戦後初期会議録

組織名
琉球臨時中央政府立法院
開催日
1952年01月11日 
(昭和27年)
会議名
第1回立法院本会議 1952年1月11日
議事録
第一回立法院本会議会議録
        第八十九日目

 一九五二年一月十一日(金曜日)
 午後五時四十五分開議

議事日程
 一、輸入砂糖消費税法
 二、公安委員会設置法案
 三、行政主席事務局設置法一部改正案

○議長(泉 有平君) 本会議を開きます。議題は三つありますが砂糖消費税法で保留になっている第三条について審議を進めたいと思いますが、議事の進行上全員協議会に移したいと思います。
  (午後五時四十七分全員協議会)
  (午後七時二十三分本会議再開)
○議長(泉 有平君) 本会議を再開致します。残された第三条の税率の問題だが、これについては委員会でいろいろ検討された結果、多少の変更があったようですから、一応委員長から経過を報告していただきます。
○冨名腰尚武君 昨日の本会議で前に委員会が標準を置いている数字の正確な算定を吉元参議から要請されましたが、それに基づき食糧会社の実績について調査した所、大体欠減、諸掛り、輸入利潤、全部引っ括るめて一円九十銭と云う係数を妥当だと考えた次第です。なお輸入原価をどれ程と見るかと云うのは困難な問題ですが、輸入実績を十セントと出ていますが、今後輸入が自由になると云う点から見て、そこに業者の取引上の腕の振い所を期待して、〇・五セント引いて輸入基準価格を九・五セントと押えて見て妥当だと結論づけたのであります。これは先程開いた全員協議会によってこういう係数も出された次第です。委員会としても一応これを承認して計算し変えた結果、只今表示した係数が出て来たような次第です。
 以上御報告致します。
○議長(泉 有平君) 只今委員長から基礎にした数字について説明がありましたが、この基礎によって四十パーセントという税率の押え方ですが、これについて御意見があれば伺いたい。
○吉元榮光君 前日来委員長から諸掛りなどいろいろな点が示されましたが、諸掛りが三円六十銭から一円九十銭に下った関係と輸入操作によっては九セント以下でも輸入できると思いますので皆様方の御意向によって九・五セントに協定なった今、かれこれは申しませんが酒造用黒糖と双目との価格の差が大きな問題となっている訳ですがその辺は七円の差があればいいだろうと云う意見でそれも大体認められたと思いますので、そう云う観点からして今の係数から行くと四十五パーセントにして六円九十四銭にしかならないと云う理由からこの税率を四十五パーセントにして欲しいと云う動議を提出致します。
○議長(泉 有平君) 休憩致します。
  (午後七時三十分休憩)
  (午後七時三十三分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。只今、吉元参議から四十五パーセントに訂正したいという動議が提出されましたが、この動議を成立さしていいかどうかと云うことについて賛否を表明していただきたいと思います。
○與儀達敏君 賛成であります。
○城間盛善君 動議として出すことに賛成です。
○議長(泉 有平君) 與儀、城間両参議の賛成がありましたので、この修正動議を議題として進みたいと思います。吉元参議から修正意見の開陳をお願い致します。
○吉元榮光君 今先も申上げました通り、黒糖を圧迫しないと云う意味から、どうしても七円程度の価格の差を設けたいと云う意味からいろいろ算定した結果、四十五パーセントで差額六円九十四銭になるので、是非四十五パーセントの税率にして沖縄糖業が発展して沖縄の生産経済を豊かにしていただくようお願い致します。
○議長(泉 有平君) 税率を四十五パーセントに修正したいと云う只今修正案の説明がありましたが、これに対して反対の意見を聴きたいと思います。
○冨名腰尚武君 只今黒糖方面からの御考慮は重々相分りますが、一読会、二読会を通じて私から説明したように、黒糖の保護は単にこの税法のみに頼るのは妥当ではないと思います。なぜなら住民の生活必需物資である白糖、双目を島内で生産し得るなら文句はありませんが、どうしても精製白糖は輸入に仰がねばならないのであります。それで我々としては島内産の保護も考えねばいかんのですが、一面一般住民の必需物資としての砂糖価格も考慮しなければならない訳です。又松田参議も前の本会議で説明したように、今日琉球が主食の面でインフレ状態にあることは認められる所であり、お互の努力はそういうことを阻止すると云う所に主眼点を置くべきだと思うのであります。その際に四十五パーセントに持って行った場合、精製白糖の小売価格は三十三円十六銭になります。これは日本の糖価と平均した場合五割高となり、これを四十パーセントとすると三十一円四十五銭、これでも必需物資としての砂糖を考えるとなお割高になる訳です。極端に云うと精製白糖は無税にすべきだと言いたいのですが、黒糖とも睨み合わせて大体三十円程度で我慢して貰おうと云う意味で四十パーセントを委員会として決定した訳であります。なお、酒造用原料としての黒糖と双目の価格差は、証言では財政局の四円説と與儀参議の七円説がありましたが、私が七円説を採ったのは同僚である與儀参議の説を採ったのですが、これも考えようによっては中間を採って六円でも行けると思う。六円を採った場合、四十パーセントとすると六円十八銭の差があるので四十パーセントを採ってもあながちこれだけを以て島内産の保護を忘れると云う形にはならないと思うのであります。
 なお委員会としては一般必需面に行く砂糖の比重とその他に行く砂糖の比重との係数も出したかったのですが、手が廻らなかったので資料が提出出来なかったのを残念に思いますが、院としては黒糖の保護政策面と又一般住民の必需物資と云う面を睨み合わせて適切な比率に持って行くべきだと思います。
 以上申上げた論点からして、私としては飽く迄も九・八セントを輸入原価と見た場合でも四十パーセントとしても黒糖保護の一翼を担い得る効果は発揮出来ると思うのであります。
○與儀達敏君 修正意見に対して賛成を申上げます。委員会では四十パーセントに落着いていますが、これは諸掛りの誤りで私は飽く迄も酒造原料に廻す砂糖の差は飽く迄も七円に見るべきだと思います。そうしないと黒糖を圧迫すると云う論法に立っている訳ですが、どうしても黒糖と双目の差の七円を堅持するなら四十五パーセントにして琉球経済の源である糖業を保護すべきだと思う。そういう関係で折角日本市場の受入れが出来ている今日に於ては、琉球黒糖が島内に於ける価格差によって圧迫出来ないと云う線だけは守りたい。その意味に於いて七円の差をつけることによって島内産の保護を行うと云う点を申上げて四十五パーセントに賛成するのであります。
○松田賀哲君 今問題になっている点は、七円の差をつけると云う点だが、これは後で言うとして全体の今の話の論の進め方から見ると、所謂双目の輸入と云うことが根本問題になっているのであります。つまり輸入如何によって琉球の黒糖が左右されるが如く話をしている訳であります。
 そう云う風に双目と黒糖と双目の開き七円を固守することになると、今の輸出糖は十二セントと云っているが、これが琉球オンリーになって、もっと上るようなことになれば更にその開きを七円にするためには税率も動かさねばならないと云うことになって来るのであります。或はそう云うと逆に十二セントを割って十セントになった場合は、税率を下げる方もあるんじゃないかと云う論も出て来る訳ですが、然し双目と黒糖の開きの問題ではこの糖業問題は解決するものではないと思う。左右するものは前から皆さんも御承知の通り世界相場によって決まるのであります。だから目標は沖縄の砂糖を如何に輸出するかと云う事にあって、双目一つを捕まえてどうこう云うのは余り生活必需品に向って攻撃するような気がするのであります。それに三十五パーセントは当局から出て来た案であります。これには相当な根拠があると思うが、それを譲って委員会は四十パーセントに決った訳であります。そういう意味で、私は四十パーセントが適当と思うのであります。冨名腰さんも繰返し主張したように、今私が言ったように沖縄では全琉では生活必需品はインフレと云っても過言ではないと思います。如何にして住民の生活費を安くするかと云うことが経済復興の根本を成す問題だと思います。そう云う生活必需品の一つである砂糖に限り消費税をかけて価格を上げようと云うことは生活必需品を上げようとするのと同じであります。と云うのはそう云う生活必需品の一つである双目を上げると他の食料輸入についてもそういう比率を基礎にして税案が定められると思います。そういう所を懸念して、兔に角沖縄黒糖の価格が上がるか下るかは外部にあるのですから、三十五パーセントでも四十パーセントでもいいのであると私は極論すれば出来るのでありますが、いろいろな関係で四十パーセントにしたいと思います。
○吉元榮光君 今の松田参議の話の全ての生活必需品がインフレだからこれを安くして住民生活を安定すると云うのは、賛成ですが、米と砂糖の相場を見た場合、米は必ずしも砂糖の税率を下げたからと云って米の相場は下らないと思います。そう云う点は単に消費者の立場のみを取って論ずる訳にはいかないのであります。
 終戦後の沖縄経済を見てみると生産経済は見るに堪えない程度で、現在の状況から見ると戦前程度の製糖設備があった場合は兔に角として、全ての糖業施設が壊されている場合に、消費税を安くすると沖縄の糖業は完全に消滅する訳で、糖業を保護するにはこれ以外にはないのであります。そう云う面からすると沖縄糖業の保護を考えないと生活の安定も期せられない訳で、こう云う観点から段々生活の水準も上げて行くべきだと思います。それでどうしても私としては四十五パーセントを主張したいのであります。それで七円程のゆとりを持たして行きたいと云う面から考慮願いたいと思います。
○冨名腰尚武君 この税法に関して、民政府が特に期待しているのは、これによって闇貿易を阻止すると云う面も一つの狙いですが、大体闇値の卸価格の実績を見た場合、最低二十四円五十六銭と云うのが出ています。これは去年の六月が二十四円五十九銭、七月が二十五円三十八銭と出ています。この面を考えた場合、四十五パーセントとすると二十三円九十四銭、その差額が僅か六十銭です。向うの利潤を僅か五パーセントと見た場合の計算であって、その点からもし商人が更に五パーセント以上の利潤を取ろうと云う場合は闇値を上廻る価格になることも懸念される訳です。そう云う面も念頭に置いていただきたい。もし闇貿易による砂糖が琉球市場に跳梁した場合、立法院が価格差は七円が妥当だと云う見地からこれを維持しようと云うことを図っても闇値を抑圧することが出来ない場合は我々の苦心も水の泡になるんじゃないか。そう云う場合、闇値との開きを相当考慮しないといかんじゃないかと思う訳です。
○城間盛善君 これは実に難しい問題ですが、第一に農民の立場、第二に消費者の立場を考えねばいかんと思います。それから民政府側の要求との関係といろいろ難しい問題が錯綜しているので、どう決まるかと云うことは相当困難を感じている訳です。消費者の面から云えば四十パーセントを主張する人と同じように、出来るだけ負担を軽くしたいという見地を取らないとならないし闇の防遏の面から云っても低い税率がいいということになり、それから黒糖との差額が五円或は七円又は六円かと云う点からもどの程度にした方が無難かと云うと云うことがはっきり掴み得ないので難しいのであります。特に今日の経済状態では問題を決定するのに相当困難を感じている訳です。
 所で、現状の私の考える琉球の経済から見ると最も立後れているのは生産面であり、特に農業面で相当立後れている訳です。戦前の重要産業である黒糖が壊滅的打撃を受けてやっと今年辺りからルートに乗り出したという状況であります。
 将来こうあらねばならないと云う確固たる見通しをつけることは、私の判断では困難であります。所で現在に於て酒造原料或は菓子原料として外糖を入れる必要性は認めます。もしその必要性がなければ禁止関税でもいいと思いますが、一方これから成長していく黒糖の製造と云う面に於ても困る訳です。
 それから闇との問題ですが、これは常に税法制定の場合直面する難しい問題で酒類消費税でもこういう問題が起こりましたが、原則的には闇と税率との問題を立法の基礎としては考えられないのですが、これが実際に於ては或る程度は減税を認めねばいかんと云うことになりますが、その点について只今冨名腰さんの話しの通り四十五パーセントにすると闇とすれすれの状態に来る虞があります。もし闇糖がどんどん入ると差額を七円に引離しておくと黒糖の安全性が確保される。この点委員長の意見も尊重しなければならないと思う。しかしこれは結局不法行為で原則論のみを主張する訳ではありませんが、これは要するに取締りの強化によって防止するのが妥当であると云う見地から将来に亘る長い見通しを考える場合判断に苦しみますが、先ず沖縄に於て七、八割を示す農民の重要な換金作物である砂糖がこれから始まろうと云う段階にあると云う意味に於て出来るだけこういう外来糖からの圧迫を或る程度税法によって守ってやった方が現状に即する政策ではなかろうかと思っています。そう云う見地から修正案の四十五パーセントに賛成したいと思います。
○與儀達敏君 論議は尽きたと思いますから採決を願います。
○議長(泉 有平君) 大体論議は賛否一応尽されたようですから、決を採りたいと思います。原案の四十パーセントに賛成で四十五パーセントに反対の方は挙手をお願いします。三名であります。
 修正案に賛成で原案に反対の方は挙手をお願い致します。五名であります。多数と認めまして、第三条の四十パーセントは四十五パーセントに修正することに致します。
 輸入砂糖消費税法案はSOPの段階に移します。ちょっと休憩致します。
  (午後八時三分休憩)
  (午後八時五分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
 松田参議から行政主席事務局修正案に対する発議がございますので、一応発議理由の御説明を願います。
○松田賀哲君 この主席事務局の設置法改正案につきまして去る一月三日にメッセージがありまして、特別委員会を組織して研究を委託された訳であります。それで私委員長に互選されまして各委員と十分研究致して発議した次第でありますが、御承知の通りこれは新しく出来る中央政府の機構についてでありまして、と申しますのは、参議も現在の九名から三十一名になりますし、又群島政府というものも吸収されると云う情勢の変化がありますので、従って主席事務局と云うものも拡大しなければならんと思うのであります。従来は臨時中央政府の事務局として小規模でよかったのでありますが、これを大規模にしなければならないと云うような訳で、この改正と云うものは当然必要だと思うのであります。それでこういう発議を致した次第であります。その内容につきましては刷物でお配りしてありますから…。
○議長(泉 有平君) 朗読致させます。
  (調査員大山春雄君 朗読)
○議長(泉 有平君)  一般的な質問をお願いします。
○松田賀哲君 今読んでいただきましたが、これについて簡単に御説明申上げておきたいと思うのであります。ここに掲げられました各課の事務と云うものは、これは大してややこしい、曖昧な点はないと思うのでありますが、この第三条から第四条にかけてでありますが、第三条の「事務局に局長外必要な職員を置く」或は第四条の「局長は局の事務を統轄し職員の服務につきこれを統督し…」  こういうことがあります。これは初め刷ってあるのを御覧の通り消してあるのでありますが、ここはこう云う大きな問題があるのであります。従来これは主席事務局として刷ったものであります。そしてそれの改正になっておりまして、事務局は飽く迄も事務局と云うことに先ずなっているのであります。ところで事務局は事務局であるならば、ここの第三条に事務局に局長外必要な職員を置くと云うことは間違と云えば間違である、局長と事務局長は別でありまして、従って第四条の局長と云うのも事務と云う字を入れなければならない訳であります。そこで何故、それを消したかと申しますのは、この第四条の局長の権限も前の事務局長の権限と甚しい相違をしているのであります。前の事務局長の権限に於て主席の命により簡単な事務を統轄すると云うようなことになっておりますが、ここに掲げられてある権限は他の所謂一般の局と同じような権限を持つ、つまり権限が拡大している訳であります。従って言葉を換えて判りやすく申しますと云うと、これは官房です。そう云う実権を握るような形になるのであります。又事実事務局長を通じて主席の意向を伺ったら、こっちは官房としても宜しい、官房と云う名前に変えても宜しいとこう云う御意思でありまして、それでここは問題になるだろうと思うのであります。重要な点は私としてはそれだけだと思うのでありますが、一般的な御質問によって又新しく重要な問題が出て来るかも分りません。今申しましたように、これは事務局の改正ではありますが、官房の性質も帯びると云うことは甚だ変でありますが、その態度がはっきりせんところがありますが、現在の過渡期に於てはこう云う風にして一応発議する外ないと申しますのは、もしこれを官房とした場合には例の主席統計局と云うのがあります。この局がどこに所属するかと云うようなことも問題になって来るのであります。で、今過渡期にして、而も短期間に於て我々は一応審議を終らなければならんと云うような状態に於て悪しからず、こう云う提案をお許し願いたいと思います。以上であります。
○議長(泉 有平君) 質疑はございませんか。
○城間盛善君 ちょっと意見めいたことになるかも知れませんがお許しを願います。
 今の問題について発議者である松田参議御自身の御説明によっても、この設置法の名称自体を問題にしておられたのをそのままを発議せざるを得ないと言うことであるが、おっしゃる意味もよく分りますが、これを第二条の所管事項方面でも人事に関することとあったり、最も大事なことは政府間の事務連絡調整に当ると云うような事務が加わって来ていると云うような点からしても、又第三条、第四条の規定の仕方から考えてもどうもこの名称を変更しなければならないのでありますが、なお、そうせざるを得なかった理由の一つとして統計局との関連と云うことをおっしゃったが要するにあれは外局の形で存在するのであると諒解しておりますが、そう云った場合は委員会付託になると思いますので、もう一応御研究の上、政府の官房の性格を持つならば、はっきり官房と書いてしまってもいいんじゃないかと思いますが、それで委員会の研究をお願い致したいと思います。なお、これはSOPの段階を考えました場合には、こう云ったことは全然問題にならないのでありまして、名称はSecretariatとなっております。日本語としては事務局と云っておりますが、民政府がこれを見た場合の名称としては矢張り同じことでありまして簡単に行くのじゃないかというような気がします。お断り申しました通り甚だ質疑に相応しからん要素が入っておりますが、もう一度委員会で研究をお願いしたいと思います。
○松田賀哲君 それに対してお答え致します。私と致しましても、そう云うように主席の意思も官房としてもいいと云うのでありますれば、官房設置法として出して貰った方が非常にいいことだと思うのであります。そこでメッセージとしては、後で事務局設置法の改正として受けておりますので、その点どんなもんでせうか。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後八時二十一分休憩)
  (午後八時二十八分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。
○松田賀哲君 今の城間参議からお話のありました御趣旨はよく分りますし、又私も申上げた通り、主席の意向も官房にしてもいいと云うような意向を持っておられるようでありますから、これは寧ろ官房を設置すると云う風にしてやった方が大変都合がいいと思っておりますが、各委員の方にもお諮りして改めて提案することに致したいと思います。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後八時二十四(ママ)分休憩)
  (午後八時三十二分再開)
○議長(泉 有平君) 次に城間参議から公安委員会設置法案の発議があったのでこれを議題に供したいと思います。
 発議理由の御説明を城間参議からお願い致します。
○城間盛善君 提案の理由を御説明申上げます。十二月十三日に受付けまして、十二月十四日本会議に上程されました主席メッセージ第二十五号の琉球臨時中央政府保安局設置法の研究を委託されました行政法務委員会は、早速委員会を開いて色々の研究に取り掛かったのであります。その後今日まで行政法務委員会で委員会を開くこと十七回、その間各方面の証人を喚問すること六回と云うように慎重審議を重ねまして、ここにこの案を提案することになりました。特に御説明申上げたいのは、主席メッセージには保安局設置法となっておりますが、ここに提案致しました法案は琉球臨時中央政府公安委員会設置法案となっております。これを提案致しました理由を申上げたいと思います。現在のところ琉球に於ける警察行政は四群島に分れておりまして、それぞれの群島に於て行っている状態でありますが、これを一体として琉球警察を設置せねばならん段階に来ております。これは民政副長官の指示によりまして、各群島政府を臨時中央政府に吸収しなければならないと云う民政府の根本を示したのでありますので、どうしてもこの四群島警察を一つの琉球警察として統合する必要に迫られたのであります。この琉球警察の運営に於きまして如何なる形態を採るべきかということを、特に行政法務委員会に於きましては、ここに重点を置いて審議を重ねたのでありますが、多数の証人による証言を基礎とし、現行の各群島で採っております公安委員会制度をこれに織込んで公安委員会設置法として提案することが至当だと云う結論に達しましたので、この案を提出した次第であります。只今申上げました証人の証言の内容を概略御説明申上げますと、先ず沖縄、奄美、両群島の公安委員を証人として喚問致しました。その際、両群島の委員長は、はっきりと現存の公安委員会制度の存続を証言しております。それから次に、民代表と致しまして沖縄に於ける四政党代表の証言を求めました際にも四政党とも同様に公安委員会制度の存続を主張しております。
 更に法律関係の方にも意見を求めまして法曹界代表の方の証言を求めましたが、又ここに於ても同様にこの公安委員会制度なるものの存続を希望し、何れも警察を民主化して行かなければならないと云う理由と、もう一つは過去約一ヶ年間に亘って採用して来たところの公安委員会制度なるものが、未だ一年しか経っていない現在、別にその功績を論じてここに廃止すると云うことは、未だ早かろう、折角始まって、生かされた制度であるので、これを存続したいという風な意向であります。それから警察官自体の意見を申上げますと、幸い各群島の警察本部長が揃っておられました時分であったので、四群島の警察本部長を証人として喚問して証言を求めましたが、その際にも警察本部長の証言は一年間の実績によって公安委員会の是非を云々することは未だ早いと云うことを証言しております。只積極的にこの制度を存続すべしと云う意見はありませんでしたが、これを存続させることによって支障を来すかどうかと云う質問に対しては、支障を来すと云う証言はなかったのであります。更に証言を求めませんでしたが、現在沖縄に於ける四新聞の論調を見ても等しく公安委員会制度の存続を主張しております。こう云った点から見てはっきりと、これが世論の支持を受けている、世論の全般的要望であると云うことが立証されるのではないかと考えまして、こう云う意味に於きまして琉球の警察運営に関する組織として主席メッセージの保安局と云う名称とは違いますが、実質に於ては矢張り琉球の警察運営に関係するものであって名称を琉球臨時中央政府公安委員会設置法としてこの案を提出した次第であります。以上を以ちまして簡単でありますが、提案理由の説明と致しまして内容の説明は朗読の後に申上げたいと思います。
○議長(泉 有平君) 議案を朗読致させます。
  (書記長川畑秀志君 朗読)
○城間盛善君 この法案の総括的な御説明を申上げます。
 この設置法の構成は只今読上げました通り三章に分れておりまして、第一章に於て公安委員会のことを規定しております。第一章は日本の警察法と現に施行中の群島組織法、この二つを基礎として作ったものであります。大体、警察を運営する責任者として委員会制度を採ると云うことを建前に致しまして、これも先程申上げた通りでありますが、その委員会は五名を以て組織し、委員会の決定に基いて警察運営を命じて行くと云う風な制度を採った訳であります。何れ逐条審議の場合にも出て来る訳でありますが、現在の四群島に分れている警察を一体として琉球警察に統合すると云う建前から委員の五名を各群島から選んで構成すると云う案を採ったのであります。なおその選出法などにつきましては何れ御研究の上御審議を願いたいと思うのでありますが、大体以上のことを骨子として第一章を制定した訳であります。
 次にこの委員会のいわば手足となって働くと云う意味の事務局を第二章に規定してあります。これが現在もあります警察本部と云うことになっているのでありますが、本法は大体に於て現在の沖縄警察本部の作った保安局設置法案を参考にして作ったのであります。そこにいろいろの課が出ておりますが、只御断りしておきたいと思いますのは外の局と錯綜するとか出て参りまして、例えば交通取締面に於きましては運輸局との所管事項が関連するものがありまして、その中で現行法によりますというと、自動車の免許、登録及び検査と云うものが現在は委員会で行っておりますが、これは運輸局の陸運課に移すと云う建前で前に運輸局設置法を設置した時の原則でここから除いておりますが、然し交通取締上運転手の免許はここに依然として残されております。それから警察本部によって作られました参考案によりますと云うと移民事務局がここに接収される建前になって一課を設けてありますが、これは現に本院に於きまして財政局の設置法の改正案が委員会に於て研究されて現に財政局の中にあります。移民事務所、結局はこれの問題になって来ますので、ここには一応これは略してあります。それで財政局設置法の審議に於きまして院の態度が決定した場合にこれをどうすると云う風にした方がいいと思いまして、これは差控えてあります。
 それから次に第三章、ここに警察署として警察地区の問題と、実際に警察の責任を負うところの各署のことを規定してあります。こう云う風にして三つの章にして作成したのであります。そのあらましを申上げまして御説明に替えたいと思います。なお御質問に応じ私の言い足りなかったところは外の委員からも御説明をお願いすることにして、以上を以て説明を終ります。
○議長(泉 有平君) 一般的な質疑に移ります。
○田畑守雄君 ちょっと委員長に、はっきり呑み込めないところがあるのですが、警察本部長と云うのは、これは警察の警官の資格ですか。
○城間盛善君 そうであります。
○田畑守雄君 警察官ですね。そうすると何れの人を持って来て任命してもいい形なんですか。例えば私は現在警察官じゃないのですが、公安委員会が例えば私を本部長に推薦した場合に、すぐそのまま本部長になれるのですね。
○城間盛善君 そう云う訳には行きません。警察本部長は官名と職名を兼ねている訳です。この警察の運営に当る最高責任者は委員自体は資格を問わないが、実際の警察の業務に当るものは全て警察官と云う訳で本部長を含めて警察官になっております。
○田畑守雄君 警察署長はどう云う階級を以て充てるのですか。
○城間盛善君 警視又は警部になっております。
○田畑守雄君 課長は。
○城間盛善君 警視正又は警視。
○田畑守雄君 そうすると警察署長は本部の課長よりは一応下だと見る訳ですね。
○城間盛善君 必ずしもそうではない訳でせう。
○田畑守雄君 本部の課長よりも警察署長は下又は同じ、上ではあり得ないと云う行き方ですね。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
  (午後九時五分休憩)
  (午後九時十一分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。
○冨名腰尚武君 細かい問題でありますが、一応質疑の種になると思いますので委員長にお伺い致します。
 第十三条の警察本部長に関連して、警察本部長の待遇をどうお考えになっているか、公安委員長は法務局長に準ずるとなっているが、警察本部長に対してはこれが見当りません。私の質問は、警察本部長を特別職と見るか見ないかと云う質問であります。
 それから第十八条の第六号、第七号、第八号、質屋、古物商の取締、銃砲火薬、風俗営業、風紀取締などに関すること、この面は第一章の第三条に於て警察の活動は厳格に前項の責務に限らるべきものであると謳ってありますが、行政権限としての免許営業、風俗営業の免許、銃砲火薬類商の免許と云ったようなことまでもお考になっているかどうかと云う点、それから第二十一条の第一号海上に於ける人命並に財産の救助、法令の実施と云う点に関しては海上保安上の法令としては船舶法、船員法、運輸関係の諸法規があると思いますが、その面との振り分けはどう云う風になっているか、第二十一条の第四号出入船舶の取締となっておりまして船舶だけ挙げられておりますが、出入国人、人間はこの対象にならないかどうか。
 第二十三条連絡事務所長の問題でありますが、これは念のために参考までにお伺いしたいのですが、例えば名瀬警察署長と連絡所長を兼任させると云うお考があるか、或ははっきり分離した形に置かれるかどうか、外に細かいのがありますが、これは二読会の際に譲りまして以上についての御説明を伺いたいと思います。
○城間盛善君 御質問の第一、警察本部長の待遇の問題ですが、これは委員会としては未だはっきり決めてありませんが、これは警察官であると云うこと、即ち一般職であると云うことで特別職は考えておりません。
 次に第十八条の第六、七、八号の問題ですが、これはそう云った免許と云うところまでは考えておりません。治安維持の面から法律の定めるところによってこう云った方面のことをやって行く程度であります。
 次は第二十一条ですが、結局これは今の海上に於ける人命並に財産の救助と云った面に限られているので、そう云った方面の法令の実施と云う風に解釈していただきたいと思います。
○冨名腰尚武君 救助面だけですね、予防は含まない、実際に起った時の問題ですね。
○城間盛善君 予防も入っております。それから第四号の出入船舶取締で人の問題はどうするかという御質問ですが、これはいはば片ちんばと云う感じがしますが、先程も御説明したように出入国管理についてはこれは差当たり除外してあります。外局である移民取締所と関連がありまして、これが現在移民事務所の業務の中の出入国の人の取締がここに入って来れば、ここに又これを加えなければならない訳です。人に対する取締の問題は未定の状態と御了承お願いします。
 それから次の奄美連絡所の問題ですが、これは委員会として相当な検討を加えて来たのでありますが、委員会としては本当はこう云った風な中間機関めいたものは設置しない方がいいと云うことは確定的であります。問題は警察の問題でありますので、警察本部長の権限と各警察地区の責任者である署長の権限は截然と規定されているのであります。出来る限りその線で行きたい。ここに中間機関が入って来ることによって、その性格によってこの権限問題が非常に不明瞭になる虞がある非常に困難な問題ですが、只今御質問にもありましたように、一つの署の署長で兼任と云うことを考えたかと云う御質問ですが、それも考えておりません。兔に角これもいはば半ば未決--ちょっと変な云い方ですが--と云う形で出して院の決定を俟とうと云うことで出してあるのであります。大体こう云った事務所を置こうと云う警察本部自体の意思が、現在の通信交通機関の問題にあると考えております。こう云ったものが完備しておれば、こう云ったものは必要はないじゃないかと考えております。これの形態なり、その権限、事務内容なりと云うものは十分な検討を加えなければならない警察行政上重大問題をここに含んでいることを考えております。先ず極めて小規模な、現在の状況に於て連絡位はなければいけない、やって貰わなければ運営上困ると云った風な警察本部の意向がありますので、一応入れてありますが、改めて二読会の時に慎重な審議をお願いしたいと思います。
○冨名腰尚武君 只今の質疑に関連してでありますが、第二十一条の「法令の実施に関すること」と云う点についての質疑に対して只今の御説明は救助の実際並に予防を含むと云うお話でありますが、海難予防の意味からして、船舶法、船員法を制定して、厳重に規定しているのでありまして、只今の御説明では依然として運輸局との事務との連関がはっきりしていないように考えられます。それから第四号の出入国船舶取締に関しましては、今移民事務所が財政局にあるから、人間は対象としないで一応保留していると云ったお答えですが、出入国船舶に関しての行政面からの取締は、これは運輸局の権限でありますし、出入国人に対する旅券査証事務、旅券発行事務は移民事務所の問題でありますが、犯罪防止その他の面から、例えば密貿易船の取締、それから犯罪人の取締、要視察人関係の取締と云うことは、これは警察でやっていただかなければならないと、こう思うのであります。只今の御説明の趣旨ははっきりしませんので、以上二項の質問は保留しておきます。何れ二読会に於きまして逐条審議の際までに、そこのところを明かにしていただきたいと思います。以上で質疑を打切ります。
○城間盛善君 第二十一条の「法令の実施」これはもう少し研究してみたいと思いますが、第四号は出入国船舶取締と云うのは密航船を主体とすると云うことを考えていただきたいと思います。それから人の取締の問題ですが、御説のように単にそこに出入国をして来る人が法網を潜って来たものであれば、当然警察は取締るべきものである。そうであれば書く必要はないのでありますが、現在に於ては出入国の事務面と云ったものが何処に所属すべきかと云うことが問題になっているのです。この点は先程申上げました通り、何れ移民事務所自体の問題にもなると思います。或は総務局と云った方面との関連も出て来ると考えております。そう云った面も考えなければ解決出来んと思いますので二読会までに、その間に三局の関連が明かになって来ると思いますが、その時期をお待ち願いたいと思います。
○松田賀哲君 今いろいろ一般質問が出ましたですが、これは逐条審議に移った時にもっと深く突込んで聴けるような質問のように感じますが、一般的質問はこれ位に打切ったらどうかと思います。
  (「賛成」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君)  一般的な質疑はこれで打切りまして、本案は行政法務委員会で審査をしていただくことに致します。これで今日の本会議を終ります。
  (午後九時二十四分散会)

  出席者
   議 長  泉  有平君
   参 議  松田 賀哲君
    〃   與儀 達敏君
    〃   城間 盛善君
    〃   冨名腰尚武君
    〃   大濱 國浩君
    〃   吉元 榮光君
    〃   嘉陽 安春君
    〃   田畑 守雄君
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