戦後初期会議録

組織名
八重山群島議会
開催日
1951年06月23日 
(昭和26年)
会議名
第4回八重山群島議会(臨時会)[2]
議事録
一九五一年六月二十三日(土曜日)午前十時二十分開議

議事日程第二号
  午前十時二十分開議
 第一 議案第四十五号 八重山群島警察本部長任用に関する条例制定について
 第二 議案第四十六号 公安委員の給料支給条例制定について

◎議長(潮平寛保君) 開会致します。(午前十時二十分)
  (書記長(眞玉橋長要君)出席議員及参与の報告をなす。議員全員出席、参与、指定参与全員出席)
◎議長(潮平寛保君) 「議案第四十五号八重山群島警察本部長任用に関する条例制定について」の御審議を願います。

議案第四十五号
  八重山群島警察本部長任用に関する条例制定について
八重山群島警察本部長任用に関する条例を次の通り定めたいので議会の議決を求める。
  一九五一年六月二十二日提出
  一九五一年六月   日
  八重山群島知事 安里積千代
 八重山群島議会議長殿

  八重山群島警察本部長任用に関する条例(案)
 八重山群島警察本部長は、基礎的警察訓練の課程を経たもので警視又は警部の階級にある警察官から八重山群島公安委員会がこれを任命する。
◎知事(安里積千代君) 提案理由は前日申し上げたとおりであります。八重山警察署の実質的状況と公安委員会の人事権において政治的な掣肘を加えず、公安委員会の意に任すのが建前と思い人選の範囲を広めてあります。
◎星克君 参与に質問致します。基本的警察訓練とは何を意味するか。具体的にお聴きしたい。
○副知事(當銘正友君) 二番議員(星克君)さんの質問にお答え致します。内務省令巡査採用規則並沖縄県令巡査志願心得による採用試験により採用された巡査は、警察学校を経て、初任巡査となります。
 学校においては学科(教養)即ち憲法、刑法、警察概論、行政法、法医学、英語等の教養訓練を受け、更に心身訓練、実務訓練を行うのでありまして、此が基礎的教養又は初任教養と呼ばれています。教養期間は、四ヵ月至六ヵ月でありましたが、現在では、三ヵ月に短縮されています。
 右課程を修了した者は、配置先で更に一〇日間の実務訓練をなして実務につくのであります。要するに初任教養が基礎的訓練でありまして、現任教養、実務再教育講習等は基礎的訓練に入らないと解します。
◎石垣用中君 参与の意見では、初任教養のみが基礎的訓練ですか、専門教養は認めないのですか。
○副知事(當銘正友君) 規則によれば初任教養が基礎的訓練でありまして専門教育、講習等は、その目的が違うと思います。
◎佐久眞長助君 基礎的訓練課程を経た者のみが該当するのであって、大学を出て高文をパスした者も資格はないと云われますか。
○副知事(當銘正友君) 警察の仕事の内容は法規の執行面が大半であり、こういふ仕事につく者は、特殊な教育をされていなければいけないと思います。
◎潮平寛保君 三番議員として発言致します。本条例を決めるについては、現在及び将来を考へなければいけない。
 私は、警察部長さんに質問したい。現在新任巡査の採用は、どんな規定によっているか、教養課程はどんなものですか。現任者はどういう教養訓練をしていますか。
○警察部長(富本勉君) 採用は内務省令によって、なしています。教師は幹部が講師となり短期間でなしています。然し此で満足はしていません。将来は沖縄群島政府と連絡し、警察学校を出してから就任させたいと思っています。昨年も考へていましたが、予算その他の関係でできなかったのですが、本年は是非全員警察学校を出してから立派な警察官として勤務させたいと思っています。
◎潮平寛保君 もう一つ質問致します。巡査部長、警部補、警部の任用については。
○警察部長(富本勉君) 巡査部長は部長採用規程により(一年以上経た者から)銓衡試験の結果採用しています。委員長は署長がしています。警部補、警部は判事、検事が試験委員となり知事が委員長となって試験により採用しています。
◎潮平寛保君 警部、警視はどういう段階をふんでいますか。
○警察部長(富本勉君) 警部は警部補の中から、警視は警部の中から任用しています。
◎潮平寛保君 そういう規程がありますか。
○警察部長(富本勉君) そういう規程はありません。
◎古見石人君 参与へ従来(戦前)の巡査から警部、警視になる課程についてお聴きしたい。
○副知事(當銘正友君) 巡査部長は部長採用規程により学術試験、実務考査によって採用していました。その外に特別任用もあります。
 特別技能をもつ者、普文をとおった者等であります。
 警部補、警部は勅令によって学科考査により、その合格者が任用され、警視は高等試験に合格した者が任用されていました。
◎大山眞整君 本案は、去った議会でも意見が合わず撤回となったものでありまして、今回も大同小異であります。将来全琉的に統合された時の事も考へ、他群島同様、警視又は警視以上の方から選任されることを望みます。
○副知事(當銘正友君) 警視の任用は、法規の示す銓衡委員により任用されるべきでありますが、八重山に於て、その跡を認めない。人事の管理が公正に行われて初めて、立派な人事行政が行われると思う。警視任用の制度について、改めるべきは、改めたいと思う。
◎大山眞整君 戦後任用条例不備の為、資格がないと云われたと要約されますが、そんな事では、いつまでたっても同じでありますから、その任用条例から早急に制定されたい。条例は条例として警視又は警視以上の方から任用してもらいたい。
○副知事(當銘正友君) 警察の人事行政に付いては、公安委員会によって、公正な運営がなされると思う。正しい人事の管理を期待する。公安委員会が自由な立場で人選し得る様、ゆとりのある条例を設けた方がよいと考へています。
◎星克君 修正動議があります。
 八重山群島警察本部長任用に関する条例、「八重山群島警察本部長は、警視又は警視(以上脱カ)の階級にある警察官の中から八重山群島公安委員会がこれを任命する」と修正致したいと思います。理由は、人選の範囲を縮小しては、銓衡に困ると云われました事は、尤もだと思いますが、現在学校も無いし、基礎的訓練は当分望めないが、大学を出て高文を通る者は出番が来る可能性がある。
 警察関係で階級は重要性をもっています。警部から任用した時は、警視を通り越して上位になることになります。沖縄でも警視以上とある様にそれが穏当だと思います。
◎潮平寛保君 基礎的訓練を経た者という条項は重要な事項であると思う。警察官は、特殊業務でありますから特別な訓練を要するのは、当然であり将来とも必要であると思う。
 又、八重山には、警視は二人しかいない。公安委員会の仕事をスムースに行わせる為に、原案を適当と認め支持するものであります。
◎星克君 唯今の意見に反対するものであります。人事は公安委員会によりなされるものであり警視が必要であれば、五人でも一〇人でもつくればよいでせう。警視は二人云々は理由にならないと思う。基礎的訓練を経た者からという事は、人選の範囲をせばめると云われるあなた方の持論とは矛盾する。修正案を主張します。
○議長(潮平寛保君) 外に御意見はありませんか。
◎佐久眞長助君 唯今の二番議員(星克君)の意見に賛成致します。
◎久部良正三君 先の議会で吾々が満場一致で生まらした公安委員が充分に活動できる様ゆとりをつける意味で、原案を支持します。
 議決機関が執行面に手を出す事はいけないと思う。基礎的訓練を経た者という条項は、是非必要と思う。原案を支持するものであります。
◎石垣用中君 現在八重山の治安は、沖縄に比べてよいと思います。基礎的訓練を経た者という事は、警察本部長任用の範囲を狭めるものであります。又高文を通った者が基礎的訓練を経ていないのでその範囲に入らないという事は、人材登用の意味からよろしくないと思う。基礎的訓練の課程を経た者とすれば、現在の八重山では、学校もないし、一層その範囲を狭めるものでありますので、基礎的訓練の条項は撤廃したい。また現在八重山では、警視は二名云々と言われますが、公安委員会はその職責に於て、いくらでも任用する事ができます。
 先程の二番議員(星克君)の意見に賛成するものであります。
○副知事(當銘正友君) (警察第(基本規程脱カ)三六条の説明)人事は公安委員が管理するから、必要とあれば警視を三人も四人もつくればよいという事は、反面、警部を規定しておいても必要とあれば、任用してもよいという事になります。宮古は警部から任用しています。沖縄では、任期限を一年以上とありますが、警察本部長との話合いで年限には、何の意味もないという事でした。警部を入れてあるのは、広く人材を登用するためにしてあります。原案のまま、警部からも任用し得るゆとりのあるものと致したい。
◎大山眞整君 議案第四十五号八重山群島警察本部長任用に関する条例制定については、各議員の意見もあり参与の説明もあり、既に論議は尽きたと思います。修正動議を認めるか、原案通りにするか、採決を願いたい。
◎議長(潮平寛保君) 本案は重要案件であり、休憩して慎重に研究したい。
◎佐久眞長助君 重要であるだけに本会議で審議致したいと思います。
◎潮平寛保君 基礎的訓練の条文は重要であり、是非必要だと思う。これを削除した時、将来に不都合を来すと思われるものです。それについて、副知事さんの御説明をもう少しお願い致します。
○副知事(當銘正友君) 警察の業務の内容は、一般民に対する強制面が多く従って社会的掣肘も多く、又生命を的に働く特殊な業務であります。法律知識のみでは、警察統制は、うまく運用できないと思う。
 本部長は基礎的訓練課程を経て初めて部下職員を統禦し得ると思います。警察の幹部は、巡査からのたたき上が望ましい。その意味で基礎的訓練……の条項は是非必要と思う。未経験者の闖入を防ぐ意味でも考慮すべきと思う。
◎星克君 唯今の参与の御意見は尤もであると思います。然しそれは、直接執行面に当る者は絶対必要であるが、本部長は一線に立つよりも寧ろ行政事務であり、戦前も文官が多かった。たたき上げも必要でありますが、それに限定する論旨には、反対致します。警視としておいても一向差支へないと思います。
◎佐久眞長助君 大体論議も尽きたし、採決して貰いたい。
◎議長(潮平寛保君) 採決に入ります。
 修正案に賛成の方は、手を挙げて下さい。
  (挙手する者四名 一、二、四、六番)
◎議長(潮平寛保君) 議案第四十五号八重山群島警察本部長任用に関する条例は、次のとおり修正可決致します。
  八重山群島警察本部長任用に関する条例
八重山群島警察本部長は、警視又は警視(以上脱カ)の階級にある警察官の中から八重山群島公安委員会がこれを任命する。
 「議案第四十六号公安委員の給料支給条例制定について」を上程致します。
  (書記長(眞玉橋長要君)議案第四十六号を朗読する。)

議案第四十六号
  公安委員の給料支給条例制定について
八重山群島公安委員の給料支給条例を次の通り定めたいので議会の議決を求める。
  一九五一年六月二十二日提出
  一九五一年 月   日
 八重山群島知事 安里積千代
八重山群島議会議長 殿

 公安委員の給料支給条例(案)
 第一条 公安委員の給料は月額三千五百円以内とする。
 第二条 前条の支給期日並びに支給方法等は、八重山群島政府職員給料支給規程による。
 附則
 この条例は一九五一年六月五日からこれを適用する。
◎知事(安里積千代君) 公安委員の給料は、監査委員、議会議員、政府職員の俸給との釣合を勘案して計上してあります。
○佐久眞長助君 議員、監査委員も何千円とありますが、公安委員だけ以内とあるのは、何か意味がありますか。
○知事(安里積千代君) 監査委員も以内としてありましたが、議会で以内とあるのを削除されました。
○佐久眞長助君 そうですか。
○副知事(當銘正友君) 業務の性質上、勤務は毎日と思われますし、又政治的拘束も他の委員よりも多いし、尚委員長、委員の額も差をつけたいと思って以内としておけばゆとりがあり、よいと考へ以内としました。三千五百円としたのは、政府の部長の俸給額を基準としました。
◎佐久眞長助君 沖縄、宮古における公安委員の執務の状況をお聞き致したいですが。
○副知事(當銘正友君) 大体週に一、二回位との事ですが、必要なときは、いつでも勤務する様になっている様です。
 尚委員規程により本部長が、公安委員の任務を或程度代行し得る様にできているようです。
◎大山眞整君 優遇して戴くのは賛成ですが、他の委員との振合もあり、三千円が適当と思います。
◎古見石人君 政府職員との振合を見ても、三千五百が適当だと思います。原案を支持します。
○星克君 知事、議員の俸給認定の際一応提出したところ民政府から訂正されたことは、議会の恥辱であると思います。今回もそんな事がない様にしたい。
○知事(安里積千代君) 知事、議員の俸給は、群島組織法第一五三条の規定に従い提出したのであって、公安委員にはそういう規定はありません。布令七号の範囲であればよいのです。
◎星克君 議会議員三千円、監査委員二千円との均衡を考へ、更に常時出勤の部長級と同額とすることはどうかと思う。六番議員(大山眞整君)の意見どおり三千円としたいと思う。
○古見石人君 業務の内容が監査委員とは趣きが異なり、社会的掣肘もあり、優遇してあげたいと思う。原案を支持するものであります。
◎佐久眞長助君 監査委員も中々苦労が多大多忙であります。仕事の分量について公安委員と比較をなさるならば、監査委員と同額とされたい。
○副知事(當銘正友君) 監査委員の御労苦に対しては、敬意を表しています。勤務の内容が監査委員は年四回、その他必要なときとありまして、公安委員は業務の性質上、監査委員よりは上位におくべきと思います。
○知事(安里積千代君) 先の議会で、四番議員(佐久眞長助君)さんが、三千五百円を提唱されましたので、御意見を尊重してやってあります。
○佐久眞長助君 時代が変りました。
○石垣用中君 現在の給料は生活の保障できるだけはありませんが、皆気持よくやっています。
 監査委員の月五百円は十日間として一日五十円となります。それから考へても足らないのは、又そこに均衡が必要であります。
○知事(安里積千代君) 監査委員の月五百円は、一日幾等を基礎にして算定したのではなく、監査があってもなくても、月五百円と致しました。その時も十日間出勤とみて、一日百円としてあるを佐久眞議員の意見を尊重して五十円と致しました。
○石垣用中君 その際本人は断っても政府の方で百円とされたかった。
○知事(安里積千代君) 監査委員との比較だけでなく、議員との比較はどうですか。
○石垣用中君 議員として申し上げます。
 未だ勉強中ですから、多くを望みません。
◎大山眞整君 論も尽きた様ですから、監査委員千円の差を認めて三千円として裁決して貰いたい。
◎星克君 三千円の修正案に賛成致します。
 原案では、他の議員、委員との均衡に不平がでると思う。週一、二日、一ヶ月十日内外の勤務ならば、議会とも略似たものであります。
 議長、監査委員長にも差別はないし、公安委員長のみ差のあるのはいけないと思う。
 又、三千五百円を規定して置いて下げるのは難しいが、三千円としておけば、あげるのは容易である。時期と状況によりあげて行きたい。
○副知事(當銘正友君) 沖縄の公安委員は運営規程により日数が決っていますが、八重山の場合は、毎日勤務を建前と致しました。
 運営規程が決ってから考へたい。原案の儘にして貰いたい。
◎星克君 毎日勤務を前提とせば三千円では少い。五千円位が妥当である。三千円を主張致します。
◎大山眞整君 三千円を希望致します。もし、今後に於て、委員長の事務上の負担が多ければ、考へるとして、監査委員、議員も同じ様にその委員に差異をつけずに、一応三千円に決を採って貰いたい。
  (佐久眞長助君、星克君、「賛成」と呼ぶ。)
○議長(潮平寛保君) 論議も尽きた様ですから、決を採ります。
 月三千円の修正案に賛成の方は、手を挙げて下さい。
  (石垣用中君、星克君、佐久眞長助君、大山眞整君、四名挙手)
◎石垣用中君 毎日勤務、その他の状況により、上げる必要を認めた場合は、上げることにして、月三千円と致したい。
◎議長(潮平寛保君) 公安委員の給料は一番議員の意見も加味して、月三千円に修正可決致します。

  公安委員の給料支給条例
 第一条 公安委員の給料は月額三千円とする。
 第二条 前条の支給期日並びに支給方法等は、八重山群島政府職員給料支給規程による。
  附則
  この条例は、一九五一年六月五日からこれを適用する。

 月曜日( 日)まで会期を延長致します。
 本日は、これで休会致します。
 (午後零時十五分散会)

 本日の会議に附したる事件
 一 議事日程第一 議案第四十五号 八重山群島警察本部長任用に関する条例制定について
 一 議事日程第二 議案第四十六号 公安委員の給料支給条例制定について

 出席議員及び参与
  議 長   潮平 寛保君
  副議長   大山 眞整君
  議 員   石垣 用中君
   〃    星   克君
   〃    佐久眞長助君
   〃    古見 石人君
   〃    久部良正三君
  知 事   安里積千代君
  副知事   當銘 正友君
  経済部長  眞榮田 登君
  工務部長  花城 永彭君
  厚生部長  崎山  毅君
  会計長   宮良 永益君
  財政部次長 石垣 直文君
  警察部長  富本  勉君
  文教部次長 亀谷 長行君
  厚生部次長 三島 保夫君
  地方課長  田盛 正雄君
  主計課長  浦崎永八郎君
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