戦後初期会議録

組織名
琉球臨時中央政府立法院
開催日
1951年08月09日 
(昭和26年)
会議名
立法院財政金融、商工合同委員会 1951年8月9日
議事録
立法院財政金融、商工合同委員会会議録

 一九五一年八月九日(木曜日)
 午前十時二十分開議

議事日程
 一、不正煙草の取締に関する財政当局の方針及び具体案についての宮里財政局長の証言

○委員長(與儀達敏君) それでは財政金融、商工委員会を開催致します。本日は委員会に於て決定しました民政府指令五号による証人の証言を聴きたいと思います。財政局長には御出席下され有難うございます。
 煙草消費税法中一部改正についてその改正理由を鮮明にするためちょっとお聴きしたい事がありまして本日は委員会として正式にお呼びした訳です。昨日立法院会議の一読会でアメリカ煙草の取締りに関する財政当局の将来の方針並びに具体案をお聴きしたいという発言がありまして立法院としてはこれが確認を委員会にするよう議長から依託を受けたのであります。それで本日立法院の院議に基づいて不正煙草の取締り方針並びに具体案を財政当局にお聴きしたいと思います。
 第一のお尋ねとしてはアメリカ煙草をここに入れる場合に不正煙草と正式ルートで入る煙草を区別する方法を将来どういう風にするか。これをお聴きしたいと思います。現在はまぎらわしいのでありまして現在のまま将来に行くのか、或は何とかの方法でこれに目印を付ける方法を採用されるつもりですか。
○財政局長(宮里勝君) 財政当局としては正式ルートであるか不正ルートであるかの区分は正式に免許を受けたものが正式の手続を経て、つまりLCを組んで正式に税関を通過して入って来る煙草は正式ルートのものであるがそれ以外の煙草は原則として不正であると見ている訳です。
 例えば税関は通過しなくてもピーエックス品でも軍が貿易庁を通じて放出されるものは勿論正式です。このようになんぼ人が見ても正式なものだと認定がつくものは正式なものであると見ています。
○委員長(與儀達敏君) 正式に税関を通して来たものは検印を押さないでも証紙を貼らないでもはっきり発見出来る方法がありますか。
○財政局長(宮里勝君) 現在それを区分する方法としては我々の方で納税済の証紙を貼ったり検印を押したりしている訳ですが、あの煙草の梱包を一つ一つほどいて検印することは業者もここも非常に手数がかかり又商品価値を落とすおそれがあります。それでこういういろいろの悪い条件をなくするため今日本煙草については日本の専売公社と協議して向うで煙草に納税済の検印を押すことになっています。又アメリカの製品についてはキャメルは向うのヤラス(ママ)会社の出張員を通じて納税済の証紙を貼って来ることになっており出張員の話では後二、三週間で入って来るだろうということです。又ラッキーについては交渉する何がなくて困っていましたが最近笠井さんが正式ルートでやっているのでこれを通じて交渉して同じような方法を取れると考えています。
 それが来るまでは暫定処置として納税済の証印を押さねばなりませんがこれはいろいろ不便がありますので我々の考えとしては納税済の証書を交付しようと思っています。これは一つ一つ梱包を開けて貼るのではなく例えば二千個引取る場合その分だけ税金を払って向うに貼らすようにすることです。この方法を講じたいと思って準備しています。
○委員長(與儀達敏君) 一個一個には貼らず証紙をあらかじめ渡して業者に貼って貰うという方法ですね。
○財政局長(宮里勝君) はい。
 そうすることによってピーエックスなどから流れたものとの区別がつくと思う。多少取締り上の欠陥はあるが微々たるもので今の不便という面を充分カバーすると思う。
○委員長(與儀達敏君) 委員の方に何か御質問はありませんか。なかったら次の事項に移ります。財政局長がおっしゃったようにあらかじめ証紙を渡して業者が貼る。その結果については少々の不正行為もあるかもわからんが微々たるものだということです。
 次に不正煙草の取締りは相当な方策をもって臨まないと目的を達成することも出来ないし徴税面から見てもいかがと懸念される点もあります。従ってこの取締りには余程慎重にやらないといけないと思う。それでこういう不正煙草の取締りについて当局として将来どういう方針をもって臨むかこれを明確にしてほしい。
○財政局長(宮里勝君) 税法制定当時、局の定員は税関まで含めて六十名という制約を受けていましてこれから税関の人員を引くと煙草を取締り得る人員はわずか七名しかいなかった訳です。
 我々としては群島政府、警察本部の協力を得てやりたいと思って協議をした所どうも向うも一ぱい一ぱいで協力する余裕はない。もししいて協力せというなら人員を増やすなら協力するという要求があったので具体的には協力は実現していません。又最近主席の名で各群島知事や警察本部長に協力方を要請してあります。
 しかし我々としてはあくまでもここの方で出来るだけやろうということになって幸い税関の人員も増員されたのでここで徹底的に取締ろうということになっています。
 現在まで職員の余裕のつく限り取締りをやっていますが、店に一、二個陳列してあるものは訓戒の程度でとめていましたが今後は検挙主義でいこうということになっております。現在までの所人員にして十一名、それから煙草の数が五百七十一個を既に検挙してあります。
 そういうように徹底的に取締っていますがこの方針は将来も持続したいと思う。
○委員長(與儀達敏君) 一つは増員によって取締りを徹底的にする。二は各群島政府や警察の協力を求めてやる。三番目に徹底的な取締りのため検挙主義を採用するという方針ですね。
○財政局長(宮里勝君) そうです。増員というのは差当り二十名の定員でやってみていかない時に増員するのです。
○委員長(與儀達敏君) 六十名じゃないのですか。
○財政局長(宮里勝君) いや直接担当している主税歳入課が二十名です。それで出来ない時増員を要求するという考えです。
○委員長(與儀達敏君) 次の質問を致します。検挙主義を採用することは結構ですがこの検挙を裏付ける方の法的根拠が現在やや薄弱のようです。これを徹底させるためどういう立法を考えているか。
○財政局長(宮里勝君) これについて煙草税法には不当所持に対しいろいろな懲罰権が与えられていますが差押えについては法文が不明であり輸入業者だけに限定されているように見受けられるので我々としましては販売業者全部を包含して差押えし得るということに改正をお願いしたいと思っています。
 又酒類も近く出て来るので徴税面はだんだん増えてくると思いますがこのため日本の国税犯則取締法というような法規を制定したいと思う。軍にも相談したらとにかく案を作ってくれということで大体成案を得て係官の方で目を通して貰っていますが出来れば立法院に諮ってやっていきたいと思う。
○委員長(與儀達敏君) 今取締り上の方針として販売業者まで検挙し得るように改正して又徴収面に於て取締りを強化する意味で取締法を強力なものに作りたいというお話ですね。
○財政局長(宮里勝君) そうです。
○委員長(與儀達敏君) それでちょっと要望しますが出来れば国税反則取締法を内容とした軍布告による刑法まで少し強化することが望ましい。なお法規上の取締りの他に民政府と折衝されてPXから出ないように根元を押えるという方法などは考慮されていないか。
○財政局長(宮里勝君) これについては我々も同感です。何とかしてPXから出るものを正式なルートで出すか、或は全面的に出回らないようにするということは我々としても充分考えている訳でありましてこれについて軍の方にも折衝しましたがなかなか埒あかないのであります。なおこれについて数項目にわたって質問書も出してあります。しかしまだ調査中とのことで回答がないのであります。我々もこれには非常な関心をもって当っているのでありますが、これについて軍は出ているとも出ていないとも云っていませんが今後もこれについては努力致します。
○委員長(與儀達敏君) 取締りについて委員の方から何か御質問はありませんか。
○城間盛善君 取締り方面ですね。群島政府や警察にやって貰ったらどうですか。
○財政局長(宮里勝君) 我々としてもそれが効果的であるという考え方を持っていましたのでさる七月の三日ここで民政本部の係官と群島政府の正副部長以下係官を御案内していろいろ協議しましたが先程説明したように警察としても今手一ぱいだ。戦前も税については税務当局でやっていてここでは手を着けていなかったということから難色を示し、又ラーセン氏もこれに相槌を打って余裕がないということを云っておられました。軍の係官はすぐ群の財政部長を呼んで来てこれは中央政府の財源だが必ずしも中央政府だけで使うものではない。群島政府にも入るのだから協力してほしいというのでそんなら出来るだけ協力しようということになったが今までの所具体的な協力はしていません。なお副主席からも公文で各群島政府と警察部長宛協力要請を出してありますがこの点については重ねて折衝したいと思います。
○城間盛善君 警察の取締りという問題は税法施行上の協力という見地からお願いした訳ですね。しかしこれは一面からいえばPXの煙草を持っておれば不当所持になるから警察も大いにやるべき仕事ですよ。
○財政局長(宮里勝君) だからこれについて我々もやるにはやるが軍の方からも警察に協力するよう要請してくれないかということを要望してあります。しかし私が思うにルイスさんからも協力しろという指令が知事と本部長にあったにもかかわらずやらない所を見ると何か事情があるんじゃないかと思います。あれだけの指令が実行されないということは腑に落ちないということを群の財政部長に話してあります。
○城間盛善君 この問題は後の税にも影響してくると思う。酒類でも煙草でも軍用のものを民が使用することは刑事事件と思う。こういう面の取締りを主とするものをほったらかしておくことは変だ。
 結局税法施行上の協力というよりむしろ軍指令の実施という面で強調すべきだ。もっとも税法上の取締りという面は税務当局でやるべきだ。その原則は動かないと思う。この場合は軍指令の違反だという問題で警察が充分やるべきだと思う。
○財政局長(宮里勝君) 同感です。これについてはなお警察と協議したいと思う。
○城間盛善君 軍ドル所持は一ドルでも罰することがあるのです。ドル所持が不当なら軍用煙草を所持することも不当所持です。
○委員長(與儀達敏君) 今城間参議が要望されたように税制施行の面から取締るのみならず軍指令の励行という面からも行政主席を通じて軍に強く要望されるよう委員会としても希望しておきます。
○財政局長(宮里勝君) 今の煙草の脱税方面の取締りは極力要望するつもりです。しかし不当所持については我々の方で要望するのはどうかと思いますが。
○委員長(與儀達敏君) それは民政副長官にでも要望して良いと思うね。何か他にありませんか。
○仮議長(松田賀哲君) 今の所御証言になったことを完全にやって貰えば良いと思う。
○委員長(與儀達敏君) それでは証言はこのへんでやめておいて今云ったことで早急にお願いしたいことは、(一)笠井商事を通じてラッキーの輸出先との交渉方を早目にやられ不正煙草を紛らわしくないように早急実施してほしいこと、(二)取締り面に於ては当局の尽力を満足に思うが軍布告による不当所持の面からの取締りも効果的と思うからこれをその筋に極力要望されあわせて税法面の取締りが強化出来るようにしたいと思う。
○財政局長(宮里勝君) 良く分りました。万全を期するよう努力致します。
○委員長(與儀達敏君) 煙草税法を一部改正して検印も証紙も貼らずに政府の承認があった場合はよろしいということに改正するのでこれを実施した後に取締り面に於て弱体化した場合は業者は勿論住民の福祉にも影響する所が大だから当局としては今の証言内容を強力に実施されることを強く要望します。それでは今日の証言委員会をこれで終ります。どうも有難うございました。
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