戦後初期会議録

組織名
琉球臨時中央政府立法院
開催日
1952年01月15日 
(昭和27年)
会議名
第1回立法院本会議 1952年1月15日
議事録
第一回立法院本会議会議録
        第九十二日目

 一九五二年一月十五日(火曜日)
 午後三時十分開議

議事日程
 一、琉球臨時中央政府運輸局設置法案について(三読会)
 二、琉球臨時中央政府行政主席事務局設置法改正案について
 三、琉球臨時中央政府行政主席情報局設置法案について
 四、琉球臨時中央政府立法院事務局設置法中一部改正について
 五、琉球臨時中央政府工務局設置法案について
 六、琉球臨時中央政府法務局設置法案について

○議長(泉 有平君) 本会議を開きます。今日の議題となる法案が沢山ありますので、上程の順番は議長に於てやろうと思います。
 軍との調整に移しておりました、運輸局設置法案に対する軍の意思の表示がありましたので一応御報告致します。
  (事務局長比嘉良男君朗読)
○議長(泉 有平君) 右のような通知がありましたので運輸局設置法案についての三読会に移りたいと思います。その前に字句の修正がSOPの時にあったようでありますので、委員長から報告していただきます。
○田畑守雄君 総合調整の段階に於て、第十条の運輸局に左の支局を置くとして大島支局、宮古支局、八重山支局となっていたのでありますが、軍の方から大島支局じゃ沖縄と紛らわしい場合が生じて来る、それは船籍を示す場合その頭文字を採って記号を付けているので、大島も沖縄も同一記号になるので是非奄美支局にしてくれと云うことでありましたので、一応委員会の諒解を得まして奄美支局に--独断的であったのでありますが--訂正した訳であります。御承認下さるようにお願い致します。
○議長(泉 有平君) 今の委員長の報告、大島支局と云うのを奄美支局と云う風にして船籍の略符を用いる場合の沖縄と紛らわしいと云ったことで、そう云うようなことが、調整の際に行われたようですが、それで差支えありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) 別に御異議がございませんですから、軍の調整を終ったと云うことにして三読会に移ります。採決のための討議に移りたいと思います。
○松田賀哲君 委員長にお伺いしますが、このSOPの時に於て運転手の免許ですか、あれは警察の方でやって貰いたいと云ったような話も聞いたのでありますが…。
○田畑守雄君 あれは初めから、既にこの法案は公安委員会の方に移して置くと云うことにして、二読会の時に訂正をして出してあります。全体協議会に於て御諒解を得てあります。
○城間盛善君 本案は委員会に於て長い期間に亘って慎重審議を重ねた上、更に本会議に於ても一読会、二読会を審議を重ねて終了しておりますし、民政府当局に於ても異議なしと云う意思表示もありますので、この案に賛成したいと思います。
○議長(泉 有平君) 本案の成立に反対意見の方はございませんか…。
  (発言者なし)
じゃ採決致します。本案の制定方に反対の方、挙手をお願い致します。
  (挙手なし)
 反対がありませんので本案は可決致します。
 休憩致します。
  (午後三時十六分休憩)
  (午後三時十七分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
 次に行政主席事務局設置法改正案を議題と致したいと思います。委員長の報告をお願いします。
○松田賀哲君 私から申上げます。
 これは特別委員会に附託になりまして、委員の各位と慎重に審議致しましたところ、矢張り事務局設置法の修正案として出すよりも現在の情勢に於ては事務局を廃止して行政主席官房を新しく設置するという風にした方がよかろうと云う意見に一致しまして、委員会の修正案としてここに差上げた案を提出することになったのであります。
  (事務局長比嘉良男君朗読)
○松田賀哲君 以上の通りでありますが、ここで少し説明を加えたいところがありますので、一応申上げたいと思います。この第二条は事務一般を列記しているのでありますが、その具体的な詳しいものは各課の事務分掌に謳っておりますから、各課の事務分掌について御説明申上げたいと思うのであります。そこで第六条の第七号でありますが、庁内一般の取締に関することと云うのは、先ずガードであります。これの監督と云ったようなもの、それから各庁舎内の清掃それが行届いているかいないか、そう云う取締であります。それから第七条の人事課に行きまして、人事課に於ては左の事務を司ると云うことになっておりまして、その第一号の職員の定数、任免、給与、賞罰その他人事に関することと云うのでありますが、ここの任免と云うのは何もこの人事課で任免を全体的に扱うと云うのでなくして、任免についての内申権と云うものは、これは各局長が持っている、それを調整すると云う意味であります。調整すると云う意味はつまり、この官房の人事課に於ては各局全体の俸給額、実体を握っておりますので、同じ年度にハイスクールを卒業した者を雇う場合には、その俸給額などについて、各局不公平なことがないように調整すると、そう云った意味であります。それから第二号の職制及び庁規に関することと云うのは、この職制と云うのは職階制についての色々な資料を集めて、この職階制を決める時の材料にすると云うこと、それから庁規に関することと云うのは、処務規程、宿直規程と云ったようなものを意味しているのであります。それから次に、第八条の文書課の方に於てその第一号に諸法令及び規則の形式に関することになっております。これを具体的に申しますと云うと、メッセージを出す時の形式を一定しよう、メッセージは主席から出ているのでありますが、実際に原稿を書いて持って来るのは各局であります。各局に於てまちまちの文章を使っている、そう云ったようなものを整理して一つの形式的なものにすると云うことを、こっちでやることになる訳であります。それから第九条の翻訳課でありますが、それは第二号に琉球列島米国民政府との事務連絡に関することとなっております。でこれは、つまり通訳を含んでいる訳でありますが、この第二号をこう狭く限定しておりますが、これに関しては前の第二条について御説明致したいと思います。第二条の第八号に渉外に関することと云う条項があるのでありますが、この渉外に関することと云うのは、質は今の第九条の翻訳課の第二号にあったものであります。然し、渉外に関することと云うのは、現在の翻訳課がやっている民政府との連絡とは違い、外国との外交と云う意味になるのでありますが、それは貿易協定、漁業協定と云ったようなものでありまして、これらの実際の事務は各局でやる訳であるけれども、その協定を結ぶ場合には、これは主席の名に於てやることでありまして、そう云うことを取扱うのが渉外と云うことになって、翻訳課の方では渉外に関する一部のことを取扱う訳であります。以上これは事務局を廃止して新たに官房を設置しますから附則の第二号に於ては琉球臨時中央政府行政主席事務局設置法(立法第二号)は廃止すると謳った次第であります。それから一つ誤植訂正をお願い致します。第二条の政府内の事務連絡とありますが、政府内各局の事務連絡に御訂正願います。以上であります。
○與儀達敏君 簡単に質問致しますが、今の第二条第三号政府内の各局の事務連絡と御訂正になりましたが、立法院との連絡は今後扱わないという訳ですね。
○松田賀哲君 これは原文の方がいいですがね。これがそうなると、どっかにやらなければならないのです。どこかの課がやらなければならないのですよ。
○嘉陽安春君 各局毎にやると云うことは、強いて主席との直接の連絡ならば、政府と立法院と云えば各局も連絡するしね。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後三時三十二分休憩)
  (午後三時三十四分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。
○與儀達敏君 もう一つお伺い致します。
 第二条の文書に関すること、第六号ですね、これは官房の、政府所管に属する事務ですから、政府内の文書と云う広い意味に解釈されますが、これは官房で政府の所管する全部の文書を纏められるのですか。
○松田賀哲君 文書の接受発送ですが、各局のそれは政府に入って来るものは一応ここで振分けてやる訳です。
○與儀達敏君 出した後で保存も亦官房でやる訳ですね。
○松田賀哲君 公文書類の編纂に関することですから、やります。
○與儀達敏君 それから人事課に於て職員の定数、これは定員法によってやるし、任免は任免法によってやるし、給与は制度があるし、賞罰も規定があるが、その賞罰制度とか何とか文句がなければならないと思うがその点。
○松田賀哲君 それに関する事務を司ると云うことになっているから、それでいいんじゃないかと思うのです。
○與儀達敏君 それから第三条の琉球列島米国民政府との事務連絡は、これは各局ではさせんと云う御意向ですか。
○松田賀哲君 これは各局でさせんと云うのは、つまり政府の名に於てやる場合には主席でやる訳でせう。ところが所謂政府対政府でなくして、各局間は矢張り当局でやる訳です。だから、こっちの第二号は主席の走り使いと云うことになるのです。
○嘉陽安春君 この中に局長会議の運営に関するものがなければならないと思うのですが、色々政府内に会議が開かれるのですが、そう云う会議が開かれる場合には何か政府全体として、会議が何処で開かれているか、何時どう云う会議が開かれるかと云うことは必要でありますし、局長会議とか主席のところで開かれる会議に関する事務がないと思いますが、この点別に第二条に謳う必要はないかと思いますが、「局長会議その他政府内会議に関すること」その辺官庁の能率事務面から必要ではないかと思うが。
○松田賀哲君 それは第六条の四の儀式行事に関することに含めていいと思います。
○議長(泉 有平君) 未だ質疑もあると思いますが、逐条に審議と協議とを併せて議事を進めて行きたいと思います。御諒承願います。
  (事務局長比嘉良男君「第一条」朗読)
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  (事務局長比嘉良男君「第二条」朗読)
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  (事務局長比嘉良男君「第三条」朗読)
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  (事務局長比嘉良男君「第四条」朗読)
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  (事務局長比嘉良男君「第五条」朗読)
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  (事務局長比嘉良男君「第六条」朗読)
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  (事務局長比嘉良男君「第七条」朗読)
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  (事務局長比嘉良男君「第八条」朗読)
○吉元榮光君 第五号ですが「公文書類の編纂保存に関すること」これは各局にも謳われておりますがね、局でも重要な書類はそこで保存しなければならないものが相当あるだろうと思いますが、これには何とか他局でも保存出来るように表現を変えられませんか。
○與儀達敏君 委任規定によって出来ます。こう云う場合には、規則で決めればいいのでせう。
○吉元榮光君 分りました。
  (事務局長比嘉良男君「第九条、附則」朗読)
○議長(泉 有平君) 第九条と附則について何か御意見はございませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○嘉陽安春君 第一条に「一行政機構として」と云うこと、見落しですか…。
○松田賀哲君 これも「琉球臨時中央政府にその一行政機構として」と「その一行政機構として」と云う文句を入れていただきます。
○議長(泉 有平君) では本案はこれで軍との総合調整に入ることに致したいと思います。休憩します。
  (午後三時四十五分休憩)
  (午後三時四十六分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。次に総務局設置法案の二読会に入ります。委員長から委員会の審議経過を御報告願います。
○城間盛善君 第一読会で附託されました本案を行政法務委員会で研究致しました結果、多少の修正を加えて提案することに致します。それは先に開かれました全員協議会に於て移民の問題が採上げられました。琉球の国策上重大問題としてこの一項を是非採上げる必要があると云う全員の意見の一致を見ましたので、総務局の設置法の第二条の第九号にこれを加えまして、それに対応致しまして、第五条の総務局に左の三課を置くを、四課としてそこに移民課を増設することに一致致しました。事務内容としては現在のところ極めて小さいものではありませうが、然しこう云った別の課と違った内容を持つ新たな事務を持つ、人員は極めて少数ではあるが課を別にした方が仕事の運営上よかろうと云うことで一課を増設することに致しました。よろしく御審議をお願い致します。
○議長(泉 有平君) 議事の進行を促進するために討論を逐条によってやって行きたいと思います。御諒承願います。
  (事務局長比嘉良男君「第一条」朗読)
  (事務局長比嘉良男君「第二条」朗読)
○田畑守雄君 第二号の地方庁と云うのは、これは将来各群島に置かれる事務所を云うのですか。
○城間盛善君 これは現在の各局の設置法に於ても、支局とか出張所とかありますが、将来何らかの統合とか--統合しないものもありませうが--名称も地方庁になるかどうか分りませんが、地方にあるそう云った官庁関係の組織を現段階に於て組織は考えなければなりませんし、将来に於ても組織の改善と云った面もありませう、そう云うものを含めてのつもりであります。
○田畑守雄君 それから六と七の中には将来労働者の労働組合と云うようなことまで意味が入っている訳ですか。
○城間盛善君 そう云った全部を引っくるめたつもりであります。
○冨名腰尚武君 只今田畑さんから質疑がありました第二号の地方庁と云うことに対して、委員長からも御答弁があったのですが、現在の支局に対しても、これは考えられると云った風に承った訳ですが、そうしますと各局設置法に於て、支局に関しては別に規則を以て定めると、こうなっておりますが、別に規則を以て定める場合に、その規則に関する立案を総務部でおやりになると云う意味であるかどうか、即ち当該各局との関係はどうなるかと云うことが、これが質問の一点であります。それから第六号、第七号に関連するのでありますが、この中には労務者の、具体的に申上げますれば軍労務関係の労務者の素質を向上すると云いますか、技術を与える、その他色々の知識を与える、或は精神面からの素質向上を図ると云ったような点を考えておられるか、労務賃銀の引上げと云ったことなんかも考えた場合にこの面への政府の手当と云うものは表裏一体となって関連づけて考慮されなければならないと思うのでありますが、そう云う面はお考であるか、その二点について委員長の御説明をお願いします。
○城間盛善君 第一の問題、これは現在の支局とか、市町村に対する監督と云うのでなくて、先程申上げたのは組織の話ですが、地方庁と云うはっきりしたものを作ると云うことを明示するのでなしに、現在支局とか出張所とかが置かれているが、これが何らかの形で統合するとか、しないとか、その組織を考えて行かなければならないと云うことであります。現在の支局に対する監督までは含まないつもりであります。
 第二の御質問、軍労務者の素質の向上と云うことは琉球に於て特に重大問題であると云うことは、委員会に於ても論議され、これの表現法についても考えて見ました。これの再教育と云いますか、或は技能の向上とか云った、色々な面が多々ある訳ですが、こう云ったものを引っ括めた場合の、そう云った沢山の事項を一緒にしてこうした訳ですが、先ずこの項目で云えば福利増進或は労働需給の調整に含ませたつもりであります。
○松田賀哲君 この第一号ですが、政府の行政事務の能率的遂行のために必要な云々とありますね、この「行政事務の能率的遂行のため」と云う言葉は必要でせうかね。
○城間盛善君 こう云った政府内の行政事務の運営と云うことは、絶えず研究して行かなければならない大きな問題でありますから、能率的遂行のためにと云うことは、結局これは住民に対するサービスの問題になりますので、全て行政は能率的にやらなければならないと云う狙いがある訳ですが、どうすれば行政事務が円滑に進められて行くかと云う、全般的なことを考えて行政上の企画を考えて行くと云う風な意味であります。
○松田賀哲君 それは分りますがね。一々目的を掲げると云うことになると云うと、他の条項とも調整が採れんだろうと思うのですが、そうせんと云うと、第三号の方ですね、「地方自治の総合計画に関すること」ここにも亦「能率何々のために」と云うことが出て来わせんかと思うのですが。
○城間盛善君 行政事務は各局でやっているので、要するに各局でやっていることに直接干渉は出来ない訳ですが、全般的に眺めてどうすれば能率的に遂行出来るかと云う項目だけは必要じゃないかと思います。
○松田賀哲君 全般的にと云うことは政府と云うことがありますから、そう云う意味が出て来やしませんか。
○嘉陽安春君 これは実は日本の行政組織法の中に、寧ろこう云う仕事の内容について何すると云うよりは、例えば今云うように事務の機構なり、こう云うようなものを、色々事務の機構とか、組織の方法をこう纏めた方が、うまく行くのではないかと云うことで、日本の国家行政組織法なるものの目的を謳った中に、「国の行政組織は能率的云々」とそこにその文句があるもんだから、今の仕事の内容には全然亘らんのですよ。仕事をやって行くために市町村との関係出先機関との関係もあるものですから、機構の繋がりとしてはこうした方がいいと思うのですが、結局形式上の問題ですがね。
○松田賀哲君 然し能率的な遂行のためと云うことになれば、どの条にも入ってきやせんか…。
○嘉陽安春君 そうとは考えませんが。
○松田賀哲君 ために、となっているのだが、若しそう云う御意思だったら「能率的方法に関する企画」と云うことになれば分りますが。
○嘉陽安春君 そうなると又余りに事務的に偏する憾みがある。今後機構改革で郵政局で更に課が必要だと云うことがある場合には、設置法の改正を必要としますが、今まででもこっちにこれが入ってみたり色々と重複する場合がありますね。一応、そう云う面も考える、勿論、それを総務局で考えるが、決める訳ではありませんが、他の局からも総務局に希望が来るに違いない。そう云うものを総合調整した方針を各局自体の希望と、それと行政課の合議の上で主席が決めると云うような風のことにさしているのです。能率的方法と云うと事務的な、文書の往き方とか、余りそう云う事務的な面に偏しはしないかと思うのです。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後四時三分休憩)
  (午後四時八分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。
○冨名腰尚武君 第八号の立法院の権限又は市町村の権限と関渉する事項につき政府行政政策の総合調整に関することと云うところでありますが、市町村の権限の問題は別として立法院との場合は、日本の国会ならばこれは国政関与権を持っておりますので、国会は自然的に行政への面のタッチと云うこともあり得る訳ですが、現在の立法院に於ては行政の関与と云うことは固く禁ぜられているところであり、専ら立法だけの面しか持っていないと思いますが、果して立法院の権限と行政府の権限が関渉する事項があるかどうか、これが単に連絡と云う意味であれば先程の官房の中での事務連絡と云うところで尽きるのじゃないかと思いますが、そこら辺の点はどうでありますか。
○嘉陽安春君 私はこう考えているのです。これを入れましたのは、極く具体的な例として、これは規則でやっていいですが、仮に立法院の立法は未だない、そうかと云って若しも法務としてはこの場合は立法はないと云うことははっきり分るはずです。だから、これは行政主席としては立法の根拠がないから、出来ないと云う判定はつきますが、例えば資源局の問題が出て来た場合に行政関係としてはどう処置した方がいいかと云う法律上の意見については、はっきり出て来る筈ですが、法務局から、そうした場合にはっきり、これは議会を主席に招集して貰った方がいいか、或は招集せずに出来るところがなければならない。そう云うところがあるべきである。例えば立法院の給料を決めると云う話が出た場合に、勿論立法院としては出来ることですね。然しそれは権限としてはある訳ですが、一方には財政の問題があるが、すぐ立法院と財政と云うことよりは、そこに行政上の関係からして一つの、或は連絡と云うことになるかも知れんが、何か関連して来るものが出て来るのじゃないかと思うのですが、大体そう云ったところを含めているのですが、それともう一つは、軍から主席に対して、主席は軍との関係がありますから、仮に軍政と民政と離れた場合に中央政府としてこれをやるべしと云った場合に裁判については立法措置を要するか。仮に要すると法務局で決めた場合に、或は要しないと云うような問題についての何か、市町村も実はそう云うことを考えているのです。軍が主席に対して何処そこの住民を立退かせと云うことを云って来た場合、実際は市町村長が責任を持ってやらなければならない訳だが、独自の権限ではないから、軍は主席に対して云って来る…。
○冨名腰尚武君 そうすると主席に対するアドバイザーとしての法務局はそこに起った事項が立法事項であるか、或は規則制定権でやっているかと云う法律面からの裁定は法務局がやる。その場合に、仮にこれは立法事項であると云う裁定が下った時に総務局としては、今会期中ならばすぐ出せるようなものでも、休会中では出せない。これを臨時議会を招集するまでもないと云った場合に、これを行政的に何とかやって行くのではないかと云う…。
○嘉陽安春君 法務は結論を出せばいいが、軍に対してこれは出来ませんと答えなければならないかも知れない。どうして行政上出来ないかと云う問題が起って来ると思う。
○冨名腰尚武君 分りました。
○松田賀哲君 それからこれは字句の問題ですが、第七号の労働者の災害補償と出ておりますね。或は後の労務課の方にも労働政策とか労働者と出ているのですが、これを普通労務者と使っているのですが、特に労働者と云う字を使う必要がありますか。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後四時十六分休憩)
  (午後四時十七分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。
  (事務局長比嘉良男君「第三条」朗読)
  (事務局長比嘉良男君「第四条」朗読)
  (事務局長比嘉良男君「第五条」朗読)
  (事務局長比嘉良男君「第六条」朗読)
  (事務局長比嘉良男君「第七条」朗読)
○田畑守雄君 市町村の権限と関渉する事項と云うのは…。
○嘉陽安春君 今申上げるように、これで実は狙っているのは、市町村は中央政府とは離れた独自の団体である。然し軍と琉球政府との関係に於ては軍は主席に対して何処そこの住民を移動させろと云うことが起るに違いない。そうした場合に市町村としては独自の--軍としてはそれは分りませんから--主席に対してどうして来る(呉れカ)と云って来るかも知れない。そうした場合には議会の議決の必要と云うことが出て来ると思う。さてどうしたらうまく行くかと云う主席の定められた権限--琉球の行政ではあるけれども、行政主席と市町村と云うのと、市町村議会とこう分けたものを軍は知らない--それを政府でやれと云われた場合にどうやった方がその手続の面に於てうまく出来るかと云う…。
○田畑守雄君 調整していくのですね。
○嘉陽安春君 市町村の権限だから主席としてはこれをやれませんとは云えないし、と云って又市町村だけでも出来ない。
○冨名腰尚武君 選挙に関しては第六号に出ておりますが、政府に設置される中央選挙委員会若くは群島選挙管理委員会と云ったようなものはこれは純然たる独立機関として設置されるのか、それともどっかの局で面倒を見なければならないものならば行政課あたりに顔を出さなければいかんと思いますが。
○嘉陽安春君 権限としては独立でせうが、その間に事務面にお互い援助すると云う面じゃないかと思います。それと例えば選挙法の改正を要する場合もあるかも知れない。
○冨名腰尚武君 それは頭を出しておかなければいかんのじゃないかな。
○嘉陽安春君 その点含ませた趣旨に考えておりますがね。各種選挙制度の総合計画と云うことで、そうすると今おっしゃるのは、各種選挙制度の総合計画及び選挙管理委員会に関することですか。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後四時二十一分休憩)
  (午後四時二十二分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。
○城間盛善君 只今の第七条の第六号に各種選挙制度の総合計画、その次に「及び選挙管理委員会」これだけを挿入していただきたいと思います。
○議長(泉 有平君) 第六号は只今委員長が訂正されたように、「各種選挙制度の総合計画」の次に「及び選挙管理委員会」これだけを挿入することに致します。
  (事務局長比嘉良男君「第八条」朗読)
○松田賀哲君 この調停は労務委員会ですか。
○嘉陽安春君 あれも含んでおります。
○松田賀哲君 今の労務課についてでありますが、中央政府が出来た時、軍から政府の予算の割当があって、その中に労務者の訓練費として百万円位あったろうと思うのですが、それを考えた場合に、こっちに矢張り労務者の訓練と云ったような条項が必要になって来るのじゃないかと思うのですが、どんなもんですか。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後四時二十七分休憩)
  (午後四時三十五分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。
○城間盛善君 第八条の第一号の次に第二号として(第二号を第三号になおして)「労働の資質向上に関すること」を挿入していただきたいと思います。
○議長(泉 有平君) 労務課の事務を一つ増やしまして、第二号に新しく労働の資質向上に関することを新しく挿入して、原案の第二号を第三号に致します。
  (事務局長比嘉良男君「第九条」朗読)
○松田賀哲君 第一号に移民事業に関することとあって、第二号に移民に関する資料に関することとあるのですが、第二号は第一号に含まれるのではないですか。
○嘉陽安春君 それを出したのは、移民事業と云うのは一応必ずしも政府がやるべきものではない、色んな団体或は開拓会社ああ云ったものがあってやって来たと云う、色んな団体なり或は会社組織も出来て来なければいかん、事業と云うものは事業面があると同時に、移民に関する情報の面、移民が出られるとか、そう云う移民情報と事業とは別ではないかと思うのです。
○松田賀哲君 移民事業と云うのは海外協会とか云うようなものですか。
○嘉陽安春君 移民事業の組織体、それから勿論政府としての移民事業もあるのです。
○松田賀哲君 それではいっそのこと第一号は移民の促進に関することと云った方が、この課を置いた真意もあるのじゃないかと思うのですが。
○嘉陽安春君 謳い方としては考え問題だと思う。これは相手のあることであって、これはどうなっているかと云うことは、移民の促進と云っても、出ろ出ろ、出たい出たいと云う促進はあるのですか。問題はここに促進と云う言葉は適当でないと思うのです。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後四時三十八分休憩)
  (午後四時五十分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。
○城間盛善君 第九条の第一項の前に新たに第一項として「移民政策の企画に関すること」を挿入していただきたいと思います。従って第一項は第二項に、第二項は第三項に繰下って来ます。
○議長(泉 有平君) それでは第九条は今委員長の発言の通り第一項を追加致しまして「移民政策の企画に関すること」とし、元の番号を一つづつ繰下げることに致します。
  (事務局長比嘉良男君「第十条」朗読)
  (事務局長比嘉良男君「第十一条」朗読)
○松田賀哲君 位置、名称に関しては、と云うことは要りますか。
○冨名腰尚武君 これは従来は、名称とか管轄区域とか云うのは挙げずに委任事項にしてありますね。
○嘉陽安春君 何々については別に規則で定める。
○城間盛善君 第十条の第三号の字句の誤植訂正をお願い致したいと思います。前二項の企業免許地方事務所及び出張所については、別に規則で定めるの間違いであります。
○議長(泉 有平君) 第十一条の第三項は只今の委員長の訂正通り致します。
  (事務局長比嘉良男君「第十二条」朗読)
  (事務局長比嘉良男君「附則」朗読)
○冨名腰尚武君 第十二条についてですが従来の例からすると、例えば運輸局の場合は那覇港務所と云うのは港湾課の所管でありますが、運輸局に那覇港務所を置くと、こう云うような謳い方をしておりますが、この場合は総務局に労務事務所を置くと云ったような行き方に出来ないのですか、附属機関として。
○城間盛善君 その点委員会でも相当論議したのですが、労務事務所は附属機関とか廨庁とか云うものではなく、要するに労務課の事務そのものをやるところだと云うので、その表現をした訳であります。さっきの第十一条の第三項と同じように「前項の労務事務所及びその出張所については別に規則で定める」という風に御訂正をお願致します。
○松田賀哲君 今の第十二条の初めですが事務の円滑なる運営を図るためと出ておりますが、これは要るのですか。
○城間盛善君 それを抜くとですね「労務課に労務事務所を置く」ということになりますね、その労務事務所と離れてしまう。これは廨庁ではないのです。労務課の事務を扱っているのです。
 廨庁といった観念ではないのです。
○松田賀哲君 そうなれば、従来通り「労務課に労務事務所を置く」でやった方がいいと思うが…
○冨名腰尚武君 そういう観念ではないのです。出先で事務所を分割して置いてあるという考え方です。
○城間盛善君 いわば労務課で労務カードの発行をやるがあっちにもこっちにも手を伸ばすといったかっこうなんです。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後四時五十七分休憩)
  (午後四時五十八分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。これで逐条審議を大体終りましたが、全体について取りこぼしはございませんですか。
 それでは本案は軍との調整に移りたいと思います。
 先に軍との調整のため提出しておりました二読会続行中の自動車税の修正に対しまして軍から別紙のような書翰が来ておりますので一応御報告申上げておきます。
  (事務局長比嘉良男君「書翰」朗読)
○議長(泉 有平君) 次に行政主席情報局設置法案を上程致したいと思います。委員長に委員会の経過御報告をお願い致します。
○冨名腰尚武君 委員会の審議状況について御報告申上げます。先に一読会に於きまして政府から提出されました参考案を見た場合に、極めて小規模な構想を持ってやっている。で寧ろ情報官室的なものならば敢て担当局の設置と云うことまでしなくてもいい。寧ろ情報局を設置するならば十分に情報活動が得られるような規模にすべきであると云う御意見が多数でありましたので、その点についてひとまず行政主席事務局長並に行政主席と折衝してみたのであります。行政主席の気持は、前に行政主席事務局長の証言通り知事直属の部局であるだけに他に率先して、なるべく機構縮小と云う気持で行きたかっただけであると云うことを先ず第一に言われたのであります。それについて私は、重ねて予算上、特に小規模であることを必要とする事情の有無について聴きましたところ、その面については別に他局と区別してこうでなければならんと云うことはない、更に私は重ねて単に情報官を設けてこれを行政的に情報官室と云った扱い方をして行く、本当の意図はそう云うところにあるのかと言ったら、そうでない、矢張り行政活動をして貰わなければならないと云う意見があったので、院の意見も私の方から述べましたところ主席もこれに同意しましたので、行政主席事務局長に対して改めて案の改訂を要求したのであります。その案が委員会に提出されましたので、委員会ではこれを中心にして慎重審議して本日お手元に差上げました委員会修正案となって参った訳でありますが、これは尤も仕事の仕方によってどうにでもなるものでありますが、然し大体現在の事務量その他を勘案致しまして、委員会では、先ず二課程度置いていてやって行けると云う見通しをつけたのであります。それは一つには行政主席が情報局設置を考えた場合に、直属部局であるだけに他局に先んじて機構縮小の方針をそこに出したいと云う意図も多少考慮に入れた訳であります。以上委員会の審議状況についての報告を終ります。なお、各条について又色々御質疑等もあれば承りたいと思います。
○議長(泉 有平君) 討論は逐条審議の時に伺いたいと思います。
  (事務局長比嘉良男君「行政主席情報局設置法案第一条、第二条」朗読)
○冨名腰尚武君 一、二御説明を申上げます。
 第四項の情報教育的諸企業と云うのは英語をそのまま直訳したものであります。アメリカ的な観念で情報教育的、要するに目に訴え耳に訴えることによって国民の資質向上に影響するようなものは、政府として大いにこれを奨励して行かなければならない。又一面、住民の文化に対して害のあるものは、これは禁止措置と云うところまでは行けないのですが、そう云うことがないように指導もすると云う風な観念がありまして、これはずっと前から、この面は副長官から知事宛の書翰によって明示されている点であります。
 出版につきましては、これはニミッツ布告、現在の集成刑法にはっきり出版の管理権は民政府にある、即ち出版の自由は許されていないのであります。出版に際しては許可を得なければならないようになっております。それから、劇団、映画、劇場と云ったような面に関しては所謂占領行政下にあって占領軍人に対して猥褻なものを見せてはいけないと云うことは、今日の集成刑法に未だ残っておりまして、その面の指導、事前指導と云う形になっている訳であります。映画はフィルムの自由輸入が出来ます以前は、GHQの目を通った映画と云うものばかりが、ここに来ると云うことは予想されない、所謂闇フィルムばかりがあった訳でありますので、これは軍の方で検閲をしていたのであります。その検閲に対して民も協力しようと云う話があって共同検閲の形を採っていたのでありますが、今は、全て日本映画、若くは洋画にしても日本から輸入しているもので、これは残らず例外なしにGHQの目を通っていると云う意味で現在でも群島政府弘報室では検閲と云う言葉を使わずに試写と云う言葉でやっているようでありますが、これは現在の状況に於ては必要はないと思っておりますが、然し日本が講和条約の発効によってGHQがなくなった場合に、その面がここの現地政府としてどう云う風に考慮するかと云うことは、又今後の問題だと思います。
 劇場につきましても、これももう少し調整しなければならない問題が沢山あるのでありまして、現地法などによって規制される面は、これを情報課でやると云うことは前々から疑問を持っていたのでありますが、然し軍の指令によって、今日は劇場の設立の許可なども情報課でやらされておりましたので、この面も要するに群島政府をそのまま吸収すると云う意味でこれをどう整理するかは今後の政策に委ねることにして一応第四項はそのまま採用した訳であります。第五項の文化運動及び文化団体の育成に関することと云うことは、この間の協議会か本会議で嘉陽参議が文化面に関する仕事を取扱うところが今までのところ何処の局にも出ていない、どっかに顔を出しておいた方がいいんじゃないかと云う御意見もあったので多少それも汲み取って一応こう云った風な表現で頭を現したのであります。これは決して思想統制、思想統一と云ったような面を考えたのでなしに、今のところ政府との連絡と云うものがないために各種の団体、各種の運動がばらばらになって行われている。特に最近、各方面から強硬に主張されております寄附金の規制と云った面からしても、各種文化団体の、文化運動のためにやる寄附金募集が極めて旺盛であるが、それがどっちつかずの恰好になって結局所期の効果を挙げ得ないと云ったりする面もありますので、そう云う時に向うから要求があれば進んで相談相手にもなってやる、又こっちの気のついたことは連絡もすると云う程度の仕事でよかろうとこう云う風に考えてこの第五項をひとまず挿入してみたのであります。
○城間盛善君 一、二御質問を申上げます。
 第二項の政府の行政記録、ちょっと耳新しいような気がしますが、その内容を、第三項の世論調査、これは何だか統計局でもやるのじゃなかったかと記憶しておりますが、その辺どうだったか、その二点…。
○冨名腰尚武君 行政記録と申しますと、云ってみれば今度新発足すると、敢て限定しないでも今の臨時中央政府の歴史的な資料をずっと残しておくと云えば一番早分りかと思います。何年何月にどう云うことがあったと必要ならばそれに附随する諸資料を纏めておく、要するに後々の人が中央政府史でも編出す時にそれが一通りの資料として役立つようなもの、又政府としては一年に一遍位は政府のやったことに対しての出版位は予算が許せばこれを出版して住民に提供する、そう云った仕事を意味するのであります。それから世論調査と云うことでありますが、世論調査と云う面で事務局が持って来たのは所謂表式世論調査、この表式世論調査と云う点については或は統計局でもやりませうが、どう云う面での世論を調べるかと云ったことは一応情報局としても考えなければならないのじゃないかと云った点で私も行政主席事務局の案を丸呑みにして表式世論調査の出来るような風にこの案は出来ております。その外これは世論調査としましては、そう云う統計式の意味での表式世論調査ではなくて情報官なり若くは補佐官が直接住民と接触して行くことによって住民の政府に対する考え方、その政策に対する批判といったようなものをどんどん収集して来る、言葉を換えて云えば情報の収集になりますが、そう云うことも第二条では世論調査に引っ括めて云うている訳であります。
○嘉陽安春君 今の行政記録、これは史料と云うのがありますね、ちょっと強過ぎる訳ですが、はっきりし過ぎますか…。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後五時十九分休憩)
  (午後五時二十分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。
  (事務局長比嘉良男君「第三条」朗読)
  (事務局長比嘉良男君「第四条」朗読)
  (事務局長比嘉良男君「第五条」朗読)
  (事務局長比嘉良男君「第六条」朗読)
○冨名腰尚武君 庶務課と云う名称は管掌事務を見た場合に、これで妥当であるかどうかと云う問題も出て来るだろうと思いますが、従来兎に角庶務的な面を持っている課は全部庶務課と云う風に統一して来た点も考慮して一応庶務課としたのでありまして、そこに若し妥当でないとすれば、又適当に考慮の余地もあろうかと思われます。弘報その他刊行物と云いますのは、所謂政府の政策等を刊行物によって住民に普及徹底すると云う、その情報局内で発刊される刊行物を意味しているのであります。自分のところで作るものなのに接受と云うことがあり得るかと云う考え方もありますが、これは民政府から提供される刊行物、弘報用の刊行物も今までの例からするとありますので、これは特に公文書と云うものとは区別して第四項のような表現にした訳であります。第五項から第八項までは所謂第二条の世論調査に関することを細分しただけでありまして、第五項が先程申上げました住民に接しての色々な面からの情報の収集、これは広く世論調査の一部に入る訳であります。第六項から第八項までは、事務局案そのままで表式調査と云う風に考えている訳であります。
○議長(泉 有平君) 別にありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  (事務局長比嘉良男君「第七条」朗読)
○冨名腰尚武君 これについても、ちょっと御説明を申上げます。普通耳慣れない事項が挙げられておりますのは、第三項と第五項でありますが、これは軍の考え方は、新聞記者と云うものは、政府各方面を駆け廻って取材をするのは当然のことではあるが、然し彼等の取材に委していると往々にして誤報する虞がある、寧ろ政府は政府活動に対する誤報を避けるためには、政府が積極的に新聞記者に資料を提供しなければならない、そう云うことを要請されたのが一つと、それから第五項の問題でありますが、これは雑誌、新聞などに政府の施政についての色々の批判なり、或は非難なりが出て来る、これは従来の日本的な行き方からすると十中八、九までは政府は頬被りで押通して行く、それは甚だいけないことで、言論機関によって政府が非難された場合は政府としては直ちに住民に対する責任上、これに対して答えるものは答える、又改むべきものと気づいたものは改める旨の発表がなければならない。然し、それをただ理念的にそうすべきであると云って放ったらかした場合には面倒くさいし、又得てして非難を蒙る側は被告的な立場に置かれるために、自分ではなかなかこれをやろうとしない、断乎たる自信がある場合にしかやらない。落度がある場合には頬被りをすると云ったように流れ勝ちでありまして、それに又見落しと云う場合も起り得るから、情報機関に於てはその管轄区域内で発行される雑誌、新聞等には満遍なく目を通して政府関係の記事があった場合には、それを関係局に直ちに提示する、それに対しての処置を求めると云う、そう云う面の連絡事務は必要だ。これも民政府の主張でありまして、丁度沖縄民政府情報部時代に新聞課と云う特別に一課を設けてやった点はこう云う点を軍から要請されていたからであります。そう云った点も、これは一つには軍に対してPIO的な仕事も、こう云うところも気がついているのだなと思わせる意図があって向うからの過去に於ける要請をそのまま入れて見た訳であります。
○議長(泉 有平君) 御異議ありませんか。
○松田賀哲君 今の第七条の第四項ですね、「政府の行政記録の編纂および刊行に関すること」これは第三項に持って来て、第三項を第四項にしたら…。
○冨名腰尚武君 そうですね、そうしませうね、似ている問題ですから御訂正を願います。案の第三項を第四項に、第四項を第三項に…。
○議長(泉 有平君) 第七条の第三項と第四項を番号を取換えます。
  (事務局長比嘉良男君「第八条、附則」朗読)
○冨名腰尚武君 第八条について御説明申上げます。これは地方にどう云う風に琉球政府が出来て、琉球列島全部が琉球政府の管轄になって行くと云う場合に、海を隔てた各群島に対して情報機関として、どう云う措置を講じなければならないかと云う面から、この地方駐在員の問題、或は情報局としての地方活動の面が相当大事に考えられなければならないのでありますが、そこのところは委員会としても亦発議者としてもなかなか今日これを明瞭な形に置くことは、いささか困難を感じましたので、政府の参考案のままに一応しておきました。この点若し不十分な点がありましたら御審議を願いたいと思います。
○與儀達敏君 これは情報収集だけでせうな。
○冨名腰尚武君 それを通じて各種のパンフレットの配布だとか、或は若し急を要して伝達をする必要がある場合には、その伝達に当る、情報収集だけでなしに弘報の面、支局を置くか置かんかと云うところまでは考えていない訳です。
○與儀達敏君 第六条の第四項もやりますか。
○冨名腰尚武君 庶務課ですから、そうなりますと長がいなければならん訳ですがね。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後五時三十分休憩)
  (午後五時三十三分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。
○城間盛善君 附則ですが、各群島に委ねられた権限はないのですか。
○冨名腰尚武君 その点はありますね。然しこれは組織法の中には情報に関するものはないと思いますがね。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後五時三十四分休憩)
  (午後五時三十五分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
○冨名腰尚武君 群島組織法との抵触の面についての御質問でありますが、群島組織法の条項には特に情報関係に対する条項はありません。又情報の仕事に対しての面が指令や布令で謳われているのもございません。仕事の面でここに挙げられた権限の中で抵触するのは情報教育的企業面であります。この面は要するに群島政府の接収が済むまではただここでやらないと云うだけのことで処理が出来ると思います。その他の面に関しましては、群島政府も臨時中央政府も同時にやっても一向支障のない面ばかりだと、こう云う風に考えております。
○議長(泉 有平君) 以上で本案は軍との調整に移りたいと思います。
 休憩します。
  (午後五時三十六分休憩)
  (午後五時四十三分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。田畑参議から立法院事務局設置法の一部改正について発議がありましたので、一応発議者の御説明をお願い致します。
○田畑守雄君 立法院事務局設置法の中一部を改正したいと思って発議したのでありますが、事務局設置法は一九五一年六月十二日に立法したのでありますが、その当時は現在の臨時的立法院であると云う観点の下に定員を二十六名に押えてあったのであります。
 所が日一日と状勢が変って四月には新議員が選挙されて立法院が発足すると云う段階に入りましたので、現在の職員では到底新立法院の事務局としては機能を発揮し得ないじゃないかと思われる点がありましたので、この際各局並に必要な職員を置くとして定員数の枠をはずしたいと思って発議した訳であります。どうぞこの点御審議下さって無事通過するようお願い致します。終り。
○議長(泉 有平君) 本案の審議に当って御賛同を得たいと思いますのは、立法院手続きに読会を省略することが出来ると云う条項がありますので、これに従って読会手続きを省略して早急に調整の段階に持っていきたいと思います。この処置に御賛同願います。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) では御賛同を得て読会を省略して逐条審議に移ります。
  (事務局長比嘉良男君「改正案」朗読)
○城間盛善君 これで職員の枠がはずされましたが、これだけによって必要ある場合の専門員が置ける規則になっていますか。これは置けるものですか。
○田畑守雄君 この点疑義がありますが、枠をはずして任用法も改正していかないと本当の専門員は置けないと思うのでありますが、差当ってこの枠をはずすことによって一応専門的人を置いてこの人達の待遇を改めて置けると云う考え方を基に提案した次第です。
○議長(泉 有平君) 休憩致します。
  (午後五時五十分休憩)
  (午後五時五十二分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。別に疑義がなければ本案はこれで軍との調整に移します。
 休憩致します。
  (午後五時五十三分休憩)
  (午後六時四十四分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。工務局設置法の二読会に移ります。委員長の報告をお願い致します。
○與儀達敏君 一読会で附託された工務局設置法案については、特別委員会で慎重に審議した結果、お手元に差上げた案に落着まして御審議をお願い致すことになりました。仮工務局長の任命もないのに大体主席事務局と軍の案が主体になって出来たものであります。それで参考案にある課の編成をそのまま採用した訳であります。
 参考案は土木建築と云う面について設計者と担当実施する所は分けてやった方が間違が少いし、又資材の方も別にしてやった方が円滑に行くし正確に工事が進められると思いましたので、参考案の構想をそのまま採っています。以上申上げて御説明に換えたいと思います。
○議長(泉 有平君) 議事の進行上討論は逐条審議と併せて行いたいと思います。逐条審議に移ります。
  (書記長川畑秀志君「第一条」朗読)
○議長(泉 有平君) 次…。
  (書記長川畑秀志君「第二条」朗読)
○與儀達敏君 政府所管の営造物の営繕に関すること、これは参考案では非常に観念の相違したものが書き並べられているので、引っ括めて営造物にしました。それから第二項はガリオアによる建築、公安に関係あると云うのは劇場、娯楽場などであります。電気、水道に関することは現在群島でやっているために水道事業の調査なども含めます。第七項はブルドーザーなどその他の重量機械を運転する免許であります。以上です。
○城間盛善君 第三項ですが、法規を管理すると云うのはどう云う意味ですか。
○冨名腰尚武君 取締りと云うことになりますね。
○大濱國浩君 これはちょっと表現がまずいですね。
○議長(泉 有平君) 休憩致します。
  (午後六時三十三分(ママ)休憩)
  (午後六時三十四分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
○與儀達敏君 「立案、実施に関すること」と御訂正願います。
○議長(泉 有平君) 第三項はそう直します。
○城間盛善君 第一項は営繕だけですか。例えば新しい建物でも政府として造った場合、監督とかの面はどうなりますかね。第五項に入りますか。
○與儀達敏君 はい。
○冨名腰尚武君 そうすると直営工事はないと云う観念ですか。
○與儀達敏君 直営工事もあります。参考案の造営物は軍の方では形あるものと説明して、はっきり掴めないのですよ。
○大濱國浩君 第一項は計画、建築、営繕がいいじゃないかな。
 これでは修繕だけを含むようで…。
○冨名腰尚武君 全てを含みますよ。
○嘉陽安春君 第二項の下の方に関連するものは警察の方にもあるし、公安に関係あるとしたら…。
○與儀達敏君 これは出来た時検査すると云う意味です。
○嘉陽安春君 実際問題としてどうですかな。
○與儀達敏君 技術面に於ては工務がやる訳だろう。
○嘉陽安春君 然し、主体があって一緒にやると云うことがある筈だが…。
○與儀達敏君 司法局は司法局面の指導監督をする訳でしょう。
○冨名腰尚武君 司法局はそこがはっきりするといいと思いますね。
○與儀達敏君 強いて云えば許可になるだろうな。
○冨名腰尚武君 建築物としての指導の問題は工務がやって、非常口、消火施設などは警察がやると二重になるんじゃないかな。警察の方で建物、漆喰までも口を入れるかどうか。
○嘉陽安春君 衛生の面からも文句があると思いますがね。何処が主体になるかですがね。運営問題に残しますか。
○議長(泉 有平君) 休憩致します。
  (午後六時四十二分休憩)
  (午後六時四十四分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。次に移ります。
  (書記長川畑秀志君「第三条」朗読)
○議長(泉 有平君) 次…。
  (書記長川畑秀志君「第四条」朗読)
○議長(泉 有平君) 第三条は「局」の上に「工務」を加えて下さい。
  (書記長川畑秀志君「第五条」朗読)
  (書記長川畑秀志君「第六条」朗読)
○與儀達敏君 普通の庶務課の行き方と同じです。
○議長(泉 有平君) いいですね、次…。
  (書記長川畑秀志君「第七条」朗読)
○與儀達敏君 第二項は護岸、排水溝など耕地を守る施設です。公有水面は運輸局は公有水面の使用面であって、ここでは埋立計劃に関する面もあります。それから「積算」と云うのは新語ですが、見積りと云う言葉ですが、それより的確な術語になっているそうです。
○冨名腰尚武君 第二項ですが、運輸局には港湾課がありますが、これは開発計劃、単に計劃だけですか。
○與儀達敏君 そうです。そして市町村の議会で可決されて埋立が出来ますが、その場合は知事が認可するような制度ですから、運輸局はその面を受持ち、ここでは計劃だけであります。
○大濱國浩君 港湾外と港湾内を意味しているんじゃないですか。
○與儀達敏君 そうです。
○松田賀哲君 第三項ですが、市町村から頼まれて造ってやると云うのですね。
○與儀達敏君 そうです。
○松田賀哲君 そうすると市町村では造らん訳ですか。
○與儀達敏君 市町村に建築技師などがいない場合、頼まれると造ってあげるのです。
○松田賀哲君 そうすると皆、頼むんじゃないかな。
○與儀達敏君 全部まで頼まんでしょう。
○田畑守雄君 鉄筋などは別だが、そう無茶苦茶には来ないでしょう。
○議長(泉 有平君) 休憩致します。
  (午後六時五十二分休憩)
  (午後六時五十四分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。次行きます。
  (書記長川畑秀志君「第八条」朗読)
○與儀達敏君 ここで問題になるのは、第六項ですが、工務課は実施をする所、ここでは予算を請求して全てを購入した時は一応資材課が保管するが、そこから持って来て、現場で持つ資材費の見積りと云うのは、入れた方がいいと思います。第三項も附属備品で問題になりましたが、原案は機械及び備品と出ていますが、そうしますと庶務課が扱うものと不明瞭になりますので、深く突っ込んだら機械の附属備品と云う性格を持っていますので「機械及びその」としました。附属備品は新しい言葉ですが、やむなくこう云う表現方法を採りました。
○冨名腰尚武君 第五項ですが、重量機械は、例えばブルドーザーなどの車輛も含みますか。
○與儀達敏君 あれは車輛とは云わないそうです。これは開拓課にもありますが、向うの持つものは別として、運転する免許はここで持とうと云うのです。
○松田賀哲君 これは第三条で必要な職員を置く、後に局々と出て来ますが…。
○冨名腰尚武君 工務局に何課を置くとなっていますから、これでいいじゃありませんか。
○議長(泉 有平君) 他にありませんか、次に行きます。
  (書記長川畑秀志君「第九条」朗読)
○冨名腰尚武君 これは局の所管する機械となっていますが、例えば開拓局などの機械はタッチしないと云うのですか。
○吉元榮光君 管理はノータッチですが、修理などはここでやる訳です。
○冨名腰尚武君 そうすると「政府の所管する」と云わねばいかんじゃないかな。
○議長(泉 有平君) 休憩致します。
  (午後七時休憩)
  (午後七時三分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。次…。
  (書記長川畑秀志君「第十条」朗読)
○與儀達敏君 ここは資材と物資ですが、資材は材木とか瓦とか、そう云うその建物に或は工事にそのまま入っていくもの。物資と云うのは工事につきまとう所のもの。シャベル、釘などは資材に入ります。そう云う区別があるそうです。
 それと消耗品も工事につきまとう消耗品と庶務課の扱う消耗品とは違う訳です。原案には、第三項は只「処分」として規程によるを省いてありましたが、これは大事を取って「規程による」としました。
○議長(泉 有平君) 休憩致します。
  (午後七時五分休憩)
  (午後七時六分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
○與儀達敏君 誤植訂正をお願いします。第三項は「成規に基く」と訂正して下さい。
○議長(泉 有平君) いいですか、次…。
  (書記長川畑秀志君「第十一条」朗読)
  (書記長川畑秀志君「附則」朗読)
○議長(泉 有平君) 休憩致します。
  (午後七時七分休憩)
  (午後七時八分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
○與儀達敏君 第十一条は二項として下さい。それから第九条の方も二項にして下さい。
○議長(泉 有平君) 以上で大体終りましたが、全体について御質問がありましたら…。
○與儀達敏君 第二条をちょっと見て下さい。第二項ですが、言葉が熟さないようですが…。
○冨名腰尚武君 営繕には新設も入りますから、計劃も入ると見ていいじゃないですか。
○與儀達敏君 課に行くと第七条に行くのですよ。
○冨名腰尚武君 だから第七条は計劃、設計になって造営に関することは第八条に行く訳ですね。
○議長(泉 有平君) 休憩致します。
  (午後七時十分休憩)
  (午後七時十九分再開)
○議長(注)(泉 有平君) 再開致します。(注の議長発言脱カ)
○松田賀哲君 溯りますが、第二条第一項だが、これは政府の行う土木及び営繕に関することとした方がはっきりすると思います。それと関連する事項の第七条第一項ですが、これも政府の行う土木営繕の計劃設計に関することに修正したいと思います。
○議長(泉 有平君) 今修正動議が出ましたが、これを議題と致しますか。
  (「賛成」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) ではこれを取上げて修正の動議と致します。
○與儀達敏君 委員会としても、この動議に賛成です。
○議長(泉 有平君) 今の案の通り修正したいと思いますが、異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) ではこれはそう云う風に致します。休憩致します。
  (午後七時二十二分休憩)
  (午後七時二十八分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
○與儀達敏君 第八条第一項の「建物の」はミスプリントですから消して、「局所管の営繕」として下さい。
○議長(泉 有平君) ではそう致します。
○冨名腰尚武君 第八条の第二項ですが、運輸局と重複しているようですが、この点はどうなります。
○吉元榮光君 あれは指定港だけじゃないですか。
○冨名腰尚武君 そんなら括弧して指定港を含まずとでもせんと…。
○議長(泉 有平君) 休憩致します。
  (午後七時二十九分休憩)
  (午後七時三十分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
○田畑守雄君 冨名腰参議の御質問にお答え致します。運輸局設置法の第八条第四項の公有水面の埋立、干拓及び使用と云う点と第三項とは那覇港に於て軍から権限を移譲された分の事であります。
 それから第八条第八項の普通港湾は大体町村の所有であって、それに対して事務的な助言であるとか、或は保存上必要な部面の勧告をすると云う程度のもので、港湾課自らは実施はしないのでありまして、この点は工務局設置法と抵触しないと思います。
○議長(泉 有平君) 他にありませんか。
○松田賀哲君 今の田畑さんの説明ではどうしても重複するような気がしますが、これはもう少し考える必要があると思いますね。
○議長(泉 有平君) 休憩致します。
  (午後七時三十四分休憩)
  (午後七時四十五分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
○與儀達敏君 第八条第二項の港湾は削って下さい。第七条の第一項と第八条第一項はちょっと文字が間違っているので、第二条で政府の行うを受けて第七条の「政府」を「局」にしたらと思います。
○田畑守雄君 そうすると第四項はどうなります。
○與儀達敏君 これはいい訳です。
○議長(泉 有平君) 休憩致します。
  (午後七時四十七分休憩)
  (午後七時四十九分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。他にありませんか。では本案は軍との調整に移します。
 休憩致します。
  (午後七時五十分休憩)
  (午後七時五十四分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
 法務局設置法案を議題に供します。委員長の報告をお願い致します。
○城間盛善君 第一読会に於きまして行政法務委員会に附託されました本案を審議致しました結果並に経過を御報告致します。先ずその前に、この案を立案致しました際、行政府から廻された参考案に根本的な修正を加えたことも、ついでに報告したいと思います。参考案によりますと云うと、法務局長が検事の長を兼ねると云う制度になっておりました。委員会に於きましては、先ずこれを分離すると云う根本方針を決めまして、先に提出致しました原案を作成した訳であります。大体に於て日本の現制度に倣った形でありまして、日本に於ては法務総裁によって法務関係事務を総理すると云う形になっております。一方には検察庁がありまして、その検察庁は法務総裁の一般的指揮監督を受けると云うだけで、個々の事件については法務総裁の指揮監督を受けないと云う風に、実際検察事務に於ては一般行政の方面とは分離した形を採っております。大体この形に従ってこの案を作成したのであります。その後附託されましてから、更に検察事務の組織とか、或は検事の制度とか云うことについて更に検討を加えました。それと最近、民政府から公布になりました布告第十二号、これは布告第三十八号を改正したものでありまして、裁判所制度がこの布告第十二号によって相当な変化を来しております。これに対応する問題、種々の角度から審査し研究致しました上に、更にこの検事の制度、階級なりについてその方面の意見を確めると云う意味で上訴裁判所の判事及び検事、それから法曹界の代表の方を証人として喚問いたしまして、これに対する証言を求めた訳であります。こう云う風に世論を聴いたり、色々研究させました結果、検事の検察事務を行う機構と云うものに、原案に多少の修正を加えて、ここにこの案を委員会から修正したものを出した次第であります。なお、その他質疑は逐条審議の際にお答えし、意見を申述べたいと思っております。
○議長(泉 有平君) 質疑と逐条審議を両々併せてやっていただくことにして逐条審議に移ります。
  (事務局長比嘉良男君「第一条」朗読)
○城間盛善君 ちょっと御説明申上げます。
 本設置法の構成は第一章に法務局として、第二章に検事、こう云う風な構想で作成したものであります。大体に於て日本の制度に対応した形で作ったものであります。
  (事務局長比嘉良男君「第二条」朗読)
○冨名腰尚武君 委員長に伺いますが、第一項の検察事務に関することと云う点でありますが、本法は一章、二章に分けられて、第二章に検事と云う章があります。そうすると検察の事務そのものは恐らく検事局--これは局を設けられるかどうか分りませんが--で行われるのではないかと思いますが、ここはこう言い切っていいものかどうか、検察事務の何とかに関することと云う風に限定されないでもいいものかどうか…。
○城間盛善君 日本の検察制度の構想を描いていただきたいと思います。上に法務総裁がおり法務次官の責任者であると同時に、検察庁の一般的な指揮監督の地位にあると云う形になっております。大体その構想を採っている訳です。広く云って法務局と検察事務を行う機構とは全然別個の機構と云うのではなくして、これは法務局と一緒だと云うとちょっと語弊がありますが、法務局長がおって一般法務の事務を処理する、こう云って検察の方面の検事長がおって検察の事務を指揮監督すると云うことになっておりますが、矢張り検事長も一般的には法務局長の指揮下にある訳であります。その意味に解していただきたいと思います。だから法務局に於て全然検察事務は関係しないと云うのではないのであります。局長とか或は局の中の機構として課にも出て来ますが、矢張り検察事務については局長が一般的監督があると云う意味で、或る程度の事務はそこでも見なければいかん、然し実際に於て裁判所に於て行う検事の職務は、これは勿論検事長以下の検事の職務になる訳です。
○嘉陽安春君 結局、今の冨名腰さんの御質問は一番第十七条と関連してお読みになっていただけば…そこに相呼応する点に於てどうしても掲げなければならないと思う。
○冨名腰尚武君 その点についてでありますが、今朝の委員会を傍聴致しまして、証人の方々の証言が要するに検察事務と云うものをはっきり政治から分離させる所謂政治の干与を排除すると云う点が各証人から主張されておりましたが、第十七条によって結局検察庁と云うものは、検察局長(ママ)が検事若くは検事長と云うものは、法務局長の指揮監督によると云うことになれば、法務局長そのものが政治色を濃厚に発揮した場合は結局検察事務も政治的に左右されると云う面が出て来ると思いますが、そこのところに関しては、委員会としてはどう云う風な御所見をお持ちであるか、そこを承りたいと思います。
○城間盛善君 今日の証言の中にもその面についての証言がちょっとあったと思うのですが、こう云う風に考えていただきたいと思います。検察事務と云うものは、政府を構成する三つの機関、立法、司法、行政のどっちに属するかと云えば、明かに行政の部門に属するのであります。従って行政府のどっちかの機関に属さなければいけないと云う立場にある訳です。又一方に於ては検察と云うこと自体が司法活動に準ずると云う意味の準司法的な活動とも云われておりますが、そう云った特殊な性格を持っております。そう云った司法事務自体の性格から云えば、行政と分離しなければならない。この二つの性格と申しますか、特徴と申しますか、これを結局結び付けなければならないと云うことになる。行政活動であると云う面に於ては、行政府に属する。然し実際の活動に於ては、政治的勢力から分離すると云う運営の仕方でなければならないと云う点から、結局日本でもあるような機構上は行政府の法務局に属する形になっている。然しその検察事務の個々の検察事務を行う場合に於ては、それから分離した独自の活動をしなければならない。こう云う建前になるのです。一般的には、総括的には法務局長の下にいると云っても、その指揮は検事長限りのものでありまして、それ以下の個々の検事には及ばない。個々の検事がそれぞれの事件を扱っている時に、それぞれの事件について、これをああせい、こうせいと云うことは、法務局長としては指揮出来ない。そう云う仕組を考えております。それによって政治色からの分離と云うことを考えております。
○冨名腰尚武君 個々の事件については検事長のみを指揮監督することが出来る。担当検事については及ばないと云う点に救われる面がありますが、重ねてお伺いしますが、検事長は検事に対する指揮監督権は持っておりますね。
○城間盛善君 持っております。
○冨名腰尚武君 その点で歪められる面も考えられますが、第十三条は検事を罷免による外その身分を失わないとはっきり身分保障が謳われております。法務局長は指揮監督権は持つけれども、場合によっては必ずしも法務局長の指揮監督に従わない場合も有り得る、こう云う風に解していい訳ですか。
○城間盛善君 前の方はそう云う風に解していい訳です。検事は身分を保障されていると云うし。
○冨名腰尚武君 検事の罷免の条項に該当しない範囲に於ては法務局長の指揮監督に敢て従わなくてもいい場合があってもいいかと云うのです。そこをはっきりすれば、即ち政治干与の面はその点で排除されると思いますが。
○嘉陽安春君 その点について、問題は、検事の身分保障について、その時に更に検討しなければならんと思います。
  (事務局長比嘉良男君「第四条」朗読)
○城間盛善君 簡単に御説明致します。
 第四条の第一項は普通の局の局長のものと同じですが、第二項は行政府の種々の立法問題、法律問題に対して、法律の方面からの意見を述べる、或はそう云った知識を有する役務を供する、第三項は政府が当事者になる場合の訴訟があったら、その場合、政府と云う抽象的なものを代表するのが局長だと云う風に書いた積りであります。
  (事務局長比嘉良男君「第五条」朗読)
○冨名腰尚武君 行政府としては、別に司法部に対しての、裁判に対しての連絡事項、管掌事項と云ったようなものはない訳ですか。
○嘉陽安春君 これは政府対政府の連絡になれば官房の仕事、事務上の連絡ならどこでもやる。
○冨名腰尚武君 それは当然のことでしてね。
○嘉陽安春君 主席と上訴裁判所長との関係と云うことになって来て官房の仕事じゃないかと思う。
○冨名腰尚武君 何か特別なものがなければいいのですがね。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後八時十二分休憩)
  (午後八時十五分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。
○城間盛善君 第六条の第二項を誤植訂正致します。局長の官印並に局印の保管とあるのは「管守」であります。
○議長(泉 有平君) 管守に訂正願います。
  (事務局長比嘉良男君「第七条」朗読)
○冨名腰尚武君 法曹界との関連はどこで謳うべきですか。あれは資格認定等の特別な職能を与えている訳でせう。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後八時十六分休憩)
  (午後八時十七分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
  (事務局長比嘉良男君「第八条」朗読)
○嘉陽安春君「他の所属に属しないもの」の「他」と云うのはどうお考えですか、他局のか…。
○調査員(奥島憲雄君) 他課も含まれると思います。
  (事務局長比嘉良男君「第九条」朗読)
  (事務局長比嘉良男君「第十条」朗読)
○松田賀哲君 第十条には第一項から第七項まで具体的に事務面が列記されておりますが、第六項の人権の擁護に関することとありますが、これは具体的に云うとどう云うことですか。
○嘉陽安春君 この点は実は審議の時にも問題になったのですが、私は寧ろこう云うのは除いた方がいいと云う考えですが、実はこれは日本で新しい色々人権擁護の制度が出来ておりまして、例えば人身保護法とか云うのが出来たり、それから人権擁護委員会とか、人権擁護協会とか云うようなものも盛んに出来ている訳ですよ。英米流の思想で基本的人権を護ると云うような関係からして色々な制度が出来ておりまして、その面の普及徹底をやったり、或はそう云った団体の免状をやったり、育成をやったりとか云う面が司法面に来ております。それで日本の法務府にそう云うのがあるのですが、沖縄で未だそう云う制度が実際にあるかと云えば、ないのです。これは本当は基本的人権と云う観念から出て来るのですが、憲法上のあれを護るためになければならないと云うのですが、そう云う事業団体の世話だろうと思います。それを謳うか、謳わないかと云うことについては、これは作文的でなかろうかと云うこともあるのですが、法務部と云うのはそう云うことも考えんとと云うのでここに顔を出してある訳です。具体的に云えば、日本ではそうなっていると云うだけであって…。
○松田賀哲君 そんならもう少し具体的に人権擁護の制度に関すること、としたら…。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後八時二十二分休憩)
  (午後八時二十七分再開)
○議長(注)(泉 有平君) 再開致します。(注の議長発言脱カ)
○嘉陽安春君 只今の第十条の第六項のことでありますが、人権の擁護に関することと云うことは、戦後日本で基本的人権のことが出来て参りまして、それに伴って法務部の仕事として人権思想を普及徹底し、それを擁護するために組織した団体の事業なりを育成援助して行くと云うような色々の事業が法務部の仕事として出て来ております。だから将来は琉球政府の法務局としても、こう云う仕事が増えて行く、又そうでなければならんと云う趣旨を持たせてあります。
○松田賀哲君 そこでですね、人権の擁護に関することと云うので謳っていてはさっき申上げた通り抽象に過ぎるような感じがいたす訳であります。といって人権の擁護制度に関するでは弱くなると云うことであれば、擁護制度の研究に関することと云う風にもっと具体的に仕事が与えられるようにやらなければならないと思うのです。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後八時二十九分休憩)
  (午後八時三十九分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。
○城間盛善君 第十条の第六項、第七項を一緒にして、人権の擁護その他法務に関することと云う風に修正をお願いしたいと思います。
  (事務局長比嘉良男君「第十一条」朗読)
○冨名腰尚武君 ここの法務支局と云うのは、各局の設置法の場合の支局に相当するものですが、普通の場合ただ支局となっておりますが、特に法務と云うものを付けたのは特別の意味がありますか、宮古法務局支局とこうなる訳でせう。
○嘉陽安春君 支局がいいんでせうね。
○冨名腰尚武君 支局でいいと云うことになれば、法務局に左の支局を置く、登記所以下は、法務局に左の附属機関を置くと云う風になっておりますが…。
○調査員(奥島憲雄君) 登記所は法務支局の出張所と云ったような観念です。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後八時四十分休憩)
  (午後九時十二分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
○城間盛善君 第十一条をこう云う風に直していただきたいと思います。
 第十一条 法務局に左の支局を置く
  大島支局
  宮古支局
  八重山支局
  (新たに第十二条を入れて)
 第十二条 法務局に左の附属機関を置く
  登記所
  中央土地事務所
  刑務所
  少年刑務所
 その次に新たに第十三条を設けまして
 第十三条 支局および附属機関については別に規則で定める。
○議長(泉 有平君) 委員長の修正通りに致します。
  (事務局長比嘉良男君「第十二条」朗読)
○城間盛善君 前に条が増えましたので、第二章の第十二条以下は全部、第十二条が第十四条に、以下ずっと繰下げていただきたいと思います。
 それから誤植がありますので、訂正致します。第十二条の第二項「巡回裁判所の地区」となっておりますが、「巡回裁判所の裁判地区」と訂正願います。又、検事と云う言葉が二度出て来ますが、最初の検事は検察官と云う風に解していただきたいと思います。そう云う言葉を使えば使っていいのですが、然し琉球ではそう云う現行法は入っておりませんので、昔のままの検事と云う言葉を使ったのですが、この階級は先程も御報告申上げた通り上訴裁判所法曹会の方面からの証言に基いて、何れもこれを考えておりましたが、意見も一致しましたので、検事長、次長検事、検事、副検事と云う四階級を持っております。
○松田賀哲君 第二章の検事と云うことに関してでありますが、この第二章の検事を各条を見てみると検事の身分などに関することでありまして、これは官吏の任用法に属する問題であると思います。従ってこの第一章には法務局となっておりますから、第二章に於ては検事局と先ずその章の名前を建てるのが当然じゃないかと思いますが…。
○城間盛善君 只今極めて重大な問題が提出されましたので、十分なる御検討をお願いしたいと思います。こう云った公務員の階級は設置法に出すべきでないと云う御意見でありますが、これは何に拠るべきか、如何なる方法があるかと云う問題、第二に第一章は法務局となっているが、何故第二章は検事になっているかと云うこと、それは今までの経過なり構想なりについて御報告致したいと思います。
 日本では検察庁と明かにそう云った官庁が設けられておりますが、これを検事局とするか、或は単に検事とするかについて非常な討議を続けた訳でありますが、検事局と云う風に一つの官庁を置くと云うことになれば、非常に難しい問題が起って来ると思いますし、それからもう一つ検事の職務に関連して、要するにここでは検事がどう云うものであるかと云うことを規定して置くに止めて、検事局と云う新たな官庁は設けない方が琉球の実情に適するのではないかと云うのですが、後に検事局と云うのが出て来ますが、これは法務局に対する検事局でなくて、普通の検事がおってそれが独特の権能を持っている、その上に検事の一番の長として検事長がいる、その検事長の指揮命令によって全ての検事が動いていると云う仕組を採っているのです。検事局と云う官庁があって、そこに検事がいると云うそう云う官庁でなくて、いわば検事の事務を行う場所と云うのですかね、と云うことになる訳です。こう云った構想ですが、なおこの説明の足りないところは他の委員からお願い致したいと思います。さっきの第一の問題のこう云った公務員の、殊に検事とか検察官とか云う公務員の階級なり任免の制度なりと云ったものは、全て設置法から除外して別個の立法をすべきか否かについては、更に御検討をお願いしたいと思います。
○嘉陽安春君 私から補足したいと思いますが、布告第三十八号と云うのがありまして、それに裁判制度のことが書いてあったのですが、第三十八号を改正して布告第十二号が出たが、その布告第十二号では検事のことは、第三十八号には検事のことは諮詢委員会が任命するか、その後継団体が任命するとあって、諮詢委員会が任命した歴史があるのですが、その現実は検事については裁判所の制度から除いてしまって、立法院の立法に俟つと云う政策を採ったのです。日本では今どうなっているかと云うと、検事については検察庁法と云う風になっております。それで軍の政策としては軍の布告では書かない、立法院の立法で定めるべきだ、それが法務局設置法を作るについて、それに書くと云うことを建前として進んで来たのですが、技術的に考えれば、これは日本には検察庁法があって、その中に検事のことも書いてあるが、だから検察庁法と云うものを分けて書けば法務局設置法と云うものは日本の法務府設置法として、検事局に関するものは日本の検察庁法、検事局設置法と書いてもいいのですが、これは検察庁と打出す程には、日本には最高裁判所には最高検察庁があり高等裁判所には高等検察庁があり、地方裁判所には地方検察庁があり、検察庁と云うのは厖大な検察庁があるが、沖縄ではその点検事の数も少いし、せいぜい十七、八名の検事で--十八名と云うことになる訳です--それで一ヶ所に集めて、いわば琉球検事局と云う一つのものになる訳です。かれこれ考えまして法務局設置法の中に日本の検察庁法に相当するものを考える、そう云うことに決った訳です。日本で法務府法に相当するものが第一章、検察庁法に相当するものが第二章と云うことになるが、見出しを検事局とせずに検事としたかと云えば日本のもののように検察がいくつもあって検察庁はこれこれこれと云うものがあれば何ですが、第二章の検事のことを書いたことは、検事局については只第十五条の一ヶ条が出ているだけでありまして、かれこれ考えた場合に軍としても検事の根拠を与えなければならない。第三十八号が廃止になって根拠がなくなっているので、それに根拠を与えなければならないと云う、そう云う経過から検事と云うことが顔を出しております。
○城間盛善君 布告第三十八号によって裁判制度が確立しておったのですが、ところが第三十八号が廃止になって改めて布告第十二号が出て来たが、布告第十二号には裁判制度しかない、判事のことは謳って、検事のことは全然謳ってない。だからあの第三十八号に代って出た、第十二号の布告には裁判所は判事は出ているが、検事は出ていない。だからどっかにそれを受けて検事のことを規定するものがなければならない。結局廃止された第三十八号は判事と裁判所の面に於ては布告第十二号、検事の面に於てはこの設置法と云うことになっているのです。その意味からも検事と云うことを…然しこれは階級とは別の問題ですよ。
○松田賀哲君 要するに、この第二章は検事局と謳うべきのが正しいのだけれども、結局現在に於て検事局を設置するほどの情勢が出来ていないそう云う意味ですか。
○城間盛善君 一つは先ず、検事を決めなければならないと云う問題、検事に関する規定がなくなったから検事に関する規定を決めなければならない。その意味からもどうしても検事と謳わなければならないと云うこと、それから機構については、日本みたいにああ云う大きな機構まで行く必要はないのじゃないかと云うことを考える訳です。検事局と云うのを向うの検察庁を採ったと云うものの、又検察庁とは違うのです。俗の言葉で云えば溜り場と言いますか、これは名前は何と云ってもいいんだが…。
○松田賀哲君 その場合に、これは保安局と関係して来る問題なんですが、保安局に於てもそう云う工合に向うの保安局の職階については設置法の中で決めてしまうと云う形を今採っております。又検事についてもこう云う工合にそこで決めてしまうと云うとこの警察官なり検事なりについての階級と云うことは、所謂職員任用法とは離れて来る独立した任用法を持つことになるのですが、この点については重大じゃないかと思うのですが…。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後九時三十分休憩)
  (午後九時三十四分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
○嘉陽安春君 その点につきましては、日本では警察官については警察法の中に定まり、又検事については日本の検察庁法と云う法規によって特に任用法が定まっている。だから一般の公務員法と云うものは公務員を規制しますけれども、その中に矢張り特殊な官職のものがあると云う風に考えております。
○松田賀哲君 そうなりますと云うと、所謂既に政府に於ては任用法と云うものが出ておりますが、これはこっちに掲げられている検事のこと及び警察官のことについては別だと云う意味でここに掲げられた訳でありますか。
○城間盛善君 そうです。
○松田賀哲君 今の委員長のお答えについてでありますが、現在日本には警察法その他法令が完備しておりますが、現在の琉球に於ては未だそこまで行っておりませんので、そう云う風に特に任用令から区別すると云うことは止むを得ないような情勢にあると思いますので、第二章はこのまま通したいと思います。
○冨名腰尚武君 委員会の案を拝見しますと、これは布告第十二号の改訂版だとこう考えております。一般質問がなかったために、この問題が論ぜられないのですが、布告第三十八号に於ては、はっきり検事局と云うのは裁判所に附置されている。それを撤廃して、今度の第十二号がそれに触れていないと云うのは暗々裡に検事は全部法務局に所属せしめる、即ち政府原案の法務局長が検事総長を兼ねると云う観念から、そうなっていると思うのであります。それを委員会に於ては検事総長と法務局長をはっきり分離した。先程から日本の例が出ますが、日本の場合に於てはいわば布告第三十八号の精神によって依然として検察庁と云うのは裁判に附置せしめられている。そこで上訴裁、最高裁、それぞれの検察庁があると云う形であるのでありますが、軍の意向としては、法務局長が検事総長を兼ねるから検事は全部法務局の中に包含される。即ち、検事室と云うものをもって全琉の検察事務を行うのだと云うことになっておりますが、ここでは明かに法務局長は法務局長としての検察機関、検事長は法務局長から検事長と云う権能を取除くと云うことになると、これは琉球独自の観念から生れて来て、要するに裁判に所属しない一本きりの検事局と云う官庁が当然予想されない限り、この分離と云うことは簡単に行われないと思うのであります。只今の御説明を聴くと検事局は要するに検事の溜りに過ぎないと云う御説明でありますが、検事の溜りに過ぎないと云うことになると、そこにははっきりした所掌事務もない、局務もないと云うことになりますが、第十六条に於ては「検事長は検事局の長として局務を掌理し、検事局の職員を指揮監督する」とあり、検事局の職員の中には検事は含まれないかも知れませんけれども、そう云うところも不分明である。而も職制を見ますと、検事長、次長検事、検事、副検事と云った一つの系統だったものを考えている。そうなれば恐らく検事長が検事総長の形じゃないかと思うのですが、そこら辺が極めて曖昧模糊としている。私は法務総裁と検察庁長官をはっきり分離すると云う考えは同意するが、必ずしも日本式に拠らず、布告第三十八号の観念に拠らず、布告第十二号の観念に拠って必ずしも検事局を裁判所に附置しないと云うことにも同意であります。然しその場合には琉球に於ける新しい観念として検事局と云うものは一つの政府機関として、はっきりした観念で打出して行くと云う方針を採るべきではないか。そう云うところから検事局と云うものの性格をはっきりさせない、曖昧模糊としているところに最後の章の法務局長が検事を指揮監督すると云うことになって、そこにはどうも事務系統に、或は指揮命令と云った系統面に於てはっきりしない点がある。そこが若し法務局長と検事総長と分離すると云う院の方針をはっきりさせるならば、私は第二章ははっきり検事局として検事局のあるべき姿に於て性格も機能も権限もはっきりさせると云った方法を採るべきではないか、私をして言わしむならば、法務局設置法の外に琉球検事局設置法を出す位のことでやった方がよくはなかったか。布告第十二号の精神を一応ばらばらにしてしまって、こう云う風にもって行くならば、そこにはもっとはっきりした構想のものがなくては軍の意図に対抗しきれない脆弱な面が出て来るのではないか。こう云う点を懸念されるのであります。尤も私は遺憾ながら司法関係の面については素人でありまして、今先申上げました意見は全て素人意見でありますけれども、そこら辺のところを出来得べくんば第三十八号を、この改正案によりますと、第三十八号までもいかないと云って第十二号の精神も省みていないじゃ一体どっちにくっつくかと云うことがはっきり残されていないような気がするのです。そう云ったところをはっきりさしていただければ幸いだと思います。
○城間盛善君 只今の御意見で一つ御訂正を願いたいと思います。第一に琉球に於ては布告第三十八号が改正されて第十二号となって、そして裁判所と検事が分離していると云うその点はいいのですが、日本に於ては布告第三十八号と同様に裁判所に附置されていると云う--日本の検察庁は出来ている--ことは事実と相違するものであります。日本に於ても戦前は裁判所に附置されておったが、今は検事局は裁判所から分離したのであります。そしてはっきりと司法とは別個の行政事務であると云う面がはっきり制度面に現れて来ておるのであります。裁判所と分離した形に於ての検察庁と云うのが出来た訳であります。その点は日本に於ても琉球に於ても同じであると云うことが言えます。布告第三十八号の時代ならば、戦前の状態ならば裁判所に検事局が附置されておりましたが、然し琉球に於ては戦前そうだったでせうが、こう云う点は明かに分離されていると云うことは日本も琉球も同じだと云うことが言えます。それから検事と云うものの中、職能が果してはっきり分離しているか、或は独自の職能を行える形式になっているかどうか不明であると云っているが、その点は私達の考でははっきりしていると云う考え方ですが、大体「溜り場」と云う俗っぽい言葉を使ったが、これは誤りか知れません。これは法的に説明すべきだと思いますが、なお足らんところは他の委員から補っていただきたいと思います。今おっしゃった二つの設置法に分離すべきだと云う点については御尤もな御意見だと思います。本当ならば法務局設置法、検察庁若くは検察局設置法と云うことがやれば出来るかも知れませんが、然し法務局の中の、と云いますか、法務局長がおって一方に於ては法務を見、一方に於ては検事の体系が、検事長がおって検事長と法務局長の繋がりがあると云うことに於ては日本と同じでありまして、ただそこに検察庁と云う風な大きな官庁を置くべきか、或は単に検事の職能をはっきりさしておいて検事長を置いて指揮監督させると云う様式でいいかどうかと云うことは琉球の現状から見て、これで十分だと云う考え方になったのですが、ここでははっきり組織が出来ております。検事長がおってそれを補佐すべき次長検事がおる云う風な体系を整えている積りであります。だんだん後の条を御検討になれば、それははっきりすると思います。なお、今の自分のやった説明で不備な点、補足する点があったら、他の委員からお願いしたいと思います。
○冨名腰尚武君 只今啓蒙していただいて大変有難く思いますが、私の申上げた附置と云うのは、寧ろこの面を強調したかったのであります。ちょっと発言の中にも触れましたが、最高裁判所には最高検察庁があり、その下の高等裁判所には高等検察庁があると云う行き方を採っているが、琉球の場合は必ずしもそれぞれの裁判所への検事局と云うものは考えていない、各裁判制度を通じての検事局を一本にしている。そう云うところに極めて大きな考え方の相違があるのじゃないかと云う点からして日本の場合は検察庁設置法と云うものはなく検察庁法で行っているが、琉球の場合は寧ろ設置法で行くべきが妥当ではなかろうかと思うのであります。
○城間盛善君 只今の御意見で裁判所に対応すべきであると云う御意見だと思います。ところで布告第十二号によって対応すべき裁判所と云うことが相当問題になっております。これは布告第十二号の解釈と云う難しい問題にぶつかる訳ですが、布告第十二号によると巡回裁判の制度は琉球が一つの巡回地区と云う風に規定されております。そしてその中に裁判地区と云うのがありますが、然しその裁判地区にそれぞれの巡回裁判所があって、そこに巡回判事がいると云う制度ではなく、琉球を一円として巡回すると云う制度になっているのです。こう云う点も委員会で非常に苦心した点でありましたが、最初各裁判所に対応する検事の機構と云うのも考えた訳ですが、布告第十二号を見ると巡回裁判所の在り方と云うものが、従前の布告第三十八号と非常に相違がありまして、裁判地区と云うのはありますが、然しそこに常におるべき判事と云うものはいない訳です。そして判事そのものが絶えず琉球全体を巡回していると云う形になっているのです。従って各裁判地区に対応すると云うような形が裁判所の機構に於て既に変形していると云う風な形になっております。そうなれば結局対応するとすれば上訴裁判所に対応すべき検事局と巡回裁判所に対応すべき検事局と云う二つの検事局の構想も出来ないことはありません。それも一応考えてみましたが、この小さい琉球に於て一体巡回裁判所と云っても結局巡回地区は一つしかないと云う建前になっている--裁判地区はありますが--そう云う関係から結局は上訴の検事局が一つと巡回の検事局が一つと云う形になるのであります。そう云うことも構想してみたのですが、これも現にその任にあり、その面に当っておられる方々の証言によりまして、寧ろ一本でいい実際運営上、又現在の少数の検事の数から云っても、或は琉球そのものの地区の狭小と云う面から云っても一本建でいいと云う風な上訴裁判所の判事、検事、法曹会代表、あの方々も、そう云う風に考えたのでこう云う風にした訳であります。なお説明の足らないところは補足していただきたいと思います。
○嘉陽安春君 大体委員長の言われたことで尽きております。只今冨名腰さんのおっしゃったことで意見の違いますのは、布告第三十八号でははっきりしておった検事局と云うものが布告第三十八号の線にも行かないと云う風にも言われましたが、布告第三十八号は検事局については何も規定しておりません。検事について書いてあるので、裁判所の位置、職員などについて書いてあるのです。裁判所のその他の職員として検事並にその他裁判所の職員はと云う風になっておりまして、検事局と云うのは検事の事に応じて検事局とそう呼んでおるだけでありまして、検事局の規定を別に設けている訳ではないのです。この立法によって検事局の制度が改めてはっきりした。その検事局の在り方と云うのは、琉球として新しい行き方、布告第十二号に併せてやったと云う風に諒解していただきたいと思います。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後十時休憩)
  (午後十時六分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。一応今議論の中心になっている問題は、第二条を逐条審議して元に戻すと云う行き方で帰着点を見出したいと思います。第十四条はこれでいいですね。裁判地区と「裁判」を挿入して…次。
  (書記長川畑秀志君「第十五条」朗読)
○城間盛善君 任命の方法ですが、主席の任命とありますが、それには資格が伴わないといかない事になっています。この資格を決めるのは法曹会にある試験局となっています。そこでこれは相応しい者だと証明されたものを任命すると云うのです。それから罷免の手続きですが、最近出ました布告第十二号に判事の罷免手続きがありますので現状ではこれに準じて行うと云う事になる訳です。これに準じて罷免されない限り身分は保障されると云う形になる訳です。
○松田賀哲君 主席によって任免されるのではないのですか。
○城間盛善君 免ずる場合は難しい条項があります。つまり終身職ですね。政治勢力による影響を防止するためには検事の地位が確保されなければいかん。それで罷免の場合はこう云う規定がある訳です。将来はいろいろな法規が出来るでしょうが現状では判事の罷免手続きに準ずることになります。
○松田賀哲君 そうすると第三項にある罷免は誰がする訳ですか。
○議長(泉 有平君) 休憩致します。
  (午後十時九分休憩)
  (午後十時十一分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
○嘉陽安春君 実はこの制度については検察官の身分保障の規定の仕方はいろいろありますが、日本のものは判事と一緒に扱うかどうかと云う点は疑問がある訳です。検察官は行政官だからその意味で日本の検察法でも検察官の罷免の規定を書いてある訳です。
 要するに適格審査会が設けられ行政の外部でやることになっています。だから今のように裁判官の罷免の手続きと同じようにさせるかどうかと云うことについては、更に考慮の余地はあると思いますが、差当り布告でそうなっていますので、それによって保護しようと云うことになりましたが、将来は行政官は検察庁法の趣旨に従って研究、立案する必要があるとも思いますが、その点は問題を残しつつ現在の布告の制度に準じてやる程度のものと解しています。
○松田賀哲君 そうすると罷免の辞令を渡す場合誰がやる訳です。
○嘉陽安春君 現在の布告の解釈問題です。要するに裁判官と同じ手続きでやる訳です。
○城間盛善君 判決によって自ら検事たるの資格を失うと云う事になるんじゃないですか。
○嘉陽安春君 然し私は検察庁法の制度によって検事は検事としての制度を考えねばいかんと思います。然し裁判の判決よりやっぱり行政機関の責務がある訳です。日本では行政機関の内部にある適格審査委員会がつくられそこでやる訳です。琉球のものは今裁判官についてはある訳ですが、原案がそれに準じてやると云うことになっていますから、もっと研究の余地はあろうと思いますが、とにかく身分の保障はしなければならないと云う訳でこうしました。然し行政と司法の問題から云えば疑問を持っています。
○議長(泉 有平君) では次行きます。
  (書記長川畑秀志君「第十六条」朗読)
○城間盛善君 これは日本の規定を大体そのまま採ってあります。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) 次…。
  (書記長川畑秀志君「第十七条」朗読)
○城間盛善君 これがこの設置法に云う検事局の性格になる訳です。
○議長(泉 有平君) よろしゅうございますか、次。
  (書記長川畑秀志君「第十八条」朗読)
○議長(泉 有平君) 次…。
  (書記長川畑秀志君「第十九条」朗読)
○城間盛善君 第十九条にある第十四条は先程の修正でずれていますので第十六条に直して下さい。
○議長(泉 有平君) そう訂正を願います。次、行きます。
  (書記長川畑秀志君「附則」朗読)
○城間盛善君 附則第一項の書方が他の設置法と違っていますが、先程も言っているように第三十八号の代りに第十二号が出て、それが一月三日から効力を発生していますので、それと調子を合さないと解決出来ない訳です。いわば検事のいない状態が発生するのでこうしました。第二項では、現在検事の職にあるものは勿論中央政府になれば改めて任用されないといかんが、特にこれを書いたのはやっぱり一月三日に溯って適用しなければならないので、そこにギャップを生じないように特に入れた訳です。
○冨名腰尚武君 本法が施行された場合は再審査される場合も有り得ると云う訳ですね。
○城間盛善君 そうです。
○議長(泉 有平君) 休憩致します。
  (午後十時二十二分休憩)
  (午後十時二十三分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
○城間盛善君 第一項の問題ですが、一月三日より適用すると云うのは先程言いましたように検事の規定が第十二号にないので第三十八号を直に引継ぐためにこうしましたが、そこをこう直して下さいませんか。「日から施行する。但し第二章は」だけを挿入したいと思います。
○議長(泉 有平君) そう致します。他に異議がありませんでしたら第二章の初めに反って分離して二つにするか、或は原案通りするかと云うことについて御意見があれば伺いたいと思います。
○松田賀哲君 先からこの点についてはいろいろと論議が交されていますが、御承知の通り現在の状勢では真に止む得ないものとして、私は原案のまま通したいと思います。
○議長(泉 有平君) 原案に対して反対意見を持合せの方は…。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) 別にないようですから、以上の通り審査を終えたことにしてSOPに移します。
○城間盛善君 この設置法案はこう云う難しい問題、而も新な機構をつくると云う劃期的な本案を行政法務委員会では急速度に審議しなければならない状勢になった訳です。それで資料の収集に時間が取れずいろいろな面で相当な不自由を感じつつここまで漕ぎ着けた訳です。委員長としては門外漢である故に相当苦心された他の委員の方々及び調査員の不眠不休の努力でここまで審議が進んだ訳です。特に今夜は遅くまで各参議の方々が慎重審議を賜って二読会の段階まで持って行けましたことを感謝しております。有り難うございました。
○議長(泉 有平君) これで本会議を終ります。
  (午後十時二十七分閉議)

  本日の出席者
   議 長  泉  有平君
   参 議  松田 賀哲君
    〃   與儀 達敏君
    〃   城間 盛善君
    〃   冨名腰尚武君
    〃   大濱 國浩君
    〃   吉元 榮光君
    〃   嘉陽 安春君
    〃   田畑 守雄君
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