- 組織名
- 琉球臨時中央政府立法院
- 開催日
- 1951年06月13日
(昭和26年)
- 会議名
- 立法院本会議 1951年6月13日
- 議事録
- 立法院本会議会議録
第二十六日目
一九五一年六月十三日(水曜日)
午後一時四十二分開議
議事日程
一、琉球臨時中央政府郵政局設置法参考案
○議長(泉 有平君) ではこれから本会議を開くことに致します。主席メッセージ第十一号として郵政局設置法を制定せよということでありますのでこれを上程致すことに致します。郵政庁長がお見えになっておりますから、同法案の提案の趣旨、そういったものを御説明願いたいと思います。
○郵政庁長(平川先次郎君) 御説明を申上げます。今回臨時中央政府に郵政局が出来ることになっておりまして、それに現在の郵政庁の総ての機構が包含され、中央政府の傘下に於て強力にその事業が推進されて行くということは我々事業に携わるものと致しまして誠に心強く又感謝に堪へない次第であります。今度この法案を作りまして本会議に御審議をお願いするに当りまして、私は先ず郵政業務の本質或は沿革といったものから一応御説明申上げたいと思うのであります。私から申上げる迄もないと思いますが、この郵政の業務の特殊性は、その業務の本体が総て現業であります。総て現業を基礎として運営して行く、こういうところは他に一般の行政と異なるところがあると私は思うのであります。それからもう一つはこの業務は直ちに収入を持っている、その業務の運営に当って収入を獲得することが出来る所謂営業官庁である。こういうところに一般行政と異なった性格を持つものと考へる訳であります。さてこの業務の内容につきましては非常に広範囲であります。つまり郵便、電信、電話、無線電信、為替、貯金、保険年金、それに新しく気象事業が入っているのでありますが、今後は一つの国家的立場からこの事業を推進計画すると同時に又対外的にも色々の折衝或は、条約とか協定とか、こういったものをやって行かなければならん性質を持っている訳であります。それで今のところすべての取扱が少いのでありまするが、これは琉球のこの事業の復興に伴いまして急速度に増加しつつあります。これを予算面からいいますと、一九五〇年は二千万円の収入でありまするが、五二年度に於ては五千三百万円の収入が予定されているが、尤もこれは料金の値上げも伴っておりますが、然し実際は毎日毎日郵便物が増える、或は電報が増える状態でありまして、その量に於ても我々はこれから相当の増加を予想している訳であります。そういう風な形でありまして、我々は今度の機構を、これも予め軍のアーレン氏が我々の方に見えまして一応の相談を受けて、協議を致したのでありまするが、民政副長官から主席宛に参考案というものを送って参っております。我々としましてはこの参考案を基礎にしてそしてこれを翻訳致しましてお手許に差上げてある法案というものを作り上げた訳であります。尤も原文と翻訳の関係が一致しないところもありはせんかと心配している訳でありますが、又この草案を見ますと、従来の我々の観念でありまする、所謂日本的法律と比べまして非常にアメリカ式の書き方或は条文の並べ方というのがありまして、こういう点は皆さんの御審議に俟って修正すべきところはよろしくお願いしたいと思うのであります。この組織はお手許に差上げてあります様に局長、副局長、それから監察部、郵務部、電務部、資材部、経理部、気象台と五部一台ということになっております。そして秘書課を局長、副局長に直属しておく、こういう組織になっておりまするが、例へば郵務部に於ても為替貯金課、郵便課、保険年金課と分けてありますが、為替貯金と簡単にいいましてもその内容は非常に複雑致しまして、又郵便課と致しましても内国郵便もあり、外国郵便もあり対外協定もある、保険年金も簡易保険、郵便年金、こういう風な仕事をやる訳でありますが、その何れも横のかかり合いがありまして、これを総括的に調整して行くためには、どうしても部を必要とする。こういう意味合は電務、資材其の他に於てもその通りであります。こういう風なことでこういう組織が出来た訳であります。我々としては先申述べましたように、勿論こういうことは必要であり軍に於かれましてもこれが必要であるという風な考でこういう参考案が参ったと考へている訳であります。骨子としましては以上申上げた通りでありますが、尚この条文の細かいところ或はその他誤り、そういうことがありましたらその時々の御質問に答へて御説明を申上げたいと思います。又翻訳に当りましても出来るだけ日本人的な考へ方から分りいいように書換へた点もありますので、どうかこの案を慎重に御審議をいただきまして我々の希望をお容れ下され又将来琉球の郵政の発展のために御協力をいただきたいと斯様にお願して大体の説明を終ります。
○議長(泉 有平君) 今の提案の趣旨の御説明について御質問がございましたら…。
○冨名腰尚武君 これは、軍から来た英文でございますがね、殆どこの通りですか。それとも多少は、郵政庁で工合の悪いようなところを訂正致したようなところがありますか。
○郵政庁長(平川先次郎君) それは一個所あります。何条になっていますか、多分軍が漏らしたのではないかと思って加へたのが一つあります。第九条の二には原文は郵便局、電気通信工事局、測候所と三つありますが、どうしても電信局を加へなければいかんというので、つまり電信だけをやるところは電信局とでもいわなければ工合が悪いものですから、そういう風にしてありますが、その他は条文の訳し方の悪いところがあるかも知れませんが、大体内容は同じだと思っております。
○嘉陽安春君 念のためにお聴きしたいのですが、英文の“or-dinance”、これは軍の意思が立法院の審議を経て、軍が“ordinance”で出すという意味か。“ordinance”ということは書き誤りですか。こっちの方として、立法院の制定法として出来るならば、ここで“or-dinance”とする意味なのか。ここに条例という言葉がありますね。英語で訳せば、この条例(ordinance)というのは軍の布告があってそれから布令があって、指令があって、その布令という場合にも“ordinance”を使っているのですね。
例へば群島組織法を作った場合にもordinanceで出ている。あれは布令第何号でしたか、又例へば農林省組織法というのが出ているがああいう点からいうと立法院の審議を経た上更に軍に出して軍のordinanceとして出るのか、この布令というか、条例というか、ordinanceという意味は問題じゃないかと思うのですが、そこのところをはっきり立法院で出すということに話を進めているか、或は立法院で審議をして軍に出して、軍の布令が出るという風に考へておられる訳ですか。
○郵政庁長(平川先次郎君) 実は私は英語が分らないのですが、そういうことはよく存じておりませんが、六月四日附に琉球民政官から行政主席宛にこういう文書が来ております。「貴官の郵政局構成の参考として別紙民政本部民政官ルイス大佐よりの書簡、首題「郵政局の設置」添付書類郵政局設置条例案を茲に送付する」と、これは主席に参っておりまして、その法令を出す形式とか行き方についてはこれは独り郵政局だけの問題ではないと思うのですが、すべてこれは…。財政局なんかはどういう風になっておりますか。
○嘉陽安春君 あれについては大体こういうものはなかった訳です。中央政府が出来れば当然財務機構というものはなければならんということで、独自の立場で出して作ったものですから、軍の案は全然なかった。
○冨名腰尚武君 参考としてというように、不用意に使ったのでせう。
○議長(泉 有平君) 一応案を研究する場合に確めて見ませう。
○郵政庁長(平川先次郎君) 立法院としても軍と連絡をしていただくよう希望します。
○嘉陽安春君 その点は今迄の郵政庁としての経過をお聞きした訳です。
○郵政庁長(平川先次郎君) それから課の名称として、こういうもっと直訳的にいへばその通りでありますが、余りピンと来ないような言葉は出来るだけ我々が分るようにやった方がいいんじゃないかという風なことを考へております。業務の内容と名称は出来るだけ我々の頭にピンと来るようなものにしたいと考へております。
○議長(泉 有平君) 今群島の郵政に関する業務は、各群島には郵便局がありますが、それは郵便局長でやっている訳ですか。
○郵政庁長(平川先次郎君) それは郵政局の廨庁としてある訳です。地方現業局長として、だから本庁と廨庁との関係になる訳です。
○議長(泉 有平君) それは廨庁本来の業務の外に本庁の業務の一部をさしているという実状じゃないのですか。
○郵政庁長(平川先次郎君) いやそうではありませんが、現在の郵政庁と致しましては一部そういうことを地方郵便局長に委任みたような形にしてさしているものがあります。離島だけですが、それは従来船便が悪い関係と、大島の例をいいますと、業務監察というものはどうしても本庁がやらなければいかん。ところが、大島地区で不時な盗難事件が起る、或は妙な問題が起った場合に、こっちから行って調べるということは相当日時がかかる。それでこっちの業務を一部委任して地方局長に直ぐ監察をやらすとか、又貯金の如きは原簿事務を一部大島にやらしておりますけれども、これも船便の関係が非常に悪いものですから貯金の原簿を皆こちらへ持って来て、本庁で検閲をするとなると色々住民に不便を与へるものですから、向うに一部委任みたような形にしていることはあります。然しこれは将来全部本庁に統轄して行かなければならんものですが、然し今の実情から色々と不便な点、むつかしい点は一部向うに委任みたような形にしてある訳です。
○議長(泉 有平君) 少くとも委任しなければならない業務はその地理的条件によるということになれば当分の間はこの儘にして行かなければならないということは考へられますか。
○郵政庁長(平川先次郎君) それは考へられます。
○議長(泉 有平君) 気象台は別に大島に、郵便局長に気象台の関係を見せるとかいうようなことはない訳ですね。直接当る訳ですか。
○気象台長(具志幸得君) 廨庁として単独に建てる訳です。郵便局と測候所は別個になる訳です。
○議長(泉 有平君) いつ頃迄には公布されるように取計っていただきたいというような御希望がありますか。
○郵政庁長(平川先次郎君) これは勿論主席の御方針だと思いますが…。
○議長(泉 有平君) 七月一日から中央政府の所管内に置けということではなかったか。
○郵政庁長(平川先次郎君) 私としては何時でもいいという態勢を整へておりますから、主席の御方針によっていつからということは決めて貰いたいと思います。
○気象台長(具志幸得君) この条例は七月一日迄に決めて、七月一日以降はこれによってやるということになるのですか。
○議長(泉 有平君) 貿易庁、郵政庁、農林省この三つに対しては大体そういう風に聞いておりますが七月一日からこっちの直轄の行政官庁として発足するのだという風な話はあったのでせう。
○郵政庁長(平川先次郎君) 何時からという話はありませんが私の方は早い方がいいと思っております。それからもう一つこれは御参考のために申上げるのですが郵政庁は御承知の通り、出来る時の沿革が四民政府の合作でありまして、四民政府から優秀な人物を集めて発足致しております。そういう点は琉球の中で、殊に郵政に携わる者という範囲に於ては非常に優秀な人間を集めている訳です。
○議長(泉 有平君) こういう面も一応、考へられますがね。将来次々に設けられる中央政府の局の中にはものによっては例の地理的条件で出来ないということが大きな理由になりませうが、そういうことで支部とか出張所とかいうような形のものを設けなければならないのじゃないかということが情勢によっては考へられることがあると思うが、そういうことが仮に郵政局関係で考へられた場合に、現在の業務の運営上、特に支障があるとか、或は便利だとかいう見通しについて何か…。
○郵政庁長(平川先次郎君) それは例へば日本の場合のように非常に地理的にも広いし、又取扱う量も多いので日本の場合は東京に本省があって各地区に逓信局(郵政局)を置いております。将来琉球は地理的には大きくなることはないでせうから、業務が大きくなった場合には、そういうことも考へられますが、これは将来の問題ではないかと思います。それは又軍の係官と接触して色々の話を致しましても、出来るだけ中央で総てをやる方がいいという風な意向があるようでありますが、然し廨庁の問題でありますが、為替貯金の原簿取扱、これには入っておりませんが、例へば大島は原簿を持っているのですが、あの原簿を沖縄に持って来ることは出来ない。ところが、事業そのものは本庁でやらなければならない仕事なんです。大島の原簿を取扱っている人間は二十八名である。貯金原簿が十八名で貯金の件数が十三万位である。それを沖縄に直ぐ持って来るということは出来ない。今の船便関係とか、地理的不便、あの二十八名の人間をすぐこっちに連れて来るということは生活問題なんかもあって出来ない。あれはどうしても貯金原簿保管庁といいますか、貯金原簿管理所というものを大島に置かなければならないと私は考へております。宮古、八重山は取扱が非常に少い。例へば宮古ならば貯金の原簿は六百いくらしかない。八重山はそれより少い。そういう訳で管理所を置くには余りに小さ過ぎる。これは沖縄で現在もやっておりますが、大島はそういった従業員の異動が出来ないのと数が多いということで大島の地方局長に委任した形でやらしているが、これはどうしても本庁に吸収しなければならない性格を持っております。それで一つにして郵便貯金なら郵便貯金の資金の運営を、保険積立金の運用、こういうものを一元化して行かなければならないと、こういう風に考へている訳です。
○議長(泉 有平君) 電信局というのは群島政府の中にあるものですか。
○郵政庁長(平川先次郎君) 群島政府の中に宿借りしている訳です。それから今はすべての法規類がまだ整っておりませんので、その法規類の整備、それから対外業務協定とこれからやらなければならない仕事が沢山あって天手古舞をしている訳ですが、法規類も日本の新法に準じたような琉球の新法が出来なければいかんと思うのですが、ああいった法律的な性格を持っているものも将来我々が立案して立法院に審議をして貰ってそして法律という形になる訳ですね。
○議長(泉 有平君) これと同じ取扱方になると思います。
○議長(泉 有平君) 外に御質問はありませんか。御質問がなければ終ったことに致しまして、本案は現在立法院に通信運輸関係の委員会の常置されたものがありませんので特別委員会でも作って、そこの方で研究して貰ったらと思いますが、如何ですか。
(「賛成」と呼ぶ者あり)
そうすると委員の選定をどういう工合に致しますか。現在進行中の問題の分担状況を申上げますと、財政経済委員会の方に金融委員会設置法と、輸入酒類に関する消費税法、二つが付託になっております。
それから行政法務委員会は立法院の職員任用条例、これが研究中になっております。
○大濱國浩君 後で議長で適当にやっていただきたいと思います。議長一任ですね。
○議長(泉 有平君) 委員の選定は議長に委していただきます。御異議ありませんね。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
それではそういう工合にして三人の特別委員を選定致しましてそこで検討致させることに致します。尚、郵政庁の方にはその委員の方が色々又協議に与ると思いますが…。
本日の会議はこれで終りと致します。
(午後二時十七分散会)
本日の出席者
議 長 泉 有平君
参 議 松田 賀哲君
〃 冨名腰尚武君
〃 大濱 國浩君
〃 吉元 榮光君
〃 嘉陽 安春君
〃 田畑 守雄君
郵政庁長 平川先次郎君
気象台長 具志 幸得君
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