- 組織名
- 琉球臨時中央政府立法院
- 開催日
- 1951年09月26日
(昭和26年)
- 会議名
- 第1回立法院本会議 1951年9月26日
- 議事録
- 第一回立法院本会議会議録
四十八日目
一九五一年九月二十六日(水曜日)午後二時四十分開議
議事日程
一、中央政府立法院議員公選計画について
○仮議長(松田賀哲君) これから本会議を開催致します。
議題は曩に中央政府立法院議員公選計画について民政本部から要請がありましたのでそれに対する答申についてであります。これは去る八月三十一日の本会議に於て、計画立案のために特別委員会を構成致しまして、その委員会に研究立案をお願いしてあったのであります。それが漸く成案を得られたようでありますから、委員長から報告をお願い致して後議事を進めたいと思います。
○城間盛善君 八月三十一日の本会議に於きまして特別委員会が設立され、私が委員長に指名されまして、この特別委員会に民政官から要請のありました中央政府立法院議員の公選計画の研究立案を委託された訳であります。
この特別委員会に於きましてはその後十数回に亘り委員会を開催致しましてその研究立案に当りやっと成案を得た訳であります。特別委員会に於きましての研究立案に当りまずその経過から御報告したいと思いますが、その基礎としては第一に八月の休会前に各群島知事宛このルイス書翰に示された項目について照会を発し、正式の回答をお願いしたのであります。この各群島知事の回答を重要な資料とし、更に各委員が休会を利用して得て来られた、各群島の世論を加えこれをまず第一の基礎とし更に現在施行中の群島知事及び議会議員選挙法、この研究と、これに昨年の選挙の経験を加えこれを第二の基礎とし、第三に現在日本で行われているところの公職選挙法、これを更に加味してこれだけを基礎として研究を進めて行った訳であります。研究に当りまして順序としてまず群島知事及び議会議員選挙法の研究をはじめまして、この中の改廃すべき事項これを更に研究し、更にこれと日本の公職選挙法とを比較研究致しまして、特に日本に於ける選挙公営、この問題を取上げて琉球内に適用し得る範囲を研究した訳であります。選挙公営については全琉を通じてこれを要望する世論がありましたので是非これを加えたいと思いまして、日本に於て行われているものを基礎とし全琉の事情に適合するものを持って来た訳であります。更にこの選挙法の研究中、特に昨年の経験から致しまして、実際の運営に当られた、沖縄群島の選挙管理委員会の委員長及び書記を証人として喚問し、その経験から疑義を生じた点或は改廃すべき点などに対する証言を求めました。それから選挙の取締、罰則の方面については、これ亦昨年の経験上これを基礎とした、警察本部の責任者を証人として喚問してその証言を求めた訳であります。
それから選挙公営につきましては特に郵便との関係が深いので郵政局長及びその係の二人を証人として喚問し、その実施の点などについての証言を求めた訳であります。
こういった、群島知事及び議会議員選挙法、日本の公職選挙法及び各証人の証言、こういうものを基礎として選挙法を研究することによって選挙の方法についての基本方針並にその資料を得た訳であります。
次に各群島知事の回答を総括し、分類してそれぞれの項目について知事の回答の趣旨並にそれぞれの群島に於ける世論の動向、こういうものを審議研究して出来あがったのが今お手元に差上げてある計画案であります。
経過としては以上申上げた通りでありますが、立法院議員公選計画案につきましてあらましの御説明を申上げますと。
第一の議員定数、これを決定致しました。基礎としては第一に全琉の総人口から見た議員の総数とその一人一人の議員の代表すべき人口数がまず適正でなければならない。次に立法院という全琉的な立法の最高機関としてその機能を発揮するのに適当な大きさでなければならないという点からどの程度の員数が最も適当であるかという点、第三に経費の問題、これら三点を勘案してここに示してあります三十一名、これが最も適当であるということに特別委員会では意見の一致を見た訳であります。第二の選挙区につきましては選挙区が小さい場合には色々と弊害が選挙運動の場合に起りやすいという意味で選挙区を或る程度大きくした方がいいという各群島を通じた一般的な世論であるということに鑑みましてもっと大きくしようということになりましたが、どの位の大きさが適当であるかという点については戦前ずっと慣用されておったところの郡、これを先ず単位にするのが適当であろうということになりました。そう致しますと大島は元来一つの郡であり、沖縄では国頭、中頭、島尻、宮古、八重山がそれぞれ一つの郡、こういうことになって、六つの郡になる訳でありますが、その中大島郡は地理上の問題、それから沖縄の島尻郡は人口が多いのとその地域内に農業地域と都市地域を含むということで二つに分けて結局八つの選挙区--郡を基礎とし地理的状況、経済上の状況を考えて--にするのが、最も適当であるということにして八つの選挙区に決めた訳であります。
それから人口との割合につきましては原則として三万人に一人ということに、これが最も適当な数であるということは第一の場合に既に考慮したことでありますが、更に琉球の特殊事情によりまして各群島がそれぞれの事情をもっている。こういう意味から各群島別の代表制をこれに加味して更に昨年発足しました、臨時琉球諮詢委員会の各群島出身の委員の比率こういうものを勘案した結果、第三項にあげてあります通り、第一区五、第二区三、第三区五、第四区六、第五区三、第六区四、第七区三、第八区二名という風に各選挙区から選出するのが、最も適当であるということに意見の一致を見たのであります。
任期としては四年を原則とするが初回だけ次回の選挙の期日の都合上四年にちょっと足りないところに止める訳ですが、選挙の期日として十月が一番適当であるということに意見の一致を見たのであります。それはその時期が農閑期であり、かつ次年度の予算審議に好都合であるという意味で第二回目からは十月の選挙にしようということになりましたので、初回の議員の任期は三年七ヶ月という風にするのが適当であろうということに一致致しました。それから更に任期につきましてはこの任期中に何れ基本法の制定ということが大体予想されます。これはルイス書翰にもあります通り基本法が出来そうである。その場合には若し基本法によって行政主席が公選されるという場合には当然布告によって解散して行政主席と一緒に立法院の議員も改選するという風に要望しようということに意見の一致を見た訳であります。初回の公選施行の時期としては一九五二年三月の第一日曜日を進言することに意見の一致を見たが、これは旧正月以後に選挙運動を開始した方が、公正に活溌に行われるという意味と、この期日に選挙して十分にルイス書翰にある要請の四月一日頃の招集に間に合うという意味に於てこれを決定した訳であります。
次は選挙法につきまして大体の項目について簡単に御説明を申上げますと、選挙権、これは居住条件を六ヶ月から三ヶ月にしたい。被選挙権は年齢は同じでありますが、選挙区が二つ以上に分れている群島ではどの選挙区からでも立候補し得るようにしたいという要望をすることに致しました。
それから次に選挙期日の告示の問題ですが、現在四十五日になっていて少し長過ぎるという意味でこれを選挙期日の二十五日前に告示した方が最も適当であるということに意見の一致を見たのであります。それから従来の選挙法ではやや不明瞭であった合法選挙運動期間をはっきりと告示の日から選挙の期日の前日までという風にして明瞭にすることにして今まで生じておった疑義を一掃したいと思います。それから選挙人名簿は現に出来ている市町村の選挙管理委員会で作成したものを利用することにして、後は補充人名簿を作って貰うという二つの点を明かにして貰うよう要望を決めました。次に立候補届出の場合の連署は止めた方が選挙運動の限界がはっきりしてよろしいということに意見が一致した。事前の運動を完全に防ぐという意味で連署を撤廃し、その代り候補者の乱立を防止するという意味に於てはそこにあげてあります、供託金制度というよりはむしろ法定得票数の限界を決めそれに附随して供託金の制度を併用することによって十分に目的を達し得るものと考えた訳であります。当選人決定の方法として従来は単に最大多数の票数を得た者を当選人とするということになっておりましたが、只今の法定得票数の問題があり、それと関連して一定基準の法定得票を得たものでなければ出来ないという条項を加えることに意見の一致を見たのであります。
尚争訟について一、二やや不明なところがありましたのでそこの改正をお願いすることに致しまして、次の選挙費用はこれは先程申上げた通り選挙の公営を建前とするので元来五円という基準がありましたものを三円にするということに一致を見た訳であります。
次に選挙公営につきましては現在日本で行われている公営の方法中琉球の事情に適合して今回十分にこれを施行し得るというはっきりした見通しのついたものだけをここに取上げて、進言することにして、ここに七項目あげてある訳であります。その項目は新聞広告と政見放送、経歴放送、合同演説会、個人演説会、選挙公報の発行、立候補挨拶状の配付などに亘るもので、この程度のことならば現在の琉球の事情にも十分適合して運営出来るものと特別委員会では認めた訳であります。
次に選挙公営の費用の問題ですが、只今あげました、項目の程度を実施するにしても大体百万円位の費用があれば出来るという見込が立ちましたので現在の財政状況からも十分出来るのじゃないかと考えた訳であります。もっともこの公営につきましては各候補者から三千円程度の分担金を納付して貰うということに決めた訳であります。
次に選挙運動につきましては只今申上げました、選挙公営の趣旨に鑑みて各候補者が一律に同じ機会を与えられて大体平等の選挙運動が出来るようにという建前から既に公営による選挙運動が許されている以上個人個人の選挙運動はある程度の制限を加えるべきであるということに意見が一致しましたのでここに出してあります、二、三の制限を加えたいということになりました。その中の大きなものは、第一に自動車、船舶拡声器の使用、そういったものを或る程度制限する。次にポスターの数とか掲示場所とかいったものを制限して選挙費用の軽減をはかると共に選挙の公正を期したい。殊にポスターの数などについては去年の選挙の際の取締関係面の方の証言に於ても相当に強い要望があったし、又先程の選挙公営の中にも無料で政見を放送し、或は挨拶状の配付をして貰うということになっておりますので或る程度の制限を加えた訳であります。
大体以上を以ちまして只今お手元にあります計画案の説明と致します。
○仮議長(松田賀哲君) 原案については今委員長から御説明のあった通りでありますが、これについて御質問はありませんか。
○與儀達敏君 只今委員長から報告になりました、中央政府立法院議員公選計画案は特別委員会に於きまして琉球の最高立法機関の議員としての本質の上からも亦これが選出方法の上からも慎重に研究し、特に学識経験を有する民間或は当局の証言を求めて細密に、而も妥当にして現在の琉球の事情に即するよう研究した結果の特別委員会の案であります。よって委員長報告通り、原案通り答申案として決定して民政官に進言致したいことを希望するものであります。原案通り決定されんことをお願い致します。
(「賛成」と呼ぶ者あり)
○仮議長(松田賀哲君) 御異議ないようでありますから、原案通り確定致します。何か外に動議はありませんか。
○城間盛善君 前に行政主席からメッセージ第三号として恒久的中央政府樹立の計画を立案して貰いたいという要請があったと思いますが、これに対する回答は―このルイス書翰に要請された―只今の中央政府立法院議員公選計画によって十分であろうと思いますので、主席宛にその旨の公文を添えて出すということにしたら如何なものでせう。つまりこれを以てメッセージ第三号に対する回答にもなるというようなことをここで決定したらどうかと思います。
○仮議長(松田賀哲君) 只今の城間参議の動議に御異議ありませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○仮議長(松田賀哲君) 御異議ないようでありますから、その通り決定致します。外にございませんか。
ではこれで本会議を閉ずることに致します。
(午後三時五分散会)
出席者
仮議長 松田 賀哲君
参 議 與儀 達敏君
〃 城間 盛善君
〃 大濱 國浩君
〃 吉元 榮光君
〃 田畑 守雄君
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