戦後初期会議録

組織名
琉球臨時中央政府立法院
開催日
1951年12月07日 
(昭和26年)
会議名
第1回立法院本会議 1951年12月7日
議事録
第一回立法院本会議会議録
        第六十九日目

 一九五一年十二月七日(金曜日)
 午後二時四分開議

議事日程
 一、自動車税法(一読会)
 二、傍聴人規則(三読会)
 三、立法院公聴会規則(三読会)
 四、統計法(一読会)
 五、統計局設置法(一読会)

○議長(泉 有平君) これから本会議を開きます。十二月五日附けで冨名腰参議から自動車税法について制定方の発議がありましたが、これを議題にしたいと思います。冨名腰参議の方で御説明をお願いします。
○冨名腰尚武君 自動車税法についての発議を致したわけですが、発議理由について御説明致します。
 先ずメッセージに添附された当局の参考案について色々研究した訳ですが、琉球列島に輸入される乗用車に対して、或る程度まで輸入制限の処置を構ずる必要があり、それはもっぱら琉球の商業ドル資金の放漫な使用をいくらかでも押えていくという趣旨からその必要が認められると考えた訳であります。従って輸入税法の形を取ってありますが、その趣旨はあくまでも輸入防遏処置を取り、ドル資金の使用をいくらかでも縮めるという点に重きを置いてこの法案を作成した訳であります。その間軍との色々な折衝面の問題もあるし、又課税対象についてどうするこうするという細い点もありますが、これは後程の説明に譲って、一応発議の理由として以上の点だけを述べておきたいと思います。
○議長(泉 有平君) では議案の朗読を致させます。
  (事務局長比嘉良男君「法案」朗読)
○冨名腰尚武君 この案について説明致します。乗用自動車税法案の立法要請のメッセージが出て、その立法処置に関して附託された財政金融商工委員会はずっと委員会を開きましたが、先ず当初委員会で問題にした点は、この法案が必ずしも政府歳入を目的とした法ではない。いわば乗用車の輸入禁止の法である。それなら敢えて税法という観念でなく、別途の処置を構じてもよくはないか。所謂要請されたメッセージに対して、必要があるかどうかという点が論議されましたが、その点については民政府の財政部の係官のマグナソンと意見を交換した結果、向うの言い分が輸入禁止の処置を講じた際税法という形を以てやり得るということを原則的に承認出来るかどうかという質問がありましたが、これは世界各国の例がないわけではないので、我々としても不当な所以の根拠がないので、原則的には税法の形でやるということを認めるということになった訳であります。結局は、この輸入禁止処置を税法という形で持っていくということは委員会も諒承した形になりました。そこで立法案の根本趣旨は贅沢な車の輸入禁止を阻止(ママ)するという所にある訳ですが、その方法として、これに課税すると、方法で目的を達成しようという点でメッセージを受諾するという結論に到達しました。次に問題になったのは、財政局から参考案として添附されている内容を見ると、この税法案は差別待遇法案になる恐れが多分に認められます。即ち財政局案には、この課税義務を負うものは、琉球人であるという明確な規定はないのでありますが、その第一条に非琉球人から譲受けた場合という表現があって、それから推して見るとここの課税義務を負うものは琉球人だけにかかるという風に考えられる訳です。その場合委員会が一番懸念したのは、講和会議が発効して非琉球人が琉球経済圏内に於て活動するようなことが、今後起り得る訳ですが、その際琉球人のみに課するということは経済活動の面で極めて不利な立場に立たせる。そういう意味で我々としてもこれを差別待遇法案と考えた訳です。その点について財政部のマグナソン氏との意見交換では、その際氏の方からも将来琉球経済圏内に入るものは、これを課税してもいいじゃないか、自分はそう思う。責任を持った答えではないが、という話もあったので、委員会としては努めてこれが差別待遇法案にならないように立案しようという方針を採った訳です。
 次に審議の要点になった点は、財政局の案によると輸入される全ての自動車となっています。自動車だけではなく、三輪車、オートバイも含むとなっていたのであります。列島内に於ける交通機関を考えた場合に、三輪車というものを考えて乗用三輪車は課税対象にされるのであって、貨物用のものは除外されています。所が実状を見ると三輪車が簡単に乗用車に改造されて用いられているというのが実状であります。結局乗用車としての三輪車を取締まるとしても、貨物三輪車を入れて、これを乗用に使用するということになると、何ら乗用三輪車の輸入を阻止することによって商業ドル資金の使用を軽くするということは達し得ないという点が出てくる訳であります。同時に、戦前琉球人は自家用車としての人力車を相当持っていましたが、今日の交通情況を見た場合、戦前みたいに人力車ということは好ましくない。又、今後日本人以外の人達が入ってくるということを考えた場合、旧世紀の交通機関を奨励していいかどうかも疑問が持たれるという点から、三輪車を除外しようと委員会では考えた訳です。それから自動自転車についても、戦前の実状を見た場合、沖縄に於てもこれを所有した人はほんの二、三人に過ぎない。仮に自動自転車の多量輸入があることが考えられた場合は、警察その他官庁用として輸入以外は想像されないのです。従ってその微々たる輸入品であるオートバイまで課税対象とする必要はないじゃないかという結論に達した訳であります。尤も三輪車にしても自動自転車にしても、委員会としては表面上の理由はこうでしたが、軽車輛は住民の利便のために課税しないで、出来るだけ入れるものは入れさした方がよかろうという気持もあった訳です。それから原案には部分品にも自家用車の修理、保繕のため必要な部品も課税対象に入れていました。所が、これが全て対象になるならいいが、特殊業者の所有する自動車の部品に対しては免除するという形になっています。従って、特殊業者用の修繕部品だという名目でいくらでも輸入出来る。一方では乗用車の部品は課税するとなると取締り面に相当な困難があるという面から見て、部品も全部課税対象からはずすということに結論つけた訳です。但し、その際滅多に起り得ないこととは思いますが、モーターからボディーまでも部品として輸入して列島内で新車又は中古車が組立てられることが予想されます。そこで財政局案にはなかった組立て自動車にも課税するという風に挿入して、その代り課税対象としての部品を削除した訳であります。それから内容的な面から申上げますと差別待遇案にならないよう努力して、米国の官吏、軍人、軍属と非琉球人をはっきり限定したのであります。米国官吏という表現をしたのは、信託協定が成立した暁に陸軍省から国務省に管轄が移った場合、軍人でない官吏も来るかも知れないという想定の下に官吏を入れたという形になっています。
 税率についてですが、初め我々が課税対象にすることを承認した普通の乗用車に関しても小型車輛を区別しようという意見も出ました。例のダットサンと形のものであります。これはダットサンは五十%にするとか普通の高級車は七十五%にするとかして課税に段階を設けて小型車輛と高級車は区別したらという話も出ましたが、審議の結果、そこの所は一律に七十五%にしようじゃないかということになって話が纏まり税率に関しては禁止処置法であるという趣旨に基き原案の七十五%をそのまま委員会でも採用することにしました。
 それから発議案の第十条、第十一条の刑罰規定ですが、これは上訴裁判所の意見を聴いてからにしようと思って空けた訳であります。原案では第十条が十万円以下の罰金、三年以下の懲役、第十一条が一万円以下、三年以下となっています。なお、局案の方には第十条の逋脱を図ったものの追徴規定はなかったのでありますが、新に委員会で付け加えたのであります。
 大体、立案の経過並に内容についての説明は一通り終えた積りです。尚、御質問があれば伺いたいと思います。申し遅れましたが添附してある横書きの文は参考として差上げたのであります。
 もし今日発議した自動車税法案が、大体二読会の途中ぐらいでこれで良かろうという形にでもなれば、軍に対してここの意見を具申する必要があるのです。と言うのは、マグナソン氏との会見の際、向うからルイス准将に院として交渉した方がよかろうという説明があったので、この案を添えた訳であります。従来はSOPの段階では当該部局を通じて軍との折衝を行って来ましたが、この書翰を委員会名で出すか、議長名で出すか、要するに、立法院が直接交渉した前例がないので、この面も会議の際に一応お諮りしたいと思って添附しましたから御諒承願います。
○議長(泉 有平君) 休憩致します。
  (午後二時三十二分休憩)
  (午後二時五十三分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。今の冨名腰参議の説明に対して何か質問はございませんか。
○吉元榮光君 質問はございません。
○議長(泉 有平君) ではこの乗用自動車税法案は財政商工委員会の方に附託致しますが、異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) では財政商工委員会に附託致します。引続き議題の第二は立法院公聴会規則ですが…。
○與儀達敏君 傍聴人規則と一括して上程したらどうですか。
○議長(泉 有平君) では決議第六号公聴会規則と決議第七号傍聴人規則を一括して審議致します。
○城間盛善君 前に逐条審議まで済まして英文に直して提出しました。これは立法院に当然与えられた立法院自体の規則であるので、別にSOPの必要はないのでありますが、前の立法院規則と同様、一応は連絡官の意見を求めた訳でありますが、二つとも大体これでいいという事になっていますが、一つ二つ申上げたいことがあります。
 先ず公聴会規則の中で、第五条に公述人という言葉が出て来ますが、これを気にしていました。普通の人が議会で意見を述べる場合は、証人じゃないか若しくは委員会で質問に答えるだけではないかということを云っていました。この公述人の場合は、必ずしも質問だけということはなく、予め提出した書類によって案件に対する賛成不賛成の意見を述べるだけの自発的なもので、我々の考え方では普通の証人とは違うということを説明しておきました。そういう意味をお含みの上で、これの決議をお願いします。
 それから傍聴人規則ですが、これについては色々な話合いがあったので、大体の模様をお伝え致します。第一条に退場の際係官に返さねばならないとありますが、これでは紛らわしい。傍聴席を離れる時か若しくは建物を出る時か、若し傍聴席を離れる時と解釈すると用足しにでも出る時取上げると面倒臭い事が起るということを云っていましたが、一方ゼンキンスはこのままでいいだろうと云う事を云っていましたので、このままになったのであります。
 それから第三条に身体検査があるが、これを実施した場合困ることはないかという事でした。それでこれは必要と認めた時だけとなっているから大丈夫だと云っておきました。それから傍聴券交附の場合だが、参議を通じてやってもいいということで、第八条にそれをはっきりさせることに致しました。それでここだけを修正して御決議をお願い致します。
○議長(泉 有平君) 今の第八条を「事務局長がその員数を定め直接又は参議を経て」と挿入して異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) では決議第六号立法院公聴会規則、決議第七号傍聴人規則は一括して採決したいですが、この修正案に賛成ですか。
  (「賛成」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) では修正案通り制定することに致します。次に、議題第四、統計法案が與儀参議から発議されていますので、これを議題に致します。又統計局設置法案を出されていますが、この二つは関連性が深いので一括して上程致します。両法案とも十一月七日に主席メッセージを受けて、十一月八日本会議を開き特別委員会に附託した案件であります。
○與儀達敏君 統計法案並に臨時中央政府主席室統計局設置法案は、特別委員会で研究を附託されたので、委員会を開き研究した結果、両法案とも立法の必要があると認め、本日発議した訳であります。その発議の理由を申上げます。
 現在設置されている統計局とこれが実施する統計調査の議案と方法を示す所の立法は米国民政府布令第四十四号で行われています。従って今回主席メッセージによって臨時中央政府行政主席統計局を設置することになっているので、布令第四十四号に代る設置法並に統計調査を実施するための基準法を立法する必要が生じたので、ここに両法案の立法を発議したのであります。いずれ説明の時申上げますが、この基準法とも云うべき統計法案を発議しましたが、大体の立法の骨子は次の通りであります。統計局の参考案を審議研究した結果、単一統計組織を採用した方がよいという結論に達したので、ここに発議してあるものも単一制度を貫いたものであります。尚統計法が住民に申告の義務を要求しているので、日本の指定統計の観念を是非ともこれに織り込む必要があるので、主席の承認を得てこれを公示した後調査を実施させる。従って、住民にはそれだけの義務を負わせるという行き方を取ったのが立法の骨子であります。なお、単一制度を取った関係で、これが万全な運営を期するため政府各行政各局に統計調査を委任するという便法をも加味した次第です。尚、是非ともやらねばいかん調査を単一制を取ったがために途が絶たれる恐れがあるので、主席に進言する途をも開くという建前で立法した次第であります。又、統計の本質上から統計調査の結果は原則として公表するということにしてあります。大体、以上の事で統計法の立法案を作成して委員会の結論として立案が出来たので、本日発議した次第であります。尚、設置法に於ては臨時中央政府職員任用令にも明示されているので、そういう任用令に基く原則を維持するために、あくまでも局長、課長という線で進み、参考案には副局長が案としてありましたが、これを削除しました。細部に亘っては、後から説明することにして、立法の必要があるという事だけ申上げて発議致します。
○議長(泉 有平君) 一応朗読して貰います。
  (調査員武山信夫君「統計法、統計局設置法案」朗読)
○議長(泉 有平君) 第五条の上の一から五までの数字はミスプリントですから削って下さい。それから第十二条の地方支局の一と云うのもいらないから削除して下さい。
○與儀達敏君 統計法についての委員会の経過をあらまし報告致します。統計法について一番問題となったのは、統計法が単一組織をもって実施される点であります。日本のように複合性の統計調査をやるのと違って、琉球では単一の統計組織をもってやろうというのであります。単一制度というのは、統計局だけが統計調査をやり、他の政府各行政機関は統計調査はやれないという一つの組織をもって統計を扱おうという訳で、従ってこれが実施運営の面に於ては各行政局が政策を決定するために各自でどうしてもやらねばならない調査、即ち業務資料とここに統計法の対象となる統計とをどうして区別するかという難点に逢着しました。又、一本の統計機関でやっていくので、これが実施面に於ても幾多の困難性にぶつかることも予想されます。従って統計局の参考案では、先ず第一条で統計調査を可能な範囲に於て単一制度の体系のもとに置こうということで可能な範囲ということを前提にしていました。従って各局行政機関が単一制度ではあるが、行政各局がやり得るように余地を残して、その時には事前に主席の承認を求めてやるという行き方を取っている次第でありまして、この単一制度をもって実施する統計というのが第一の問題になりました。委員会としても前後五回に亘って検討の結果、統計局とも意見を交換した結果、単一組織を採ろう、そしてその線に沿って統計法を立案しようと云う態度を決定した訳であります。
 従って、単一制度の陥りやすい所の政府の他の機関がやり得ないようにしたら今の過渡的な時に支障を来す恐れもあるので、単一制度は採るものの、又一面では政府行政機関にも委任して統計調査をさせるという行き方を委員会でも採って来ました。これが根本的な問題で単一制度ではあるが各局でやった方が適当であるという場合は委任する。又、単一制であるために他の局などがやろうと思う事項があった場合は統計法が出た関係で統計局以外の所では出来ないからこれを救済するために主席に進言して統計調査をやらせるという構想を採ったわけであります。従って統計局の参考案は根本から単一制を貫く方法として変更を見た次第であります。統計局案は可能な範囲の単一制、従って他の局がやろうという場合は事前承認を受けるという行き方です。この発議した統計法は原則としてあくまでも単一制を貫く、そして統計局以外の各局がやる場合は委任させる。又進言しても出来るという風に変えました。原則としてどこまでも単一制度を貫くことを考えています。従って住民に統計の真実性を把握するためどうしても住民に申告の義務を負わせるために公示させるという行き方を採りました。日本のように統計委員会があって、ここで指定統計を決定するとよろしいですが、ここではそういう委員会の構想はしておらず、主席の承認によって決定するという行き方であります。
 大体の根本問題はこれだけですが、立法技術として参考案の条文の配置を変えて形を整えてあります。勿論、実地調査、秘密の保護それから実施に於ける各機関の協力などの行き方は日本のものを参考にして制定しました。
 統計法については大体以上の通りですが、統計局設置法で問題になった点は統計局の案には副局長制を採っていましたが、それは全員一致で削除することに決定しました。統計局の同意も得ています。次は機構に於ける課の問題ですが、統計局の参考案には六課であって企劃弘報課を研究弘報課とし、又経済、農林を経済第一、第二課と修正しました。ここによく検討を加えねばならない問題として企劃弘報課の場合ですが、我々は企劃弘報課を統計調査の全企劃をやるという意味に解釈して企劃弘報課が全ての企劃面の仕事を各課から取上げると思っていましたが、統計局と話合った結果、企劃の綜合調整という意味ではなく統計調査をやる方法の企劃的検討、所謂数理統計を用いてやる統計をどのようにして真実な正確な統計にするかという調査の方法の科学的研究をやる必要が是非あるという結論に到達して企劃弘報課を研究弘報課としたのであります。所謂あくまでも統計調査の方法の科学研究をする、統計調査の結果を綜合的、分析的に研究を加え、併せて弘報の仕事をさせるというので、この課をおいた訳であります。従って、研究弘報課はそういう考え方を基にしておいた訳でありまして、全体の上に立つものではないのであります。
 後は逐条的に申上げるのが便利がいいと思いますが、根本的なものは以上のものであります。尚行政主席室統計局という考え方ですが、行政主席事務当局の意見も聴いた結果、事務局も統計局も同じ機構でなければならないと言うので「行政主席統計局」と修正したのであります。大体設置法によって設置される統計局の人員は百七十名が予想されており、年間の支出は大体百七十万円を予想しています。以上で設置法のあらましの御説明を終ります。
○議長(泉 有平君) 両法案について御質問はありませんか。
○城間盛善君 単一制度の原則によって出来た案だということは分りましたが、他の局若しくは市町村が何らかの統計を作りたいという場合は、全て主席の認可を得なければ出来ないということになる訳ですか。
○與儀達敏君 政府機関がやる場合は必要ですが、市町村がやる場合は必要ないと思う。民間も同様です。
○田畑守雄君 単一制を採ることによって人民を相当拘束していると思う。同時に反対に於ては委任の条が大きくなっている訳ですが、そうすると委任事項を乱用することになると統計局の人員に大きな問題が生じはしないかと思うが…。
○與儀達敏君 そこは主席が承認を与えてからとなっていますから…。
○田畑守雄君 個人を拘束しているが、その点私は余程考えて欲しい。
○與儀達敏君 委任の場合は、主席が公示するということになるから、あれもこれも委任するということにはならない。そこは主席に信頼する他はない。又、住民の拘束については、琉球の政策の樹立のためこれこれの統計は必要であるとなると、それには虚心坦懐な申告がなければならない。それで住民も進んで真実を申告する。従って、住民には秘密の保護をしながら実地調査者をある程度法によって押えていくという風に。
○田畑守雄君 これを一通り見ると官尊民卑の気があるように思うが…。
○松田賀哲君 委任の乱用の場合はどうなるかということだが、日本では委員会があってさせないようになっていますが、ここではない。しかしそれは単一制度を採る以上仕方ない事だ。
○冨名腰尚武君 委員長の説明を補足致します。先程委任権の乱用のということを考えた場合、統計局の定員にも考慮を払わねばならない面があるという風な御質問ですが、委員会としては寧ろ統計局に委任権限を与えないで全てのものを統計局にのみやらせる場合は人員、予算は極めて膨大なものになるということを考え、それである程度の制限事項を設けてその範囲で委任権を与える代り、向うも膨大な人員、予算なしにやれるということを考えたのです。
○田畑守雄君 一応はそれも考えられますが、一方では人民をこれだけ拘束しているから否が応でもやらないといかん。それにもって来て委任権限が大きくなるとますます統計局は仕事をせんでもいい事になる。
○冨名腰尚武君 原案では主席の承認さえあれば出来ることになっていましたが、そうすると結局統計局の仕事は能率を上げ得ないということになると具合が悪い。又、単一制度というものは壊れるという面でどこの局も出来ないということにして限られた所だけやらせるということにしました。
○田畑守雄君 分かりました。
○城間盛善君 根本問題として単一制度という原則に立っていますが、この制度を採った根本的な理由は委員会でも検討されたことと思いますが、改めて説明していただきたい。各局でもやる、統計局でもやるということになると重畳する所もあるし、又、各局で専門家でもない人が不充分なものを作ってそれを基礎にして政策を作ると結局自体まで欠陥が出るということも考えられるが、それを是正するということについても考えておられるか。
○與儀達敏君 統計技術者を集注して統計局の強化を図ること、それが単一制度を採った理由の一つであります。なお、琉球が比較的小範囲であるから日本みたいに範囲が大きいのと違って比較的スムースに行くことが予想されます。従って、予算面に於ても削減が計られると云う点もあります。統計局としては真の統計をどうしても作らねばならないので、技術者の養成なども必要ですが、差当り統計技術者は分散さしておくよりは、一つの局に集めた方が統計局が考えている単一制度もうまくいくという結論に達した訳であります。統計局の方からもそういう理由書が付けてあります。
○城間盛善君 実際問題として例えば貿易庁辺りで政策樹立のため統計が必要でありそういう場合に各局からも統計調査を要求が出来るということになっています。資料は当然やれるが何にしても別個の機関にさせねばいかんという点で、技術問題から又可及的速に、そしてその欲するものを作れるかどうかというのが疑問だが…。
○與儀達敏君 統計局の統計は限定されています。つまり、基本的な統計調査、しかも広範囲に亘り、又、周到に用意された計劃に基いてやるものを対象にしている訳です。本法に於ては、これこれは是非調査する必要があると主席が認め、承認を与えたものと限っている訳です。
○議長(泉 有平君) 休憩致します。
  (午後四時十八分休憩)
  (午後四時二十分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
○松田賀哲君 私から委員長の説明を補足致します。各局が必要とする時は、進言することが出来ることになっています。そうすると行政主席がいいと認めた時は第七条の第二項で委任することになっています。又、そういう広い意味での調査でなくても日常必要とする部分的な統計については業務資料として別に規則で定めることになっています。この業務資料と統計の区別については、委員会でも問題になりましたが、それについては向うがはっきりさせると話していますし、その辺の事については規定が出る筈です。
○冨名腰尚武君 統計法による統計というのは、私はこのように解釈しています。委員会の意見も同じでしょうが、所謂数理統計技術をもって作成する統計という形を意味しているのであって、普通一時に我々が通俗に統計と称しているものは、統計法の概念に全部入るかどうかも疑問です。結局数理統計理論に基き間違いない統計を作ることが大切です。ライス博士が「日本の統計は量的には豊富だが、質的には貧しい」と言ったそうですが、これからは質的にも恥かしくない統計を作るためにやっているのであって、今差当って一つの局が仕事をする上に必要な数字を持ちたいという場合は、それがいくら急を要するものでもこれを完全な統計にしようとする場合は相当な日時を要するので、そういう通俗的なものは業務資料という考え方をして、それに関する限りは各局でやってよろしいという形にしてある訳です。尚、ついでに申上げますと、企劃弘報課なるものは委員会としても一応は取り潰しましたが、向うの説明によって研究弘報課として復活させたのもどこまでも数理統計技術に則って質的にも百%立派な統計を作るという所を統計局の方から説明があって納得したのであります。もっとも立派な統計技術員が得られるかどうか、又、実績を上げ得るかどうかは今後の問題で、今簡単にこれを保証することは出来ませんが少くとも立案の趣旨はそこにあると思います。
○城間盛善君 一方では単一制度を採っている。その場合、統計局で扱う統計は通俗的なものと違った統計であるということになると、結局各局でも業務上必要な調査が出来る。業務資料としての統計が出来るということになると、結局、田畑参議の話と関連しますが、例えば調査局が統計局に併合されるということになるが、今までやっていた農林省の調査局の仕事になるか、それとも統計局の仕事になる訳ですか。
○與儀達敏君 それは附則の方に農業センサスがあるが、それをそのままこの統計局に来る訳です。
○城間盛善君 根本的な質疑はこれだけです。後は逐条審議の際やります。
○議長(泉 有平君) 他にございませんか。では一般的な質疑はこれで打切って、両案とも特別委員会に附託致します。
○松田賀哲君 動議を出します。御承知の通り十二月中に八つの設置法を作らねばなりませんが、従って早くその草案を出して貰わねばなりませんがその点を一つ…。
○議長(泉 有平君) 今の動議に同様な感を深くするものであります。先ずメッセージが出ても取扱いの技術面を考えていかねばならないので、休会に移る期日をはっきりして欲しいという文書を主席に出してあります。尚、側面的にも今の話を行政府に伝えて出来るだけ促進したいと思っています。
○松田賀哲君 ルイス書簡では十二月中にやることになっていますが、それを訂正させる訳にはいけませんかな。
○議長(泉 有平君) 恐らくそれは出来ないでしょう。
○松田賀哲君 そうするとどうしても十二月中にはやらないと…。
○議長(泉 有平君) だから設置法に関する限りは十二月中に向うは出さねばならないが、出す限りは我々の審議可能な範囲で出して欲しいと思っています。
○松田賀哲君 休会が何時からかということをはっきりさせて欲しいということになると、それは十二月中に審議をしなければならないから、かねて通り一月から休会になるんじゃないかな。これが十二月中に出来ないとなれば休会を延ばすということも出てくるが、十二月中に是非やらねば…。
○議長(泉 有平君) 休憩致します。
  (午後四時三十分休憩)
  (午後四時三十五分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。今の松田参議の動議に対して行政府とも連絡を取り仮局長に対しては出来るだけの協力をするようにということを行政府の方にここの意志をお伝え致します。ではこれで閉会致します。
  (午後四時三十七分閉議)

  本日の出席者
   議 長  泉  有平君
   参 議  松田 賀哲君
    〃   與儀 達敏君
    〃   城間 盛善君
    〃   冨名腰尚武君
    〃   大濱 國浩君
    〃   吉元 榮光君
    〃   田畑 守雄君
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