戦後初期会議録

組織名
沖縄群島議会
開催日
1951年08月28日 
(昭和26年)
会議名
第10回沖縄群島議会(臨時会) 1951年8月28日
議事録
第十回沖縄群島議会(臨時会)会議録

一九五一年八月二十八日(火曜日)
午前十時十分開会
◎知事(平良辰雄君) 第十回沖縄群島議会臨時会は本日を以て成立することに相成っております。
 政府提出議案は沖縄群島割当土地に関する臨時処理条例制定について、其の他諮問案、警察官職務執行法について、行政代執行法案について、この二つの諮問案と知事専決処分についての報告であります。どうぞよろしく御審議を願い度いと思います。尚この機会に去ったマージ台風の被害の状況を後刻工務部長から御報告申上げたいと存じます。
◎工務部長(渡嘉敷真睦君) 長官の御下命によりまして去ったマージ台風の被害の状況を工務部に関する面を御報告申上げます。
 最初に調査の方法を御報告申上げまして数字について申上げたいと思うのであります。暴風の翌日、二十日に五班に編成いたしましてと申しますと、主に土木課と海運課と公共施設課を五班に編成致しまして全島に跨がって調査を進めたのであります。更に二十一日になりましては主として二班に編成致しまして調査を致したのでありまするが土木課員が主になったのであります。尚この際軍の土木技師が一緒になって戴きまして、二十一日は二班に編成して調査致したのであります。二十三日も二班に編成して調査致したのでありますが、第一班には軍からも技師二人と長官も、それから宮城局長も一緒になって、工務部の部長、課長も共に調査に赴いた訳であります。それから二十四日も二班に編成致しまして、これも軍の方は矢張り調査を続行して戴いたのであります。こう云う風に二十四日迄は、こう云ったような班を編成致しまして調査を致したのでありますが、その後のことは南部の糸満与根の護岸の破壊、潮害状況につきましては長官、呉我経済部長、私が随行致しまして調査をいたしたのであります。それから更にその後に於きまして北部の災害が甚だ大きいので北部の出張所が主になって調査に当ったのでありますが、更に土木課の方もこれに一緒になりまして調査し、又一方すぐ復旧に取掛ったのであります。この復旧に取掛る際は一応長官が親しく御視察になりましたので、これは早急に復旧しないと色々な面で支障を来たすのであるから早急に復旧しよう、尚その応急の経費については軍に極力御願いして若し軍が吾々の要望をお聴き下さらないとするならば、臨時処置費として三百万円程度は予備費から出してもいいではないかと云う経費ねん出の態度がはっきりと窺われたものですから、すぐ二十三日から復旧の工事に着手したのであります。以上簡単に調査の方法を御報告申上げます。数字に触れて申上げると、詳しく御報告申上げることは時間が許さんかと思いますので極く概数だけ御報告申上げることにいたします。その概数も金額によって御報告した方がよくお分りかと思いますので個所と金額に触れることにいたします。尚詳しくは各個所の総ての破損の量、これは綿密に出ておりますが一々御報告することは時間の関係もありますので、地区別に個所と金額を御報告することにいたします。
 南部の方で被害個所が二十九ケ所その復旧工事費概算額が二百四万六千二百円、中部の方が二十四ケ所で百六十四万四千六百円、北部の方が被害が非道いのでありまして、従って個所も金額も莫大に上っているのでありますが、被害個所が二百五十五ケ所、金額四千九百六十万九千二百円、こう云う風になっております。これを合計いたしまして五千三百万(三十万カ)円となります。従来耕地課が担当しておった農道排水、橋渠(ママ)、農地護岸、港湾突堤、堤防、こう云ったものの被害を各区別に申上げますと南部が被害個所五十四ケ所で一千八百九十三万五千九百七十円、中部地区四十八ケ所で三千六百七十七万六千九百六十八円、北部が百十一ケ所で一億三十九万九千六百三十八円とこう云う風になっております。この合計を申上げますと全体で一億五千三百三十九万九千五百三十八(ママ)円となっているのであります。それからその次は船舶の被害状況について申上げますと、これは運搬船に限定しているのであります。尚又未登録船舶はこれに算入しておりません。登録済みの船舶に限定しているのであります。この船舶の沈没隻数が二十五隻、これの被害概算額が三百四十八万円、トン数が四百四十一トン、坐礁している船舶の数が十四隻で被害概算額が百六十二万円、トン数が百八十五トンと云う風になっております。それから伊平屋に一隻まだ確たる報告は受けておりませんが概算いたしまして、一隻が約二十万円、二十トンが噂によって算入してあります。
 総計四十隻で五百三十万円、六百四十六トン、こう云う風になっております。次は公共建物並に一般庶民住宅の被害の状況を調査したのでありますが公共建物に於きまして全壊の棟数が五十九棟、金額にいたしまして七百余万円、半壊棟数九十棟でこの見積予想金額が五百四十九万一千百円、それから修理を要する棟数が二百二十棟百九十七万六千二百円、合計三百七十(ママ)棟で一千四百四十七万五百(ママ)円であります。一般住宅は全壊が五百八十一棟で一千五百四十万円、半壊が九百二十三棟で一千五百八十三万一千円、修理を要する棟数が二千九百七十八棟で六百七十三万二千五百円、合計いたしまして四千四百八十二棟で三千七百九十六万三千(ママ)円、こう云う風になっております。以上数字について御報告いたしましたが、これに対する応急の措置を御報告申上げれば今先も一寸触れましたが長官が予備費の流用でも構わんぢゃないかという御決意がありましたので、すぐに工事に着手したのでありますが、今月の二十九日までに那覇、名護間は交通が復旧するように今極力北部の工務出張所が中心になって工事の督励をしておりますが、私は一昨日参りましたが大丈夫と思います。但しこれは約二間幅の道路で勿論トラック、バスは通るような程度のものであります。それから九月一日までに名護、辺土名間が今申上げたような二間幅でバス、トラックが通る程度に復旧する。これも大丈夫だと思います。それから其の他の路線につきましては、と申しますのは主として中部、南部、それから今申上げた幹線以外の北部の路線に相成るのでありますが、この方は常傭の工夫を持っていますので、この常傭の工夫に責任を持たせて工務部の出張所の職員の指導の下に復旧を急いでいるのであります。但し大修理を要する個所につきましては軍の補助を貰って実施したいと云う風に思っているのであります。それで今申上げた数字が把握できましたので早速昨日長官が連絡会議に於きまして今申上げた災害の状況を詳しく御報告申上げると共に応急措置費の補助をお願いいたしました処、軍に於きましては五百万円丈出すようにしようとはっきり口頭で指示したのであります。その外今日の新聞にも詳しく載っているのでありますが第一次、第二次、第三次と施行するように取計うと云う風にお話があったのでありますが、第一次の工事費と申しますと世冨慶、二見間、田井等、大保間、二見から田井等に通ずる十三号路線を第一工事として、結局この工事が終ってから今の工事は全島に亘って各村の御援助の下に一斉に工事を開始しているのでありますが、軍の言分はこの五百万円の支出については第一次工事の支出にして、その残りの第二工事、第三工事が羽地、呉我からずっと海岸を通りまして仲尾次を経由いたしまして宜名真まで、これが第三工事であります。それで工事費の支出は一次、二次、三次と云う風になっております。吾々の予想といたしましては、これだけの路線の応急処理は三百五、六十万円で止まるような設計に相成っておりますので、百四、五十万円の残の処理につきましては軍の了解を得まして今申上げた路線以外の応急の処理に、と申しますと南部、中部も含みますが、それに振り向けたいとこう云う風に考えているのであります。尚附加えておきたい点は、今度は軍の方も単に視察する、被害状況を見ると云うだけでなしに一々自分で目測で被害の状況を調査されておったと云うことを申上げておきます。軍もこの度の被害につきましては余程関心を持っておられるように見受けられるのであります。次は後の町村工事につきましては今申上げた数字を昨日長官からゼンキンスさんに詳しく御報告申上げてあります。ゼンキンスさんからも詳しい書類を提出するように言われておりますので、今申上げた数字は極く大雑把な数字でありますので、更に町村工事につきましては詳しく設計いたしまして軍に補助申請をする予定にいたしているのであります。実に前古未曾有の災害になっておりますので皆さん方の絶大なる御協力を仰がなければ、この復旧工事の完成は困難ではないかと考えております。更に軍に対しましては、六十万住民が一斉に起ち上って猛烈な要望をしているという気持を現すと云うことが大事ではないかとも考えておりますので、その方にも特別の御努力をして戴くようにお願いいたします。なお又北部の被害状況は実に想像以上でありますので皆さんに於てもそれぞれ御覧下されば幸いだと思います。
 以上簡単に御報告申上げます。
◎経済部長(呉我春信君) 経済部関係の暴風被害状況をあらまし申上げておきます。大体今度の暴風の被害は西海岸が非常に多いのであります。中部、東部はさした被害はありません。その被害状況を申上げますと、水稲が約三十%程度であります。それから甘藷が十七%、甘蔗が十五%程度であります。その外桑園とか或は桑苗園、蚕糸被害等もございますが、これを金高で表しまして農作物だけで約一億円位あるのであります。これは時価に直して植付けたままの被害を受けたものを金に換算した額であります。養蚕関係では二百二十八万円位であります。更に被害を種類別に分けて見ると潮害が大体六十%であります。それから排水不良のためにいわゆる浸水して被害を蒙ったのが大体三十%であります。風害が十%程度であります。水稲は北部辺りでは植付けた直後でありますので、これは直播を奨励して植直しをさせているのであります。更に中南部に行きますと前のかん害に引続いておりますので、大体かんばつのために植付不能のところは督励して各自植付けつつあるのであります。然し乍らこの植付けも苗が非常に伸び過ぎているのであります。その苗の伸び過ぎによって現在植替及び植付けておりますが、然も苗が非常に不足であるという点からして大した期待は出来んのぢゃないかと、斯様に思っております。更に甘蔗の方は丁度只今去る春植が生長期にありますので、首の方から折れた被害茎が相当に出て来るのであります。これは主として南部でありますが、もう一つこの被害茎を利用して秋植の奨励をやっております。秋植も丁度かんばつのために十分植付けてなかったので今度の暴風でこの被害茎を利用して植付けを奨励しているのであります。
 なお離島町村の被害状況がはっきりしませんので町村の普及員を督励してまとめつつあるのであります。
 大体以上が農務関係の被害状況でありますが、工業塩田が全部埋められております。これは主として与根でありますが、ここの塩田が相当やられて現在これは復旧しつつあります。大体以上の通りであります。

◎議長(知花高直君) 開会致します。出席十八名欠席二名であります。諸般の報告を致します。海運協会長以下十四ケ離島町(ママ)村長からの離島航路補助金交付方の陳情書について、真和志村安里区二班玉城正徳外十一名からの割当土地に関する嘆願書について、第九回議会に於て議決になりました学校々舎建築工事用資材の件に関する特別監査要求については議長に於てそれぞれ事務の処理を致しましたので書記長をして発送文を朗読致させます。
 (書記長「新垣良正君」朗読)

議第六四号
  一九五一年八月七日
    沖縄群島議会議長
       知 花 高 直
海運協会長
外十四ケ離島村長 宛
  離島航路補助金交付方陳情について
曩に連署を以て陳情されました標記の件につき本議会はこれを採択いたしました。本件は知事提案に係る今回の追加更正予算において離島航路補助金総額百五十万円新規追加計上され本月三日の第九回議会において議決されましたから回答いたします。

議第六八号
  一九五一年八月八日
    沖縄群島議会議長
       知 花 高 直
法務部長殿
  割当土地に関する嘆願書送付について
一九五一年七月十二日付真和志村安里区二班玉城正徳外十一名より提出せる割当土地に関する別紙嘆願書は本会議において採択され第二部委員会にその審査を付託去る七月三十一日同委員会において審議の結果左記の通り処理することに可決なりましたので送付いたします。
    記
 目下法務部において割当土地に関する所有権関係法令の制定準備中の様でありますから本嘆願書は参考資料として法務部に送付すること。
  (別紙嘆願書は省略)

議第六七号
  一九五一年八月六日
    沖縄群島議会議長
       知 花 高 直
沖縄群島監査委員長殿
  特別監査要求について
一九五一年八月二日第九回沖縄群島議会(臨時会)において首題の件に関し左記の通り議決になりましたから速かに監査執行の上その結果を報告せられたい。
    記
一、学校々舎建築工事用島内生産資材(瓦、煉瓦、漆くい、その他等)の処理顛末について沖縄群島議会は群島組織法第百十七条に依り茲に監査委員会の特別監査を要求する。

◎議長(知花高直君) 第九回に於て議決されました郵便貯金、年金、保険、恩給等諸給与に関する陳情書、南北大東島土地所有権認定について陳情書、以上二件の陳情書は議長に一任されましたので議長に於てそれぞれ調製の上関係各方面へ書類発送いたしましたので報告いたします。書記長をして右二件の陳情書を朗読いたさせます。
 (書記長「新垣良正君」朗読)

  郵便貯金、年金、保険、恩給等諸給与に関する陳情書
前古未曾有の激戦の地沖縄は昭和二十一年二月、日本政府より行政分離されて茲に六年有余を経過しました。其の間に於ける沖縄は思想的に、経済的に、文化的に、あらゆる苦難と惨めな生活に追込まれ、いばらの道を辿り、やつと米国当局の援助により生活を保持して参りました。
沖縄復興は資材と資金、労力に待たねばなりませんが、物と金に乏しく其の上物価は日々に暴騰し、住民は疲弊困ぱいに陥り復興は遅々として進捗しません。それで住民は戦前日本政府に預托し、又は保証された郵便貯金、年金、保険、恩給等の支給を鶴首いたしています。
一面群島議会でも政府と協力して住民の生活安定、沖縄復興には最大の努力を傾注しているが、戦争被害の甚大と物資財力には如何ともし難い現状にあります。
今や講和会議も目睫に迫り此等重要問題が解決される事を思い、沖縄住民並公務員にも日本々土同様貯金、年金、保険等の諸給与が早急に支給される様沖縄群島議会の議決により茲に陳情いたします。
  昭和二十六年八月二日
    沖縄群島議会議長
       知 花 高 直
宛 日本政府
   各省大臣 関係政務事務次官 恩給局長
  日本国会
   参議院議長 議員 島清 衆議院議長
  日本政党代表
   民自党(ママ)
   民主党
   社会党
  在京県出身
   高嶺明達 比嘉良篤 仲吉良光 沖縄人連盟会長神山政良 親泊政博
  外務省事務官吉田嗣延

宛  米国琉球民政副長官
経由 沖縄民政官
発  沖縄群島議会議長
題目 南北大東島土地所有権認定について
南北大東両村の土地所有権認定に関しては左記理由により事情御賢察の上善処して戴きたい。
理由
一、戦前迄「枠」の住民「特殊」の島として取扱われた南北大東島が終戦後隷属的重圧から解放、沖縄群島政府の行政管下として村政は施行され、義務の履行、権利の行使等自由の民として生気溌刺、楽土建設に邁進しつつある今日独り大東島のみ土地所有権の認定なく管理財産としての性格のまま留保せられる事は、住民永遠の福祉と大いなる希望を失い、自治の運営は萎靡沈滞し、振興樹立の諸政策は砂上の楼閣に終るであらう。
二、大東島開拓当初よりの歴史的経緯は省略するも、三十年後には各自の所有になる事を約束し、営々として働き続けた偉大なる開拓者に一坪の土地も有しないという事は余りにも惨めで同情に値すべく特に絶海の孤島、生活と経済の根源たる土地所有の権利なくしては自立経済の方途は勿論、土地愛護の精神も失われ、従って大東島は住民の住むべき島でなく世紀前の姿に帰るであらう事が予想せらる。
右第九回沖縄群島議会の議決に依り茲に陳情いたします。
  一九五一年八月十日
    沖縄群島議会議長
       知 花 高 直

◎議長(知花高直君) 第八回議会に於て議決になりました主食配給制度の存続並に主食の輸入確保に関する陳情書、日琉貿易に関する陳情書、住民立退移動に関する陳情書、農家への臨時食糧増配方に関する陳情書、以上四件の陳情に対して民政官府から知事宛回答が参っておりますから書記長をして朗読いたさせます。
 (書記長「新垣良正君」朗読)

   琉球列島米国民政府
   沖縄民政官府
    副官軍務団大尉
     ルイス・ピー・オーア
  一九五一年八月九日
沖縄群島議会議長殿
  一九五一年六月二十一日第八回沖縄群島議会に於て採決された陳情書に対する意見
1 民政府の配慮を求めるために一九五一年六月二十一日の第八回沖縄群島議会で採決された四陳情事項を送付して来た、一九五一年七月五日付書簡首題「沖縄群島知事々務室からの陳情書の提出について」に対し次の通り回答する。
2 民政府は御提出の陳情書を受領し慎重なる考慮を払つた。沖縄群島議会が此等の諸問題に関心を持ち且つ之に関し進言されたことに対して感謝している。
3 貴官の勧告事項と之に関する当事務(所のカ)の意見は次の通りである。
A第一陳情事項
 一九五一年六月、五番議員石原昌淳氏提案、主要食糧配給制度の継続並に輸入主要食糧の保障について、現在の輸入食糧配給制度は琉球人消費者が現地生産の不足分を補ひ最小限度の食糧需要を充たすに足る輸入食糧を確保出来るようにするため計画されている。民政府が第一義的に考慮しているのは右目的の完遂であつて、制度は二義的であり現在の環境の一所産である。最小限度の食糧輸入需要量は琉球経済が食糧輸入の決済をするに足るだけの外国為替資金を持つていないのでガリオア予算で以て米国政府が支弁している。琉球列島の経済に対する此の種形態の財政的援助は来年の七月迄は継続せられるものと予想される。現在では琉球経済の外国為替資金から生ずる収入が米国政府の此の財政的責任を軽減することが出来るようになることを期待している。現在の処では琉球向け輸入食糧の調達は日本兵たん司令部が実施している。近き将来には右調達を琉球列島米国民政部が直接認可出来る事を望んでいる。右実現の暁には可及的速かに、調達業務も琉球の代行機関に移管したいというのが、琉球民政府の希望である。現在の処沖縄及大島食糧会社が卸商として島内の配給を実施している。将来は此の仕事に参加し度いと希望し且つ其の能力のある卸商に対しては一人残らず島内の卸売りを許可し度いと民政府は希望している。現在豆類を除き輸入食糧は消費者に定量宛配している。これは食糧輸入が財政的制限に依り最小限度の要求にとどめられているので、消費者に対する食糧の適正配給を確立する上から必要である。将来に於ては琉球経済から生ずる収入が最大限度の食糧輸入を許して定量配給を廃止し得るまでになつて貰い度いと希望する。
B第二陳情事項
 日本琉球間の貿易について
 究極に於て日本からの輸入と日本への輸出が平衡を保ち得る程度にまで特に日本への無制限輸出を許可したいと民政府は思つている。輸出手続には若干のいざこざがあつたけれども、現行輸出制度で日本への最大限の輸出が許されていると信ずる。対日貿易上の支障は主に琉球生産品の等級と規格の欠除から生ずるものと信ぜられている。此等の必要なる等級及規格の設定には群島政府が援助を与え、之に関与されんことを希望する。
C第三陳情事項
 一九五一年六月十四日三番議員稲嶺盛昌氏提出、住民の現住居地からの立退について、本陳情は市町村及群島当局から数回に亘つて右件についての陳情書受領した(ママ)既に回答しておいたものである。右回答文に述べた通り当事務所は軍施設に沖縄の土地を使用することから惹起する諸問題や斯る使用の結果として此等住民が関係地域からの移動を命ぜられたと云うことは十分に承知している。最早軍用地として必要でない土地を開放して出来るだけ速かにその土地を地元の地主に返還すると云うのが民政府の政策である。尚又当事務所としては、軍機関が此以上の土地を要求しても、状況上これを却下すれば軍作戦に誤解を生ずると云う様な特別な場合を除き認可はしていない。沖縄の安全保障附与に関聯する軍の主要作戦遂行上住民に対して或種の不可避的負担が強要されるということは理解して戴かねばならない。軍の施設による土地の使用は此の安全保障維持のため生ずる負担の一つである。然し当事務所としては住民に課される負担と不便を最小限に止めるために凡ゆる努力を傾注している。日本政府所有地は立退きした住民の移住地として割当て使用が出来るまでになつている。住家、墓、其の他構築物を再建するため補助金から援助資金も割当てている。最近当事務所の取つた処置に依つて右使途への認可支給額は増額された。土地所有権計画に依り最近発行された土地所有権証明書は、所有権の証拠として認められ究極に於ては米国政府の樹立政策に基いて地主はその土地の軍使用に対する使用料の支払いを受ける筈である。右使用料支払いの基礎となるべき書類其の他適切なる資料の編さんが現在進められている。右書類及資料の作製は一に土地登録事務の進捗にかかつているので、市町村当局が一日も早く沖縄群島の土地所有権の認定及登記を完了する様最大の努力を傾注されんことを督促する。
D第四陳情事項
 一九五一年六月十四日仲村栄春議員提案農家に対する食糧増配について、甘藷生産減少の結果として農家に対する食糧増配をして貰い度いとの貴官の要求は、救済問題と食糧配給問題とを混同しているものである。
 甘藷の生産高が陳述の理由によつて減少したと云うことは了解していると同時に一般的に消費面では甘藷の余剰が見られる。此の事実は根本的に甘藷に依存している豚の生産が堅実な増加を見せていることに依つて極めて明確に表明されている。市場には甘藷は不足していない、よしんば甘藷が全面的に不足していないにしても農民が市場から甘藷を購入することを余儀なくさせる程の生産減少によつて個々の農民にとつては食糧の不足が存在すると云うことは了解出来る。同時に此等農民の多くは市場から必要な甘藷を購入する金さえ無いことは事実らしい。此の様な場合、貧窮にある家庭に対して救済資金を支給するのは貴事務所の責任である。甘藷の不足が救済問題から生じたものである(ママ)、全般的不足から生じたものではない限り食糧増配によって本問題を解決するために輸入食糧を割当ることは出来ない。
4 右の意見が貴官の御質問に対してもれなく回答しておれば幸いに思います。同時に貴陳情書は当事務所の意見を添えて琉球臨時中央政府宛に更に配慮の上同政府の必要と思料する処置を求めるために送付します。
  首席民政官の命に依り。

◎議長(知花高直君) 日本の沖縄果菜類輸入禁止解禁促進方陳情について知事から議長宛公文が参っておりますので書記長をして朗読致させます。
 (書記長「新垣良正君」朗読)

 沖経第一〇三〇号
  一九五一年八月二十四日
    沖縄群島知事 平良辰雄
 沖縄群島議会議長殿
  日本の沖縄果菜類輸入禁止解禁促進方陳情について
 標記の件に関し別紙の通り八月十五日付覚書第四七一号を以て沖縄民政官府主席民政官宛 沖経第一〇三〇号を以て琉球中央主席と琉球農林省総裁宛に陳情致し置きました。尚政府としましては今回経済部長上京に当り日本農林省農政局に対して六〇万住民の熱願を達成すべく解禁交渉に最善の努力を致すことになつております。
 右御賢察の上群島議会におきましても農民の念願に副ふよう御善処方お願い致します。
  (別紙省略)

◎議長(知花高直君) 知事から今期議会の議案、諮問案その他送付について議長宛公文が参っておりますから書記長をして朗読致させます。
 (書記長「新垣良正君」朗読)

 沖総第六〇一号
  一九五一年八月二十八日
    沖縄群島知事 平良辰雄
 沖縄群島議会議長 知花高直殿  沖縄群島議会々議事件について
 第十回沖縄群島議会(臨時会)において議会の議決を得たく別紙の通り議案及諮問案等を送付致します。

○議長(知花高直君) 書記をして議案諮問案其の他を配付致させます。
 (書記議案諮問其の他配付)

◎議長(知花高直君) 本日の議事日程を報告致します。
  議事日程第十九号
 第一、今期議会の会期を定めること
 第二、今期議会の会議録署名人選挙
 第三、沖縄群島割当土地に関する臨時処理条例制定について
  (知事提出議案第七十三号)
 第四、警察官職務執行法案について(知事提出諮問第十号)
 第五、行政代執行法案について
  (知事提出諮問第十一号)
 第六、知事専決処分報告について(知事提出報告第二号)
 以上であります。

○本日の会議に付した事件
 日程第一、今期議会の会期を定めること
 日程第二、今期議会の会議録署名人選挙
 日程第三、沖縄の日本帰属について善処方陳情の件 十二番議員発議による追加
 日程第四、沖縄群島割当土地に関する臨時処理条例制定について
  (知事提出議案第七十三号)
 日程第五、警察官職務執行法案について
  (知事提出諮問第十号)
 日程第六、行政代執行法案について
  (知事提出諮問第十一号)
 日程第七、知事専決処分報告について
  (知事提出報告第二号)
 日程第八、台風被害対策に関する件について
  (九番議員発議による追加)

◎議長(知花高直君) 只今から本日の会議を開きます。

◎長浜宗安君 本日の議事日程に対し追加並に日程順序の変更について緊急動議を提出したいと思います。沖縄の帰属問題に関しましては、第六回議会に於きまして沖縄は何処までも日本に帰属すべきであるという旨の絶対多数の決議を得て来たのでありますが、今や対日講和が目睫に迫って来ております。
 今日本議会からも関係各方面に対して第六回の決議によりまして是非とも沖縄は日本に帰属せしめて貰いたいという陳情を致したいと思いますので、これを本日の議事日程に追加併せて本件を日程第三として採択されん事を望みます。
○議長(知花高直君) 只今の十二番議員の動議に対し御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎祖根宗春君 この問題は先般の議会に多数決で日本帰属を議決致しましたが、その延長として促進を陳情することが只今緊急動議として持出されておりますが私はこの問題については反対致します。
◎仲里誠吉君 只今の長浜議員の提案に対して全面的に賛成します。理由は申上げる迄もないが、この帰属問題は沖縄のあらゆる問題と直接繋る問題であって、例えば一例として経済問題を取上げるが、先程もお断りしたように単に経済財政の問題でなくて沖縄住民琉球全島の形而上、形而下のその運命を支配する問題であるが、暴風被害対策としても応急対策として五百万円程度を支出することになっておりますがこれは勿論通(ママ)路関係の修理だけの様でありますが、我々が日本に帰属した場合日本政府からも多額の援助を受けられる訳であるが、一番根本的な農村の被害対策にしても日本では農業災害信用保険制度というものがある。この様な天変地変その他の災害がある場合政府の力によって国庫から相当額の補助が得られる訳であるが、この意味から云っても、単に目の前の一例であるが形而上、形而下の一例を何人も否定することは出来ないと思います。共和党が従来の行掛り上反対するのは当然であるけれども住民が八十%に近い七十一%、今朝の新聞で見ると斯くの如く絶対多数であるからには当然議会に於ても住民の意思を代表する議会は当然改めて意思表示をすべきであると思うので只今の長浜議員の意見に賛成します。
◎新里銀三君 サンフランシスコ対日講和は愈々米英の共同草案が修正しないと云う事を新聞紙に報ぜられておりますので、結局敗戦国民として無条件で降伏したその条件で愈々具現する事になっておりますので、寧ろ沖縄としてはこれ以上騒がないで結局各国が認めた条約に従って行ってそしてこれ迄の態度を変えて、信託統治下に於ける琉球民族として如何にすれば沖縄が早く復興するかということに重点をおいて、政府の政策もその方向に向って受託国に協力して行って、且つ受託国の出来る丈けの援助を得て早く復興した方がいいと思いますので、寧ろ陳情よりは、世界の大局が動かし得ないような事実に遭遇したからには、そういう方向に信託統治下に於ける我々は、如何なる政策を以て受託国から沢山の援助資金を得て早く沖縄が復興するかという方向に向った方が賢明だと思うのであります。
◎稲嶺盛昌君 二十番議員から先刻発表があった通り全住民の七十%以上多数の住民が要望している。その方向に向って我々議会が十分に努力して、その多数住民の要望を貫徹すべく努むことは当然我々の責任と思います。尚世界の情勢は絶対的に決っております。勿論今度はさし迫ったこの講和会議に於て決るのであって、その最後のサイコロが投ぜられるまでは、我々は全住民の要望に向って渾身の努力をすべきものと信ずるのでありまして只今の十二番議員の提案に対しては全面的に賛意を表して速かにその筋へ適当な陳情をすべきだと賛意を表します。
  (「賛成」と呼ぶ者あり)
◎仲里誠吉君 只今の新里議員の御意見は遺憾千万である。というのは共和党は従来独立論を主張して参ったのであり、大多数が三番議員の御説のように圧倒的に日本帰属論者であることを御承知の上で自分達の信念に邁進して行ったのは敬服するが、新里議員の御意見は結局信託統治になるのは決まっているから、こうなると受託国から如何にして多く金を貰うかを考えなければならないということに帰着すると思うが、それは結局独立論を自から否定する所謂論理上の自殺行為に等しいと思う。この信託統治はこれは講和会議の席上で初めて決定するものであって、法律上の問題であって云わばこれに相当するのではないかと思う。例えば殺人容疑者がいる。これは裁判にかけられてはっきりと殺人犯であるという判定を下されるまでは無罪である。これは裁判の原則であるし、沖縄の現在のこの問題もこれは同様であって、琉球の帰属は講和会議に正式に上されて、これを構成する各国によって決定されるまでは兎に角云うべき筋合ではないと思う。昨日あたりの新聞で見ると印度は講和会議の出席を拒否している。何故出席を拒否したかということは申す迄もなくネール自身は社会主義者であるけれども、この講和会議の成果が、今或る指導国家の目指している方向に推し進められて行くと結局世界の平和をかく乱するもの以外にはないと判定するからであって、従って講和会議はこのような正当な意見を印度以外にも相当な国家が参加する以上はどう決定するか分らんから、当然我々は講和会議如何を問わず、又仮に信託統治になるとしても住民の意見が、絶対的大多数が日本帰属を要望しているという意思表示をすべきである。再び賛成意思見(ママ)を述べる次第である。
◎宮城久栄君 十二番議員の緊急動議で日本復帰の陳情をするというのを日程に入れて貰いたいというので、今は日程に入ってから帰属がいいか、独立がいいか、を論議すべきであって、入れる入れんは簡単に決まると思います。私は日程に入れてその時尚意見があったらその時に述べるようにすればよいと思うので、私は日程に入れることを賛成します。
◎祖根宗春君 この問題については若し日程に入れるならば講和会議対策についてと最も広い対策を取上げて日程に入れてもらって、帰属問題ばかりでなくて沖縄の問題が如何なるところに落付くにしても、信託になるにしても帰属するにしても沖縄の主張すべき講和会議に対するそういった大きな問題を大きく取上げることが緊急ではないかと思います。只今七番議員の云われるように日程に入れるならば講和会議対策として入れることを主張致します。
◎議長(知花高直君) 十二番議員の動議に御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って日程第三に入れ以下日程を順次繰下げます。
◎玉城泰一君 日程につきまして更に私から動議を提出したいと思います。今回のマージ台風の損害につきましては先刻工務部長、経済部長から詳細報告があった通りでありまして、予想以上の被害で当局と致しましても時を移さずこれが応急対策実施中でありますけれども、然し群島議会と致しましてもこれが対策を考究して政府に協力をして一日も早く住民の要望に応えることは議会の当然なる責任であると考えます。以上の理由によりまして台風被害対策に関する件を、本日の議事日程に追加せられんことを望みます。
◎議長(知花高直君) 只今九番議員からの日程追加の緊急動議に御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って日程は追加せられました。
◎新里銀三君 只今の工務部長及び経済部長から被害状況の御説明がありましたがそれに関連いたしまして那覇の浸水につきまして旧月見橋、旭橋、松田橋、泉崎橋、美栄橋の浚渫であります。これをしない限りは那覇は雨の降る度毎に水浸になりますので、これも被害調査なり対策につきましてその点も考慮に入れて戴きたいと思います。

◎議長(知花高直君) 日程第一の今期議会の会期を定めることでありますが、開会前に出席された多数の議員の御意見を拝聴いたしまして議長として大体腹案が出来ておりますが、今期議会の会期は九月三日の月曜日まで会期七日間といたしたいのですが御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って今期議会の会期を七日間に可決いたします。

◎議長(知花高直君) 日程第二の今期議会の会議録署名人選挙でありますが、選挙の煩を省いて議長指名にいたしたいのですが御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って議長は七番議員宮城久栄君、十五番議員山城興起君を指名します。御二人に御願いすることに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様に決しました。

◎議長(知花高直君) 次は日程第三、沖縄の日本復帰(ママ)について善処方陳情の件を議題といたします。質疑を省略して討論に入ります。御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎祖根宗春君 先程二十番議員から共和党が信託統治論者に豹変したように感ぜられるということでありまして、そういった意味の感違い的なことがありましたが共和党関係の議員としましても何処迄も独立論には変りはないのであります。新聞紙の報道によりますと、米英の講和会議草案が信託統治になる意味のことが書かれて世界の対日講和に参加する国々が大体に於て信託統治を認めるであらう。そして米国を受託国とするであらう。こう云った態勢下に大体推察はしておりますが我々は何処迄も信託統治には好き好んで賛成はしない。然し世界の参加国が若し、これを決定するとすれば、それに従って協力してそしてその信託統治に速かに対処して琉球の独立に持って行くことをしなければいけない。結局琉球の帰属の問題は信託は帰属でなくてただ中間的な日本帰属か、独立か、に持って行く一時的な途中の過程でありまして、決して琉球の帰属の最後的な運命を決定する問題でないと思います。我々が主張するのは琉球の最後的な決定は飽くまでも独立でなければならない。そして独立するにしても結局日本帰属論者が主張している如く、我々は日本と言葉、文化、思想、経済これは独立しても或は日本帰属をしても同じ方向になり得る一つの見通しがある訳であります。何も独立したから、日本語を使ってはいけない。日本式の教育を受けてはいけない。日本に留学してはいけないと云う訳ではないのでありまして、独立しても可能であります。ただ行政的に国家の主権及び行政権が琉球独立論としてはどこまでも琉球国をつくり琉球の主権は琉球人の手によって経理し、そして琉球の政治は琉球人自からやる、これが我々の主張でありまして、そういった点に於ては日本帰属と違うのであります。それで結局日本に帰属する事は我々経済的に日本がいいとこういう観点を持たないのでありまして、独立してそして我々貧弱な沖縄の経済でどうして独立を維持して行くかと云う問題になりますが、経済的にこの島内で生産したもので琉球人を全部賄って行くことは出来ない。そう云ったものは如何にして賄うかと云えば矢張り琉球の独立国家を形成して速かに過剰人口を海外に移民として、そして、それによって海外の力を借りて海外に移した移民の力を借りて、或は海外と貿易をすることによって我々の島をこの琉球を賄って行く。勿論完全に独立するまでのその間は、この戦争で破壊させた日本、破壊した米国の日米両国にこの琉球が完全に財政的に独立して行くまでの間は援助を要望する。決して我々は他国の援助を受けたからといって独立出来ないことはない。日本自体が六十一%を米国の援助によって成立している日本である。その日本ですら早く講和会議によって主権を回復しようとしている。日本ですら主権回復によって独立国家を主張している。我々琉球は日本が独立国家、主権国家をねらっているのと同じく、更にこの戦争によって切り離されたこの琉球が一つの小さい国ではあっても独立して、そして経済的にやって行けないのはやって行くように援助を受け、又移民によって完全にこれを経済的に成立つまでには移民政策を提げて行く、こう云った観点から日本に復帰を希望するよりはどこまでも独立を主張して行きたい。従って日本帰属促進には反対するものであります。
◎議長(知花高直君) 提案者の陳情文案について説明を求めます。
◎長浜宗安君 今更私達は共和党の独立論をるるとして知らせて貰う必要はないと思います。
 何故ならばこれは先程の二十番議員、三番議員の御意見もありました通り事実がこれを証明しております。署名は離島各町村の未着の分を除いて既に二十七日に発送されたのでありますが、七五、四四%を示しております。日本復帰を希望している者が、斯も多数である以上、そういう住民の希望を入れることが政治であるならば速かにこれを採択して戴いてその方法について対策されると云うことが賢明ではないかと思います。その方法としましてはこれは時日が目前に迫っているというところからして電文にしたい。その電文は議長に一任したいと思います。それから宛先は日本全権吉田首相、サンフランシスコ会議の議長、行掛り上ダレス特使三名宛に陳情したいとこう思います。
◎議長(知花高直君) 只今十二番議員から陳情文案は電文にして議長一任としたいと云う御意見でありますが御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様にいたし、議長において電文調製の上発送の手続を取ることにいたします。

◎議長(知花高直君) 日程第四、沖縄群島割当土地に関する臨時処理条例制定について議案第七十三号を議題といたし、当局の説明を求めます。
議案第七十三号
  沖縄群島割当土地に関する臨時処理条例制定について
 特別布告第四号(一九五一年四月十六日付)第二条の規定により割当土地に対する所有者と使用者との権利義務に関し臨時に調整を図るため沖縄群島割当土地に関する臨時処理条例を別紙案の通り制定いたしたいので議会の議決を得たく提案する。
  一九五一年八月二十八日提出
   沖縄群島知事
      平 良 辰 雄

沖縄群島割当土地に関する臨時処理条例(案)
 (一九五一年九月二十八日付沖縄群島公報第四十号に条例として登載済に付省略)
 (注 二七九頁に掲載)

◎法務副部長(金城信範君) 今度法務部から沖縄群島割当土地に関する臨時処理条例案を提案いたしましたが、この提案の理由を簡単に御説明申上げます。御承知の通り終戦後沖縄住民の大部分は従来の住居地へ行くことも出来ず且つ自己所有の土地で生産することも出来ない状態でありますが、その居住の困難と生産の潰滅を避ける意味で戦時緊急対策として多数の沖縄住民は土地所有者の法律上の承諾もなく、琉球列島米国民政府並に市町村長の割当てた土地を使用して住居に当てたり、生産の用に供して来たのであります。ところが一九五〇年四月十四日付特別布告第三十六号に基く土地所有権の認定及び証明書の作製事務も完了しましたので、その後に於ける土地所有者と土地使用者との間に色々の問題や紛争が起って来ることが予想されるのでありますが、米国民政府に於きましては特別布告第四号を公布し、紛争解決の臨時措置として六ケ月間即ち一九五一年四月一日より同年九月三十日までの間は土地所有者は割当土地に対する土地の占有権や使用権を行使してはいけないという制限条項と、それから土地の占有者が割当られた土地を第三者に賃貸したり、使用権を譲渡したり、使用目的を変更した場合には立退請求が出来るという条項を設けて紛争解決の措置を講じられたのでありますけれども、この布告の有効期間は本年九月末までとなっておりますので、その後に於ける或る程度の制限規定を設けなかったならば、本年十月一日以降は土地所有者は所有権を自由に行使することが出来、直ちに土地立退請求とか色々の問題が起って参りますので、その困難や紛争を防止し且つ少くする意味からこれに関する条例を制定する必要が起って来たのであります。それで法務部と致しましては特別布告第四号第二条の規定に基きまして、群島政府の権限によってこのように制限を設けることが必要であり、適当であると認めまして本条例案を提案した訳であります。然し提案者としましては何時迄も所有権の行使を制限するという事は許さるべき事ではない。出来るだけ早く平常に復させたいと云う気分も多分に含まれており、又土地使用者の気持も十分考慮している積りであります。何れにしても、この問題は社会的にも大きな問題でありまして沖縄全住民が一大関心を持っておられることを十分承知しております。それで我々としては慎重を期し、各地区に於ける公聴会の御意見も採入れて本条例案を作製したのでありますが、まだ不備の点も多々あると思いますので何卒各地で慎重御審議下さいまして、土地使用者並に占有者が双方満足に行くように立派な条例つくって戴くようにお願い致します。尚細部については牧野法務課長から説明して貰うことにいたします。
◎議長(知花高直君) 本案は審議未了のままにして第二部委員会に付託致します。

◎議長(知花高直君) 日程第五の諮問第十号を議題といたし当局の説明を求めます。
諮問第十号
  警察官職務執行法案について
 左記理由により、別紙警察官職務執行法案について議会の意見を諮う。
  一九五一年八月二十八日提出
    沖縄群島知事
       平 良 辰 雄
    記
 一、提案理由
  群島組織法の規定に基く、住民の生命、身体及び財産等の保護、犯罪の予防、公安の維持並びに他の法令の執行等を警察官が職権職務を忠実に遂行できるようにするため警察官職務執行法案を米民政府に発布してもらいたいので、その法案について諮問いたします。
  警察官職務執行法
(この布令の目的)
第一条 この布令は、警察官が群島組織法(一九五〇年琉球列島米国民政府布令第二十二号)に規定する住民の生命、身体及び財産の保護、犯罪の予防、公安の維持並びに他の法令の執行等の職権職務を忠実に遂行するために、必要な手段を定めることを目的とする。
2、この布令に規定する手段は、前項の目的のため必要な最小の限度において用いるべきものであつて、いやしくもその濫用にわたるようなことがあつてはならない。
(質問)
第二条 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。
2、その場で前項の質問をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合においては、質問をするため、その者に附近の警察署、派出所又は駐在所に同行を求めることができる。
3、前二項に規定する者は、刑事訴訟に関する法令の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。
4、警察官は、刑事訴訟に関する法令により逮捕されている者については、その身体について凶器を所持しているかどうかを調べることができる。
(保護)
第三条 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して左の各号の一に該当することが明らかであり、且つ、応急の救護を要すると信ずるに足りる相当な理由のある者を発見したときは、取りあえず、警察署、病院、精神病者収容施設、救護施設等の適当な場所において、これを保護しなければならない。
 一、精神錯乱又は泥酔のため、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼす虞のある者
 二、迷子、病人、負傷者等で適当な保護者を伴わず、応急の救護を要すると認められる者(本人がこれを拒んだ場合を除く。)
2、前項の措置をとつた場合においては、警察官はできるだけ速かに、その者の家族、知人、その他の関係者にこれを通知し、その者の引取方について必要な手配をしなければならない。
 責任ある家族、知人等が見つからないときは、速かにその事件を適当な公衆保健若しくは公共福祉のための機関又はこの種の者の処置について法令により責任を負う他の公の機関に、その事件を引き継がなければならない。
3、第一項の規定による警察の保護は、二十四時間をこえてはならない。但し、引続き保護をすることを承認する治安裁判所(当該保護をした警察官の属する警察署所在地を管轄する治安裁判所をいう。以下同じ。)の裁判官の許可状(のカ)ある場合は、この限りではない。
4、前項但書の許可状は、警察官の請求に基き、裁判官において已むを得ない事情があると認めた場合に限り、これを発するものとし、その延長に係る期間は、通じて五日をこえてはならない。この許可状には已むを得ないと認められる事情を明記しなければならない。
5、警察官は、第一項の規定により警察で保護をした者の氏名、住所、保護の理由、保護及び引渡の時日並びに引渡先を毎週治安裁判所に通知しなければならない。
(避難等の措置)
第四条 警察官は、人の生命若しくは身体に危険を及ぼし、又は財産に重大な損害を及ぼす虞のある天災、事変、工作物の損壊、交通事故、危険物の爆発、狂犬、奔馬の類等の出現、極端な雑踏等、危険な事態がある場合に於ては、その場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に必要な警告を発し、及び特に急を要する場合においては、危害を受ける虞のある者に対し、その場の危害を避けしめるために必要な限度でこれを引留め、若しくは避難させ、又はその場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に対し、危害防止のため通常必要と認められる措置をとることを命じ、又は自らその措置をとることができる。
2、前項の規定により警察官がとつた処置については、順序を経て所属の公安委員会にこれを報告しなければならない。この場合において、公安委員会は他の公の機関に対し、その後の処置について必要と認める協力を求めるため適当な措置をとらなければならない。
(犯罪の予防及び制止)
第五条 警察官は、犯罪がまさに行われようとするのを認めたときは、その予防のため関係者に必要な警告を発し、又、もしその行為により人の生命若しくは身体に危険が及び、又は財産に重大な損害を受ける虞があつて、急を要する場合においては、その行為を制止することができる。
(立入)
第六条 警察官は、前二条に規定する危険な事態が発生し、人の生命、身体又は財産に対し危険(危害カ)が切迫した場合において、その危害を予防し、損害の拡大を防ぎ、(又はカ)被害者を救助するため已むを得ないと認めるときは、合理的に必要であると判断される限度において他人の土地、建物又は船車の中に立ち入ることができる。
2、興行場、旅館、料理屋、駅その他多数の客の来集する場所の管理者又はこれに準ずる者は、その公開時間中において、警察官が犯罪の予防又は他人の生命、身体若しくは財産に対する危害予防のため、その場所に立ち入ることを要求した場合においては、正当の理由なくして、これを拒むことができない。
3、警察官は、前二項の規定による立入に際しては、みだりに関係者の正当な業務を妨害してはならない。
4、警察官は、第一項又は第二項の規定による立入に際して、その場所の管理者又はこれに準ずるもの(者カ)から要求された場合には、その理由を告げ、且つ、その身分を示す証票を呈示しなければならない。
(武器の使用)
第七条 警察官は、犯人の逮捕若しくは逃亡(走カ)の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。但し、日本刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条(正当防衛)若しくは同法第三十七条(緊急避難)に該当する場合又は左の各号の一に該当する場合(注欠落ため挿入した)を除いては、人に危害を与えてはならない。
 一、死刑又は無期若しくは、長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる凶悪な罪を現に犯し、若しくは既に犯したと疑うに足りる充分な理由のある者がその者に対する警察官の職務の執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようとするとき又は第三者がその者を逃がそうとして警察官に抵抗するとき、これを防ぎ、又は逮捕するために他に手段がないと警察官において信ずるに足りる相当な理由のある場合。
 二、逮捕状により逮捕する際又は拘引(勾カ)状若しくは拘留(勾カ)状を執行する際その本人がその者に対する警察官の職務の執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようとするとき又は第三者がその者を逃がそうとして警察官に抵抗するとき、これを防ぎ、又は逮捕するために他に手段がないと警察官において信ずるに足りる相当な理由のある場合。
(他の法令による職権職務)
第八条 警察官は、この布令の規定によるの外、刑事訴訟その他に関する法令及び警察の規則による職権職務を遂行すべきものとする。
   附 則
1 この布令は、公布の日から、施行する。
2 行政執行法(明治三十三年六月法律第八十四号)は本布令公布の日から廃止する。

◎警察本部次長(西平宗清君) 従来警察官の職務指針としておりました行政執行法が現在まで適用している訳であります。ところがこの行政執行法なるものは既に時代が公安委員会制度によりまして旧い規則の感がするのでありまして、これを適用するに非常に幾多の困難があるのでありまして、既に日本でもこの行政執行法は廃止になったのでありますが、これに代るべき警察官の指針が是非とも必要になったのであります。それで従来用いておりましたところの行政執行法の内容の必要な個所を採入れ、また民主警察に切替えなければならない個所は改廃致しまして行政執行法の内容を二つに分けて一つは警察官の職務執行法、もう一つはまだ議題になっておりませんが行政代執行法、この二つに分類して警察官の職務指針にしたい。これは全琉関係になる重要な意味がありますので軍の布告で出して貰う様軍にお願いしたらこれは一応議会に諮問してから軍に交渉するようにということでありましたので諮問案として提案したのであります。よろしく御審議の程をお願い致します。
◎議長(知花高直君) 本案は審議未了のままと致しまして第二部委員会にその審査を付託いたします。

◎議長(知花高直君) 次は日程第六の知事提出諮問第十一号を議題といたします。当局の説明を求めます。
諮問第十一号
  行政代執行法案について
 左記理由により別紙行政代執行法案について議会の意見を諮う。
  一九五一年八月二十八日提出
   沖縄群島知事 平良辰雄
    記
一、提案理由
 現行の行政執行法をもつてしては住民の権利、自由を侵害し、または警察官の職権、職務を不当に濫用したりする等のおそれがあるから住民の人権の尊重、権利義務の保護、育成をなすため行政代執行法案を米民政府に発布してもらいたいのでその法案について諮問いたします。
  行政代執行法
第一条 行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。
第二条 法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によってその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。
第三条 前条の規定による処分(代執行)をなすには、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を、予め文書で戒告しなければならない。
2 義務者が、前項の戒告を受けて、指定の期限までにその義務を履行しないときは、当該行政庁は、代執行令書をもつて、代執行をなすべき時期、代執行のために派遣する執行責任者の氏名及び代執行に要する費用の概算による見積額を義務者に通知する。
3 非常の場合又は危険切迫の場合において、当該行為の急速な実施について緊急の必要があり、前二項に規定する手続をとる暇がないときは、その手続を経ないで代執行をすることができる。
第四条 代執行のために現場に派遣される執行責任者は、その者が執行責任者たる本人であることを示すべき証票を携帯し、要求があるときは、何時でもこれを呈示しなければならない。
第五条 代執行に要した費用の徴収については、実際に要した費用の額及びその納期日を定め、義務者に対し、文書をもつてその納付を命じなければならない。
第六条 代執行に要した費用は、当該行政庁の租税徴収の方法により、これを徴収することができる。
2 代執行に要した費用を徴収したときは、その徴収金は、事務費の所属に従い、群島政府又は市町村の収入とする(経済の収入となるカ)。
第七条 代執行に関し不服ある者は、訴願を提起し、又は当該行政庁に対して異議の申立をすることができる。
2 前項の規定による異議の申立をなすべき期間、申立の効果及び異議の決定については、訴願法(明治二十三年法律第百五号)に規定する訴願の例による。
3 前二項の規定は、裁判所に対する出訴の権利に影響を及ぼすものではない。
   附 則
 この法律は公布の日から施行する。

◎警察本部次長(西平宗清君) この諮問第十一号も先程御説明申上げましたように行政執行法の廃止に当り職務を完全に遂行するにはどうしても代執行法が必要になって参りましたので諮問案として提案をいたした訳であります。よろしくお願いいたします。
◎議長(知花高直君) 諮問第十一号を審議未了のままといたしまして第二部委員会にその審査を付託いたします。

◎議長(知花高直君) 次は日程第七の知事提出報告第二号を議題といたし当局の説明を求めます。
報告第二号
  知事専決処分報告について
 一九五二年度補助金追加予算(一九五一年六月十四日議案第六十号をもつて知事専決処分として指定された、米民政府補助金に関する予算)について別紙の通り専決処分しましたから群島組織法第三十三条第二項の規定に基き報告します。
  一九五一年八月二十八日
    沖縄群島知事
       平 良 辰 雄
 (一九五一年十月四日付沖縄群島公報第四十二号に登載済に付省略)
 (注 二八〇頁に掲載)

◎財政部長(仲宗根秀俊君) 只今議題になりました知事専決処分報告について御説明申上げます。
 本予算は七月二十四日付民政官府示達第七十六号を以て法務部に対し六百五万円、工務部に対し二千二百二十九万円、文教部一千三百六十二万一千円、厚生部三百万円、警察部三十八万二千円、外に建築予備費といたしまして九百三十五万九千円と、それから八月二十一日に示達四百五十五号を以て工務部に対し一千七十四万七千二百円合計六千五百四十四万九千二百円をそれぞれ示達交付になったのであります。これは主として建物の建築並修理費及び木材購入費としての何れもその使途を明示され且つ、早急着工を必要といたしましたので知事に於て予算追加の専決処分を行った次第であります。結局現在までの補助金総額は三億四千九十二万三千二百八十四円となっております。

◎議長(知花高直君) 次は日程第八の九番議員発議のマージ台風被害対策に関する件を議題といたします。提案者の提案理由の説明を求めます。
◎玉城泰一君 本件に関しては当局の方から詳細なる御報告がありましたので数字的には分っておりますけれども現状を見ていない我々にとっては実感が伴っておりません。出来ることならば全員全島の被害の状況を視察した上で対策を講じたいと、こう云う風に考えておりますが然し乍らそうなると、先に決議致しました一週間の会期ではとても出来そうにありませんので、こう云う案を持っております。今期議会の重要議題になっております議案第七十三号、諮問第十号、諮問第十一号何れも二部委員会に付託になっておりますから、その三案は二部委員会の方では慎重に検討しなければならんと思いますので会期の殆んど大部分がこれに要すると思いますので、これを終った上で全員揃って全島を廻るということは非常に日数が永く掛かりますので、二部委員会の方でその付託になりました問題を審議する間に一部委員の方はお暇でありますから、その方々で北部中部の方を視察して戴く。それから、我々二部の方はこの三案を先ず二日間で審議致しまして、三日目には南部の方を見て廻る。つまり、その間に三日の間に一部では中部北部を視察される。二部の方は二日間はこの付託事項を審議して三日目に南部を視察する。それからその翌日土曜日に全員協議会を開いて対策を講じたい、とこう云う風に考えております。
○議長(知花高直君) 只今九番議員の御説明通り実地視察をした後対策を講ずる段取にしたいのでありますが御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様に決しました。
◎議長(知花高直君) 経済部長から台風被害の追加報告について発言を求められておりますのでこれを許します。
◎経済部長(呉我春信君) さっき御報告申上げたのは農業関係でありますが水産関係の被害状況を申上げたいと思っております。動力船でありますが沈没が十三隻であります。これが金高に見積りまして二百六十五万円、破壊が五隻三十七万円、坐礁したのが十一隻で百三十一万円合計三(二カ)十九隻で四百三十三万円。くり舟の沈没はありません。破損したのが二十七隻二十三万八千円坐礁したものもありません。行衛不明が三隻で二万三千円計三十隻二十六万一千円合計四百五十九万一千円であります。更に水産施設でこれは加工場が一棟百二万円のものが全壊しております。半壊したものが五棟で約八万円、大体以上の通りでありますが、破壊されたのは沈没、破壊、坐礁等大半は糸満港に於ての破損でありまして、ここは非常に港も悪い上に色々の障害がありまして多大の損害を蒙っている訳であります。
○仲里誠吉君 当局にお伺いしたいのですが、こう云ったマージ台風の被害は全部詳しく表にして今度の委員会までに出して戴けませんか各部を出来る丈け総合して、
○総務部長(幸地新蔵君) 従来は暴風の被害毎に各部の方で調査を致しまして政府としてまとまったところの一資料としておりますが、今度のマージ台風から各部の合計を総務で一括して保存したいとこう思っております。それは今まとまりつつありますから或は材料がまだ来ない分もありますのでまとまった丈
けは間に合ったら刷物にして差上げたいと思っております。
 そうすれば常に台風が襲来する琉球としてはそれに対する恒久的総ゆる対策の資料になりはせんかと思っております。
◎祖根宗春君 今回の暴風被害について一番痛切に感ぜられたことでありますが暴風の伝達警報がなかったことであります。殊に我々離島におった者としては非常にその点を痛切に感じておりますが、暴風があることを速に伝達して貰えばその積りで準備なり対策も講ぜられた筈ですが、ただ久米島の場合には水産課長から八月十三日かと思いますが、低気圧が発生して二十米の風速で進行中である、こう云った意味の連絡がありまして、まだ沖縄に台風が襲来するかどうかと云うはっきりした伝達が来なかったのであります。暴風警報については伝達経路が確かにちゃんと樹立されておったと思うが、今度の暴風には実行されていない。こういうことになっておりますのでこの点は群島政府当局でも、そう云った問題については慎重に考慮して戴き度いと希望するものであります。それから昨年のグロリア台風によって壊れた久米島の護岸関係の調査については群島政府からも、軍の工務部長も或は市町村工務委員の方からも再々調査して一千五、六百万円位の被害個所、被害金額色々具体的な数字も工務部の方では持っておられるのであります。然も数字の報告と同時に現地調査によって十分その被害状況が分っているのでありますから、本年度のマージ台風の対策と同時に、昨年の暴風対策でまだ工事も着手していない予算の関係も分らない去年度の被害問題についても、その集められた資料を基にして今度の暴風対策と一緒に復興に関しては群島議会も工務部の方もこれを併せて解決して貰いたいことを希望致します。
◎玉城泰一君 只今の経済部長の船の被害報告と糸満署の調査したものと大分の開きがあるようです。糸満警察署の調査によると大小の船舶を加えてくり舟を除いて沈没したもの、破壊されたもの、坐礁したもの、陸上にのし上げたもの合せて四十九隻となっております。沖縄全島に亘って三十九隻では糸満港内で受けた被害よりも少いように思います。
○経済部長(呉我春信君) これは運搬船を含んでいないのであります。
○議長(知花高直君) 午前はこれで散会いたしまするが暫時休憩致します。
  午前十一時五十分休憩

  午前十一時五十七分再開
○議長(知花高直君) 開会致します。午前はこれで散会致しまして午后一時から本会議を開きます。
  午前十一時五十八分散会

  午后二時二十五分開会
○議長(知花高直君) 開会致します。午后の出席十八人欠席二人であります。

◎議長(知花高直君) 二十九日、三十日は第二部委員会を開催し議会からの付託事件の審議を願いまして、三十一日は南部地区の台風被害個所の現場視察をして戴きます。それから第一部委員は二十九日、三十日、三十一日の三日間を中部、北部の台風被害個所の現場視察をして戴きまして、九月一日土曜日には全員協議会を開き議案諮問案の研究と台風被害対策について議会としての方針を決定することにいたします。九月二日は日曜日でありますので休みまして九月三日午前十時本会議を開きます。本日はこれで散会いたします。
  午后二時二十七分散会
  出席者は左の通り
 議 長   知花 高直君
 議 員
  与儀 清秀君 稲嶺 盛昌君
  仲村 栄春〃 石原 昌淳〃
  普天間俊夫〃 宮城 久栄〃
  平良 幸市〃 玉城 泰一〃
  具志頭得助〃 長浜 宗安〃
  山川 宗道〃 祖根 宗春〃
  山城 興起〃 新里 銀三〃
  野原 昌彦〃 崎山 起松〃
  仲里 誠吉〃
   知事    平良 辰雄君
   総務部長  幸地 新蔵〃
   財政部長  仲宗根秀俊〃
   経済部長  呉我 春信〃
   工務部長  渡嘉敷真睦〃
   法務副部長 金城 信範〃
   工務副部長 西銘 順治〃
   文教副部長 仲宗根政善〃
  警察本部次長 西平 宗清〃
   法務課長  牧野 博嗣〃
   主計課長  板良敷朝基〃
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