戦後初期会議録

組織名
琉球臨時中央政府立法院
開催日
1951年12月26日 
(昭和26年)
会議名
第1回立法院本会議 1951年12月26日
議事録
第一回立法院本会議会議録
        第七十九日目

 一九五一年十二月二十六日(水曜日)午後一時三十八分開議

議事日程
 一、琉球臨時中央政府厚生局設置法案について(大濱國浩君発議)
 二、琉球臨時中央政府商工局設置法案について(第二読会)

○議長(泉 有平君) これから本会議を開会致します。
 本日上程される法案は大濱参議から厚生局設置法案の発議がありましたので、それと商工局の設置法案の二読会の二つについてであります。
 一応その法案に対する御説明をしていただきたいと思います。
○大濱國浩君 発議理由の御説明を申上げます。
 十二月十四日の本会議にかけまして主席メッセージ第二十六号に対し厚生局設置法の立法をなすよう連絡がありまして、早速議長より本設置法について立法の研究をするよう文教厚生委員会に附託になったのであります。委員会に於きましては、メッセージに添付されたところの参考案を中心に証人の喚問をなすとともに慎重審議、検討を加えました結果、全琉球に亘る保健衛生並に社会福祉の向上及び増進を図るためには是非臨時中央政府にその任務の達成を図るところの医政、民生の行政を司るところの厚生局が是非必要であるとの根本理由の下に本立法案を発議した次第であります。
 各参議に於かれましては慎重本法案を御審議の上議決下さいますようお願い申上げます。
  (書記長川畑秀志君 朗読)
○大濱國浩君 第二案はミスプリントです。「住民の保健に関すること」皆関することであります。第六号も「事務を行うこと」になっております。各号とも「関すること」であります。又第四条に「所轄」とあるのは「所管」であります。
○議長(泉 有平君) 一般的な質疑に移りたいと思います。
○松田賀哲君 第七条の第十一号ですね。これは消えたのじゃないのですか。
○大濱國浩君 第十一号はですね、軍との話合で行政部の方で決定的になったということを先程聞いた訳でありますが、第十一号は屠場屠畜の規則制定に関することというような条項になるように話が決ったということを吉元委員から聞いております。
○松田賀哲君 それで発議者としては御異議はありませんか。
○大濱國浩君 このままではありません。
○松田賀哲君 じゃどうします。
○大濱國浩君 これは矢張り行政府の方で話をつけて貰った通りに修正して行政の運営が円滑に行くようにした方がいいのじゃないかという考を持っております。
○與儀達敏君 そうすると発議修正ですね。
○冨名腰尚武君 狂犬病はいい訳でせう。それも省くのですか。
○城間盛善君 この問題は委員長もおっしゃっている通りただそういった話を聞いただけだということであれば、もう一度委員会で研究したらどうですか。
○大濱國浩君 一応お答えはしておりますが、委員会で更に研究して修正案を出そうと思っております。
○冨名腰尚武君 発議者にお尋ね致しますが、第二条第二号の「医療施設及び社会事業施設の管理運営」となっているが、これは官営を意味するのか、官営、民営両施設とも含めてお考えですか。
○大濱國浩君 これは官営のみであります。
○冨名腰尚武君 第七条の第三号「医療関係者」という表現が出ておりますが、これの内容について御説明をお願いしたいと思います。例えば第十三号で看護婦、助産婦というのが規定されているが、この第三号からは看護婦、助産婦は医療関係者ではないという風にも判断される訳ですが、ここでいう医療関係者とは、マッサージ師とか鍼灸師とかああいうものをいうのかどうかですね。
○大濱國浩君 医師介輔とかいうものです。
○城間盛善君 今の質問に対する委員長の説明を補足したいと思いますが、第七条の第三号に医師、薬剤師、歯科医師、その他医療関係者の免許云々とありますが、そういった医療関係者は後の第十三号に看護婦、助産婦などが出て来るので、第三号には含まれんということになるのですが、必ずしも看護婦や助産婦が除外されているというのではなくて、第三号には介輔というものが入る訳ですが、特に第十三号をあそこに上げてあるのは、看護婦--特にその中で公衆衛生看護婦とかいったものを強くはっきりさせる目的だという風に説明しておりました。主として民政府公衆衛生部に於けるこういった部門が重要視されているといった面からこれを是非別項にはっきりさして貰いたいと、こういう意向から来ております。こういう風に解釈していいんじゃないかと思います。
○大濱國浩君 城間参議がおっしゃった通り医療関係者には入るのですが、是非、--民政府の建前上--項を別にして置いてくれという、厚生局長の意見もあった訳です。
○冨名腰尚武君 医療関係者は介輔だけですか。医療を実施するものは全部含まれると解釈していいですね。鍼灸、マッサージ師なんかはどうですか。
○大濱國浩君 日本に於ては鍼灸師は免許を持っているのですよ。医療関係者に入っております。
○冨名腰尚武君 日本に於ては入っている訳だが、こちらではどういう風にお考えになりますか。例の鍼灸師問題は医療ではないとかいうようなことがあったが…。
○大濱國浩君 そういった面は突込んで研究しておりませんが、何れ更に委員会附託になった時に研究して見ます。
○冨名腰尚武君 第八条第八号の「母子保護及び児童福祉のための文化の向上」という表現が用いられておりますが、「文化の向上」ということの意味する点を一つはっきりさせていただきたいのですが、「母子及び児童の福祉に関すること」と云わずにそのための文化の向上といって特にあげられた点ですね。母子保護及び児童福祉の問題を直接に社会事業課ではしないで、ただ間接的な効果を狙った文化の向上だけをお考えになっているのかどうか。そこら辺が、ちょっとこのままでははっきりしないようですが。
○調査員(奥島憲雄君) これは原案では「児童の文化の向上に関すること」となっていたのですが、教育的なものもそれに含まれるから、福祉に限定したらどうかということでやった訳ですが、母子保護というのには児童の保護も入っておりまして、日本の児童保護法の中に規定されておりますが、更に児童に対しては--母と子を共に保護することを客体にしているのですが、それでも尚児童保護法という名前を付けているように--特に重点を置いており、単なる生活の援護という意味ではなくして、母子保護と共に、それを越えた児童の福祉のための文化の向上、例えば保育所とか、そういった児童の厚生施設、健全な遊びを与える、こういったものまで児童保護法には規定されている訳です。
○冨名腰尚武君 そうすると母子保護で一応切りますね。ここで行政活動としての母性及び児童に対する直接的な仕事もやる、並に児童に対しては社会一般の水準を上げるところまで努力すると、そういう意味ですね。それなら分ります。
○調査員(奥島憲雄君) 児童福祉法第四十条を読んで見ると。
  (朗読、省略)
○冨名腰尚武君 施設面を構想させるというならば分るけれども、ここに文化という文句を出されるとちょっと面喰ってしまうのですよ。
○調査員(奥島憲雄君) 原案の場合は、すぐ文化と出ていたのですが、日本と同じようにしたのです。
○冨名腰尚武君 その辺は一応委員会で御検討願いたいと思います。
 質問を継続しますが、第八条の第十一号ですね、軍人軍属遺家族と出ていますが、軍人軍属遺家族に対する救済というものは終戦後今日まで琉球に於ては行われていなかったのじゃありませんか。
○大濱國浩君 社会事業課の方ではやっているようなことを話しておりました。
○冨名腰尚武君 それは極く特殊な場合のことでせうね。全般的にやるというのとは政策的に非常な違いがあると思うのですが、ここの項目は講和条約発効と同時に琉球政府としては軍人、軍属、遺家族に対して適当な救済措置を講じて行くというはっきりした意図があるかどうかという問題ですね。それに関連しての世話事務、日本から帰って来る場合の世話といった内容ですか。
○大濱國浩君 ここにいるものも、遺家族に対してもやらなければいかんと思います。
○吉元榮光君 沖縄戦に於て相当の戦病傷痍者を出したが、これの保護も、この中に含まれるのです。
○冨名腰尚武君 従来の例から、陸海軍未帰還者の問題、それから行方不明者の問題、これだけは従来の社会事業課でもやっているが、然し、こういった風に未帰還という限定されたものを除いて書き直してしまうと、琉球住民にして軍人、軍属であった者全部に世話事務が及ぼされる感じがすると思うのですが、従来社会事業課がやっていた未帰還軍人軍属の帰還の際の斡旋又は消息を尋ねてやるとか、遺骨の世話とかいうことだけを意味するならばこの表現の点は、或る程度まで限定されないと疑問が起って来わせんかと思うのですが、こういいますとこの世話というものは一体どういう世話かということが問題になって来るのですが、救済の方も、それから給与の世話や斡旋までという風に全部ひっくるめているという風に感じられる。
○大濱國浩君 社会事業課としては将来はどうしてもそこまでやらなければならないという意向でせう。現に日本でもやっているのだから、こちらとしてもやって行かなければならないような立場にあるといっていました。
○冨名腰尚武君 遺骨なんかは全部社会事業課、引揚業務は…。
○大濱國浩君 この方は今まで総務がやっているが、今度厚生局が出来るからそれで引取ってくれといわれているそうです。
○冨名腰尚武君 私の質問は以上であります。
○議長(泉 有平君) 以上にて一応質問を打切りまして、本案は文教厚生委員会に附託致します。
 次の議題、商工局設置法の二読会に移りたいと思います。その前に経過御報告をお願い致します。
○松田賀哲君 この設置法案につきましては、委員会附託になりまして、委員会で数回審議を重ね、数ヶ所の加除があります。それは第十条の第三号に保留と書いてありますね。その保留を消してそして次の第十一条つまり「商工局は左の支局を置く」その前に第十一条として新たに書入れていただきたいと思います。第十一条「商工局に度量衡検定所を置く」従って条は一つ多くなって第十二条は「商工局に左の支局を置く」第十三条は「商工局に大島染織指導所を置く」とこうなる訳であります。それから第十四条は皆さんの方では「支局大島染織指導所云々」となっていますが、その支局の前に度量衡検定所を入れ、第十四条「度量衡検定所支局及び大島染織指導所については別に規則を以て定める」それからその次の二行は削除しまして、第十五条「商工局に駐日貿易代表事務所を置く」従って条は順繰りに一条ずつ繰上げて行く訳です。それから第十七条--臨時規定の次の条です--そこの初めの行の終いのところに「琉球貿易庁の精算を行う」とある。これは「清」の誤植です。御訂正を願います。それから最後に附則として群島政府の事務引継についての箇条を附加えなければなりませんが、これが出来上っておりますから附則として終いに附加えていただきます。
  (調査員屋宜宣勇君「附則」朗読)
○議長(泉 有平君) 逐条審議に移ります。
  (書記長川畑秀志君「第一条、第二条」朗読)
○大濱國浩君 第二条第二号の輸出入の管理、この管理というのは輸出入の何を管理するのですか。
○松田賀哲君 これは第七条及び第八条の事務を御覧になれば分りますが、輸出の許可承認とありますね。或は輸出品の品質を検査するとかいうようなこと、或は輸入の場合、輸入の統制管理に関すること、一言にいってみれば自由貿易とはいいますものの輸入にしろ輸出にしろ現在為替の割当がある関係上、統制下にある訳です。それで管理という言葉を使っているのです。
○城間盛善君 第二条の第三号島内外貨獲得事業に関すること、これのこういった事務を司るというのですが、どの程度ですかね。
○松田賀哲君 これはですね、世話をするという程度であります。
 例えば軍部隊内の食堂、レストランああいうものもこっちに移して貰うようにやろうというようなことで、既にやっているものは理髪、時計修理などいろいろありますね。
○城間盛善君 今おっしゃっているのは大体部隊内でのものですが、民間でもいろいろ外貨獲得の事業はあるのですが、その方面までの考はありませんか。
○松田賀哲君 それは所謂島内商業の発展、それに含めて、特にここに書いてあるのは、そういう部隊内の意味で書いてあるのです。勿論それも島内外貨獲得事業に含まっているといえば含まっている訳ですが…。
○大濱國浩君 第二条第五号に特許権という言葉がありますが、特許権については何か厚薄(ママ)がありますか。
○松田賀哲君 この特許権云々というのは未だ仕事の目鼻もついていないのですが、特許法というものが出来れば或は独立して総務かどっかにくっつくかも知れませんが、この商業上の権利に関することというのが大分あるものですから、ここに一緒にしてあるのであって、実際に特許法が出来た場合にはどこに入るか分らんのです。
  (書記長川畑秀志君「第三条、第四条、第五条、第六条」朗読)
○城間盛善君 第六条の第七号の「輸出輸入計画の総合調整」これは第一読会に於て委員長の御説明もあったのですが、この「総合調整」というのは局内のものであるという風に説明しておられたと記憶しておりますが、然し輸出輸入計画というものは広く琉球全部の、所管外の産業方面にも重大な影響をもつもので、例えば農業、水産業とも重大関係があるので、この方面のことについては局長会議とかいう風なところで調整されるだろうという風にお答えになったと思いますが、つまりそういった大局的な立場から見た輸出輸入計画の樹立、この点は行政主席の下に於て各部内の担当局長、その他の合議制によってそういう全琉的立場から見た輸出入の綜合計画が樹立されるという含みで解釈していい訳ですね。
○松田賀哲君 結構です。
○大濱國浩君 第八号の「外国為替予算に関すること」これは何か軍予算といいますか、中央政府予算、そういった為替予算は含まれている訳ですか、現在。
○松田賀哲君 含まれております。
○大濱國浩君 中央政府に移った場合には自らそれを組まなければならないのですか。
○松田賀哲君 自ら組むことになるかならんかは分りません。軍が引渡すかどうか。
○冨名腰尚武君 ドル商業資金については軍が所管して貿易庁は補助的役割しか果していない。外貨割当に関しても軍から相談にあずかって、貿易庁の知恵を借りて大体の枠を決めて輸入公表に関する責任を貿易庁が持つという風にやっているが、これは将来に於てはどうしても住民の政府で持ちたいというのが一般の希望だろうと思う。こういった項目を出すことによって、そこに含みを残しておこうという気持も当局者は持っているように話を聞きました。これをどこにも出さないと、その点足がかりがないから、ここに一つ足がかりをつけて、尤も輸入公表に関しての所管事務はもっている訳ですから、全然架空なものではないのですから、ここに出しておいて、商業資金に関する限りは住民政府がタッチするという方針に進めて行きたいという…。
○大濱國浩君 将来はここで取りたいから含みを持たして出て来た訳ですね。
○城間盛善君 先のことについてもう一つお尋ねしますが、総合調整の問題ですが、経済安定本部の計画も諮詢委員会時代にしてみたが、どうなったか分らないが、何かそういった琉球全般的な輸出輸入総合計画、或は全般的な産業復興計画といったようなものが、是非必要だと思われますが、この設置法にある庶務課にそういう風なものは与えられているか。これでは、そういった風な解釈は大きな計画とまでは行かんだろうと思われますが、何かそういった計画について委員会で検討されたことはありませんか、この審議中に…。
○松田賀哲君 これは所謂商工局の設置法であるので、他部に亘るような含みについては、商工局に関する限りに於て話をしたのであって、その上に立つ政府としての大きな機関ということについては話合ったことはありません。
○城間盛善君 この局の中の庶務課に、こういう風な総合調整の事務を司るとなっているのだが、これを強化させるといってはおかしいが、他の局との関連をつけるという意味で--単に局内だけの輸出課とか輸入課或は工業課との関係は出て来るかも知れないが--他の面、他の局の管下にある部門との関連をつけるようなところまで行かんもんでせうか。
○松田賀哲君 これは、こうなんです。特に庶務課に於て総合調整というのが出て来たのは実は向うとしては庶務課よりも企画課というのを置きたかったのですよ。現在の貿易庁に於ても企画課が主になってやっているようですが、企画課の事務の中には総合調整でなくて、すぐ商工業、輸出輸入に関する計画立案となっているのですよ。計画立案は他の課にはさせないで商業であろうが、工業であろうが、何でも計画立案をするという考え方で出来ていたもんですから、それはそんなことをやってはいかん、そうなれば各課の課長は人形みたいなもので何にもならない。各課の課長こそそういう計画立案をすべきであって、又ここに引取ってやろうとする場合にはこの企画課内には課長級に値するような人物が少くとも四人は揃わなければならないし、それも色んな関係で出来ないので、兔に角各課の課長が主になって自分の課の企画立案は当然やるべきであるというので、ただ輸出、輸入各課が勝手にやってはまずいところがあるので、それを総合調整するという意味で原案は向うで出さしてここで調整する。こういう意味で総合調整ということが出て来た訳であります。だから普通の局に於ては他の課を総合調整するということはないはずです。従来貿易庁では企画局がずっとそういう風に--他の群島でも企画課を作ったけれども立消になった--やっていたもんだから、それを加味して総合調整だけはさして行こうと、というので入れた訳なんです。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後二時三十六分休憩)
  (午後二時四十三分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
○大濱國浩君 第十号は現在ありますか。
○松田賀哲君 これも現在ありません。
  (書記長川畑秀志君「第七条」朗読)
○吉元榮光君 第二号の「輸出品の品質包装の規格、標準の設定及び監督に関すること」とありますが、これは砂糖その他重要物産の輸出に関してもやる訳ですか。これは資源局の農政課でも予想されていますが、この連絡はどういう風に行う訳ですか。
○松田賀哲君 これは規格基準の設定であって、検査ではないのです。輸出品の実際の検査については、それぞれの当局にやって貰うのです。だから今海外では、こういう規格が流行っているからとそういう規格を決める訳です。監督というのはですね、それぞれの当局に検査をして貰っているが、いざ出した場合に何かの手違でもあって向うの信用を失ったりするようなことがないか、というようなそういう監督なだけです。手違いなんか生じないで、出されているかどうかということです。検査そのものに対する監督という意味ではありません。
○城間盛善君 第一号の輸出の許可もこれに関連するのですね。
○松田賀哲君 そうです。
○城間盛善君 規格が標準通り行っているかどうかといった面からの許可でせうね。
○松田賀哲君 そうです。
○吉元榮光君 品質の標準規格の設定は輸出課でやる訳ですか。
○松田賀哲君 そうです。
○吉元榮光君 それは一応検査規定の中で標準規格を決めて行くのではないかと思うのですがね。
○松田賀哲君 だから、こっちで規格標準を決めてですね、そしてそれに従って検査をするのです。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後二時四十九分休憩)
  (午後二時五十七分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。
 第七条の第二号の意図しているところを委員長の方ではっきりしていただきたいと思います。
○松田賀哲君 第七条第二号の「品質包装の規格標準の設定及び監督に関すること」というのは商品の品質の規格標準を決めるというのでなくて、輸出品としての規格標準を決めるという意味であります。例えば商品として一級、二級、三級、四級とあるかも知れませんが、輸出の場合は輸出用としては二級までしか規格に入れんといったような考であります。
○吉元榮光君 そうすると、これは農林省で黒糖の検査規定を作る場合に、黒糖査定を行うといったものとは抵触しない訳ですね。
○松田賀哲君 しない訳です。
○吉元榮光君 今資源局でも砂糖の如き、鰹節の如きものの生産検査をして消費価値並に信用を保持するための検査を行いたいということを準備しつつありますが、その点はこれとは勿論抵触しないと思うのですが、そういう風に仕向けて下さるようにお願い致します。
○松田賀哲君 承知致しました。
○議長(泉 有平君) 第七条は別に御異議はございませんか。次に移ります。
  (書記長川畑秀志君「第八条」朗読)
○城間盛善君 輸入の統制管理の事務内容を簡単に御説明願います。
○松田賀哲君 輸入の統制管理に関すること、これは一見して言葉が強過ぎる感を抱かれるだろうと思いますが、現在のところは所謂輸入公表ということがありますね。あれだけのことしかしていないのでありまして、統制という言葉には当らんかも知れません。考えようによっては、それも統制ではありますが、然しこっちで特に統制という言葉を設けたのは、将来ドルが不足して来た場合、その場合には必ず輸入は統制になるだろうという予想の下に統制ということを入れたのであります。
○城間盛善君 現在のところ決めた枠--この面にはこれだけのドルを割当てるといったこと--が解かれたが、当分は解かれた状態が続くのですか。
○冨名腰尚武君 輸入公表によって自動車は何万ドル、建築資材は何万ドルという枠がありますが、この枠にある奴が余った時には他に追加するということはやっております。
  (書記長川畑秀志君「第九条」朗読)
○吉元榮光君 商業の調整とはどういうことですか。
○松田賀哲君 これは商人が喧嘩した場合ですね、その間に立って調整を図るということです。例えば例を以て申上げますと、貿易庁から品物を買いおった場合には組合を作って買っておったのですが、その組合が二つに分れまして--現実には分れていないのですけれども、どうも幹部連中のやることは面白くない、我々は我々でやろうということで、二つとも広告が出まして喧嘩しそうになったものですから、私その時に行って一つにしたことがあるのです。
  (書記長川畑秀志君「第十条」朗読)
○大濱國浩君 第十条の第一号の輸出工業は、沖縄では主としてどんな工業ですか、製糖ですか。
○松田賀哲君 漆器やら何やらもありませう。
○吉元榮光君 工業の範囲ですが、資源局の方でも農村工業という面を育成指導して行くということがありますが、あれとは何ら関連を持たない訳ですね。
○松田賀哲君 抵触しない訳です。と申しますのは、農業という法律上の規定--従来の日本の--では「農業及びこれに附随する加工業」というのが入っている訳です。今云われるのは農産加工業の意味だろうと思いますのであれは農業に入るものです。
○大濱國浩君 それが一つの企業化した場合、この場合は何と見られるのですか。純然たる工業と見られるのですか。
○松田賀哲君 農産加工業となっているが、そういう企業化した場合は日本の農業の規定があやしくなると思う。事実農産加工業と一般工業の区別はむつかしいと思う。
○冨名腰尚武君 例えば南部製糖の場合は工業で共同製糖場の場合は農産加工業という区別…。
○吉元榮光君 生産者自体が組合を作ってやる場合は農産加工業と見ていいんじゃないかね。第三号はどういう意味ですか。
○松田賀哲君 これはこういう意味で入れてあるのだそうです。従来群島政府時代に、土木建築に関しては従来工業課を通じてやっておったので、こういうことは当然工業課を通じてやるという意味で入れてあるそうです。
○吉元榮光君 そうすると土木もやれば建築もやるということになれば、工務局は必要がなくなる…。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後三時十分休憩)
  (午後三時二十五分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。
○松田賀哲君 第十条の第三号については、今度新しく工務局も出来ますので、従来の群島政府の工務部の在り方からするというと、このまま生かして差支えないと思っております。新しく出来る工務局の事業内容は分りませんので、これは向うともよく折衝して改めてこれを入れるか削除するかは決定したいと思います。
  (書記長川畑秀志君「第十一条、第十二条、第十三条、第十四条、第十五条、第十六条」朗読)
○吉元榮光君 駐日貿易代表事務所を運営する規定はない訳ですか。
○松田賀哲君 それについては別に規則を以て定めるのでせうね。
○吉元榮光君 局長が指図するのか、或は規定によってやるかどうか…。
○松田賀哲君 それは聴いておりません。規則によってやっているというようなことも聴いておりません。こっちもうっかりしておりまして、その点については聴いておりません。
○城間盛善君 駐日貿易代表の任務ですが、第一号の「日琉貿易促進のため日本政府との連絡」とあるが「貿易促進のため」というと何だか範囲が狭いような感じがしますが、一般に関しての連絡折衝という意味ではないのですか。
○松田賀哲君 大体これは貿易促進のために出来たものですがね。スキャップの中に補給部というのがありますね。あれの配下に働いているのですが、あれを通じて仕事をしているのですよ。
○城間盛善君 日琉貿易全般に亘る面でなくて、ただ促進の面ですか。
○冨名腰尚武君 従来こっちから向うに行った連中はガリオア資金による購入の仕事をやるために向うの貿易代表との折衝が主であったが、今後は通商官といった場合には商業資金による貿易関係面もその連中が担当するのではないのですか。GHQの指揮を離れて動くこともある訳でせう。
○松田賀哲君 離れて折衝することはあるでせうが、政府との折衝はない訳です、直接には。局長も今の琉球臨時中央政府はまだ琉球を代表するとは認め難いという意向もある、と言っておりました。
○吉元榮光君 これは将来輸出品がどんどん出る場合に輸出品の斡旋もしてやらなければいかんと思うのですがね。
○松田賀哲君 現にやっておりますよ。促進のために行っている訳ですから。
 規定については、もう一ぺん聴いて見ませう。規定を以てやっているのか、やっておれば別に規則をもって定めるとして、若し未だ出来ていなければ--これは出来ているとも聞いていないというのは、この代表者も決っていないのです。
○大濱國浩君 あれは臨時中央政府の代表者として行ったのですか。
○松田賀哲君 政府の代表としてではなく、貿易庁職員として行った訳です。
○田畑守雄君 内部規定が作れるかどうか、あれは権限委譲をして貰わなければ作れないと思うのですよ。
○松田賀哲君 何れにしても向うで規定を作っているかも知れませんから、改めて聴いてみませう。
○冨名腰尚武君 第十二条ですが、これは大島名瀬市、宮古平良市ではいけないでせう。大島支局名瀬市、宮古支局平良市、八重山支局石垣市でせう。
  (書記長川畑秀志君「第十七条、第十八条、第十九条、第二十条、第二十一条」朗読)
○城間盛善君 清算事務だけしか残っていなかったと思うのですが、これからもやるように見えますね。
○冨名腰尚武君 未だ入って来るのです。六月一杯位で終るだろうということで、当分続くというのです。
○松田賀哲君 六月頃までに終るというのは物がなくなるのであって、後の整理事務はそれ以後も続くのです。
○城間盛善君  業務と販売の二つに分けてあるのですが、二つに分ける必要があるのですか。
○松田賀哲君 業務というのは受取の方です。
○吉元榮光君「臨時」というのはいつまでの臨時ですか。
○松田賀哲君 この臨時というのは或る程度までやったら、これはなくして商工局にくっつけなければならなくなるでせう。未回収の金が十億円位もあるということですから、その金を清算するには相当の日時がかかるのじゃないか、物を持って行って誰が持って行ったか分らんのがあるというのですよ。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後三時三十九分休憩)
  (午後四時一分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
 原案に謳われております。臨時規定という条章の取扱方については更に研究して貰うことにして、各条の内容について審議していただきます。
○吉元榮光君 業務と販売は一つに出来ませんか。
○與儀達敏君 物を扱う方と売る方は別にした方がよい。仕事の分量が少くても分けた方がよいと思います。
○松田賀哲君 業務課の中に部内庶務に関することというのがあるのですよ。それは、初めは庶務課というものも置いてあった訳ですよ。庶務課と云っても仕事がないのですから、それで今の業務の方が仕事が少いから、そこに入れようというので入れた訳です。販売課の仕事は忙しいのです。
○城間盛善君 この臨時業務部の職員の給料、その他予算面は局とは別個ですか。
○松田賀哲君 それは中央政府から出る予定です。
○吉元榮光君 第十八条の前段も当分入れた方がいいんじゃないのですか。
○松田賀哲君「商工局に当分の間臨時業務部を附設し米国政府より補給される援助物資を管理し且つ琉球貿易庁の清算を行わしめる」
  (書記長川畑秀志君「附則」朗読)
 (附則)
 「本法は公布の日から施行する。但し本法中一九五〇年八月四日付琉球列島米国民政府布令第二十二号に抵触する第二条第一項、第三項、第四項、第五項、第六条第五項、第十項、第九条、第十条、第十一条、第十三条及び第十四条の規定は別に琉球列島米国民政府布令を以て政府にその権限の付与のあった日から施行する」
○城間盛善君 この附則で見ると我々は布令に明かに抵触する法律を立法しようとすることになるのですが、これは「本法中第二条第一項云々の規定は別に琉球列島米国民政府の布令による権限の付与があった日から、その他は公布の日から施行する」としたらどうですか。
  (「賛成」と呼ぶ者あり)
○冨名腰尚武君 米国援助物資という云い方ですが、米国を援助するための物資みたいに見えるのですが、米国対琉援助物資という風にしたらどうかと思います。
○吉元榮光君 第二条の第六号にもありますね。
○松田賀哲君 第二条の第六号と臨時業務部のところの「援助物資」とあるのを「米国対琉援助物資」と訂正していただきます。
○議長(泉 有平君) これで商工局設置法の逐条審議を終りまして、尚委員会の方で御研究をお願い致したいと思います。これで本会議を終ります。
  (午後四時十七分散会)

  出席者
   議 長  泉  有平君
   参 議  松田 賀哲君
    〃   與儀 達敏君
    〃   城間 盛善君
    〃   冨名腰尚武君
    〃   大濱 國浩君
    〃   吉元 榮光君
    〃   田畑 守雄君
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