- 組織名
- 琉球臨時中央政府立法院
- 開催日
- 1951年09月06日
(昭和26年)
- 会議名
- 立法院文教厚生委員会 1951年9月6日
- 議事録
- 立法院文教厚生委員会会議録
一九五一年九月六日(木曜日)
午前十一時二十分開議
議事日程
一、文教局設置法について
○大濱國浩君 安里さん、屋良さんお二人にはお忙しい所わざわざ時間を割いて貰って有難うございます。実は文書もお手元に差上げてありました通り文教局の設置についてお二人の御意見を伺ってこれを成案に盛りたいという考えのもとに文教局長と図ってお二人をお呼びした訳です。どうぞ腹蔵ない意見を述べてほしいという希望を持っています。一応案を朗読させます。
(書記「文教局設置法案」朗読)
○祷 清二君 逐条でいったらどうな。
○大濱國浩君 どう致しますか。逐条審議でいきそれによって意見が出てくるかも知れない。その順序でやりますか。それとも皆さん方が考えておられることを先にして…。
○祷 清二君 逐条が早いでしょう。
○琉大教授(安里源秀君) 一つ皆さんのいいように…。
○大濱國浩君 では逐条審議でいきましょう。第一条を読んで下さい。
(書記「第一条」朗読)
○仮文教局長(奥田愛正君) これはごく内輪の話だがディフェンダーファー氏や教育法規の係官は設置法は文教局を作ってしもうまでの手段であって大きな問題はその後に続々出て来る。とにかく早く作りさえしたら後は次々の法規でどうにでもなると話していた。
○祷 清二君 この案は軍とも折衝済ですか。
○仮文教局長(奥田愛正君) そうです。どうですか第一条は。
○琉大教授(安里源秀君) いいでしょう。
○大濱國浩君 第二条に移ります。
(書記「第二条」朗読)
○仮文教局長(奥田愛正君) これは大体文部省設置法の定義をそのまま当てはめてあります。ただ初等学校とは小学校とあるのを初等学校、中等教育とは中等学校及び高等学校とし又特殊教育の中に癩学校も入れた訳だ。
○沖縄群島政府文教部長(屋良朝苗君)(以下文教部長という)特殊教育の中の癩学校は養護学校の中に含めてはいかないのか。つまり身心不健全なものだから養護の中に入れていいと思うね。
○仮文教局長(奥田愛正君) 特別に癩学校と入れたのはディフェンダーファー氏が設置法案中に英語で入れたからだ。
○文教部長(屋良朝苗君) しかしこういう基本的なものは養護学校でいいじゃないかね。又その他同様な教育機関とは具体的にはどんなものがあるかね。
○大濱國浩君 これは養護学校が入っていない時のことだから消している。
○文教部長(屋良朝苗君) 養護学校としておけばいろいろなものが含まれるからいい。癩など入れなくてもいい。
○琉大教授(安里源秀君) 第二項の括弧内は日本の法規に入っていますか。
○仮文教局長(奥田愛正君) 入っています。初等学校とか中等学校とかいう言葉はどうですかね。
○文教部長(屋良朝苗君) 私個人としては日本の呼び方に近づけた方がいいと思う。
○琉大教授(安里源秀君) これを小学校と直すと沖縄の学校は全部名前を変えんとならなくなる。
○大濱國浩君 初等学校を小学校に変えるということはどうせ将来そうなるんじゃないかね。
○文教部長(屋良朝苗君) この名称の変更については我々としてもまだそれに対する考えも持っていないし…。
○仮文教局長(奥田愛正君) 小学校、中学校というのがいいように感ずるがね。
○文教部長(屋良朝苗君) 高等学校というのがあるから中等学校というのもあっていい訳だ。私一個人の考えでは日本に近づける意味でいいと思うが今直に変更するということはどうかね。
○仮文教局長(奥田愛正君) 中等学校というのは昔の中学校や実業、工業など一切をまとめて云ったのが中等学校ですよ。
○文教部長(屋良朝苗君) こういう名前はむしろ中国の呼方がいいかも知れん。初級中学、高級中学とね。(笑声)その方がぴったりくるよ。
○琉大教授(安里源秀君) それが理論的だよ。
○文教部長(屋良朝苗君) これはだね。学校教育法や教育基本法などが出来たらその時に学校とはというようにしてそれで変更してもいいじゃないか。
○琉大教授(安里源秀君) 四項のレクリエーションというのは社会人に対する何ですね。
○文教部長(屋良朝苗君) この青少年教育というのは具体的にどういうのがありますか。
○仮文教局長(奥田愛正君) 高等学校教育を受けている者と中学校だけ出て社会に出た青少年の教育が考えられるでしょう。
現在日本では青少年の学校外に於ける教育という面でやっているようです。ボーイスカウトなどもその一つでしょう。
○文教部長(屋良朝苗君) この生活向上のための職業教育云々は皆生活向上にかかる訳か。
○仮文教局長(奥田愛正君) そうです。
○琉大教授(安里源秀君) 日本語の使い方だが及びはそこで使いますか。
○文教部長(屋良朝苗君) これはおかしい。
○琉大教授(安里源秀君) 日本の場合はどうなっているか。
○大濱國浩君 この通りです。
○文教部長(屋良朝苗君) そんなら運動競技、レクリエーションは別ではないかね。
○仮文教局長(奥田愛正君) これは生活向上のための職業教育とこれに関連する教育と考えられないか。
○文教部長(屋良朝苗君) いや科学教育までは生活向上にかかると思うがね。運動競技、レクリエーションは別だと思う。
○琉大教授(安里源秀君) 特別こう取出した理由は単に科学教育、職業教育をやるんじゃなくて生活面の向上のためにやるという所に意義があるんじゃないか。
○文教部長(屋良朝苗君) ここの所は具体的にはっきりした方がいい。
○琉大教授(安里源秀君) この「並に」という言葉で運動競技から公民館まで一括されたと考えていいじゃないか。
○仮文教局長(奥田愛正君) それがいいですね。
○文教部長(屋良朝苗君) しかし考え方によってはこのレクリエーションなども必ずしも生活向上のためという真面目くさった考えでやるかね。
○大濱國浩君 社会教育とは社会人の生活向上のための教育ともう一つは社会教育に於ける活動の面を定義したと考えていいでしょう。
○琉大教授(安里源秀君) それでいいでしょう。
○大濱國浩君 後戻りするが一項の初等教育はやはり小学校とした方がいい。
○仮文教局長(奥田愛正君) ここでは中等学校はないでしょう。
○琉大教授(安里源秀君) しかし正式の名称は中等学校ですよ。
○大濱國浩君 現在では中学校以外に中等学校はない。私の考えでは一種あるものには中学校といっている。又高等学校にはいろいろあるからそれはそれでいい。
○琉大教授(安里源秀君) それは名称の解釈だ。
○文教部長(屋良朝苗君) 将来はっきりさせた方がいい。それまでにいろいろ研究して…。
○大濱國浩君 第三条に進みましょう。
(書記朗読)
○仮文教局長(奥田愛正君) これは大体民政府から出た書簡によって決めた。この全琉にわたる教育機関というのは今の所ないが将来はあり得る。そういう場合を予想している。
○文教部長(屋良朝苗君) 例えば全琉にわたる教育機関としての工業学校、水産学校あたり将来考えられないか。
○仮文教局長(奥田愛正君) 農林にしても工業学校にしても中央政府で立派なものをつくる必要がある。群島では到底出来ない。
○琉大教授(安里源秀君) 第二項の民主的という言葉は入れんといかんかね。
○仮文教局長(奥田愛正君) これはやはり教育委員会をつくるという意向を示しているのです。軍では既に教育委員会をつくる計劃をもっている。この委員は十名になるらしい。勿論中央政府に属する訳だ。
○文教部長(屋良朝苗君) それは局長の諮問機関か。
○仮文教局長(奥田愛正君) いや結局アメリカ式になる。局長は最高執行官の形を持ち教育委員会が実権を握るという形を構想しているらしい。しかしこの委員は立法院の同意を得て主席が任命することになろう。
○文教部長(屋良朝苗君) 委員長は日本の教育長に当る訳だね。そうすると教育の実権は誰が持つか。
○仮文教局長(奥田愛正君) 結局委員会でしょう。
○大濱國浩君 第三条は良いですか。では四条に移ります。
(書記「第四条」朗読)
○大濱國浩君 御異議ないようですから五条に移ります。
(書記「第五条」朗読)
○大濱國浩君 如何ですか。異議ないようですから六条に移ります。
(書記「第六条」朗読)
○琉大教授(安里源秀君) 特殊教育はどの課が扱いますか。
○仮文教局長(奥田愛正君) 学校教育課の中です。
○大濱國浩君 異議ないようですから七条に移ります。
(書記「第七条」朗読)
○大濱國浩君 管守というのは保管でしょうね。
○仮文教局長(奥田愛正君) そうでしょう。これは法律用語です。
○大濱國浩君 では八条に移ります。
(書記「第八条」朗読)
○文教部長(屋良朝苗君) 八条三項の全ての教育職員とは全琉的なものを意味するか。
○仮文教局長(奥田愛正君) そうです。
○文教部長(屋良朝苗君) 養成機関を建てるのか。
○仮文教局長(奥田愛正君) 養成機関を建てるのではなく基準をつくる訳だ。
○文教部長(屋良朝苗君) するとその基準に従って免許証を与えることは群島でやる訳か。
○仮文教局長(奥田愛正君) 群島の教育委員会でしょうね。
○文教部長(屋良朝苗君) するとそれは全琉に通用する訳か。
○仮文教局長(奥田愛正君) 教育委員会さえつくれば通用するだろう。
○文教部長(屋良朝苗君) 調査研究をするだけだから基準を決定するということは出来ないじゃないか。免許法などは各群島がつくる訳かな。
○琉大教授(安里源秀君) 法は立法院がつくるからここでは只法案作成の準備をするだけだ。
○仮文教局長(奥田愛正君) 法案をつくる準備のための調査研究だ。
○文教部長(屋良朝苗君) 先の三条と各課の分担事務とはぴったりしないね。
○大濱國浩君 将来は全琉的な教育施設が出来る訳だがこれではどの課がやるか分らない。
○仮文教局長(奥田愛正君) 八条、九条を「つかさどる」とすると群島政府の法規と抵触するという訳だ。全琉的なものは現存しないから庶務課の「その他」に入れてもいいと思う。
○文教部長(屋良朝苗君) しかし教育施設の管理を庶務課がやるのはおかしい。
○琉大教授(安里源秀君) 第八条の前文は七条のように「事務を行う」として「調査研究を行う」は各項目別につけて、さらに付け加えることは出来ませんか。少し体裁は悪いが…。
○大濱國浩君 八、九条は七条みたいに事務をつかさどるとして、一、二、三は調査研究を行うとして八条と九条に全琉教育施設、社会施設に関することとした方がいい。
○仮文教局長(奥田愛正君) 向うの考えでは将来これはどんどん改廃出来る。そんなにやかましくする必要はない。唯一の目的は文教局をつくることだといっている。
○文教部長(屋良朝苗君) これは三課をおくとだけして後は内規で決めてもいいじゃないか。
○仮文教局長(奥田愛正君) それは少し具合が悪い。課の事務までは入れんと…。
○文教部長(屋良朝苗君) 学校教育課に於ては所管の教育施設の行政事務をつかさどり並びに左の事務に関する調査研究を行うとしたら…。社会教育課に於ても同じだ。
○大濱國浩君 それでいいでしょう。それから安里さんあなた方の琉大は校外教育部の方に工業試験場、放送局などの施設がある訳だが軍の手でこれらの施設が完備されたあかつきは大学に接収した方がいいか、それとも中央政府に接収した方がいいか、どう思いますか。
○琉大教授(安里源秀君) 放送局の如きは情報宣伝の機関ですからそういうものは大学で独占しようとは考えていない。他の印刷局などは大学の校外教育施設としてやっていきたいが一概にはいえないだろう。或る部面では大学でやりたいし或る部面では協同でやっていきたい。
○大濱國浩君 今各群島にある文化情報会館は軍の方でやっている訳か。
○琉大教授(安里源秀君) あれは将来とも軍の方でやると思う。単なる図書館ではなくアメリカ的情報宣伝をする場所だ。
○文教部長(屋良朝苗君) だからあんなに早く立派につくったかも知れないね。
○大濱國浩君 どうも有難うございました。これで閉会致します。
(午後一時十二分散会)
本日の出席者
文教厚生委員
大濱 國浩君
〃 祷 清二君
仮文教局長
奥田 愛正君
琉大教授 安里 源秀君
沖縄群島政府文教部長
屋良 朝苗君
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