- 組織名
- 琉球臨時中央政府立法院
- 開催日
- 1951年09月06日
(昭和26年)
- 会議名
- 立法院全員協議会 1951年9月6日
- 議事録
- 立法院全員協議会議事録
一九五一年九月六日(木曜日)
午後三時開会
議 題
一、琉球臨時中央政府文教局設置法について
○仮議長(松田賀哲君) これから全員協議会を開催致したいと思います。議題はお手元に差上げてあります。刷物の琉球臨時中央政府文教局設置法についてであります。これは前に権限委譲のことに関して民政府から書簡がありましたが、それについて大濱参議に委任しておりましたが、その研究の結果がここにあげているようでありますので一応御説明をお願いしたいと思います。
○文教局仮局長(奥田愛正君)私の方から経過を申上げておきます。民政本部から書簡が参りまして八月八日に立法院の全員協議会を開いていただき、その書簡によりまして大体設置についての御了解を得ましたのでその後大体文教局の設置法の草案を作りまして八月十三日に民政本部に提出したのであります。その草案によりまして八月二十日に又民政府から更に修正或は別個の提案があったのであります。その後二十八日迄修正し、或は訂正し、追加をして八月二十九日、三十日の両日に亙りまして連絡室のセーファン氏とアーレン大佐を交えまして非公式の会談としたのです。その会談の結果による原案を昨日委員会を開きましてその委員会で取上げて審議をしたのであります。その草案に対して、更に訂正を委員会の方で加え、昨日の午後四時半から五時半まで審議をし、更に今日は朝八時半から十時頃まで更に協議をしまして大体の案を得、更に午前十一時から委員会を開き、その委員会には特に琉大の校外教育部長の安里先生、沖縄群島文教部長にも来ていただきまして、それによってこの成案を得た訳です。そして更に訂正しましたのを軍の教育部の教育法規の方と打合せまして修正してこの案になった訳であります。
○仮議長(松田賀哲君) この成案を得られた訳ですがこれについては別に新しく特に強調するようなことはありませんですか。
○文政局仮局長(奥田愛正君) 大体、文政局の所管或は権限というのは民政本部から出ました書簡によって明かにされております。更に教育を大別しまして、社会教育と学校教育にし、更に行政事務を掌る庶務課を置き三課にしてあります。そして第八条、第九条に学校教育、社会教育とありますので、この定義を条文中に入れるという趣旨がありましたので第二条に中等教育、初等教育、社会教育という教育の定義を入れたのであります。
○仮議長(松田賀哲君) そうすると後は逐条審議して行けばよい訳ですね。
(第一条)
○大濱國浩君 第一条に琉球臨時中央政府の一行政機構として設置するという行き方--郵政庁はそういう風になっておったが--我々委員会としてはこの方がいいという意見が多かったのでこういう風にしてある訳です。
○嘉陽安春君 文政局の場合にこの行き方がいいかどうかの問題でなくて将来局が色々出来て来るがその場合どっちの方がいいだろうかという問題になるでせうね。
○城間盛善君 第一条はどうですか、後から出来た郵政局にならうことにしては、それとも特別の理由があったのですか。
○大濱國浩君 最初は行政機構としてという風になって、その次に布告第三号第四条によってとなっていたが昨日の委員会で又このように訂正したのです。
○仮議長(松田賀哲君) それでは一行政機構と入れませうか。
○大濱國浩君 いいでせう。
(第二条)
○文教局仮局長(奥田愛正君) 第八条、第九条の学校教育、社会教育の定義を入れてなかったのですが、これは定義を挿入すべきであるというような趣旨がありましたので日本の文部省に使っているそのままの定義をした訳です。ただ初等教育とは初等学校、幼稚園となおし中等教育とは、中等学校および高等学校に変えた訳です。もっとも沖縄は初等学校、中等学校、高等学校となっているが他の三群島は小学校、中学校となっているのですがね。小学校、中学校にしたらどうかという話もあったのですが、将来、学校教育法を作る時に学校とはどういうものだと定義する時に変えた方がいいということだったもんですから。
○大濱國浩君 私は矢張り初等学校は小学校、中等学校は中学校にした方がいいという意見を持っておったのです。それは日本の法律と接近させるためと宮古、大島、八重山ではそういう風にいっているのです。中等学校といった場合には中学校があり、商業学校、工業学校があるといった点から考えても小学校、中学校がいいんじゃないかという風に考えていたのですが、その点皆さんに御審議を願いたいと思います。
○城間盛善君 日本と同じように小学校、中学校という風にした方がいいと思うが、全琉に於ける場合はこういう風にしか出来んでせう。
○仮議長(松田賀哲君) 職業教育というのは…。
○文教局仮局長(奥田愛正君) 中等学校に於て職業課程がありますから、これが琉球でも日本でも軽視されている傾向があるので特に職業教育という意味合を含めてある訳です。
○仮議長(松田賀哲君) 職業教育を含むということになると高等学校にある選択課目の職業科というのがあるでせう。それを意味するような感じがするのだが、だからそこのところは「職業教育を含む中等学校及び各種高等学校に於ける」といった方がいいんじゃないかな。
○文教局仮局長(奥田愛正君) 中学校でも職業教育を相当に考えなければいかんと思う。
○仮議長(松田賀哲君) それは中学校の内部の話でせう。科目の話でせう。だからそうはせずに所謂学校の形、それ自身としては中等教育とは、中等学校及び各種高等学校に於ける教育として、内部の教授科目については触れん方がいいんじゃないか。つまり教授内容までは立入らんで「中等教育とは中等学校及び各種高等学校に於ける教育をいう」とした方がはっきりするのじゃないかな。
○嘉陽安春君 重視したのが却って逆にもなりますね。日本のものには入っておりますか。
○文教局仮局長(奥田愛正君) 入っております。
○仮議長(松田賀哲君) これは軍から特に指示があってそうした訳ですか。
○文教局仮局長(奥田愛正君) いやそうではありません。日本の文部省設置法のものです。
○仮議長(松田賀哲君) その通り致しますか。養護学校というのは感化院ですか。
○文教局仮局長(奥田愛正君) 心身不健全なもの、感化院も含まれています。一般の特殊教育というのは優秀な生徒も含むのですが、大体心身に異状のあるものを主体として激励というよりもむしろ保護を必要とするものに教育の機会を与えてやるということです。
○仮議長(松田賀哲君) 第三項はその通りでいいですか。次は第四項に移ります。第三項までは何々教育とは、何々をいうとなっておりますが、ここだけは活動をいうとなっているが…。
○嘉陽安春君 これは矢張り日本の文部省設置法そのままの言葉ですか。別に誰のどういう活動という限定はないのですね。
○文教局仮局長(奥田愛正君) そうです。
○大濱國浩君 施設に於ける活動そのものも教育作用を持つものとしているのです。
○嘉陽安春君 法規の実質的な意味からいっても第二条の定義というのは第八条、第九条とはっきりいった方が--本法の解釈に関してといったところが、本法の解釈実は第八条と第九条でせう。事務の限定という意味を持つ、そこに実利があるのだから、第八条及び第九条の解釈に関してはといった方が、中の議論というのはそういう意味に限定したことになって説明になりますから、世の中の議論まで定義をした意味じゃなしに課の仕事を限定するために一応定義して置こうという意味なんだから、中央政府として仕事をするにこういう範囲にすればそれ程問題にならんし、第八条、第九条の用語に関してはという行き方をした方がいいと思う。今のような議論は何か琉球に於ける教育の言葉の使い方まで問題が波及するようなことがあるように思われるのでそういうことは避けた方がいいのじゃないかと思う。
○城間盛善君 然しこれは今後の教育活動の規定をしている訳ですから皆こういう風になるでせう。
○嘉陽安春君 そうでないと相当大きな問題になって来はせんかと思う。そうでないと一字一字について琉球に於ける用語の用い方というところまで行くとすれば…。
○城間盛善君 日本で使っているのは何に使っておりますか。
○文教局仮局長(奥田愛正君) 文部省設置法です。
○城間盛善君 そうすればこの概念に従ってやるべきものだと思う。
○嘉陽安春君 第八条、第九条があるからむしろこういう風に定義したという意味ではないのですね。
○城間盛善君 後に出て来るが故に持ち出したのであるが第八条、第九条は文教局の活動内容でせう。この概念に従ってあの仕事をやって行くのだから。
○大濱國浩君 定義づけてこれを実際事務化して行くのが第八条、第九条じゃないのですかね。そういうのが順序じゃないのですか。目標を決めておいてそれを実際化するために仕事の分担が生れて来る訳ですから。
○城間盛善君 ずっとこういう概念に従って活動して行くのだということを示しているのじゃないのですかね。私もこれでいいんじゃないかと思う。現に日本の文部省でこれに従ってやっているとすればこのままで一向差支えないと思う。
○仮議長(松田賀哲君) 第二条はこれで行きませうか。
(第三条)
○仮議長(松田賀哲君) 中央、群島地区に於ける行政責任の再分配というのがぼかされているようですが、そこをはっきりさせんでいいですかね。再分配というところを…。
○文教局仮局長(奥田愛正君) 組織に関する法令案を作成するということは再分配になる訳でせう。
○仮議長(松田賀哲君) なるのだが、再分配されたら困るということを考えた場合にこういう風にぼかして書いてしまったんでは困るのじゃないかな。
○城間盛善君 再分配まで行ったら困るという議論じゃなかったのですか。
○仮議長(松田賀哲君) 然し仕事としてははっきりある訳でせう。
○大濱國浩君 こういう条文に再分配ということを出して来るということはどうかと思いますね。
○仮議長(松田賀哲君) 民主的教育行政の再組織としたらどうですか。
○嘉陽安春君 法令案を作成すること、これは立法院に対する指令によって発議するのは参議でなければ出来んか。法令案を作成することについては誰でも出来ると書いてある訳で、それによって法令案を作成し立法院に出すという意味であればこれは別に個人だって出来ることなんで、特に何故文教局に関して法案を作成することとかくべきだろうか。そこのところはむしろ全琉的事項については群島政府は出来ないから全琉的事項として一般的基準の設定に関することで打切って、むしろ政府所管に属する左の行政事務を掌るということが将来基準の設定に関してどの程度までやり得るかということは今後の軍からの権限賦与によって定まって来ることであって、この二と関連して第三条の冒頭の書き方も「文教局は政府所管の事務をつかさどる」と書いてあるのは、政府所管に属するということは立法院が属せしめるという意味か、立法院に属せしめられた事項があるという意味なのか、或は軍から属せしめられることを予想するという三つの意味をおききしたいのです。結論を申上げますが、左の事項に関し中央政府所属の事務--属するか属さないかははっきりしませんが--そうしておけば後は関することということで、例えば今の問題も法案を作成することと書くことによって…。
○仮議長(松田賀哲君) 一は左の行政事務に正に相当しますね。
○嘉陽安春君 二、三はその言葉ではぴったりしません。政府所管に属するとはいえないと思う。
○仮議長(松田賀哲君) 二には法令案を作成することとなっているが、ところがこれには何もせよとは書いてありませんよ。それの研究とありますから、制定のための調査研究に従事すると思うのですよ。
○嘉陽安春君 政府所管に属する左の行政事務といういい方は左の行政事務は既に政府の所管に属するという意味なのか、それとも政府所管に属した場合には左の事項について軍から一つ一つ中央政府に所管だという風に権限の賦与があればその事項は中央政府がやって行くという意味の表現であるのかどうか、そこを明かにする必要があると思う。又それとも一、二、三は中央政府の所管だと立法院がこの法規を定めることによって左の行政事務は政府所管だという風にいった意味か、三つの区別があるのですよ。それと関連して来て今の二の法令案を作成することという場合に、もう一つ法令案を作成することということは立法院にかけて来るという意味の立法院の立法の案という意味なのか、それならばどこの局、誰でも出来ることだから、--個人でも出来るのです、参議に頼んで発議をして貰う--そういう意味ならば特に書く必要はないのじゃないかという、それは疑問なんですが、結論を申上げるとむしろ教育に関する調査研究を行いといったようなことで、極端にいえば一と三ということにもなりますね。
○仮議長(松田賀哲君) 政府に属する左の行政事務をつかさどる、それは第一項に謳われておりますね。それは分りますが、一体教育施設の管理並びに監督というものは何かありますか。教育施設の管理になったもの、監督を委されているものがないじゃありませんか。
○文教局仮局長(奥田愛正君) 現存していませんね。将来属せしめられる意味も含んでいるのですよ。
○嘉陽安春君 財政局でも郵政局でも弾力性を持たせて表現している訳です。現にあるものをはっきり書くと同時に今後賦与されて行くものをはっきりさせた訳なんですが、結論をいえば政府所管に属するといういい方では、既にという意味が強いから「左の事項に関し中央政府の所管に属する」というとそこに区別がありはしないかという感じがするのですがね。
○仮議長(松田賀哲君) 左の行政事務の「行政」を取ったら、行政であろうが何であろうがいいことになる。
○嘉陽安春君 既にあるものと将来のものとを一応区別する必要があるのじゃないかという感じがするのですが。
○城間盛善君 第二項ですが、一般的基準の設定に関する調査研究、これが民政府から示された権限でせう。
○嘉陽安春君 基準の設定に関する調査研究としたらいいでせう。
○仮議長(松田賀哲君) 第三条は初めの行を削って第二項を「全琉球にわたる民主教育行政の組織並に教授管理及び免許の一般的基準の設定に関する教育法規の制定のための調査研究を行うこと」。
○嘉陽安春君 立法事項に関して特に文教局の調査研究したものを以て原案とするという風に立法院として文教局を設置するということは、文教局の将来に備えて立法とのつながりですね、基準を設定する法規というか、この法規というのは立法院の法規を指している。だから立法院がやがて教育基本法を審議する機会があるとすればそれについては所謂立法院としての立法上の調査研究、これは一応文教局を以てこれの担当者にするということを限定するというか、はっきりさせる訳ですね。
○仮議長(松田賀哲君) だからそこのところはそういう風に解釈して行くと又面倒になる。そうなると草案を作り得るものはここだけということになる。
○嘉陽安春君 そういう意味で立法に関することについて別にいう必要はないと思う。だからこそ郵政局でも財政局でも特にいっていないでせう。
○大濱國浩君 調査研究をなすことでいいんじゃないのですか。
○仮議長(松田賀哲君) 免許の一般的基準に関する調査研究を行うこと、これでいいでせうね。
○田畑守雄君 第一項の「琉球大学を除く」は「但し琉球大学を除く」として下に入れたらどうですか。
○文教局仮局長(奥田愛正君) 下に入れた方がいいかも知れませんね。
(第七条)
○嘉陽安春君 第七条の五の教育財政に関するとありますが、そこのところは矢張り財政問題じゃないかと思う。
○田畑守雄君 教育財政という意味はどういうことでせうか。
○文教局仮局長(奥田愛正君) 財政的な援助とも考えられるでせう。補助金がある場合その割当とか、どれだけの財政をやってどういう調査研究をしたらいいかということをいっている訳です。
○田畑守雄君 局の権限内に於ける財政であるか、又は文教局として以外の局に対するものであるか。
○城間盛善君 将来に関する教育の調査研究という意味じゃないですか。
○嘉陽安春君 教育財政というのはこれも教育行政組織に関することに含まれるのですが、特に財政を切離して教育財政を考えるということにはなりはしませんか。
○仮議長(松田賀哲君) これは教育行政の中に含まして穏やかにしておいた方がいいと思いますね。
○城間盛善君 教育行政の中に包含させてはどうですか。別に項目を出さんで、結局行政組織ということは財政の裏づけがなければ出来ないのじゃないですか。
○嘉陽安春君 調査研究だけならばいいが、教育財政については事務を行うということになって来ると財政局の財政計画との関係が誤解を生ずるおそれがある。
○文教局仮局長(奥田愛正君) 削除しませうか。教育行政組織というところで当然取上げられる問題ですから。
(第八条)
○仮議長(松田賀哲君) 第八条は「学校教育課に於ては左の事務に関する調査研究を行う」とした方がはっきりしていると思う。
○大濱國浩君 そうした場合に第三条の第□(脱)項をどういう風に持って来るか。
○仮議長(松田賀哲君) それは庶務課に来ますよ。それでいかなければ「全琉に亙る教育の管理並に監督に関すること」をここに持って来たらいい。
○大濱國浩君 学校教育課に於ては全琉教育行政の事務をつかさどるとしたらどうか。
○嘉陽安春君 学校教育課というのは所謂学校を管理する、将来中央政府全体として全琉にわたる教育施設の中には学校教育施設と学校以外の教育施設がある訳でせう。従って学校教育施設に関することをやるということをいわなければならないのじゃないですか。
○田畑守雄君 調査研究に必要な事務をつかさどるではいけないのですか。
○仮議長(松田賀哲君) 第八条は「学校教育課に於ては学校教育施設に関する政府の所管事務をつかさどる外左の事項につき調査研究を行う」。
○嘉陽安春君 「政府の所管」ということは要らんのじゃないですか。それよりもはっきりと「第三条第一号」と入れたらどうですか。
○文教局仮局長(奥田愛正君) その方がはっきりしますね。
(第九条)
○仮議長(松田賀哲君) これも前条と同様に訂正しますね。
(附則)
○文教局仮局長(奥田愛正君) 事務細則はないではいかんと思うが作れんのですか。
○仮議長(松田賀哲君) それは今入れんでおいて中央政府が揃った時にこれを入れて貰いたいという風に統一してやっていいんじゃないかな。
(午後七時散会)
出席者
仮議長 松田 賀哲君
参 議 城間 盛善君
〃 大濱 國浩君
〃 嘉陽 安春君
〃 田畑 守雄君
文教局仮局長
奥田 愛正君
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