戦後初期会議録

組織名
沖縄諮詢会
開催日
1946年03月06日 
(昭和21年)
会議名
諮詢会協議会 1946年3月6日 目録詳細 画像を見る
議事録
諮詢会協議会 〔経済機構・総務部・執行機関〕

  三月六日(水)午后零時半。
  出席  志喜屋、又吉、松岡、比嘉、平田、糸数、前門、安谷屋、山城、仲宗根、當山、護得久、仲村、大宜見の諸委員。
  病欠  知花委員。
協議事項
 護得久委員
  今朝経済係のワーズ氏が来て経済各部の機構を決定した。
  財務部では税金の問題で全物価の2/3以上の税金を有するのである。
  ワイズ氏は酒造は工業又は農務にも関係があるが之を諮詢会に諮って有利の点を挙げ或一部門で統一的に酒造せよとの事であった。而して明日迄で回答する様にと。
 比嘉秀平通訳官
  孰れの部が酒造をやってもよいが而し一部に統一する様にするのは当分軍政府が直接監督するに便利であればよい。将来民営に移した場合も専売にする。
 護得久委員
  ワイズ氏は食物になるもので酒造してはならない。
  将来は官営にする。
 安谷屋委員
  専売に対する監督は財務部に委す。
 比嘉委員
  護得久委員の考へて居るのは泡盛であるか焼酎であるか。
 護得久委員
  焼酎である。
 比嘉委員
  酵母菌による酒造も考へているや否や。
 護得久委員
  蒸留にするもののみで酵母は考へて居ない。
 志喜屋委員長
  何部で酒造するか。
 前門委員
  専売と云ふものと官営とは違ふ。
 護得久委員
  官営とは軍政府直轄のものである。
  工業部でやればよいか財務部でやればよいか。
  工業部で酒造する場合の利、不利の点。
  財務部で酒造する時の利、不利の点。
  工業部で酒造する時の得失は、長所として、工場の離合集散、原料蒐集に便、燃料の融通。
  短所として、酒類の製造管理に不便(確実に取上げる事が困難)。
  財務部所管の時、工業部の利、不利の逆になる。
  長所として、将来専売を実施するや否やに不拘、財収入の確保に便利である。
  財政整理に便利である。
  税収入の見透をして継続する必要がある。
  短所として、工場獲得に不便な点。
  酒造の目的は税収入にある。
  酒造との関係は、農務(原料)、輸送、公衆衛生、商務にも関係がある。
  結局主眼点は税収入にあるから之を財政部に所属させて貰いたい。
 大宜見委員
  専売になるから財政部に所属すると莨も塩。
 護得久委員
  専売にすると決定するものは財政部に所属するのである。
 前門委員
  財政部で官公吏の支出は引受けるのか。
 護得久委員
  通念を以てせば予算、決算については財政部で支出す。
 前門委員
  自治になる場合ですね。
 安谷屋委員
  税関係の取締監督は財政部で取扱ひ、事業其のものは工業でやり別個に切離してやりたい。
  日本でも税に関するものは大蔵省で、事業に於ては商工省がやって居たが何等矛盾はなかった。
  工業専門の仕事であるから工業でやってよい。
  沖縄のみの酒でなく、輸出品としても考へらる。
  所属につきて考へられたい。
 護得久委員
  日本政府の酒造に関する沿革を説く。
  明治三十二年酒造法があり大蔵省に管轄されて居た。
  県の酒造は主管技師が監督して居た。
  最近の酒造行政は大蔵省に所属して居た。
 比嘉委員
  原料の分当は最後まで農林省がやって居た。
 前門委員
  品質を良好にして外国貿易にも有利なる場合は何処にした方がよいか。
  品質の良否を見るには技術を見る。
 仲宗根委員
  ワッキンス少佐によると専売にする事になって居るが専売を離れて考へたい。
 比嘉委員
  昭和十四年の調査に八百坪を有すると四人家族の四ケ月分の仕事である。
  然すると二十三万人の住民は八ケ月は農産物を加工して生活す。
  外国に於ける消費組合は他の商業に対抗するためだが、沖縄の農業組合は農産物を加工まで加へて農業が経営される。
  軍政府の直接指導監督すべき件に加工を加へて居る。
  農産用具も農務部で造らなければならない。
  故に工業部面と判然と分けたい。
  護得久委員は焼酎を造る事であるが、農務部では将来、米、芋、甘蔗を以て酒造すれば孰れがよいか。
  米は輸入になる。酒を能率的に造るには甘蔗がよい。
  故に従来の甘蔗は砂糖自給(白糖五十斤)にし従来の一万五千石の酒も自給し残余の十万石は輸出したい。
  酒造を事業とする場合材料が得らるゝや否やが問題である酒造は総て農務に関係がある。
  故に其資材を蒐集するに農務がよいと思ふ。
  故に酒造は農業組合に所属したら如何と思ふ。
 安谷屋委員
  農産加工は何々ですか。
 比嘉委員
  砂糖、芋の加工が大きい。
 安谷屋委員
  工業部面でなすべき種目の鉄工、繊維、木工、織物、漆器等々と挙げ、農具は工業で引合はなければ造らないと云ふが工業の合利化でやった方が却而良くはないか、労力の方は農村から集めるから同じ事である。
  酒造は合理化に行った方がよい。
  従来の製糖会社と農民との間であるが、其れは資本家と農との関係で資本家の搾取になって居たから経営が悪かったが而し沖縄人が沖縄住民を搾取すると云ふ事はないと思ふ。
  農業の発展と工業の発展とは相反する事はないと思ふ。
  故に酒造は専門的にやった方がよいと思ふ。
 護得久委員
  結局工業も、農業も、公衆衛生も、運輸にも労務にも関係があるが、目的は何処にあるやを考へる時は財務に所属させると。
 仲宗根委員
  今のお話は二つの件で対立する。財務、工業、農務の対立、殊に財務と農務の対立が大きい。
  酒の利益を農務は還元、財務は収入としてやって行く。農家の還元は軍政府から抑へらるる。
  軍政府が専売にする方針によると農家に原料代を還元するだけである。
 護得久委員
  軍政府では各地区に酒造工場を置くと云って居る。
 安谷屋委員
  私は縄張りをするわけではないが酒造の事業の発展の上から考へられたい。
 護得久委員
  一般工業から成り立つものが工業に属し酒造は殊別のものとして取扱ひたい。
 比嘉委員
  監督者と営業者を一にするは如何なるものか。
  安谷屋委員の方の技術を農務に技術を持たす事が出来る。
  原料は総て私(農務)が持って居るから私は私の方で酒造する事を主張する。
 仲宗根委員
  農務の生産する原料を廉価で取られては困ると云ふ事である。
  原料の買上値に高くする考を以てし財政部で所属しては如何。
 前門委員
  此問題はもっと研する必要があるから延期したい。
 志喜屋委員長
  もっと研究しませう。
  五分間休憩します。
  (再 会)
 仲宗根委員
  一、総務部改称の件を提出し之を説明す。
   現在の総務部名称が住民に混乱し易い。
   従来沖縄県庁総務部及其他の部の事務分掌等を説明す。
   現在は当時と内容を異にして現在の総務は民政と庶務をやって居ると思ふ。執行機関に移りつゝある場合住民に混乱し易くない様に総務を改称したい。
 又吉委員
  出発から総務としてあるから改める必要はない。
  二月十七日に発令になった土地指令も総務と来て居るので軍政府としても泥んで居るものを改めると却而誤解を招く。やって行く次第に住民も却而了解して行くと思ふ。
  仲宗根委員が云はれるのは、平良総務が来て、村では如何なるかと云った時、村では庶務課になると。
 當山委員
  庶務規定を判然にすれば混乱しないと思ふが。
 糸数委員
  庶務規定を作って明確にすれば判然とする。
 仲村委員
  地方で誤るなら庶務規定を作って村に送ったら如何。
 比嘉秀平通訳官
  軍政府の総務の仕事は、行政、移動、送還、救済、翻訳と。
 又吉委員
  村では以上の五件を庶務課に総括される。
 志喜屋委員長
  大体の課を作ったら如何。
  職務分掌を示しませう。
 仲宗根委員
  二、諮詢会が出来て数ヶ月も経、段々と執行機関が出来たが既に四、五人の執行機関は委員がなって居るが若し全部委員が部長になった場合如何にするか。
  八月二十日(一九四五年)に委員は選挙された。
  執行機関を兼ぬる場合世人は如何に考へるか。
  民政に移りつゝある時委員が部長を兼ねる時は疑惑の眼を以て見られる。
  出来得れば半数は外部から持って来たら如何と軍政府に質したい。
  軍政府が一時的であるとすればよいが、而し之が其でないとすれば住民に疑惑を生ずる惧れがある。
  労務の係将校が来て労務の執行機関を如何にするか、此労務部長は外部から持って来たら如何と思ふがと云ったから、私(仲宗根)は結構だと云った。
 又吉委員
  昨日ワッキンス少佐が来られて、
  部長(執行機関委譲の時)の席が増すが之を如何にするか。
  輸送部を独立して置くべきや否や、若し独立して其数を増すには如何にするか。
  商務、労務を分けるや否や。
  如何にして其部長を選ぶか。
  之に対し二つの方法を投げた。
  諮詢会で、又は志喜屋委員長、ワッキンス民政部長(軍政府)の方で命ずる時もあるだらう。
  彼は諮詢で三人の候補者を推薦して軍政府に出す方法。
 大宜見委員
  私の部では三部になって居るが。
 又吉委員
  糸数は商務を主として水産は別から持って来て貰いたい。
  斯くして水産部長になる人に諮詢してよいとの事である。
 糸数委員
  委員の各部の分担は事務的に分けたもので責任は連帯責任である。
 當山委員
  軍政府の案を訂正しようではないか。
  委員外から持って来た人を諮詢に加へると具合が悪い。
 又吉委員
  外から執行部長を推薦する時、該人を諮詢委員に加へるか、又執行のみであるか。
 糸数委員
  従来の知事が執行機関で其下の部長課長は補助で軍政府の行政機構を見ると軍政府が執行機関で委員の部長の補助である。
 仲村委員
  警察も憲兵司令官の補助機関であると思ふ。
 又吉委員
  如何なる方法で部長を選ぶか。
  中央機関の構想を作れと。
  ワッキンス少佐も今は理想の選挙は行はれないから軍政府から任命すると云はれて居た。
 比嘉秀平通訳官
  水産部長を任命した場合其人が諮詢会委員になれるや否や。
  如何なる方法を以て其人を得るや否や。
 松岡委員
  従来の通り三人を推薦したら如何ですか。
 全委員
  異議なし。
 仲宗根委員
  部長を外部から持って来るか否かゞ問題である。
 志喜屋委員長
  仲宗根委員の論は分るが此の人事は大きな問題である。
 比嘉委員
  一部の委員が退陣するよりは寧ろ全委員退陣して後でなければならない。
 又吉委員
  一部の委員は有能で他の一部は無能であると云ふ事になり大きな問題である。
 大宜見委員
  世間から疑惑を持つならば諮詢会其ものが疑惑を持つのではないか。
  諮詢会の根本に触れるのではないか。
 比嘉委員
  総退陣にする方がよい。
 大宜見委員
  軍政府が諮詢会は必要ないから退けよと云はれないのに退く必要はないと思ふ。
 仲村委員
  先日ワッキンス少佐が沖縄の中央を決めるのも委員自体のものであると云はれたが、仲宗根委員が云はれたのも此点にあると思はれる。
 山城委員
  市町村制に関係するが、村役場に教育係を置いて事務を処理させたいと思ふが如何すればよいか。
  私(山城委員)自身で云ってよいか否か。
 志喜屋委員長
  村長の任命でよいでせう。
 全委員
  異議なし。
 當山委員
  文化会報告。
  去る文化会に於てハナ少佐が米国博物館に沖縄の物品を陳列したいから集めてくれとの事であった。
  それで来る二十八日各地区に集めることになってゐるが点数は一千点である。
  四月二日東恩納に於て陳列し精選する事になってゐる。
  品は日常生活を中心として、食器、家具、衣服等及工業品等である。
 又吉委員
  輸送部を独立して作るや否や。
 大宜見委員
  輸送部を置いた方がよい。
 糸数、松岡両委員
  大宜見委員の意見に同意す。
 松岡委員
  海運は大きなものであるから別個に置いた方がよい。
 全委員
  異議なし。
 志喜屋委員長
  バス経営の民営、官営は後に研究しませう。
 仲宗根委員
  成るべく住民の意向を反映させる様にしたら如何と質問してよきや否や。
  消極的に進んで居るものを積極的に自治に移されたいとの事である。
   (部長の半数を委員外より持って来るの提案に対する件)
 又吉委員
  議決機関も軍政府は考へて居るらしい。
  私は村も未だ出来て居ないから現状の儘がよいと云ったら、ワッキンス少佐も然く考へて居ると云って居た。
 比嘉秀平通訳官
  中央機関と共に県会議員も考へよと云はれ、村会を有する村もあるや否や、若し有ったら何々村かと訊いて居た。
 仲宗根委員
  中央機関及代議員制を早く研究して上申したい。
 當山委員
  知事、代議機関を如何するかを質問するとの事であったが葬られた。
  地方行政を朝令暮改にして弄ばれて居る考へがする。
 護得久委員
  中央機関の構想を作れとのことだが仲宗根委員の質問と同似であるか。
 又吉委員
  私に腹案を出せと云はれたので未だ案が出来て居ないから発表しなかった。
 松岡委員
  東恩納に於ける住宅は委員は設計通り職員は規格通りにするとの事である。
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