- 組織名
- 琉球臨時中央政府立法院
- 開催日
- 1951年08月10日
(昭和26年)
- 会議名
- 第1回立法院本会議 1951年8月10日
- 議事録
- 第一回立法院本会議会議録
第四十四日目(ママ)
一九五一年八月十日(金曜日)
午後三時七分開議
議事日程
一、酒類消費税法について
二、中央政府設立計画に関し立法院に対する要請について
三、休会について
○仮議長(松田賀哲君) これから本会議を開きたいと思います。出席参議七名であります。
第一の議題は酒類消費税法についてでありますが、これは既に第二読会を終へたものでありますが、昨日吉元参議から修正案の提出がありましたのでそれについて御審議を御願いしたいと思います。それで修正案を朗読して貰います。
(書記長川端秀志君「酒類消費税法中一部改正」朗読)
○吉元榮光君 私から修正の理由を申上げます。
酒類消費税は六月二十二日に第二読会を開き、その後軍との綜合調整に相当暇取って来ましたが、これは御承知の通り第十条の税率の問題であったのであります。
立法院の意見としては理論的にも正しいという訳でありますが、ただ現在の事情を見た場合に非常に煙草に於ても闇ルートの品物が相当氾濫しているという実状から考へて見まして、この輸入酒類も余り税率が高い場合には商売人は金銭のためには相当の危険を冒しても密輸入を企てるんじゃないかという理由で先申上げた通り第十条の本文は税率を百五十%にしまして、ただビールは相当闇があるので、但書を加えまして当分の間ビールは百%にしてそして闇をなくしようという考へ方からこの修正をお願いする訳ですが、若しその上にも闇を抑へることが出来ないといった場合には五、六ヶ月経過した後でも、闇が絶へない場合にはこれを直ちに百五十%とするという意味合から百%に持って来た訳でありますが、これについてはルイス准将からの証言もはっきりありましたので私も修正をお願いする次第でありまして、皆さん慎重にこの点を御含みの上で、御審議の上本案を可決していただきたいということをお願い致します。これについては尚松田仮議長、城間参議も直接ルイス准将に脱税の取締もお願いすると同時にこういう証言も得ております。その点も御含みの上で御審議あらんことをお願い致します。
尚、煙草の消費税と酒の消費税については性質上非常に趣を異にしておりますので、そのために我々は百五十%を主張して来た訳でありますが、酒が下るからビールが百%になるからといって決して煙草の税率を下るという風な意味はないと思います。その点も考へまして本案を提出した次第であります。以上であります。
○仮議長(松田賀哲君) 御意見はございませんか。
○與儀達敏君 只今の修正案の提出説明にありました、但しビールは引取価格の百%とする、この意味は、但書を入れた意味は、当分の間、酒類の闇が、こういう風に百%にしても尚続くのであったら、但書以下の修正は撤廃して百五十%にするという意味、そういう意味の下に修正案は提出されたという御説明でありますが、当分の間という趣旨で提案することは、それは記録に残し、将来の参考にしたいと思います。この点を提案者にもう一回はっきりお願いしたいと思います。
○吉元榮光君 これは今與儀参議から御意見がありました通り条文には当分ということを謳ってありませんが、ルイス准将もはっきりこれは当分という意味を含まして六ヶ月位期間を経過した後も尚現在の情勢であるならば百五十%にするという風な証言を得ておりますから、是非これを御信用下さって本案を通過さしていただきたいとお願いしたいのであります。
○與儀達敏君 今の御説明でこの点は十分に納得出来ました。この酒類消費税の設定につきましては既に第二読会まで開きまして委員長として委員会の意見も発表せられております。立法院は百五十%を堅持するという論調であったと考へております。この様に全員で百五十%を支持したものが只今の修正案を出さねばならない様になったということは、提出者としても強い信念があってのことだろうと考へるのであります。それで修正案を提出された際に綜合調整の段階で民政官府とどの様な折衝をされたか、又民政官の強い明確な信念が吐露されてビールだけは百%にする、そうした方が琉球全体の経済上からも、住民の幸福を来すということがはっきりしていると思います。そういうところをもう少し百%にしなければならなかったところ、それを御説明をお願い致します。
○吉元榮光君 今先申上げておきましたが、現在ビールは香港あたりからも闇で入って来ますし、又軍のPXからも出ておりますが、PXの取締規定の改正というのは沖縄だけでは改正出来ない。米軍全体に関するという意味で直ちにこれを改正して取締るということは非常に困難だが然し民政府でもPXと折衝して十分取締をするが然しながら税率が高い場合には、そこに闇との値段の差が非常に開きがあると商人としては動ともすれば法を犯して密輸入を企てる虞れが多分にある。こういう意味からしてこの税率は是非ビールだけは当分の間は百%にして貰いたいという民政府の意向も非常に強いので、然しながらこの修正に於ても理論に於ては勿論各位の意思通り本文に於ては、原則としては百五十%であるが、そういった闇の跋扈する関係上取締の面からしても当分の間は百%にした方が正式ルートを保護する意味に於ていいんじゃないかという強い、そういう意味がありまして当分の間は百%にビールはした方がいいということと又余り税金が高いというと闇ルートが盛になって来ると税収入の上に於ても減るのじゃないかという点も考慮されましてこの修正案を提出した訳であります。その意味に於て我々も本文は、本体に於ては百五十%ですがそういう様な状態を参酌しましてビールだけは百%と当分的な意味を含まして修正案を出した次第であります。
○與儀達敏君 只今の御説明でよく分りました。が次のことを少しはっきりさせたいと思います。百%にした理由は今の御説明では当分闇の取締が十分には出来ないが将来はこれを根絶させることが出来る。従って闇を根絶させるため当分の間、闇を抑へるという意味でも有効であるという理由でビールを百%にしたという御説明の様に伺いましたがそれに間違ないでせうか。
○吉元榮光君 その通り間違いありません。
○與儀達敏君 もう一つお伺いしますが、百%は今申上げた理由で煙草税とか将来計画されるところの税制の税率と綜合的に考へてビールの百%が妥当であるという見地から百%にしたのではないということははっきりしておりますか。
○吉元榮光君 それははっきりしています。理論上からするならば百五十%が妥当であるけれども今先申上げた通り闇を取締るために当分的の意味を含まして、他の税率とも比較すれば当然百五十%であるべきであるのです。
○田畑守雄君 今の御説明でよく分ったのでありますが、つまり当分の間百%にして置くということはその期間内に於て、つまり闇取引の防止をするための手段を強化するという意味ですか。人を増員したりしてそして防止政策を強化するという意味にとっているんでせうか。
○吉元榮光君 その意味にもお取りになってもいいのですが尚行政当局が取締るのみならず、軍とも折衝しその方面の放出も防げる手段も講じられるという意味を含んでいるのです。
○田畑守雄君 こういうことをお尋ねすることは若も百%にして闇で入るビールを抑へることが出来る様になれば、いつまでも百%に抑へられる心配はないか、ということは当分の間、現在は闇が多いから百%にするのだということは結局それによって闇防止が出来ればこれは誠にいいことだからいつ迄も百%に抑へられる心配がある、そういった場合につまり煙草の消費税との釣合が取り難いという気持ももっているので、短時日の間に、五、六ヶ月の間に取締防止も十分出来る様な機構も少し考へていただきたいと思う。
○吉元榮光君 これは既に行政当局でも煙草の密輸入も酒の密輸入も予想される訳であるが、そういった面は既に財政当局もどうしても取締を強化しなければいかんというので成案を練りつつある様に聞いておりますから、その点も併せて申上げ尚六ヶ月後に闇がまだおさへられん場合は百五十%にする…。
○大濱國浩君 結局百%にして闇がなくなった場合に百五十%にする。百%にしておいても闇が根絶出来なければ矢張り百五十%にする。これははっきりしている訳ですね。
○吉元榮光君 この六ヶ月間の間に於て再検討する機会を持ちたいと思う。
○仮議長(松田賀哲君) 外に御意見はありませんか。
○城間盛善君 昨日仮議長、委員長二人とルイス准将との会見の席に私も立会ったのですが、その点を申上げ、又自分の意見を申上げたのでありますが、その会見の席上でルイス准将は酒類消費税、特にビールの税金については二つの目的がある。一つは普通の税金に共通のもの即ち歳入の確保という意味と、もう一つは附随的に現在盛んに行われている闇行為、特にPX方面から流れ出るビールの闇行為の取締抑制という方面にも一つの手段としてこれを使って行きたい。そして六ヶ月位これを実施した上で又、考慮することが出来る。こういう風な意味のことをおっしゃっていました。つまり原則としてはこちらの主張して来た酒類消費税の税率百五十%を民政官も認めておられるし又立法院の立場にも同情をしているということをいっておられるしその点からいへば我々の立場を我々の主張を、原則を民政官としてもはっきり認めているということが、明瞭である。我々の立場を認めた上で特にビールだけは現在の闇行為抑制という面から臨時的に六ヶ月位の間こうしておこう、こうおっしゃっておられる訳です。それで立法院が、今まで主張して来た原則は原則的に民政官府も認めるただ一時的に、ビールの闇行為抑制の一手段としてビールだけは百%にしようとこうおっしゃっておられるので、我々の意見も十分酌み取られているし、又民政官のビール百%についての肚もすっかり分っておりますし、それで動かすことは出来ない状態にありますので、これが暫定的に、六ヶ月後にはこの税率について再検討の機会が来るということが明瞭でありますのでその意味に於て賛成したいと思います。
なお闇の取締、闇行為の抑制ということは結局は取締の問題であるということは、どこ迄も主張して行きたいと思います。早速、特に一番抑制の困難なPX方面から出て来る煙草、ビールの闇行為抑制という面を行政当局に強く要望したいと思います。その点についてはルイス准将にも昨日の会見の席上でPX方面から流れ出る闇行為というものは単に中央政府の税制執行上の面から取締る問題ではない。それはPXの取締違反であるし、即ち軍指令違反になる。PXから出るものを民が所持することは不法所持といふことになって指令違反である。その面からその取締は、単に中央政府の財政当局だけの責任じゃなく軍指令違反という面から見て軍の取締及び群島政府の警察そういった面も当然なさなければならないことではないでせうかということを申上げたらその点も強く考へて行こうということもいっておられます。そういう軍方面の取締と中央政府財政当局の取締の強化という面を強力に実施するということによってこの闇取引の根絶を期する。こういう方向に進めて貰いたいということを要望して会見を終りました。
○仮議長(松田賀哲君) 今の修正案についてはその通り確定してよろしうございますか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
御異議がないようでありますから確定致します。
その他の条項については別に御異議はございませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
御異議ないようでありますから原案通り確定致します。
それでは酒類消費税法の第三読会をこれで終了致します。暫時休憩致します。
(午後四時三十七分休憩)
(午後四時五十五分再開)
○仮議長(松田賀哲君) 本会議を再開致します。先に一九五一年四月二十五日附で中央政府設立手続計画に関しまして行政主席から必要な計画をたてて貰いたいというメッセージが来たのでありますが、それに関して一九五一年八月六日附で立法院受附になっております。行政主席のメッセージが来ております。
(仮議長「行政主席メッセージ第三号について」朗読)
○仮議長(松田賀哲君) それに民政府からの原文が同封によって来ておりますからこれを朗読致させます。
(事務局長比嘉良男君「中央政府設立に関し立法院に対する要請」朗読)
○仮議長(松田賀哲君) 以上の通りでありますが、これをどう致しませうか。
○吉元榮光君 それは行政法務委員会で研究していただきたいと思います。
○與儀達敏君 これについては当面どうすればいいかということについて審議したらどうかと思います。委員会付託は休会明けにして…。
○城間盛善君 ここで委員会付託すべきものでありますが、明日から休会に入りますので行政法務委員も各群島に帰るので委員会としての活動が出来ない様でありますから、委員会の研究という仕事は休会明けを待って差当りはそれ迄の準備といいますか、つまり本格的な審議前の準備としての方法を考へた方がよくはないかと思います。
○仮議長(松田賀哲君) どうですか。
(「賛成」と呼ぶ者あり)
ではそういうことにします。
○城間盛善君 私考へますのに差当りの準備として、何しろ全琉に関することでありますので、どうしても各群島責任者の意見を聴取した上でそれを参考として審議を進めて行くという方法をとった方が穏当ではないかと思います。それで差当り各群島の責任者、これは知事にするか或は議会議長にするか、両方にするか、協議で決めていいと思いますが、各群島の責任者に対してこの民政官からの要請の中にある事項に関して意見の具申をお願いするという正式文書を発送して一定期間中にこれが立法院に到着する様にその手順を先ず決めた方がいいんじゃないかと思いますが、尚そういう公文を立法院の名に於て発送すれば今度の休会で各群島にお帰りになる参議もその方面で意見の交換も出来るし、向うの言わんと欲する趣旨もよく御了解になれませうし、或は更に進んで一般の世論の調査研究ということも出来ると思います。各群島責任者に意見の具申を求めるために公文書を送るという処置をとった方がいいと思いますが…。
○仮議長(松田賀哲君) 如何ですか。
(「賛成」と呼ぶ者あり)
じゃそういう風に致します。それで今城間参議からお話のありました責任者の問題でありますが、各群島の責任者は知事だけにとどめるか、或は議会議長も含ませるか、これを決めなければなりませんが、これに対して御意見を伺いたいと思います。
○與儀達敏君 群島の責任者は知事だけに公文書を発送して従って知事が公文について群島内の意見をまとめ立法院に提出した方が穏当であると思いますが…。知事だけに致したいと思います。
○仮議長(松田賀哲君) 如何ですか。
(「賛成」と呼ぶ者あり)
○嘉陽安春君 私もそれでいいと思いますが、その際、それは当然知事として各群島ともやるだろうとは思いますが、いわゆる世論を、各群島の世論を取り纏めて送っていただくという意味の趣旨が現れるような形をとった方がいいのじゃないかと思う。
○大濱國浩君 どうせそうやる筈ですが、こちらで各界の世論を綜合して出して貰いたいという風にしてやったらどうですか。
○仮議長(松田賀哲君) その点はどうでせうか。
(「賛成」と呼ぶ者あり)
それではそういう風にします。
○吉元榮光君 特別に回答事項を求めんでいいですか。
○仮議長(松田賀哲君) 暫時休憩致します。
(午後五時十四分休憩)
(午後五時三十六分再開)
○仮議長(松田賀哲君) では本会議を再開します。
○城間盛善君 各群島の責任者、これは知事として、期限は八月三十一日迄ときりまして、間合せ事項としては、一、議員定数二、人口との割合、三、選挙区四、任期、五、公選施行の時期、六、その他選挙方法に関する要望事項という程度でよくはないかと思います。それから人口に関しましてはこちらの統計局にもありませうが、去年のものしかありませんのでなるべく現在人口を知って置く方が都合がよいのではないかと思いますので、各群島市町村別の五月末現在人口を同時に報せて貰った方が便利ではないかと思います。
○仮議長(松田賀哲君) 今の城間参議の提案に御異議ありませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
それでは御異議ないと認めましてその通り致します。
文章は議長一任にしますか。
(「賛成」と呼ぶ者あり)
○仮議長(松田賀哲君) それから、八月十一日より休会致しまして八月二十五日に再開致したいと思います。その理由は今度の中央政府設立に関する研究と同時に又盆の休みもありますので各群島にお帰りになる方もおられますしその他各群島の世論も聴取する必要もありますので軍の諒解も得ておりますからそう致したいと思いますが御異議ありませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
御異議ないと認めまして、八月十一日から八月二十四日迄休会致します。
それでは本会議を終ります。
(午後六時閉議)
出席者
仮議長 松田 賀哲君
参 議 與儀 達敏君
〃 城間 盛善君
〃 吉元 榮光君
〃 大濱 國浩君
〃 嘉陽 安春君
〃 田畑 守雄君
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