリカは英語国民であるし、沖縄は日本語国民である。その沖縄人が民族文化が英語国民であるところの国民文化と自由に交流することは絶対に出来ることではない、それは過去に於けるアメリカが証明している。その例外があるとすれば、それは科学面に於ける追及、これは概念的にいえば国境の差別はない、そういうことについては例外があるが、それ以外に於ては自由な交流は絶対出来ない。それから面倒を見てくれるということはつまり、アメリカが生活を見てくれるという意味合であらうが、逆に日本に帰属した場合、沖縄の生活を見てくれるであろうと、いわれる訳であるけれども、これも認識不足であると断言せざるを得ない、何故ならば沖縄が仮にアメリカに帰属した場合、日本が到底、他所の人の世話をすることは到底考えられない。Aという娘さんがいる、BとCがプロポーズをしてBに嫁いだとき、Cは他人の妻君になっている人を充分に世話するということは考えられない、従って若し、十四番議員が本問題がどちらに付いたら、沖縄の将来の幸福になるか分らない、むしろ不幸であるという積極的な意見があればそれを凡ゆる角度から本席上に於て論じて戴きたい。
◎新里銀三君 ダレス特使は一月二十五日より十八日間に亘って東京で各層の人々と講和会議につきまして色々と談じております。その中に領土問題に論及致しましたが、私はポツダム宣言の条項を変更に来たのではないと明らかにするし、早く日本の主権を回復させる、その領土はポツダム宣言に依て北海道、本州、九州、四国その他連合国が指定した島々で、琉球、小笠原諸島は帰らないということを断言しております。更に参議員(院カ)の緑風会の高橋竜太郎氏がダレス氏と会って琉球を日本復帰させて欲しい。しかし一時的に米国が占領することは已むを得ないと要望しております。それから米国各界においても此の信託統治は決して領土の拡張ではなく国際状勢に依って軍事基地を沖縄に置かなければならんということになっておりますので、此の総ての状勢を見た場合に何も、そんなに吾々が日本に復帰したいからといって争ふ必要はないと思います。尚日本に復帰した場合は必ずや米国は現状勢下に於て、吾が沖縄に基地を求めて更にその基地の拡充強化を計るでありませう。その場合に於て若し日本に復帰した場合は必ず日本は再軍備は決っていますので吾が沖縄は日本に国籍を有する関係で或は徴兵制度を布かれて、あの惨酷な戦争に再び吾々は駆り立てられないとも限らないのであります。尚一つは日本に帰属した場合は米国は必要だから必ず、沖縄を租借します。租借した場合は那覇港とか飛行場等、全琉球にまたがって租借するものと考えます。それは現地に於ける演習もあれば物資の輸送もあり、集積所も必要であり、宿舎も必要になって来て、全沖縄を借りても足りない状態になると思う。その租借された場合は日本に帰属して、即ち租借地は治外法権でありますが故に日本の主権、政治、行政が施行されない、指一本たりともふれることが出来ないということは、租借地のスエズ運河附近住民の声を聞いても分ると思います。更にアメリカはスエズ(パナマカ)を租借した場合、運河だけであった河の中心から巾五マイルの地域を租借しております。
 それから沖縄の軍事基地だけ見ても一点や一線だけでなくて、全沖縄が租借されるものと思います。又再軍備されて吾々の子弟から再びあの戦争にかり出されて、尚日本が再軍備した場合、戦艦、飛行機、大砲といったような火力兵器は日本の経済力では現在建設出来ない。依って米国に依存する他はない。米国に依存した場合、日本の経済としては目下の処できないから、沖縄の租借料と相殺するかも知れない、従って吾々が復帰することに依て徴兵に駆り出され、治外法権となって日本の政治、行政が施されないという状態になった場合、吾々沖縄人は非常に迷惑千万である。更に在日沖縄人が口をそろえて署名運動をしているが、あの人々は吾が沖縄出身ではあるけれども事実は日本人である。実際心の底から郷土を愛し、吾々の苦労を察し得れば、吾が沖縄に来て、吾が沖縄の現実の苦労を実際に体得していって、日本政府や司令部に体当りするのが当り前だと思います。又日本政府が感情的に政治的に元は日本領だから復帰させて貰いたい、ということは、それは人間の情義であって、それをやらなければ政府は非難されるのでありますから、儀礼的な言辞だけは申していると思います。何故そういうかと言えば、沖縄の復興面において建築資材が特に必要であります、所が日本政府は沖縄には建築資材を一本たりとも出さない、要するに大工賃まで向うで稼ごうという肚であります。若しもう少し政府に親心があり、本当に沖縄人が可愛ければ建築資材も売ってもらって、沖縄の住生活を早急に安定させるのが政府の親心であると思う。更に吾々沖縄人の在日資産、即ち恩給や預貯金債券、戦争死亡者の葬祭料も遺族扶助料の如きも本当に日本が、吾々が可愛い、自分の兄弟同胞であると思うならば特別にマ司令部に折衝致しまして、沖縄人の在日資産を沖縄に送って経済面において、どこまでも協力するのが立前であるが、それも一向に捗ってない、はねられてただ黙っている。決して沖縄人のためにやっていないのであります。今吾々が復帰した場合に再軍備があり、日本に依て徴兵される恐れがある、更に租借される場合は全沖縄が日本の主権から、尚更離れていくという現実を見た場合、此の問題はまだ吾々としては一般に諮らなければならん、二十番議員は全住民と云う事を度々いわれているが、一部であって全住民という言葉は取消して欲しい。更に吾々沖縄に対する日本政府の考え方は只今申上げた通り感情問題としては一口に司令部にお願いしなければ、ダレス特使にお願いしなければ、義理が立たないという儀礼的嘆願であると思いまして、此の問題はまだ時期が早いと思います。又全住民の名において、という事も当を得ない言葉だと思います。
◎仲里誠吉君 只今の十六番議員の意見を綜合して見ると、要するに第一番目は客観状勢は沖縄が信託統治か若くはそれに類似の法律上の状況におかれるであろう、従ってこのような客観状勢に対する見透しから沖縄は同時に軍事基地化して、アメリカが租借して、そして、その租借料は恐らく日本が取って再軍備の費用に当てるであろうというのが第二点、第三点は本議会において、吾々議員が日本帰属に対する議会の意志を軍に対して表するのは、それはダレス特使に対する儀礼的なゼスチュアーにしか過ぎない。第四点目は日本に於ける先輩は、日本に籍が移っているから沖縄人でない、従って彼等が沖縄の問題に口を出す権利はない、口をさしはさむ出過ぎた行為であり、若し日本にして、沖縄に対する親心があり、責任を感じているなら木材の輸出を禁止している行為でも積極的に更めて沖縄に輸出すべきであり、在外資産に於ても然りである。マ司令部にお願いして在外資産の恩給、債券、其の他を解除して、速かに、沖縄人に払い戻すべきであろうという五点につきると思うが、それに対して本議員の意見を開陳したい。十六番議員は客観状勢は沖縄は軍事基地化するであらう、信託統治におかれるであらうということを云われているその論拠として、ポツダム宣言、其の他を挙げられるけれどもむしろポツダム宣言に依れば沖縄が信託統治におかれないであらうという見透しが強い。と云うのは、現在沖縄を信託統治に置き度いと云うのは米国のみである。それに追随するところの諸国であるけれども、ポツダム宣言の趣旨は十六番議員が云われたように琉球、小笠原諸島の帰属はポツダム宣言により四大国に依って決定されるものである。四大国であって、米英一(二カ)ケ国のみに依て決定されるものであるとは断言していない。従ってポツダム宣言の趣旨に則って四大国の会議が開かれた場合、必ず沖縄は信託統治に置かれるであろうということは絶対に云えない。むしろその逆の方が吾々の方からすれば可能性がつよい。全世界における民主的な諸国家は沖縄が信託統治に置かれ、殆んど永久的に軍事基地化されることに対して反対するであらう。それから沖縄が実際軍事基地化され租借されて、その租借の費用は日本の再軍備の費用に当てられるであらうという予想であるが、これも其の根底をなすところの世界の客観状勢に対する見透し、或は見方が既に誤りである。以上は、その論拠は成り立たないと思うが、一応租借されてその租借料が日本政府に依って取られると仮定すれば、この租借の使用料が必ず再軍備の費用に充てられるということは必ずしも云えない、何故ならば日本に於ける民主勢力は依然として強大である。左様に民主々義勢力が強大である場合に沖縄の民族の犠牲において取上げた租借の代金を再軍備の費用に当てると云うことを、おめ、おめ承諾するはずがない。又日本における郷土の先輩は猛然とこれに反対するであらう。従って又沖縄が日本に帰属して租借もされないよう客観状勢が動いていった場合、本島からも代議士、若くはこれに類似の代表者を立て、此れに絶対的な反対運動をなすことが出来る、それから日本における郷土の先輩は成程形式的には沖縄人ではないだらうが、人間の五体に脈々と脈打っている血縁は否定する事は出来ない、それ故にこそ、日本に於ける先輩諸兄は代表者を立てて、わざわざ沖縄にまでも送るし、有形、無形の援助を送るし、これに対して出過ぎた行為であると云うことは、認識不足と断ぜざるを得ない。それから日本政府にして親心があれば、沖縄に建築資材やその他の在外資産を解除して、送るべきであると云う、只今の論旨であるが、これも認識不足である。この日本の態度は、何故そういう風になったかと申せば日本側に云わせると、本議員の予想であるけれども、現在沖縄の経済復興はアメリカが一切面倒を見ている、そしてアメリカは沖縄を占領すると共に日本統治権が沖縄に及ばないように切り離され(しカ)てしまっている、この基礎に基いて、アメリカは沖縄の世話をしているわけなので結局アメリカは沖縄の経済復興に対しては全責任を負うている形になっている、従って日本としては第一義的に云えばアメリカの方から命令がない限りは沖縄の経済復興に積極的に自ら進んで物資を送るという義務を持たない、これは無論戦争に依て、このような状勢が起されたわけで、これはかならずしも日本の責任ではない。在外資産もその通りである。ごく最近も本議員の両親の持っている在外資産の取立を依頼した処が勧業銀行筋から、こういう返事を受けた。銀行当局としては一日も早くこういう金を送りたい、而し乍ら、色々な法規が、之を許さないのである。若し貴方方がぜひともこれを取りたいという御意向であれば、マ司令部に行って交渉して戴きたい。従って在外資産が解除されないのは日本政府の責任ではない、それから又、吾々議員が一応の儀礼であるという意味のことを云っているけれども、単なる儀礼から、この問題を取上げるとすればダレス特使は吾々議員がアメリカに帰属し、或はアメリカの信託統治を主張することを好むであらう。若し吾々がダレス特使に対する儀礼からといえば、ダレス特使を喜ばせるためには外交上の儀礼的習慣を満足させるためには、吾々議員は挙って、アメリカ帰属或は信託統治を此の席上で取上げるので(ママ)あらう。此れは単なる儀礼でないということを証拠立てるものである。それから吾々が本問題を取上げるのは感情問題に過ぎないということを云われているが、感情問題で取上げることが、何故悪いか此の意味は要するに沖縄人として、このようなものが仮に感情であると仮定した場合、この感情はどこから生れたものであるかということを人民党は昨日の党大会においても明瞭に過去五年間に於ける吾々の経済生活の中から生れている、つまり、第一義的には生得の感情であるけれども、それと同時に又過去五ケ年間の経済生活から生れている。これを無視することこそ反人民的な行為であると断ぜざるを得ない、以上の論点に依って、吾々が日本帰属を主張することは極めて当然であると思う。
 十六番議員の要求に依って大多数がそうであるということを全住民と云った事は変えてもよいけれども、絶対的な大多数の住民は日本帰属を衷心から希望しているということは、此れは最早や何人も否定することは出来ないと思う。以上賛成の趣旨とします。
◎長浜宗安君 先程十六番議員から時期は早いということをいわれましたが、此の問題は時期はむしろ客観的状勢からすれば遅すぎるという感じを受ける者であります。此の問題をめぐって賛否両論起りましたが、これはどこまでも観点の相違でありまして、此の観点を変えない限り両方の意見の一致を見る事は難しいと思う。依って決を取って戴きたいと希望致します。(拍手)
○議長(知花高直君) 討論終了致したいが
  (「討論を継続して欲しい」と叫ぶ者あり)
○議長(知花高直君) 一寸休憩します。
  午前十時五十分休憩

  午前十時五十一分開議
◎祖根宗春君 ポツダム宣言第八の項にカイロ宣言条項は励行せらるべく、又日本国の主権は北海道、本州、九州、四国、並に吾々の決定する島嶼に局限せらるべし、こういう条項を見た場合に日本の主権の及ぶ処は琉球とは書いてありません。本州、北海道、九州、四国、それから国連が決める島嶼という風に解せられる、それからダレス氏が来られる前から米国の意向として、新聞紙上を通して見た場合、またダレス氏が来られて、更に日本及び本国に帰えられての色々な報告関係の新聞紙面から見た場合に琉球の帰属問題に付いては吾々は日本に復帰することは不可能だと云う断定を持っております。然らば日本に付かなければアメリカに付くかということであるが、アメリカにも付きたくない、日本にも付きたくない、どうするか、こういう問題であるが、兎角吾々の此の島として、これはどこまでも琉球民の一財産、民族、文化、思想すべて琉球は自分等で領有しなければいかん、現在沖縄群島政府が出来、議会が出来、沖縄の政治、経済、文化、あらゆる方面は現在吾々の力でやっている。この吾々の力でやっている沖縄を何故日本政府に戻して日本政府の支配、法律、経済、文化、或は指示を受けるのであるか、吾々の力で今やっているこの沖縄はどこまでもわれわれの力でやっていきたい、これが自主的な、しかも民主的な沖縄、琉球建設の道であると信じます。そして若し、日本に帰属した場合、このアメリカが沖縄から手を引かない限り、相当のつぶれ地を軍に取られているこの小作料も払い、租借料も払うことに、はっきり方針が決っている、若し日本に帰属した場合にはこの租借料も日本政府に納めなければならん。われわれ沖縄人は土地を借りられ、借賃は日本政府に取られる、それから現在、軍作業が沖縄の唯一の弗稼をやっている、軍作業の一ケ年凡そ一千弗に及ぶ、この弗の使途の問題について日本に帰属した場合、日本政府の会計に入り、われわれ沖縄人が軍作業に行って働いて得た弗は日本政府の金庫に入る、これを沖縄のために使えるか、使えないかそれも分らない、そういう矛盾が来ると思います。それから、日本は二十六年の予算から見た場合、日本政府の一人当りの今度の負担が五、七〇〇円と見ています。果して吾々が日本に帰属して、日本人民として五、七〇〇円に該当する税金を果して納め切るかどうか、それからフィリッピンは日本に八十億弗の戦争賠償金を要求すると新聞に報じています。これも日本人の一人々々に割った場合、一万二千円になります。吾々が若し日本に付いてフィリッピンの損害賠償も負担する場合に一万二千円の金が支払い得るか、どうか、それから日本が現在六一%のアメリカの援助を受けて立っている。
 日本自体がアメリカの援助をかりなければ立っていけない、その苦しんでいる日本に吾々が更に沖縄の百万近い人間が領土その他をあずけた場合、日本政府としては非常に重い荷物を更に負わなければならなくなる、日本がアメリカから援助されて日本が更に沖縄を援助する、そういうまわりくどいことをする必要は全然ないと思う。どうせ日本についても、つかなくても、アメリカは日本及び琉球を軍事的に戦略的に必要とする以上は、アメリカ自体も真剣にこの琉球の育っていく立場を考えるであろう。又考えてもらわなければならん。若しアメリカが琉球を育て切れない場合は吾々は世界に訴えて、この過剰人口を移民に送って海外に、もっと沖縄以上に豊かな、南洋諸島とかに移民を送って、そしてこの島を移民の力に依って育てていく、同時に人口を半分に減らして、一戸当りの耕地面積を増して、そして自活し得るだけの人間を残して後は海外に送って、琉球を海外に行って建設することは何も日本に付かないでも、吾々の行く処は世界どこでもある、このように努力しなければいかん。それが移民政策で日本には絶対移民は送らない、北海道に行けば四百万入れますが、沖縄から北海道に行っても土地、気候、風土、生活、習慣、耕作の仕方が違うから移民を送ることは不可能である、日本に行って吾々が育ち得るのは官吏とか、商工業とか、そういう方面に育つが、この過剰人口全部を日本に送って重い荷物を日本に背負わせることはしたくない。そして結論から云えば、それではどうするか、どこまでもアメリカ及び日本を支持する自由主義国家の力を借りて、沖縄はどこまでも自分等の島として自分等の力で治めていく、自分の収入、労力、自分等の土地、自分等の外交力に依てこの沖縄を賄っていく、その意味で沖縄は世界一の小さい国であってもよろしい、その意味で沖縄の一つの独立国琉球として行った方が賢明ではないかと思う、そして経済的にはむしろ、自給自足の出来ないのは分っていますが、その出来ない点を先刻いったように取敢ず目の前のしのぎとしては軍作業に出て行く人の弗が沖縄人の面倒を見る、それから駐屯軍のサービス業をやって、弗を稼ぐ、それから沖縄から日本にその他の産物を出して弗を稼ぐ、それでも尚且つ足りない分は、どこまでも戦争で沖縄を叩き壊した日本とアメリカに対して、どこまでもお願いをして、やっていけないからこれこれの点はやって来たが、これ以上は自分等の力では出来ないから、出来ないところはどこまでも訴えて援助を求め、そして早く一本立ちで自分達の力で自活できるように政策的に徐々に進めて、そして移民が解決された場合には完全に自給自足、経済的に自立し得る島になる見透しをつけて、それが今日、明日の問題、或は四、五年に実現するか、十年に実現するか、分らないがどこまでもそういう観点から進めていきたい。この問題について、時期が何故早いかと云うと、私共の考えでは日本帰属をはっきり主張しているのは人民党五百何名、社大党三千何名、合計三千五百名の党員の態度は、はっきり読めるが、それ以外の個人々々の意見をきいても日本帰属の方がよいといい、独立の方がよいと、どうも態度がはっきり云えないという人もたくさんおります。それで青年連合会では三万の青年女子(ママ)に呼びかけて此の問題の照会中で世論調査している、その意味からまだこの問題については本当に真剣に取り組んで研究してないから本席で議決するのはもう少し研究してからやって欲しい。若し、此の問題を与党の力で強引に数で押すならばこういう条件をつけて欲しい。一つ日本に帰属した場合に絶対に沖縄を戦争にまき込まないような自信があるかどうか、その次は沖縄は戦争の被害者だから日本にくっついた場合日本人民と一緒に戦争の賠償金を払わないという条件、その次に軍用地につぶされている土地の賃貸或は将来起るべき租借賃、そういった金は日本政府に入れないで、どこまでも沖縄にそのまま置いて欲しい、その次、軍作業が稼いでいる或は輸出貿易に依って稼いでいる弗はこれを日本政府に納めないで沖縄で使って貰いたい。その四つの条件をつけて、日本帰属をして欲しい。無条件で日本帰属を主張していって、此れが沖縄の将来のためにならない場合には本議会としては、吾々は腹を切らなければならん、それを希望します。
◎仲里誠吉君 只今の十四番議員の意見は依然として、その根本は宿命論である、此の宿命論から出発して結局、琉球の独立論を唱えているけれども、然し乍ら条件を付ければ日本に帰属してもよいという、その条件は正しいことを前以て申上げておきます。第一番目にポツダム宣言はこれを十四番議員は少し誤解があるので、ポツダム宣言においては、本州、四国、北海道、九州のみで、然し乍ら、琉球、小笠原は国連に従うと云うことを云われたけれどもこれは間違いで、ポツダム官言の後半をよく読み直して欲しい。国連ではなくてあくまでも四大国の決定に従う、これは既に先程十六番議員(新里銀三君)に回答したので再び回答することを認めない、二番目のダレス特使のアメリカへ帰国した後も、沖縄は日本には戻らないようである、アメリカに帰属しそうだ、アメリカの信託統治か何かにおかれそうだ、だからわれわれは当然アメリカの信託統治に入るべきであると云う意見であるが、これは先程十六番議員(新里銀三君)に回答したが結局は宿命論であって、此れは一方的な行動にのみ頼っての判断である、判断は総て双方の意見を聞いて客観的な動き、人類の歴史の方向、こういうものに基いて判断をしなければならん。只今の十四番議員の判断は一方的な報道に基いてのみの見解である、むしろ客観的な情勢はこのような一部の人士が唱えているような宿命論が根本的なものから、くつがえされる方向にある。三番目の独立論、これは一番最後の結論と結び合せて後まわしにする。その次の借地料の問題、これはアメリカは成程昨日、一昨日あたりの新聞にも載っているようにアメリカ当局が使っている所の借地料を払う、然し乍らこの借地料を払っても日本に帰属したら日本政府が取上げるのではないかという、危懼を持っておられるが、そのまま日本に流れ込んでいくか、どうか法律上から本議員は法律には暗いが、それは条件を付ければその実現は充分可能性がある、借地料は沖縄の土地に対する借地料を沖縄以外の日本の人民が取上げるということは一方的で反民主的である、よしんば日本政府の国庫に流れても、そのまま沖縄に還元して欲しいという、十六番議員の意見に対して答えたと同様に、これは沖縄全住民の要求、それから日本の民主的諸団体の要求、これが加って日本政府に対する圧力となれば、その借地料は沖縄の住民に帰属するであろう、それから、予算の負担、日本の予算は一人当り五千七百円云々とあるが他に賠償金一万二千円になり、合せて一万七千七百円程度のものを沖縄人が負担し得るかどうかという問題、これに対する解答も、既に十四番議員(祖根宗春君)が自から出しているのであって、斯くの如き重課は沖縄住民には課してはいけないという要求を付けることが出来る、又勿論、日本政府といえども吾々が要求しなくても沖縄人が今度の太平洋戦争の最大の犠牲者であるということは百も承知である。このように戦争に依って徹底的にいためつけられた人民に対して内地のそれ程、災害を受けてない住民と同様なものを課することは考えられない。
 それからフィリッピンからの賠償金も現在、客観状勢は取られない方向に動きつつある、それから日本自体がアメリカから援助を受けている従って沖縄が日本に帰属した場合に更に援助することはまわりくどいことで、無意味だ或は日本自体がアメリカから援助を受けて沖縄が日本に付いた場合には日本としては色々世話を見る能力がないであろうと、いうことであるが、仮に百歩千歩ゆずって世話をする余裕がないとしても人民党が主張しているように沖縄住民は生産力を持っていない、この現在、沖縄の持っている生産力は若干枯れてはいるけれども、この生産力が聊か枯れているのは、これは吾々沖縄住民の責任ではない、われわれ沖縄民族以外の勢力から来るということを知ってもらはなければいけない、何れにしても沖縄住民の生産力が全面的に枯れない限りは日本政府が余裕がないとしても沖縄住民としては自からの力を以て起ち上ることが出来るであろう。過剰人口のはけ口がないということであるが、これはアメリカに付かなければ、曾て日本の統治下に入っておった時分にも、沖縄から、どんどん移民が出たことは十四番議員御自身が御承知の通りである、これ等の移民からの送金は現在、商業資金の中に繰込まれていることは御承知の通りである。何れにしても沖縄の過去の歴史をひもとけば一目瞭然である、それから時期尚早の問題であるけれども、これは要するに十四番議員の意見は日本帰属を主張するのは人民党と社大党の党員のみであるといわれているけれども、此れは十四番議員が久米島の離島におられる関係ではないかと思う。全島地区をかけずりまわって働く人々の声を聞いた場合、圧倒的に大多数が衷心から日本帰属を要望していることを発見されるのであろうと思う。最後に独立論であるけれども、これは経済的な自給自足が出来ない限り無意味である。従って経済的な自給自足の不可能なところで独立論を唱えるのは、絵に画いた餅をくえというのと同じである。十四番議員自身が経済的に独立出来ないということは知っている。その基礎きわめて薄弱であるけれ共、十四番議員はこの矛盾点にこういうことを付け加えて経済的には自給自足は出来ない、従って一応は論理的にいうと、独立は出来ない訳けであるが、強いて独立をするためにアメリカ辺りから援助を受けたらいいではないか、日本辺りから援助を受ければいいぢゃないか、と云われているが、日本から援助を受けられるというのであれば、何を強いて独立論を唱えなければならないか、アメリカから援助を受けると云われているが、何を強いて、独立論を唱えなければならないか、完全に沖縄が独立した場合に要求に依っては援助されるであろう。これはアメリカの民間資本の援助、こういうことになる。
 沖縄は御承知の通り基幹産業としては農業就中、製糖事業、それから漁業の二つしかない訳であるけれども、この二つの事業面に外国の民間資本が入った場合、どういうことになるか、今更この席上でくどくどしく説明することもなかろうと思う、従って以上の理由に依って十四番議員の唱える独立論は基礎薄弱である。但し最後に付けられた条件は本席上において、どうしても決議をして、賠償金を払わないとか、借地料は日本が取るのでなく沖縄に返してもらうようにする、この意見は極めて適切であると思うので、只今の条件は本会議において採択をして貰いたいと思う。以上で賛成演説を再びくり返しました。
◎新里銀三君 人民党が日本帰属を要望するのは、口で云うのとは矛盾していると思う、何故か、人民党は平良知事に面談して憲法制定を急いでやって貰いたいと言っている。独立国家でなければ憲法はない、よって憲法を実施して欲しいと言いながら、日本帰属を要望するということは矛盾も甚だしい。尚又、社大党の日本復帰要望も一寸変ではないかと思う平良知事は三ケ年計画を以て経済自立を樹てている。この経済自立が出来れば何故にして日本に行く必要がありますか、総ての問題が解決すれば、あながち、日本にこびる必要もないと思う。私は可及的速かに独立を要望する者であります。吾々共和党と致しましてはこれが根本政策である。吾々は国家構成の一分子であります。吾々住民は経済生活の安定こそ家庭の幸福を招来し、繁栄すると同時に平和の社会が結成されるのであります。経済生活を離れて家庭や社会は成り立たないと思うのであります。現在沖縄住民の心理は「ジンカラカナサヤ、アノ里前、肝カラカナサヤコノ里前」というような状況、或は背に腹はかえられない、「ムヌクィシル、ワガウスウー」という言葉である。衣食足りて礼節を知る、これは現実の沖縄の姿であり、亦生々しい叫びであると同時に実際の吾々の足下の問題ではないだろうかと思います。吾々の現状は総て米軍の援助によって生活しておりますが、米軍があれだけの物資を投じ、更に吾々の復興面に力を入れているからには与えて下さい、助けて下さい、恵んで下さいといった場合、果して人間である以上助けてくれるであろうか、与えてくれるであろうかということを心から考える場合、私は現在の状勢から見て、或る一定の時期は信託にして、然る後に信託統治期間内において吾々琉球人の経済、教育、産業或は文化面の基本設備を米国に施して貰って、その基礎の上に吾々が生きて行ったならばこれを巧く運営していったならば吾々は幸福であり、吾々の子々孫々は繁栄するものと確信するものであります。
 廃藩置県当時において、九名は支那に帰属を要望し、一名は日本に帰属を要望しまして、九対一で闘っている、結局は目先の利く一は勝って、日本帰属になったのであります、吾々は独立をしましても、これが始めではなく、その昔は琉球王国という立派な独立国家であり、そして二五〇年前には琉球の黄金時代を発揮いたしまして、世界をまたにかけて吾々同胞が活躍しておったのであります、これから見た場合、経済から見ても何も憂る必要はないと思います、更に米国は世界各国の友邦自由国家に対しまして、経済的援助を与え、日本でも、イギリス、フランス、イタリヤでもすべてアメリカの物質的援助を受けている、あの西欧におけるマーシャルプランによりまして、自由主義国家に莫大な援助を与え、平和建設に協力しています、それから見た場合、沖縄は米国の国防第一線にあり、日本より米国が優位にある限り、沖縄の基地は益々強化されて、これに伴い援助があるということを、どこまでも独立国家として、援助するよう、琉球についても援助するものと確信するものであります、それで独立しましても決して経済的に苦しむことはないと信じて、日本復帰については賛意を表することは出来ないが、可及的速かに先程申上げました通り基本設備をいただくまでは信託統治にし、その後独立国家にし、昔の琉球独立国家の再建をしたいと思うのであります。
◎仲里誠吉君 只今十六番議員(新里銀三君)の見解でありますが、先ず第一には人民党が日本帰属を主張しているのは矛盾ではないか、人民党は憲法議会の招集、憲法設定を要求しているのは矛盾ではないかということであるが何ら矛盾ではない、その理由は人民党は成程、憲法設定を要求している、然し、これはアメリカの統治下におかれる間の憲法である、沖縄が日本に帰属して、再び主権が及ぶようになればこれは自発的に撤回するであろう。又若し、日本の憲法が沖縄において制定された憲法より民主的にいって進んでいない条項は或は挿入を要求しないとも限らない、何れにしても人民党が要求するのはアメリカの統治する間のことである、何等矛盾するものではない、それから社大党の矛盾点であるがこれは私からも気付いた点もありますので社大党に代ってというとおこがましいが、もし足らない点があれば委員長から回答をして貰うことにして、要するに社大党は日本帰属を主張しているが、その反面において、経済自立が出来るというているぢゃないか、それが出来るならば何も日本に媚をうって日本帰属を主張する必要はないぢゃないかという点であるけれども、平良主班は経済自立が出来るとは表明してない、後配られるであろう、綜合経済自立三ケ年計画をよく見て戴きたい、あの三ケ年計画において、百%経済自立が出来るということは、どこにもうたわれていない、あの経済計画によれば、必要とする資金が全面的に受入れられても尚戦前の八〇%内外しかない、出来ないということをうたっているのであって、絶対に百%出来るとはいってない、仮に自立が出来るとしても、吾々の民族感情に訴え、日本帰属を主張するのは何等矛盾でない、独立論の立場からする色々の根拠であるけれども、吾々沖縄住民は国家の構成要素である、而して、経済生活が安定して、初めて、平和な生活が出来るといっているけれども、吾々の生活は何等安定してない、これは万人が認めるところである。むしろ過去における経済生活に比較して惨めな位どん底に落されている、つき落されたのは吾々自身が好き好んだものではない、吾々の政策の沖縄人の政策の貧しさから来るものでもない、むしろ沖縄民族以外の外部からの圧力によるものではないかという点が多いということを知って貰いたい、次に日本帰属を主張して、日本に援助を頼んでも恵んでくれるかどうか、ということは、これを恵んでくれるということは絶対にいうてない、十六番議員は琉球歴史においては、国王時代を出現した時代のことをいうているが、この王国時代ということは大いに訂正して貰わなければならぬ、歴史をひもといて見ると曾ては黄金時代があったと言われている、このようなことはどのような階級の人にとって、即ち当時の支配者層、武士階級の黄金時代であって、その裏面には下積みの人民大衆、就中当時の農民が如何に貧しい惨めな生活を送ったかということを知らなければならん、一方では黄金時代を謳歌し乍らも、他面絶えず蘇鉄地獄がつきまとっていた歴史的な事実を知っていただきたい、十六番議員は日本その他に援助を頼んだり、恵んでくれということはみっともないと云われているが、客観的な状勢は沖縄が基地化するであろうから、その間信託統治をしてもらって、アメリカに援助をしてもらったらよいぢゃないかと云われているが、それは自己矛盾である、信託統治を要求しているけれども、一定期間信託統治にしてもらって、徐々に独立したいというのであるが、これは国連憲章を見て戴きたい、信託統治というのは国連憲章にはっきり謳われているが、自治能力ない民族にこれを施すのである、十六番議員は沖縄住民が自治能力がないということはまさか思っていないと思う、以上の観点からも、われわれが賛成出来ないことが分ると思う。
◎稲嶺盛昌君 十六番議員からの社大党云々の問題でありますが、二十番議員から知事が、沖縄は自立経済が出来るとは云ってないということは去る四党会談において共和党の独立論の理由の一つに挙げられました。ところが、社大党においては、この問題を論じたことはありません、多分この問題に対しては、こちらの全面的要求に対して米国が援助してくれた時は、或はそれが出来るかも知れないが大体において二十番議員が説明した通りであります。今一つこの帰属問題に対しては、日本帰属に賛成論、又その反対論も相当論じつくされたと思いますので、これに対する反駁に反駁を続けると、きりがないと思いまして、表決に入りたいと思うのでありますが、条件という問題が出ておりますので、休会して話合ってみたいと思いますが。
○知事(平良辰雄君) 只今の自立経済の問題が出ましたので、先程の仲里議員から或る程度の答弁はしてあると思うが、自立経済は独立を前提として考えているのではない、例えば日本に沖縄が属している場合、沖縄自体として自立経済を立てなければならん、沖縄自体の産業、沖縄住民の生活のことを考えて、輸出入のバランスを取ることは当然である、帰属の問題と何等関係がない、而もこの経済政策の内容は御承知の通り、日本との貿易の取引が中枢になっているということを見てもらえばすぐ分ると思う。基本産業を造成して、沖縄にどういう品物を入れるかという貿易対策を見れば日本との関係が非常に緊密であることがお分りになると思う、自立経済というものは、生きて行くためにはどうしても樹てねばならん、個人でもやらなければならん、そういう意味であって、自立経済が出来るからこれは独立のためであると、いった考えはないのであるから、その点は充分御了承願いたいと思う。
◎稲嶺盛昌君 今先のような理由によって表決に入った方がよいと思います。それに一寸付加えますが、十六番議員(新里銀三君)、十四番議員(祖根宗春君)としては時期尚早のことをいわれているが、同じ共和党の幹部である桑江朝幸君が去る一月二十八日中部振興会において越来村に公聴会を開いた時に、真先にこの問題を群島議員としてどう考えているか、こんな重要な問題は知事も議会も早く意思表示をした方がよいではないかというような詰問的な要求を受けまして、その当時こういう、重要問題を簡単にしてはいけない、われわれとしては、慎重に検討すべきである、私はこれに対して、どうする、こうするといったような、適確な返事を申上げることは出来ないといった事実があります。こういう点からして、この議会において私は表決を行って差支ないと考えて表決に入りたいことを希望致します。
◎議長(知花高直君) 討論を終了致します。表決に付します。
 (拍手)
 沖縄の日本帰属に賛成の方の挙手をねがいます。
  (松本恭典君、祖根宗春君、新里銀三君不挙手)
◎議長(知花高直君) 挙手者多数と認めます、よって本議会は沖縄の日本帰属を意思表示することに可決致しました。
○祖根宗春君 条件はつけませんか。
○議長(知花高直君) 暫時休憩致します。
  午前十一時三十二分休憩

  午前十一時四十分開議
○議長(知花高直君) 開会致します。
 午前はこれで散会して午後一時より開会致します。
  午前十一時四十五分閉議

 一九五一年三月十九日午後一時開会
○議長(知花高直君) 開会致します、出席議員十九名、欠席議員一名であります。
◎議長(知花高直君) 日程第二、知事の政務報告に対する一般質問に入ります。
◎山城興起君 琉球海運会社が軍から民へ移管になった二月以来、南北大東島に対する航路が杜絶し、今や絶海の孤島と化しているようであります、そのために補給食糧の輸送、配給、入学試験の手続等、非常な障害を来たし、殊に食糧会社から配給される二月三月分の食糧の杜絶は住民に非常なる不安を与えているようであります、その真相を承りたい、尚琉球海運株式会社は民営ではあるが、重要な海運を握っているのでありますから単に利潤のみに動くことなく、住民の福利的立場に立って会社の経営をして貰いたいことを本員は特に要望する者であります、斯く事情が緊迫しているのでありますからして政府の方では速かに事情を軍に訴え軍の援助を懇請すると共に速かなるところの救援の対策を講じてもらいたい、この点に関して知事の答弁を承りたい、尚起ったついででありますので、別の問題ではありますが、もう一つ質して見たいと思います、あの佐敷にある刑務所でありますが、これは終戦後より今尚存続されているようでありますが、これは引続き存続されるお考えであるかどうか、今地元民の方では早急に、これを他に移転させて貰い度いことを要望し、前の民政府の時にも陳情があったようでありますが、時期尚早として沙汰止みとなっております、本員も該刑務所は刑務所として甚だ不適当な処であるが故に、これを早急に移転させて貰いたいと要望する者であります。その理由、およそ罪がある者はこれを裁判に付して罰するということは罪があるからこれを罰するんだと云うような、単なる意味もありますが、刑事政策の面から見ますると、その犯人に苦痛を与え、そしてその良心を呼び起し、再び悪の道に入ることを防ぐことにあろうと思うのであります、然し該刑務所の土地はその趣旨には余り適当している場所でないと思う。精神の方面から見ますると該土地は非常に風光明媚の処でありまして、恐らく向うにいる受刑者の方では何か別荘に行ったような気分で少しもそこに良心の反省、呵責は出来ないような場所じゃなかろうか、又ここは非常なる大通りにあるので善男善女と申しましょうか、非常なる通行量のあるところであって、これ亦社会風教上も甚だよろしくないと思う、又これを肉体方面から見ますと住居だって普通の民家より却って良い位であるし、食の面はと申しますと現在収容されている囚人が三百四人となっておりますが、ところがこの囚人は敢て自給自足といった意味合で、その経営をやっておるようでありまして、約十五町歩の土地を持っております、内十二町歩は耕地でありまして、三町歩はまだ耕地になっておりません、これを囚人一人当りの耕地割当は百十八坪となっております。ところが所在地の兼久の住民は一人平均五十六坪でありまして、囚人の半分にも足りない土地を持っておるのでありまして、この点から見ましても、これは社会通念上甚だ不合理な点があると思うのであります、私は成可早急にこの刑務所を適当な所に移して戴き度いことを切に要望する者であります。
○知事(平良辰雄君) 大東島の航路の問題でありますが、戦前は大東島は燐鉱会社の船が月一回なり、その他に大阪商船の補助航路として年一回大東島に寄航する条件になっておった、戦後においては相変らず燐鉱会社が燐鉱を運ぶために一ケ月一回船があった。又軍の船も通っておったのであります。戦後においては燐鉱は軍が直営しておったようであるが--軍の補助を受けていたようでありますが、軍が投げてしまった、ために住民は仕事を失って路頭に迷うという有様で航路問題にもなって大東島の住民に対しては実に気の毒だと思うのであります、孤島に取り残されて交通杜絶ということは大きな人道問題になって来るので単にそればかりでなく、食糧問題もあるので由々しい問題になって来るのであります。食糧の配給を食糧会社が軍から請負しているが、食糧会社の契約としては各市町村の売店まで持って行ってやるという義務があるのであります。そして全琉が全部現地において同じ価格で配給を受けることになっているのであります、それで食糧会社の船が毎月食糧をきちんきちん持って行ってくれれば、それを利用することも出来ますが船がないために食糧会社もなかなか困っているようであります、船も今大東島に行ける大きな船腹は海運会社にも聞いて見ると余りゆとりがないようでありますが、然しこれは何れも営利会社である以上はある程度の犠牲を払っても--大きな犠牲を払ってまでという訳にはいかんだろうと思うが--その経費は軍が持っている訳でありますから、軍の請負金を増してその分についての費用を軍から出して貰えば船は少いにしても運賃の問題にしても、海運会社は行かんことはない、こういう考えを持ちまして食糧会社にも折衝しているのであります、この問題については又部長から実際どういう風になっているかと云うことは詳しく説明がある筈でありますが、こういう問題は根本的の解決策を講じなければならないと私は考えているのであります、どうしてもこれは大東島みたような、ああいうところで一般の業者が営利的に営む船では到底向うの住民の生活を支えることが出来ないばかりでなく、向うの産業開発にもならないと思う、要はそうなって来ると南北大東島の村が組合経営の船でも持つという考え方に行かねばならん、組合で船を持つということになれば、それに対して金を貸して造らして年賦で償還する、或はその償還の財源として群島政府が補助するという考え方に持って行かなければ根本的な解決は出来ないと思うのであります。これはひとり大東島だけの問題でなく、交通不便な各離島においてもその通りである、航路問題としては今後是非研究をして航路の不便な各離島においても人間としての生活が出来るような程度の文化施設を持たなければならん、こういう風に考えているのであります。
○法務部長(知念朝功君) 佐敷にあります、刑務所の移転のことに関する御質問にお答え致します。先ず佐敷の支所は廃止する意思があるか、という御質問に対してはありますとお答え致します。これは戦後非常に犯罪がふえて月平均七百名宛収容致しております、それで本所も復旧が漸く緒についたばかりでありまして、これだけの人員を本所のみに収容することは現在のところ不可能なのであります、然し乍ら沖縄民政官府のラーセン氏、刑務所係オーズン氏と話し合いまして向うの支所は早く移転して本所に全部収容しろ、向うの敷地はそれぞれ所有者に返納しようという計画を進めております、それで本所の設備が整いますれば本年中にも移転を終了したい考えであります、逐次人員を本所に収容しつつあります。一昨日も八十名位本所に移したが支所におりますのは少年犯と女囚、漁撈、耕うん、鍛冶の作業のための最少の人数だけを向うに残すようにして現在すでに本所に収容しつつあります。
◎仲村栄春君 農村問題について御高見を承りたいと思います。現在の農村において耕地が放棄荒廃され生産が逐次減少しつつあることは知事がすでに申された通りであります、而もその荒廃の状況は僅かに二万七千町歩の中、一月足らずして一千町歩以上の荒廃振りを示しております。これに対して目下農林省及び政府経済部におきまして荒廃地の解消、食糧増産運動が取り上げられようと致しておりますことは時宜に適したこととてお喜び申上げますが然し現在の耕地放棄の状況を見ます時に、単なる従来行われましたところの精神的な呼びかけの運動や又単なる開墾助成策だけでは何んら効果をもたらすものでなく、或は却って農民の反感をこそ持たれるんぢゃないかと憂うる者であります、何故に農家は農業を捨てて他の職業に転換することを余儀なくされているか、耕せば耕す程余計に苦しい生活をする農家の状況、これに対して荒廃地の解消運動、食糧の増産運動はその真の因って来たところの原因を追究して真に農民をして納得せしめるところの具体的な方策を持って臨まなければならないと思います。農業不振の原因が又耕地放棄の原因が農業によって生活維持して行くことが出来ないという結論にあるということになった場合、荒廃地解消、食糧増産運動のかぎは農業生産品価格引上げとその安定維持が是非ともなされなければならないと思います。例えて申しましたら先月の議会においても本員は述べたのでありますが、食糧配給量の減配、これは一部に誤解を受けておりますが、輸入量の減少ではなく、現行配給量を減少せしめ、更に配給基準の改訂、これには耕作面積によるところの生産率決定の改正、現在の自給農家となっておりますのは九十坪乃至百二十坪が自給農家として決定されておりますが、本員の計算致しているところによると二百六十八坪なければ本当の自給農家としては生活出来ないと思うのであります。更に耕地面積中生産者の控除面積が考えらるべきであり、又島内の生産状況による生産状況に(ママ)比例したところの配給の量が考えられなくちゃならんものであり、又島内生産を圧迫するところの物資輸入の制限をも考えられなければいけないと思います。このようにして物価の安定を期し更に農村を育成するためには生産保護の見地から生産品の二重価格制を設けて政府が買上げることによってこれを一般に流す、又生産資材輸入の保護助成をもっと具体的に申上げると、生産品の輸入に対しては複数レートをとるか或は複数レートがどうしても経済現象から出来ないということになったら輸入保護金を与えるといったような行政面の助成がなされなければならないし、更に販路の開拓と農業技術の指導奨励、長期低利金融金庫の設置、農山道の復旧、新設、家畜防疫の強化、更に教育面から眺めました時中等学校及び成人学校における職業教育の徹底と農業教科書の検定をなさせる等、農村の根本施策と併せて開墾助成とが相併行して荒廃地の解消、食糧の増産運動のかぎがあるとおもうのでありますが、今なお当局が希んでおられるところの荒廃地解消運動に臨まれ具体的な方策を承りたいとおもいます。次は青果物の日本輸出及び現地軍部隊並に家族への販路の開拓に対しては深甚なる感謝を申上げます。就中現地軍への販路開拓は貿易外収入として大いに期待するものでありますが、現在現地軍への蔬菜の供給はいたって困難な現況に立ちいたっております、その所以は無菌栽培でなければならないということが大きな障害になっておりますが、この無菌栽培に要するための保浄(圃場カ)の検査がなされなければならないが現在保浄の検査が遅々として運ばないというのが大きな隘路になっております。この保浄の検査を早急にやっていただくように御努力をお願いしたいとおもいます。尚本年度予算にもすでに検査の費用なども計上せられておりますが、単に検査だけでなくして生産量増加、信用度の向上そういった意味から生産地の各市町村に消毒施設を設置して消毒検査の上、しかも生産者団体と軍とが直結取引が出来るように取計られたいと思います、出来得べくんば生産者団体相互間において生産計画、販路計画及び市場の割当等をも自発的な方向に指導していただきたいと思うのであります。これ等の点について当局の御見解を承りたいと思います。更にこの問題と関連致しまして厚生部とも関連する問題でありますが、現在農村が非常に憂えているものは便所の改善であります、生活の改善は便所とかまどからといわれているのでありますが、沖縄の現実の設備で早急に改善を要すべきものはこの便所の改善と思われます、戦後ドラム缶によって三段式に作られたのでありますが、最早ドラム缶は腐蝕をして後幾何もその余命はないのであります、今にしてこれが対策を考慮せられなければ衛生上由々しき問題が後暫くしてお互の上に来ることを私は憂るのであります、従いましてセメントによる規格三段式の改善便所を計画致されまして、これに対して助成方策を確立して早急に改善をして戴きたいとおもいます。次は農村金融の問題についてであります。去年の豚疫によりまして農村における養豚業の大部分は失敗、放棄して再起し得ない状態にあります、又家屋の現状は松材や拾集材料を使ったが故に白ありの害や、暴風の痛手にこれ亦余命幾何もなく速かなる改築と、補強が必要であります、これ等に対する畜産資金住家の建築補強資金が住民一般に要望せられておりまして近く農水金庫が設置になることを非常に喜び待っていたのでありますが、最近の情報によりますと農水金庫の設立はなかなか望めないんぢゃないかといったような言葉が今伝えられて農民が非常に失望状態にあるのであります、農水金庫の早急なる設立が出来ますように農林省並に民政当局に折衝方要望致します、又これまでの農林省並に民政府当局との折衝の経過を承りたいとおもいます、又復興金庫はその事務手続が極めて煩瑣でありまして一般的でなく一部の者のためにしか設けられていないという批判が夙に輿論化しているのであります、これに対して当局がとられたところの措置又琉銀当局が現在要望しておられるところの一定限度におけるところの琉銀限りでの貸付の見通しにつき御見解を承りたいとおもいます。次は工務部所管の問題でありますが道路工事の請負について伺います。最近に行われました路面復旧工事におきまする資材の請負についてであります、私の聞いた或る一路線についてでありますが、入札はわれわれの考え方から致しましたならば、最低入札者に落礼しなければならないとおもうですが、私の聞いた範囲内では例えば一路線最低入札は三万円であった、然し事実落札したのは六万五千円であった、私はその最低入札者に聞きました、六万五千円で落札したところの工事を君は果して三万円で果して出来る自信があったかと聞きましたら、私は過去において既にこの路線を経験している、三万円で十分にやれる自信があったからやった、最低入札であったが故に私には落札がなかった、どういう訳で最低入札者に落札がなかったのであるか又次は校舎建築の請負についてであります、校舎建築は本年度から市町村民の普通労務の寄附によって造られることが条件になっておったと思います。又市町村においても自分等の子供達のために出来る学校でありますが故に市町村民自らが造ることになった場合、その出来上りの美しさ、又条件に付されたところの普通労務の働き方、これ等の者に対して或る程度自分らの補償すべきところの普通労務の賃銀が或る程度のカバー出来るものだとおもうのであります。それらの点を勘案した場合、工務部直営の工事はその市町村に委託をやらせるか、或は市町村の指定する請負業者に随意に契約をして貰うかといったような方法が考えられるとおもうが、これらについて当局の御見解を承りたいと思います。次は厚生部関係でありますが、知事の政務報告の中に来る四月以降漸次医師の開業を許されると謳われたのでありますが医師の開業は現在の薬価高による医療高とに対して住民の保健並に住民相互間の相互扶助の観点から健康保険制度が痛感せられたのでありますが、現行保険制度に対するところの当局の御見解並にこれに対する準備をなされつつあるかどうか、又社会事業面において本年度予算に相当経費も計上せられ、又知事の政務報告の中にも不良児の矯正指導、其他不幸な人々のための職業補導の条項が盛られておりますが、それ以外に現在厚生園に入園しないで血縁者若しくはその他の者によって扶養せられているところの戦災孤児が相当あるものとおもわれますが、こういった哀れな子供達のために物心両面からするところの援助激励、これはその当の子供達は勿論のこと、扶養する扶養責任者にも大きな影響をもたらすものとおもうのであります。日本における児童福祉法みたような社会施策が施されて欲しいとおもいます。又戦災寡婦に対しては従来社会政策的な考慮が払われておらなかったとおもいますが、生活の困窮から面白からざる環境にまで陥る者が相当あるように聞かされております、こういった人々に対して授産施設と職業補導は社会施策として重大なる問題だとおもいます、これ等の問題に対する当局の御見解を承りたいとおもいます。
 次は教育上の問題になりますが、先程申上げたように農村における農業教育は食糧増産の重要性と糖業復興の重要性に鑑み将来大いに力をいたすべきだと思うのでありますが、現在の各学校における農業教育者の状況を見ました時後に続く者ありやとひそかに危懼の念を抱くものであります。従いまして幸い今年から琉大に師範科が置かれるということを聞いておりますが、この師範科の中に将来の農業教員たるべき将来の農業教育者を是非農業科として置いていただき農業教員の養成の急務を是非果させて戴きたいと思います。
 次は貿易庁の問題でありますが、お見えになっておられるか、どうか分りませんが、私が考えまするに現在輸入されるところの物資が私の考え方からすれば軍が沖縄においてこれこれの品物が必要でないか、いわゆる為替管理がなされているのぢゃないかとおもうのでありますが、真にわれわれが欲する、即ち沖縄復興に欲する資材を求めるためには、沖縄自体が吾々にはこれこれの品物が欲しいのだという為替管理委員会を作って軍に進言することを是非やっていただきたいとおもうのでありますが、知事はこれに対して御配慮していただいたか、或はこれまでどういう風にやっているか、貿易庁にお伺いしたいとおもいます。
○知事(平良辰雄君) 沢山の問題でよく覚えておりませんので極く重要な点について私から申し述べまして、後は各部長からお答え致します。
 増産運動は農産物の価格が相当行かなければ駄目だという考え方であります。それは無論価格が引合わなければ作らないのは当然であります、然しこの価格の問題を人為的にどうしてやるかという、価格維持ということは非常にむつかしい問題で現実に二重価格とかいう問題を取上げるならば配給制度にならない限り到底むつかしい。現在は一部は統制して一部は統制していない、要するに完全に統制すれば価格の維持も出来ます、或は輸入物資もこれこれといって出来る訳でありますが、それがない限りなかなかこれは困難なことであるし、又現在のように中途半端な沖縄の経済状態では、その操作がむつかしい、そういう点についてはわれわれも、色々考えているのでありますが、輸入物資の関係もありましょうし、色々輸出関係も考えなければいけませんが、現在の段階においては全部の統制をするといった考え方も持っていませんし、又全部統制を撤廃して自由にするという考えも持っておりません、その間どうして調節して行くかということが問題であるとおもうのであります。この点は十分研究してからでなければ簡単に即答は出来ないのであります、増産運動においてもそういう根本の原因をはっきりしなければ出来ないということは百も承知しております。併しながら国際情勢がどういう風に変化するかということが分りませんので一応われわれとしては非常時態勢ということも考えて増産運動を展開するという考え方も持っているのであります。なお配給の問題についてもお話があったが、これもその通りでありまして、配給の方法によっては農民の増産の意欲を剌戟する方法もあると考えるのであります、私から申し上げるのは大体この程度でありまして、今の配給関係であるとか、金融機関の問題とかについては農林省の総裁もお見えになっておりますから御答弁をお願いします。
○農林省総裁(富名腰尚友君)先ず最初に金融金庫の件でありますが、われわれの方は軍の農務関係の方を通じて折衝しているのでありますが、最近他の方面或は農務関係以外の方面からの話と致しまして、君達の金融金庫は望み薄だというような話が聞かされることもあるのでありますが、然しそれは向うの面から出た情報でありまして、私共が直接連絡をとっておりますところの農務関係におきましては、こういうことをいっているのであります。この問題が非常に必要であるということは軍もよく認めている、従って桑江の本部においては幹部の方は皆これを作るということは意見の一致を見ている、然しこの金が出る時期が明年度の予算によって編成されるものであるから予算が決らなければ、これは決定出来ない、構想と致しましては予算が決定される場合に、その中に今の資金が計上される、その資金が計上されたならば直ちに協同組合法が公布される、公布されれば直ちにそれによって今の資金の問題も信用協同組合もすぐ開設される運びになる、軍の方としては四月になるのを待っているのであって、その以前においては目新しい何らの情報も提供することは出来ない、こういうのが現在のわれわれの得ている最後の情報であります。併しながらこれは要は軍の内部の問題でありますので或はどういう変化が来ないとも限らない、こういう意味ではわれわれも心配しているところであります。従いまして最後の決定になる四月までには凡ゆる方法を持ちましてわれわれの意図を向うに伝える覚悟で今折衝をつづけております。でありますので出来得ましたならば民の全体の意向であるという意味を以て皆さんの方からも、そういう意思表示をしていただきますならばこの方は益々確実になり得るのぢゃないかと斯様に考えるのであります。次は配給の問題でありますが、現在の配給の方法が完全であるとはわれわれも信じておりません、これは改訂を要する点があるのぢゃないかということは気がついております。配給の方法並に基準が生産意欲を阻害しているという点も色々の情報を得ているのでありまして、ただ問題は配給基準というものを考えます場合に色々な困難なところがあるのであります。一つは今まで吾々の方から出しますところの数字的な材料が非常に不十分であるということ、不十分であるといいますのは各方面から出されます情報に食い違いがある、計算の基礎が各方面から出るのとは沖縄では正確な情報が取り難い、その面でいつもわれわれが軍に出しますところのお願が途中でその情報を立派にそろえてからということになりまして非常に行き悩んでいるのであります。今のものは適当であるかどうか、これは前に経済安定関係の方からの答申が現在の配給基準になっているが、今後はもう少し詳しく調べましてこれは全琉的に申しますと、地区によっても違いましょうし、場所によっても違うとおもいますから、そういう面を詳細に調べた上で研究して行きたいと考えているのであります、もう一つは今の配給基準の中に農家と非農家があって、農家に対する配給は極めて薄い、これはもう少し農家にも配給を増やさなければならんということに話は来るのでございますが、何しろ配給に使われますところのアメリカの予算並にそれによって買付しますところの、食糧の量は値段によっても違いますが、大体或る限界があるのであります、この限られた量をもって配給するのでありますので、或る一面に配給を増加すれば或る部面に対しては、これを減少しなければならない、こういう風に、この配給の問題に関しましては非常に関係が錯雑しております。それに関する資料も十分準備出来ないと軍を納得させることが出来ないのであります。その点につきましては農林省と致しましては食糧局が当事者でありますけれども、農政局においても、そういった農村の経済調査、その他の数字を目下募集中であります。それによって軍とも折衝したいと考えております。承るところによりますと本議会におかれても委員会等において色々御検討に相成っておられるように聞いておりますれば、若しそういう方面から材料でも私共に提供していただけば私等としても甚だ力強い感じがするのであります。どうぞよろしくお願い致します。
○経済部長(呉我春信君) ただ今の御質問にお答え致します。ただ今の御質問の要旨は農村振興についての各方面に亘る御意見に私も同感であります。従いまして政府において考えております方針を申上げたら御了解が行くかとおもいますので農村振興に対する方針を申上げたいとおもいます。農村振興の根本は何と申しましても生産の増強にあるとおもうのであります。従いまして、これを増強する方法を講ずるのがいわゆる予算化されるか、或はこれを実践して行くという問題になるだろうとおもいます、先ずその基本となるものは耕地であります、土地がなければ農業は絶対に不成立でありまして、兎角この耕地の問題が基本となりますのでこの耕地に対する色々な条件を良くするということが先ず考えられるのであります。従いまして群島政府と致しましては農業の基本施設を早く充実させて行く、尚これは農林省の関係もありますので土地改良開墾其の他灌漑、排水設備--農林省ですでに計画して額は一寸わすれましたが一億円内外の予算が盛られているのであります。この施策を完備致しますと同時に次に来るべきものは技術の問題ではないかと考えているのであります。この技術はいわゆる反当り収量の向上とか病害虫の排除或は暴風に対処する被害の軽減、色々広範に亘ってあるとおもいますが、こういう技術の充実養成等に力を入れてすでに予算にも計上しているのであります。次は組織の問題、これに就ては色々不安な点もあるというような只今のお話もあったが協同組合の設置に就ては軍首脳部でも賛成をして近く法令が制定される、こういう情報を聞いておるのであります。それと同時に農家経営の問題が待っておりますが今度の予算に於てはモデル式の各村を指定して、その農家経営の指導改善に努めたいとすでに予算の上にも之は現しているのであります。次は金融の問題でありますが、これ只今農林省総裁からお話がありましたので省くと致しまして、其次に来るべきものは御質問にありました販路の拡張の問題でありますが、これにつきましても予算面に各面に散らばっておりますが色々計画されております。御質問の中の野菜、これは軍部隊の納入用の野菜の奨励、これも予算内には二ヶ所に消毒場所、集荷所等の設置の計画が計上されておるのであります。豚舎改良につきましても、これは出来るだけ補助金によろうとおもいましたが、この資金が金庫化されるという点からしまして、こういう面で解決出来るんぢゃないかという見解から致しまして、こういう面で解決しようと斯様に考えているのであります。尚現在の琉銀内にあります復金についての話しがありましたが、これは非公式でありますが私先般総裁と会いました時に、政策委員会みたようなものを作って運営して行こうという意向のようであります、従いまして、其方面に於きまして色々の隘路が克服されるのぢゃないかと斯様に考えているのであります。貿易の問題でありますが、その後どうなっているかと云う御質問のように承っておりますが。
○仲村栄春君 為替割当委員会を民で持ってもらいたいということです。
○経済部長(呉我春信君) この点については貿易庁とも連絡を致しましてお答え致します。
○工務部長(渡嘉敷真睦君) 工務部関係の御質問に簡単にお答え致します。道路工事の資材請負に対する御質問のようでありましたが、何故この入札の際に最低額を設定してそれ以上の者に落札せしめたかという事につきましては、いささか技術面に関するようにおもっておりますので、課長の方に答弁を御願い致したいとおもうのであります。ただ茲に例をお取りになった六万五千円で落札したのが三万円で更に請負わしたというのは余りに数字の開きが大きいようでありますが。
○仲村栄春君 六万五千円で落した者の中に三万円の入札者もおったということであります、その最低には何故落札しなかったかということであります。
○工務部長(渡嘉敷真睦君) それでは私が質問を受継ぎまして、何故三万円の者に落札せずに六万五千円の者に落札させたかという事については工務部に入札の際に入札の最低額を設定してそれ以上に落札させるようにしておりますのでその点につきましては工務課長から御説明させることに致します。次は校舎建築におきまして、市町村長側に委託した方がいいんぢゃないか、何故そうさせなかったか、その理由は奈辺にあるかという御質問のように承ったのですが、御説の通り市町村側の絶大な御支援によりまして、と申しますのは労務の供出によりまして今校舎の建築が順調に運びつつある事をうれしくおもっています、予想以上に進捗している事は市町村側の絶大な御協力をおもいまして感謝致しておるのであります、何故これを市町村側に委嘱しなかったかというのは前に市町村側からも要求があったのでありますが、これを競争入札と致しましたのは群島組織法第六十七条に工事の請負並資材、食糧その他物件労力等の供給は競争入札に付さなければならない、但し急施を要する時、議会の同意を得た時はこの限りでないという但書がありますが、何と申しましても群島組織法の示すところが競争入札でなければならないと明示してありますので、われわれが行政を運営して行くには何と云っても群島組織法に拠らねばならんことは私から改めて申し上げるまでもないのでありまして、群島組織法に明示されているので、この精神に則って競争入札にしたというのが一つの理由であります。
 二の点は技術面から眺めて見て市町村に委せた場合に果して、あの煉瓦石積が、散石積が果してあの石造が設計通りの技術がうまくやりこなせるかという点については、いささか考慮を要する点があったのであります、こういった技術面から立派に出来るであらうということは、もう少し研究の余地がありまして、まづ競争入札に致した訳であります、もう一つは一月の何日だったか日は記憶しておりませんが、ロスケブ大佐と知事との連絡会議の席上に於てロスケブ大佐から校舎の請負については競争入札によるようにという内命がありましたので軍の内命も取入れて茲に競争入札に致した訳なのであります。ただ私はここに工事の請負については相当慎重に取扱って行かなければならんと考えておりますが故に四月の議会に工事請負条例というものを提案致しまして請負に対してはっきりした根拠を持ちたいという、こういう風に考えておるのであります。今建築課に於てこの案を立案中であります。以上は御質疑に対するお答でありますが、先に十五番議員(山城興起君)から大東の航路問題についての御質問があって長官から一応お答になりましたが関係部長から何か説明がある筈だと附加えておりますので、大東の航路問題についても簡単に私から附加えることに致します。大東島の航路問題を解決する根本的な考え方は三つありはしないかと考えておりますが、その一つは両大東が運輸組合を結成して船を持つことが一つの解決方策と思っております。次は海運会社で定期航路を持ってもらって、そして之に対する補助政策で、これを解決して行くのが第二の考え方と思うのであります。もう一つは群島政府自体が船を持って航路を解決するということも一つの考え方とおもっているのであります。
 こういう風に三つの根本的な考え方があるのでありますが、両大東に船を持たすと云うことも簡単に行きませんし、群島政府がすぐ船を持つということも簡単に行きませんので、今工務部として取っている考え方は海運会社に定期航路を開いて貰うというような考え方で進んでいるのであります、従いまして、両大東から猛烈な陳情、要望がありましたので、早速海運会社をお訪ね致しまして、この問題に就ての海運会社の御見解を伺い、尚どうしても両大東の死活にかかる重大問題の解決に尽力して貰いたいことをお話し合の結果、海運会社々長は単独で両大東へ航路を持つということは、いささか無理であらう、それで大島に行くついでにあれにまわすという事は可能であらうと云う風に考えられるのでこれを考究しよう、但しこれは欠損するのは、はっきり見えすいているので、これに対する群島政府の補助がいくらかなくてはならんとおもう、尚又これには食糧会社も今先長官から御答弁があった如く食糧会社もあそこに食糧を届けなければならぬ責任上、食糧会社としてもこれに対するいくらかの補助が考えられねばならんぢゃないかというお話があったので大東の航路問題については、今海運会社の方で研究中でありますので、何れはこれが目鼻がつくことを期待しているのであります。尚その足で食糧会社をお訪ね致しまして、問題について意見の交換を致したのでありますが、食糧会社と致しましても船がなくて非常に困っている、かと云って直ぐ毎月送るということも至難なことであるので群島政府に於て、そういったような考があるならば、これに対する援助をするということをはっきり申上げて置こうという、食糧会社長の御了解を得ているのであります。以上お答え致します。
○工務副部長(西銘順治君) 入札の件ですが、これは土木工事だけでなく、建築関係もそうなんですが資材、運送費、労力といったようなものから計算して、まず設定額というものを出すのです、そして工事の難易によりまして、その設定額から何パーセントかを引いたのが最低価格になる訳です、従ってそのわく内に於て最低額に近いのが落札する訳です、三万円は最低額より以下になっているので落札にならないのです。
○工務部建築課長(仲座久雄君)最低落札のお話がありましたが、最高額というのは設定額であります、最低というのはその工事の内容とか、条件とか色々考えまして、その最低額を決める訳であります、入札は一番最低額に近い方をやっているのであります、又設定額の倍も入札される方もおります、現在の状態は請負師が濫立しておりまして一番最低になった場合に危険があるようなこともありまして、その設定額を最高額と致しまして、その最低額を取りまして、そのわく内での最低に落札せしめることになっております。
○文教部長(屋良朝苗君) 新しい教育の思潮をそのまま押し進めて行きますというと、どうしても職業教育をやらなければいかん、従ってその思潮を支持して行くだけでなく、当然これを実践しなければならん問題であります。次に今沖縄群島政府では自立経済計画を樹てているのでありますけれども、それに教育の側から協力するという意味に於て職業教育をどうしても重視しなければならない、其一つとして農業教育は重視しなければいけないということになります。今職業教育については世論化している、議会でもその他の団体からも盛んに取り上げられて進言しているのであります。従ってその世論を実現する意味に於きましても我々には職業教育を重視しなければならない、今は機が誠に熟しているのであります。その時に偶々マ司令部から、ネルソン博士という農業の職業指導の権威が見えております、この人はアメリカから日本に派遣せられて過去三ヶ年間日本の職業教育を指導して来られた方であります。私達も昨年講習会に行った時に指導を受けたのでありますが、この人が沖縄の農業指導のために見えているのであります。そういう適当な時期に達しておりますので、当然我々としても御説の通り実業教育はどうしても振興しなければならんとおもうているのであります。然らばそれの対策は文教部としては職業教育を重視しなければならんという見通しから、指導主事制度を置いた時に農業指導主事を置いて盛んに活躍しているのであります。又ネルソン博士が見えておりますのでその人を講師として専門農業教育者、或は一般教育者に盛んに講習会を実施しつつあるのであります。次に学校設備或は実習費等を予算化してあります。これはどうしても頂けるだらうとおもいますが、予算化しておりまして、従来よりもこの点を重視して農業教育が出来るように計画しております。それから実業教員の再教育の講習会も予算化してあります。又ネルソン博士のお話によりまして、これはまだ決定してはおりませんが、アメリカに実業教員、農業教員を国民指導員としてやれということでありまして、それも今計画をしているのであります。こういう風にして色々農業教育振作に対する対策は今講じつつあるのであります。次に農業教員が手薄であるということでありましたが、農業の教員については高等学校或は農林学校の教員については、これは今琉大の農科三十名、これが後二ヶ年しますと卒業致しますのでこの方面からまわしてもらえるのぢゃないかと考えております。従って今琉大に師範科が設置されておりますが、それに農業科というお話があったが、それは考えておらない、その代り中等学校、初等学校の農業教員は幸い今年から南部、中部、北部の農林学校から卒業生が出たのでそれで補充出来るのであらうと考えております。然しそれも、又再教育の準備を進めておるのであります。それも予算化しております。又教員が退職するものが多いということは他の技術面の学校に於てもそうでありますが、待遇が悪いために皆他の社会に逃げて行くのであります。職を転じて行くのであります。これを引留めて落付いて農業或はその他の技術教育に専念せしめるためにはどうしても待遇を是正しなければならない、従来はそういうことは行われなかったのでありますけれども、こういう政策を以てしか引留めることが出来ませんので今の待遇を是正して行かなければならんだらうと考えております。教員養成の対策については以上のように考えております。
○厚生部長(宮城普吉君) いよいよ四月から医療の個人開業が許されますがそれに伴って保険制度、国民健康保険ああいったものを研究するような委員会を今月七日の医師会の代議員会で決定、組織して研究することになっております。開業問題につづいて当然起って来る問題ですから委員会を作って研究しております。それから便所の問題でありますが、これは関係衛生課の方では三段式便所の規格を決めているようであります。それに必要な材料、セメントとかいうことは又別に話合があるのぢゃないかと思います。相当大量要りますので、厚生園の園児でありますが、厚生園を住みよい気持のよい環境にしようと努力しております。又地方でそういう該当する孤児がいる場合は、地方駐在の厚生員が市町村長とも相談の上入園を希望して参りましたら逐次入園させております。厚生園の建築も従来のコンセットはまづいので、新築しようという計画を樹てております。盲学校、聾唖学校とかの職業学校これも計画しております。それから戦争未亡人の授産ということでありますが、これは従来ララの品物をミシンの仕事を教えるためにララの品物を送って、それを材料にして色々な物を作って、それを売っているのであります。又外に幼児健康相談所がありました、ああいう風な機構で従来はやっておりました。又これは別にその外にキリスト教会、カトリック教会、こういう方面でも洋裁を教える、ああいう風な民間の事業があります。又キリスト教会の婦人会で来年度位から託児所の設立も計画しているようであります。社会的にも宗教団体がそういうことをやりつつあります。社会事業方面として私達もそういった色々の計画をもっております。
○厚生部社会事業課長(嵩原久雄(男カ)君) 部長の方から大体御説明がありましたが尚、補足的に申し上げます。孤児は約一千名おりまして、寡婦が約二千名おります、それから盲聾唖が約一千名であります。それに浮浪児の数は未だ十分キャッチしておりませんが、相当の数に上ります。尚身体障害者(盲聾、(ママ)唖以外)がこれも数千名おります。そういったものの、福祉をどうするかという風な問題が現在の社会事業としての大きな問題になっております。そういったもので極端に悪いものを施設に収容する現在孤児と身よりのない老人を厚生園に送っているのであります。今度は盲聾唖の福祉については盲聾唖学校を作ってこれを収容しようと思っております。尚浮浪児については教護院を作ってこれを収容しようと思っております。尚身体障害者に対しては義手、義足等を与え、職業の補導なども計画しております。寄附金等も沢山集まっております。ところが施設面に収容するのは一部でありまして、その大部分は地方に散らばっているのであります。その福祉はどういう風にしてこれをやるかといいますと、各市町村に一名乃至二名の厚生員を配置しておりますが、その厚生員によって子供の素質、知能、こういったものを十分に考慮し又その環境とにらみ合せてその子供を立派に育て、そして立派な社会の一員にするということは大きな国家の責任であるという風に考えまして十分研究して福祉をはかって日夜の奮闘を厚生員はつづけているのでありますが、こういった社会事業面の仕事は制度の問題でなくて、結局人の問題となります、そのためには厚生員の資質をどうしても向上しなければならんということになりまして、日本に全厚生員を派遣し講習を受けさせる計画を着々と進めております。
 尚寡婦の職業補導の件でありますが、これは先程部長さんのおっしゃった通りでありまして、その外に厚生員がその所によって職業の補導斡旋をするということもやっております。附加えて申しますが指導面はこうでありますが現在の食生活、衣の生活はどうなっているかと申しますと、去った十一月以降は沖縄住民である限り最低の生活は一切完全に保障されているのであります。これは例の現金救済によって社会事業課で綿密な検討を加えまして、その生活を保障しているのであります。そして脱落者があれば必ず厚生員を通じて政府に申込む権利があるのであります。それを綿密に調べて生活を保障しているのであります。
◎新里銀三君 総務関係であります。四知事会談に於て琉球中央政府の構想が出来ておりますが、その構想をお伺いしたいとおもいます。
 労働組合法が出来るようになっているが、もう出来ているのか、どうか、労務傷害賠償金は一九四九年七月から百六十五件未払になっているのでありますが、これについて早く受取って貰うよう特に努力してもらいたい、それの対策をやっているかどうか承りたい。財政方面であります、本年度の民負担の予算が三億七千百三十七万三千四百八十円九十七銭であります。これを全住民五十九万人と仮定した場合に一人平均約六百二十九円五十銭、約六百三十円であります。一戸平均五人として一戸当り三千百五十円になります、それに地方税が一戸平均四百円位行くと思います。尚この中央税は一戸平均三千百五十円でありますから月平均にすると二百十六円宛中央税を払う事になっております。尚地方税は学校後援会費、幼稚園費、体育運動の場合、組合、村、地区のために相当の出費をしております。これについては負担過重だと思いますが、政府はこれを妥当な担税能力だとおもわれるか御見解を承りたい。それから農務関係でありますが南部製糖が発足することになって、夏植、秋植を奨励するようになったのでありますが、それに対しまして補助金制度を取って補正するお考があるか、その辺を伺いたい。荒廃地皆無運動を徹底的にやってもらうよう要望し、又ベ(ビカ)ートラー副長官も赴任して最初の言葉に「何故耕やさないか」と云われている、これを徹底するには個人と個人、部落と部落、地区と地区を競争させて賞品をくれる位までやってもらいたい、それについては如何なる方法を取っておられるか、それを伺いたい。
 それから青物の輸出であります、今度沖園連側から二百ポンドの青物を大阪の業者に送るようになっております、然しその条件が委託販売であります。青物を委託販売された場合、今の船あし、今の情勢から見まして、腐った場合には一銭も取れないということになるので是非委託販売を廃止して直売していただきたいとおもいます。然も委託先は宮城桃幸氏であるように聞いております。船便が永かったため途中で腐った、他府県に来るまでに季節が外れたという風にいくらでも暴利をむさぼることが出来るし、反面委託販売された場合は、農民は折角の自分の予算が狂ってしまうのでありまして、非常に不利である、これは宮城氏一人に委託させないで自由に日本の商人と手を取って沖縄農産物を日本商人が直接買っていただくよう特に交渉していただきたい。この委託販売についてはどこまでも、それで押し通されるのですか又は直接販売される意思があるかどうか、それについて承りたい。
 商務関係で度量衡器検定所設置を予算にも計上されているが出来るだけ早くこれを設置してもらいたいとおもいます。本員は先の議会にも申し上げましたが、六十五斤の漆喰を百斤の計算で売っております、塩八合を一升として売っております。又秤も購入用のと販売用の秤がありますので何よりも早急に設置して貰って我々需要者を余り絞らんようにお願いしたい。工務関係であるが学校建築については百十二棟が契約になって順調に行っているということであるが私の聞いたところでは杉板だけ配給になってセメントも木材(ケタ組であります)も配給がないために非常に困っているということであり、今のお話と違っているがそういう事実はないかどうかお伺いしたい。簡易水道は九ヶ所設置を予定しているというが何処々々であるか、これは必ず民政府の予算でやるべきであるかどうか、市町村でやるべきであるかどうか又その収入も見積っているのか、どうか。バスの公営であります。軍は出来ないことを新聞に発表しておりますが知事はあくまでもやり通すということをおっしゃっています、その成算があるかないか、軍はそれを認めそうであるかどうか、更に電気事業、水道こういう面に於ては那覇市とかかわり合っているのであります。新聞紙上報ずるところによれば総ての公益事業を民政府が全部公営にするようになっておりますが、海運事業もやってもらいたい、海運事業も受取ってやってもらいたいと希望する者であります。若しこれを全部やるのであれば政府は事業団体ではないとおもいますので、どこまでも行政運営機関でありますが故にこういう事業は政府自体がやらずに、どこまでも個人企業一本にしてもらって、個人自由企業をさせて、之を育成助長しまして、そして之をして大いに儲けさせて、その儲かったものについて課税して群島政府の収入にするという方法が最も賢明ではないかとおもうのであります。総ての事業を公営にすることは或は共産主義的気味があるやに考えられます。民主自由国家においては個人の事業をどこまでも育成して、そしてこれに対して課税する事が建前になっております。文教部関係、過去の講習会や会議或は地区教育委員(会のカ)の運営費なんかがこれまで予算に計上されてなかったために運営上支障を来たしていましたが、今度の予算にこれが計上されたことは大変よい考でありますが、この予算に計上されただけで講習会費、出張費、教育委員(会のカ)の費用が十分であるとおもわれるかどうか。厚生部関係、自由開業が四月からなりますと薬価は官営同様に維持出来ますか、入院料治療費の如きも官営同様に維持出来ますか、又自由開業は、そういうものを自由に取るのでありますか、その辺を一つ、もう一つは無医村のないように是非医者の配置をしていただいて田舎の農村も心配ないように御取計いをしていただきたい、これについての御計画、又今さき社会事業課長からのお話があった盲唖学校は軍の補助を以て来年度から作るようなことでありますが、こういうものは出来るだけ民予算に最初計上してそして作った後に軍から補助でも貰うような方法が却っていいんぢゃないかとおもいます。
 法務関係、治安裁判所で不服で中央巡回に送った事件は出来るだけ早急にやってもらいたい、尚上級裁判所が出来ましたら巡回から上訴した事件も早急に解決してもらいたいとおもう、そういう事件が沢山あることを聞かされ関係者からわれわれに色々話がありますので早急にこれをやっていただきたいと希望するものであります。なお一つは厳罰主義を以て臨んでもらいたい、人を殺して、成程犯罪の動機にもよりますが、一年の懲役二年の執行猶予、交通事故でもその通りであります。窃盗罪の如きも懲役二年も三年もやりますが人を殺して或は交通事故によって人を傷害した場合、故意に殺害した場合でも、罪が軽いようにおもいます事実があります。米人を殺してそして執行猶予になっている。然も警察に留置中は巡査と一緒にあっちこっちを歩いている犯人がおります。これは現に私が見ております、これは米人を殺したから必ず銃殺ではないかとおもうのですが一年の懲役で二年の執行猶予となっている、こういう者は情状をもう少し御検討になって実情を参考人からも、もう少し聴いてもらって厳重に処分してもらいたいと希望するものであります。それから警察関係でありますが、委員長さんは先だっての議会で人権を尊重する拷問をしない様に民主的に取扱うとおっしゃっていましたが、民主的に取扱い人権を尊重するにはどうしても科学的捜査が必要であります。科学的捜査がなくて普通の捜査でやった場合には必ず焦って拷問が発生するのであります、それで科学的捜査にはどうしても写真機、指紋器、その他鑑識に関するところの器具、機械を購入致しまして科学的に捜査をしなければいけませんが本予算にはこれがないようにおもわれます。警察当局と致しましては、そういうような器具機械を備えないで普通の捜査によって人権の尊重が十分に出来るかどうか、又科学的捜査が必要でないのかどうか、又予算も削られたのかどうか、その辺を一つききたい。尚退職金問題について警察の警視の退職問題について投書もあるし話も聞かされておりますが、その退職についてもお聞きしたいとおもいます。
○議長(知花高直君) 暫時休憩致します。
  午後二時三十二分休憩

  午後二時三十六分開議
○議長(知花高直君) 開会致します。
○知事(平良辰雄君) 先程の質問の中で公営事業をするということは共産主義であるとききましたが、公共事業をやることが共産主義であり、群島政府が公営事業をやれば群島政府は共産主義であるという風に感じましたが、その辺をもう一ぺんいって戴きたい。
○新里銀三君 民政府が共産主義であるといったのではなく、個人事業に重点をおいてそしてこれらを育成助長し、それから税金を取るという方法でやった方がよい、共産主義国家においてはすべての事業が公営であるといったのです。
○知事(平良辰雄君) 公共事業を公営にするということは公共団体というものは公共の事業営造物をどうしても管理して行かなければならん義務があると思う。これは必ずしも社会主義的国家でなく、自由主義国家においてもそうである。世界中どこの国でも公共の用に供するという一つの営造物という理念の下にこれが公共団体でやるのが当然でありまして、それをやったからといって社会主義であり共産主義であるということは絶対にないと考えるのであります。それからバスの経営については軍の方はいまのところ群島政府がやって一向差支えないけれども、一応は民に移した以上これを圧迫するということになるから工合が悪いというだけであって、公共事業として軍は群島組織法によって認めている。従って今の御質問のようなものは非常にピントが外れているようにおもいますので、その点は十分御了解を得ておきたいとおもう。なお共営(ママ)バスについてはわれわれとしましては矢張り全般的の理由から今の業者を保護しつつ、それを圧迫せずに両方の長所を取り入れてやった方が人民の福利になるという見地から更にもう一ぺん推し進めてみたいとおもって案を出している、その点も御了承を願いたい。それから中央政府の構想であるが、これは四知事会談では新聞で御覧の通りの意見を出しておりますが、その後はわれわれも新聞によって拝見するだけでありまして、われわれの意見の通りにはあの新聞はなっていないようにおもっているのであります。なおその他の点については各部長から適切な答弁があるとおもいます。
○経済部長(呉我春信君) 南部製糖に対するキビ作に対して、補助金を出して奨励するかという御質問でありましたがこれは、補助金をやって奨励は致しておりません。この砂糖を造ることによって生産意欲を向上し、従って荒地の解消の面まで及ぶのではないかと、かように予想しているのであります、今のところ補助金を出して奨励は致しておりません。荒廃地解消運動に対しては部落間の競争心理を利用してはどうかという御質問でありましたが結構な御意見でそういう処置をとりたいとおもっております。青物の直売をやれという御質問でありますが、現在委託販売は致しておりませんので園芸組合連合会が大阪の宮城桃幸氏を代理人としてやっているが、ただ今のところ一番適切ぢゃないかと考えているのであります、と申しますのは現在の貿易が非常にメクラ貿易の形態を取っておりまして向うにおける相場がピンと来ない。どうしてもその情報を得るのに手間取る、それよりは向うに代表者がおりましてこの青物は戦前におきまして神戸、大阪、名古屋、東京まで行っておりましたので向うの当日の相場によって有利に販売出来るということがただ今採っている処置でありまして、現在とっている処置から致しますれば、いろいろ諸経費を差引きまして大体二円見当の手取を予想しているのであります。戦前においては大体一銭、これを現在の物価水準に引上げてやっと一円そこらのものだと記憶しております、従いまして戦前よりも現在の二円という手取は当時に比較しましてやや有利ぢゃないかと、こう考えております。なお度量衡の点につきましてはすぐ、この予算が成立致しますと解決したいと思います。
○財政部長(宮里勝君) ただ今の財政部に対する御質問は三億七千万円の収入を見込んであるが、これが負担しきるかという御質問のように承ったのですが、三億七千万円の中には八千三百万円の税外収入を見込んであって、税収入は約二億八千万円余となっております。税についてみた場合前年度に比し二六%の増になっておりますが、税収入におきましては現在沖縄を援助しつつあるアメリカにおいても増税を見込まれている状況でありまして、今民政府においても出来るだけ税制を検討して引上げるようにという意見もありますので、もしこれが出来なかった場合には将来援助の方を或は削除するかも知れない、こういう風な指令もあるのでありますが、この税の負担をしきるか、しきれないかということは、これは国民所得に対する比率をみて決定するように各国の見方がなっているようであります。現在国民所得については適確に調査した資料はありませんが、最近の経済綜合計画に関しまする調査によりますと五十億円と見込まれています。なお税務署において各自から申告して来たものを課税所得からみた場合少くとも五十億円程度見込まれています。これから類推して行った場合にはこれの約七〇%程度になるのでありまして、この程度の負担はしきると私は考えております、なお又この課税に当りましては必ずしも一般住民から平均して取るというのではなくて、予算書に掲げてある各収入面を御覧になれば判明するとおもいますが、主に所得税に中心をおいて所得の多い方から課税する、そういう風に仕組んであります、先般税法改正当時も申上げたが税体系としてはむしろ税率の引下げでありまして、今まで片寄っていたところの課税の方法を改めまして全般的に広く税金を徴収する、そして比較的奢侈的方面においては重く、必要に対しては軽く課税する、所得もそうである、一般的のものは引下げてあるので個人個人の負担はかえって軽くなるのぢゃないかと考えております。そういう風に全般的に課税して、計上してあるところの税収入を見込んでいるのであります。
○工務部長(渡嘉敷真睦君) ただ今事業経営につきまして相当鋭く御質問があったのでありますが、事業公営に対する私の見解と申しますか、態度をはっきりしておきたいとおもいます。私は市町村長の経験がありまするがために市町村住民の担税力は実にこれ以上の担税力はないのぢゃないかと非常に税に対して苦しんでいるような実状をよく分っているのであります。従いまして、何とかして税外収入を得るのでなければ農村民は非常に担税に困るであろうというような考え方が、こうしたバス公営を企画し、電気事業を企画しなお又今泊南岸の埋立事業の計画を致しているのであります。即ちより多数の幸福ということを念頭におきましてこういった事業の公営を計画しているのでありますが、それに対して今長官からおっしゃったようにいささかも共産的な見解を持ってそういう計画をするのでなくて、どこまでも多数の幸福ということが念頭にあるということを御了承願いたいと思うのであります。尚ここに私今問題になっておりまする泊南岸の埋立の申請をしたことをお話し申上げると、なお私の行政態度がはっきりするとおもいますので泊南岸の埋立申請をしたことをお話し申上げることに致します。国土計画の立場からどうしても埋立事業は知事の権限にぞくしなければならないと考えております。その国土計画の中の私の担当する部面が埋立事業ではないかと計画したのでありますが、其の外耕地整理、地区設置或は治水、治山の如きは他の部に属するようでありますので、私が国土計画の立場からこの問題を眺めた場合、これは実に重要な問題だと考えておりますので、こういった立場から、どうしても沖縄はあちら、こちらの埋立事業をやらなければならんと考えております。従いまして自立計画の三ヶ年計画の中にこういった埋立事業を相当計画致してあるのであります、これが考え方の一つであります、その次は、今申上げた様に貧弱な沖縄の財源を充当するためには、どうしてもこういった事業を計画しなければならんのぢゃないかと考えております、殊にあれだけの道路が開設されておりますのでこの道路の維持費たるや将来実に沖縄の財政上の重要問題になりはしないかと考えております。従いまして、ここに道路維持の恒久財源を見つけるということは何んとしても担当している部が考えるべきものではないかとおもいまして将来の道路維持費の恒久的財源という見地から之を取上げた訳であります。なほ泊港が将来民貿易の中心になるやに聞いておるのでありますが、そうした場合これを中心とした色々の施設がなされるとおもうが、その施設の用地は当然知事が考えて行くべきものぢゃないかというのが第三の理由であります。それから只今の長官からの御答弁があったのでありますが、群島組織法の中にはっきりしているのであります。即ち第二条の第二項F項(ママ)に公有水面埋立事業其他の土地改良事業を施行すること、他の条項にある如く施行する権利を規定すということでなくして、ここには群島組織法の精神ははっきり埋立事業は群島政府に於て施行さるべきだと明記されているのであります、それで私はこうした国土計画に属するようなことが知事にも権限があり市町村長にも権限があるということは法規に暗い私にはどうしても考えられないのであります。若し市町村長に、知事の権限を離れて、知事の認可を離れて公有水面埋立の権利があるとするならば、何か私には分らないものがあるのであります。この前の会合の際にこういうことを申上げたら、然らば市町村には市町村内道路も設定することも出来ぬのか、という反問もありましたが、私が考えまするのに、市町村内の道路の設定と公有水面埋立事業は何かしら質の異ったものと感ずるのであります。公有水面埋立はどうしても知事の権限によってのみ施行さるべきものであると考えておりますので、那覇市からこの点に対して色々御計画があるということは聞いておりますが、群島組織法の立法の精神に則ってここに申請を致しておるのであります。
 次は公営バスにつきましては今先長官から御答弁がありましたので抜くことに致しまして、電気事業に対しましては三ヶ年自立経済計画の中に織込んでありますが、あの時にも御説明申上げたのでありますが電気事業に対しましては公営で独占しようという気持は持ってないのであります。日本に於けるが如く発電と送電は政府が持ち、配電は民若くは市町村が担当しているようであるが、こういうことも考えられると私は思っております。ただ私はここに沖縄住民が一体となって考えて行かなければならん点は電気の基本施設は軍の援助によってやるということがねらいでなければならんと考えているのであります。軍は過去に六万キロワットの発電所を造って余剰電力を民にやらうという際にそれを争ったりするということはどうかと思う。一体となって沖縄の電気基本施設はどうあるべきかということで一体となって余剰電力を貰い受ける、軍の援助によって基本施設をやって行くことが望ましい態度ではないかという風に考えているのであります。それから次は簡易水道に対する御質問であるが、これは予算に計上してありますので、その予算の中に個所をあげてありますのでその時に詳しく御説明申上げたいと思っております。尚ここで一寸申上げたい点は復興費の使途のねらいはどこまでも復旧に使わるべきものだという工務部長としての態度を持っておりますので簡易水道があちらこちら戦前あったが壊されている、簡易水道はこの復旧費によって復旧して行くのが常道ではないかと思っています。何れ予算の数字に触れると思いますのでその時に詳しく御説明申上げます。次は学校建築の問題でありますが、これは基礎工事が相当順調に進んでいるような報告を受けておりますので今おっしゃるような停頓状態にあるやに御注意がありましたので、この点につきましては更によく現地を調査致したいと思っております。尚今先建築課長から資材が少い古いからというようなことがありますので、この点につきましては建築課長からお答え致すことに致します。
○知事室事務局長(宮城寛雄君)さっき中央政府の構想に就て御質問がありまして、それに対し長官から簡単に御説明がありましたが、その内容を私の方から補足致します。四知事会談では群島組織法に関する問題、市町村制の問題、其他にも農林省の助成金とか或は旅行の開放とか色々の問題に就て議題があったのでありますが、其時に中央政府に関しまして四知事の間に纏ったものは次のようなものであったのであります。その細目に亘っての検討はなかったのでありますが、それは首長と権限、財政議会に関しまして大体次のような意見の一致を見たのであります。首長としての琉球知事は暫くの間公選とせず中央議会議員の選挙により選ぶ、議会は中央議会の議員を三十名とし、選挙区は大選挙区とせず人口割により中選挙区制とする、権限に就ては群島組織法第二条の規定する群島政府の権限はそのままとし第三条の規定する事務を中央政府の権限にする、司法事務については全面的にこれを中央政府に移す、税制は所得税、法人税、酒税、物品税等の如き現に群島政府の税として存在するものは群島政府税として保有し、中央税としては関税、印紙税、鉱区税、有価証券税、有価証券移転税、電話加入税、海上交通税等を採用する、これだけであります。これにつきましては民政官府のロスケブ大佐を通じまして副長官宛にその嘆願、議決の内容が行っているのでありますが、ロスケブ大佐からはこれに対しては近くそれに対して考慮を払っているから何らかの回答があるだらうという意味の文書が参っているのであります。
○建築課長(仲座久雄君) 学校建築に関する資材の問題でありますが、一月に一万三千六百余トン入っておりましたが、その後住宅公社が使いまして、今全部学校建築に持って行っておりません。それで残っているのが大きいものでありまして、これを製材して使うように軍から指示されていますが、これは橋に使うものでありますので、出来ませんが、近い中に四百万ボードフィート入って来るから、それまで現在のままでやり、セメントも二月に四万袋入って来たが、その時の保有量が八万袋あったのですが、それも住宅公社に大分使われて現在学校建築に使っているのは約一万五千袋であります。幸い学校建築は石と煉瓦と粟石でありますので現在のところ壁を積んで順調に進んでいます。
○厚生部長(宮城普吉君) 医療費の問題でありますが、これは現在の公営病院としての医療費でありまして四月から自由開業を許す、そして逐次個人開業に移って行くとしましても、医師、歯科医全部が開業の形に移るまでには相当の日時がかかります、それに又新しく開放病院が出来ますので、それが出来上って、それに移管する間は地区病院、三病院はそのまま残るのであります。この地区病院、三病院の薬価は現在の四日までの薬価で行くことになります、開業医の方はそれよりもいくらか高いかも知れません、地域によって或は住民の負担能力如何によっては差異も出て来ると思います。無医村の問題でありますが、之も努めて解消したいという考をもっております。成る可くそういう線に沿うて仕事を進めて行きたいと思っております。無医村といっても本島内の無医村よりも離島の無医村に重きを置いて考えて行きたいと思っております。盲唖学校の問題、これは建築費は軍の負担であとは若干民が持ち、人件費なんかは民の負担、いくらかは軍の負担になっております。
○文教部長(屋良朝苗君) 先程、講習会費、研究会費、教育委員会費の費用が十分であるかという非常な好意的な御質問であって感謝しているのでありますが、今までこういったような費用は全然ありませんでしたので、それに比べますと今度は幾分でも計上出来たのが、いいと思っておりますが、何しろやり繰り算段の財政の中からの予算でありますから決して十分ではありませんが、あの予算が通れば合理的に使用致しまして十分活発に運営出来るだろうという風に考えております。
○法務部長(知念朝功君) 厳罰主義についてでありますが、これは具体的事件によっては厳罰にしなければいかん場合もあるし、一概には申せませんが段々そういう方針に移りつつあるということを申上げておきます。
○警察本部長(仲村兼信君) 十六番議員から鑑識の問題についての質問があったのでありますが、五十二年度の予算に計上してもらってあります、予算書を御覧になっていただけばよく分ると思いますが、今後は専ら科学的な捜査のみによりましてやって行きたいということを考えております、なお山川警視等四警視に対する退職金の問題について紛争があるやに聴きましたが群島組織法が出来まして、警察が根本的に変りまして、機構の改革をしなければならなくなったために改革に伴って四名の方に後進の途を拓いてもらったのであります。大変よくやってもらったのでありますけれども、止むを得ず後進に途を拓いていただいた。それに対して現在は生活の保障が全然ない、首を切られても退職金というものはいくらもない、これは群島政府から出します三ヶ月分、これだけでは何にもならないということを残った警察官が考えまして、これは辞めた先輩に対して残る者が若干の記念品を出すべきだという話が持ち上って、その話が持ち上ったのが一月二十日の晩であります。夜分から召集して辞令を差上げたのであります、その時に集った人の中からそういう話があって、記念品を出すべきではないかということで、それでは考慮しようということで二月九日の署長会議で一月二十日の晩に話合をした、記念品の問題について、一般に呼びかけて見たところが金額も一人から百分の二程度出すことにした、これは辞めた者に対する一つのむしろ義務とでもいっていいんぢゃないかと思うのであります。二月九日の会議で話合って一応本署に帰って相談をした訳であります。各署とも、当然だむしろ金額は少な過ぎるぢゃないかというところまで話が出たそうであります。それで本月の二日に署長会議の時にその情報を持寄ってそれを決定したのでありまして、今色々と取沙汰されております、強制的に百分の二宛を全警察官から取り上げたということは、全然違うのであります。事前に三回に亘って打合せて各警察官に相談をして、そして納得を得た上で百分の二宛を出し合うということになったのでありまして決して強制的に差引いたということは全然ないのであります。その辺誤解のないように御了承をお願いしたいのであります。
○総務部長(幸地新蔵君) 十六番議員の御質問に対しましてお答え致します。労務賠償の問題についてでありますが、この点は今回の知事の政務報告の中にも詳しく申述べてある通りで労務法規に対しましては、今鋭意研究しております。近くこれを具体化して皆さん方の御協議をお願いしたいと思っているところであります。労務賠償の問題についてはなかなかラチがあきませんのでありますが、傷害を受けた者につきましては相当苦しんでいるだろうと思いまして、今労務委員の方々にお願い致しまして、その後の生活状態はどうなっているかということを具さに調査致しております。
 それがまとまりましたらこういう風にこの傷害を受けた家庭は困っているのだということを実例を以て軍に訴え一日も早く賠償の問題を解決してもらおうと思っております。幸にして軍の労務に対しては今まで私達の手が届かん状態であったのであります。と申しますのは軍労務は軍労務課で掌握しておりまして、民労務課でタッチ出来ない状態になっている、これを私達はどうにかして、私達の方に一元化出来ないものだろうか、という風に折衝を重ねて参りましたところ、今回民労務課の方に予算を持てということになりまして今回の予算に計上してあります。この軍労務が民労務課に移って来て一元化すると、こういう問題も解決して行けるんぢゃないかという風に思っております。今こういう面に対しましては相当努力を致しまして研究を致しておりますから御了承を願います。
◎新城徳助君 厚生部長に要望致します。病院及び診療所の医療器具機械及び薬品が欠乏のために大変困っております。これは私達の監査の結果に見受けたところでありますが、例えば顕微鏡が診療所に設置されておらんというのが沢山あります。尚初等学校には顕微鏡が配付されておるが、診療所にないという実例もあります。薬品も今まで使用して来たものは主としてスポイル品であった、今でも麻薬以外には配給はないということであります。然るに一般には薬品が相当に出まわって盛んに売買されておりますが、もうすでに優秀な薬品も相当来ているそうでありますから、病院や診療所等では医官の私物として患者の治療に相当使用されているが、厚生部でも、これを需められまして、一手に配給して貰いたい、そうでない限り病院の会計というものも誠にやり難いのであります。病院の金額と会計に納った金額が符合しないということがあります。そういうことは私物の薬品を使っていることによって、これが複雑化されて来るのであります。今後どうしても厚生部の方で一手にまとめて一律に配給してもらいたいと要望致します。医療機械が備わっていないために地方の病院では診断を誤ったり、適薬がないために折角医官が努力しても仕方がない場合も多々あるようであります。保健上重大問題でありますから、今後この点については十分に考慮してもらいたい。以下は知事に要望致します。工務部の新旧部長の引継の時に軍資材課が民工務部から代行を取上げられております、これを更に今回一部の人々の間に組織された株式会社に変更されております。工務部は多額の金を使って沖縄の復興に重大な役割をつとめて来たのでありますが、私達の見るところでは工務部では土木事業以外には目立った復興はしていない。殊に住宅復興に対しては誠に遺憾の極みであります。これから本格的に住宅復興の線に沿うて着々とやって行かなければならない状況にありますが、その機構が一部の手に握られたということは誠に不安であります。かかる重大な性格を持つ会社は海運会社や食糧会社のように一般公募にしてもらいたい。若しくはこれが出来なかったならば復興倉庫の会社が独占的にならないように販売の方は別の途を選んでもらいたい、知事に於て大いに考えてもらいたいと思うのであります、それから工務部長にお願い致します。日本から切込資材が輸入可能といわれておりまするが、これについて工務部長が知っておられる範囲内で御答え願いたいと思うのであります。次にこれも知事にお願いしたいと思います。沖縄財団が日本の方に出来ております。これが沖縄出身の戦歿軍人、軍属、遺家族の扶助料として相当の金を貰ったようであります。ところが本人達の手にはまだ入っていない、それは正式にはまだ支払が出来ないということでそのままになっているそうであります。これが速かに解決出来るように同じ日本軍人として戦って来た者が沖縄だけ継子扱いされるということは非常に残念でありますから、その解決を速かにやっていただきたいことを希望致します。大東島の大東糖業株式会社について要望致します。最近新聞紙上に見ますと、大日本製糖株式会社が琉球民政府より大東島の旧日本製糖の土地所有権が認定され、企業計画書を提出せよという指令が来ているそうであります。大東糖業株式会社と致しましては少からず危惧の念を抱いております。同時に地元たる南大東島に於ても動揺しているようであり、従って同会社の事業運営上蹉跌は来はせんかと思うのであります。右に関しまして、群島政府としては十分御研究の上成可く沖縄の自立経済の見地からも、これを是非成功さして戴きたいとお願い致します。今先も埋立問題がありましたが私は全面的に賛意を表明します。
 那覇市でもそういうことをやりたいというので両方でもみ合っているような新聞を見て感じますが、かかることは今後も度々現れることと思いますからして、この際政府と致しましては最も強力にこれを主張してもらいたいと思います。成可くならばこの問題は建議案としてこういう事業は是非政府でやるという確乎たる趣旨を表明して臨みたいと思います。
○知事(平良辰雄君) 資材倉庫の件ですが最初群島政府が出来ました時にこれを引継しようとしたら、それは軍の関係だから引継は出来ないというので我々は之は事業執行上どうしても管理は工務部がやるのが適当であるということを極力申上げましたが、従来の弊害も認めるからそれは軍が直営するという話でありました。その後又元の資材科(課カ)の職員がそれを会社経営にしてやるというようなことに相成っているのであります。元々アメリカ政府の方では自由企業にするということが根本のようでありますけれども実際面になりますと、ややもすると自由企業の名に隠れて独占をさせるような傾向もあると私は考えているのであります。それは例えば自由企業といっても、食糧会社、海運会社といったものに特に軍の設備を貸して大きな援助を与えておいてそして、それを自由企業であり、希望者があれば許してやるといったところがとてもそういうものとは競争出来ない、そういった自由企業というものは意味をなさないのでないかという考を持っている、而し乍らそういうことであるならば、これを緩和するためにはその会社自体の組織がもう少し一般的になれば独占資本にならないということも考えている。そういう訳で私は農林省時代に食糧会社を軍から会社を作らすと云うことになれば、どうしても、こうしなければいかんというので極力全般的に全住民に公平に配給されるように株を町村にも持たす、組合にも持たすといったようなやり方でやらしたので、そういった点に於ては食糧会社は緩和されていると思うのであります。たとえ他の事業がこれと競争出来ないまでもそれは資本の独占であるとは云えないので今の状態としては、そういうような方向に行くより外にないとおもっておりまして、海運会社も無論そういう風にしてやって来たのでありますが、この資材の問題については急に軍からやられて我々の方としては手の着けようもないのでありますけれども、而し乍らこれは自由企業である以上、我々としては別に拒否することも不当であるし、自由競争であるからには一応どういう事業でも許そうということでありますが、ただこれが実際的な問題として配給面までタッチして権力が人民の経済に直接に影響を及ぼすということになれば、これは又皆も一部の人にのみ委して承知はしない筈でありますが、そういう問題は今のところは単に倉庫会社として倉庫を貸して請負しているということに止まっているようであります。又会社としても必ずしも自分達の独占にしようという考も持っていないようであります。公募もするといっているような状況であります。それから沖縄財団の問題でありますが、先程も色々日本に於ける財産の問題についてお話がありましたがこれは現在法規上の問題で、要するに帰属の問題で外国のような取扱をされている現状でありまして立法的になかなかうまく行かないのでありまして、そういう面からは、これは早く講和会議が成立しない限りはこれは決定的な解決はむつかしいだろうといっている訳で日本の政府としても出来るだけ法に触れなければ援助してやらうという考があるようでありまして、そういう面から我々としては常に努力している次第であります。
 それから大東島の問題についてもこれは一応こちらで会社を作っても矢張り日本の会社が所有権を持つという状況にありますが、而し所有権が向うにあるからというのでジャンジャン向うで勝手にやられては非常に困る。こちらが始めた仕事を破壊するような、又これが立ち行かんようなことにでもなると折角今まで築かれた沖縄の経済組織というものが又破壊されるということになりますから、その点は十分考えて貰いたいと既に民政府にも申上げている次第であります。
○工務部長(渡嘉敷真睦君) 日本の切込資材の輸入状況について工務部長の知っている範囲内に報告せよとの御要望でありますが、遺憾乍らこれの輸入状況を報告し得ませんことを遺憾に思うのであります。これは結局資材課が工務部を離れまして軍に直轄になったがために、こういったような問題にタッチすることの出来ない事を遺憾におもうのであります。今おっしゃったように庶民住宅の問題から見た場合に実に大きな問題のように考えられますのでこの点については議会としても善処せられんことを希望致します。
◎仲里誠吉君 時間が差し迫っておりますので要点だけ質問致しますから、要点のみを明晰にお答え願い度いと思います。施政方針の順序に従って質問致します。先ず労務問題であるが知事は労務問題劈頭に於て組合(組合法カ)を制定してよいか、どうかということを軍に質問したということを云うておられるが、組合を作ってよいという指令は数年前出ている、従って当然制定していい訳であるが何故殊更に取立てて質問したのであるか、それを伺いたい。云うまでもなく民主主義の歴史は人民の権限の拡大の歴史であって、よしんば組合法は作ってもらっては困るという内意があったとしても、知事は人民の権限の拡大という建前から強く出る可きであったと思うが、知事の見解を承りたい。労務災害賠償はこれは単に二、三年の間に出て来た傷害事件ではなくて、一九四八年十二月十九日に出た特別布告第二十六号及び軍政府指令第十三号によって、労務災害賠償金は一九四八年四月であったか正確には覚えておりませんが、遡って払うことになっている、この事は軍ははっきり特別布告と指令で謳っている、従ってこれに対して当局はどういう風に処置されるお考であるか、同時に又数ケ月前に群島政府が本員の要望に応え、この労務災害賠償も何か払えない理由として予算のないこと、書類が不備であるということをいうているが、ではその書類はどういう風に不備であるかという調べをした事があるかどうか、又その対策をどう樹てているか、予算がないということに対しては見返資金からでも出して貰いたいという要望を持っているかどうか、之も前の議会で本員の指摘したように日本の場合には同じマ司令部管下に有り乍ら、見返資金から土地の使用料を支払うという規定はないが、沖縄に於ては強いてそれを適用しようという訳であるが、この使用料が見返資金から出すのであれば、この労務賠償金もこの見返資金から出していいと思うが当局の見解如何。食糧が六十円ベースから九十円ベースに値上になり更に七月を期して一弗対百二十円になされるが食糧の値上げ、それから出て来るところの一般生活物資の値上り、この物価の値上りには、イギリスの経済学者ケージの乗数の理論という経済上の法則で一波が万波を呼んで、例えば二十%値上りしたのが廻り廻って二十五%三十%という風に尾を曳いて行くのであるが、それに対する当局の対策如何。食糧物価の値上りと賃銀対策との均衡如何。
 それから同じくマ司令部管下にある日本の労務者は本給以外に時間外手当として本俸プラス五十分の二を貰っており、夜勤手当として本俸プラス二十%を貰っており、危険手当として本俸プラス四十%を貰っている。労務課はこの事実をどう見ているか。即ちこのような不公平な待遇の仕方に対してどういう風に考えているか、それから現在も警察署前のMG倉庫が倉庫会社に移管になると共に二百五十九名の労務者は首を切られたが退職手当がない、本員が交渉するまでは何ら馘首される労務者の就職の世話もせなかった、抗議によって二百五十九名が全部就職出来たとしても当然退職手当をやる可きだと思う。当局の見解如何。
 労務委員会は既に出来上って数年を経過したが、労務委員会は設立後如何なる活躍をしたのであるか、これは賃銀の調整、労務問題の調停等の権限を与えられているが、その権限に基いて如何なる活躍をしたのか報告をして頂きたい。
 次は財政問題であるが、当局は財政の健全化、負担の均衡ということを謳っているが、実際問題として直接税は五十九%、間接税は四十一%である、従って当局のいっているような財政の健全化、負担の均衡ということを実現するためには印紙税、不労利得税、預金利子税、有価証券移転税、こういったものが当然取り上げられなければならないと思うし、又議会でも要望したのであるが当局はこれ等の新税目を追加する用意があるかないか、用意がないとすれば如何なる理由か、追加する用意があるとすればいつ頃からか、又労働力の再生産の費用として医療費を控除して貰いたいということを要望したが、日本に於ても年に医療費が総所得の十分の一以上になった場合にはこれを所得税から控除すると云う規定があるが、これもやる意思があるかないか。それから沖縄としては民度を高めるために沖縄の政治、経済、文化の向上のために留学生をどんどん出さなければならない訳であるが、その留学の奨励のため、それから留学生の父兄を擁護するために留学費用を所得税から控除する意思はないか、それを伺いたい。
 それから円予算は沖縄の資金給源として大きなものであるが、これが予算の編成に当っては民間側は何ら参加を許可されていないが、何らかの形で参加権を獲得しなければならぬと思うが、軍当局に対してそれを要望したことがあるかどうか、若し軍が拒否したのであれば如何なる理由で拒否したのか、それを伺いたい。金融面であるが当然意見具申の権限は知事としては保有しているが、現在沖縄の経済再興のためにガリオア、エロア資金があるが、この資金から為替予算に廻されて、商業資本家の育成という面になっている。その反面中小企業者或は一般庶民階級は生活更生のために悩んでいる訳であるが、然るに一方当局は見返資金の金庫化だとか、商業銀行を増せという風に事業階級擁護のための金融機関は考えているようであるが、一般庶民階級の生活更生のために如何なるものを考えているか、金融機関は専門化をして、農業、水産のための専門金融機関、商業貿易の金融機関、それ以外にも庶民の生活更生のための金融機関、それから中小企業専門の金融機関、そういったようなものがなければならんと思うが、それに対する当局の見解如何。之は参考までに申上げるが既に新聞では復金は三億円の増資を要求しようとしている、この三億円の資金が増資になれば、その恩恵は依然として商業資本家、そういった者のみに限定される予想であるが、庶民階級の擁護のためには如何なる対策を講じようとしているか、それから経済面に於ては第三回議会に於ても物価対策について如何なる構想を持っているかを聞いた、ところが知事としては現在の沖縄に於ては物価対策を樹立し得るものは一人もいないであらうといわれ、賃貸価格を考究中であり、家賃統制まで日程に上っている、これは勿論物価対策の一環として考えられなければならないのであるが、それ以外にも物価対策は当然日程に上っていると思う、というのは七月一日までに為替レートは一対百二十で統一されるということをいわれている、それに応じて地代家賃なんかも上るであらうし、それ以外のサービス料その他が上って一般消費大衆の生活はいよいよ複雑化するとおもうが、それに対する対策如何。
 参考までに申上げると某劇場は「ハジ小」を出して約一間半から二間位の店舗を造って、しかもこの店舗はこれを五千円で貸している、このような現象に対する当局の見解如何。
 それから綜合経済計画の樹立によって当局は統計の重要性がどういうものであるかよく分ったと思うが、然らば経済部当局は今後この統計を政策上に於て如何なる事業を計画しているか、如何なる統計を作成せんとしているか、今後の主要計画を承りたい。それから同じく経済面であるけれども貿易輸出促進委員会が出来てこれは各群島から一人宛出ているのであるが、この商務官或は貿易促進委員の人物如何によって、沖縄の貿易が左右される訳であるが、この人選に当っては如何なる点に重点をおいて決定したのか、その選考方法、それを承りたい、賓客として農林省総裁がお見えになっているので承りたい、それは農林省としては既に離農の原因を調査されたようであるし、その結論も出ているようであるが、この離農の原因としては如何なるものがあるか、又その対策如何、農政局の或る職員と会ったところが成程離農者が出てはいる、出てはいるけれどもその離農の食えないからというよりも、終戦後強制的に沖縄に送還されて人口がダブついておったのであるが、その後適職とする方面に向って行ったという風に考えられるという意味の回答を受けたのであるが、農林省総裁としても同様な御見解であるかどうか、若し又同様の御見解であるとすれば、綜合経済計画の労務対策人口対策を見ると一九四九年五十年の職業人口の結論だけ申上げますが、農林省関係の職業者は七四%から五八%と一六%減っている、それでは其減っている分だけ他の職業、水産業、工業、鉱業、公務自由業、其他こういった者が殖えているかと云うと殖えていない、何れも漸次減少の傾向である、ここに目立って殖えているのは軍作業、無職、こういった者がはっきり殖えている、それは結局は依然として食えないから離農したという結論が引出されるとおもうが、この面に対する農林省総裁の見解如何。それから厚生面、開放性病院というと開放性専門結核病院という感がするが、これを解放病院と名称を変更されたら如何であるか、結核は厚生部の作成した統計に見ると一九四六年から四九年にかけては四千台を維持しておったが、四八年、四九年にかけて漸次低下し、昨年の五十年に至ると更に急激なピッチで上がっている、これは即ち生活の貧窮化と共に社会病であるところの結核患者が増加したことを科学的に物語っているのであるが、その一面金武の結核病院は医師と看護婦の数を減らすそうであるが、そうなると結核患者の収容数が少くなるとおもうがその対策如何。更に犠牲者であるところの結核患者は貧困であり、しかも結核は慢性病であって長期の医療費には堪え得ないとおもう、そういった人々の救済策、それを承りたい。
 それから司法当局としては法律の民主化は民間側自体でやれという回答が参っているのであるが、司法当局としてこの法律の民主化についての対策如何。公安委員長は辞表を提出しているのであるが既に警察部も挨拶まわりもすましている。然らば知事はこの公安委員長の後任の補充策として如何なる方法をとらうとしているのであるか。それを伺いたい。度量衡検定用具がすでに到着しているようであるし、前々議会に於ても本員は要望したのでありますが、度量衡は、むしろこの問題の中心点は、消費者大衆の保護と同時に生産者階級の農民の保護という点からも考えなければならないのであってマス秤の不合理の点はすでに述べたところであるが、穀物に関する限りは重量による販売制度を強制しなければならないとし、それを要望したのであるが、この法規はいつ頃実現する運びであるか、それを伺いたい。
 それから工務部に対する要求、離島航路に対してはただ単に組合が船を買えといっただけでなしに資金面の援助、補助金、そういったものを重要政策として取上げてもらいたい。工務部の見解如何。早口で恐縮であったが当局の要を得たお答弁を承りたいと思う。
○厚生部長(宮城普吉君) 診療所では簡単に診断出来る程度の病気を取扱う、それが少し診断が面倒になって来ると、これは地区病院或は三綜合病院にまわすような制度でありますから診療所は機械器具も少いし薬品の数も種類も少なかった訳であります。従来はアメリカ薬品を使っていたが、これは日本薬品とは比較にならん程少なかったのであります。それがずっと続いておりまして最近やみで色々の薬が入って来ておりまして、先生方も患者に要求されて使っておられるようであります。アメリカ産の薬には注射液が非常に少いのであります、これは医師側の意見の相違でありますが、従来沖縄の日本の医者は注射薬を使い過ぎる、アメリカさんにいわせると注射液なんか必要はない、錠剤を口から飲んでもいいぢゃないかという意見であります。私の現在の考えとしても、やたらに注射薬を使いたがる傾向にあると思っております。それからペニシリンその他の薬品も相当入って来て種類も比較的豊富になっておりますが、診療費は公営でありまして、これ等のやみ薬を買って配給するのもどうかと思いまして手をつけないのであります。
○知事(平良辰雄君) 随分長いことを立板に水のようにやられましたので、とても覚えておりませんが、幸い聴く人は各部長もおりますので、満足な答は出来ないかも知れませんが、又何れの機会に更に御質問をしても構いませんが出来るだけ答弁到します。労働問題とか補償金の問題については先程お答えした通りであって、それ以上には別にお答えするものもありません。食糧の値上りとか、軍労務の手当であるとか、物価対策とかいった面に於きましては、物価対策として、がっちりした、どの物価はどうするといった対策は今考えてありませんけれども、然しその都度都度に於て考えるということはあり得るのでありまして、食糧が上がれば他の物価も上るということは当然ありまして、然し成可く急激にやって貰いたくないという対策位しか出来ないのであります。
 又軍労務があがって、群島政府職員と均衡が取れないぢゃないかということも物価対策と関連するもので、そういう点も考慮して財源も考慮しつつ群島政府の職員は或程度我慢させて行こうと云うような考もありますので、而しそれも程度の問題で何れは物価の問題として、賃銀ベースも変るのでありませうし、その都度によって対策は考えているのであります。それから公安委員の問題でありますが、委員長は辞表を出しているかどうかということですが、これは辞表は出ているけれども自分としてはまだ--先方では強いて辞めるといって辞表を投げて職を離れているのではないのでありまして、これについてはもう少し自分としては考を練る必要があると思って、そのまま保留しております。
 其の他度量衡の問題等については先程お話申上げたが、それで我慢していただきたいと思います。尚金融機関の設置とかいう、庶民金庫を作るかどうかという問題でありますが、我々としては農民金庫を作って貰いたい、庶民金庫も作って貰いたいとお願いするより外ないのでありまして、その権限は群島政府にはないのであります。この権限は琉球民政府にある訳でありまして、そういう点については我々としては献策はしているのであります。尚ガリオアの予算の問題でありますが、この割当とかいったものについての参加権を与えて貰いたいということについては、現在のところ五十二年度予算について一生懸命にやっているところなのでそれまで行っていないのを遺憾と致します。
○経済部長(呉我春信君) 経済関係についてお答え致します。統計の重要性を痛感しただらうという御質問に対して同感であります。これにつきましては今度図書印刷費を増額致しまして、これによって完備させたい、又各部にもそれぞれそういう予算がありますので、それによって補充して行けるぢゃないかと考えているのであります。度量衡の斤量制につきましては戦前に於きましても、この運動が展開されておったのでありますが、永年の習慣はなかなか直りにくかったのですが、然し大半が斤量制に変っておりますのでそういう方向に進めて行きたいと斯様に考えております。商務官については大体内定致しております。これは軍から色々条件がありまして、最初こちらが推薦した人は英語の方がよくいかんといふ意味で一寸不適任だという軍の見解でありましたが、その後条件が若い人で然かも英語が出来て、しかも政府の職員の中から推薦せよと、かように参っておりましたので、関係の方上司とも諮って決定致しました。やがてこれは正式に決定通知が来るというところまで来ているのであります。
○仲里誠吉君 その候補者は沖縄の貿易経済、日本の貿易経済についてよく知っておりますか。
○経済部長(呉我春信君) 人のことはよく知りませんが、これから勉強してもいいんぢゃないかということも考えますので、又一人で行くのでなくて各群島、貿易庁からも参りますので、これについて行って五名が一体となりますので、そう不安はないのぢゃないかと思うのであります。
○財政部長(宮里勝君) 印紙税とか登録税とかを税法に考える意思はないか、なければその理由、という御質問でありますが、現在の税制は収入税と消費税を基幹と致しまして、編成してありまして、流通税が多少欠けているという事は御説の通りであります。之につきましては税体策(ママ)を決める点からも、今後の税制改革の時に採り入れようかという考え方もしておりますが、之は全琉中央政府の財源にする事になっておりまして、保留した訳であります。全琉政府の税制が長引き、或はそれに含まれないといった場合には我々の財源としたいという考を持っております。それから所得税における医療費の控除でありますが、これは私も同感でありまして、将来取入れて行きたいと考えております。
 それから留学費用の控除でありますが、留学生というのは、これは全般的の問題ではないのでありまして、税法の操作によって、これをやるという事には賛成しかねます。むしろそういうのが必要であれば他の補助金とか、そういう方面で救済するというのが建前であって、税の操作によって、この人のみに恩典を浴させるということは考え問題でありますので、そういうことについては考えておりません、其の他の点については知事から答弁がありましたので。
○工務部長(渡嘉敷真睦君) 離島航路につきましては今海運課において研究を進めてありますので海運課長からお答え致します。
○海運課長(大山朝常君) 離島航路について申上げます、現在の運搬船は軍から借りております。LCMが百五十三隻、それから密貿易船で来て押えられたのが、公売された中古の船と合せて約二百七十隻位あるだらうと思っておりますが、この船齢は何れも古くなっているし、LCMは本年一杯で消耗するのではないかと思いまして絶えずこの問題については心配をしておりますが、ところがこの船に代るべき新造船を買おうと致しまして、過去の日本のメーカーあたりに交渉して見るとトン当りが大変高いのであります。少くとも一トン当り三万六千円位を出さんと運搬船は買えない、貨客船は買えない、或は四万円、五万円に近いような貨物船もありまして。
○議長(知花高直君) 時間を延長致します。
○海運課長(大山朝常君) そういった高い船はなかなか買えないので非常に業者も困っております、何んとかしてガリオア資金とか、そういった面の資金補助を仰いで、この問題を解決しなければならないと考えております、ところが現在まで買いました運搬船は最初の一時払が十%で十年の年賦でございましたが、今後はそれを二十%にして五ケ年年賦にするという、軍のお話もありますので、こうなった場合、とてもその高い船の二十%の現金を持合せているのがありませんし、非常に困っているのでありますが、どうしてもこの年賦を十%以下五%に切下げ業者を救って離島航路を開拓することは非常にむつかしい問題ではないかと思っております。今離島によっては運搬船は二、三杯持っているところもありますが、又南北大東とか、渡名喜、粟国あたりは船を持っていないのであります。こういった状況でありますが、先にも工務部長から御話がありましたようにどうしても離島航路は戦前に還って補助政策によって育成して行かなければならんという風に考えているのであります。それで今日色々の資料を集めて、そういう面の研究をしておりますが、なかなか戦前の資料がないのであります。それで各離島町村に照会して戦前離島航路に就航しておった、あなたの島の船のトン数とか、沖縄県から補助を受けていた額とか、あるいは那覇港を中心として月何回航海をしたか、そういった具体的な資料を今集めつつあるのであります。そういう資料に従って是非離島航路の計画を進めて行きたい。尚先にも申し上げた通り、どうしても二十%の一時払の資金を持っておりませんので、これを政治問題化してもらって五%に引下げてもらわなければ困難ではないかと思います。
◎議長(知花高直君) これで終了致します。
 明二十日は文教、厚生委員会付託事件の審議を致します。二十一日は工務委員会付託事件の同じく審議であります。二十二日は合同研究会、予算案審議であります。二十三日合同研究会、予算案の審議であります。二十四日総務財政委員会付託事件の審議であります。
 本議会は二十六日午前十時開会致します。本日はこれで散会致します。
 (午後四時三分散会)
 出席者は左記の通り
  議員出席者氏名
    議 長   知花 高直君
    副議長   稲嶺 盛昌君
    議 員   与儀 清秀君
    同     仲村 栄春君
    同     石原 昌淳君
    同     普天間俊夫君
    同     平良 幸市君
    同     玉城 泰一君
    同     松本 恭典君
    同     具志頭得助君
    同     長浜 宗安君
    同     山川 宗道君
    同     祖根 宗春君
    同     山城 興起君
    同     新里 銀三君
    同     新城 徳助君
    同     野原 昌彦君
    同     崎山 起松君
    同     仲里 誠吉君
  政府側出席者官職氏名
   知 事    平良 辰雄君
   副知事    山城 篤男君
   総務部長   幸地 新蔵君
   経済部長   呉我 春信君
   財政部長   宮里  勝君
   法務部長   知念 朝功君
   文教部長   屋良 朝苗君
   工務部長   渡嘉敷真睦君
   厚生部長   宮城 普吉君
   警察本部長  仲村 兼信君
   警察本部次長 西平 宗清君
   知事事(知事室カ)務局長 宮城 寛雄君
   総務副部長  稲嶺 成珍君
   財政副部長  久場 政彦君
   工務副部長  西銘 順治君
   厚生副部長  大森 泰夫君
   文教副部長  仲宗根政善君
   建築課長   仲座 久雄君
   社会事業課長 嵩原 久雄(男カ)君
   海運課長   大山 朝常君
   農林省総裁  富名腰尚友君
            以 上
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