戦後初期会議録

組織名
八重山群島議会
開催日
1951年06月02日 
(昭和26年)
会議名
第3回八重山群島議会(定例会)[6]
議事録
一九五一年六月二日(土曜日)
 午前十時四十分開議

議事日程第六号
  午前十時四十分開議
第一 議案第四十四号 八重山群島公安委員選任について同意を求むる件
 一 八重山水難救護補助金増額申請について
 一 石垣中学校敷地並に校舎瓦葺平家無償払下の件
 一 与那国町治安裁判所に登記所設置方の件
 一 群島政府直営陸運事業の中止並に陸運関係行政機構の整備に関する陳情書
 一 政府印刷機貸与について陳情書
 一 政府工務部鉄工所事業停止及工作機械払下取計方御願いについて
 一 政府工務部電気事業民間移譲陳情について
 一 政府運輸所事業停止方の件
 一 臨時監査立会議員決定申出の件

◎議長(潮平寛保君) 開会致します。(午前十時四十分)
  (書記(平得泰次君)出席議員及参与の報告をなす。議員全員出席、参与全員出席、運輸所長仲程長宜君、事業課長前新雄三君、追加参与として出席)
○星克君 予定の日程内に於て政府の一般的な施政の趣旨及方針を承わりたいと思います。
◎議長(潮平寛保君) 議案の審議終了後に致します。
 「議案第四十四号八重山群島公安委員選任について同意を求むる件」を上程致します。
  (書記(平得泰次君)「議案第四十四号八重山群島公安委員選任について同意を求むる件」を朗読する。)
◎知事(安里積千代君) 公安委員が再度に亙り誕生を見る事ができなかった事は、政府としては甚だ遺憾であり、また郡民に対しても申し訳ないと思っています。政府としては一日も早く公安委員が生れ、警察行政が円滑に運営されるようお願い申しあげます。
 大山永太郎氏は中央大学法学部を卒業され、台湾専売局の書記に命ぜられ、その後八重山支庁の事務官になり、更に八重山民政府の官房長であられました。
 翁長良整氏は沖縄県属として八重山支庁庶務課長として勤務なされ、新選挙法の施行されるや選挙管理委員長に就任、現在石垣市庶務課長兼社会課長として勤務しておられます。
 翁長信全氏は沖縄師範を卒業なされ、教育家として長い間勤められ、石垣市長に就任なされ、退任後農業に励んでおられます。
 以上提案の趣旨及び説明を申しあげて、議会の同意を希望致します。
◎星克君 本会議に於て同意を求められました委員は立派な人物であり、最適任であると思います。速やかに任命して戴き警察行政の円滑なる運営を期していただきますよう、満場一致で同意を希望するものであります。
  (全員「賛成」と云う。)
◎議長(潮平寛保君) 議案第四十四号八重山群島公安委員選任について同意を求むる件は満場一致を以て原案同意に決定致します。
 陳情書を上程致します。
  (書記(平得泰次君)「八重山水難救護補助金増額申請について」を朗読する。)
◎議長(潮平寛保君) 休憩して懇談致したいと思いますが。
◎星克君 その責任を明らかにする為、本会議で決めたいと思います。
◎佐久眞長助君 唯今の件については、八重山に於ては是非必要であります。八重山の現状としては、四万郡民が全部救護会に入り海難救護に当るべきであります。
 申請のとおり認定し、八重山水産業の活発の為に同情すべきだと思います。
◎星克君 唯今の意見に同意するものでありますが、或る漁民がこう云う事を言っていました。「救護会にガソリンを貸したが、その返納がないので非常に困る」云々と……そう云うのがあってはならないと思う。救護会の申請は必要ではありますが、これは議会の権能でなく、知事の権能でありますので、議会がこれを取扱うのは職権の侵害である。
 故に知事へ回付して貰いたい。
○議長(潮平寛保君) 唯今の意見に御異議はないですか。
  (全員「異議なし」と云う。)
◎議長(潮平寛保君) 本件は議会の権能外でありますので知事へ回送致します。
  (書記(平得泰次君)「石垣中学校敷地並に校舎瓦葺平家無償払下の件」を朗読する。)
◎古見石人君 石垣中学校は群島管理財産になっているのですか。
○財政部次長(石垣直文君) 今のところはっきりしていません。民政官府に問合せて処理さるべきだと思います。
◎石垣用中君 本件は前政府時代に契約して借受料を支払うようになっていますが、民政官府の管理財産であるか、所属がはっきりしていないので、民政官府に問合せた後で処理致したいと思います。
◎議長(潮平寛保君) 本件については、その管理権即ち帰属がはっきりしていないので、その帰属がはっきりしてその後で処理するように決定致します。
  (書記(平得泰次君)「与那国町治安裁判所に登記所設置方の件」を朗読する。)
◎久部良正三君 本件については唯今朗読がありましたとおり、とりわけ町民の登記費用の捻出は苦労も莫大なもので、精神面の苦労に対しても同情されるべきものがありますから、御審議の上是非実現させて戴きますよう希望申しあげます。
◎星克君 本件は裁判所と関係があり、組織法第一七七条により群島政府の権限であり、議会の権能はないと思います。御研究の上しかるべき官庁へ回送すべきものであると思います。
◎議長(潮平寛保君) 本案は組織法第一七七条及び政府予算とも関係がありますので群島政府へ回送致したいと思います。
○星克君 群島政府にこれを設置する権限があるならば、群島政府へ回送し、なければその権限のある所へ回送して下さい。
○議長(潮平寛保君) そういうふうに処理致します。
  (書記(平得泰次君)「群島政府直営陸運事業の中止並に陸運関係行政機構の整備に関する陳情書」「工務部鉄工所事業停止及工作機械払下取計方の件」「工務部電気事業民間移譲陳情について」「政府運輸所事業停止方の件」を朗読する。)
◎久部良正三君 政府直営の陸運事業の中止に関する陳情書でありますが、運輸所は引継はまだできていないと聞いていますが、その実情を説明して下さい。
○事業課長(前新雄三君) 御説明申しあげます。
 現在陸上トラックは四台であります。
 主なる目的は名蔵線の運行と復興事業の協力に重点をおいています。名蔵線は乗客も少なく欠損をしていますが、公益を尊重する為に確実に運行しています。川平線は民営でやっていますので、民業の圧迫を避ける為に廃止しています。前政府よりの引継はまだ完了していません。
 配電所関係、配電事業は継続してやっていますが、光力が弱く住民に対してすまないと思い明るい電灯を送りたいと努力しています。即ち補助として登野城、新川に各一基設置して光力の増強をはかり、それと併せて未点灯を補助しています。現在新しい機械を購入し六月末頃から点灯できる運びになっています。その時には未点灯者にもだいぶゆきわたる事ができると思います。運営状況としては、引継当初は種々の面で相当な出費があり、その運営に随分困りましたが現在では順調にいっています。引継後に於て八三、〇〇〇円の利益を得ています。
 鉄工所関係、引継前からの事業をそのまま継続してやっています。主として復興事業の協力、八重山産業発展の為に協力しています。事業状況は未製品のものがありますのでその製作整理に馬力をかけて完成を進めつつあります。新設置としては「鋳物」が最も重要なるものであります。鉄工所に「鋳物」がないのは大きな不備でありますので現在「鋳物」設置をする為に準備を進めています。経営関係は民間からその経営について民間業が圧迫をうけていると云うのは聞いていません。
 製材所関係、製材所は復興事業の促進を主眼として大いにそれを活用しています。営林丸、加工場、製材所を以てその経営を進めています。製材所関係に於ても、民間業者から民業の圧迫と云ふ非難を受けた事はありません。むしろ民間業者と打合せて事業を進めています。営林丸に於ても民間の要求に応じてやっています。尚原木についても、民間業者の不足の場合にはその供給等もやっています。引継当時は鋸台二台破損していましたが、引継後一台はすぐ修理し一台は目下修理中です。製材、鉄工合せて十一月から今までに約十二万円の収益をあげています。
◎大山眞整君 唯今の陳情書に対してその意見は尊重するものでありますが、運輸所については、監査委員がよく調査してそれに伴う処置をして貰いたい。
 配電所については、予算にも計上されていますし、電灯事業が民間事業に及ぼす影響もどう云うものであるか、よく調査して適当なる処置をなすべきであり仲村鉄工所については、引継当時の状況について関係者の説明を願います。
○事業課長(前新雄三君) 引継については、アウトラインを見ているだけでその内容の裏面については、はっきり知りませんが仲村鉄工所を軍が買上げ、その後軍から造船組合が払下げ、更に政府が買入れた様になっています。
◎佐久眞長助君 政府自体で事業をなしてよいか、否か、疑問を持つものであります。他群島は政府自体で事業を経営していません。八重山のみがやっているのは異例であると思います。終戦当時は資材及び資金の入手困難であり政府は民業の助成と云う意味で余儀なく事業をなした事と思います。政府は民業をよりよく勃興させる為に常に助成しなければならないと思う。
 現在では民側としても、種々の資材の入手は容易であり資金面もスムースにできるし、民業育成の意味で政府自体の事業を廃めるか、或いは民に移管するかして、民業の発展に力を尽すのが大事であると思う。そして政府は財政面については、その外に何等かを考慮してできる事だと思う。
○経済部長(眞榮田登君) 民間企業の内容について、八重山のみは異例であると言われましたが、その異例についてもう一度考慮して貰いたい。即ち、八重山の行政運営は、八重山住民の税金をもってまかなってゆくのが建前でありますが、その税金を全部直接歳入にもってのは(ママ)、民負担の重荷になる事であり、経済状況による担税力面を考慮して、前政府が事業を経営したのは当然なる処置であり、それによって税金の民負担を軽減策を講じたものと思います。事業収入として五九万円余の額については、経済部としてもよく研究して、時期によって民に移す計画でありますが、陳情の様に、実際に民業の圧迫があるか、否かと云う事をはっきりと究明検討する必要があると思う。
 尚事業所については、八重山は公益面も大事でありますが歳入面に重点をおくべきであると思う。
 配電所についても、その事業内容を良く検討して見る必要があると思います。
◎潮平寛保君 日本人財産について新聞で、日本人財産は国家で管理するように報道されていますが、現在政府で使用している機材は日本人財産であります。
 運輸所も然りであります。今政府がこれを民に払下げる場合、後日日本政府がその返還方を要求した場合、複雑になって困るんではないでせうか。それで今、民に払下げる事は時期尚早であると思います。
◎星克君 本問題について事業は原則として政府が政府自体で経営するのは不当であると云うのは、意見の一致するところであります。払下げについては時期の問題であると思いますが、現状として運輸所は直ちに払下げたい。
 それに伴って陸運規程の設置も急務であります。現在陸運規程がない為、ブレーキ、警笛の不備、乗車定員の制限等のない無秩序なものがあり、規程がないので止むを得ないものであると思いますが、それは政府自体がブレーキ、警笛の不備、定員外の乗車等の車を所持しているからだと思う。行政官庁として速かにそれを規制し、取締りをして戴きたい。ガソリンの取締りも今の処不完全であります。そう云う面から考慮して政府は、事業を止めて取締りをなすべきであると思います。
 八重山では、陸運業者が経営困難で沖縄に引上げる実情にある。それは人口の関係、交通網の僅少、八重山島の狭隘等であると思いますが、沖縄では三ヶ月で減価償却をすると聞いています。そう云ふ面からも考慮して八重山は政府自体で運輸事業をなす事は、ますます民営八重山陸運業の圧迫を来すものと思う。それで政府自体で陸運事業をなすべきでないと思う。運輸所の事業は、歳入に欠損はあっても黒字はないと思う。むしろ民に移管して民の運輸事業の勃興を助成し、運輸所による収入予算は税金としてもよいと思う。
 電気事業、鉄工事業も前政府時代よりの払下を希望する民の声であります。
 その面にもいろいろ技術的に調査する必要もあり、議決機関、行政機関ともよく研究して適当に処理していきたい。
○知事(安里積千代君) 政府が事業をしてはならないと星議員は言われましたが、群島組織法には許されています。ただ制限を受けているのは、民業の圧迫をしないとの趣旨であります。
 八重山の現状でどう処理するかと申しあげますと、或時期に民に移すべきであると原則的に考へています。
 しかしその時期と方法を誤ると多くの弊害をもたらすと思う。
 政治の責任者として本問題は慎重に臨まなければならない。時期の問題でありますが、本陳情にあるのは多くが外国財産であり、それに群島政府財産があり、その施設は区別し難い。
 講和条約も近づいているし、従ってその時に於て、その区分もはっきりされる事と思います。その帰属がはっきりしない現状に於ても、先の見通しがついていますので今、これを民に移管するのは、講和条約の実施後に支障を来す事になりはしないかと思う。
 税の件、税の問題は特別事業税は納めています。法人に移した場合、今までの事業収入は税金に還元して現在までの収入となり得るや疑問を感ずるものであります。現在までの収入より減ずると云ふ事は、それだけ政府の税外収入の減となり群島住民の負担もそれだけ大きくなるものであります。
 運輸所の件、星さんは、陸運事業を現在やっておられますが、東運輸でもその運営は困難を来たしていると思います。今、直ちに民に移すにしても、小さな八重山で果して移して一般の業者が事業を経営してスムースにゆけるかどうか疑問です。
 又陳情書によると、最初から政府のトラックを目当にして会社を創立するようであります。会社を創立するのにその方法として払下の財産をもって、企業すると云うのは根本的に間違いであると思います。真に八重山の産業発展の為に寄与する為の事業として購入すると思うならば、民は購入できるし、購入の後、その補充として払下るならばよいですが、陳情の払下四台を以て企業すると云ふのは根本的な間違いであり、又払下るにしても、まだ帰属のはっきりしない財産を目当にするのは誤りであると思う。
 復興事業の件について、その請負者に機械及物的方面の援助をするのが少ないので、工事の進捗上困っているんではないかと思います。払下するとするならば、むしろ八重山の復興事業に携っている関係業者に払下てやるのがよいと思います。
 尚、川平線、名蔵線も確実に配車すると云う確証を得なければ、政治の責任者として軽々しく払下等はできません。
 又時期により事実移譲するとするならば、委員を設ける必要があります。そして一般に公表して公入札させるべきであり、特殊な陳情により、特定の人にのみ払下する事はできない。尚、陳情書には、民間業を圧迫しているとありますが、その圧迫について、数字的に、具体的に何等の根拠も示されていませんので、どう云う風に、どう云う面が、どれだけ圧迫しているか、その解釈に苦しんでいます。私はむしろ圧迫している点はないと思います。
 又トラックが沖縄方面へ出て行くのは、政府が運輸所を経営しているので、その圧迫により出て行くと云う理由ではないと思う。沖縄に行ったのは、政府が事業をやった為に行ったとするならば、政府としても考へるでせうがそれはよく調査して見る必要があります。
 陸運法規の制定には大いに賛成するものであります。これについては制定を早急ならしめたいと思っています。
 電気事業の件、現在八重山に於て小規模な民間企業がたくさんあるのは、一種の畸形であると思う。小さな地域に小さな電気事業が多数あるのは、むしろ副業的なものであり、電気事業の正しいあり方であるとは言えない。電気事業に於ては、その配電区域が拡張される時が、かえってその料金の低廉となり民の負担も軽減される事と思う。
 自由企業の件については、どれもどれもが電気事業をやると云ふのは、狭隘なる八重山では間違いであると思います。陳情書にある様に果して今の様な組織化した運営ができるかどうか疑問をもつものであります。それよりもむしろ小企業家が一丸となって大きな電気会社等を作るのがよりよい公益性を増すものであると思う。亦、電気事業の規則の制定も必要であると思う。電気事業機械も外国財産がその大多数を占めておりその帰属もはっきりしていません。
 尚、アメリカに於ける電気事業等の大なるものをそのまま八重山に当てはめるというのは、間違いであると思う。結論としては、陳情書にある様に政府事業は民に移管すべきものであると思っています。
 民移管については、その時期、方法、八重山の経済、工業等の諸条件も慎重に考慮し、民の負担面もよく調査研究してやって行きたいと思います。
 外は陳情書の件毎に逐次説明中しあげたいと思います。
◎石垣用中君 組織法では、事業をやってもよいようにありますが、知事は、時期と方法によりいつかは民に移管されると申されましたが、直ちにその移管委員を設けて、監査委員のみにまかせず、移管委員に調査させると云う意味でその委員会を直ぐに作りたいと思います。
◎久部良正三君 八重山は他群島に比して復興事業が遅れており、その完遂に最大の力を注いでいる途上であり、政府事業を民に移管する事は、その完遂に支障を来すものであり、時期もまだ早いものであると思う。
◎石垣用中君 政府事業は原則として民に移管する方針であり、移管事務をするのは早くないと思う。
 調査研究するのは早くはないと思う。
○工務部長(花城永彭君) 事業部の引継ぎもまだ済んでいないし、それを済ませて、その後でなすべき問題だと思います。
 民政丸(民生丸カ)の件、ダンベー船の件、その他整理すべきものがありますので、それから整理すべきであると思います。
○知事(安里積千代君) 研究機関として設けるのはよい事であると思いますが、数字的にどれだけ政府事業が民業を圧迫しているか、或いは政府が事業を民に移管した場合、政治的に財政的にどうなるかと云う面の研究調査等も必要でありませう。
◎潮平寛保君 前にも山城興常氏を長とした調査委員として調査に当りましたが、時期が早いと云う事になりました。今でも民移管はまだ早いと思います。
◎古見石人君 事業所関係では、引継を完了しないのがその他にもあれば、それも議会に報告して貰いたい。
○星克君 唯今の話は議題外であり、全議員が調査してやってゆきたい。
◎久部良正三君 今だに引継を完了していないのに移管委員を設けるのは不必要だと思います。
◎石垣用中君 それだから委員は余計必要だと思います。
 吾々は前政府の議員でもないので立場も違うと思います。
◎古見石人君 移管委員を設けずに、全議員が政府と相タッチして調査してはいかがですか。
○議長(潮平寛保君) 本案については、調査、研究して処する必要がありますので調査研究の後処理したいと思いますが。
  (全員「賛成」と云う。)
◎議長(潮平寛保君) 本件群島政府直営事業の中止並に陸運関係行政機構整備に関する件は、具体的な調査、研究の後で処理致します。
 休会致します。(午後零時二十分)
○議長(潮平寛保君) 開会致します。(午後二時十五分)
  (書記(平得泰次君)政府印刷機貸与についての陳情書を朗読する。)
◎佐久眞長助君 群島財産の貸与については、その貸与条例を作ってでないとできないと思う。故に財産貸与条例を速やかに作って貰いたい。
○知事(安里積千代君) ごもっともな御意見です。
 本件についてはこの機会に若干今までのいきさつを申し上げて御了承を願います。
 これは前政府より第三者に貸してありました。一昨年の契約で、契約者は料金が高いといって減額を願い出たので、その時に公入札を致しました。一番が何某、二番は宮良長芳氏でした。一番は前の契約者でその当時に料金が高いので減額を申し出たと云うので、二番落札の宮良長芳氏に一万円で昨年の四月貸付けていたものです。
 所が宮良長芳氏七月迄は借受料を納め、八月以降はこれを納めていません。その当時は選挙でごたごたして、致し方がなかったとも考へられますが、その当時の部長会議で公入札による貸付料の一万円は五千円に切り下げられ、八月から五千円となり、契約は昨年の末月まででした。貸付料は公入札によって一般に公表したものであり、その途中に於て料金の切下げ等は適当なる処置ではない。公入札の趣旨に反するものであります。
 若しこれが許されるとするならば、今後公入札の何の意味もなさない。それで政府としては、四月以降は一般に公入札するか、或いは公報の発刊に使用するか、政府自体で印刷に使用するか、目下考慮中です。
 印刷所は元県有財産であり、それが群島政府に於て管理していたのが、民政官府の管理に移されたものです。それで政府としてその貸与方を民政官府財産管理課に陳情しましたが、これは前から借りていた人に貸すのが優先であるとして宮良長芳氏に貸したのですが、内部の諸機械は群島政府のものであり、政府は此の処置に関して民政官府財産管理課と意見の相違を来しているのは甚だ残念です。
 目下政府としては、上司に伺をたててその命に従いたいと思います。群島政府が意見の相違を来たしているのは極東軍指令に違反するからであります。(極東軍指令第十項の朗読……外国財産の取扱について示されている)以上示されているように、外国財産取扱はそれが根本であり、亦群島政府の施設であるとすればこれを民に無償で払下げるのは、その指令に反すると思います。該物件を貸すのに、前から借りていたものに優先的に貸すとなれば、むしろ群島政府が借りるのが建前であります。
 宮良長芳氏は政府からそれを借りていましたので、前に借りていたものが優先的に借りるとなれば、それは当然政府が優先して借りるべきであると思います。国際上外国財産とは、占領国によって管理されるのが当然であります。
 然し市町村は、民政官府財産管理課の管理下には入らないが、県有財産は疑義を持つものであります。一つの県が分割されて占領されたら異議はありませんが全部を統轄されて占領されたら、これが全部民政官府財産管理課の管理下に入るとは疑問です。
 現在宮良長芳氏に貸してあるのは、極東軍指令に反すると思う。故に政府としては順をふんで、意見をしています。それについては、沖縄でも今審議中であると聞いています。その回答があって処理をする必要があると思います。現在建物は宮良長芳氏が借りておれば致し方ありませんが、中の印刷機は群島政府のものであります。つまり財産管理官の処理により印刷機の設備を移動することによって郡民に負担をかけるのはいけない。それで政府に貸して貰いたいと思っています。
 亦これは、処理については、公入札にすべきだと思います。亦貸与については、常識的に考へて、八重山タイムス紙は政府の反対の立場にある。印刷機を政府の反対党に貸すのは、政治の運営上どうかとも思われますが、貸さないと云う事ではありません。唯方法として是非公入札にすべきであります。
 政府は特殊な陳情により、特定の人に貸す事はできません。以上の様な見解であります。
◎星克君 四番議員(佐久眞長助君)と同意見であります。
○議長(潮平寛保君) 四番議員(佐久眞長助君)の意見どおり条例制定の後に致したいと思います。
  (全員「賛成」と云う。)
◎議長(潮平寛保君) 本案、印刷機貸与についての陳情の件は、貸与条例制定の後に処理すべきであると決定致します。
◎星克君 群島政府の今回の教員異動について、政府の見解と趣旨をお聴き致したい。
 日本では教育委員会が設置され、組織が一大変更を来しています。全琉的にもその動きがあります。本議会に提案すべく教育委員会条例を起案中でありましたが、政府が制定するような事を聞いたのでやめました。
 此の度の教員の異動に対して世間の風評は非難ごうごうたるものがあります。それは世評ではありますが、聞き捨てにできないのが二、三あります。
 八重山教育界に於て、その改善の急を要するものは、文教部当局が独自の立場に於て慎重に公平に処すべきであるにもかかわらず、政党の軋轢によりそれを左右されるのは、その改善を阻害する最も大なるものであります。
 今度の異動は文教部当局の意思よりも政党に動かされたと云ふ事であります。それを信じたくはありませんが、そんな疑念を住民に持たせたことはその裏に何かあると思われます。甚だ遺憾に堪えない。
 本会議に教育委員会規則を上程すると思って起案中でありましたが、できませんでしたが、政府は提案すると聞いていますが、政府として教育委員会の設立の用意ありや否や、お聞きしたい。
○知事(安里積千代君) 教育は政党に左右されず独自の立場に於て、慎重に公平に処さるべき事は賛成であります。
 今度の異動について政党色により、或いは政党的圧制等によってなされた事はない事をはっきりと申しあげます。前政府時代にまげられたのは今度是正したのはあります。或はそれが反能(応カ)的にそう見られたと思います。
 尚、教育、文化面については、その専門にまかすべきであると思います。今度の異動について個人的に不平があったと思われるのは教育の均等にあると思う。今までは中央集権的であった。そして地方方面にゆくのは優秀教員でも左遷であると思っていました。これは教育の機会均等から地方にも優秀な人材を配った訳で、そう思ったでせう。
 教育委員会については群島組織法にあれば、公安委員等と同じ様にできますが、それがないので困っている。
 過般全琉教育会が沖縄で開かれ、文教部長は参加致しました。現在、全琉を含めた案が提案されています。近い中に中央政府により法的に発布されると思っています。その時に全琉の統一された教育委員会が設けられると思う。八重山に現在それができてもそれは、諮問にすぎないと思う。全琉が統一されるまではそのままでよいと思う。
◎星克君 土木面に関してお聞きしたい。
 マクラム道路の橋梁の内で四ヶ所破損したと聞いていますが、請負当時から耳にしています。
 請負者が材木を石の代りに使用しているとか、石の代りに材木や土砂を橋の袖(袂カ)に入れてもよいから請負えとか言った様ですが、とにかく結果は破壊したことは遺憾であります。一日も早く修復して通れる様に念ずるものであります。本工事は検査済ですか。或いは修復は請負者に於てやりかえさすべきか。その責任はいづれにあるのですか。
○工務部長(花城永彭君) 本工事は昨年二七三、〇〇〇円で、昨年十二月十八日に着手、本年三月二十一日に竣工、大濱技官が検査しています。この前の大雨により破壊したと聞いています。いろいろ話を総合すると、設計の不備にあると考へられますが、技術の不備にもあると思われます。然し一旦支払ったものは致し方ありませんが、設計の不備、技術の不備もあるので両方で寄り合ってやろうと計画しています。
 また、この工事の最中に新年度の工事計画で、種々の調査等で結局二ヶ年分の工事の設計等で職員の手の足りないのもありました。
◎石垣用中君 通り橋の件ですが、橋梁は残っているが、袖(袂カ)を流されたと聞いていますが、それはセメントで作ってあるが、そんなに弱いものですか。
○工務部長(花城永彭君) セメントを使っているが、話を聞くと技術のまづい点があり、結局セメントをもう少し使用すればよかったと思っています。
○知事(安里積千代君) 素人考へで見て、あの程度の水量では、あの程度の高さでよいと思っていましたが、一番欠陥と見られるのは、水流に対して橋の袖(袂カ)が直角でなかった事であり、それに対して直角であればよかったと思う。そこは水流が移動するので、脚を置いた地点が移動したと思われる点、橋脚の下が基礎工事の不充分であった為、それが流されて破損した点。三つ目は袖(袂カ)を残して外は良いようです。
 最も此の橋は、水流の関係で破損したようです。即ち湾曲の件で、それを真直にするとよかったんですが、それができていなかった関係で結局水流に対する橋梁の置場の判断が誤ったものと思う。
◎星克君 私も町長時代に経験があります。とおる橋の築造の時、その土地の事情に明るい人に聞いて知事に進言して造りたいと思っていましたが、しかし技官がめがね橋にせねばならないとかで、とうとうそれに決まった訳であります。技術屋は往々にして永久的工事を忘れがちであります。
 故に今後のその面の設計には、その土地の事情に明るい土地の古老に、水流、水量等を聞いて設計して貰いたい。入札については直ちにこれが破損した場合は、政府が困らないようによく工事人も選定してやって貰いたい。
 以上二つの点を希望申しあげます。
◎石垣用中君 衛生問題について、最近移民の問題が活発化されています。
 それに併(伴カ)ってマラリアの防疫を考慮すべきである。最近マラリア患者が川平、西表に発生したとかを聞いていますが、最近のマラリア問題についてその状況をお聞きしたい。
○厚生部次長(三島保夫君) 三月から六月までに一七名の患者がいます。地区別に示しますと平得部落一名、伊野田部落一名、星野部落三名、西表島東部地区一名で昨年は三月から五月までに一六名、本年は三月から五月まで一七名であり、これは暴風雨とかの為に増えたと思う。尚夏季に向い、その発生の大になるので各地区に対して注意を喚起しています。
 昨年中は三五名であり、今年は現在までに二五名でありますが、総数の半分は六月から八月までと思いますので、各地区にその予防対策につき注意を喚紀しています。
◎石垣用中君 薬品問題について、前政府時代に四八〇万とか、相当時価の薬品が無くなっているとか、いろいろ風評があったようですが、その実情をお聞き致したい。
○厚生部次長(三島保夫君) その当時は受払簿により一、〇〇〇余本不足とありましたが、警察の調査の時に、受払簿の他に領収証によりわかってきました。現在まで不明なものは、五〇〇余本であります。
◎石垣用中君 群島組織法第二条第二項にある判事及び検事の候補者として有資格者を推薦することは群島の事務であり、そう云う場合は議会に諮るべきではないですか。
○知事(安里積千代君) それは第一一章裁判所との関係にあります。これは特別布告第三八号により特別に人事に関するものであり、議会の同意はないでもよいと思う。
 故に判事及び検事の候補者として有資格者を推薦は知事の権能だと解しています。
◎石垣用中君 薬品の件ですが、これは警察が調査してきれいに整理になったと聞いていましたが、未だ未整理が残っておれば、監査委員に調査せしめて貰いたい。
◎佐久眞長助君 群島組織法第二条C項、第三七条D項の税の問題について、政府としてこの二つの税に関するその対策はありますか。
 前は所得税調査委員会をして、公平なる賦課をしていましたが、今はそれがありません。これは議会の議決を経て後でやるべきだと思っていますがいかがですか。
○税務署長(西石垣正行君) 今までは調査委員の諮問に附して税務署で決定していました。ただ今までは調査員は税務署の諮問に答えるだけでした。現在は各人の申告によって、それが正当にできているか、否かを調査して不正の申告であれば追加し、或いは補正して決定しています。然し現在の額は確定したものでなく来年の一月になってその時で決定致します。調査委員は設けても、設けなくてもよいと思います。
◎佐久眞長助君 組織法第三七条をよく研究して貰いたい。
○税務署長(西石垣正行君) 法律に定めるものの外、議会の議決を要すると解しています。議会が各種目毎に関与するのは、第三七条は該当しないと思う。
◎星克君 沖縄群島に於ては税法を制定して民政官府に申請したが民政官府は個々でなく綜合税法として、地方税法をつくるようにと沖縄の新聞は報じている。税の問題について議会が参与できないのは民主政治でないと思う。税についてはとりあえず条例で定めるべきであり、旧法により徴収するとか、軍指令、府(布カ)令、布告、外は何とかではいけないと思う。すべては条例によって定めるのが大事であると思う。群島組織法にある訳文の群島税は間違いであります。八重山に於ては、条例により徴収しているのは何もありません。最も民の関心事である税に、現地に最も適当なる税制を規程(定カ)して貰いたい。
○知事(安里積千代君) 二番議員(星克君)の意見を尊重して考慮致します。御参考までに申しあげます。企免の手数料の件ですが、企免料はすべて二〇〇円であり、その実施上不都合を生じていますが、その規則に抵触するような税法を作ることはできないのですが、議会に於て改正の議決を経て来ますれば、改正認可をする様にも聞いています。政府と致しましては、企免料に不都合がありますので、改正方申請しています。
○佐久眞長助君 二、三日前の新聞によりますと、事業所の所要経費を民政官府へ返納するとありますが、それはどう云う性質のものでありますか。
○会計長(宮良永益君) それは納付金であります。
○知事(安里積千代君) 一月から民政官府から受けたからであります。民政官府からの給料支払いはどう云う関係でそうなっているか知れませんが、群島政府の職員の給料は民政官府から支払う様になっているので、その給料額は事業所の一般会計納附金として一般会計に納入している状況であります。
◎潮平寛保君 当局に希望申しあげます。
 八重山の発展を阻害するものは、年々来襲する暴風雨である。その対策は港湾設備の完備、船溜、造林等であります。
 今までに海に対する設備はありますが、陸に対してはあまり関心がないようです。
 アイレス台風による農作物の総合的な被害はわからないが、個人個人に聞くと、五割六割の被害があるように聞いています。
 それに対しての策はありますか。
○経済部長(眞榮田登君) 五二会計年度の予算編成の時は防風林の件もありましたが、鳥害防止が先であると思って今年は予算に計上してありません。今年は鳥害、野鼠の害を徹底的に防止駆除致したいと思っています。
 アイレス暴風雨による被害は一八%となっており、その他稲熱病合せて二二%であります。
 然し例年よりも今年は、全般的に増収を予想しています。
◎潮平寛保君 毎年暴風雨がありますので、政府当局にその面も善処して戴くよう希望致します。
○工務部長(花城永彭君) 船溜の件を取りあげられてありますが、海上面も大事であり、亦、暴風雨の話もあり農作に及ぼす被害の甚大もありますが、建築面も考慮を要すると思います。建築技術の向上を期し、その被害を防止したいと思っています。
○議長(潮平寛保君) 本会期中真剣に審議して戴き感謝致しています。難産を続けていました公安委員が生れて、議会の責任に於て喜んでいます。
 地方巡視の件がありましたが、今回は取止めと致します。
◎知事(安里積千代君) 今回第三回群島議会を招集致しまして、提案について熱心に審議して戴き感謝致しています。
 議長から今先も話がありましたが、公安委員を同意して戴き八重山の政治行政を軌道に乗せて戴きます事を感謝致します。従来の日数よりも少なく、議案に熱心に研究して戴き大きな示唆を与へて戴いた事を感謝しています。今後も全力を尽して、全郡民の為に努力致したいと思います。不備や間違いは議会も協力し、是正して正しい政治をさせて戴きますようお願い致します。
 誠に有難うございました。
◎議長(潮平寛保君) 誠に有難うございました。
 第三回八重山群島定例会はこれを以て閉会致します。
  (閉議午後三時三十分)

 本日の会議に付したる事件
一 日程第一 議案第四十四号 八重山群島公安委員選任について同意を求むる件
 一 八重山水難救護補助金増額申請について
 一 石垣中学校敷地並に校舎瓦葺平家無償払下の件
 一 与那国町治安裁判所に登記所設置方の件
 一 群島政府直営陸運事業の中止並に陸運関係行政機構の整備に関する陳情書
 一 政府印刷機貸与について陳情書
 一 政府工務部鉄工所事業停止及工作機械払下取計方御願いについて
 一 政府工務部電気事業民間委譲陳情について
 一 政府運輸所事業停止方の件
 一 臨時監査立会議員決定申出の件

 出席者は次のとおり
群島議会議長  潮平 寛保君
   副議長  大山 眞整君
   議 員  石垣 用中君
    〃   星   克君
    〃   佐久眞長助君
    〃   古見 石人君
    〃   久部良正三君
  群島知事  安里積千代君
  副知事   當銘 正友君
  秘書長   仲程 長宗君
  経済部長  眞榮田 登君
  文教部長  宮城 信勇君
  工務部長  花城 永彭君
  会計長   宮良 永益君
  総務部次長 田盛 正雄君
  経済部次長 石垣 英政君
  財政部次長 石垣 直文君
  厚生部次長 三島 保夫君
  警  部  天久 長政君
  税務署長  西石垣正行君
  主計課長  浦崎永八郎君
  運輸所長  仲程 長宜君
  事業課長  前新 雄三君

右会議の顛末を記載し相違ない事を証する為にここに署名する。
 一九五一年六月二十六日
八重山群島議会議長
        潮平 寛保(印)
 〃 議 員  大山 眞整(印)
 〃 議 員  古見 石人(印)
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