戦後初期会議録

組織名
琉球臨時中央政府立法院
開催日
1951年08月28日 
(昭和26年)
会議名
立法院全員協議会 1951年8月28日
議事録
立法院全員協議会会議録

 一九五一年八月二十八日(火曜日)午前十時二十分開議

議事日程
一、立法院議員又は参議の公選について((原)立法院の公選について)

○仮議長(松田賀哲君) ではこれから協議会をはじめたい。最初にこの前立法院の公選について沖縄にいる参議だけの主催で新聞社、政党幹部に集ってもらって協議会を開きましたがその模様を速記によってお伝えしたい。
  (係有吉堅二君「懇談会の速記録」朗読)
○仮議長(松田賀哲君) 住居の制限を六ヶ月から三ヶ月にしたらという意見があるようですがそれは三ヶ月にすれば何処の人が何処で立ってもいいわけですね。
○嘉陽安春君 そうでしょう。
○仮議長(松田賀哲君) 三ヶ月に満たねば立てないというわけですね。そうなると選挙期日までに三ヶ月の余裕をおかねばならないわけだ。
○城間盛善君 新に選挙名簿をつくるかつくらないかで違う。現在の名簿では八月に確定するわけです。それを使うとなるとその名簿でやるわけですね。
○嘉陽安春君 その前に被選挙権と選挙権の問題が先だ。瀬長さんのいうのもそれだ。社会党の平良さんでも結局問題は被選挙権で琉球人にして何歳以上なら立てるということにしてというのです。今の日本の方法は被選挙権は住居の制限はないのです。しかし沖縄では或る一定期間しないと立候補出来ないわけだ。或る市町村に六ヶ月以上住んでいないと立てない。それがこま切れ選挙です。それと全琉一円を混同している。
○吉元榮光君 瀬長さんの意見は例えば今大島の人が沖縄に二万来ている。しかし沖縄の立候補者については知識はないから大島の候補者にここでも投票出来るようにということでしょう。
○嘉陽安春君 それが全琉的ものになってくる。地区を分けるとして限定するかしないか…。
○仮議長(松田賀哲君) 選挙権は三ヶ月なら三ヶ月と住居の制限を必要とする。しかし被選挙権は全然必要としないと…。
○嘉陽安春君 それが問題だ。
○吉元榮光君 選挙区を細くわけないとこういう問題は余り起らない。
○嘉陽安春君 しかし宮古、八重山などとの関係も出て来るよ。
○吉元榮光君 群島別にやれば問題は少い。
○嘉陽安春君 問題を被選挙権に限定すべきだ。大島の人が選挙前にここに移って沖縄にいる大島の人を相手にして立候補出来るようにすると…。
○城間盛善君 選挙方法を考える場合決めるべきだが今各離島からどんどん本島に流れてくる。所が受入れが非常におかしい。それで大概の人が無籍者として生活している。したがってここには選挙権はないが離島にはある。所がわざわざ帰って選挙権を行使する余裕はないはずです。だからこれに選挙権を行使させるためには受入れを緩和するということが必要じゃないか。
 今の所受入れの条件は終戦直後の布告か指令か知らないがこれによってやっている。例えば公職をもっている場合は無条件で受入れるがその他の場合は出来ないわけです。これが撤廃されない限り居住の自由は原則として認められていないわけです。
○嘉陽安春君 大事な問題だ。住んでいる所で選挙権を持つようにしてほしい。
○城間盛善君 こういう人は結局選挙権は行使出来ないことになる。だから早く注意して今の各市町村の受入れ規則を撤廃して、居住の自由をはっきり認めるようにしたい。こうしないと選挙権の行使に重大な支障を来す。本会議を開く場合でもこれを動議の形で持出し民政府に要望して群島政府にいわせて全部が選挙権を行使出来るようにしたい。
○嘉陽安春君 私はこう思う。選挙権の問題は居住の問題を速に解決して生活している所で選挙権を行使出来るようにする。所が被選挙権までそうするかどうかについては問題だ。アメリカの方針は選挙権、被選挙権を一緒にしている。
○城間盛善君 統計などから見ると大体大島の人の犯罪が多い。それはそうかも知れないが居住権はありながら受入れされず配給も取れない。就職も出来ない。例えば軍労務に行きたいと思ってもその場合は居住市町村の証明を持って軍労務所に行ってカードをもらわねばならない。正式な仕事につけないなら何をするか。結局落ちて行く所は女なら特殊婦人、男は何とかして生きていかねばならないから犯罪をおかすようになる。気の毒千万だ。
○嘉陽安春君 自由と権利が行使出来ないわけだ。簡単な手続き問題で大事な権利が侵されている。
○吉元榮光君 何か布告でもあるんか。
○城間盛善君 あるんです。終戦直後のものにしたがってやっているわけだ。早くあれは撤廃しないと…。私も村長時代困ったですよ。
○祷 清二君 住所の制限はあった方がいい。
○城間盛善君 地域代表の性格がはっきりするわけだ。結局そこに行くだろう。
○嘉陽安春君 そうなると今の城間さんの問題は重要になってくる。
○城間盛善君 何か早く手を打つべきだ。
○嘉陽安春君 とにかく私はこれで三度選挙法の問題にぶつかるがこのことは何時も問題になる。
○祷 清二君 日本では本人の好きな所においてあるようです。
○城間盛善君 海をこえて来た人たちが問題だ。
○仮議長(松田賀哲君) それは食糧問題とも関連してややこしくなったんでしょう。
○嘉陽安春君 急に人員がふえても食糧配給はふえませんからね。
○城間盛善君 終戦直後は補給食糧だけでなくその土地で生産するものも入れて分配するという原則だったのだから人口が増えるということは分配が減るわけだからね。
○吉元榮光君 土地もわけてやったからね。
○仮議長(松田賀哲君) それをやるなら早くせんと間に合わんですよ。
○嘉陽安春君 選挙法の準備と同時に手配したらいい。
○城間盛善君 三月にした場合それに間に合うように早くしておかんと…。要するに事務はおそくなるからね。そこで私提案がありますがこの答申案の研究方法として現在特殊事情にあるので本来なら今までの慣例では行政法務委員会附託になる。この委員会は今二人しかいないから具合が悪い。それで臨時的方法としてこういうようにしたい。現在定足数に達していないので本会議は開けない。委員会附託は出来ないが、研究をはじめるということにした方がいいんじゃないかと思う。次に嘉陽参議が九月なかばアメリカに行かれる。そうなると又行政法務委員会はくずれてくる。それで九月のなかばまでには目鼻をつけたいと思う。
 今度の諮問項目は五つ六つありますがその中の議員定数、選挙区は重大な問題で各群島全部の代表がいないと出来ないから除いておく。又公選の時期、これも皆集ってからやるのがいいわけだ。人口との比率だがこれは定数さえ決まればすぐ出来るから残しておく。只一番はじめにある選挙方法です。まず差当りこれを研究したい。これは定数、選挙区の如何を問わずいろいろな技術的問題がある。この意味から嘉陽参議の渡米前に選挙方法の大体の構想をまとめたらと思っています。最後的決定ではなく非公式なものとして…。
○仮議長(松田賀哲君) 要するに研究していこうというわけだね。結構でしょう。
○嘉陽安春君 差当りの問題は選挙方法ではどういうことが重要かを一応協議会でひろい出したらいいじゃないかね。その点について城間さんの所ではある程度問題は出来ていますか。
○城間盛善君 いやまだです。問題を引出すのに技術がいるわけだ。嘉陽さんは市町村選挙法も次の群島総選挙も手がけて来たからよくわかっている。立法技術の面でも大変都合がいい。その意味でも今の問題を早くやるべきだ。
○嘉陽安春君 結論までは出なくともいいわけか。
○仮議長(松田賀哲君) 一緒に研究はするがその中の大きな問題を従来の委員会がピックアップしてほしい。
○嘉陽安春君 一番大きな問題は公営の問題だ。これは諮詢委員会時代からいわれているが具体化までいかなかった。
○仮議長(松田賀哲君) それに軍から諮問されたものは抽象的ものが多くて実際選挙するという場合はいろいろ問題が出てくる。簡単にいえばどういう形かの機関を作ってこれにさせるべきだ。
○吉元榮光君 群島には選挙管理委員会があるわけですからね。もう一つ中央選挙管理委員会というものが出来たらいいじゃないか。
○嘉陽安春君 問題はそれをどこが扱うかということになる。それを行政が所管するのかどうか…。
○祷 清二君 日本では行政だね。
○嘉陽安春君 内閣総理大臣の統轄に服するということになっている。しかし最近は廃止して地方自治庁の中に入れたとか…。
○仮議長(松田賀哲君) 実際的に選挙をやるのは誰がやるかということが問題だ。そこの所まで研究してこれはここにやらすべきだという答申をやるか或は実際選挙をする母体を作ってくれと抽象的にやるかだ。
○祷 清二君 選挙管理委員会を作らねばならないだろう。
○仮議長(松田賀哲君) 選挙となればいろいろごたごたも出るがそれを扱う人もいないとならないわけだ。それも立法院でしかるべくやれといっても出来ないしね。
○嘉陽安春君 選挙公営はまず費用だがね。
○仮議長(松田賀哲君) 公営は軍が反対じゃないか。
○城間盛善君 これは民政府としてはきかないかも知れないよ。しかし我々としては群島政府の場合も出したがあれよりももっと具体的なものをつくるのが義務じゃないかね。
○仮議長(松田賀哲君) 日本では。
○嘉陽安春君 相当程度やっている。
○城間盛善君 日本でやっておればここの民政府も理解出来ないこともないだろう。
○仮議長(松田賀哲君) これも程度の問題でね。全ての費用を政府が持つとか或は公共建物無料使用を許すとか…。
○城間盛善君 少くとも文書の無料発送、演説会場の使用程度でもやれば助かるね。
○祷 清二君 車馬賃でも候補者と運動員何名と制限して出したら…。
○嘉陽安春君 終戦直後の日本の選挙で候補者に紙を出した。所が供託金の二千円はその紙を横流しして出した人もいたとのことだ(笑声)。
○祷 清二君 公営は主張せんといかんね。
○城間盛善君 もう一度選挙法を読みなおしてみんとわからん。
○嘉陽安春君 群島選挙法を印刷して研究してみましょう。
○仮議長(松田賀哲君) そうですね。
  (以下省略)
  (午後零時四十分閉議)

  本日出席者
   仮議長  松田 賀哲君
   参 議  城間 盛善君
    〃   吉元 榮光君
    〃   祷  清二君
    〃   嘉陽 安春君
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