戦後初期会議録

組織名
琉球臨時中央政府立法院
開催日
1951年08月09日 
(昭和26年)
会議名
立法院全員協議会 1951年8月9日
議事録
立法院全員協議会会議録

 一九五一年八月九日(木曜日)午後一時開議

議事日程
 一、中央政府設立計画に関し立法院に対する要請

○仮議長(松田賀哲君) ではこれから全員協議会を開催したいと思います。
 先ず第一にこの前からお互非公式に研究しておりました、軍から来たところの中央政府設立計画についてでありますが、この文章について日本語訳を確定した方がいいと思う点が一つ、又この文章について外部からきかれた場合にお互の答がはっきりして而も各参議とも一致している様な答が必要であると考へられるのでそれについて研究御協議を願いたいと思う訳であります。
 その前にこの文章を発表していいかどうかということについて泉副主席からお話がありますから、それを拝聴したいと思います。
○行政副主席(泉 有平君) 一昨日セーハンさん臨席の下で、例のルイス准将に対する質問事項として、その一つは新聞に発表してよろしいかという第一問と、第二問は新聞発表を許されない場合もあり得ることを予想しての質問だった様ですが、お盆の休暇を利用して郷里に帰る、それでこちらでの色々な仕事の関係上こういうのに触れる様な機会もあるし若し許されるならばそういう機会に友達や身辺の者に内容を述べて意見を聴取する様なことも民主的な行き方の一つの手段になるという様なことからそういう様な点についての、この二つの質問であって、それに対して今朝九時過ぎにアーレン大佐に会いまして第一問の新聞発表の問題はよろしい、第二問の帰郷後のこれの発表という問題についてもこれもよろしいという両方ともOKになった訳であります。以上であります。
○仮議長(松田賀哲君) それではこれは発表していいということになっておりますし、又各参議がお帰りになって皆と話合ってもいいと言うことを軍の方で言明しておられますから、先ず最初にこの訳文を確定して置く必要があると思うのであります。この訳文については行政府の方で適訳をされるのが建前でありまして、又現に行政府の方のその係の安次嶺さんが一応やられたのでありますが、安次嶺さんはアメリカから帰ったばかりでこの内容をよく御存じないので余り確信は持たれんというお話がありましてその内容をよく知っているこちらの我々参議の方とも打合せをしたいという話がありまして、その訳については行政法務の係の城間さんと御協議をされて大体城間さんがこれに手を入れられ更にセーハン氏とも打合せの上で大体決った訳が出ているのであります。それがお手許に差上げてあるものでありますが、尚セーハンさんにきいてもまだはっきりした訳が出ない様な疑問の点がいくつか残っている様でありますので、その点も今日ははっきりさしておきたいと思う訳であります。それで一応委員長の城間さんからこの訳文についてお話を承りたいと思っております。
○城間盛善君 それでは私から訳文を少し訂正したい個所がありますので、それを取上げて見たいと思います。第二項の後の文章「民政府布告第三号により司法制度は現行のものを採用し、中央政府の行政部門はその設立方法が定まり、かくして公選による立法機関設立問題の展開を見るに至った」この文の要旨は読んで字の如く布告第三号によって司法制度は現行の通りやって行く、執行部の設立方法も立法部の議決によってやって行くことが規定されている。従って公選立法機関の設立問題は、これからの問題として残っているという風に、原文は一応そういう風になっている訳ですが、然し、かくして以下は布告第三号から来る結論というよりは一般の民主政治の原則から来ているということをこの前セーハン氏と話合った時にも感じた訳です。で公選ということは大変結構な問題ですからこれに対して兔や角いうのではなくして、これは皆が非常に歓迎しているが布告の解釈からすると一寸変なところがあるという意味で突込んできいて見た訳です。布告第三号には司法制度のこと執行部のことも決めてある。又同時に立法機関のことも決っている。これから作るということは書いてない。一応布告によって三部門とも決っているのに何故立法院だけ問題が残っているという風に持って来るのは解釈上変だがそれをどう解釈するかといって確かめたのですが、立法機関の公選による設立というのは一般民主国における例外のない立法機関の在り方だから、これによってやるのだということになっている様です。それでその訳ですがこれはこういう風に訳したらどうかと思う。「かくして公選による立法機関設立問題を取上げる途が拓かれている」原文にもやや忠実であるという意味からしても、こう直したらと思っておりますが如何ですか。
○與儀達敏君 途が拓かれているとなると布告第三号によって途が拓かれているということになるのですかね。
○大濱國浩君 今の訳より却って原文のままの方が解釈のしようがよいと思う。
○仮議長(松田賀哲君) というとどういう意味ですか。
○大濱國浩君 先程も説明があった様に第三号によって三つのものは当然決っている。然し民主主義の政治の建前からこういう様になりつつある。こういう風にして行かなければならないということを予想している。勿論第三号には示されているけれども結局公選によってこういう様な途が開かれて行く様にならなければならない…。
○仮議長(松田賀哲君) そうすると布告第三号によって決っているが、どうも民主的手続による中央政府ということになれば司法部と行政部はその布告第三号で上から決めた通りで先ずいい、ところが立法機関については、ああいう上からの決め方はどうもいかん。それで一時ああして決めたことは決めたけれども矢張り公選にしなければならない。公選の途はあの布告第三号ででも尚残されているという意味ですね。
○大濱國浩君 結局立法機関は公選ということが主体である。上からの任命ということは至当でないという風に我々の解していることはこの訳でも分りますけれども、今なおされた文によるともっと分らなくなると思う。
○仮議長(松田賀哲君) どうですか今の御意見は。
○城間盛善君 元の訳の方が日本語として筋道が通っているならばそれでもいいと思います。
○副主席(泉 有平君) 原文でいいのぢゃないですか。
○仮議長(松田賀哲君) 酒の問題で今ゼネラルの方に会いに行きますがその間休憩して皆さんの御意見の交換をしていただきたいと思います。
  (午後一時二十二分休憩)
  (午後二時十五分再開)
○仮議長(松田賀哲君) これから協議会を再開致します。何かお話合の結果何か疑問の個所はありませんか。
○主席事務局長(金城寛君) 二項の後の方で「中央政府の行政部門はその設立方法が定まり」とありますが、これは現在の布告第三号によって設立されたものという意味でせうか。第四項の基本法会議その際に中央政府の主席の選挙もその会議でやる…。
○城間盛善君 必ず公選ということも考へられんが、十二月五日の指令を見ると民主的手続によるとなっている。あれを見ると主席も当然公選になる。
○主席事務局長(金城寛君) 基本法会議が出来ても軍からの特別の指示以外は現在のままで行くという訳ですね。
○仮議長(松田賀哲君) これでは立法院の公選をやるというのが主眼であってその他は未決の問題になっているのぢゃないかな。
○主席事務局長(金城寛君) 群島組織法を含む現行諸法令の改正とありますが、この立法院が軍の布告指令、これを改廃する権利を与えられる訳ですか。
○仮議長(松田賀哲君) そこのところは議員が選ばれれば最初の任務が現れて来るでせう。その場合に布告で又向うが出すのぢゃないのですか。
○城間盛善君 新立法院にその権限を与へるか、或は指令が出るということになる。
○嘉陽安春君 諸法令の改正というのは、立法院で出したものだけをいうのか、それから群島で作った条例の範囲に止めるのか、法令については根本の布告指令まで含めるかどうかの疑問が出て来る訳だが、後の市町村制及び群島組織法というのは、この文では市町村及び群島の政府機構の関係法令ということになっている訳ですがね…。
○城間盛善君 この文では市町村及び群島単位の政府に影響する法令を含む現行法…。
○嘉陽安春君 市町村及び群島機構関係法令を含む現行諸法令とこういう風に訂正しませう。
○仮議長(松田賀哲君) 結局ここは、一九五〇年十二月五日のスキャップ指令第一号によるというと民主主義の手続によってなるべく早く中央政府を作る様にということがあるから主席も公選になるのぢゃないかと考へられるが、この文章ではそれが明示されていない。
 それから第三項の前述の期日以後という問題ですが。
○城間盛善君 これは四月一日になおしませうか。
○嘉陽安春君 軍にもきいて見たが四月一日と結びつけて考へなさいということであった。
○城間盛善君 セイフアン氏のいうことは、公選したら速かに招集出来る様にせよ。然しその招集は四月一日と符合する様にせよというのです。
○吉元榮光君 ルイス准将に確めて主席の談として出せば間違いはない。
○行政副主席(泉 有平君) 足らん分は談話で補足することにします。
  (午後三時二十分セイフアン氏出席参議と質疑応答の後四時十分退席)
○仮議長(松田賀哲君) それでは適当に談を発表して下さい。この問題はこれで終ります。
  (午後四時十八分泉副主席退席)
○吉元榮光君 酒についてルイス准将に折衝した結果を報告致します。
 立法院の趣旨はよく分る。同情すべき点もあるが、PXその他からも闇が相当入るので税率を安くしたらある程度闇で入って来るものを防げるのじゃないかという考へ方からしてビールだけは百%その他については百五十%で差支へない。そういうのでセイフアンさんが条文まで書いて来ておりますが、第三章の第十条は消費税の税率は酒類引取価格の百五十%とする。但しビールの税率は百%という風に改めてくれという意向であります。然らばPXからの放出を厳重に取締ることが出来るかといいましたら、PXは世界的なものであってこっちだけの考でこれを改正する訳にはいかない、困難であるが、よく監督して闇を少くする様に努力しようということでありました。それからもう一つは、この税率が施行されて見て六ヶ月間経過してみて悪いと思うならば、あとは百五十%位に引上げてもよろしいという向うの意向であります。その点御含みの上御審議願いたいということでありまして、提案理由としては向うからそういう様にはっきりされたということをいってもよろしいからということでありました。
○仮議長(松田賀哲君) それはルイスが立法院のいうことはよく分る、よく分るが今の闇を抑へるために止むを得ん処置である、これはルイス自身がいったといってよろしいといっていました。
○吉元榮光君 それに関連して煙草の税金は別に引下げる考はないということをはっきりいっておりました。それだけ御報告申上げておきます。
○仮議長(松田賀哲君) 今セイフアン氏の作った条文をいわれたでせう。それを簡単に入れるか、アルコール含有量何パーセントとしなければいかないのか…。
○城間盛善君 ただビール…と書いていいか、アルコール含有量いくらと書かなくてもいいかといったら大丈夫だとはいっていましたがね。
○大濱國浩君 財政局の専門的な立場から話合って見たらいいでせうね。
○城間盛善君 改正条文には元の通りに直して百五十%として但しビールは百%とするとあるが、初めは当分の間を入れてくれということをいったのですが。
○仮議長(松田賀哲君) 当分ということになると後で必ず直すという観念が入って来やしませんか。向うがいうのは百%でやって闇がうまく退散すれば永久にそうするというのですよ。又闇が退治出来なくても少くも六ヶ月はそのままにしておくというのです。
○田畑守雄君 それから現在取っている税金をどういう様に処置しているか、ということをはっきりして貰わんと、その金の保管方法によって我々は郷里に帰ってどういう風にこの金は保管しているから将来期待を以て辛抱してくれということがいへるのですが。
○與儀達敏君 今の提案はいいですね。一応財政局長を喚問してきいて見ようじゃありませんか。
○仮議長(松田賀哲君) それでは本日はこれで終ります。
  (午後四時四十五分散会)

  出席者
   仮議長  松田 賀哲君
   参 議  與儀 達敏君
    〃   城間 盛善君
    〃   大濱 國浩君
    〃   吉元 榮光君
    〃   嘉陽 安春君
    〃   田畑 守雄君
   行政副主席
        泉  有平君
   主席事務局長
        金城  寛君
上へ戻る