- 組織名
- 琉球臨時中央政府立法院
- 開催日
- 1951年10月20日
(昭和26年)
- 会議名
- 第1回立法院本会議 1951年10月20日
- 議事録
- 第一回立法院本会議会議録
第五十八日目
一九五一年十月二十日(土曜日)
午前十時二十五分開議
議事日程
一、立法院規則について
○仮議長(松田賀哲君) これから本会議を開催します。
議題は昨日に引き続きまして立法院規則についてであります。昨日までのところは仮議長の問題について民政府のセイファン氏と城間参議が打合せをすることになって終ったのでありますが、そのことについて城間参議から先ず御報告を伺いたいと思います。
○城間盛善君 昨日連絡官のセイファン博士と、昨日の本会議で保留された問題につきまして向うの意見を聴いて見たのですがその結果を御報告致します。大体要点が三つあります。第一は布告第三号の第四条に規定されている主席及び副主席、この二つの機関は第四条の規定によっては任命されるという規定になっている。若し一方が欠けた場合、例えば主席が欠けた場合、その時には臨時に副主席がその任務を遂行するということになるんだが、それが主席になるためには矢張り任命を俟たなければならんだろうとこう解釈している。又そこに従って副主席の欠員を生じて来るがその場合には議長はこちらで互選しなければいかん、然しそれはあくまでも任命までの期間だと解釈している。何れは新たな主席を任命するか或は副主席をそのまま任命するか何れかになる。若し副主席を主席に任命した場合には更に副主席を任命するということが第四条からは解釈できる。此の解釈に対するセイファン博士の答えははっきりしておりました。これについてはこの第四条ではただ初回の主席、副主席を任命するという規定があるだけであってその後若し欠けた場合にはどうするかといったら、そういった場合の規定は全然含まれていない。それはこの布告によって民政副長官が拘束されるというような書き方はしていない、こう言っております。何でもセイファン博士自身が草案されたようですが、つまりどちらか一方欠けた場合にはどうなるかということを規定した場合にはこの布告によって逆に民政副長官を拘束することになるのだが、そういうことはその意味でやっていない。その時は副長官の任意である。こういう風にいっております。ただこれだけは言えるだろう。アメリカに於ける場合と違って中央政府の場合は主席、副主席は任命という形式である。布告の存在する限りは常に間違いない。ただその任命の方法はどうなるかということは規定されていない。或は副長官はそのまま任命するかも知れないし、或は別の人を持って来るかも知れない。その場合は発生した時に副長官の自由裁量の余地を残してある。こういうことであった。
第二にアメリカに於ける実例との関係を聴いてみたが、アメリカでも副大統領制を布いて副大統領は国会の議長の任務をしている。現にルーズヴェルトが死んでその時の副大統領のトルーマン氏がその後を継いで大統領になった。あの場合はどういう方法であるかといったら、その場合には大統領も副大統領も選挙でありまして、次の選挙までは補欠選挙はない、そのために副大統領を置いてある。任命でないから副大統領は空席のままになる。そして上院の議長はヴァンデンバーグという上院の議員が仮の議長として議事を運営していた。その場合の名称は仮議長、そういった言葉がついております。そして矢張り上院議員で議長の任務を遂行しながら表決権を持っている。この点が副大統領と違う。そのために副大統領がやっている議長とは性質が違うということでありました。第三に私がこの改正案を作成する場合には主席、副主席は共に任命であるということが確定しているのだから若し一方が欠けた場合に、例えば副主席が欠けた場合、こういう場合にはその席を埋めるには矢張り任命によるべきだと考える。その任命までの期間、仮に参議の中から議長を選挙して議事の運営に当らせるというのだが、あくまでも表決権を持つ参議として考えているというので仮議長としたが、ただ疑問に思うのは英文の原文に「司会者を選挙する」と書いてある。これを我々の規則に仮議長とはっきり書くことはこの指令の趣旨に反することはないだろうかということをきいたら、セイファン氏はpresidingofficerと書いたのは立法院にある程度の自由を与えてあるのだ。その場合にはっきり議長と呼ぼうが仮議長と呼ぼうがそれは任意である。その意味ではっきりspeakerとは書かない。そういった書き方で名称の選択の自由を立法院に与えて議長と呼ぼうが仮議長と呼ぼうがそれは立法院の自由である。こういうことでありました。以上であります。
○吉元榮光君 表決権の外に採(裁カ)決権はない訳ですか。
○城間盛善君 それは聞きませんでしたが、二票行使は出来んのじゃないですかね。
○田畑守雄君 そうすると名称はどうでもいいのですか。
○城間盛善君 結局日本語の問題で副主席が議長であろうと、こちらで選んだ議長であろうと臨時議長であろうと、仮議長であろうと皆presidingofficerだから皆司会者となるのです。
○仮議長(松田賀哲君) 外に御質問はありませんか。今の城間さんの御報告に対して…。
○冨名腰尚武君 主席が欠けた時に副主席がその職務を執行すると布告にはあってもずっと副主席を主席として任命するか或は別に外の人を主席に任命することもあり得るかも知れない。そのまま副主席を主席に任命することはあり得る。又副主席の場合は欠けた場合に改めて任命するか、しないかも、又副主席が主席に任命された場合に別に置くか置かないかまでは副長官を拘束していない。だからアメリカ流による、自然に副主席が主席になり副主席が空席になるということは分らん訳ですね。それは副長官の裁量に属する訳ですね。
○城間盛善君 それはどうなるか分らん訳です。
○仮議長(松田賀哲君) ちょっと休憩します。
(午前十時三十六分休憩)
(午前十時四十分再開)
○仮議長(松田賀哲君) 再開します。
○冨名腰尚武君 昨日の懸案はセイファン博士からはっきりした、布告なり指令なりの解釈を聴くというと、只今の城間参議の御説明によってはっきりしたように思います。それで昨日の本会議で保留していた、第二条、第三条、第四条、第五条に於ける議長、仮議長という名称のつけ方或は仮議長の定義といったようなものはすべて改正案のままで妥当だと思います。
○仮議長(松田賀哲君) 如何ですか。
(「異議ありません」と呼ぶ者あり)
○城間盛善君 もう一度第三条以下の逐条審議をやったらどうですか。一括して討論しただけで逐条審議はまだなんですがね。
○仮議長(松田賀哲君) それでは疑問の点ははっきりしたようでありますから、第三条以下を逐条審議することに致します。
(事務局長比嘉良男君「立法院規則第三条」朗読)
○城間盛善君 元の規則の第十条の第二項が削られております。内部警察の問題、これは現在のところ中央政府に警察はないからというので削ったのであります。如何でせうか。
○冨名腰尚武君 旧規則で内部警察権をこっちに持って来たのは規律の章を設けるか設けないかということで特別委員会の時に色々問題になって規律の章を特に設ける程もあるまいということになったのだが、然し傍聴人が入って来る場合に内部警察権を一応は持たなければいけない。これだけは挙げなければいかんだろうというので条文の整理上、ここに持って来るのは工合が悪いと思ったのですが、無理をしてここに入れた訳ですがその必要があるかどうかというのは矢張り審議の必要があると思います。議長の職務権限の中にそれを入れるか入れないか…。
○吉元榮光君 日本の衆議院規則にはどうなっているのですか。
○冨名腰尚武君 国会法には「規律及び警察」というのが独立の章として設けられております。
○城間盛善君 これを書かなかった理由は議長の職務権限の第二項に「議長は院の秩序を保持する」とあるので、これはすべてを包含する、こういう解釈をとった訳です。
○與儀達敏君 それで傍聴人規則を作ればいいと思う。
○仮議長(松田賀哲君) 如何ですか。御意見ありませんか。
○冨名腰尚武君 決議案のままでいいと思います。
○仮議長(松田賀哲君) 御異議がないようでありますから第四条に移ります。
(事務局長比嘉良男君「立法院規則第四条」朗読)
○冨名腰尚武君 今ここに議長、仮議長とはっきり二種類ある。行政副主席たる議長と参議たる仮議長と二通りの職務を行うものが出て来る訳ですが、仮議長の職務については議長の職務を行うという風に、第三条の議長の職務権限が与えられることを第五条第一項によって規定している訳です。然し第四章は議長の権利になるのですが、権利に関しては仮議長の場合には謳っていないのですが、この第四条の条文を「議長又は仮議長」といった風に入れるべきではないかと考えます。
○吉元榮光君 議長が委員会に出席し発言出来ることは、第五条の仮議長の場合は、議長の職務をすべて行わしめるということを規定してあるのですからいいじゃないかと思いますね。
○冨名腰尚武君 議長が委員会に出席発言するのは職務の執行であるのか、議長の特権であるのか。特権だと解釈すればその特権を仮議長にもはっきり与えるように規定しなければいかんと思う。
○大濱國浩君 仮議長は当然発言する権利があるのじゃないですか、参議だから。
○冨名腰尚武君 所属の委員会なら出来るが、すべての委員会に於てですよ、議長というのは特にこういうものを謳わなければならないのは行政副主席は意見を述べたり討論したりする権限はない訳ですからね。議事を司会するための発言はなし得るけれどもそれ以外には出来ないというのが建前になっているが、本会議に於ては議事を統裁するだけの発言は出来るが、然し委員会に於ては色々意見を述べることが出来るということは特別な議長に対する特権だと思いますがね。そうすると仮議長の場合は行政主席の職務は行えない。議長に委員会に関しては発言を許すというのは第四条の趣旨だと思うのですが、同時にこれは仮議長にも与えるという風にはっきりしないといけないと思います。委員会に出席して発言することも職務遂行のためのものだという風に解釈出来るならば差支えない。
○與儀達敏君 議長、仮議長が委員会で発言するのは意見発表でなくて議長が発言するのは議長として委員会の進捗状況とか或は停頓に陥った場合に委員会を鞭撻する意味の発言であってその議題についての発言じゃないと思う。議長が発言し得るということは、これは議事の進行についての発言であって意見の発表ではないと思う。これは職務執行の権限であって、意見の発表ではないと思う。
○大濱國浩君 それはどこに明示してありますか。「発言出来る」だからどうでも解釈出来ますよ。発言の範囲は規定してないのでせう。
○冨名腰尚武君 議事の進行とかいうことは委員長と議長との折衝によって出来ると思いますが、特に「出席して発言する」とありますから…。
○與儀達敏君 余り委員会の審議が長びいたりすると困るからそういうものを予想して委員会の議事が進まん場合には議長が自ら行って督励するとか或は議事の進行しない理由を聴いたりするのが「発言する」というのであって議題について意見を発表するということはあり得ないと思う。
○田畑守雄君 従来議長が委員会に出席してその議題について発言するということはまずありませんね。どういう経過になっているかということも余程のことでなければ聴きに来んのですよ。
○大濱國浩君 それならば第四条は文面をはっきりすべきですね。
○仮議長(松田賀哲君) 委員長の御意見はどうですか。
○城間盛善君 問題は二つになってしまったようですが、第四条に謳ってある議長は委員会に出席出来る。その場合に議長は、副主席たる議長の場合も仮議長の場合も、その点は差支えないのじゃないかと思うのですが、只今の発言内容についてはちょっと難しいな…。
○冨名腰尚武君 第四条を設けた趣旨はどこにあるのですか。
○仮議長(松田賀哲君) これは問題が複雑になっておりますから、休憩して全員の協議会に移したいと思います。
(午前十一時三分休憩)
(午後零時五分再開)
○仮議長(松田賀哲君) 再開します。
○田畑守雄君 第三条、第四条、第五条については、相当疑義な点があるように思いますので、二十二日まで研究して、二十二日の会議に於て討議をしたいと思います。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○仮議長(松田賀哲君) 御異議ないようですから、そういうことに致します。これで本会議を閉じます。
(午後零時六分閉議)
出席者
仮議長 松田 賀哲君
参 議 與儀 達敏君
〃 城間 盛善君
〃 冨名腰尚武君
〃 大濱 國浩君
〃 吉元 榮光君
〃 田畑 守雄君
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