戦後初期会議録

組織名
八重山群島議会
開催日
1951年02月26日 
(昭和26年)
会議名
第2回八重山群島議会(定例会)[1]
議事録
第二回八重山群島議会(定例会)会議録

一 会期
  自 一九五一年二月二十六日午前十時三十分
  至 一九五一年三月十七日午後四時五十六分

二 出席議員
   議  長 潮平 寛保君
   副議長  大山 眞整君
   議  員 石垣 用中君
    〃   星   克君
    〃   佐久眞長助君
    〃   古見 石人君
    〃   久部良正三君

三 議事参与
  群島知事  安里積千代君
  副知事   當銘 正友君
  秘書長   仲程 長宗君
  財政部長  崎山 信邦君
  経済部長  眞榮田 登君
  工務部長  花城 永彭君
  文教部長  宮城 信勇君
  厚生部長  崎山  毅君
  警察部長  富本  勉君
  会計長   宮良 永益君
  総務部次長 眞玉橋長要君
  財政部次長 石垣 直文君
  経済部次長 石垣 英政君
  工務部次長 宮良 英副君
  文教部次長 亀谷 長行君
  厚生部次長 三島 保夫君
  法務部次長 野國 昌一君
  運輸所長  仲程 長宜君
  配電所長  神山 長意君
  企免所長  竹原 孫恭君
  製材所長 上江田吉次郎君
  畜産課長  内原 英郎君
  防疫所長  大濱 用次君
  事業課長  前新 雄三君
  税務署長  西石垣正行君

四 書記
  書記長   眞玉橋長要君
  書 記   平得 泰次君
   〃    宮平 安宗君

第二回八重山群島議会会議録(定例会第二号)

一九五一年二月二十六日(月曜日)
 午前十時三十分開議

 議事日程第一号
  午前十時三十分開議
 第一 議案第二十三号 一九五〇年度八重山群島政府一般会計歳入歳出追加更正予算案審議について
 第二 議案第二十四号 一九五〇年度八重山群島政府特別会計総合病院歳入歳出追加更正予算案審議について
 第三 議案第二十五号 一九五〇年度八重山群島政府特別会計中央企業免許事務所歳入歳出追加更正予算案審議ついて

◎議長(潮平寛保君) 第二回八重山群島議会定例会を開会致します。
 出席議員の氏名を報告して下さい。
○書記長(眞玉橋長要君) 出席議員の報告を致します。二番議員(星克君)、三番議員(潮平寛保君)、四番議員(佐久眞長助君)、五番議員(古見石人君)、六番議員(大山眞整君)、七番議員(久部良正三君)以上六名出席であります。
◎議長(潮平寛保君) 参与の報告をして下さい。
  (書記長(眞玉橋長要君)出席参与の官氏名を報告する。)
○議長(潮平寛保君) 本会議の会議録署名議員を決めたいと思います。
○四番議員(佐久眞長助君) 議長指名で決してはいかがです。
○議長(潮平寛保君) 議長指名の動議がありましたが、本会議の会議録署名議員は、四番議員、七番議員に致したいと思いますがいかがですか。
  (全員「異議なし」)
◎議長(潮平寛保君) 全員御異議がないので本会議の会議録署名議員は、四番議員(佐久眞長助君)、七番議員(久部良正三君)に決定致します。
○議長(潮平寛保君) 次に本定例議会の会期を決めて戴きたい。
○六番議員(大山眞整君) 会期は三月十日迄としてはいかがですか。
○議長(潮平寛保君) 会期を三月十日迄との意見がありますがいかがですか。
  (全員「賛成」)
◎議長(潮平寛保君) 全員御異議がないようですから、本定例会の会期を三月十日迄と決定致します。
  (書記長(眞玉橋長要君)、書記(平得泰次君)議案を議員及び参与へ配る。)
○議長(潮平寛保君) 本会議の議事日程を決めて戴きます。
○二番議員(星克君) 議長の腹案がありましたら、御知らせ下さい。
○議長(潮平寛保君) 一号議案から逐次項を追って審議していきたいと思います。その中で特に研究を要するものは、そのままにして、次々に審議していきたいと思います。
○群島知事(安里積千代君) 議事日程としては、本日で全部入れて置いて審議の都合によっては後回しにして審議を進めて戴きたいと思います。なほ一九五二年度の予算は民政官府の認可を得てありますのでその点、御了承を御願い致します。
○議長(潮平寛保君) 議事日程は、一号議案から二十八号議案まで全部入れてその審議は一号から逐次にして、その都度都度むつかしいものは後回しにするように決定してはいかがですか。
○議長(潮平寛保君) 外に御異見はありませんか。
○二番議員(星克君) 政府の方で急を要する案件がありましたら、それから審議しては…。
○群島知事(安里積千代君) 特に急を要する案件は、ジフテリアの発生に伴う予防対策、暴風雨、バイラス病の被害のためその救済は急を要するものと考へますので、一九五〇年度追加更正予算審議から先にして戴きたい。
○二番議員(星克君) それでは、一九五〇年度追加更正予算を本日から明日迄審議致しまして残りは後に回しては、いかがですか。
○議長(潮平寛保君) ただ今の二番議員の御意見どうり議案第二十三号、第二十四号、第二十五号を政府の都合もありますので、先に審議することに決定致したいのですが御異議はありませんか。
○五番議員(古見石人君) 異議ありません。
◎議長(潮平寛保君) 御異議がないようですから議案第二十三号、第二十四号、第二十五号から審議するように決定致します。
○議長(潮平寛保君) 群島知事、演述の申出がありますのでそれを御願い致します。
◎群島知事(安里積千代君) 本日第二回八重山群島定例議会を招集しましたところ、議員各位には全員御出席になり議会の成立を見ましたことは、感謝に堪えないとともに此の機会施政の一般に付申し述べることのできますことは、私の光栄とする所であります。
 去年十二月十五日軍政府を廃して米国琉球民政府が設置され、マ元帥が民政長官として責任と権限が引継がれ、住民の責任政治へ更に一歩進められ、それと共に自立経済への大方針が示され、或は近く中央政府の樹立の準備も明示され活発な動きを示していることは、琉球政治の為に喜ぶべき事であると信じます。
 過般沖縄に於て四群島知事会同が行われましたが、中央政府樹立により琉球政治の態勢(体制カ)を確立するために、その実現の速かならんことを願うことに意見の一致を見ました。然し乍ら政治的自立は経済的自立が根本でありまして、中央政府樹立準備に関する指令と共に自立経済樹立に付、指示されている所以も此処にあると思います。
 即ち現在我々に課せられた政治の指標は自主的政治と自立経済の二つであると信じます。
 然し乍ら我が八重山に於ける実情は民主政治の訓練未だしの感あり、反省とその完成への努力を必要とし経済的にも自立経済に達する迄に民政官府の指導と援助を要すること大であります。而して求めずして与へられず、与へられる能力なくして与へられざることと思い我々は自らの手に可能なることについては、全知全能を注ぐことが群島民の利益の為に必要な前提であると信じます。
 政府はこの点に留意し政治の運営に当りたいと念願しています。
 以下各部に付概要を申し上げます。
総務部関係
 組織法及条例に基き本庁職員は八〇名であり、廨庁は一七二名となっていますが、現在本庁七六人、廨庁一六三人であります。
 十二月には国勢調査の事務が重要な事務の一として実施されましたが夫々調査員の努力により良好な成績をあげて終了しました。
 労務調査に就ては、布告第二十四号、労務と雇傭が全琉に実施されていましたが従来之によらない取扱をしていたので、新に労務調査が行われる予定で居ります。統計上八重山は失業者は僅か二二名となっていますが、それは八重山の大部分が農業であり而もその農業が家族的農業経営である結果、表面上の失業者がないのであって、労働力が必ずしも、バランスがとれているとは云へません。今後復興事業の活発な進行、工場労働力を必要とする時にそなへて労務の調査は大切と考へてその準備を進めています。
 地方行政に就ては地方自治の本則に基いて政府としては、従来のような監督権は行使いたしませんが、政府に関係ある事務の執行状況については、その筋の要求もあり監査を実施致しましたが、各町とも多くの欠陥の存在するのは遺憾であります。又町によっては地方財政の実情から政府の援助を仰ぐ必要に迫られている所もあり市町村(ママ)長協議会より夫々陳情事項もあるやに承っていますが、まだ具体的な進言を受けていません。地方税法の制定その他市町村法の不淨策(ママ)についても考慮すべき所あり、四知事会同の際にも審議せられ何れ改正案は制定の気運に相成ると思います。
 企免は法令によって一律に二〇〇円の免許料を徴収することになっていますが、これは業態により或は資本額により差をつけることが民の負担上必要であると考へその変更方を陳情していますが、まだ認可になっていません。その他法の趣旨に従って免許を要しないと思料せられる向もあるので、これが基準に付考慮をいたす予定であります。遊戯場、闘鶏場に就ては公安の立場及生産に群島民一致邁進する立場から時日及時刻に制限を附した。
 海事事務所に於ける現在登録船舶は一四一隻、外に刳舟一六九隻、将来小産業者貿易の振興等海に依存し船による運航の増加が予想せられ、それが安全と技術の向上を致して船舶職員の講習会を実施し第一回の講習を本日終了しました。
財政部関係
 本年一月分より職員の俸給は民政官府に於て支拂って貰うようになりましたので、これによる剰余を災害救済費、或は他の必要欠くべからざる経費に充当し、尚予備費に追加して五〇年度追加更正予算を編成いたしました。
 一九五二年度予算に就ては軍の指示により従来と趣を異にして一般予算と軍の援助金とを併せ編成し結局復興費と合せ一億三千万円を超え嘗てない莫大なる予算となりました。
 更に本予算編成に於ける特点は軍補助金に即応するだけの民負担額が数字の上で五千万円以上になっていることで、これは群島民の労力奉仕、教育面に於ける保護会費、或は、七号ベース給与に達しない金額を群島民の寄附としてその協力的努力を金に換算したものがその大部分で直接新に民負担の加重になってないのであります。
 只、軍の援助は群島民の協力の下にのみ得られる。即ち与へられるだけの能力あるものにのみ与へられることが予算技術上に現れているのでありまして、今後の八重山復興のために群島民の積極的な協力を求めている姿が現されています。
 歳入の面に於ては、力めて群島民の負担力を考慮すべきは勿論でありますが、組織法による税の賦課徴収は賦課に関する立法権は現在の制度の下に於ては議会になく且つ布告により示された税率に従うのみでありますから後は課税の技術上の問題であって、それ以上に論議の尽される余地なく若し実情に応ずる賦課を独自の立場に於て政府が賦課せんとせば議会にその立法権が与へられる必要があると解しています。税の収入を組織法に基き合法的ならしむるために本議会は夫々条例の審議を願うこととし、その他官営事業による成績も逐次向上しており、これによって政府の必要費を充実せしめることにしました。
経済問題
 琉球政治の一指標が自立経済にあることは、先に述べた通りであり、この軍の政策に応じ且つ群島民の利益の為に目下三年次の計画が大体出来上り先に組織した自立経済委員会の審議を経て成案を得たいと考へています。
 経済自立の要素は自然力と人力と科学力を綜合結集された所に実現すると考へます。八重山は自然に恵まれながら自然にのみ頼り、自然の力からより多くの生産を生みだす科学的力が加へられること不充分であり、更にこれを動かしこれを生む人、延いては消費人口の少ないことが一切の経済活動を不活発ならしめています。
 去年夏のかんばつ、十一月のクララ暴風雨及びバイラス病の蔓延と十月分以降の主要食糧配給停止により食糧事情に困難を来し、再配給の陳情もくり返したが、八重山は自給可能の見解に変りなく、その他の事情によってまで再開の見通しはついていません。然し之に対しては民政官府の配慮により部分的な援助が行はれ或は本部より専門家の来島を願って全般的な調査の行はれたことは、感謝に堪えない所であります。また政府としては、外に速に罹病地の処理策を講じ農民またよくその指示に従い蔓延防止と新作付作物の転換を行ってこの患を克服しつつあり尚本議会にも政府としては災害救済費として予算を計上し対処いたして居ります。
 今後も起るでありませう今回の停止及災害は我々をして自立経済確立を達成せしめ自らの努力により立ち上らしめるためのよき試練であるとも考へ、そのよって来る原因を考へて之に対する事前の対策を探究する必要があります。
 周期的に或は突発的に災害を防止し住民の生活安定を期する為政府は主要食糧需給調整に関する条例及予算を提案し、政府による保有米の買上、暴利買しめ、売おしみ禁止、群島外の搬出を許可制とし以て食糧の確保、適正価格の維持、群島外の取引の規制を図り度いと考へています。
 積極的には計画的農業経営、ダム潅漑排水、開拓事業推進による増産、換金作物、パイン、苧麻、煙草、園芸作物等による換金策、何れも経済自立の為に八重山の好条件を活用したく需要側に於て群島にその要求が切であり、これが指導実現にあたる考へでいます。
 蚕糸業は過去に於て恵まれた経験を持ち、桑園、蚕室にも諸条件が具備しているので、これが復興に特に力を注ぎたい。殊に蚕種製造に重点をおく方針で日本蚕種業者との契約の為技術員を沖縄へ派遣中である。
 林業に就ては、組織法に於て群島政府の管掌事項であるが農林省、林野庁と群島政府との系統的つながりなく、業務上支障があるので、各群島政府に於てもその見解を明確にすべくつとめている。
 政府としては、森林政策が群島百年の大計の為に重大なることを考へ力めて農林省と相提携しその完成は林産物による経済発展を期したい。殊に西表山林に就ては国有林が大部分のために林野庁にそれが移管となった場合地元町民の歴史的又現実的な経済面と併せ重要な事項であり政府としては、要存地林と不要存地林とを区分し、その管理を林野庁、地元町と二に区分されるよう願って陳情している。そのことが西表要存地林の管理並に開発の為にも良い結果となると信じています。
 畜産は八重山農業経営の現在及将来を考慮して肥育牛及肉豚生産に重点を振向けると共に之に乳牛を配し、馬は過去の軍馬万能主義時代の余波を一掃し農耕に事欠かない程度に生産を計画する。
 牧野の改良、種牡牛、種牝馬等の優良品種の日本種の移入を計画しており、防疫施設を為すべく復興予算にも計上しています。将来それが加工業化することを目指しています。
 水産業は、採貝、採藻、鰹節は外貨獲得に大いに役立ち、鮮魚は本島の需要を充たす程度に過ぎない現状であります。加うるに不法、反漁法により沿岸漁場の荒廃は将来の八重山水産業の危機を招来するものでその取締りを厳重にし且つ農水工場の実現に伴い沖合或は南方漁場への発展を期したい。然し乍ら尚技術や装備の点に於て向上の余地が多いので、不当な列国との競争或はトラブルを除去し合法的に且つ安心して作業のできるよう戦前琉球人の有していた権益的漁場に就て入漁権を獲得することが水産業振興をなし、外貨獲得上肝要と考へ、その意見書を提出しています。
 尚真珠、海綿等の事業につき、日本内地より事業経営の申込あり、民政府は外資の導入を一定条件の下に、歓迎する方針にあるので、之等事業家との提携により産業開発に資することは必要と考へます。
 商工関係は、消費人口の少ない事により、おくれていると見ています。
 諸工業は土地生産物を以てする加工業の勃興が第一でありその為には、生産材の生産増加に待たねばならない。西表山林を利用する製材工場、トラバーチン、炭酸石灰等戦前から目をつけられた事業が事業家を待って居り、鉄鉱、山林、有望として計画を進められています。台湾との貿易の許された今日、八重山に附与されることは、生産の増強も工業の勃興も商取引の活発も結局は人口にある。八重山は土地の割に人口が少ない、それが八重山の発展を阻害している。沖縄に於て過剰人口を八重山に移す計画が進められ、軍も亦それを支持していられるので琉球全体の経済自立の為に政府としてはこれに対し受入計画を進めています。
工務部関係
 前政府から引継いだ復興事業工事の完成は、新政府に与へられた大きな仕事であり、引継当時まだ一、二期完成して居らず、三期予算が一時凍結になっていましたがそれが解除されたことは、前議会に於て報告した通りであります。建築に関する復興費は一七、〇〇九、〇〇〇円でありますが、現在八〇%の竣工率を示しています。
 土木関係は桟橋八、二一三、四〇〇円、道路四、二八六、六〇〇円として引継ぎを受けましたが軍に於ける認可には、道路は含まれてない理由の下に、目下停頓中でありますが之は前政府時代の何等かの行違いと思いますので極力その是正を陳情中であります。
 尚市町村委託の工事の成績が過去の実績に鑑み支障が多いので之を取り止め直接政府との契約にするようにとの民政府官からの示達によりその趣旨に従って実施いたすようにしています。
 来年度の復興予算としては、建築に学校、衛生施設、警察署、植物検査所、家畜検査所、検疫所、倉庫等二八、二八四、〇〇〇円であり、土木面では道路、港湾、桟橋、橋梁、八重山の産業発展に必要な施政費六〇、一三八、〇〇〇円が申請され内定を見て居ります。
 外に本年度分として名蔵築港資材費五五、〇〇〇、〇〇〇円が認可になる模様で之等多数の工事実施は、群島内の能力のみでは、到底完全消化ができないと思われるので相当技術者、請負者を誘致する必要があると思います。
 尚、道路の維持保護は、平素の群島民協力なくてはならないのでその奨励規程を設けて他面政府管理道路の認定をして道路の維持保全に力をいたすべく関係条例を提案して居ります。
厚生部関係
 過般ジフテリアの発生により市民に心配をかけましたが、民政官府の取計により血清の空輸を受け、又民政本部より係官の出張を得てその防止に力めています。
 政府としては、伝染病予防法に基き早速劇場、遊技場等への一六歳以下の者の入場禁止、罹病者家への交通遮断等を実施いたしました。
 現在迄に罹病者計三七名、内現に隔離入院中の者二八名であります。
 この隔離を実施する諸設備及給与、為の必要な経費を提案してあります。
 マラリアの撲滅は群島民保健、将来の移民或は開拓事業と相まって強力に推進する必要がありますので衛生土木費として四、四六八、〇〇〇円を計上、ひいて耕地改良に資したいと考へています。昨年中に於ける罹病者は三五名であります。尚薬品代の換算率が上ることにより負担が大きくなるので厚生部長の上沖を期とし三、六〇〇、〇〇〇円相当のアテブリンを今年度無償配布を受けることになって居り、保健所の設置も来年度予算に於て計上いたして居ります。
文教部関係
 教育の基準法として日本に於ける教育基本法がその儘、前政府時代公布なっていますが、教育の点は全琉的に考慮すべきものと考へられるので速かに琉球としての根本方針を法的に樹立されることが必要と考へます。
 日本同様教育委員会を設け民主的教権の確立を期することが必要とされ、組織法にも、これが新設せらるる節もあります。現在教育刷新委員会を設けて教育刷新に関する意見を徴して居ります。教職員の質的整備、その権威を高める為、検定試験制度を制定したく、本議会に提案して居り、尚高等学校学則、農林高等学校学則が今日まで、未制定のようでありますので、今回御審議を仰ぐことにしてあります。更に僻陬地に勤務する職員の為に手当の増額を計って、条例と共に提案してあります。
 教育情報局は予算一、一四五、〇〇〇円で認可になっていますが、その位置が確定せず、本会期中に議員各位の意見も承り決定したく願って居ります。
法務部関係
 法制の確定せらるることは、自主的政治のため重要でありますが、現在沖縄と当地に於ても取扱を異にし、法そのものの適用に差異があり、例へば各地戸籍、或は、商法に規定する認証、検査役選任等沖縄を除いて旧法の適用として居ます。然し日本本土に於ても裁判所は純然たる裁判にのみたづさわり、裁判そのものに直接関係ない事項は之を切り離して行政官庁に移管されて居るので琉球に於ても、遠からずそうなると信ぜられ、機構上法務部の所管として処理するよう取計っています。
 刑務所問題については、いろいろ論議されましたが従来からの悪い惰性と一般の外に台湾人が多数収容され(現在七〇名、普通収容人員の約三倍)受刑中の為と制服の制定がなかったために、取締に意の如くならなかった点があったと考へます。近く不法入島者の受刑者は沖縄へ移送されるとの内示は受けていますが時期はまだ確定していません。然しこれまでに要した執行費も莫大になり且つ同人等の沖縄へ移動しても服役期間中の費用は当政府負担となるので、多くの追加更正予算を計上してあります。
警察部関係
 前回の議会で公安委員の同意を得ることができなかったので最小限度必要な補充移動を行っておきました。若し今議会でも同意がなかったとすれば、知事としては群島内治安維持のため、政治の責任者として、自らの権限に基き警察の強化整備をせねばならないので、是非御同意を願いたいと思います。
 時局と台湾貿易等にそなへて、警察警備船が交付となっています。これによって取締りを強化し得ることと思います。それに対し従来予期せなかった経費を必要としたので、追加更正いたしてあります。
 以上施政の概要に就き申述べましたが、各位に於てはよき協力の趣旨に於て充分、審議、議決せられ又、建設的な御意見を以て政府の仕事を助けて貰いたいと願うものであります。
  (一番議員石垣用中君、知事演述中遅参)(午前十時四十八分)
○議長(潮平寛保君) 案件はたくさんあり、中には重要審議の為相当時間を要するものもありますが、そのまま審議に移りますか、それとも休憩して研究審議に移りますか、御諮り致します。
○一番議員(石垣用中君) 相当に議案があり、深く研究を要するものもありますので三日か四日は研究にかかる事と思いますから、そのまま第二十三号議案、第二十四号議案、第二十五号議案を審議致したいと思います。
○議長(潮平寛保君) 唯今の一番議員の御意見は議案第二十三号、第二十四号、第二十五号について質問致したいという御意見ですか。
○二番議員(星克君) 議事日程はすでに決定致しましたので、そのまま議事を進行せしめて下さい。
◎議長(潮平寛保君) 議案第二十三号一九五〇年度八重山群島政府一般会計追加更正予算案を上程致します。
◎財政部次長(石垣直文君) 一九五〇年度八重山群島政府一般会計追加更正予算案の編成についてその編成方針を述べます。
一 前の予算編成以後に於て突発した事項に対する経費
二 欠くべからざる経費
三 科目の更正
四 民政官府よりの支給される職員費、傭人料等、人件費関係の残額は予備費に繰替へた。
五 特別会計の民政官府より支給される職員費は、一般会計納付金として計上した。
◎六番議員(大山眞整君) 予算編成の係にお伺い致します。一般会計職員費並に特別会計職員費の予算経理について質問致します。
○財政部次長(石垣直文君) 民政官府より直接支給される一般会計職員費、傭人料等は歳入には追加されていませんが、特別会計職員費、傭人料等人件費は一般会計納付金として歳入に計上してあります。歳入の第二款の納付金がそれです。
○一番議員(石垣用中君) 第二款の財政部収入について審議致したいと思います。
○議長(潮平寛保君) 休憩して懇談致してはいかがですか。
◎二番議員(星克君) 数字に誤りがありますが会議中に訂正させて下さい。
○議長(潮平寛保君) 第二款の補正予算額は誤記ですから一四、三四六、二〇五円に訂正して下さい。増減の項は四四、七五八、-(ママ)に記入して下さい。
 休憩致します。(午前十一時四十分)
  (休憩中、不動産課税問題について審議研究)
○議長(潮平寛保君) 開会致します。(午後零時五十分)休憩中に種々研究も遂げられました様ですが、議案第二十三号、第二十四号、第二十五号は御異議ありませんか。
◎五番議員(古見石人君) 議案第二十三号、第二十四号、第二十五号は一括して原案可決して戴きたい。
○二番議員(星克君) 本案は万止む得ないと思います。組織法により命令以外の条例を作り、不動産課税は一般民衆の世論ですが、課税標準を引上げて貰い、課税技術を考慮に入れて戴き、原案可決致したいと思います。
◎議長(潮平寛保君) 議案第二十三号一九五〇年度八重山群島政府一般会計歳入歳出追加更正予算案、議案第二十四号一九五〇年度八重山群島政府特別会計総合病院歳入歳出追加更正予算案、議案第二十五号一九五〇年度八重山群島政府特別会計中央企業免許事務所歳入歳出追加更正予算案、以上三議案は原案通り可決致します。
 本日の会議はこれで休会致しまして、三月一日から開会致します。その間に於て十二分に研究をして下さい。残った議案は同日から審議致します。(午後一時〇分散会)

 本日の会議に付したる事件
一 第二回八重山群島議会会議録署名議員選任
一 第二回八重山群島議会会期定めの件
一 日程第一議案第二十三号一九五〇年度八重山群島政府一般会計歳入歳出追加更正予算案審議について
一 日程第二議案第二十四号一九五〇年度八重山群島政府特別会計総合病院歳入歳出追加更正予算案審議について
一 日程第三議案第二十五号一九五〇年度八重山群島政府特別会計中央企業免許事務所歳入歳出 追加更正予算案審議について

 出席者は次の通り
  議 長   潮平 寛保君
  副議長   大山 眞整君
  一番議員  石垣 用中君
  二番議員  星   克君
  四番議員  佐久眞長助君
  五番議員  古見 石人君
  七番議員  久部良正三君

  群島知事  安里積千代君
  副知事   當銘 正友君
  工務部長  花城 永彭君
  警察部長  富本  勉君
  会計長   宮良 永益君
  秘書長   仲程 長宗君
  総務部次長 眞玉橋長要君
  法務部次長 野國 昌一君
  厚生部次長 三島 保夫君
  文教部次長 亀谷 長行君
  農政課長  石垣 英政君
  財政部次長 石垣 直文君
  配電所長  神山 長意君
  運輸所長  仲程 長宜君
  製材所長 上江田吉次郎君
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