戦後初期会議録

組織名
八重山民政府参事会
開催日
1949年02月23日 
(昭和24年)
会議名
1949年八重山民政府参事会[3]
議事録
  八重山民政府参事会速記録
一九四九年四月四日整理
一 招集月日 一九四九年二月二十三日 午後二時
二 招集会場
  八重山民政府会議室
三 提出諮問案 一九四九年度歳入歳出予算研究の件
四 出席会員   山城 興常
         大濱 用立
         大田 守松
         喜舎場永珣
         柴田 米三
五 出席参与   各部、課長

  開会 午後二時二十分
○知事 一九四九年度の予算を研究して頂き度いと思いまして各位の参集を御願い致しました。充分なる御検討をして下さる様御願い致します。本日は忙しい処多数御出席して下さいまして有難う御座います。
○財務部長 新年度の予算編成を財務部に命ぜられましたので総務課の方と協力して本会議に提出すべき案を作成してありますが、それは急になって作ったものです。本年度の歳入は限度がありますので、歳入によって歳出を産み出してあります。歳入に就ては御承知の様に配給物資の益金三、三〇〇、〇〇〇円が入らない様になったので色々と研究した結果税収以外には歳入財源がない事を見通しまして歳出に大幅の削減をしたのであります。色々と検討した結果一四、〇〇〇、〇〇〇円と云ふ歳入を見出す事が出来ました。(以下歳入の説明をなす。)
 歳出に就きましては特殊のものを除き全部削減する事にした。是まで民政府負担になっていた教育費の小、中学校の旅費、賞与、僻陬地手当等は市町村へ移管する事に致しました。(各市町村別の教育費の負担額を説明す。)教育の方では六・三・三の制度の実施に伴い三七人の増加で四三〇、〇〇〇円と云ふ歳出の増加を示しています。各部の要求に就ては充分検討した結果相当に削減を致しました。削減をしたのは主として需要費、職員費、雑費等であります。内容を調べて見ると実際上此の額では運用出来ないものもありますが涙を呑んで削減したものでありますからどうぞ此の点を御承知の上此の予算案で今年度を執行して貰い度いと思います。
○知事 沖縄軍政府での財務部長会議の席上で三月二十日迄に予算案を提出せよとの事でありましたので、三月十日位に議会を招集しようと云ふ計画でしたが、二月二十日すぐ其予算案を提出せよとの事が十九日にわかりましたので、参事会を招集して研究をして貰ったのであります。
○総務部長 予算の事に就てはグローバー少佐殿に月末までに提出する様御話を申上げてあります。それで急に予算を編成しなければいけない様になったので以上(ママ)の参事会にも臨時部と経常部に別けて予算を編成せよとの事でありましたが此れが出来ないので従来通りにしてあります。お隣りの宮古では、軍政府配給物資による益金が貰えるものとして一二、〇〇〇、〇〇〇円の赤字予算を作ってある様であります。ゲスリング大佐も今沖縄に行っておられる様でありますが其件に就て折衝しに行っておられるのではないかと思います。
○山城会員 従来の八重山民政府の予算は経理課より上る収入によって相当額の潤いがあり、弾力があったのであります。今までは其収入金は減る事なく年が変わるごとに増して来た様で民政府財源の大部分を示して来ていたが此の財源が今年度から入らなくなると云ふ事になり吾々は大いに心配しなければいけない様になりました。財務部長が申上げられました様にその益金に代るべきものは増税と歳出の緊縮であり、各部とも相当額要求しておられますが、其増税は臣民が負担しなければいけないものであります。故に歳出も又検討して削減しなければいけないと思います。
○総務部長 学制改革に伴い大幅の教育費が増すので教育の本質から考へても其費用は市町へ移管しなければいけないものと思います。六・三・三の学制改革により六一人に相当する先生は中学校に配置せねばならぬのであり一学級平均一人半の教員で充当する積りであります。之による経費の増加は嵩田、平久保設置による教員の増加と従来の部落負担による教員の民政府負担がありますので相当歳出面が増加するのであります。民政府職員の俸給を下げるか或は行政の整理をしなければいけないのであります。
○山城会員 私は実際問題として倍近くの所得税を郡民に負担させる前に自らも冗費をはぶくため歳出の削減をしなければいけない。教育費には異存はないが三、三〇〇、〇〇〇円と云ふ経済部の収入が今年よりはなくなるので民力に影響を及ぼさぬ様考慮を乞ふ。
○総務部長 今まで各部の欠員をおさえて来ていましたので相当予算にも弾力があるのであります。
○大濱会員 どの位の欠でありますか。
○総務部長 二四名で二四〇、〇〇〇円押えてあります。現在の物価指数から推して考へても増税による外はないと思います。
○山城会員 先づ第一に冗費をはぶく事であり、冗費をはぶく意味に於て職員の整理をしたらどんなものですか。
○総務部長 人事を司る者として相当至難な問題であります。
○山城会員 人を減ずる事は品物でないからそう簡単には出来ないものである事は知っていますが、余った人を削る事であり、其れは研究、検討の上なされるべきものだと思います。
○経済部長 各部に余った人がありましたら切るべきであり、切って仕事が出来ないと云ふ事になると大変な事だと思います。
○山城会員 昨年の経済の状態と今年の経済の状態とは、相当な差があります。軍政府の政策として通貨の膨張を防ぐため貨幣交換が行われました。交換後は金の出廻りが悪くなりつつあって他郡市から軍票の入る事はおそらくないのではないかと思ふ。それに所得税を倍近くに賦課すると云ふ事でありますが民ははたして負担力があるかどうか当局としても相当に研究して欲しいと思ふ。
○財務部長 増税する事に対しましては例年通りの納税者のみに負担させるのではなく納税者を増す事により負担を軽くしようと思ふのであります。
○大濱会員 前の参事会の時に提出されました歳入と今日出されました歳入とはどんな変化がありますか。
○総務課長 過年度収入の三〇〇、〇〇〇円が六五〇、〇〇〇円になっています。又産業部の収入が増しています。
○山城会員 知事さんにお尋ね致しますが、会計検査の結果の意見書として事業部を民営に移管して下さいと出してありますが、民営に移管するなら現在の職員並に従業員をどう処置するかと当局は御心配なされるかも知りませんが、其点は何も心配はないと思います。移管後も其人達の保障をなすべきでつまり現在の職員、従業員で其仕事を継続せしめるべきであります。又他の一面に於ては八〇〇、〇〇〇円余の事業部の一般会計への納付金に対し一般会計よりの支出人件費が四〇〇、〇〇〇円位で、結果に於ては事業部の収入としては四〇〇、〇〇〇円しか利益はない事になります。此れを民営に移管すると約八〇〇、〇〇〇円で貸付ける事が出来、支出の人件費四〇〇、〇〇〇円が浮く事になり、数字的に見て計一、二〇〇、〇〇〇以上の利益が出る訳であります。又多額の負偵を持っていますので、どうしても事業部を移管する必要があります。
○知事 先の参事会の事業部移管の意見書を見て此の問題に就て相当に考へました。それは御承知の通り事業部には一、〇〇〇、〇〇〇円余の負債がありますし、事業部財産の殆んどが日本人の財産でありますので、それをどう云ふ様にして移管するかと云ふ事で悩んでいるのであります。
 運輸課の方は船との連絡、其他米軍物資の運搬等、軍政府関係の仕事が多いのでありますから、移管しては困るのではないかと思います。
 電気課は発電機が破損したので、其復旧後でなければ移管は出来ないものであり又負債も相当にあるので今の処むつかしいのではないかと思ふ。
 印刷課は相当に収入を上げているし、又印刷業は民政府、市町等の団体が使用する事が多いのであります。
 工務課は適当な時期を見て移さなければいけないと思いますが、鉄工班も工場を新築してあり又製材所も色々設備をして負債を持っているので、はたしてどう云ふ風にして移管すべきであるか相当研究すべきだと思います。
○山城会員 知事さんのお話の結論は、短時日には移管は出来ない様でありますが、私が申上げる移管は売却ではありません。貸付けであります。貸付ける事により一般会計よりの支出は減ずる事でありますので民政府としては此の際是非一つでも移管してはと思ふ者であります。又事業方面から申上げましても今まで従業員のストライキもあり、色々と事業部には悩まされて来たのであります。いづれの点から見ても移管した方が良くはないかと思ふ。一、〇〇〇、〇〇〇円余の負債をも整理しなければいけないので、今年度に移管してもらって、其負債の幾らかでも払える様にして欲しいと思ふ。
○知事 研究して見度いと思います。
○事業部長 減価償却を今年度の予算に計上してありますので、米軍政府よりの借入金は来年度になれば一部分でも支払いができると思ふ。一九四八年度に於て、事業部より一般会計納付金がないとの事でありますが、それは去る六月の暴風により不時の災難に遭ったため、九月八日に一九四八年の十二月末日迄は一般会計への納付金は納付出来ない旨知事、財務部長宛公文書を出しました。その理由は製材課の工場が潰れ、電気課では第二発電所の施設費がかかり、第一発電所の電動機(ママ)破損による電灯料金の収入減、第一運輸丸の六ヶ月間のドック入り、燃料減配による運輸課の名蔵線、白保線等の運航(行カ)中止等の為に収益金が思ふ様に上がらなかったのであり、一般会計への納付金が出来なかったのであります。
○山城会員 事業部の負債を後五ヶ年で年賦償還されるとの事でありますが、現在の民政府が後五ヶ年も其責任を持たれると云ふ事はあり得ない話であります。それで五ヶ年でなく出来得るだけ早目に償還すると云ふ意味に於ても事業部の移管は必要な事であります。今年度の実績を振り返って見ても経理課から金を借りなければ事業部の運営が出来ない様では駄目であります。
○事業部長 減価償却一〇、〇〇〇円を寝かしておく必要はないと思ふ。それで後三ヶ年位では負債の整理は出来るのではないかと思ふ。
○山城会員 実際問題として是が出来るか出来ないかを此の際充分に検討されて事業部の病根とも云ふべき負債を早く償還されん事を望む。
○逓信部長 逓信部の歳入が低廉でありますので、宮古の料金と同じ様にして歳入を増し度いと思います。
○会計課長 歳出の方に移ります。
  (以下各部長各部の歳出を説明す。)
○山城会員 一九四九年度予算編成方針はどんなものですか。
○総務部長 一九四九年度予算の編成方針としては新規事業を取り止めにしてあります。然し乍ら止むを得ないものに刑務所の移転建築費、六・三・三制度の実施による教育費の膨張等があります。
○山城会員 前の参事会にも申上げましたが物品税其他所得税等を徴収するには税務課の職員を増員しなければいけないのではないかと思ふ。
○会計課長 増員する様予算も組んであります。
○文教部長 巡回映画費を一〇、〇〇〇円組んであられる様でありますが此れでは少いのではありませんか。学徒体育費も少い様にあります。去年の野球引率旅費が四〇、〇〇〇円もかかっておりますので此れから考へて見ても、今年は大島で行われる事になっていますのでもっと学徒体育費を増して貰い度いと思ふ。
○柴田会員 巡回映画は其実費だけは取らなければいけないと思ふ。
○文教部長 宮古では其れを生徒から取っています。
○大濱会員 臨教は今年度も存続される積りでありますか。
○文教部長 そうであります。
○柴田会員 最近の高等学校の教授時間は実際に受けている時間と時間割による時間との差はありませんか。
○文教部長 午前中は正規の時間割によって実施していると思います。
○柴田会員 農林高等学校の卒業生に希望の途を開いて貰い度いと思ふ。
○文教部長 考へています。
○産業部長 今年度に於て増しているのが建築費であります。刑務所の建築費、救護院の建築費、逓信部の機械小屋建築費等であります。
○山城会員 保安林造成費を組んでおられる様でありますが四箇の裏はどうなさる積りでありますか。
○産業部長 昨年度各市町村に三五、〇〇〇本の苗木を配布しましたが、海岸方面に防潮林として植付けた様であります。今年度には植付ける事が出来るのではないかと思ふ。
○山城会員 ブルドーザーによる道路開鑿の御計画は。
○産業部長 石垣市が裏石垣の川平、桴海線を計画し、大濱町が伊野田、野底線を計画しています。
○山城会員 東西表線の御計画はあられませんか。
○産業部長 各市町の負担により道路の開鑿はさせ度いと思います。今の処竹富町はない様であります。
○山城会員 水産業費の五〇、〇〇〇円の使途に就て説明を乞ふ。
○経済部長 其主なものは船揚場に対する補助並製氷事業に対する補助等であります。
○山城会員 僅か四〇、〇〇〇円位で良いですか。
○水産課長 水産業会への補助であり、水産業者が出資すればなんとかなるんではないかと思います。
○山城会員 農林方面との釣合いも考へて少い様にあります。後一〇〇、〇〇〇円位は増した方が良くはないかと思います。
○水産課長 財源が許せばそう致し度いと思います。
○山城会員 ある一部の業者からこう云ふ話を聞きました。船揚場は此の附近では、二、三〇馬力の船しか揚げ得ない様でありますが、川平湾では相当な施設をすれば一〇〇馬力位の船揚場は出来る様な話でありますから此の点を考慮に入れて欲しいと思ふ。
○経済部長 経済部は宮古、沖縄の出張が多い様であります。旅費は昨年に比較して増してありますが、少い様でありますからもっと増して貰い度いと思います。
○大濱会員 人件費は貿易庁代表及其職員に出していますか。
○会計課長 全然出していません。
○衛生部長 慈善病院の収入五〇〇、〇〇〇円を一〇〇、〇〇〇円にし度いと思います。最初の出発から五〇〇、〇〇〇円は考へられませんからそう致し度いと思います。
○山城会員 衛生部長にお聴き致します。救癩問題はゲスリング夫人も相当に熱意を持っておられる様でありますので予算のどこかに救癩費を設ける必要はありませんか。
○衛生部長 其件に就ては救癩協会を作ろうと云ふ事になり民政府としてはそれに補助する位に止め度いと思ふ。
○警察部長 留置人の賄費が昨年度は相当に不足しているので予備費から流用する事にしていますので今年度は此れを増さなければいけないと思います。
○柴田会員 留置人の賄費は一日いくら位になっていますか。
○警察部長 芋を一食一斤の割合になっています。
○逓信部長 逓信部の事業費の膨張した理由は一般物価の高騰によるもの、市内外の電話数が増した事、新設無電局の増加等によるものであります。新設される無電局は黒島か小浜か大原かの内一箇所で勿論人件費は部落負担になっています。また既に設立されている久部良、波照間にも職員をやらねばならない様になっていますので、現在の職員より一二名の増員をして貰はなければ仕事がやっていけない現状であります。
○山城会員 無電局を新設する事は良い事でありますが、あまりに良すぎる感じが致します。戦前三等局の経費は部落負担になっていました。無電局を新設する事は今年度は波照間局のみに止めて欲しいと思ふ。
○大濱会員 急がなくても良いと思ふ。逓信部の事業費と人件費を削って水産の費用に充当したらどんなものですか。
○山城会員 一方は欠員も補充はないと云ふ時、一人逓信部のみは仕事を拡大しようと云ふ事はどうかと思ふ。又今年度は新規事業は取り止めだと云ふ時逓信部のみは新規事業をするのであるか。
○総務部長 離島の新設は止めたら良いでせう。
○逓信部長 波照間無電局の新設は一九四八年度の予算に於て既に計上可決されたものであります故、工事に着手し今竣工したので人員を配置しようと云ふ事であります。それで是に対する人件費は増して欲しいと思います。
○大濱会員 だいたい出来上った様だから此れで閉会したらどんなものですか。
○知事 それでは閉会致します。
 (閉会 午後四時三十五分)
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