- 組織名
- 琉球臨時中央政府立法院
- 開催日
- 1952年01月16日
(昭和27年)
- 会議名
- 第1回立法院本会議 1952年1月16日
- 議事録
- 第一回立法院本会議会議録
第九十三日目
一九五二年一月十六日(水曜日)
午前十時三十五分開議
議事日程
一、琉球臨時中央政府行政職員任用法中一部改正について
二、立法院事務局職員任用法中一部改正について
三、琉球臨時中央政府公安委員会設置法案について
○議長(泉 有平君) 開会致します。最初に職員任用法中一部改正とこれに似た同様な立法院事務局職員任用法中一部改正、この両案は設置法と非常に関連が深いのでありまして、一応この会期にこれについての立法をして置くと云うことが今までやって来ました各局の設置に対して有終な美をなさしめる所以だと思いまして、大体この審議に必要な期間中定足数を充たし得る見通しがつきましたので、これの審議方について御相談を致したいと思います。これは例のビートラー書簡には出ていないのでありますが、これを採択して行くかどうかと云う最初の決定を致したいと思います。
○冨名腰尚武君 行政職員任用法に関しましては、これは群島政府の存続と云うものを予定した上での中央政府行政職員任用法であったのでありまして、今日情勢が変化して現に立法院としても次から次へと各局設置法を設けている設置法の内容に伴って自然改正を必要とする事態ははっきりして来るのであります。従って設置法を立法して行った院としてもこの設置法の運営を遺憾なからしめる意味から云っても任用法の改正は緊急の要だと考えているのであります。軍布令に委ねてもいいと云う行き方もあるのでありますが、然し立法院の制定した立法を軍布令によって改正し若くは廃止すると云う行き方は軍としても好まないでありませうし、又院としても避けられることなら避けて行った方がいいとこう云う風に考えられるのであります。又改正措置を講じないとすれば勢い行政職員任用法の廃止決議を今会期中にやらなければ軍としても布令を出し難かろうと思います。何れにしても行政職員任用法に関しては議題として取上げなければならないと思いますが、大体改正の内容はそれ程複雑なものではなく、短時間で解決のつくものだと予想されますので、この際、前に院として決議した趣旨には些悖るかも知れませんが、然し定足数を依然として充たす条件が続いて行くと云う観点から議題として採上げて審議すると云う方針を採ったら如何かと思います。
(「賛成」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) 異議ございませんか。
○吉元榮光君 然しこれは内容にもよることだが、それはなかなか簡単にはいかんが、委員会で十分検討してスムースに行くと云う見通しがつくならば何だが…。
○冨名腰尚武君 昨日の立法院事務局設置法改正、あれと似たような形で行けるようなものだと考えられますが、委員会附託にしないで、すぐ本会議でやれる程度だと思われます。
○吉元榮光君 立法院事務局職員任用法についてはよく分りますが、行政職員は色々な種類があるのでどうかと思われる点があるので、立法院のものならば、又我々の意図しているところを表現しておくと云う上に於てもやりたいけれども余り複雑化すると云うと…。
○議長(泉 有平君) 休憩致します。
(午前十時四十分休憩)
(午前十時四十二分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。本案の取扱については後程お諮り致します。
次は公安委員会設置法で保留した事項が二、三ありますので、これの審議に入りたいと思います。保留された条項は第二章事務部局の第十二条、第十四条、第十五条の一部、それから第二十三条と云うことになっております。これらの関係条項を見ました場合に、結局警察官の階級と権限の委譲と云ったような問題の二つに大別することが出来ると思いますので、その二つに概ね分けまして一括して討議していただくと云うことに致します。その前に、前会議で與儀参議の警察署長の権限と云ったような御質問に対して委員長から御答弁をお願い致します。
○城間盛善君 先日の会議で與儀参議から警察署長の権限についての御質問がありました。それに対する見解を申上げたいと思います。警察署長は第二章警察の諸条項に規定されているのでも分りますように、その警察地区内の治安維持の責任を持つのであります。つまり琉球がいくつかの警察地区に分れる筈ですが、それぞれの警察地区内に警察署長を置き、その署長は管轄地区内の種々の職務として第二十五条にありますこれだけの事項を執行する権限があり、又同時に反面から云えばこう云ったことに対して責任を負うているのであります。こう云った直接に住民の生命財産を保護すると云う警察の重大責務は全て警察署長によって直接には執行せられている訳であります。従ってこの前の與儀参議の御質問にありました、警察署長はその自己の権限のみによって職務遂行が出来るか、それともこれを補うものがなければ出来ないか、それを聴かれておりましたが、これに関しましては、警察署長はその管轄区域内に於ては、その独自の権限をもって警察署長自体の権限をもってここに定められている職務を遂行することが出来ます。これをはっきり申上げたいと思います。住民の生命、財産の保護と云う直接住民にタッチする部面に於ては警察署長が全権限を握っている。これは動かすべからざる原則だとしなければならないと信じております。この警察地区が琉球全部がいくつかに区分されると云いますか、それぞれの地区内に於て各警察署長が全権限を持ち、全責任を持つと、こう云う態勢でなければ、現実に、実際に住民の保護は完うせられないと云う風に考えております。つまり警察署長だけでこの与えられた、規定された職務の遂行が出来る、又出来るようでなければならないと云うことをはっきり申上げておきます。與儀参議の御質問に対する答弁を終ります。
○議長(泉 有平君) 先ず保留された条項の内容から致しまして、第十二条に主として表現されております警察官の階級と云う問題について御審議をお願いしたいと思います。先の会議では、警察本部長と云うものは職名と官名を兼ねさせるところに疑義があるのだ、警視正と云う新しい階級を設けると云うことに疑義があると云うことに、この二つの問題が保留されたのでありますが、その辺について…。
○城間盛善君 先ず委員会に於て警察本部長と云う官職全体(ママ)の名称を、そう云う官職一体になった経緯を御報告したいと思います。
当初私達はこう云った行き方が変だと云う気持から職は職官は官と分離したものを考えた訳であります。これは警視正、警視長と云ったものは別といたしまして警察官の階級が幾つかあると云う場合に、警察本部では警視長と云う階級を考えておりました。その階級をはっきり決めれば、仮に警視長と云う階級を置くとすれば、これは何れ設置せらるべき公務員法によって警官の階級は巡査から巡査部長、警部補、警部、警視若くは警視長と云う風に順序を経て法の定めるところによって年限とか試験とか成績によって逐次昇進して行くことになる。そうすれば、先ず仮に階級として警視長と云う階級があれば、そこにその階級に該当すべき警官が常に出て来ると云うことも--それは一人のこともあるし、二人のこともあり、三人のこともある--その時の警察官の進級の状況によって自ら決る訳であります。そしてその中から警視長から警察本部長を任命すると云う風な形になって、場合によっては警察本部長の外に同じ階級の警視長がいると云うこともあるし、仮に一人いるとしても警察本部長を免ぜられた場合でもその人は階級としての警視長と云う階級は依然として保持すると云う風な状況になっておって、どうも運営上紛らわしいと云いますか、混乱を生ずる。それよりも寧ろ最高の指揮をするものは一人だ。その場合その職に在るものをはっきりした方がいいと云うので警察本部長と云う官職一体の階級を置いたのであります。以上委員会の審議の経過と趣旨について御説明申上げます。
○冨名腰尚武君 警視正と云う新たな職階を設けることについてでありますが、警視正を設ける必要を認められたのは委員会に於ては警察と云うものが一つの部隊組織をもっている、軍隊組織に置かれている、従ってこれを指揮訓練する場合はどうしてもその指揮訓練に当るものは、指揮訓練されるものよりも階級が上でなければ工合が悪い、警視が他の警視以下を指揮訓練すると云うことは、特に階級意識の旺盛な警察に於て万全を期し難いから、ここにその指揮権をはっきりさせる意味で警視正を置かなければならない、所謂次長制を中央政府に於ては全部避けて行くと云う方針を採っているために警察指揮上の次長と云うものは警視正によって換骨奪胎して行こうと云う風な御意見のように承ったのでありますが、私はその点から何故階級の上のものでなければ、特に警察の指揮統率が出来ないか、例えば公安委員会に於て警務課長は警察本部長の不在の際、これに代り琉球警察を指揮命令し得ると云う規則を設けることによって指揮権の問題は絶対に解決がつかないものであるかどうか、と云う点について御検討になったかどうか、これを承りたいと思います。
なお発言のついでに申しますと、上位の階級を設けると云うことは、それだけ高給者の出現を予想されることでありまして、今日財政面から出来るだけ緊縮した方針を採らなければならないと云う際に、こう云う上位の職階を設けると云うことも一応考慮しなければならないと思う。こう云うことも考える訳であります。それから委員会が一応警視正を置かれたお考えの一部になっているように考えられる。上位の者でなければ指揮命令が出来ないと云う観念、即ち警察と云うものに軍隊的な観念を持込むことの可否と云うことも我々としては十分検討しなければならない。従来の警察が日本式の軍隊組織に倣ってつくられ、従って軍隊的な指揮命令系統と云うものも階級を厳密にして行くことによって規律が保持されたと云う行き方自体を今日依然として警察に必要であるかどうか、そうでなければ警察の規律が保てないと云う観念をそのまま是認していいかどうか、これが琉球警察が所謂特警隊みたいな形を将来予想しているならばいざ知らずであります。そうなれば実際は軍隊でありますから、そう云う行き方で行くのも止むを得ないのじゃないかと思いますが、今日我々が考えている公安委員会設置法に於ては琉球警察と云うものには何ら警察予備隊的なものは考えていない。その場合に強いて警察と云うものを軍隊組織によってしか維持出来ないと云う点に立つと云うこと自体が考慮を要すべき問題じゃないかとこう云う風に考えられるのであります。
以上述べました理由から、私は警視正の新たな職階の設置と云うことが、若し避けられるものであるならば極力その設置を見ないでも、この設置法の運営がやれるようになって行くことを希望するものであります。
○城間盛善君 只今の御質問にお答え致します。第一は警視正と云う新たな階級を設けなければならないと云う理由についてであります。大体冨名腰参議がおっしゃったような意味を含めて申上げますが、我々は今まで設置法を審議するに当って次長制を採らなかった。その線はずっと実行して行かなければならない、又そうしなければならない。ところが現実に於ける警察行政の実情を見ますと云うと、そこに特殊性があること認めざるを得ないと申しますのは、戦前に於ては、県庁に警察部長がいる、その部長の下には副部長に当るものはいなかった。部長の下には課長と云う仕組みであった。戦前に於てそう云う風に運営されたものが何故今日に於て次長制が必要であるかと云うことを当局に聴いてみたが、それに対して当局者は戦前に於てはそれで十分であった、若し琉球の状況が戦前の状況に復帰すれば十分である、現実に於ては戦前の状況とは異なるものがある、それはここに駐屯部隊がおって、その部隊からの種々な複雑な事務が発生しているその事務量が戦前と比較にならないものであると云うことを証言しております。即ち現在の沖縄に於ける場合ならば、現在の軍隊警察は住民の保護と云う警察本来の責務がある外に、更に占領軍関係の色々な事件が発生する普通の状態に比較にならない程の事件数を持っている、そして従ってそこに出て来る折衝の面とか、非常に輻輳して来ると云う状況にあるそうです。書類の決裁だけでも毎日百件から二百件位あると云う風になっているそうです。他の部局に於てはそれ程の決裁書類がないのに、何故これだけあるかと云うことを彼等自身も不思議に思う位ある、これはこう云った琉球の特殊事情から来るものである、そして戦前のように警察部長がおって、すぐ課長がおると云う系統ではどうしても事務の処理が難しい、こう云う形であれば警察本部長はその本部を離れることは出来ない、ところが実際に於ては、特に駐屯軍関係で頻繁に警察部長が外出を要請される、その場合にこれの代りをすべきものがどうしてもいなければならないと云う実情であります。でなければ警察本部運営が停滞すると云う実情にある、だから極力次長制を採ってくれと云う要望があったが、我々はこれに対してその事情は十分諒解出来るが、然し次長制を採ったら全部の局との釣合が取れんと云うので本部長に代って警察を指揮する人がおればいいじゃないか、戦前から部長に代る課長はおったはずだ、又どの局に於ても次長制を採っていない関係で局長の代決をすべき課長がいるはずで警察に於てもそう云った風に出来ないはずはなかろう、警察部にある刑事課長なりの代決によって出来るし、又指揮も出来るのじゃないかと云う風に、そこは諒解納得させた訳であります。さて、ところで実際に於て或る課長が本部長代理として決済の判を押すのはいいでせうが、実際に於て事件が発生して警察隊を指揮して事件の処理に当らなければならないと云う場合に際して、どうしてもそこに部隊活動と云うものが出て来ると云う現状にある。その場合に同一階級を以てしては十分命令の行使が完全に行い得ない、戦前に於ても警察部長の下に課長がおったがその課長の中、部長代決をし得る課長は階級が一段上であると云う実情にあった。そこで又冨名腰さんのおっしゃる階級制の整備の問題になって来ますが、大体に於て警察の行う職務と云うものは部隊活動の部面が多いその部隊活動を執らなくてもいいと云うならば、この階級制は重要なものではないと思うが、然し部隊活動をする以上は部隊を手足の如く指揮することは出来ない。これは動かすべからざる原則だろうと考えております。軍隊がそう云った階級制度を採っているのは、矢張り部隊活動をするからである、これは何も日本の過去に於ける軍国主義的な軍隊でなく民主主義のアメリカに於てもそうである、そう云った部隊活動をする特殊性を持っている軍隊に於ても自ら階級の上下によってこう云ったことは部隊活動をする団体にとっては当然有り得ることであるし、そうでなければ十分なる機能発揮は困難であると云うことは原則的に云えると思います。ただ警察の運営上非民主的なところがあるとすれば、個々の警察官が民に対する場合の態度、そう云ったものに掛って来るのであって、警察が部隊活動をするから非民主的なものとは云われないと思います。その性質上どうしても部隊的な活動が必要であると云うことは認めなければならない、そう云う意味で部隊活動をしなければならないから自ら階級が出て来る、階級の上下によって指揮命令が行われる、特殊性がある、こう云う意味で戦前に於ても部長代決の課長は階級が一段上であった、従って部隊活動の上から十全な指揮命令は難しいと云うことから警視正と云う新しい階級を委員会としては同意した訳であります。それが委員会の採って来た態度でありますが、なお冨名腰参議の御質問に一、二ありましたが、琉球の警察は日本に於ける警察予備隊的な性格を考えない、我々もそうであります。現在の琉球警察を日本の予備隊の性格のものとは考えておりません。その点に於て同感であります。警察は本来の任務上部隊活動をしなければならないと云う性格を持っていると云うことであります。これが直ちに軍隊を編制すると云うことは毫も考えておりません。以上で只今の御質問に対する答弁を終ることに致します。
○冨名腰尚武君 只今の御説明で大体分って参りましたが、然しながら、この設置法の規定によりますと、警視正は何名と云う風に限定しておりません。監察官と各課長、これは持って行きようによっては監察官と課長六名計七名の警視正が出来ないとは云えないと思います。七名でなくても二人乃至三人の警視正が出来ればどの警視正が上だと云うことは必ずしも全部警視を充てた場合と別に差がない、警視正を置く必要の所以をお聴きしましたところ、問題は結局部隊行動すると云うことも、全琉警察が一本になって一人の指揮者の下に行動すると云うことは暴動叛乱以外、警察が軍隊に代って治安の維持に当ると云う場合以外には考えられない。個々の警察活動に於ては指揮者が所謂行政的に次の下位の指揮者に命令を伝達することによって実際の部隊行動は下位の指揮官が出来ると思うが、それはともあれ階級制によってはっきりした指揮権が明示されることが現在の警察として望ましいと云うのであるならば、次長制は他の局は兎もあれ警察に於ては絶対必要だと云う結論にしかならないのじゃないかと思うのであります。それだけの特殊事情があるならば、何も他の局が次長を置かないからと云って警察と云う特殊な機関にまで次長を廃止する大きな根拠はないのじゃないかと思うのであります。そう云う点からして、もしどうしても先、委員長がおっしゃったように部隊行動の必要上、上位の者が指揮を執ることが必要であると云うことが要請されるならば、警視正と云う職階を一人に限定して行くと云う考え方を採った方がよくはないかとこう考えられるのであります。先程のお話にしても、戦前は警務課長は警視としても上位であったと、これは警視と云う格に於ては同じであって、結局先任者だとかどうだったとか云うところがあったと云う見方だと思いますが、それならば敢て警視でも同じであるから、それはそう私もこだわりませんが複数の警視正を置くと云うことはどうも只今の御説明からしても納得行き兼ねるのであります。一人の警視正を置くと云うことは即ち次長制を採ったと云うことを免れるために警視正と云うものを複数にしたとしか考えられませんが、それならば警察本部の要請に従ってはっきり次長制を認めると云うことがはっきりしていいんじゃないかとこう考えます。
○城間盛善君 只今の御説の中で賛成出来兼ねるところがあるのですが、まず一つは、先任制の問題であります。戦前の警察に於て警務課長が代決をしておった、これは私の聞くところによると警務課長は警視で他の課長は警部であったと云うことであります。もう一つは、警視正の階級を設ければ六つの課がありますが、その課長が全部警視正と云うこともあり得るのじゃないかと云うこともあるのじゃないかと云うことであるが、これは代決させると云うことが主体である以上、恐らく全部警視正になったら無意味になるだろうと思う。そう云うことは有り得ない、せいぜい一人二人しか考えられないと思います。その点は見解を異にしますが、最後に結論的に述べられた見解に対しては、それはこう云った警視正を課長に持っていって、それに代決させると云うことになればこれは一人と云うことになるが、或は検察官(監察官カ)に出て来るかも知れません。それよりも次長制をはっきり認めて他の局と異なると云う意味で、これだけ他の局と違った次長制を採ったらどうかとおっしゃいましたが、若しこれが他の局に影響せずに出来得るとすればいいと思います。ただ我々としては、警察本部に次長制を採ったがために他の局に影響しやしないかと云うことを恐れているのであります。そう云った恐れもなく出来れば結構でありますが、我々の考えているところでは警察本部に於て次長制を採れば、又他の局に於ても次長制を要求すると云うことになって、そこから段々崩れて来わせんかと云うことを懸念した訳であります。
○松田賀哲君 今の警視正を置く問題と云うのは、大体初めお話になった通り、戦前のような状態であれば戦前の通りでよろしいのであるが、今日は占領軍関係の仕事が増えたために、これを置かなければならないのだと云うような御趣旨のように承っておりますが、仕事が増えたならば、それは人数を増やす問題であって、と云うよりもこっちに並べられた課の数を増やすべきであって、つまり占領軍人課と云うような問題であって階級を増やす問題ではないと思うのでありますが、その点どんなもんでせうか。
○城間盛善君 占領軍人関係の事件が多いと云うことは、そこに新たな課の設置によっては解決出来ないと思います。と申しますのは沖縄に於て部隊の存在するところ、そう云ったところに種々の事件が発生する。占領軍人と沖縄の間の事件、或は沖縄人が占領軍部隊内に入り込んでの犯罪、そう云った面が起って来るのであります。だからこれは結局警務課なら警務課の仕事が増えると云うことでありまして、要するに事件が多くなったと云うことが大きな問題でありまして、別に課の設置によっては解決出来ないと云う風に考えております。
○松田賀哲君 それはよく分ります。そうならば一つの課に纏めることが出来んが、各課に亘る仕事が増えると云うだけであればその課員を増やしてそれで済む問題ではありませんか。
○城間盛善君 事件によっては、上の決断を俟たなければ処理出来ないと云うことがあるのです。その意味で絶えず最後の決を下さなければならないと云うことが頻繁に出て来る、こう云うことになると思うのですが、警察本部にも絶えず裁決を下す者がいなければならないと思うのです。
○松田賀哲君 それは代決課長と云うものがあればそれで済む問題ではないかと思うのですが…。
○城間盛善君 我々もそう考えております。
○松田賀哲君 だからそうなれば階級の問題でなくして先任の代決と云う考え方でいいんじゃないかと思う。
○城間盛善君 おっしゃることはよく分りますが、書類の上の代決と云うことばかりでなしに、実際行動しなければならない、そう云った最後の決済は書類上の決済だけならばいいが、事件が発生した場合に、直接警察隊を動かさなければならない事件が頻繁に出て来る訳です。そう云った指揮をすると云うところに階級と云うものが必要になって来るのです。
○松田賀哲君 そうすると、この人は課長ではない訳ですね。
○城間盛善君 課長です。
○松田賀哲君 課長であれば自分の課の仕事もしなければならない、又指揮もしなければならないと云うことになると、一人の人では出来ないのじゃないのですか。
○城間盛善君 絶えず陣頭指揮をしなければならないとなると、出来ないでせうが、然しそれ程でもなかろうと云うのです。
○田畑守雄君 今の警察官の階級の問題については私は非常な疑義を持っているのでありますが、先ず第一に公安委員会と云うのはどう云う趣旨の下に置かれるものかと云うことをこの階級制度を見た場合に、私は疑問を感ずるものであります。と申しますのは、公安委員会と云うものによって少くともこれまでの在り方の警察と云うものを民主化して行こうと云うのが、大体に於て公安委員会設置の建前じゃないかと思うのであります。ところが一方警察官の階級を見ました時に、警察本部長、警視正、警視、警部、警部補、巡査部長、巡査と云うような階級がありまして、寧ろ戦前の階級よりか、まだ職階に於て増えているような状態であります。警察本部長は第十三条に謳われておりますように、公安委員会の指揮監督を受けて警察本部の事務を統轄すと云うようなことがありまして、警察本部長そのものは公安委員会の指揮監督を受けるような仕組になっております。ところが警察本部長を置き警視正を新たに置くと云うことは、現在の階級意識の旺盛な警察にますます階級意識を盛立てて行くような感さえもするのであります。一方現在の段階に於ては各群島、こう云うような警視正と云う階級を置いていないでそれでもまだ指揮命令系統と云うのはやって行けおった。警察本部長が警視に命令し、警視が警部に命令すると云う風に指揮系統が少い程寧ろ楽にやって行けると思うのであります。それと同時に特殊事情が現在の段階に於てはあると、今松田参議の質問に対しておっしゃるようでありましたが、この点についても私は疑問を感ずる、そう云う事件が出た場合、これは自ら警察署長にある、その権限内に与えられたその地区の事件を解決して行き、出来ない場合は当然最上級に持って行く仕組が十分出来ると思うのであります。その中に警視正を必ずしも置かないでもやって行ける、そう云うような地区的な、現在の段階に於て発生する事件は、これは何ら沖縄本島のみでなしに各離島にも生じて来つつあるのであります。実際の問題、色々な問題がこれは上司に伺いを立てなければ警察署長自体でも迷うている事件が多々あると云うことを私は聞いております。これは民政府との連絡事項に相当忙殺されていると云うことも聞いてはおります。それと同時に警視正と云う職階を複数を置いて、そして寧ろこの警視正を置くために将来若いところの優秀な人々の進級を--進級と言ったら語弊がありますが、--登用して行くのに隘路が生じはせんかと云うことは警察本部長になるには警視正になって何年と云う規定が自ら出て来ませうし、この警視正と云うのは僅か一人か二人しかいない、その下に警視がある、警視正になって初めて警察本部長になり、その警視と云う一つの目標に向って一生懸命勉強し、更に警視正になってますますその一つのものを争うと云うようなことで警察本部長を任命するにしても公安委員会は非常な不便を感じはせんか、寧ろ警視を増やしておいて、そして警視の中の優秀なものを抜擢して行く方法が講じられて却って警察制度に対して明朗化して行くのじゃないかと思うのであります。その点に於て私は未だに警視正を置くと云うことに対しては疑問を生ずるものであります。寧ろ民主化を叫ぶ今日、寧ろ官僚的な行き方にするものではないかと云うことを考えるものであります。
○城間盛善君 只今の御意見について、私は些か見解を異にするところがあります。それだけ申上げます。
先ず最も大きな問題は警察の階級制度と公安委員会制度の関係であります。これについては、私は只今の他の点については同意する意見もありますが、この点だけは御意見と違った意味の見解を強調したいと思います。と申しますのは、公安委員会制度を置くと云うことは警察の階級をなくしようと云うのじゃなくて、警察の階級と云うものは警察の行政事務自体の本質から発生して来るのであります。それと公安委員会とはどう云う関係があるかと云う問題になって来るのですが、これは結局公安委員会設置の目的は只今おっしゃるように警察の民主化にある、これは当然です。それでは階級を少くし、若くはなくしなければ民主化しないかと云う問題になって来ると思うのですが、私は警察はその職務の本質上階級制度をどうしても採らなければならない、これは原則的に認めなければならないと思います。それでは公安委員会を置いた目的の民主化はどうなるかと言うと、階級があるから民主化は出来ないと云う風には私は考えないのであります。我々が公安委員会を置いて警察を運営せしめてもっと警察を民主化して行こうと云う点はどう云う点で民主化して行きたいかと云う問題になるが、それは警察官がその職務遂行に当って直接住民にタッチする場合、その扱い方、その態度、その心の持ち方、こう云うところにあると思います。戦前のように絶対支配権を握ってあたかも住民の支配者であるかの如き態度でなしに、住民の生命財産を保護するための公僕であると云う精神に則って、そう云う精神に基いて警察を運営して行くと云うことが警察の民主化だと思っております。そうでなければならないと思っております。警察本来の任務は、あくまでも住民の生命財産の保護である。そのために置かれたものである。これを忘れて戦前の如くあたかも住民の上に君臨し、これを支配するかの如き態度があってはならない。そう云うことがないように警察自体の心掛によっても出来ませう。現実に於ては、組織の上に於て公安委員会を置いて、このような民主的な運営をして行きたいと云うのが公安委員会の目的だと考えております。繰返して申上げますが、警察本来の任務である住民の生命財産の保護に任ずると云う公僕の精神に基いて、その職務を遂行すると云うところが狙いである。それではその生命財産を保護する場合の警察の職務自体からどうして階級と云うものが生れて来るかと云うことは、これは場合によっては多数の警官が出動して犯人の逮捕をしなければならないと云う事態が発生する。これも住民の生命財産を保護すると云う職務遂行の過程に於て起る問題である。時には武器を携えて部隊的活動をしなければならない場面が当然生じて来る、そう云うところに階級の必要が発生して来る。又逆に言えば階級組織によって組織された警察であるが故に放任しておけば非民主的になりやすい。その意味に於て公安委員会を置かれると云う風に考えてもいいと思います。つまり階級意識をなくせんがために置くのではない、その階級は上下の別があり、下の者は上の者の命令に従って行動すると云うのでありますが、これによって初めて団体が一体の如く活動することが出来るので、それがばらばらになった場合はその部隊行動と云う能率が低下して来る、そう云った階級は要するに上下の別がある、その命令によって動かなければならん部面が多いと云うところに警察の階級を置かなければならない原因があると思います。その辺のところは私ははっきりさしておきたいと思います。
○田畑守雄君 只今の委員長の御説明によりまして委員会と云うものの在り方は私も委員長の御意見と賛成であります。同意見であります。然しながら階級制度と云うものに対しては、問題は警視正と云う問題でありますが、警視正を置くことによって果して琉球の警察の行政に幾らプラスをするかと云うことは疑問であり、階級制を置けば置く程はっきりすることは確かであります。その点はなりますが、然し警視正にならないでも、警視正を置かなくてもその上には本部長がある、そしてこう云うような階級意識のはっきりしたところでは先任、後任と云うような指揮命令系統と云うのは内規によってはっきりさせ得られるものである。これは日本の軍部に於てもそうであり、現在の警察に於てもそうであり、この前言われた一般行政に於てもそう云う点は未だあると云うことを聞いております。そう云うような点に於てはっきりとここに、又再び今までかってなかった、日本の国家警察には警視正が置かれているからと云って我々琉球警察行政に警視正と云うものを置く必要があるか否か、地方自治警察にはないと云っております。又或る人から聴いてみたら警視正と云う階級を何故置くか、日本にあるから置くのだと云う話を聴いております。又警視正を置くことによって琉球警察行政に果してどれだけのプラスにをなすかと云うことについては、私は大きな疑問を抱くものであります。
○大濱國浩君 只今の双方の御意見はある点まで行き詰っております。階級と民主化と云う点が問題になっているようでありますが、その問題点になるまでに相当の奥行の過程があると思います。その点はもう少し、休憩して寛いでゆっくり話して行かなければ到底纏りがつかないと思いますので休憩して…。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
(午前十一時四十六分休憩)
(午後一時三十四分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。全員協議会に移します。
(午後一時三十四分--午後四時三十分まで全員協議会)
(午後四時三十分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。冨名腰参議から行政職員任用法中一部改正と立法院事務局職員任用法中一部改正案が出されていますが、冨名腰参議から提案理由の説明を願います。
○冨名腰尚武君 各局設置法の立法に伴って昨年六月十二日立法第三号で制定した行政職員任用法は自然内容に於て改正を必要とする所は各参議も諒解出来る事と思います。我々が昼夜兼行で設置法について努力を傾倒した所以のものは中央政府が一日も早く完成させるために努力した次第であります。従って設置法は出来上ったが任用法はこれに伴わないと実質が充足されていかないと云う憾もありますので緊急上程をお願いしたのであります。なお会議の日程も今日までとなっていますので、発議者としては読会を省略、決議をしていただけるならこれを決議していただいて、委員会附託でなく直に本会議で審議をすると云う方法を採っていただけるなら幸いと思います。
なお立法院職員任用法の面も専門調査員を設けると云うことは新に公選された議員によって構成される新立法院の活動を増強する意味に於ても是非必要と思いましてそれも併せて発議した次第であります。
○議長(泉 有平君) 休憩致します。
(午後四時三十三分休憩)
(午後四時四十三分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
両案の取扱につきましては読会を省略致しまして審議をして行きたいと思います。御賛成を願います。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) ではそう云うことに致したいと思います。
○冨名腰尚武君 立法案第三十二号の説明を申上げます。
これは先程提案理由を申上げた通り、調査室には調査員、調査書記の二本建を採っておりますが、立法院規則に於きましては専門員を置くことが出来るように規則には制定されておりますが、今日まで現在の調査員、調査書記で何とか仕事が間に合って来ましたのでこれをそのままにしておいた訳でありますが、立法院の規模そのものが拡大されると云うことになると更に多くの調査員を必要とするし、従って又この上に立って更にもっと綿密な専門の知識を有する職員、即ち専門員と云うものを立法院に置けるようにすると云うことは、これは相当差し迫った必要のことだと、こう思うのであります。従いまして第三条に専門員及び調査員を置くと云う風に改正し、専門員は甲号職の中から議長がこれを命じ、調査員は甲号職又は乙号職の中から議長がこれを命ずると云う項を設け、更に第三号として専門員及び調査員は夫々関係常任委員長の命を受け会議及び委員会の審議に必要な資料の蒐集を行い参議を補佐するものとする、と云う職務を明示すると云う風にして行きたいと思います。御審議をお願い致します。
なお念のために申上げますと、立法院事務局の職員任用法は、職制になっていて第一条で事務局長に関する規定をしております。第二条で書記長の規定をしております。第三条で調査員の規定をしております。これに専門調査員を入れて、専門員の任用の問題、職責の問題をはっきりさせようと云うのが、この改正案の目的であります。あとは第二章任用など全部これはそのままであります。旧法通り、改正は第三条のみと云う形になっております。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
(午後四時四十三(ママ)分休憩)
(午後四時五十九分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
○冨名腰尚武君 訂正をお願いしたいのですが、調査室とあるのは、立法院事務局にお改め願います。
○議長(泉 有平君) 外に異議ありませんですか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) 御異議がございませんでしたら、採決します。では本案はこれで軍との調整に持って行きたいと思います。
以上で今日の会議を終ります。
(午後五時一分散会)
出席者
議 長 泉 有平君
参 議 松田 賀哲君
〃 城間 盛善君
〃 冨名腰尚武君
〃 大濱 國浩君
〃 吉元 榮光君
〃 嘉陽 安春君
〃 田畑 守雄君
欠席者
〃 與儀 達敏君
〃 祷 清二君
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