戦後初期会議録

組織名
琉球臨時中央政府立法院
開催日
1951年04月03日 
(昭和26年)
会議名
琉球臨時中央政府立法院 1951年4月3日
議事録
琉球臨時中央政府立法院会議録

 一九五一年四月三日(火曜日)
 午前十時十五分開議

議事日程
 一、委員会の構成

○議長(泉 有平君) これから、立法院議会第一定例会第二日目の会議を開きます。欠席二人、出席七人で会議は成立致します。
○議長(泉 有平君) 開会に当り、議長として御挨拶申上げます。本日、行政主席、上訴裁判所判事を初め、四群島知事及び近々、中央政府の行政機構の中に移行する貿易庁、農林省、郵政庁の各長官並びに新聞社の方々にご臨席を御案内申上げましたのは、立法院の任務が、琉球百年の先につながる基盤を設定するものだということから、今後、長いこと各般にわたって皆様の御指導、御鞭撻を乞わねばならないと思ったからでありまして、御多忙中、御出席下さいました御厚意に対し厚く御礼申上げます。
 一口に申しますと、立法院は、曩に極東軍総司令部が琉球軍司官(ママ)に指令した琉球統治方針の原則の推進母体であります。
 立法院の活動の目標は、琉球列島米国民政府布告第三号によって示されました。軍の許す範囲内において、琉球人の持つ自由民としての権利の擁護及び社会的並びに経済的福祉の増進という内延的使命の達成と行政及び司法の両機関との連絡、提携を密にし、夫々の運営に事欠かぬよう異身同体の下に、厳として三権分立の妙を発揮するという外延的使命の確立とに置かなければならないものだと確信し、念願するものであります。
 琉球自治へのこの大躍進時に当り、私の如き知識経験共に貧弱な非才の者が立法院議長に任命されましたことは、誠に恐縮する所で、微力をかこつものであります。此の上は、皆様の大乗的な御協力によってのみこの重大なる責務が大禍なく果し得るもので、米国民政府当局並びに全琉住民の御期待に添い得るものだと信じております。それが私の心情のすべてであります。以上述べまして挨拶に代えたいと存じます。
○議長(泉 有平君) 副議長冨名腰尚武氏を御紹介致します。
○副議長(冨名腰尚武君)  一言御挨拶申上げます。
 先に諮詢委員会が設けられました時、推されまして副議長の席に着きましたが、力足らず、充分尽くすことが出来なかったことに忸怩たるものを感じておったのであります。所が、昨日の会議において、はからずも、私が副議長に選ばれました。今一年の立法院の使命の重且つ大なるを思います時、職責を果し得るか疑問でありますが、然しながら、会議の議決は尊重しなければなりませんので、皆様の旧に倍した御協力を得て職責を果したいと思っております。
○議長(泉 有平君) 行政主席より発言の通告がありました。行政主席の発言を許可致します。
○行政主席(比嘉秀平君) 本日、立法院本会議においてメッセージを送る機会を得たことを有難く存じております。
 皆様、御承知の如く、四月一日で臨時琉球諮詢委員会が解消して、琉球臨時中央政府の発足を見ました。私は浅学菲才を以って行政主席の重責に任命せられましたが、皆様の御鞭撻により任務を完うしたいと思います。今日から、私は行政主席の資格、各位は行政副主席、立法院参議として、責任の分野を異にして相見えることになりましたが、一昨日までは、諮詢委員として和衷協力全琉的政策問題の審議に当って来ましたので、その精神的紐帯は今後とも変ることなく、一層連繋を緊密にし、以って臨時中央政府の運営を完からしめたいと思います。
 按うに、臨時中央政府の設立は、将来の恒久的中央政府を予想する、言い換えると恒久的自治機構の過渡的段階、準備機構と申してよいと思います。
 この点は、布告第三号にも明記されております。この意味において、臨時中央政府の使命の最大なるものは、恒久的中央政府の設立のための基礎的条件の準備にあると思います。
 いま、これについて考察致しますに、大別して第一に政治面において群島及び市町村との綜合的関連における一貫した「自治機構の整備」であり、第二には財政面の自立計画の樹立推進にあると思います。ビートラー副長官もこの点を強調して居られます。
 自治機構については、一九四八年八月市町村制が公布され、市町村制の刷新を見、更に一九五〇年夏、群島組織法の公布により、群島自治制度の発足を見たのは、御承知の通りであります。ここに群島自治と市町村自治との調和の問題が生じましたが、この度の臨時中央政府の発足により三機構の協力調和を如何にするかということが緊急切実な問題となっております。この点我々の臨時中央政府の運営の態度方法は、直ちに、琉球住民の自治運営全般に、根本的影響を及ぼし、また将来の恒久的自治機構の形態とも深く関連するものであります。
 それ故これについては、慎重を期さねばならぬと思います。単純に中央政府が上であるとか、群島政府が主体であるとか、観念的な議論を弄ぶべきでなく、或は又官僚的な縄張り争いに堕しないよう、特に注意を要すると思います。従って中央政府の肩書の故にその名目による権威を主張するに偏して、群島の自治活動を阻害するような事は、厳にいましめるべきであり切角、発足した群島自治は、その健全なる発達を期し、これを見守るべきであると思います。尤も群島の活動がその群島の利害に偏し、全琉の利害を侵害する事が明らかな場合に於ては、その匡正のため適当な措置を講ずる制度を設けることも亦必要だと思います。昨晩もビートラー副長官は、我々を特によんで、全琉的立場で凡てを考えて呉れと言っていました。
 政策面について一言しますならば、あらゆる分野に於て常に政治的結合体としての全琉的立場をとり、地域的利害のみを考えないようにしたいと思います。同時に住民の全琉的観念の培養に力を致したいと思います。
 政策樹立の根本は、民意の暢達をはかり、民生安定を構ずる点に重点を置きたいと思います。個々の具体的政策においても、現実に即し、緩急の序に従って策定し、実施したいと思います。固より、かかる問題については、今後における法規の整備に俟つ外なく、その点、参議各位の御研究を乞うものであります。民意の熟するのを俟って、民主的手続方法によって琉球住民自治全般の法規を整備綜合することの必要性は、諮詢委員会設立以来、痛感し来ったもので、この問題に対する、私達の責任は重大であります。法制の整備が充分に行われるまでの態度は、あくまで現実に即し、軍布告の定により、公平、忠実に、中央、群島、夫々忠実にその職分を完うし、琉球住民の福祉達成に邁進することであります。
 財政経済の自立については、一九五二年七月までには、財政経済自立をなさねばならぬという重大要請をされています。この点も諮詢委員会で審議研究を続けましたが、今や臨時中央政府の責任ある立場で、これに対処することになりました。戦災を被り、更に国際情勢から、日本との経済的関連を絶ち切られた現在、新情勢下において、琉球の経済的位置を如何に規定し、その自立能力の範囲をどの程度に想定すればいいかは、軽率に取扱うわけにいかない重大問題であります。資料蒐集、社会・経済の推移に対する透徹せる判断が必要であります。幸にして、この問題については、既に各群島でも相当研究を進めており、参議各位も構想を練っておられるので大いに意を強うし、各群島との協力の下に、綜合的琉球経済の自立計画が集成され、軌道に乗せられ得ると期待しております。殊に臨時中央政府の設立によって農林省、貿易庁、郵政庁、琉銀等が統一ある政策意志の下に体制が確立されると思いますので綜合的な経済自立計画の樹立推進が約束されると思います。
 次に財政面について、臨時中央政府の樹立に当っては、住民の財政負担を考慮し、住民に重複した財政負担を掛けないことが諮詢委員会の方針であり、この根本方針は今後も変らぬと信じます。そのためには、前述の自治機構とも関連するので、市町村、群島の機構と重複せぬよう、事務範囲を守る注意が肝要であります。
 機構が屋上屋を架する時は、その経費がいかに小なりとも、住民にとっては二重負担であります。中央政府と群島政府との事務の重複は避け、最小の経費で最大の能力をあげるよう、各機構は縮小の方針であります。各機構は小規模に発足させ、職員数も最少に切りつめ、少数精鋭主義を採りたいと思います。
 なお、セクショナリズムは、断然これを排し、縦横の連繋を緊密にし、最大の能率化を計らねばならぬと思います。
 税制は、群島、市町村の財政需要及び税体系も充分これを勘案して無理のない中央税制を確立したいと思います。この点布告にも立法院の権限が明示してあり、責任は重大でありますので、特に御研究をお願い致します。なお、これに関連して、財政上、私達の責務の重大を加えたのは、補助金政策であります。布告には課税と並んで補助金交付について述べていますが、補助金政策が、復興に占める重大さは、言うまでもありません。その運営の巧拙は、全琉財政経済に関係する所が大であります。一方税制の適正を期するとともに、補助金政策の運営よろしきを得て、財政経済復興の大目的達成を期したいと思います。
 司法機構は、布告によれば、上訴裁判所、治安裁判所、巡回裁判所の各裁判所が一元化したかのように見受けられますが、話合って見ますと、細部にはなお、不明な点が多く、この点上訴裁判所長と協力して充分明らかにしたいと思います。この点明らかになれば法務担当の局も作らなければならぬかと思います。最後に思想問題について述べて見たいと思います。民主主義に基く人権の脅威たる共産主義に対する警戒は厳になさねばなりません。国際的武力侵略は、断乎として防圧する態度をとりたいと思います。
 以上簡単に申し述べてメッセージを終りたいと思います。
 参議各位、上訴裁判所判事の皆様、各群島知事、新聞社の方々、全琉機構の各首長、皆様の御協力、御支援をひたすらお願い致します。
○嵩原重夫君 立法院を代表致しまして御挨拶申上げます。甚だ僭越ではありますが立法院参議を代表して主席に御挨拶申上げます。
 臨時中央政府の開庁に伴い、九名が参議の任命を受け、責任の重大さを痛感致しております。我々の一挙一動が、百万住民に及ぼす影響の大なるを想う、審議に当っては、現実をしっかり見つめ、百万住民の利益を考えたいと思います。議決後は和衷協力して全幅の協力をなすことを誓います。
 今後も、諮詢委員会時代同様指導鞭撻下さる様お願い致します。主席の健康と御幸福を祈ります。
○議長(泉 有平君) 予定の議事に入ります。
 昨日、財政経済、司法自治制度、通商産業開発、文教厚生の四委員会を設けることにしましたが、その構成の内容は、委員附託の議事規則に織り込みたいと思います。御異議ありませんか。
  (「異議なし」の声あり)
 御異議がなければ、今日の取り決めは、議事規則に織り込みます。
 委員の選出方法と委員長の選出方法をお諮りしたいと思います。委員の選出方法は、どうすればいいでしょうか。司法自治制度四人、文教厚生四人、財政経済五人、通商産業開発五人となっていて、全参議が二委員会に席を置き、担当せねばなりませんので、その点を御勘案下さい。
○大濱國浩君 諮詢委員会時代の担当を勘案して、議長のほうで割当てて下さい。
 委員長は委員間で話合って決めたらいいと思います。
  (「賛成」の声あり)
○議長(泉 有平君) 各参議の委員会への割当を議長に一任するという大濱参議の御意見に御異議はありませんか。
  (「異議なし」の声あり)
○議長(泉 有平君) 御異議がないようでありますから、諮詢委員会時代の担当を参考にして議長に一任して頂きます。
 委員長は委員の互選と致します。委員長の互選についても議事規則に織り込んで下さい。
 委員会への割当を致しますから、五分間休憩致します。
  (午前十時五十分休憩)
  (午前十時五十五分再開)
○議長(泉 有平君) 会議を再開致します。
 議長一任を受けました各種専門委員を次の通り割当てました。
 財政経済委員会  祷 参議
          冨名腰参議
          大濱参議
          松田参議
          嘉陽参議
 司法自治制度委員会
          嵩原参議
          嘉陽参議
          田畑参議
          城間参議
 通商産業開発委員会
          松田参議
          嵩原参議
          冨名腰参議
          祷 参議
          金城参議
 文教厚生委員会  大濱参議
          田畑参議
          金城参議
          城間参議
○議長(泉 有平君) 各委員会はそれぞれ委員長を決定して下さい。
 十分間休憩致します。
  (午前十時五十五分休憩)
  (午前十一時五分再開)
○議長(泉 有平君) 会議を開きます。決定された委員長を報告して下さい。
○冨名腰尚武君 委員が全員にまたがっていますので、申し合せにより私が報告致します。
 財政経済委員会  祷 参議
 通商産業開発委員会
          松田参議
 司法自治制度委員会
          嘉陽参議
 文教厚生委員会  大濱参議
○議長(泉 有平君) 只今の御報告の四参議に委員長を決定します。
 以上で本日の日程を終ります。
  午前十一時十分散会

   本日の会議の出席者
    議 長 泉  有平君
    副議長 冨名腰尚武君
    参 議 松田 賀哲君
     〃  嵩原 重夫君
     〃  大濱 國浩君
     〃  祷  清二君
     〃  嘉陽 安春君
     〃  田畑 守雄君

上へ戻る