戦後初期会議録

組織名
沖縄群島議会
開催日
1951年02月19日 
(昭和26年)
会議名
第5回沖縄群島議会(臨時会) 1951年2月19日
議事録
 一九五一年二月十九日午前十時五分開会
◎議長(知花高直君) 開会致します。出席十七名、欠席三名であります。
◎議長(知花高直君) 諸般の報告を致します。
 知事から議長宛に公文が参っておりますから書記長をして朗読致させます。
  (書記長「新垣良正君」朗読)

沖総第一〇五号
 一九五一年二月十七日
   沖縄群島知事 平良 辰雄
沖縄群島議会議長 知花高直殿
  第五回群島議会に諮問案追加提出について
第五回沖縄群島議会(臨時会)開会中に臨時急施を要する事件として議会の答申を得たいので別紙の通り諮問案を送付致します。
 (別紙省略)

◎議長(知花高直君) 只今書記長朗読の追加諮問案印刷物は先日御手元に配付済になっております。
 那覇旅館業組合並びに沖縄興行連盟から議長宛陳情書が二件参っておりますので書記長をして陳情書を朗読致させます。
  (書記長「新垣良正君」陳情書二件朗読)

  陳 情 書
要 旨
 旅館業に対するサービス税の税率据置について
一 旅館は一般旅行者に対する家庭の延長である。戦前戦後を通じ旅行する場合は必ず一定の宿所と食事は人間命を保つ上からも欠くべからざるものであって旅館に泊って食事することは決して贅沢とは思われないのである。言い換えれば家庭の延長に過ぎないのであって其の食事と泊る費用に対し間接的消費税を課するということは一般大衆の福祉を阻害するものと思料される。以て贅沢的遊興飲食を除くの外売(減カ)税若くは現行税率のまま据置きを願いたい。
二 増税は業者を萎縮させ減税の結果となる虞があるのは、即ち現在の様な交通の発達に伴い民営バスは勿論、トラック、其他乗用者(車カ)の増加により遠き北部方面よりも那覇方面に用件を終え日帰りする現況にあり従って宿泊者の数は次第に漸減を迫りつつある秋、更に増税となれば経費の加重に依り尚一層其数を増し業者の営業は萎縮すると共に減税の結果を予想する。
 尚群島政府並びに市町村職員の宿泊旅費は一八〇円と聞く。昼食のそば代は自腹を切る位にして、それに増税となれば、かてて加えて其の負担加重に伴い日帰りする止むなきにいたる。
 右事情を具し陳情致します。
  一九五一年二月十五日
     那覇旅館業組合
     代表
    組合長 仲井 憲光(印)
    副組合長 又吉 久正(印)
沖縄群島議会議長 知花高直殿

  陳 情 書
 終戦以来沖縄の娯楽面の建設的努力を微力乍ら興行者は演劇、映画、劇場を通じ捧げて参りましたが設備、施設は時代の進展に伴い映画常設館においては、良いトーキー、鮮明なるスクリーンにすべく四十万円以上の多額の費用と発電機、配電設備、トーキースクリーン等、劇場は多額の犠牲を払いつつ困苦にたえて沖縄文化の復興に邁進して来ました。殊に近く制定公布される消防法により各劇場は映写室の完成、映写技師三名の常置と共に劇場全体の改装置に今後多額の経費を要する状態であります。従って良い娯楽を供するには従来通りの低収入では生活は勿論、経営上の破綻をもたらすことは必定であります。此の故に吾々は数年来民政府御当局へ収入増加を目指して入場料税率引下げを陳情し続けて来た次第であります。処が今期群島議会に提案される諸税法改正案には興行税(映画の場合)は何等引下げもなく、従来通りになるやに承り、これがそのまま実施されるにおいては興行税が企業を大きく圧迫することになるため沖縄文化の阻害をきたし、二重三重の苦痛を業者に負わしめこれが社会上の重大問題にまで展開すると存ずる次第であります。業者の今日及び将来の文化寄与に対する熱意をお汲み取り戴き、その苦痛を御諒察の上入場料税率に対して何卒御善処下さる様陳情致します。
 一九五一年二月十七日
  沖縄劇場協会(五十劇場)
  沖縄映画協会(三十四映画社)
  沖縄俳優協会(十七劇団)
 代 表 沖縄興行連盟
沖縄群島議会議長 知花高直殿

◎議長(知花高直君) 本日の議事日程を報告致します。
  議事日程第四号
 第一 食糧配給改善に関する件陳情書について
 第二 商業高等学校設立についての答申案について
 第三 市町村税法案について
     (知事提出諮問第二号)
 第四 現行税法改正案について
     (知事提出諮問第三号)
 第五 特別商品税法案について
     (知事提出諮問第四号)
 第六 自動車税法案について
     (知事提出諮問第五号)
 以上であります。

○本日の会議に付した事件
 日程第一 食糧配給改善に関する件陳情書について
 日程第二 商業高等学校設立についての答申案について
 日程第三 市町村税法案について (知事提出諮問第二号)
 日程第四 現行税法改正案について(知事提出諮問第三号)
 日程第五 特別商品税法案について(知事提出諮問第四号)
 日程第六 自動車税法案について (知事提出諮問第五号)
  琉球列島米国民政府に関する指令の件について
  (二十番議員仲里誠吉君発議)

◎議長(知花高直君) これから会議を開きます。
 日程第一の食糧配給改善に関する件陳情書についてを議題と致します。
◎仲里誠吉君 本問題は去った金曜日の本会議において六番議員(普天間俊夫君)から上程して、その席上経済委員会付託という訳になったのでありますが、時間の関係で経済委員会を招集する余裕がなくて、経済委員の諸氏に失礼しております。
 委員長において左記の通り案文を作成して参りましたのでそれを朗読して本議会の承認を得たいと思います。

日附 一九五一年二月
宛  琉球列島米国民政府副長官
発  沖縄群島議会
首題 沖縄群島農民の食糧配給に関する陳情
一 沖縄群島農民は食糧を生産し家畜を飼養するを以て食用油、メリケン粉の配給を受けてない。
二 農民は食糧(その大部分はいも)を生産しているが、メリケン粉の生産能力は現在殆んど零に近いまで低下した。ところが由来、沖縄人はめん類を極めてし好するものである。冠婚葬祭や祝宴には不可欠なものである。生産力の殆んど零である農民にメリケン粉の配給がされてないことは農家の生活安定、生産意欲両面より見ても正当ではないと思われる。
三 農家はなるほど、豚を飼養しているが、その豚は殆んど最近の深刻な金詰りのため、家計維持をなすために売り払っている状況である。まれに屠殺しても矢張り家計における赤字補填のため売却している。
四 以上の理由に依り特別なる御考慮により農家に対してメリケン粉、食油を非農家と同様に配給していただきたく陳情致します。
  沖縄群島議会議長 知花高直

◎普天間俊夫君 只今の御趣旨は根拠は尤も結構と思いますが、中に全農民に対する食糧配給の実情が少し今の説とそごした点があります。食油、メリケン粉は配給がないのではなくて九〇パーセントの生産率までは農家に配給されている。ただ残されたのは自給一〇〇パーセントの農家にないのであります。食油も五〇パーセント生産者にあります。五〇パーセント以上にはないのであります。それで私は如何に改善するかというと一率配給も輿論になっているが、こうなると農家の生産面に大きな脅威を来たすので、いろいろ綜合して、こういう面ならばといったような配給改善に要する案を二、三持っております。只今二十番議員のおっしゃった論説は結構でありますが、配給量において、少しそごする点がありますので、私の調査したのを申上げますと、一つ、同一カロリーにおいても食糧に対する要求は米、メリケン粉、いもは差異があるので、生産率一〇〇パーセント以上の自給農家にも、米、メリケン粉の配給をされたし、いま先、米、メリケン粉九〇パーセントまではあります。一〇〇パーセント自給農家、一〇〇パーセント以上にもしていただきたい。そうなった場合非農家の配給が減るのであります。それも調査したが所謂、米、メリケン粉の配給を受けていない所の自給農家、一〇〇パーセントの人口は三四、六三〇人で、これを全島の総人口六〇三、七五二人と基準をとった場合六、七パーセントであります。僅か六、七パーセントの農家が主食の米、メリケン粉の配給を受けてないので、これを及ぼしたい。そうすれば、いくらか今の農村の疲弊は解けはせんか、また配給量においても非農家にそういう脅えは来たさないだろうというのが一つ。二つは食油は生産率五〇パーセント以上の生産者へも配給いたされたい。これは五〇パーセント以内の生産者には配給になっているが、五〇パーセント以上にはこれは二十番議員(仲里誠吉君)から云った通り、どうしても農家にもこの食油の配給をして、公正なる配給をしていただきたい。
 三番目に妊産婦、乳幼児用ミルクは農家の妊産婦、乳幼児にも配給されたい。妊産婦、乳幼児用ミルクが、これは非農家にばかり配給になっている。農家のそれにはないのであります。どうしてかというと理由を掴むのに苦しんでいるのでありますがそういう理由で農家の妊産婦、乳幼児にも同様に配給されたい。こういった案を持っておりますが、御審議をお願いします。
○議長(知花高直君) 暫時休憩致します。
  午前十時二十八分休憩

  午前十時三十五分開議
◎議長(知花高直君) 開会致します。日程第二、諮問第一号商業高等学校設立についての答申案を議題といたします。文教厚生委員長の報告を求めます。
◎玉城泰一君 文教厚生委員会付託になりました諮問第一号商業高等学校設立に対しての答申案を起草致しましたので読み上げます。

答申第一号
  商業高等学校設立について
 一九五一年二月十五日付諮問第一号首題の件左記の通り沖縄群島議会の議決に依り茲に答申する。
  一九五一年二月十九日
  沖縄群島議会議長 知花高直
 沖縄群島知事 平良辰雄殿
    記
一 沖縄群島に於ける実業関係高等学校は現在農林関係三、工業関係一、水産関係一で商業関係は皆無である。
二 依って沖縄群島議会に於ては実業教育の振興を計るため商業関係高等学校設置の必要を痛感している。
三 沖縄自立経済政策の線に沿い、実業教育の機関たる商業高等学校を設立し人材養成の道を開かんとするは時宜に適した措置として賛意を表する。依って知事は速かに之が実現方を期せられたい。

 以上の通りであります。
  (拍 手)
◎議長(知花高直君) 只今文教厚生委員長から答申案の報告がありましたが報告文の通り答申することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議なしと認めます。依って左様答申することに致します。

◎議長(知花高直君) 日程第三の市町村税法案に対しましては、もう少し案を研究する要がありますから、暫時休憩致しまして、それから進行致します。暫時休憩致します。
  午前十時三十七分休憩

  正午開議
○議長(知花高直君) 開会致します。お昼食の時刻でありますから午前はこれで終了致しまして午後一時から開会致します。引続き今の市町村税法案について質疑応答を致します。
 午前はこれで散会致します。
  〇時五分散会

  午後一時六分開議
○議長(知花高直君) 開会致します。全員出席であります。引続きもう少し協議をする必要がありますので暫時休会致します。
  二時六分休会

  三時五分開議
◎議長(知花高直君) 開会致します。諮問第五号自動車税法案についてを議題と致します。書記長をして諮問案を朗読致させます。
  (書記長「新垣良正君」諮問第五号朗読)

諮問第五号
  自動車税法案について
 自動車税法案を別紙の通り制定し、軍の承認を得てよいですか、議会の意見をはからう。
 一九五一年二月十七日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
  自動車税法案
第一条 沖縄群島において自動車を所有する者は本法によって自動車税を納める義務がある。
第二条 自動車税は左の各号に定める自動車につき之を課する。
 一 普通自動車
 二 小型自動車
 三 特殊自動車
第三条 米国合衆国及び群島政府又は市町村の所有する自動車には自動車税を課さない。
第四条 自動車税の税率は左の通りとする。
 一 普通自動車
  1乗用車 自家用一台につき
         月額 八百円
   営業用 〃
         〃  五百円
  2トラック    〃
         〃  五百円
  3バ ス 普通 〃
         〃  五百円
       トレーラー〃
         〃  八百円
 二 小型自動車
  1四輪車 自家用乗用車〃
         〃  三百円
       その他〃
         〃  二百円
  2三輪車 自家用乗用車〃
         〃 百五十円
       その他〃
         〃  百 円
  3オートバイ 〃
         〃  三百円
 三 特殊自動車(前二号に該当しないもの) 〃 三百円
第五条 納税義務がある者は毎月一日現在によってその月の末日迄に所轄地方税務署にその所有自動車の種類、台数、税額を申告すると同時に自動車税を納付しなければならない。
第六条 納税期限内に自動車税を納付しなかった場合は滞納期間三十日及び端数毎にその納付すべき税額の五パーセントを超えてはならない。(ママ)
第七条 無申告又は不当申告によって自動車税を逋脱した者若くは故意に自動車税の納付をしない者は一万円以下の罰金又は一年以下の懲役若くはその両刑に処する。

○議長(知花高直君) 当局の説明を求めます。
◎財政部長(宮里勝君) 自動車税は初め地方税として課税すると云う考を持っておりましたが、自動車税はそうした場合に財源が一、二の町村に片寄る結果になるので又自動車の性質から致しましてこれは全島を走り廻るので各市町村に関係する訳でありまして、むしろ地方税源としてよりもこれを中央税に移して、その財源を以て全島の道路の復旧維持費に充てたい、こう云う考の下提案した訳であります。
○議長(知花高直君) 本議題の質疑に入ります。
◎新里銀三君 この条文にある自動車の内容は分りますが、最近沖縄人が相当金持ちがおりまして、名前は二世の名前で実際は沖縄人が自家用に持っている。これに対しては御当局はどういう考を持っているか。
○財政部長(宮里勝君) これは第一条にある通り、そういうものは実際所有しておりますれば課税致しますが、所有者でなくて借りているという場合には課税出来ないと思います。
 そういうものは漸次沖縄人が所有して行くように仕向けて行かなければいかんと思います。
◎具志頭得助君 オートバイは市町村税法の場合は三十円になっておりまして、現在三百円になっておりますが間違いありませんか。
○議長(知花高直君) 本日は答申案を作成するために休会して全体協議会を開いて答申案を作成しなければなりませんので相当時間を要すると思われますので今の中に時間を延長しておきます。
◎石原昌淳君 自家用と営業用の解釈でありますが、事業場等で会社等で使っているものは自家用に入るのですか営業用に入るのですか。
○財政部長(宮里勝君) それは営業用と見做します。
◎議長(知花高直君) 御質疑がなければ諮問第五号の答申を全体で答申案を作成しようと思っておりますが如何ですか。
  (「賛成」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様に取計います。暫時休会致します。時間は延長してあります。
  三時十五分休会

  五時十六分開議
◎議長(知花高直君) 開会致します。日程第三、市町村税法案、日程第四、現行税法改正案、日程第五、特別商品税法案、日程第六、自動車税法案を一括議題と致し、これが答申案に就きましては全員協議会に於ける各位の意見をまとめ、議長に於て文案を作成しましたから書記長をして答申案を朗読致させます。
  (書記長「新垣良正君」諮問第二、三、四、五号に対する答申案朗読)

  答 申 案
 答申第二号
  市町村税法案について
 一九五一年二月十五日付諮問第二号首題の件、左記の通り沖縄群島議会の議決により茲に答申する。
 一九五一年二月十九日
  沖縄群島議会議長 知花高直
 沖縄群島知事 平良辰雄殿
    記
一 第百十五条第一種に「二十八号 貸家業」を挿入する。同条第二種中「一 医業」「二 歯科医業」「三 薬剤師業」「四 助産婦業」「五 獣医業」を削除する。
二 其の他は原案通りとする。

 答申第三号
  現行税法改正案について
 一九五一年二月十五日付諮問第三号首題の件、左記の通り沖縄群島議会の議決に依り茲に答申する。
 一九五一年二月十九日
  沖縄群島議会議長 知花高直
 沖縄群島知事 平良辰雄殿
    記
一 娯楽税法改正案中、第一章第一項第一号中「五〇パーセント」を「四〇パーセント」に修正する。
二 サービス税法改正案中、第二章のサービス業種表、ロ 第二種13号「飲食店業」括弧内「一人一回三十円以下を除く」とあるを「一人一回五十円以下を除く」に修正する。
三 其の他は原案通りとする。

 答申第四号
  特別商品税法案について
 一九五一年二月十五日付諮問第四号首題の件、左記の通り沖縄群島議会の議決により茲に答申する。
 一九五一年二月十九日
  沖縄群島議会議長 知花高直
 沖縄群島知事 平良辰雄殿
    記
一 第一条左記第一種丁類中第一号「学校用机腰掛」の下に「及び一個五百円以下」を挿入する。
 第六号「眼鏡」を削除する。
二 その他は原案通りとする。

 答申第五号
  自動車税法案について
 一九五一年二月十七日付諮問第五号首題の件、原案通り軍の承認を得られたい。右沖縄群島議会の議決に依り茲に答申する。
 一九五一年二月十九日
  沖縄群島議会議長 知花高直
沖縄群島知事 平良辰雄殿

  (拍 手)
○議長(知花高直君) 諮問第二、三、四、五各号に対する議会の答申は只今読み上げました通りに致すことに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎仲里誠吉君 諮問第三号中現行所得税法案の諮問案に対しては全面的に反対であります。それから娯楽税法中演劇面の税率もこれ亦反対であることを表明しておきます。
◎議長(知花高直君) 二十番議員(仲里誠吉君)から只今反対意見がありましたが答申案通り賛成の方は挙手をお願い致します。
 (仲里誠吉君を除き全員挙手)
◎議長(知花高直君) それでは挙手者多数。依って答申案通り答申することに決定致します。
◎仲里誠吉君 時間が遅くなっているところ誠に恐縮でありますけれども、緊急動議がありますので皆さん方の御協議、御審議をお願いしたいと思います。それは正確な日付は覚えておりませんけれども大体十日位前に沖縄人民党として平良知事に対して一九五〇年十二月五日付極東軍司令官からライカム長官のベイトラー少将に宛てた書簡がありますが、それは沖縄群島がマッカーサー司令部の指令下にある、そして軍政府と云ふ名称が民政府の名称に変ると共に極東司令部の琉球列島に於ける政治方針、それの基本的な方針を宣明した指令でありますが、其の指令の内容は既に新聞紙上にも発表されている通りではありますが、然しこれは一政党のみで取上げるべき問題ではなくて全琉球に亙る問題で、而もこの内容は人民の福利増進の立場から見て極めて疑問に思うところが多数ありますので、これはむしろ議会の名に於て軍当局に知事を通じて質問を発した方がよいのではないかと思うのであります。一応読上げまして、どういった形式を取った方がいいか皆さん方の御審議を願いたいと思います。

 日附 一九五〇年十二月五日
 発  極東軍司令官
 宛  ライカム長官
 主題「琉球列島米国民政府に関する指令」に就き希望及疑義
  (注 同指令と照合の上、用字用語及び句読点等を是正した。)
1 B(1)a中「健康水準は戦前の水準を上廻っており、かかる状態を継続する事は琉球に駐屯する合衆国人の健康上必要であるから、この点についてはガリオア資金で必要なる資材を輸入して戦前以上の水準に達する事を許可する」とあるが仮に同書簡が謂う様に「健康水準が現在戦前以上」にあるとしてもガリオア資金で入れられる諸薬品、設備機械等が一弗-一二〇円の換算率で琉球住民に売りつけられたのでは医療を受ける者も少くならしめ従って戦前以上と称される健康水準は忽ち戦前以下に惨落するであらう。故に衛生に関する限り為替レートは現在の率で継続して頂きたい。
 参考迄に旧沖縄民政府衛生部の作製した患者統計を添付する。同表中一九四八年より医療を受ける患者数が激減しているが、これは四月以前迄無償であった医療が同四月より有料(しかも実費以下の極めて低廉なる)になったためである。この事は有料になったため医療を受ける余裕がなく自宅で素人療養をなす患者が激増した事を意味するものであり、従って今後尚医療費が上昇すれば医療を受け得ない患者数は更に増加しそれ丈に又伝染率は上昇するであらう。

 結核患者数調
 月/年 一九四六年   一九四七年  一九四八年 一九四九年
一月           六、〇二五  四、七二六   七六二
二〃           七、三五九  三、四三五   七四三
三〃           八、〇六四  三、八九八   六〇一
四〃  一二、四八四   七、三七五  二、三一五   六五三
五〃  一四、一五三   八、〇八九  二、七六六   五五三
六〃  一五、八七四   八、六四二  二、八〇八   六八三
七〃  二三、一八一  一三、二四一  二、八五四   六〇七
八〃  二三、九四四  一七、二七一  二、五二四   五一〇
九〃  二二、二〇一  一六、四一一  二、四七三   五〇三
十〃  二五、五六四  一三、一九二  二、八六七   三九二
十一〃 一四、〇〇六   八、八五二  一、二四四   二七〇
十二〃    八七四   六、〇三九    九五〇   一八〇
  (一五二、二八一カ)                 (七カ)
 計 二六九、〇九八 一二〇、五六〇 三一、八六〇 六、四五六
2 C(4)は琉球人に対し軍事占領に抵触しない限り民主々義諸国家の基本的自由を与えると謳っている。
 自由であるからには例えば出版の場合は出版届さえすれば直ちに出版してよろしいと思うが如何。
3 D(3)aには「自由競争企業制度の下に、農水商工業の適当なる形態に琉球人を参加せしめる」とある。これは琉球列島に於ける民政府の経済政策が常に自由競争の原則の下におかれる事を強調しているものと思われる。
 現在琉球再建のため綜合経済計画が樹てられておるが、その中心は申す迄もなく輸出産業の発展にある。ところで輸出産業と申しても琉球においては結局基幹産業である農業、水産業とりわけて農業はその経済形態が極めて低位な発展段階にあるため、戦前に於ては日本におけると同様に農業会、戦後に於ては農連及び農業組合の庇護の下にどうやら生存を維持して来た。特に耕地の四分の一も軍事目的に使用せられている現在の沖縄農業にとっては農業団体による庇護の継続は絶対的に必要であると考えられる。勿論現在の農業、水産業団体の組織並に事業には前記目的からいって不適当なるところがある事は事実であるが、これを改組の上依然として農業、水産業等、産業面に於ては自由放任政策を取らず保護政策を採用する必要が大であると思うが如何。
4 D(3)の第一項は長期経済計画の含むべき諸事項を列記してあるが、その中のdに〃労務及び土地を含む経済資源による貢献に対し妥当なる償い〃と明記されている。然るに群島政府は既にa項の趣旨に従い長期経済計画を樹立中である。従って当然この償いも同計画に織込まなければならない筈である。ついてはこの償いを決定する時期を御知らせ願いたい。
5 D(3)gに規定された見返資金の使途の中には一九五〇年七月一日以前及び以降に合衆国が使用した琉球人の私有財産にも充てる事が示されている。更に又D(8)には〃副長官は合衆国が長期に必要とする土地又は施設の所有権を獲得することができる〃がその購入のためには特定のappropriationを要求する。而してその要求が通った場合はその分丈ガリオア資金から減額される。又若しこのappropriationが獲得出来なければ見返資金から出す。〃この様なやり方は現行法規によって許可されている〃とあるこれについて、
 1 同法規の法律名、発布年月日、法律全文をお知らせ願いたい。
 2 この様な土地を含めての私有財産の使用料及び購入代金の合計は莫大な額に上るものと思われるが、これをガリオア又は見返資金から支払うとすれば沖縄復興に振り向けられるべき同資金の残額は激減せざるを得ない。然るに沖縄群島政府の綜合三ケ年計画によれば一九五三年の目標を達成するには、(ママ)という巨大な資金を必要とするがそれ丈全部入手出来たとしても尚農業面には一九四二年又は一九四五年の六〇パーセントしか達成出来ない状況である。故に土地使用料、購入代金はガリオア、エロアCommercial Account等以外の資金よりお支払を願いたい。
 3 見返資金使途運用方針、管理等はすべて日本に於ける通りやって頂きたい。
6 D(6)は合衆国政府に提出すべき琉球列島の救済及び経済の再建に必要な予算の作製に関する規定であるが、この予算□作製は各群島の各産業勤労者の代表をAdviser或はObserverその他何らかの資格に於て参加させて頂きたい。
7 D(7)の中に〃合衆国は国際公法下に於ける占領国家であり市有の財産を除いては日本国政府又は被占領地域の政府有財産を土地使用料も支払わずに占有する権限を有する〃と規定されている。然るに当地民政府は戦前の那覇市有地を現に使用し及び将来使用の目的を以てcar-mark(ママ)している。この事は本項の規定に反すると思うが如何。
8 D(8)は〃副長官は合衆国政府が今以上に永久に必要とする土地又は施設の所有権を購買(入カ)又は収用によって獲得する〃と述べているが、所有権の獲得は合衆国政府たると個人たるとを問わず沖縄の帰属が決定しない限り出来ないと思われるが如何。これ等の所有権獲得の際に必要なる評価には所有者及びその他の琉球人より成る土地評価委員会の意見を尊重して頂きたい。

 以上であります。内容は改めて説明申上げる必要はあるまいと思いますので説明を省きますが、これは沖縄の経済再建、民生安定にとって極めて重要なる諸問題を含んでおりますので議会としても当然看過することは出来ない問題であるし、従って当局に具体的な内容或は向うのこれに対する気持、そういったものを伺いたい訳でありますが、軍当局に与える心理的影響から見ても議会で議決をして、知事を経て質問をするという形を取った方がいいと思うので、軍当局でもこれに対する回答の要求力が強まると思いますのでそういう意味で、これを御審議願いたいと思います。
○議長(知花高直君) 一寸御諮り致します。今二十番議員(仲里誠吉君)から読上げました点は今日の日程に入っておりませんがどう致しますか。
◎長浜宗安君 非常にこれは重要問題でありまして、聴きたいという気持を我々は持っておりますが、本日は時間も迫っておりますし、又仲里議員の読上げた丈では判然としませんので相当慎重を期する意味に於て次期議会にでも日程にしたらどうかと思います。
  (「賛成」と呼ぶ者あり)
○知事(平良辰雄君) 私は人民党の方から知事宛に出しておいたので私達としてはこれは法律問題も相当あるし、又群島政府でも考えて直接私の方から答弁出来るものもあるし、又出来ないものは聴きたいという希望もあるのだから、聞かしてくれという風に行きたいと思っております。然しこれはいよいよ議会の名に於て民政副長官に出すというならば、もう少し皆さんもお考になって頂きたい。知事丈の問題なら簡単で結構でありますけれども、もう少し書面で副長官に行くというのであればお考になった方がいいんぢゃないかと思います。
◎議長(知花高直君) 二十番議員(仲里誠吉君)の動議に関しましてはお互慎重に検討する必要がありますので次期議会において審議することに致したいですが如何ですか。
  (「賛成」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様に決しました。

◎議長(知花高直君) 普天間俊夫君提案の議案第十三号食糧配給改善に関する件別紙陳情書の文案につきましては経済委員会に一任致したいと思いますが御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様決し、議長に於て事務手続を取ることに致します。本月二十八日付二十番議員動議の件其の他の事項について議員全体会議を開くことに致します。
 提出議案並に諮問案全部予定通り終え諸君が真剣に審議されたことは喜びに堪えません。御苦労でありました。これで閉会致します。
  六時五十九分散会

出席者は左の通り
     議 長 知花 高直君
     副議長 稲嶺 盛昌君
議 員
 与儀 清秀君  仲村 栄春君
 石原 昌淳君  普天間俊夫君
 宮城 久栄君  平良 幸市君
 玉城 泰一君  松本 恭典君
 具志頭得助君  長浜 宗安君
 山川 宗道君  祖根 宗春君
 山城 興起君  新里 銀三君
 新城 徳助君  野原 昌彦君
 崎山 起松君  仲里 誠吉君
(注 欠落のため挿入)
群島知事     平良 辰雄君
群島副知事    山城 篤男君
総務部長     幸地 新蔵君
財政部長     宮里  勝君
文教部長     屋良 朝苗君
経済部長     呉我 春信君
厚生部長     宮城 普吉君
警察本部長    仲村 兼信君
法務部長     知念 朝功君
総務部副部長   稲嶺 成珍君
文教部副部長   仲宗根政善君
工務部副部長   西銘 順治君
厚生部副部長   大森 泰夫君
財政部主税歳入課長
         山内 康司君
財政部予算課長  糸数 青重君
総務部人事課長  比嘉 幸安君
総務部労務課長  比嘉 準栄君
 一九五一年五月三十一日
   沖縄群島議会
     議 長 知花 高直(印)
  会議録署名人 平良 幸市(印)
  〃      具志頭得助(印)
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