- 組織名
- 琉球臨時中央政府立法院
- 開催日
- 1952年01月18日
(昭和27年)
- 会議名
- 第1回立法院本会議 1952年1月18日[1]
- 議事録
- 第一回立法院本会議会議録
第九十五日目
一九五二年一月十八日(金曜日)
午後一時十分開議
議事日程
一、立法院事務局職員任用法の一部改正について
二、琉球臨時中央政府法務局設置法案について
三、琉球臨時中央政府行政主席情報局設置法案について
四、琉球臨時中央政府総務局設置法案について
五、輸入砂糖消費税法案について
六、琉球臨時中央政府厚生局設置法案について
七、琉球臨時中央政府公安委員会設置法案について
○議長(泉 有平君) 開会致します。
二、三法案について軍から態度を表示したのが来ましたのでそれを議題に致したいと思います。まず立法院事務局職員任用法の一部改正、法務局設置法案、情報局設置法案について同様な書翰が来ておりますので一応朗読致させます。
(事務局長比嘉良男君朗読)
○議長(泉 有平君) 以上三案を一括して第三読会に入りたいと思います。つきましてはこれの採決のための討議に移りたいと思います。
○松田賀哲君 この法案は無事SOPを通過しておりますが、これを生み出すまでには委員会の方々は勿論、慎重協議をされたことであるし、尚数回に亙って証人の喚問など手落なくやられておるのを拝見しておりますが、本会議、二読会に至るまで又委員以外の各位も慎重審議、幾多の討論が出て二読会まで終った訳でありますが、SOPも本日附でそう云う書翰が参っておりますので、従いまして私と致しましては原案に賛成であります。
○議長(泉 有平君) 本案の成立に対して反対の御意見はありませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) では本案の採決に入りたいと思います。本案の成立に反対の方がございますか。
(発言者なし)
全員賛成だと認めまして可決することにします。
次に情報局設置法案についての第三読会に入ります。採決のための討議に入りたいと思います。
○吉元榮光君 本案は既に委員会でも相当慎重に討議研究され、尚第二読会に於ても逐条的に相当突込んで討議され、皆の意見が大体一致点まで行きましてSOPの段階を経て来たので軍にも異存はないでありませうし、それを無事通過するよう希望するものであります。
○議長(泉 有平君) 反対の意見はございませんですか。採決に入ります。本案の成立に反対の方は挙手をお願いします。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) 全員一致で本案の成立を議決したものと認めます。
続いて立法院事務局職員任用法改正案でございますが、これの採決の前の討議に入りたいと思います。
○大濱國浩君 立法院職員任用法の一部改正につきまして読会を省略致しまして慎重審議致しましたので、軍のSOPの段階に於きましても異議なしの書翰が参っております。大濱参議はこれに対しまして、読会省略によるところの案に対して賛成するものであります。
○議長(泉 有平君) 反対意見はございませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
採決に入ります。本案の制定に反対の方は挙手を願います。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) 反対の方はございませんので全員一致で議決確定したものと認めます。続いて総務局設置法を議題に供したいと思います。本案について軍の審議の結果多少修正されたところがありますので、その点について御協議をお願いしたいと思います。
(事務局長比嘉良男君朗読)
○議長(泉 有平君) 軍から修正された第七条の第二項、第三項について全員協議会に移して話合いたいと思います。
(午後一時三十分全員協議会)
(午後二時二十分再開)
○議長(泉 有平君) 本会議に移ります。
輸入砂糖消費税法案について次のような軍の修正要望があるのでありますが、御報告致します。
(事務局長比嘉良男君朗読)
○議長(泉 有平君) この要望に対しては委員会で検討していただきたいと思いますが、如何なものですか。別に御異議ございませんでしたら、委員会で検討して委員会の修正案として必要があれば出していただくことに致します。
次に資源局設置法案に対する軍の要望がありますのでこれを朗読致します。
(事務局長比嘉良男君朗読)
○議長(泉 有平君) この点につきましては委員長が早速軍の資源部との間に重ねて調整に当られておりますので、委員長に御報告をお願い致します。
○吉元榮光君 十七日今朗読された書翰が来ましたので早速農林省とも連絡をとりまして、如何なる事情によってそうなされたものであるかと云うことをよく調べて来るようにと云って来ましたが昨日までの返事によると、今日一つ立法院の意思も聴きたいと云う話がありましたので、私も出かけて行きまして資源部長のチャップマン大佐とお会いしましたら、これはそう大きなことでもないから、アメリカでは協同組合なんかと云うのはここでやっておって決して官憲から余り手を触れていないと云う行き方をしている、それでそう云う要望をしていると云う説明をされたのであります。然し私としてはアメリカと琉球とは趣が違うと、アメリカみたように農業が企業的になればなるほど協同組合もそう云う面で強化されておって単なる普通の企業とも太刀打が出来ると云うことも考えられるが、沖縄は小さい農家が集まってお互が協力してお互を護ろうと云う弱い考え方であるために、どうしても政府としても育成もしなければならないし、又一面には大正八、九年頃第一次世界大戦の後で前の沖縄県で県庁から産業組合を普及するようにと云うことで町村に産業組合を設立せしめておったのでありますが、その時に指導監督が十分行き渡らないために運営を誤って農村に非常に恐慌を来したことがあるので、そう云ったことを繰返したくないと云うのが立法院の意思であると言ったら、そうかよく分った、これは不同意だと云う意味ではないから異存はない、そのまま通してよろしいと云う向うの意見を確めて来たのであります。これをそのまま一つ通過さしていただきたいことを希望致します。
○議長(泉 有平君) では本案については以上の報告に基きまして三読会に移ることに致します。採決のための討議を致します。
○城間盛善君 本設置法案は資源委員会に於て慎重審議を重ね、更に本会議に於ても全員の十分なる検討を加えられた後、而も民政府に異存はないと云う意思表示がありますので賛成します。
○議長(泉 有平君) 反対の御意見はございませんか。では採決に入ります。本案の成立に反対の方は挙手を願います。
別に反対意見はございませんので本案は全会一致で成立したものと認めます。休憩致します。
(午後二時二十七分休憩)
(午後三時七分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
厚生局設置法案についての軍の要望事項がありますので、これについては委員長の方で調整に当られているようでありますのでその経過を御報告願います。
○大濱國浩君 二読会中で軍とのSOP関係がありましたが、どうも厚生局と資源局の畜産課がしょっちゅうやっさもっさで審議が続行されましたが、更に軍に於ても軍の資源局と厚生局の意見が対立してなかなか収りが着かなかったようでありますが、一九五二年一月十五日附の書翰で琉球臨時中央政府厚生局設置法案に異議なし、但し獣医師と云うのを第七条第三項に挿入するものとすと云うルイス書翰が参ったのでありますので、これについて資源局の畜産課と更に折衝しましたところ、一月十八日附でルイス准将から更に一九五二年一月十五日附主題厚生局設置法案を参照されたい、次の字句はこれを削除する、削除するところの字句は、但し獣医師を第七条第三項に挿入するものとすると云う一月十五日のルイス書翰を削除して、所謂原案、我々が第二読会に審議しましたところの原案が異議なしでSOPの段階を通過した訳であります。
○議長(泉 有平君) 右御報告によりまして三読会に移ります。採決の前の討議に入ります。
○冨名腰尚武君 提案されました厚生局設置法案に関しましては色々な面から多種多様の問題があったのでありますが、委員会に於てもこの点種々の面から十分な検討をなされ、又二読会に於ても全員で各種の面を検討し、少くとも我々としては満足な案としてSOPの段階に廻したのであります。これがSOPも無事通過しましたので私としては原案にそのまま賛成するものであります。
○議長(泉 有平君) 反対意見はございませんですか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) ありませんでしたら採決に入ります。本案の成立に反対の方は挙手をお願い致します。
(挙手なし)
ございませんでしたら、本案は全会一致で可決することに致します。
砂糖消費税法案についてSOPの段階に於て軍の要望事項がありますので、これに対して委員会の修正案が来ておりますので、これを議題に供することに致します。
○冨名腰尚武君 輸入砂糖消費税法案に関しましては前回の本会議で院としての方針が決り、これをSOPの段階に提出した訳でありますが、軍としては案に対して多少の修正を要望して参りました。この要望事項について委員会で検討致しました結果、軍の要望は尤もであると云う風に意見が一致しましたので委員会として改めて修正案を提出した次第であります。修正の個所を申上げます。
第二十一条第二号でありますが、第二十一条の第二号は前号の外詐欺その他不正な行為により消費税の免除を得又は免除を図ったものに関する罰則が第二号でありますが、これは原案は「前号の犯罪にかかる砂糖はこれを没収し消費税は直ちにこれを徴収する」と、こうなっていたのであります。この行き方で行きますと事情の如何に拘らず前号の犯罪にかかる砂糖はこれを文句なしに没収すると云うのが原案の規定になっているのであります。これを「前号の犯罪にかかる砂糖はこれを没収することが出来る。但し消費税は直ちにこれを徴収する」、「没収し」の字を削り「没収することが出来る。但し」までを新たに挿入するのであります。これによって事情の如何によっては砂糖は没収しないで置くことも出来ると云う多少そこに柔軟性を持たすような形にしたのであります。もう一つは第二十二条はこうなっております。原案は「前条の犯則にかかる砂糖を犯則品として引取り、受領、買入、所持又は販売したものは五万円以下の罰金、一年以下の懲役若くは両刑に処す」ここで委員会案としては「犯則品として意識して引取り」とあったのをどうも「意識して」と云う言葉は熟さないから犯則品としてでも故意に犯則品と分りながらやったと云うことは酌み取れるじゃないかと云って本会議で「意識して」の四字を抹消した訳でありますが、この「意識して」は矢張り入れておいた方がいい、故意の場合にのみ適用する点をはっきりさせる意味で前の本会議で消していただいた「意識して」と云う四文字を改めて復活させた訳であります。
更に今一ヶ所は第二十二条の第二号「前号の犯則にかかる砂糖はこれを没収する」と云うのが原案でありましたが、これも先の例に倣って「没収することが出来る」と情状酌量がなし得るように修正したのであります。以上三項を修正し残りは全部原案そのままであります。
○議長(泉 有平君) 以上の委員会の修正案に対して質疑或は異議がございましたらお願いします。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) 異議ございませんようですから、これで本案についての二読会を終了致します。議事の進行上読会を日を変えて行うと云う手続を省略したいと思います。御賛同を得たいと思います。
(「賛成」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) 三読会に移ります。採決のための討議に移ります。
○嘉陽安春君 本案は委員会に於て慎重審議の結果出来た案でありますし、更に本会議に於て慎重なる審議を経た案でありまして、民政府としても異議はないと云うことが来ております以上、本案に賛成したいと思います。
(「賛成」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) では反対意見がございませんですから本案は全会一致で可決することに致します。
続いて公安委員会設置法の保留されている第二十三条について御説明を願います。
(事務局長比嘉良男君「第二十三条」朗読)
○議長(泉 有平君) 本議案について質疑又は意見がありましたらお願いします。
○田畑守雄君 第二十三条に対しては先日来本会議で私は縷々奄美連絡所では特異性がある。大島に於ては警察行政は十分機能を発揮し得ないと云うことを主張し続けて来たのでありますが、昨日幸いにして大島の警察本部次長、警務課長が見えたので今一度現地に於けるところの警察行政の在り方について証言を求めていただきたい。それから仲村警察本部長にも証言を求めていただいて、そしてこの法案を審議していただくようにお願いしたのでありますが、それが幸いにして承認をいただきまして午前中に両警察関係の方からの証言がありました通りどうしても連絡事務だけでは円滑な警察行政を行い得ることは出来ない。或る程度の権限委譲をして、そして支部と云う責任を持たして行かなければならないと云う証言もあったのでありますので、第二十三条に対しては今一度考えていただくようにお願いする次第であります。
○冨名腰尚武君 名瀬市には単に連絡所でなしに警察本部の支部を置くことが望ましいと云う田畑参議の御意見に対しては賛成であります。その賛成の理由は今朝の証言によりまして、現地側からも詳細にその必要な所以が証言されましたし、又一方沖縄警察本部長もその必要性を説き、強力にその設置方を要望していたのであります。委員会の案として全琉警察と云う線を観念的に貫くと云うお考は大変立派であり又そうであって欲しいのでありますが、警察行政と云うものは他の行政と違ってその運営が多少でも不備な点があれば治安面に多大の障害を来すことを懸念していたのであります。それで今日の証言によってこれを置かないと云うことになると、私自身としては矢張り幾分かの障害を来すことが懸念されたのであります。専ら直接その面を担当している人達のはっきりした証言によりまして、私は名瀬市に琉球警察本部支部を置いていただきたいと、こう云う風に思うものであります。
○議長(泉 有平君) 今のお説と違って原案通り或は又別な変った御意見の方がありましたら…。
○城間盛善君 今朝大島関係の方々の証言を得ましたが、その趣旨に於て私は原案の通りで十分運営出来ると思います。原案の第三号、第四号、委員会の定めるところによりその所掌事務の一部につき、連絡所長をしてこれを行わしめることが出来ると云う項があります。その所掌事務はどう云うものを移管するかと云うことは、結局警察運営の任に当る公安委員会が定めることになっております。原案に於てもそう云うゆとりは十分与えているつもりでありますので原案のままで私は十分だと思っております。
○松田賀哲君 私は冨名腰参議の御意見に賛成するものであります。今城間参議の御発言によると云うとそれだけのことはこの第三号、第四号でやれると云うのでありますが、この第三号を見ると云うと連絡所長は警察本部長の指揮監督の下に連絡を行うと、指揮監督は警察本部長、勿論であろうと思うけれどもこの大島だけに於ては矢張り連絡所長と云うものは単なる連絡、つまりメッセンジャー・ボーイみたいにして各署長に伝達をすると云うだけでは不十分で、自ら指揮監督を警察署に対して執らなければならないような事態も生ずると云うことは今朝の証言でお分りになったろうと思うのであります。それからこの第四号の方の所掌事務の一部につき連絡所長をしてこれを行わしめると云うことになって、勿論所掌事務がどの範囲であるかと云うことは分らんのでありますが、それが一部分移されるかも分りませんが、然し第三号によりましてこの連絡所長と云うのはあくまでも連絡の意味が強いのであります。いざと云う場合に全警察を指揮監督すると云う点は弱いように見えます。同じ離島でありましても宮古に於ては警察が一つ、八重山に於て二つと云うのでありますが、その二つと云うのは一つはこれは與那國でありまして極く小規模のものであります。従ってこれらの二つの島に於ては警察署が先ず一つと云ってもいい位でありまして、十分指揮監督は出来ると思いますが、この六つの警察署をもっているところに於て全警察署を動かすと云う場合には連絡所長では出来ないのぢゃないかと思います。これは事実にぶつかって見ないと分らんと云えばそれまでの話でありますが、何か連絡所長と云う名前では難しくはないかとこう思うのであります。そこでこの島の特殊事情を勘案してさっき冨名腰参議の言われた通り支部を置き支部長を置くと云うことに対しては賛成するものであります。
○嘉陽安春君 私は原案を支持するものであります。その理由と致しましては委員会はこれに慎重なる検討を加えたのでありますが、その際に委員会が原案作成の際に聴きました証言によってなり、或はそれまでの私共の委員として聴いておりました議論によりますと連絡上必要である、運輸交通の機関が不十分である、そう云う連絡機関が不十分であるがために何らかの繋りをつける意味に於ての連絡機関が必要であると云うことが強調されておったのであります。私委員として参画した訳でありますが、この連絡の必要あることを認めまして連絡所と云うのを設置する結論に至ったのであります。然しながら更にその際委員会としては連絡の必要はある、然し一部に権限まで或る程度の権限を委譲すべきである、委譲した方がいいんぢゃないかと云う議論もあったのでありますが、委員会がそれまで聴き得ました証言で、その点については原案作成の過程に於て別に強い主張を聴かなかったのであります。ただ然し矢張り色々委員会は独自の立場に於て検討をとげました結果、矢張り或る程度の、更に委員会としては他群島との均衡の関係もあり殊にそれが住民の便宜のためであるとか云うことになります場合に、或は権限の委譲などと云うことはそれが住民の便宜のためであると云うことでありましたならば、総合的に琉球一体として考えられなければならないことでありまして、ただ一地区を限って便宜のためにと云うようなことに対して相当な疑問を感じたのでありますけれども、矢張りそこに色んな事態を予想し単なる画一的と云う理論だけでいえない断定する訳にいけない、或る程度の権限委譲の必要あることを認めまして、更に連絡所であるけれども公安委員会の定めるところによって、新しく設置せられましたところの公安委員会が決めた限りに於ては或る程度の権限を委譲しても、事務の委任をしてもいいんぢゃないかと云う結論に達しまして、更に一項を加えたのであります。この制度は十分に琉球の一体となっての情勢を考えつつ更に特別の事情も考慮した趣旨になっておりまして名称の問題ではないかと思うのであります。然しながらそこに矢張り交通運輸の不便と云うことは、やがて琉球の交通運輸の状態が早急に解決せられることによってだんだん解決さるべき点であろうと思います。そう云う点を考慮した場合に原案の程度を以て妥当な解決なりと考えるものであります。
○田畑守雄君 只今の嘉陽参議の御説に対してはさっぱりその本体を掴み得ないのでありますが、連絡所を置くことによって住民の一部の便宜を考えると云うことは、一部分のものだけを考えると云うようなおっしゃり方でありますが、警察行政と云うものは人民の生命財産を保護して行くと云う重大な任務があります。これは直接法を施行して行くと云う点から考えました時に全琉球各地区が必ずしも一貫した行き方ぢゃない、地域によってはいくらか異って行かなければならないと云うことはこれは行政する者が最も考えなければならないことだと私は思うのであります。ただ単に均衡上やらなければならないと云う行政の在り方であったら何らそこに、真にこれは切実な政治の行き方だと思うのであります。殊に一般の行政各局に於ては支局を置いて権限をはっきり委譲しております。特にこの指揮系統を判然とさせなければならない警察行政に於て曖昧模糊たる置き方をすることに対して私は納得が行かないのであります。どこまでも連絡所と云う単なる連絡を主体に置く行き方には賛成致し兼ねます。これは第四条の御説明に於ても単なる委任事項は運転手免許の程度だと言われました。然しながら今日の証言によって沖縄の仲村警察本部長もはっきりした委任事項を大体述べていらっしゃいます。ああ云うような大きな問題が惹起した時には住民の便宜どころの騒ぎぢゃなくて警察そのものに折角法を執行して貰うのにそれが出来ず、住民の生命を保護して行けないような場面に立ち至らないとも云えないと思うのであります。その点に於てこれは支部を置き、そして権限の委譲をさせるべきだと思うのであります。
○冨名腰尚武君 城間参議の御所見は現在のままでも第四号に規定があるから権限委譲についてはこの号を活かすことによって問題はなかろうと云うような御所見であります。又嘉陽参議の御発言の中にも結局は名称の問題に止まるのぢゃないかと云う御所見であります。私は然しこの点に於ては見解を異にするものでありまして、名称と云うものは決していたずらなものではない。その名称をつけるからにはその名称がはっきり事務内容を限定されるような名称でなければならない。それは単に事務の連絡の面に当る場所、機構と云うだけでなしに、場合によってはそこではっきり指揮権も握っており、監督権も握っており又裁決権も持ち得ると云う性格を明かにするために名称と云うものは当然あるべき形に持って行った方がいいだろうとこう思うのであります。で単に事務連絡だけでは非常に不安を感じるのは繰返すようでありますが、今朝の証言に於て私が特に痛感しますのは、非常事態、緊急事態が発生した際に命令者がいない場合は、警察が予算面やその他の点から隣接警察署から応援を求められた場合でも出渋る虞がある。十名の要求に対して五名しか寄越さない、これは場合によっては生命を賭して事に当らなければならないのでありますから、部下を預る署長としては簡単に同格同輩である隣接署長若くは下級である隣接署長の要請にすぐ応ずるべきではありますが、実情としてそう云うこともある。これは長年その位置にあった人の証言であります。そう云うことも起り得る。又仲村本部長も申しておりましたように三警察署管内に跨る仕事がそれぞれの管内で起った、それぞれの事件に対してばらばらにこれを処理して行くと云ったようなことも起り得る、或はその管轄地域の境界で生じた事件に対して甲の署と乙の署との間に仕事のなすり合いをやると云ったような不祥事態が起ることが懸念される。これが一番由々しい問題ではないかとこう云う風に考えているのであります。それから軍との連絡と云う面も軍からの指示事項に対してこれが処置並にその処置に対する報告と云ったようなものは大島の特殊事情を考えた場合に、その必要が殊に痛感される点であります。更に又科学捜査上の鑑識資料の保管と云ったようなものも、これを全部警察本部に大島のものも移すと云うことになった場合に、大島管内での大島地区内での犯罪捜査に対してこれが間に合わない、一々係官が那覇まで出張して来て調べなければ間に合わないと云うような面も折角科学的捜査をやると云いながら一面に於て隘路を設けてしまうと云うような点を感じられるのであります。更に又消防上の応援の問題も仲村本部長は言及されていたようでありました。こう云う面からしてどうしても所掌事務の一部を預けると云ってもかなりな範囲に於てそこで即決し、処理をし指揮命令が出来るような形のものにしておかないと、治安維持上の警察としての責任は取り難かろうとこう思うのであります。それから嘉陽参議の御発言の中に委員会の証言にはこう云うものを必要とする積極的な要望がなかったと云うお話でありますが、本日の証言に於ては浜田警務課長もそれから仲村警察本部長も極めて強くこれを要望しているのであります。そうしますとそこに証言の喰い違いと云うものが生じて来るのでありますが、これを何れの証言を採るかと云うことについては、これは又問題も生じて来るのではないかと思うのでありますが、私は現地側の人は兔も角現地側に有利なように考え勝ちであるので、現地側の意見に対してはそれ程にも考えませんが、仲村警察本部長が特に大島のその面に対して強力にその必要性を説かれたことに対しては私はこの証言の比重を相当に重く見ているものであります。そう云う点からもこれは単に連絡所と云ったような観念でなしに矢張り支部と云う形で持って行くことが望ましいとこう思うものであります。
○吉元榮光君 私はこの問題については理論的に実証的に論じて見たいと思います。と云うのは戦前大島郡は鹿児島県に所属しておって鹿児島県の采配を受けておったのであります。その際、向うの警察の行政の在り方は鹿児島県から直結して警察行政が行われておった。だが然し昭和十九年になって戦争のため交通の不安彼此の関係から大島支庁が書記官が置かれ、そしてその下に警察課が置かれ七名の警察官、職員で連絡事務を執っておった。その警察課の課長は名瀬警察の署長であるところの警視が課長を兼務しておって何ら不自由はなかったと云う証言でありました。ところが現在の警察行政の沖縄本島と大島本島との違いは沖縄本島に於ては元の沖縄県令を主体として警察行政が運営されている。然し大島に於ては鹿児島県令を踏襲してそして警察が運営されていると云うことでありますが、そこの両方に警察行政の県令に於てそう大した開きがあるものとは思いません。何故かと云うと警察の在り方は戦前であったならばこれは内務省からの指示によって、その範囲内で県令が定めらるべきであってただ地方事情が多少織込まれるだけであって大した差はないと思います。保安局の在り方は本部で計画したところの行政を末端の警察署長が責任を負うべきものであって中間に何か置くと云うことは好ましからんことであって、これは警察署長の権限を狭めるようになりはしないかと思うのであります。警察行政の一体的活動をするならばなお一つ戦前みたように大島各島に無電施設が、通信施設が整備されるならばそう云う連絡事務の不便は緩和されると云うことも今日の仲村本部長の証言にありました通りであります。
そう云った観点からするならば今の連絡事務位にして、あと第四号は本部と連絡所長との運営で緩和される問題ではないかと云うことを考えますので、私は原案通りで十分警察行政に支障を来さないものと信ずるものであります。だから私は原案を支持するものであります。
○田畑守雄君 只今の吉元参議の御発言に対して私は誠に同感するものでありますが、同感すると云う点はつまり今の通信機関が完備した場合には支部を置かなくてもいい直結で出来る。この点は私も将来、そう云う在り方であって欲しいと思うのです。早急に出来たら幸いでありますが、現在の段階に於ては出来ないと云うことがはっきりしていると私は申上げても過言ではないと思うのでありますが、その点吉元参議はいつ頃までに出来ると云う見通しを持っておられるか聴かせていただきたいと思います。
○吉元榮光君 見通しと云いましても、私の所管事項でないのではっきり申上げられませんが、郵政局も非常に努力していると云うことを郵政局長から聴いておりますので、その程度で一つ御勘弁願います。
○田畑守雄君 それは余りに無責任な発言ぢゃないかと思います。
○大濱國浩君 各参議の御意見は何れも理論に於ても実際に於ても相当歩み寄っている点があるのぢゃないかと思います。要は名称にそう云うような内容を持たせるか、或は内容が伴わない単なる連絡所で行くかと云うことに結論はなるのぢゃないかと思いますが、休憩してもっと話合ってこの問題を解決しようぢゃありませんか。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
(午後三時五十分休憩)
(午後四時二十二分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。
今日の会議はこれで打切りまして明日午後一時から続行することに致します。
(午後四時二十三分散会)
出席者
議 長 泉 有平君
参 議 松田 賀哲君
〃 城間 盛善君
〃 冨名腰尚武君
〃 大濱 國浩君
〃 吉元 榮光君
〃 嘉陽 安春君
〃 田畑 守雄君
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