戦後初期会議録

組織名
奄美民政議会
開催日
1950年03月28日 
(昭和25年)
会議名
第2回民政議会(5日目)
議事録
第二回民政議会議事録

第五日目 三月二十八日午前九時三十五分開会
○大野 昨日の会議では一方では一年度期間をおいてやろうと云う御意見であったんですが半年に延期したら如何かと云う意見と、二カ月期間をおいて四月一日を六月一日にしたら如何かと云う御意見があったのですが。
  (協議会に入る)
  (午前九時四十三分知事所用のため退場)
  (午前十時二十分知事再出場本会議に入る)
◎鬼塚 それでは本回入荷の日用雑貨に対しての御諮問に対して意見を申上げます。今回入って来ることになっております日用雑貨は少く共これは軍政府の我々大島郡民に対する贈物として郡民すべてがその日を待っているような次第であります。従って私はこの取扱いに対しましては大島のいろんな地理的条件から政庁も購入の機会均等の立場から取扱いの指定をお願い致しまして、また価格の方面から考えましてもっとも安価に郡民が購入出来るような方法として人民の監視の利く機関に取扱いの幾分を割いて頂くことが最も必要ぢゃないかと考える次第であります。
  (異議なしの声あり)
◎中江 それでは今の問題はこれで終りまして前から続いている酒の問題につきまして協議会に移ります。
 本会議に移します。
◎吉松 本年度より酒類の自家醸造を禁止すると云うのでそして業者に依ってさせると云う案でありますが、戦前の状況現在の酒造業者の設備その他を見て戦前十分に原料を配給して自由に造らしていた時でさえ二千九十二石、而してその時に於ける大島郡の酒類の消費高が約八千石に見積られております。即ち戦前原料を配給して造った当時に於てさえ尚四分の一の需要しか充たしていなかったと云う結果にあったのであります。それを現在の壊れた設備を以て果して政庁当局の案の如く六千石程度造れるか如何か、私は非常に大きなデスクプランであることが誤りであることを指摘致します。それから主食を消費することが業者の死活に対する一つの問題だと云いましたが果して一般が造るのと業者に依る主食の消費に於て幾らの開きがあるか、一般が造れば廃物を利用しても尚酒を造るのであり業者のみに造らすと一般が造ることに於て、主食の消費と云うことに於て大した差はないのではないかと本議員は考えるのであります。それから未成年者の飲酒があると云うのではなくまた飲酒後の諸種の犯罪も自家用酒があるから犯罪が増えるのではなく、むしろ終戦後の行詰った我々の苦しい現在の状況がこの前途に光明を見出せない未成年者の悩みとなって表れたのだろうと考えます。而うしてこの未成年者の飲酒を防ぐ為には只単に自家用醸造を禁止すれば良いのでなくして、当然警察当局との問題になって来るだろうと思うのであります。それから悪酒が横行するつまり各個人で作っていることは悪い酒が非常に増えると云うのでありますが我等の現在の常識を以てすれば自家用の酒必ずしも悪くない、戦争中に酒類の配給は非常に少い量を配給するのであるからして合成清酒、合成焼酎の配給となりこの悪酒を配給しておったのであります。尚終戦後に於ても食糧に向かないものを以て酒を造らすようになりひと頃変な石油臭い酒の販売となりいろいろの非良心的な酒の出現となり(業者に依る)酒屋の酒は良い酒だと云う感じは今の処民衆の頭にないようで酒屋の酒はまずい酒だと云うのが常識になっているように本議員は考えます。以上のようなことを考えないならば業者といえども大いばりで売ることが出来ます。むしろ行政的に悪酒の奨励は防がなければならないのであります。自分の造る酒が悪い時は自分で造ったからして自分でその責任を持てますが、業者に依って悪い酒を無理矢理に売付けられるのはずい分状況が違って来ると私は思います。それから一番大きな原因として歳入の問題があります。むしろこの為にやられたのではないかと思いますが、本議員は議事録にもあります通り第一議会に於てすでに我々が何時までも酒を自由勝手に造るのはいけないのであって、ゆくゆくはちゃんと準備を整えて営業者に酒を作らすようにしなければいけないと云うことを論じておりました。而うしてその時に政庁当局に於てはそれは当然のことであってすでに準備を進めておって準備中でありますと云う話があったかはいざ知らず、今後その方向に従って努力しましようと云う言葉さえもなかった。歳入を増やさなければならないと云うこと良く諒解出来ます。しかし乍らこれは論語の文句になりますが「千乗の国をみちびくには事を敬して信、用を節して、人を愛し、民を使うに時を以てなす」十分事を敬すること、事を慎重に考えることこれは考えられるべき事です。用を節して人民の負担を軽くして人を愛することも考えなければいかんこと、昔支那に於ては用税が非常に多かったので人民を使うに時を以てするとやっております、考うべき事だと思います。時を以てすること民を使うことこれが今日の政治に云はれることだと考えますが、歳入の方が急に減ったから即ち只単に酒だけを以て補って行こうと云うのは果して時を得たものであるか如何か、まことに暴虎馮河の勢いと云うべき猪突猛進的と云うべきものであるとしか私には思はれないのでありますが、原則としては各議員全部賛成しているのでありますから昨日の協議会に於て決った処の折衷案即ち準備が十分出来るまでに、各部落に於て原始的製造器具を使用して酒造することを認めると云うことに本議員は賛成したいと思います。
  (異議なし)
◎中江 それではそう云うようにお願い致します。ちょうど十二時ですが午前の会議はこれで終りたいと思います。昼から議員の方からいろいろな要望がありますが一時から致したいと思います。税務関係はありません。
  (午後零時閉会)
  (午後二時再開)
◎里原 今後の税制改革問題について自分の知っている範囲内だけ申上げます。この間こっちの軍政府を通じて沖縄の軍政府から大島で施行されている現行法を全部送れと云う指令がありまして、これを翻訳して送れと云うなんだったものですから現行法を翻訳すれば大体二、三ヵ月かかるものですから、それでも良いかと云うようなことをなにしたら一応待てと云う風に云って来ております。それで琉球一円の税法が近い将来に於て出来ると云うような観測をしておりますが、若しそれをやらん場合には現在副知事にお願いしてシャウプ勧告に依る内地の今度の議会を通過した税法を全部副知事さんにお願いして持って来るようにお願いしてあります。それで琉球一円の税法が一貫した態勢でない場合は本諸島は本諸島としての制度を全般的に改正する方針でおります。それで現在の法そのものは大体小さい法はその儘でも大体宜しゅう御座いますが、所得税或いは酒税砂糖消費税そう云った面は大体今までのシャウプ勧告案を見ますと相当違っております。また所得税なんかに於きましても相当過去の税法となっております関係上是非改正せんければならないと云う立場になっておりますが、一応副知事が帰って来て琉球一円の税法が一貫せん場合はこっちとして早速改正する方針でおります。その場合は以前の税法は只その当時残っておりました審査委員会にだけかけ法制委員会にかけずに行く積りですが、今後改正するものは法制議会(法制委員会カ)或いは民政議会にかけ或いは一般大衆にうったえてそうして正当な法を作成する方針でおります。大体の見通しはこれ位の事しか分っておりません。
◎大野 如何ですか。これは正会にした方が良いでしょうか。協議会が宜しゅう御座いますか。正会に移します。只今税務署長さんの云はれましたものは現在のことでありますが、若しこれに対して御質問でもお有りの方は……。
◎吉松 一月に税制関係で各部長が沖縄に出張する時に税制改革は琉球一円として作るんだと云うことで、こちらからそれに対する改革案を持って行くと云うことを聞いた積りでありますがその辺の内容について御説明願います。
○重村 それは何かの聞き違いぢゃないかと思います。あの時別に税制改革の会議があった訳ぢゃない。この次の会議で出来るだけ税法のことも改めてこっちで審議してもらう積りだと云うことを云ったのでありますが、向うに行ってその儘審議すると云うことでこのこっちで作った案もありますが、それは今税務署長の方から説明がありました通り、その後いろいろな情勢が変化して来ましたので実は今度の会にかけなかったと云うのは今もお話にあります通り沖縄軍政府の方で全琉を統一した一つの政府を作るような案が出来ているのに、今直ちに大島だけやっても二、三ヵ月数ヵ月後に琉球全体の制度になると云うことになりますと却って住民側としては迷惑ぢゃないかと思いましたので、一応最初の計画を変更暫くその儘にして琉球全体が出来るようであったら今度こっちでやっている日本のシャウプ勧告案を基礎にしました処の日本の税法を一応見て作って見て、尚妥当な案が出来るのではないかと云うのでこの間に税の関係の状況が違って来ましたから今度は提出しなかったのであります。御参考までに私達が考えておりました(財政部として)従来の計画をどう云う方面に改革したいか参考までに申上げたいと思います。地租法を一部整理したい通行税を多少改正する先程から問題になっております酒税法一部改正それから砂糖消費税これも今話があったようでありましたが、それから織物消費税一部改正したい、それから遊興飲食税一部を改めたいと思っております。それから喫煙税の多少税率をかえた方が良くはないかと云う風に考えたのであります。その他国税徴収法一部を改正したい。大体こう云うものを全般的でなく一部分ずつ改正しようと思っておりましたが、所得税の税率も累進税で高いので一部改正しようと考えておりました。先程申上げた通り暫く情勢を見たいと思います。一応案が出来ておりますから時期が来たら上程したいと思っております。
◎吉松 所得税は特に税務署長も痛感している通り現下の情勢にそぐはないのであります。しかし第一議会で私が希望しましたように早く改正して貰いたいと思っております。尚軍政府の許可その他の関係でこれが早急に出来ないことがありましたら徴収内規とでも云うようなことを申上げて、科学的基準を税務官に与えてその基準についてはあれから取るこれから取ると云った内容を持つ徴収内規を定めてやってもらいたい。昨年の如き何町にはいくら何村にはいくらと云う割合でなく科学的な基準を与えてもらいたいと云うことであります。例えば現行法に依りまして千二百円が免税点であってそれ以上所得ある者から全部とらなければいけないのでありますが、すでに皆さん御存知の通り千二百円では現在何もならぬのです。官公吏等から月給がちゃんと分っている人からそれをとったから大変なことになった。後は半額だけ引いて後の年額から所得を半額と見做して後の半額だけ千二百円引いてやるヘマなこと、実情に添はぬことで七割引いて後三割から千二百円引いてやると云うような一般民衆の納得の行かないやり方をやっているのでありますが、それも先程伺いますと改革案を持っていたのでありますけれども軍政府が認めて呉れない、その苦しい気持良く分ります。併し乍ら願はくはより一層科学的基準を与えてやって税務官のうちにはまだ社会に慣れていない処の若い人達もいるのでありますからして、十分な科学的基準を税務署幹部或いは財政部或いは政庁幹部に於て十分に採入れ徴収内規とでも云うようなものをこさえて科学的にやってもらいたいと思います。それから砂糖消費税についてでありますがこれは大島として十分考えなければならない事だと思います。琉球が全部一円になりますと砂糖の主なる生産地は大島と宮古郡でありまして、こう云った生産地に於て砂糖税と云う消費税と云うものを現状通り生産地に於て賦課することが大島のために望ましいことであるか如何か、果して慎重に考えなければならない問題だと思います。日本に於ては砂糖は輸入乃至移入品であって砂糖の生産地ぢゃないのであります。従って日本に於て砂糖消費税と云うものが行はれると云うことは或いは当然でありましょう。生産地である処の我々は十分に考えなければ琉球が一つになった時果して困るのは果して何処々々であるか、原則的に砂糖から何故消費税を取らなければいかんのか砂糖から税金を取るこんな税金を取る理由からお伺いしたい。
○里原 先ず最初の所得税の基礎問題これは大体税法から行きますと大島郡全体で所得税が二億五千万円程度とれると云う結果になります。それを予算の六百何十万円まで持って来るには昨日も申上げました通りパーセンテイジで落して行く、そうして六百万円まで減らして行く。この六百万円をとりますにも一つの企画、所得の基準がある訳です。それから簿記上の失敗はまだ未熟な署員にたいしてその適用を幾分か誤っているような様子であります。それで帰って来てから直ぐそれを発見しましたんですけれども、次から次と仕事に追はれて直ぐ訂正出来なかったことは署としても遺憾だと思っております。しかし今度直税課長を直接やりまして実際の状態或いは適用の誤りそう云った面を説明さしてなにしましたら、現在の成績は良好であると云うことを云っております。次に砂糖消費税の問題でありますが要するに現在の大島の予算と云う面からしてどうしても砂糖消費税は、これを没却することは現在の状態としておそらく不可能だろうと思います。しかし予算と云うものから考えました場合只消費する分だけ課税して、或いは諸島内で消費せんものも課税しないと云うことも出来るだろうと思います。しかし現在の財政状態にしては止むを得んのではないかとこう思っております。しかし税法の根本精神から考えますと結局消費者がそれだけはぜいたく品と云う面も加味されているのではないかと思います。そう云った面からいって消費税である以上消費者に課するのが本当であると云うことになっておりますが、現在の大島に於ては生産者が出すと云う結果はどう云う方面から来ているかと申しますと、一応生産者から消費者にわたった砂糖はわからない、課税の方法が全然出来ない、そう云った面からして生産者いはゆる消費者に負担せしめていると云う結論に達している訳であります。
◎吉松 消費税を生産者に於てとると云うことはこれは技術上止むを得ない事だと思います。只私達はもっと根本にさかのぼって砂糖消費税と云うものがあることが望ましいか望ましくないか、日本内地の如き砂糖を輸入または移入にまつ処に於ては砂糖はぜいたく品として取扱って、税金を加えてなるべく少しでも輸入を少くしようと云う精神が表はれると云うことは当然でありましょう。しかし乍ら砂糖は前々から農業会の処でも私が申し述べました通り大島郡は或いは沖縄を合してそうでありますが、砂糖の出来る処の最も地の利に恵まれていない処であります。砂糖と云うものは現在の値段で税金を払はんでもすでに一般に世界経済の一環として見ますと、すでに採算が合はず生産費を割っておりまして売れないと云う状態にあるのであります。そう云うことで戦争前に於ては私達は砂糖税を出す一方それよりはるかに莫大な金を砂糖助成金としてもらっておったのであります。従って旧日本に於ける砂糖税に関する限り我々は得をしておったのであり声を合せて大きな声で砂糖税問題を論じて行きました。砂糖業者に重くする必要はなかったのでありますが現在の我々の境地では砂糖消費税と云うものがないと云うことが望ましい。出来得べくんば日本にもあって貰いたくない、沖縄でも砂糖消費税はあって貰いたくない。これは宮古島の人間も当然考えるでしょうしまた砂糖生産地である処の大島の私達も考えるのであります。若し琉球一円になって砂糖消費者に賦課すべしとなり高くなれば島内に於ける琉球内に於ける砂糖生産消費が非常に窮屈になりひいて台湾の闇糖の輸入となり、いろいろ具合の悪いこともありますしなるべくなら琉球一円にして砂糖消費税はない方が宜しいと私は考えるのであります。但し沖縄と一緒になって若し議会と云うようなものが沖縄に出来て砂糖消費税を是非取らなければいかんと云って多数決で押されて来れば仕方ない。しかし少く共税制は若し琉球一円になった場合砂糖消費税は止めろこう陳情することが我々の義務ぢゃなかろうかと考えます。そういって陳情する為には琉球が一円になる前から大島郡に於ては砂糖消費税はなかったと云う実績を見せた方が陳情しやすいんぢゃないかと、私共に於ては感じている状態でこれは見通しでありますから何時果して統合されるか知れませんが、司法部も統一されると決り食農庁も統制(一カ)されましたし郵便も統一されると云うことを聞きますれば時期の問題であっていつかは統一は実現すると考えるのであります。その時に於て我々が砂糖消費税と云う税を持っておったのが大島のためになるかそう云うことを十分考えて、特に只現在の歳入ばかり考える事なく我々将来の産業発展と云うことも考えました時に相当大きな考を考慮を慎重につくさねばならない問題だと思います。
○里原 それは自分として余り云えないが財政部長に……。
○重村 只今の説明御もっともであります。たしかに日本のシャウプ勧告案でも砂糖消費税は廃止することになっているようであります。その面から必ずしも良い税ではないと思っております。特に砂糖が将来貿易品として本郡の最も大きな産業であります以上は、これに課税すると云うことはそれだけ減収になると云うような面からして決して良い結果と思っておりません。そう云った意味の御説明は賛成でありますが反面にまた現在の大島の経済状況、財政と云う面から考えますとこの砂糖が財源の基礎でこれに変るべき財源が今の処見つからないのであります。こう云う非常な私達としましてもディレンマに陥るのでありますが一応これは将来砂糖の性格が貿易品として出ると云う場合に、また何らかの方法を講じると云うことにしまして只今の処は一応財源としてやって行くより致し方ないのではないかと思います。
◎吉松 最後に申し述べますが歳入が足らんと云うことはなる程止むを得ない処であります。しかし乍ら悪税を廃止して住民に本当の協力を求めて見て産業も復興させながら税金を取って行くことは生産者が最も望んでいる処でありまして、そのために若し砂糖税を賦課しなかったならば困るのであるからもっと税を取って行かなければならないと云うのであったら、精密ないろいろな資料その他を調査しまして私達議会にかけるようにすれば私達も歳入を見出すためにその他の方面に於て協力したいと思います。協力することに決してやぶさかぢゃありません。私達は政庁当局を苦しめようと云う気持は持っていないのであって私達は産業を阻止しない方面から望むべくんば産業をどんどん復活さして、更に税収入を増やそうと云う考を持っているのでありまして、その為には経済界に於けるあらゆる動きを政庁でキャッチして、それをなるべく早く年度末が押し迫ってさせる事なく我々議会にその内容を通知して他の方面からその歳入を増やすために一緒になって努力したいと思います。そして沖縄と一つになる前提をする時に若し大島に於て砂糖税を取っておった相手もこれを取って宜しいと云うことで頭を引込めると思います。すべて急を要する問題であります。そして先ず沖縄と一つになる前に砂糖税と云うものをこっちから出しておきたいと私は要望しているものであります。終りであります。
◎祷 さっき財政部長さんから琉球一円の税制がしかれるとおしゃいましたね。琉球一円の税制が出来た時に大島郡がそれに入ることは大島郡のために幸福でしょうか。税制と云うものはその時の経済力が将来どの方面の経済を持つべきかと云う目標ですね、その二つから考えられるものと思います。沖縄と茲とは大分違うように思います。沖縄一円の税制をしいてそれを大島に持って来ることは私共大島郡のためにならんと思うんですがそこの処をどう云う風にお考えですか。
○重村 それは結局税に依って違いはしないでしょうかね。例えば一つの例ですが沖縄のような所得税の面とか所得税の方から行きますと非常に所得の高い処はそれだけ所得税が高いと云うことになります。それだけ所得は低い訳ですから控除面で非常に基礎控除が引上げられると云うことになればその面から有利ぢゃないかと思います。
○里原 今の税制の内容からしますと向うの所得税はこっちより低いですからそれが一本になると如何しても平均になってから酒税にしても、向うの奴は年に何石と云うことに沖縄もそうだし宮古もそうですが宮古、八重山あたりは余分があればその余分に課税して行くようですが。
◎祷 大島もそうなるんぢゃありませんか。具体的に云ってどの辺がどうなっているかその辺の処は今茲に私は材料を持っておりませんけれども、例えば大島郡はこの最初こう云うような程度にしていきたいと考える場合も多々あろうと思います。沖縄は大してそれを必要と認めないと云うようなこともあり得ると思います。そう云うような場合にそれを補おうとする税制を実施して行くものであるから沖縄とこっちの経済が同一条件であれば同一税制で良いけれども、条件がちがうんだから大島は大島として独自の税制を持つのが良いんぢゃないかと私は思うんですが、そこの処は御研究なすって下さい。
◎吉松 只今の問題は行政措置と関連して来ると思います。若し行政的に一つになった時鹿児島県時代私達が特別予算を貰っておった時は実際独立予算の美名の下に苛斂誅求を受けておったのでありますが、それで税金が非常に安くなったのでありますが、それが沖縄と統一されることに依って更に状況が悪くなるかと云うことを考えると、矢張り鹿児島時代のようにむしろ一つになった方が私達は良くなるのではないかと云う気持を持ちます。向うはいろいろな戦災復旧費とか云うのが非常に多いので金の動きは向うが非常に大きな訳です。私達がわずかに大島だけ独立して予算を取って行こうと云うよりは一つの体系に入った方がむしろ楽ぢゃないかと一般的に考えられるのであります。
○里原 御参考までに申上げますと現在の大島の比率から行きますと大体向うの二、五倍位になっておりますが税収の面からも沖縄はこっちの約九倍になっております。従ってその比率から見ても一本になった場合のことはこれに依って分ると思います。
◎吉松 巷間いろいろな噂をききますのに沖縄と一つになると云うことは時期の問題であってそのうち実現する問題ぢゃないかと考えます。そうすると私達が現在先ずなさなければならないことは向うから貰えるものを一日でも早く貰うこと、復興予算等なるべく早く完全に貰うことが最も大事な事と考えます。また復興予算を余計貰う事は一般財政にも影響すること大なるものがあると思います。従って私達は今年度中になるべく努力して多くの復興予算を貰っておかなければいかんと考えます。貰うためにはやはり向うの軍政府から可愛がられることが大事であってそれに対する交渉のうまいまずいは大いに貰う額を左右するのではないかと本議員は考えます。今まで私達は新聞紙等を見て見ますと茲からの交渉がどうも余り上手ではないような気が致します。シーツ長官に知事が会った時復興予算の問題が出た時まだ未払金が(軍政府の)あるぢゃないか、そう云うことを云はれたと聞きましたがこう云った事も復興予算を貰うために妨害になりはしないかと私は杞憂するのであります。それから食糧価格の問題がありますがシーツ長官もそう云ったと聞きましたが、これはあがったからそれ以上の金を私達が復興予算としてこっちに持って来ることが出来るから何ら憂うる処はないのであって、要はこの価格が上ってもどれだけ余計の復興予算を大島に持って来てそれを復興設備に使って溢れている過剰労力を吸収して働く者に金をあたえるかと云うことは非常に重大な事だと思います。昨年四月食糧値上げが発表された時に生きるか死ぬかの問題として大いに名瀬では騒いだようでありますが地方に於てはそれ程大した騒ぎはありませんでした。事実地方に於ては三百カロリーの配給しか貰っていないのであればこれが生き死に関係する問題でないのであります。大体他から物が入って来ればそれに相当する輸出をしなければその土地の貨幣がなくなって来ることは当然であります。従って先ず輸出しようと云うことを考えなければならないのでありますが、戦後疲弊した本郡に於てはそれだけの輸出品と云うことは到底望めない状態であります。従って私達は如何しても軍政官にお願いして復興予算等と云う金を貰って来なければ自立して行けないと云う事はもう分り切った事実であります。私達が価格値上げに反対する理屈は通りません。理屈になっておりません。只これでは立ちゆきませんからどうぞもう少しこっちの産業を復興させるために復興資金を下さい、呉れと云って頭を下げて行くことは万更通らん話でもなかろうと思います。沖縄ではそう云う具合にうまい具合に余計なものを貰っているようで、外交交渉には常に「ギヴ・アンド・テイク」ぢゃないといけないと思います。これは外交の大事なことであります。「ギヴ・アンド・テイク」でなければならない、こっちからは「ギヴ」何もない、ここは誠心、誠意頭を下げる以外に方法はないと私は思います。あんた方が上げると云うのはなる程仕方ありません。只私達は一本立出来ないのですから余計な金を下さいと云う頭を下げる一事に尽きると私は考えます。しかるに昨年四月以来十二月に新軍政官から重大発表があって我々民衆はびっくりしたのでありますがそれから役場に行ってその事実を調査したのでありますが、支払伝票をすみの方に小さく付箋をつけ旧価格幾らと云うように記載してあったようであります。こう云った行動は軍政府に対する一つの欺瞞であり民衆に対して不信欺瞞であると私は考えます。高いものを安くで買うと云うことはなるべく望ましい、しかし乍ら先程本議員が指摘したように出て行く金、或いはその金以上こっちに復興資金として貰って来ることが出来ればこれでもって郡の産業を復活させ或いは復活させながらやはり軍の金は復興資金としてまはって行きますが、只受配者にのみこの金をあたえると云うことが大島郡の政治として正しい事であるか、その金を全体の郡の復興のために使うことが正しい事であるか慎重に考えられて然るべき事だと思います。しかもその間に於て取った手段が軍政府をだますような仕打であったならば我々に対する将来の軍政府の気持もずい分違って来ると思うのであります。信用を失うことは易く信用を回復することは難いと考えます。今まで去年中なされた政庁ならびに市町村長会でありますがそこで決定されたことは遺憾乍ら軍政府の信用を失墜させる事柄だと云はなければなりますまい。それと同時にもう一つ沖縄と私達は兄弟であって敵味方ぢゃない。すべてものを要求するには沖縄には多くやるのに我々には何故沖縄並みに呉れんかと云う考え方でなく、「アンチ(反)沖縄的」でなく沖縄を良くしよう私達も良くなろう、そう云うような精神で交渉して貰いたいと思うのであります。その方が向うの軍政官としても気持が良いでしょうし将来多数を擁する沖縄と一緒になって仕事をする時には何くれとなく我々の方の便利になることも考えて呉れると思います。「アンチ(反)沖縄的」感情を持っていろんなことをすると却ってまずいんぢゃないかと私は考えるのであります。こう云った方面について知事の所信を伺います。
◎祷 軍政府を欺瞞すると云う言葉を取消して下さい。
◎吉松 只今の軍政府を欺瞞すると云う言葉は取消します。
○中江 要するに今のお話の内容はどうですか、要点を簡単にして下さい。
◎吉松 要点は沖縄をながめて軍政府とまさつなくして沖縄と一緒になるまでに少しでも余計な金を貰って貰いたいということです。
○中江 沖縄と一つになると云うことについては私何も予想出来ません。しかし私としては最善の努力を払っている積りでありますが、この復興予算を一銭でも一厘でも余計取るように今後も大いに努力を払う積りでありますから一つ御諒解を願います。若しこうしたら良いんぢゃないかと云う具体的なことがありましたら一つ助けて下さい。
◎吉松 復興予算は貰って来てから検討すべきでありますが、但しこっちから出した案を後で宜しゅう御座いますから印刷して議員に配って頂ければ結構だと思います。それに一般の予算ももう少し細部のやつを送って頂きたい。これは後で送って貰いたいと云う希望でありますが、それから食糧の公団に対する問題でありますがこれを影響する処大いなる事で各地方に於ても従前通りの方法が望ましいと云う声が圧倒的であります。この議会でも従前通りで良いと云う気持が圧倒的であります。従ってもうすでに既定方針は決ったのでありますからこれを解散しようと云う見解は私達にないかも知れませんが、政庁ならびに議会の一同の気持として従前通りの方法にして貰えないかと云うことを考えておりますが。
○知事 政庁の考え方は恐らく町村で従来通りやることは無理だと思います。公団設立発起人の中には恐らく市町村吏員も含まれていると思います。単に出来ないと云うことを予見しているようで更に解釈すれば設立した世話役的なことをやってかまはないが、一応金を貰うと役人を止めるか或いは金を貰はなければ手を引くと云う話が進んでいるようであります。私自身としても町村長を中心に村の販売組織をその儘に配給組織はその儘にもっともその時その時の条件に適したようにしてもらう、こうするより他に方法はないんぢゃないかと云う気がしますがね。
◎吉松 経済部関係で現在企業免許についてですが毎年更新しているようでありますがあれは如何なる必要から出来たものであるか、私達が考えますと企業免許と云うものは少く共その人が生きております限りの企業であって相当永続性を持ったものにそう云った設備を要すると思うのでありますが、毎年更新するのは企業の不安定を来します。第一煩瑣であります。企業免許局と云う一局を設けているようでありますがこれはむしろ今日の時代に逆行するようなものと感じられるのであります。企業許可(免許カ)が毎年更新されなければならない理由を承りたいと思います。それからその次に新聞紙上に於てこの前自由貿易港指定と云うことがありました。これは公安課長が沖縄から帰っての談であります。それと同時に奄美海運会社設立と云うことも載っておりましたが自由貿易と云うものはどう云った解釈をなさっているものか、その解釈如何に依るのでありますが然らば如何なる解釈の上に自由貿易港と云うものを指定しなければならないのであるか、その指定した理由自由貿易に対する解釈それから同時に発表されております処の奄美海運会社の内容、この離島ばかり多い大島郡にとって最も重要な会社であり重要な使命を持って生れたのでありますからその内容を経済部で分っておりますならば御説明して貰いたいと思います。同時に海運と同時に陸運はどう云った状態になって行くのであるかそう云うことも一応説明して頂きたいと思います。それから百合の直輸出の件ですがこれは現在の経済下では困難だと云うことであります。ちょうど幸い副知事も東京に行ったことでありますし例年に倍してすべての努力を傾けて是非百合を直輸出するように運んで頂きたいと思います。努力されたらまだ二ヵ月も余裕がありますしそれは出来ないということはなかろうと思います。ドル資金を直接稼ぐ意味に於て非常に重大なことでありますから是非副知事とも連絡を取ってこれを完成して貰いたいと思います。同時に今まで横浜の商人からアメリカの商館に渡し横浜渡しの値段はいくらであったかそれも副知事と連絡を取って調査して頂きたいと思います。税制関係以上であります。
○屋田 免許は何に依ってやっているか御質問でありますが、これは一昨年の十一月に出ました布告第三十三号に依って免許を必要とする免許をとらなければ免業(ママ)に従事することは出来ないと云う布告があるのです。同時にその布告の中でこれは一年毎に更新すべしと云う条頂があるのでありましてそれに基いてやるのです。それから二番目に自由貿易港の問題でありますがこれは自由貿易港と云う言葉そのものに語弊があります結果我々の方では出入港を指しているのであります。新しく海運規則が制定されまして三月一日からこれを実施予定と云っておりますがその指令がこちらに着くのがおそくなりまして、そして今朝も翻訳の方に行って見たのでありますが沖縄から来た翻訳は非常に誤謬が多くその儘公布することが出来ないため翻訳しております。その指令の中に出入港と云うのが謳はれております。その指令の中には名瀬と古仁屋、亀徳、鹿浦それから和泊、それから早町この六ヵ港が指定されているのであります。こちらからはこれぢゃ少いからもっと追加して呉れと云う申請書を軍政府を通じて出したのでありますが、それがどうした訳かこの指令の中に入っておりませんでしたので更に係のシーハンに話しまして後、湾、それから大和浜、中之島、平土野、湯湾、知名、茶花これだけを追加してもらうように書類を沖縄の方へ出しますと同時に、この間海運課長が沖縄に参りましたのでこれを是非入れてもらうように軍と折衝してくれ、こう云うようにたのんでありますから恐らくこれはいれられるもんだと思います。それからさっき申しました自由貿易の解釈の話でありますが自由貿易と云うより出入港と云う何でありますが、この海運規則の目的はこう云った出入港をおいてそこに自由に琉球内の民船を出入さして貿易に活用させるために指定すると云う点と、もう一つは海運の保護と云うことを狙っているようであります。それから本当の自由貿易でなく或る船が入って来た場合にその港の警察にとどける、出る場合には出港許可を取って行く、そうすると向うを何時に発ったが着かんと云うような場合に電報で問い合せする、その船の保護も出来ると云うような趣旨らしいのです。海運会社の件ですが沖縄に琉球海運が出来ましたのはこれが全琉球的な唯一の海運会社と云う風に考えられておったのでありますが、先般我々が沖縄に行きまして金十丸問題その他の問題につきまして向うの交通部長に話をしましたらはからずも向うの方からお前達大島はそう云うことであったらこっちから金船(銭カ)の補助はする、こう云う話を向うから持ちかけられましたのでいろいろ会社と相談した結果大島海運会社を作った方が良かろうと云うことになりまして、茲の軍政府に書類を出すと共に更に海運課長を沖縄にやりまして今折衝中であります。その案の内容は金十丸を中心にあと百五十トン級の船を二隻それから二百トン級の船を一隻日本から購入して(鉄船です)、そうして金十丸は名瀬と沖縄の方に航行させる。二百トン級の船はこっちから徳之島経由永良部、与論に航行する。もう一つは百五十トン級の船一つこれは名瀬と徳之島ぢゃない古仁屋だったと思います。もう一つは喜界、十島その他にこれをこう云った計画で航行させる。日本から船三隻を買いますとこの間見積りましたら二千五百万の金がいるからこれを軍の方から貸してもらってそして長期年賦で返還しよう、こう云う案をたてて沖縄の方に行っております。海運課長からの連絡では向うの方も非常に好意を持って呉れているようですがこの部長が東京に行っておりますのでそれが帰って来てからはっきりしたことは取り決めたい、こう云う風に返事が来ております。それから陸運の方はついでにどうなるかと云うようなお話でしたが陸運の方は現在御承知のように陸運課がありますがその他に民間の車が相当ありますが、極く最近軍の車で陸運課で使用しているものは全部七月一日までに軍政府の方に返せ、その代り日本のトラックを入れるようにとの電報が参っております。考えて見ますと今この陸運課を全然廃止しましてそれを解消すると云うことは少し時期が早いのではないか、一般民間の車がもう少し整備され運賃もやすくなって仕舞えばこれはもう陸運課はなくなしても良いぢゃないかと思います。今の処非常に車が民間の車が悪く賃金も高いようであります。大分近頃安くなりましたけれどもそれでも陸運課の車より高いのであります。今直ぐ民間会社に振替えるのはまだ時期が早いのではないかと思います。それから百合の直輸出の件でありますがこれは沖縄に行きました時に沖縄の商工部長、軍政本部の商工部長に百合、蘇鉄葉を直輸出したい、日本の中間商人に利益を取らせるよりその方がはるかに良い訳で、必要があればその包装に経験のある専門家を東京からよびよせるようにして宜しいこう云うことを云っているのであります。帰って参りましてその話をききましたら直輸出は自分達は自信がない、東京から専門家をよびよせたら如何か、それではもう今年は具合がわるいのでないか今年は従来通り日本向けの包装輸出の方が良いぢゃないか、こう云う風に云っているんですがね(業者自身が)しかし若し今年出来なければ、笠井さんに連絡してなるべくそう云うようにしたい、来年から早目に準備して出来るだけそう云うようにしたい、こう云うように思っております。尚横浜渡しの百合の値段その他いろいろの点について副知事と連絡して調査してもらっています。
◎吉松 百合の問題は闇で向うから正式でなく闇商人に話して業者を向けるような計画を持っているような手紙が来ておりますから、業者全体でなく或る特定のものだけ日本にやろうと云う気持を持っているのではないかと私は考えます。そう云ったことでなしにこっちから直輸出するように御努力を願いたいと思います。
○屋田 それは業者達が沖縄にアダムスと云うアメリカの商売人が来ているのでありますが、それが非常に蘇鉄葉、百合に関心を持ちまして大体その人の価格がこっちの希望価格と一致しているのでありましてその話をして業者が高いと認めた訳でありますが、業者もそう云った裏のルートぢゃなしアダムスさんに売ると云う前提の下にそう云う話をしているんぢゃないかと思うんです。
◎二番 簡単に希望を申上げますが紬は一日も早く再開せんといかんと思うんです大島は、それから先程から名瀬市の過剰労力を沖縄に供給すると云う話をしてもいるんですが、沖縄がこっちの労力を歓迎するかしないか私は反対なことを聞いたことがあります。余り期待は持てないんではなかろうか、取りあえず紬を盛んにしてしまえば結局問題も或る程度緩和されます。紬に関して代表も行っている訳で詳しい事は帰らんと分らん訳ですけれども、どの程度の仕事をしているかまた将来紬を盛んにするためにどの程度の用意を持ち合せておるかと云うことになります。これと関連しまして社会機構、大島でなさねばならんことが出来て来はしないかと思います。社会機構政策の一面から云うと一番世界で発達しているのはアメリカでありますがアメリカに幸い視察団が出るようになっておりますが、アメリカの社会政策的な施設あらゆる施設、これを誰かに依頼して調査される意図はありますまいか、もう一つ大島の財政が内地時代でも今でも変りがないのは大島に金がないからです。その事業資金を何とかして軍政府からそうでなければ日本内地から大島郡に導入する方法はないか、軍政府に相談すれば或る程度の事業資金は何とか出来るのではないかと云うことを考えております。この点について一つ研究されるように願いたいと思います。
◎四番 一寸無理かと思いますが民主的平和的国家の建設と云うことは軍政府の方針になっている訳です。処がこのこう云った国家建設のために重大な役割を持つものは教育と警察だとこう云う風に考えているのでありまして、処が現状は兔角自給予算の制約を受けましてその活動がいくらか制約されているように考えますが、この警察、教育は軍政府に要望して若し出来るものならば知事にお願いしたいと思います。
◎二番 四番議員と同意見ですがもう一つさっき十番議員がおっしゃった砂糖税あれはもと農業助成金として決っております。軍政府の第一の目的は経済の状態を復興すると云うのですからこれは経済復興することも必要でしょう。財政から云いますと教育費は全部国家持です。それから農業助成の見返りとして来ております。それから今四番さんの申上げたやれ警察費の補助とか負担と云うことを相談しておったのではないかと私は思っているんですがね。
○中江 今の質問に対して先ず第一警察、教育関係の費用について軍政府の補助をもらうと云うことを私達は度々申請しているのであります。その具体的な例を申しますと沖縄で相当警察官の率は分りませんがパーセンテイヂは向うで減らしているのです。我々は沖縄みたいに我々の警察官も認めて貰いたいと話したんですが、向うの回答は沖縄のいはゆる警察官と云うものの中には倉庫とかそう云う番人も入っているのです。それが相当の数字を示しております。こう云うものに対してしからば我々としては先般警察官の補助が貰えないならば軍政府で十人乃至十二人使っている、これだけでも見て貰えないかと云うことを相談した。それも駄目だと蹴られているのです。教育関係について向うの沖縄民政府の内容を調べて見ますといはゆる成人教育と云う名義で相当やっております。我々はそれと同じようなことをして貰いたいと云うことを相談しているのでありますが、今年の復興予算の中に成人教育費は相当金額を計上してお願いしてあります。その内容は補助金が来たら各町村に巡回講習をやるとかこう云うものが中心になっております。それから他の戦災復旧ですがその他についても例えば大島の施設について申しますと裁判所、営林署、税務署或いは和光園その他国費で以て補助されているのも沢山あるのでありまして全額負担或いはその他のことがあったが現在これがない。そう云うのも出して折衝しておりますが中々思うように進捗致しません。それからまた一部和光園はおんなし向うから出ております。全部ぢゃありませんが相当そう云うことが多少出ております。機会ある毎にそう云うことをお願いして向うから援助をあおぐようにしております。それから他に笠井副知事からの話では現在まだ具体的に報告するまでに至っていないのです。電報が二度か三度か来ておりますが要するに最初参りました砂糖でありますが、その次紬のことにつきまして高級品を送れと云う電報が来たのでありますが、その後これはまだ生産等の問題と関係があるので次の電報が来るまで待って呉れと取消の電報が来ております。いろいろ紬のことについては隘路が多くて目下交渉中であると云う意味の電報が三月一日に来ております。それからその後に取引方法その他について極力交渉中とこう云う意味の二つの電報が来ているだけであります。内容ははっきり分らないのです。我々の想像では高級品を送れと云うことはいろいろ内地に行った人の意見を聞いて見ますと、鹿児島の紬業者が倒れかかっている、一般的な製品ぢゃ値段が合はなくて倒れかかっているが、高級品であれば一万円一万三千円で取引出来るような状況らしいのですが、こう云うことを考えても中以下の品物は金のないものはそう高級品は買はんと云う実情だろうと思います。事業資金のことについては具体的にまだ交渉したことはありません。私の考え方を申しますと如何にアメリカに金があるからと云っても連中がもうかるものがなければ出資はしないと思うんです。しからば大島に於てもそう云う外人の目につくような事業があり得るか如何かと云うと残念ながら何らないのであります。これと関係があるかどうか知りませんが此の間沖縄に参りますと大和浜のマンガンのことを話したらとても関心を持っておりました。その見本を送れと云うので向うに送ったのであります。こう云うものが例えば大東島の燐鉱と同じように向うで手をつけて呉れたら相当開発出来るのではないかと思っております。これがうまく行ったら良いんだがと云うようなことを期待している訳です。
◎祷 大きな事業は今の処私はきいておりませんがそう云う大きな事業でなくても大島郡の財政をたかめる輸出品になると云うようなものもあるだろうと思います。そのために復興予算にでも計上するとか何とかの方法は出来んもんでしょうかね。
○中江 具体的にどうのこうのと申上げ兼ねますが考えて見ましょう。はっきりした事は分りませんが与論の燐鉱石が議題に上って本年度予算にそれを施行すると云うことになっております。その他に私序でに申上げますが紫万年青も将来有望ぢゃないかと思います。きく処に依ると徳之島の花徳の村上と云う彼が成功して大きな製薬会社をやっているようであります。鹿児島あたりに工場を持っていると云う話をきいておりますが八丈島から現在買っているらしいのです。それで笠井氏の電報に依ってそう云う専門家と交渉中でこう云うものが目鼻がつけば良いのではないかと思います。
◎川井 只今の話と関連しますが大島は水産開発と云いますが以前捕鯨船が相当成績をあげておりますが、これは母船が出て近海を遊泳しますと普通なら群をなしている筈はないのですが群をなしてあるくと云うような状態であります。こう云うような態勢で一躍大島は水産大島にならなければならぬと経済部長さんも話はしてあるんですが、この点についてそれから琉銀が貸ししぶるので動きが取れないと云うことを皆が云っているのであります。これは一体何処に原因がありますか。沖縄あたりでは相当大きな事業家に対しては巨額の貸付をやっておりますがこの辺を一つ御説明願いたいと思います。
○中江 これは琉銀の連中にいろいろきいて見ると一般がいかんようですね。何とかかんとか云って一向返さん、そう云う関係で一定の限度がありますからその限度をオーヴアーしたものには貸さんことにしています。無利息であずかっているのが四、五百万ありますがその他のものを返して貰はなければ融資は出来んと云うような実情のようであります。
◎吉松 経済部長がいませんから後まはしにしまして私達は沖縄を知らない、中々スムースに行くまいと思います。この議員として職責を果すために是非沖縄を良く見て良く知っておく必要があるんぢゃないかと考えますので、なるべく早い期間議員のうちから二、三名でも沖縄に出張さして貰えないだろうかと思いますが。
○中江 それは大いに賛成です。会計年度が始まったら考えて見ましょう。
○八番 大島のようにこう云う風に疲弊しておりそうしてどうしても将来或る期間の間これだけのことを財政方面の…。
◎一番 財政面に於て大きなものは先ず教育費だけは教育費だけは何とかしてこれを貰える方法はないものでしょうか。
○中江 今までの交渉のいきさつから考えて見ますと見込みないと思います。一千数百万円の教育費がありますがこれが故に子供の義務教育が出来たのであり、まあ尚今後努力して見ましょう。
◎大野 簡単に申上げますが予算は前から議員間で申合せをした問題についてきく処によりますと、沖縄に食農庁とか郵政庁とかいろいろな機関が出来ましてそうして事実上大島政庁とは切り離され大島の行政面で出来る訳であります。これに対してはそれに通じた有能の士が沢山大島から向うに行って、主要な椅子に坐って下さることが非常にあらゆる面から望ましい事だと考える訳であります。処が向うは非常に物価も高いしそれから住宅難でもありますし中々行き手がないような噂をきく次第であります。そうでなくても現在の沖縄琉球軍政府のやり方は沖縄本位であります。我々を本当にまま子扱いにしている現状でありどうしても大島から一言でも大島の事情を分って貰うために、是非共そう云う人を派遣して向うの主要な椅子に坐って頂きたいと思うのですが、そう云う人が自分から犠牲になって行って下さると云う人は今の処中々ないのでありますから、政庁と致しまして彼等に住宅を何とかの方法で先ず住宅を作ってあたえ、更にまた必要に応じて或る程度の手当を支給する方法を講じて頂きたい。向うでいろいろの事をやられる際などは大島の全住民の利益に直接影響のある主要な椅子に坐る、或る限度を決めましてそう云う方にそれだけ住宅と手当を支給して頂きたい。次に先程から各議員からいろいろ要望があります通り我々の行政は日本国家の保護に依って大島は財政をやっていた。それが今ほとんど独立財政になっている訳でありますが、沖縄に対する軍政府のやり方と大島に対するやり方が甚だ異っております。同じ地域にある琉球諸島として軍政府が向うにある或いは向うが軍の基地だと云うことだけで、向うだけを向うの住民だけを斯くも優遇して我々を虐待するのではない、それは大島を理解させる力がうすいのではないかと我々は感じるのであります。先般の財政部長の御説明に依りまして本年度の予算はあらゆる雑費を切り詰め、そう云う方面から大いに節約すると云うことに対しては非常に我々は大賛成であります。そう云う方面はあくまでも予算を切り詰めて頂きたいのであります。但しこの辺の軍政府の連中に接する機会を多くしそして外交的に更に活動を活溌にして頂きたい。そう云うためには相当な資金が要る訳でありますが知事の交際費はそう云う方面にお使いになる意味で相当額増額しても差支えないのであります。そう云う方面で彼等との折衝を円滑にするために交際費を増額して頂きたい。次に労務者現在の大島の失業状態は御承知の通りでありましてこれを救済するには□焦眉の問題と思います。それには沖縄に労務者を送る他手はないと思います。処が度々沖縄の新聞に載ったことでもありますし、此の前沖縄から帰られた肥後君のお説も沖縄は失業者はわずかに千名と云うことになっておりますが、事実はそうでなく千人と発表すれば軍作業に徴用されたくない人々の予防策であると云うことを聞かされております。向うでも失業者は相当いると云うことが実情のようであります。処がこっちから大島から向うに労務者を送出しますにも只無鉄砲に向うに行って更に失業苦に悩むと云うことになりますが、政庁でも計画的に労務者を向うに送出する準備がありますか。更にこれと並行しまして向うでも大島から行く労務者を受入れる設備、一例を申上げますと軍のコンセットでも借受けまして払い下げまして行ったら直ぐ自分々々で出来るような設備をして頂く訳に参りませんか。簡単に質問致します。
○中江 食農庁と云う機関が出来まして大島から代表的な役人を置かなくちゃならぬと云うことになっておりますが、今一番議員のおっしゃる通り実際向うの呉れる俸給と向うの生活費とは合はんのであります。大体に於て向うの長は互選であります。食糧農業庁の総裁も互選だと思います。部長級になりますと三千五百円でとてもこれではやって行けない。
◎大野 先程申し遅れましたんですが沖縄にこっちから政庁から旅行される人々は規定の旅費では足りず非常に赤字を出すために行きしぶると云うような噂もききますので、こう云う方面も何とか一つ特例を設けて喜んで郡民のために出張して下さるような方法を講じて頂きたいと云うことも議員一同の要望であります。それからもう一つ先程昨年も足りなかった宣伝費を本年もその通りと云はれましたが十万を費やして百万も二百万もの金で郡民の利益になるような方法、分り易く云えば十万使って百万取ったと云うようになればその宣伝費の如きもそう十万二十万の金を使っても却って郡民のためになると思います。その点まで序でに申上げておきます。
○中江 御好意はありがとう御座いますが予算をすでに出してありますからその積りでぢゃんぢゃん使って御協力を得て追加して頂きます。それから沖縄地区への旅行者が今までやっていることを申上げますと大体部長、課長で二千円、三千円分けて持たしております。多いのは一万円出すことがあります。
◎大野 一昨年知事、部長なんかと一緒に経済会議がありました時に私始めて沖縄に参ったのでありますが、水産関係の宮古の代表と向うであっていろいろ話したのでありますが当時良くは知りません、当時一昨年の、二カ年前の話でありますが大島の知事の宣伝費が五万円とおっしゃいました。処で宮古の水産代表曰く自分の処は二十五万だ、処が三月でありましたんですが、十二月までに二十五万を使ってしまう、更に三カ月分をまだ十万ばかり使ってみんければいかんと云うような話をしておりました。向うは軍政府と民政府が密接に行っているようであります。宣伝費はかりの数字でもありますまいがそう云う処に非常に私は少し商売根性があるかも知れませんけれどもそう云うことを深く考える訳であります。
  (以下金十丸問題は知事の要望に依って速記省略)
○中江 それから序でですが御参考までに申上げたいんですが今朝の問題でありますが軍政官によばれて古仁屋の阿木名川問題で二百十七万いくらと云う金ですが、契約の問題がありまして我々が要求しておった条件よりいくらかきついんです。マッコゥレーと云う人ですがこの人がお前はこれがうまく行った場合何年間あったら返せるか、僕は十年を主張した、その儘では後は自分達が困るからと五年になったんです。五年で最初の一、二、三、四カ月で失敗せんにや四年目で全部返す。利息が五パーセントそうして今日の契約では六カ月五パーセントで抑えろといろいろ折衝して見たんですが、その金は実際に来ているのではないから金はあそばさなくちゃならぬからあそばす金に利子を払うのはきつい、僕が払って僕の名前で貸したら利子は稼げると云うんですが駄目だ、その利子はいくらあるか現実に実際に君の仕事が終ることになったら自分達も考えるが、此の際向うが金を出すから条件はわるくともやって見ようと財政部長と二人で軍政府と契約書を交して、電業所長が来てそれはいけない、電業所は負担に堪えない、電灯料をあげなくちゃならぬと云う問題もある。地元民に協力して貰はなければならない、最悪の場合は知事が契約して政庁が負債はもどさなければならぬと云うことになりますが、一応は電業所が全責任を持って最善の努力をしてもろう。やれん時は政庁が責任を持つ、止むを得んと思って契約したんですがその点御諒承願いたいと思います。
  (以下前に述べた金十丸問題に関連した話題につき省略)
◎八番 電灯設備のない村に対しては軍政府から補助があると云うようですが。
○中江 補助ではなく沖縄に行った時向うの軍政府の人から聞いたんですが、大島で水力電気を起したらそれで全地域に足らなければ火力発電機を入れてやる。その調査に来るから準備しておれと云う話でありますので或る程度期待が持てるのではないかと思います。それで発電能力のある河川があったら調査して出して呉れ、河川のない処は調査せよ、火力発電機を送る大きな計画を持っているような話でした。
○二番 徳之島電業所問題についていろいろお願いしたいことがあるのでありますが他に問題が残っているようであります。しかし問題は徳之島に極限されておりますから別の機会に申上げたいと思います。
◎中江 本会議はこれで終って協議会に移します。(午後四時)どうもありがとう御座いました。
  午後四時十分閉会

 終 り

 右会議の顛末を記載し、その相違なきを証するため、茲に署名する

 民政議会議長
 臨時北部南西諸島知事
       中 江 實 孝
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