戦後初期会議録

組織名
琉球臨時中央政府立法院
開催日
1951年09月25日 
(昭和26年)
会議名
立法院全員協議会 1951年9月25日
議事録
立法院全員協議会議事録

 一九五一年九月二十五日(火)
午後二時三十五分開議

議 題
 一、立法院議員公選計画について

○仮議長(松田賀哲君) 午前に引続き全員協議会を開きます。6の選挙方法から始めます。
○城間盛善君 選挙方法としましては去年実施された群島知事及び議会議員選挙法をまず研究してこれを基礎とした訳であります。研究して見た結果大体これに準じて立法院議員選挙法を制定することが出来るし、又これが一番適当であろうということにして、但し改廃を要する点をここに列挙して進言すれば、これで十分でなかろうかとこういうことになったのです。その改廃を要する点では去年の選挙の経験もありますが、その中で一番大きいのは選挙運動について選挙公営の方法を相当採入れてあります。そこらに一番大きい変化がある訳ですが、順序はこの選挙法の順に従って列挙してあります。
  (a 選挙権)
 括弧の中は前の群島知事及び議会議員選挙法であります。立法院議員の選挙の場合は特にこうして貰いたいという点だけをあげてある訳です。
  (b 被選挙権)
 これも世論の要望に基くものであって、一群島一選挙区のところではこういうことはないが、大島と沖縄の場合には群島が二乃至四に分れておりますので、こういった要望があったので入れた訳であります。
○仮議長(松田賀哲君) そうすると宮古の人は例えば平良市に住んでいる人は何処でも立てるという訳ですね。
○城間盛善君 宮古は一群島一選挙区だからこういったことは起らない訳です。それから被選挙権の年齢の要件二十五歳を特に出した理由は議員が幾つ、知事が幾つとなっているが議員の場合二十五ということは考えられるが、一応はっきりした方がいいだろうということで特に書いた訳です。
  (c 選挙期日の告示)
 告示の規定によって選挙運動期間を規定する。今まで四十五日ということになっているが、去年の経験によって長過ぎるために色々弊害を生ずる恐れがある。それも一般的な世論である。選挙区は切ってあるし、二十五日程度で十分だろうということで二十五日としてあります。少くとも二十五日以前としてあって、ここにゆとりはある訳です。
 特別選挙の場合も二十五日にして貰いたい。それから第二項に特にこれを出したのは今までの選挙では合法運動期間というのが不明瞭であってこれを明瞭にするために告示の日から始まって投票の前日迄が選挙運動期間ということをはっきり示して貰いたい。一番不明だったのは選挙当日の選挙運動、これをはっきり示すことによってこれを明瞭にする。これも去年の経験からです。
  (d 選挙管理委員会)
 実際に選挙を運営する選挙管理委員会の問題ですが、まず一番下には市町村の選挙管理委員会があります。問題はその上ですが、その上には「中央に中央選挙委員会を置く」これはどうしても必要ですが、中央でこういった事務を扱うのは必要であるが、その場合には官庁機構として一つ置いても出来ないことはなかろうが、矢張り官庁と離れる選挙委員会という方がよかろうというので、--中間の問題ですが--選挙法に基いて群島、地区、市町村となっているがそれと同じような形になる訳ですが、今度は中央は中央政府、地区は選挙区毎に置く、下は市町村と三段階ということを考えた訳です。但し一群島一選挙区の場合は現在群島選挙管理委員会があるので、そのままそれが地区選挙管理委員会となる。こういう建前を取った訳です。委員の選出方法としては中央委員会は立法院で委員を定める。地区の管理委員会は群島議会で定める。市町村は現在のものをそのまま使う。こういう建前をとった訳です。それから選挙長の問題は第四項にも出ているように現在の選挙法では市町村の選挙管理委員長が選挙長になっているがこれを訂正して地区選挙管理委員会の委員長が選挙長だということをはっきりして責任の所在を明瞭にして貰いたいというのです。つまりこの場合には宮古、八重山は群島の管理委員会がそのまま地区選挙管理委員会の事務をやるのですが沖縄と大島の場合は群島の選挙管理委員会はこの選挙にはタッチしないという形になるのです。
○仮議長(松田賀哲君) それで不都合は生じませんか。
○嘉陽安春君 矢張り群島単位の群島選挙管理委員会に主体性を持たさなければいけないのじゃないかという感じがするのです。というのは日本の衆議院選挙法でも都道府県の選挙委員会が責任を持っている訳です。そうかといって県単位になっているかとそうでもないのですよ。例えば東京都なんか四つか五つに分れている。それでいて選挙管理委員会は一つしかないのです。もう一つは実際問題として考えた場合、地区というものを今頃作らして、そして経験を積んでいる群島は何等タッチせずに、それに選挙公営という新しい仕事をこれに負担させることが出来るだろうかというような問題ですね。結局は群島政府の総務なり、選挙管理委員会の知識、経験というものが基礎をなすのです。今の群島議員の場合は十に分けて選挙委員会を置いてあるのですが、選挙法を作った時には我々は要らんという考え方があったのです。各地区の選挙管理委員会はなくても市町村と群島の選挙管理委員会だけで足りるので地区別のものは要らないという風な考え方があった訳ですが、特に今度の公営に結びつけて早急にでっちあげて直ぐ事務を執るということは出来ませんよ。それを考えると矢張り市町村で集計させて、地区はなくても群島の選挙管理委員会だけで責任が持てるのじゃないかという感じがするのですが、もう一度検討する余地がありますね。
○田畑守雄君 大島の二区が一番問題になるのです。というのは徳之島が四ヶ町村、永良部二町村、與論が一村になっています。これを一地区にして地区選挙会を持つということになるとなかなかやり辛いのじゃないかと思う。非常に不安を感ずる訳です。徳之島だけから委員を出すという訳にはいかんでせうし…。
○嘉陽安春君 公営の場合の予算の配分、これは各地区にあるのですよ。そうした場合に果して運営しきれるかどうか、事務局という組織を持ちませんし、これで運営出来るかどうか、ただ委員だけを集めた地区で選挙公営をやり得るかどうか、人は五人なら五人の委員は集まるでせうけれどもどうしても職員がいなければいけないでせう。これは結局どこかの村の職員を持って来て行政機関と結びつかずには、職員を持ちきれませんよ。これはむしろ突き詰めると各地区の群島選挙では地区委員会は矢張りなくならなければいかんのじゃないかという感がするのですがね。
○城間盛善君 つまり群島選挙管理委員会でさせた方がいいというのですね。
○吉元榮光君 この前の話合では一方に纏めたら選挙公報の発送なんかが果して十日間で出来るかどうかというので地区にさせた方がいいということではなかったですか。
○嘉陽安春君 中央委員会が軍と連絡して行政上の周知徹底をはかる時に各地区を集めて、各地区にばらばらに意思の伝達をして行くことが中央政府の選挙事務としても末端までの事務指導の徹底が出来るかどうか。矢張り群島を除外した形というのは事務上疎漏が生ずる虞がありますね。
○仮議長(松田賀哲君) 前に地区委員会を作ったのは、作ってまたうまく出来たというのは要するに仕事がなかったからでせう。今度は逆に主にこれに仕事をさせるというのですが、そうすると俄仕込の集まりではどうですか。
○吉元榮光君 公報の発送とか色々の事務が果して群島にして支障はありはせんかということですが、それさえなければいいのですが…。
○城間盛善君 地区は廃止して群島にしませうね。第二項に地区の選挙管理委員会を置く必要はないということを明示したらどうですか。
○嘉陽安春君 第一項の終りに「選挙区毎に選挙管理委員会を置く必要はないものと認められる。」
  (f 立候補の届出)
○城間盛善君 届出の連署を廃止するということは第一に事前の運動になる虞があるというので廃止した訳であります。供託金については二千円、これは日本の実例を基礎に決めたものであります。それと交換率を勘案して、日本では債券なんかありますが、ここでは金だけということになるのであります。没収規定としてはその選挙区の有効投票の総数を議員定数で除して得た数の五分の一、これも日本のものと同じであります。
○吉元榮光君 これについてちょっとお伺いしたいのは群島選挙法にはなかったと思うが、前は届出た町村で受理しておったがこれに書かんでも受理出来るかどうかというのが疑問なんです。
○嘉陽安春君 市町村が受理しても本当の受理じゃないのですよ。事務の便宜上受取って市町村が責任を持って群島に出すということであってこれは細則でもって遠隔の地にあっては市町村管理委員会に書類を出して市町村選挙管理委員会が責任をもって群島に出すという風な話合ではなかったのですか。市町村で受付けた日から効力を発するということも細則で出来ると思います。
○仮議長(松田賀哲君) 選挙公営の目的は金のないものも立候補出来るようにしようというのでせう。ところが供託金は今までなかったのですが、仮に選挙公営が許されんで供託金制度だけが容れられた場合に困るのじゃないか。
○城間盛善君 選挙公営になって金がかからんからといって乱立を防止するために法定得票数を設けるのですが、それを設けるためには供託金制度がなければ意味をなさんという風にも考えられる。
○嘉陽安春君 供託金制度がないということは、結局法定得票数制度がないということですよ。結局乱立したら票が散ってしまって、それが本当に民意を代表しているかということも疑問がある訳です。金を取るということは同時に法定得票数制度と裏腹をなしている訳ですよ。
○仮議長(松田賀哲君) 乱立を防ぐという意味ではいいと思うが、今までは別にその必要はなかったのでせう。
○嘉陽安春君 沖縄の場合は非常に特殊の事情ですよ。
○仮議長(松田賀哲君) 特殊の事情としても、今まではこれでよかったんじゃないか…、中を取って二千円を千円にする…。
○田畑守雄君 三千円では高いというので二千円にしたのですよ。
○吉元榮光君 日本の場合、県会議員は一万円ですからその三分の一より少い訳です。
○仮議長(松田賀哲君) そんなら二千円でいいでせうね。
  (g 当選人の決定)
○城間盛善君 ここで問題になるのは法定得票数を入れたことです。この場合には選挙区内の有効投票数を議員定数で除した数の四分の一、これ以上なければいけない。これ以上の者から多数取ったものを当選人とするというのです。
○嘉陽安春君 現行法上は単に「有効投票の最大多数を得た者を以て当選人とする」となっているが、尚これに「当該選挙区の議員定数を以て有効投票数を除した数の四分の一以上なければならない」旨の但し書をつけて貰いたい。
○仮議長(松田賀哲君) これはどういう必要から出たのですか。
○城間盛善君 現行の通りならば極めて少い票数を取ってもその選挙区の代表者になり得る訳なんですが、或る程度の最低限度の票を決めた方がいいんじゃないかというのです。
  (h 争訟)
○城間盛善君 これ第一項は日本の規定に従ったものですが、選挙に関する争訟のあった場合には六十日以内にやって貰うように努めなければならないというのです。
  (j 選挙運動の費用)
○城間盛善君 現行の五円を三円にするというのは選挙公営という意味からで大体の額は五分の二位行っているというのでそれから計算したものです。
 それから第二項の第七十二条に出ている「候補者を推薦し支持する団体」となっているが、集成刑法には政党以外には出来んということになって相反するようになっているのでこれを省略してしまった方がよいということです。
 それから中間報告は三日前迄となっているが、これは選挙管理委員会の証言もあったのですが、選挙管理委員会の事務上の問題もあって五日前迄位にして貰いたいということです。
○嘉陽安春君 集成刑法の第何条ということは入れておいた方がいいんじゃないかな。
  (午後四時五十分散会)

  出席者
   仮議長  松田 賀哲君
   参 議  與儀 達敏君
    〃   城間 盛善君
    〃   大濱 國浩君
    〃   吉元 榮光君
    〃   嘉陽 安春君
    〃   田畑 守雄君
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