戦後初期会議録

組織名
琉球臨時中央政府立法院
開催日
1951年10月11日 
(昭和26年)
会議名
立法院財政金融委員会 1951年10月11日
議事録
立法院財政金融委員会議事録

 一九五一年十月十一日(木曜日)
 午前十時二十分開会

議 題
 一、自動車税法案について

○委員長(與儀達敏君) 財政金融委員会を開催致します。この間逐条審議致しましたが、中に疑問の点もありましたのでそれについて財政当局にお伺いしたいと思います。第二条に到着価格とありますがこれは引取価格の意味ですか、従来は引取価格とあったのですが。
○財政局主税歳入課長(山内康司君) 引取価格というと倉庫料あたりが問題になるので到着価格とした訳です。CIFの価格という意味です。
○委員長(與儀達敏君) それから自動車税法は乗用自動車税法としたらどうですかね。
○財政局主税歳入課長(山内康司君) それでもいいと思います。
○委員長(與儀達敏君) 最後に民政府に出された原文とここに廻って来たものと違うようですが、その経過を…。
○財政局主税歳入課長(山内康司君) これは一番最初に財政局長から軍の財政部長に提案した際には今の条文の中で第一条の中古品の関係は入っておりません。それから第五条に一ヶ年という事を入れてあります。もう一つは今の港から入った場合の事だけを規定してありましたが、軍の方から中古品を入れろ、それから一ヶ年という制限を取れ、もう一つは港から入ったものだけでなくて、非琉球人の譲渡したものも入れろという訳で、ここで立案をしている間に、立法院にかけないうちにルイスさんの指令が来た訳ですが、その書類の通り直訳して出したところでちょっと工合が悪いので、問題は非琉球人の場合が入っている訳ですが、税の徴収は保税地域から引取の際、引取人からこれを徴収する。引取の際とありますのは、それが琉球経済の中に入った時に課税するという事がはっきり映らないものですから、課税するという事に第二項を入れまして、それから申告の事やら、徴収の事やら入れて来た訳であります。第二条に引取の際又は琉球経済に入った時に徴収すると入れて来たのですが、それだけでは分り難い所もありますので非琉球人が譲渡した場合もこれに課税すると入れまして別に徴収のことも入れた訳です。そうすると軍から来たのとちょっと違っています。
○委員長(與儀達敏君) 第三条の琉球経済に入った場合、これは取った訳ですね。非琉球人というのはどういう内容ですか。
○財政局主税歳入課長(山内康司君) 琉球人以外の者、日本人も入る訳です。
○松田賀哲君 非琉球人は今課税されていない訳ですね。コーラ会社とか、ああいったものも。
○財政局主税歳入課長(山内康司君) ただ酒だけの場合には課税されております。日本の請負業者には輸入を許すな、軍工事に直接必要なもので然も琉球列島にないものだけを輸入してくれ、それ以外は禁止してくれという事を軍にお願いしてありますが、それまでに一応税を取っておきませんと輸入を阻止する法規がないので、又脱税品の区別がつかない様になって来ますので酒だけは取っております。
○城間盛善君 この七十五パーセントというのが禁止課税でせう。つまり琉球の経済上また乗用車を乗り廻すのは早いという趣旨でせう。そういう趣旨一本であれば構わないが、日本の請負業者は琉球人でないから無税で入れて乗り廻すという事になりそうですがね。
○財政局主税歳入課長(山内康司君) そういう意味ではありませんが、こちらの法規で向うを拘束する事が出来ないのじゃないかと思います。
○委員長(與儀達敏君) 日本人の請負業者は軍属という意味ですか。
○財政局主税歳入課長(山内康司君) これは罰則等の適用の場合にどうなるかという問題が起って来るのですよ。例えばこの税法に違反した場合にその裁判関係とか、その点については軍でも研究して置こうと言っているのですが、確答がないのです。日本でも外人に課税する規定はありますが実際はあってないようなものです。
○委員長(與儀達敏君) 日本人の請負業者以外には長期滞在する者はおりませんか。商事会社とか、代理店など…。
○財政局主税歳入課長(山内康司君) 軍関係以外は日本人の企業は許されていないのです。
○城間盛善君 琉球人名義の会社の場合はその社長は琉球人になっているが、日本人はその下に居る場合、社長は車を持っていないが社員は無税で車を持てるという事になりますね。この税法の趣旨目的がどうもあやふやで何処を狙っているか分らん。単に琉球人の行為だけを束縛するというだけになりそうですね。
○冨名腰尚武君 実質上はこの課税の完璧を達せんという事になるね。例えば、日本人に月四千円位の給料をやってその名義で輸入するという事も出来る。第五条の第二項は空文に終るのじゃないかと思うのですよ。
○財政局主税歳入課長(山内康司君) 昨日群島政府の陸運課長に会ったのですが、現在アメリカ人の車でタクシー業者が相当いるそうです。それはただアメリカ人の車を運転しているというだけの名義だというのですが、実際は沖縄人が持っているのです。それをどう判定するかというと、どんな風に使っているか、修理は誰がするか、という判定をした上でないと出来んのじゃないか。又、今の場合、社長の琉球人が車がなくて使用人の日本人が持っている場合に、使用人個人の為に車が必要であるか、或は又持ってる人であるか、そういったもので判断して認定するより外にないのじゃないかというのです。仮に又この文がないとした場合には実際には港には外人用で入って揚ってから琉球人に渡すという風になるので実際には難しい問題だと思っております。
○冨名腰尚武君 琉球経済に入った場合という解釈を軍は第五条の第二項のように解釈している訳ですね。
○財政局主税歳入課長(山内康司君) 向うの話をこれに写した訳です。砕いて書いた訳です。
○城間盛善君 琉球経済に入った場合の狙いは、アメリカの軍属とか二世の車を沖縄人が使っている。それが目標なんでせう。
○財政局主税歳入課長(山内康司君) ルイスさんのお話にもそういう事が最初からあった訳です。又軍の指令にも米製の車を沖縄人は登録出来ないという条項があるそうです。あれがあるから、琉球人は米製の車を登録出来ないという法規があるのにこの法規があっては少し工合が悪いのです。どっちかといえば脱法を前提みたいにした法規なんです。
○冨名腰尚武君 個人のためにといえば贅沢品だという事になりますが、企業のために必要とする場合には却って促進する…。
○財政局主税歳入課長(山内康司君) タクシー会社が持つ場合と、土建会社が持つ場合と、官庁が持つ場合、その程度しか範囲はありませんからー度々車を使う人以外にはないという事を申上げたら、そういった場合にはタクシー会社のタクシーを使えば良いのじゃないかといった様な事を言っておりました。
○冨名腰尚武君 却って金の浪費になるのですよ。毎日タクシーを使っていてはたまらんからの話であって、そういう点は論理的に筋が一貫しないのですよ。
○城間盛善君 沖縄の土建業者は高いタクシー料を払って日本人は自由にどんどん輸入出来るという事になれば、段々と沖縄の経済活動にハンディキャップをつけて、足を縛るようなことになって非常に不利に追込むという事になる。
○委員長(與儀達敏君) 「直接使用する」というのがありますが「直接」は要らんのじゃないですか。
○財政局主税歳入課長(山内康司君) 専らその用途がタクシー業をする為のものでその事業を管理する為に使うものでないという意味です。
○城間盛善君 日本文と英文はどっちが先ですか。
○財政局主税歳入課長(山内康司君) 日本文が先です。一ヶ年、中古品、琉球経済に入った時という事を除いた外は…。
○冨名腰尚武君 タクシー会社の車であっても社員が乗り廻す、社長が乗り廻す車は免税しない。一般公衆の輸送用に提供する場合は免税となるのですね。
○財政局主税歳入課長(山内康司君) 会社の名義であっても第二項の所有と同じようになる場合は課税する。
○冨名腰尚武君 長期貸付の契約をする場合もある訳ですね。例えば普通ならば一日五千円のところを一日五百円で一年間貸す契約をした場合には矢張りタクシー業と見ていい訳でせうね。
○委員長(與儀達敏君) 一般乗客の輸送に使用するでいいんじゃないですかね。逐条で行きませうね。括弧の内は省くのですよ。
○財政局主税歳入課長(山内康司君) これは省いてあったのですが、又入れろと言って来たのです。
○冨名腰尚武君 こっちの意見はあなたの話のように貨物用三輪車は構わんという話でせう。貨物用を乗用に改造することは簡単に出来る。結局値段は同じでせう。貨物用が安ければそれに費用をかけても損得はないが同じ値段の物を更に費用をかけて改造する、然もその改造たるやどんな改造をするか分らない危険な三輪車を奨励するといったような弊害が伴う。それで乗用の三輪車を入れないという趣旨は何ら徹底させられない。意味がないようになるのじゃないかというのです。
○財政局主税歳入課長(山内康司君) 規制しないというのですか。
○冨名腰尚武君 規制してもしなくても同じ事になる。
○財政局主税歳入課長(山内康司君) 改造した場合のことは、それまで課税せよと云われたら困るからそれには触れなかった訳です。
○冨名腰尚武君 三輪車や自動自転車まで輸入禁止という事になると経済節約の趣旨がはっきりしない。これは一遍委員長からそこのところの趣旨はいろいろ聴いて見たが、十分了解出来んからといって折衝して見たらどうかな。
○城間盛善君 非琉球人と琉球住民の意義がどうもはっきりしないね。琉球経済の相手とするものは日本である。日本人に有利な条件を与えて琉球人に対しては束縛するという事になれば非常に琉球人を不利に陥れるものである。
○委員長(與儀達敏君) 主席の意見も聴く必要がありますね。主席代理が帰るまで待って立法、行政部の意思が一致した上で軍と折衝して見る事にしませう。
  (午前十一時四十五分閉会)

  出席者
   委員長  與儀 達敏君
   委 員  松田 賀哲君
    〃   城間 盛善君
    〃   冨名腰尚武君
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