- 組織名
- 琉球臨時中央政府立法院
- 開催日
- 1952年01月10日
(昭和27年)
- 会議名
- 第1回立法院本会議 1952年1月10日
- 議事録
- 第一回立法院本会議会議録
第八十八日目
一九五二年一月十日(木曜日)
午前十時四十五分開議
議事日程
一、輸入砂糖消費税法案について(二読会)
○議長(泉 有平君) 開会致します。
輸入砂糖消費税法の二読会に移ります。本案は財政金融委員会に審議を付託してありますので委員会の審議の経過について委員長から御説明を願います。
○冨名腰尚武君 昨日の一読会に於て発議案が財政商工委員会に付託されましたので、委員会を開いて慎重に審議しました結果、発議案をそのまま無修正で承認をして貰いましたので、これを委員会案として本日本会議に再提出した次第であります。慎重審議をお願いし本案が通過することを希望致すものであります。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
(午前十時四十七分休憩)
(午前十時五十分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。
今委員長の報告によって委員会はこれを提案したのでありますが、逐条審議に移りたいと思います。
(書記長川畑秀志君「第一条」朗読)
○大濱國浩君 糖蜜というのと糖水というのとはどう違いますか。
○與儀達敏君 糖水というのは糖汁です。糖蜜というのは搾った滓です。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
(午前十時五十三分休憩)
(午前十時五十四分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。
(書記長川畑秀志君「第二条」朗読)
(書記長川畑秀志君「第三条」朗読)
○冨名腰尚武君 この第三条は保留したらどうですか。
○城間盛善君 この税率を各方面から検討する必要があり又資料を集めたりする関係もありますので、保留していただきたいと思います。
(「賛成」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) 第三条を保留することに致します。
(書記長川畑秀志君「第四条」朗読)
○大濱國浩君 移入されたと輸入とどう違うのですか。
○冨名腰尚武君 これは委員会でも問題になって琉球経済に移された時といってみたりしたのですが、日本の税法に於て物が移ってくる時をこういった風な用語を使っているようです。
○大濱國浩君 我々の今までの常識として、国内(ママ)の移動については、出る時は輸出で入って来る時には輸入という観念で解釈しているのですが、外部から入って来たものに移入というと…。
○冨名腰尚武君 琉球列島内に於てそれが適用されていないものが琉球経済に入って来た時という意味です。
(午前十時五十七分田畑守雄君出席)
○大濱國浩君 そこに移入という言葉があるでせう。外部から入って来た時に移入という言葉を使い外に出ていく時に輸出という言葉を使ってあるでせう。
○冨名腰尚武君 問題は琉球経済に移入された時という表現ですが、軍需用として入って来た砂糖、これは本法の適用を受けませんが、これが軍の好意若くは必要によって民に放出された場合は、これをその時輸入されたものと見なして課税するという訳です。それからコカコーラ会社、バーレー会社のあれが民需用として売られる分に対してその原料砂糖に対する課税ということもこの表現によって、その解釈で行こう、そういう面については課税するようにするという証言は財政局長から取っております。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
(午前十時五十八分休憩)
(午前十一時吉元榮光君出席)
(午前十一時二分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。第三条に戻ります。
○吉元榮光君 昨日の本会議でも話がありました通り、大体七円の開きがあったら酒造業者も黒糖を取るだろうという御意見でございましたが、酒造業者がどの位の差額があれば黒糖を使うという、その目標はなるほどこれでも分ると思いますが、然しながら私が申上げたいのは、この黒糖の製造原価を、販売価格に至るまででなく、農家の庭先で果してどれ位売ればいいかということを検討して見ますというと、何としても十五円十九銭という今まで各方面で調査した額によって見るというと、そういう風な場合、これは普通の場合の様相ですが、去年のように十月、十一月に暴風があった場合には、蔗千斤で一割七厘止りと見ての計算であるが、暴風で被害を受けた場合には一割までで止るので、大体二分か三分位低減するということが常である。そういう時になるというと、黒糖が非常に品質も低下する上に、なお製造原価も非常に高くなると云う風なことがはっきりいえるのであります。言換えますというと、何としても百斤の中からどうしても三、四斤内外の砂糖が減る、而も品質が低下しているといった風なことを考えますならば平年に於ける十五円十九銭をなお上廻らなければならないということになると四十パーセントの税金では七円しか差額が持って来られん、こういう風なことになるのであります。そうなるというと、七円の差があれば結構だという論調も平年作の砂糖の製造原価から見ると、成程そういう風にも考えられますが、一応暴風があった場合には、直ちに農家に影響を来すといったことも一つ考慮に入れまして、なおもう一つはこれはずっと前から精製糖、それから分蜜糖、黒糖、米との相場の傾向を過去二ヶ年余調べたものによりますと、これは伊仲晧先生の著書によって大阪市場で調べたものによりますと、分蜜等と黒糖との開きがその時でさえも--明治から大正にかけて--百斤当り五円から八円位違います。そうしますというと矢張り元の、台湾と十分取引が出来た時でもそういった開きがあったから、今日に於てはより以上に開きがないと、農民の暴風に対する思いやりということもありますし、単に酒造業者のどっちを使うという見当からして四十パーセントを妥当とするという論はどうかという見解を持つものであります。で私は何としてもそういう風な場合に於てもなお黒糖生産を保護し得るというような一つ広い見解を持ちまして、四十五パーセントを主張するものであります。各参議も農村の立場をお考えの上、御検討願いまして是非御賛成あらんことを希望申上げます。もう一つは、この四十五パーセントは高率でもないのでありますが、この税率を課するということは戦争で琉球の砂糖製造機械が全部破壊されまして今起上がろうとしている際に於て、生産コストが高いということは皆さんも御承知でありますし、今からだんだん復活して行こうという場合に於て外糖の圧迫がひどい場合には黒糖の生産意欲を甚しく阻害するものでありまして、これは一般農民大衆の気持からすれば非常に大きな影響を及ぼすものでありますからして、私も税率を六十パーセントを主張したいのでありますが、一般消費大衆の気持を考えまして、もう五パーセントだけは税率を引上げあらんことを切に皆さんの賛意をお願いする次第であります。
○冨名腰尚武君 只今の吉元参議のお話に関連しまして、昨日いささか説明が不十分であった点を補足致したいと思います。只今のお話によりますと、酒造業者が買うか買わないかという点だけを考慮するというだけでは工合が悪いというお話でありますが、酒造業者が買うか買わないかという点に我々としては率の算定基準を置いた、と言いますのは率を上げた場合に外糖が高くなることによって、自ずと又黒糖の値段も吊上る、そしてその開きというものを無視した場合に酒造業者が黒糖を買わなくなれば勢い生産者は輸出業者に売渡すしかない、そうすと島内でこれを買うものがなければ、もう輸出業者の意のままに生産業者は買い叩かれてしまう。輸出業者が生産業者からもう思いの値段で引取るという点を阻止するためには島内での需要というものを保持しなければならない。島内の需要を保持させる面の一番大きな需要面は結局酒造業者というものが、黒糖を常に買うといった、輸出業者と競争の立場に立つことによって初めて農家の利益が保障されるじゃないかという観点に立って酒造業者が黒糖を買い得る点まで持って行けばいいという風な考の下に例の値開きの差が七円という線が保持出来るような率に持って行った訳であります。それから暴風の場合の歩留の減少などから見て正常コストで十五円十九銭をもう少し上廻って見なければならないという御説には一応御尤であると思いますが、昨日の御説明でも申上げましたように、この税法のみを以て黒糖保護という大きな政策の目的を果すということはどう考えても無理がある。これは黒糖生産保護の一翼を担うという面の考慮は払われるにしても、これを以て全面的にカバーするということは、これは他の面との睨み合から見ても、そう単純に期せられるものではない。昨日も申上げたように、輸入制限量が大きく影響する面もありますので、そういう面は輸入公表などの場合の行政措置によって考慮するということは、これは黒糖保護政策の一つでありますし、或は南部製糖若くは今後出来るべき機械化による大規模な黒糖生産事業に対する資金面からの保護或は日本政府との貿易交渉による面から期待される保護とか、政府としては琉球経済の大宗である黒糖生産に対して幾多保護の手は講じなければならないと思うのであります。そういうものと絡み合せて、本法も昨日から繰返して申上げておりますように一般民衆の生活必需物資でありながら、なお、且つ四十パーセントの高率課税も止むを得ないという見地に立ちました所以のものは百パーセント、これによって黒糖保護の効果は期待し得ないにしても、幾分なりともその面も見ようという観点に立ったればこそ四十パーセントという必需物資に対する課税としては極めて高率な課税も敢て押しつけた次第でありまして、御説のように暴風面への歩留減も考慮して、今五パーセント上げるということになると、双目の場合は兔も角として精製白糖といった住民の食糧としての精製白糖の場合は極めてこれが高価なものになってしまう。日本の糖価と比較した場合に少くとも五割高、六割高といったようなところに行ってしまう虞がある。そういう面も考慮しまして、委員会としては各種の面から総合して四十パーセントというところに落着いた次第であります。これは昨日の説明の足りない面を補足する意味で繰返して申上げた次第であります。
○城間盛善君 只今の御説明に関連して質問したいと思います。只今の御説明で輸入砂糖に対する高率の税を課すことによって、それが島内産の砂糖の価格を吊上げる虞がある、そうなった場合には黒糖自体の輸出との関連がある、こういう風な御説明と承っておりますが、これをお考になった場合に島内生産品の砂糖が日本に於ける砂糖の価格、日本には各方面から砂糖が来る筈ですから、そういった各方面から来る砂糖と琉球産黒糖との競争になる場合が多いだろうと思いますが、そういった場合に日本市場に於ける、そういった砂糖の価格の関連というものを御調査になっておったらお示しを願いたいと思います。つまり、琉球内に産する砂糖の価格はどの程度の価格であれば日本市場に於て十分競争が出来るということについて御調査になったか、数字の資料があればお示しを願いたいと思います。
それからもう一つは、琉球内での砂糖の価格の問題ですが、移入糖の消費税が高ければ自然闇との問題が起って来ることは当然考えられますが、その場合に闇で移入された砂糖--これは他の方面で取締ることは当然なさなければならない問題であるが--若しその面の関連もあるとすればそこをどういう風にお考になっておられるか、私の考える所では闇で来るものを税率で抑えるということは元来、原則的には好ましからざるものがあるのであるが、そういった場合、この闇値との関連もあったということを前にお伺いしたような記憶もありますので、闇を抑えるという面でも一役を果し得るかという二つの点について御説明を願いたいと思います。
○冨名腰尚武君 沖縄糖の外国相場でありますが、これは現在の実績から見ると、安値十一セント、高値十四セントで現在のところは十二セントで取引が行われている訳であります。委員会の見当は確かな資料は持合せていなかったのでありますが、十二セントを当分維持するであろう、然し何分世界市場によって糖価は決定されるのでありますし、この輸出価格の操作という面に於ても生産者側の琉球は当然受身の形に立たざるを得ない、外国市場の決定する価格によってしか取引は実行されないという風に見ているものであります。で今までの税率を算定する場合のレーダーとしては、委員会としてはポンド当り十二セントを採った訳であります。
それから闇値との関連でありますが、これも闇価格の調査のレーダーの如何によって多少そこに違いが生じて来るのでありますが、軍の方でも菓子業者の仕入値、これは大体卸値と見ていいのでありますが、菓子業者の仕入値の実績を参考にして一番安い時が二十四円五十九銭という形になっております。でこれよりも安く入れなければいけない。外国糖の値段がこれより安値に落着くようにしなければ闇防止の目的は達し得ないという訳で軍の方ではハワイ糖が斤当り十七円五十銭と見て三十五パーセント課税で二十三円六十三銭、台湾糖が十六円三十五銭と見て二十二円七銭、ジャバ糖が十五円六十銭と見て二十一円六銭、双目の場合は台湾糖が十五円三十銭で二十円六十六銭、香港糖が十四円三十銭、これが十九円三十銭--三十五パーセント課税の場合です--こう見て三十五パーセントで抑えて行けば闇は防遏出来るという風な見解を取っているようであります。我々としては最低の八月の二十四円五十九銭という値段は砂糖が極めて豊富に廻った時の相場でありまして、それよりも少し高目に見て四十パーセント位までは持って行っても闇値防遏の目的は達し得るという風に考えた訳であります。なお、御参考までに軍の方で見ております資料としては、庭先価格一斤十四円、FASの那覇渡しが十六円八十銭、市場価格十八円乃至二十一円という風に見ている訳であります。こういうことからして、三十五パーセントという課税は必ずしも黒糖圧迫にならないという数字も根拠にしている訳です。軍の意見は(以下余白)
○吉元榮光君 今の御説明で琉球の糖業保護は行政上の政策その他によってなされると云われるけれども、輸入税法に於ては輸入の規制ということは何ら謳われておりませんし、それによって行けば砂糖はいくらでも入れられるものとして、この法律を考えなければいかん関係もありますので、甚だ根拠が薄いように考えられますが、然しながら農家が砂糖を生産する場合には我々の立場としてはどうしても生産原価を割らせたくないと云うのが建前でありまして、価格操作は何としてもある天災地変の場合の考慮も入れて価格操作をするというのが建前でありまして、ひとり暴風による被害を農民にのみ転嫁させるということは甚だ同情すべき点がありまして、その面も価格操作面でそれだけの考慮を願いたいというのが、私の主張であります。 それからもう一つ詳しくお話申上げますというと、大正元年の年平均での大阪相場であります。これも勿論世界の砂糖市場の掣肘を受けた相場でありますが、黒糖が十一円三十一銭八厘に対して分蜜(双目)は二十円三十五銭六厘となっており、二年の相場平均で行きますと、双目の十九円五十五銭五厘に対して、黒糖は十一円七十九銭、三年に於て平均が双目が十九円六銭六厘に対して黒糖が九円九十銭、四年の平均が双目二十円九十一銭四厘、黒糖が十円二十銭七厘、五年の平均が分蜜二十二円二銭二厘、黒糖が十円六十八銭二厘、六年が双目二十三円九銭六厘、黒糖十一円、その時に於てもこういう差額が大体十円から八円程度の差額を持っているのでありますからして、常に世界相場に支配された市場に於てさえも、これ位の開きがありますから、沖縄に於てもう少し双目を高率にしない限り、黒糖を圧迫すると云うことは過去の統計によって既に証明されているような訳でありまして、その点からしましても、どうしても五パーセントだけでも是非消費者大衆のことも考え、農民だけの事でなしに、もう五パーセントを上げて四十五パーセントにすることは妥当と信ずるものであります。その点一つ御検討を願いたいと思います。
○松田賀哲君 吉元参議の言われました、不作の場合のことを考慮して、こういう税率を決めなければいけないと言われますが、不作の時のことを考慮すれば、一方豊作の時も考慮しなければならんだろうと思うのです。従って、こういう税率を決める時に於ては平年作を以てやるべきだろうと思うのであります。不作の場合に於ては今日まで既に他の手段によって援助は与えられている次第であります。で一旦決めたらなかなか動かし難い、税率は矢張り平年作を基準とすべきものだと思います。それから戦後各種の生産施設というものは破壊されて、今製糖についても非常に困難な事情にある。従って生産コストが高い。この事情を考慮して貰いたいと云うお話でありますが、我々の今日立脚しているところの生産コスト十五円いくらと云うのは現在を基礎にしております。つまり困難なる事情に於けるコストを採っているのでありますから、この点御了解をお願いしたいと思うのであります。
それから、この保護課税というものはよく分りますけれども、兔に角保護課税或は育成課税というものは、初めはこれが一本立になったら、この税はなくしてもいいと云うので出発するのでありますが、世界の育成課税の跡を見て見まするというとこの育成課税をなかなか外せん、その時になるというと、直ちに運動が始まって、この税を撤廃するということが出来なかったのであります。従って初め育成課税で出発したものが、逆に独占課税ということに大体落着いているのが、大袈裟に云えば世界の歴史の実情であります。一旦高率の税をかけてしまうというと、なかなか下げられんのでありまして、この点留意すべきだと思うのであります。それからもう一つは、前々から云われております一般消費者の生活必需品という点から申しますが、この砂糖の税を高率に決めてしまうというと、それに附随するところの各種の食料品にも影響を及ぼして来るのであります。それは単に甘味を持っている食料品のみならず、食料品と云うのは皆連絡があるものでありますから、例え辛味を持っている食料品の税に対しても又影響を及ぼして来るものであります。大体現在の沖縄に於ては人民の食料品と云うものは、日本に比べて非常に高いのであります。言葉はちょっと語弊があるかも知れませんが、沖縄に於ては食料品に関する限りインフレと申しても過言ではないと思うのであります。更に具体的に今の砂糖の例を以て申しますというと、現在の日本の白糖の消費者価格をB円に換算して持って来ると云うと約二十二円になります。ところが今の四十%の税を課した場合には、沖縄に於て三十五円と云う、十三円の開きが出来て自ら食料品を更に上げるというような状態になって来るのであります。今日食糧が高いと云うことは軍作業その他の方面に大きな影響を及ぼしているのでありまして、食糧を安くするということが先ず現在の沖縄の第一の急務ではなかろうかと思うのであります。その点に於て私としては寧ろ四十パーセントも高過ぎると思います。だがいろいろの事情を考慮してこの四十パーセントでよかろうとこう考えるのであります。
○吉元榮光君 今の松田参議の御意向として製造原価は豊作の時もあるし、又不作の時もあると申されておりますが、勿論平年作を取るのが順当だと思いますが、沖縄は御承知の通り、年々暴風のために相当の被害を蒙っているという風な現状でこの製造原価の十五円十九銭というのも決してこれは只これだけならば栽培に打込んだ費用、製造に打込んだ費用が、只これだけになるという計算でありまして、凡そ農業経営をやって行く場合には来年の生産を、再生産に対して多少のゆとりを見て行くのでなければ農業経営は立ち行かんのであります。いやしくも生産原価を維持し得れば農家は立ち行くという考え方は妥当ではない、どうしても来年の再生産のためにそこに多少の余裕があって初めて農業経営が出来るのでありまして、その点農業に対するあんた方の考え方に多少誤解があるのじゃないかという気もするのであります。栽培費、製造費をぎりぎりで見積るということは農業生産者に只生きて行って、そして凶作の場合にはひもじい思いをしても構わんという風にも感じられるのであります。どうしても再生産費のゆとり位は見ていただいて価格操作をするのが妥当ではないかという、そういう意味に於て私はもう少し皆がここに同情の点を示して貰いたいと云うのが私の論調であります。前にも申上げた通り、戦前で世界市場の相当の圧迫を受けている大阪市場に於ても戦前既に百斤当り八円から十一円までを往来していると云う統計もありますし、その程度に来るものとして分蜜糖を、それだけの価格差を持たしめてもいいのじゃないか、そうすることによって農業の経営の再生産をゆとりを持たして農業生産を振興する、今先軍作業のお話もなされておりましたが、寧ろ沖縄の経済が成立つということは、全ての若い人が農村を捨てて軍作業に走るということは、つまり農業では食って行けないから軍作業に行くのであって、今の農村の若い者は決して安定した生活ではないということを御考慮に入れまして、是非一つこの税率を農家が安定した生活を営めるところの状況にまで持って行きたいと云うのが我々の念願でありますから、その点を一つ御考慮に入れていただきたいと思います。食糧が高いと云うのはいろいろの事情もありませうけれども、又農家の稼ぐ賃銀と軍作業の賃銀は大体併行すべきだと思うのでありますが、今は農家の農業労働賃金と軍作業賃銀との間にも大きな差があるということを考慮されまして、そういう点も御配慮に入れていただいてもう少し価格操作の点を御考慮になって貰いたいとこうお願いする次第であります。
○松田賀哲君 今吉元参議がちょっと私のお話をお聴き違いになっているだろうと思いますが、今のコストの問題でありますが、それは現在のコストを基礎にした税率がよかろうと申上げたのでありまして、現在のコストさえ農民は取ればいいとは思っていないのであります。コストの基礎は、現在の困難なる事情下に於けるコストを基礎にした方がよかろうと申上げたのであります。もう一つ今の軍作業の問題でありますが、それは軍作業は賃銀だけで食っている、これは単に軍作業だけの問題でもありませんが、軍作業の人数が多いから、そう申しているのですが、一般俸給取でありましても、同じことでありまして、要するに賃銀取りの方に於ては生活費が高いから困っている、だからそういうもののためにも食料品を安くしなければならないということを申したのでありまして、今の農村に軍作業は帰るべきであるという問題とは関係はないのであります。
○吉元榮光君 食糧を下げるべきであるということは、賃銀との均衡から見てもそうも理論が立ちますけれども、実情として農業生産に依存するよりは、軍作業に行った方が遙かに利潤があるということは、現在の農村の若い者が殆ど軍作業に行っていると云う情勢を見ても、如何に農業労働によるところの農業賃銀が薄いかと云うことが想像出来ると思います。そういうところを強調しているのでありまして、食糧の点は労働賃銀やその他の物価とも睨み合せまして、そして食糧の価格の均衡を安定すると云うことは、これは社会政策上最も大切だと思っているのであります。現在の農村と軍作業、或は都市に於ける色々の儲けとの比較をした場合の沖縄のこの社会情勢を強く強調したいのであります。
○松田賀哲君 今の軍作業の賃銀が高い、農村の農民の収入は少い、それを同じになるようにしなければならんと云う御趣旨のようでありますが、大変結構なことであります。然しそうするには今の税率でもって、やるというようなことは絶対に出来ないことじゃないかと思います。それをやるためには輸出の価格を上げる以外にはなかろうと思うのであります。これは私が申すまでもなく、黒糖の価格は輸出価格によって左右されるものでありまして、簡単に云えばこれは日本に対する政治の手の打ち方になっているだろうと思います。だからそう云う方面は、そう云う方面への運動なり、政策なりを以て律せらるべきもんだと考えます。
○吉元榮光君 先も御説明がありました通り、沖縄に於ける酒造原料は主なる砂糖消費者である、酒造原料として六百万斤の消費がある、これを十分に消費せしめてこそ対外的にも輸出が出来るのじゃないかという風なこと、それは何としても製造原価だけは割らんように操作をしていただかんことには農民の生産意欲を減退させることは皆さんも御承知の通りでありまして、その点も大きなことであるし、又松田参議の輸出によって生産意欲を高めて行くということは私も承知しているけれども、先ず税を生産者に、他から来るものとの値開きが、あらゆるところから眺めてこそ成されなければならないと思いますので、又戦前自由に入れられ、且つ沖縄からも輸出された砂糖が百斤当りで十一円から八円程度開いておったのでありますから、戦前に於ける砂糖の値開きは当然その位あったと見てもいいと思いますので、今私が言うのは先ず七円の開きがあればいいだろう、双目は入れんであろうという風なことから、お聴きしている大きな論拠でもあるので、私も従来の相場もお知らせするのでありますが、どうしても八円乃至八円五十銭位の開きは算定しても決して消費者を不利な状況に陥れるものではない、又生産も、価格がやや安定せしめ得ると思いますが、十セントもどうかすると、九セントになるとますます製造減退と云うことになる虞もありますので、十セント或は十一セントになる場合もあろうけれども、色々農家が砂糖を輸出する場合に限って安値に落込んでしまってから、本当に農家の懐に入って来るのは高値を以てのみ算定すると云うことは不当のようにも考えますので、これは一つの相場から見てのことでありますので、大抵農民としては製造したら、直ちに市場に持出す余裕がないために、又農業組合等の発展がないと農業金融が成されていないために、どうしても砂糖を保存して相当の値段の時に市場に持出すという余裕がないのであります。そう云ったことも考えて、只相場に現れた採算のみが農民の懐に行くものだと云うことは必ずしも妥当ではない、これは盛に砂糖が製造されて売出さなければならない時期になると必ず安値になって来る。統計の示すところから見ると十セントと云うことは、かなり危険でありまして、端境期には黒糖も十一セントになるかも知れないけれども、これは商売人の懐に帰するのであって決して農民の懐には入らないと云うことを、その点からも御配慮願いたいと思います。
○大濱國浩君 吉元参議のおっしゃる生産原価にゆとりを持たせるというのは、来年度の農民の生産の準備に要することを意味しておられるのですか、大体生産原価に幾ら程認めたら、と云うことが結論になるのじゃないかと思いますがね。
○吉元榮光君 再生産費が高ければ高い程生産意欲が高まるのは当然である。それがどの程度が妥当であるかという点から、私も五十パーセントは主張したくない、四十五パーセント位なら妥協するのじゃないかという風に考えているのです。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
(午前十一時四十九分休憩)
(午前十一時五十九分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。
○與儀達敏君 委員長が既に縷々報告されておりますので、付加える必要はないと思いますが、この消費税法案の目的は三つあると思います。一般消費を容易ならしめること、それから島内生産の保護であります。一面又闇防止というのがそれに織込まれなければならないと思いますが、その三つの観点から申しますと、一般消費は安く入れればいいが、そうすれば島内生産を圧迫する、圧迫しないためにはどうするかと云うことが問題になって来ますので、今糖価の方面から見て行きますというと、現在十四セントから十二セントで輸出されております。仮に--糖商関係の見通しでありますが--十二セントで輸出される場合は一斤当り十九円二十銭以上であります。これに砂糖容器の代それから集荷費を含めまして宮古から持って来て売る場合にも十六円乃至十八円で、従って本島に於きまして庭先渡しは十五円を上廻ると思います。これが十一セントに下れば収入は減る訳でありますが、大体十二セントを建値にして考慮した方が妥当ではないかと思います。従って那覇市場価格を十七円と見て、それを圧迫しないためには双目糖をどうすればいいかと云うことになります。何故双目糖を問題にしなければならないかと云うと、酒造原料の黒糖と競争するからであります。酒造原料としての黒糖は八百万斤を消費しております。この八百万斤の半分の四百万斤を双目によって圧迫されると云うことは非常に糖業の助成に危険であります。それによって糖価は左右されるのでありますが、従って酒屋が双目を買わないようにするためにはどうすればよいか、そこには七円と云う開きがあります。七円と云うのは酒造業者から調べた数字でありますが、大体七円から十円であります。七円をここに基準を置く訳であります。そうすれば二十四円以上で双目が入れば黒糖は圧迫されないであろう云うことになる。ところが糖業の保護でありますので、なるべく四十五パーセント、五十パーセントをやりたいのでありますが、双目を高くしておけば絶対に酒屋には入らないと云うことが考えられますので出来れば高率を以て行きたいと思いますが、然し又糖業を伸長させるために一番憂慮されるのは、闇ルートであります。正式に双目が入れられるということになると、それに乗じて闇が堂々と入って来る。これが入って来たのでは、糖業は成立たない、高率にしたいけれども闇で入らないようにする、これが絶対である、闇の余地がないようにするためには、余り高率でもいけないと云うことになるのであります。それでその双目の価格はどの程度がいいかということになりますが、委員長は十セントと言う説明でありましたが、委員会ではそれよりも低く、九セントで双目を入れると云うことを考えておりましたが、九セントで入れた場合に、四十パーセントで二十三円七十六銭、四十五パーセントで二十四円四十八銭で、その通り入って来れば問題はない。即ち去年の闇の価格が大体低い方で、二十四、五円、これは二千トンの双目が入ったために三十何円から、どっと下っておりますが、大体二十七、八円であれば、--三十円以下では闇は持ってこない--うまく行って二十七、八円では入らないと云う、ところが問題は経費の欠減一割で済むかどうか、商売人は二割と主張しておりますが、そうするとこれは四十五パーセントとすると二十四円四十八銭が更に二十七、八円になる虞があります。私も四十五パーセントを主張し続けたのでありますが、この闇と云うことが商売人のうまい運びによっては二十七、八円で持って来れないとも限りませんので、そうなりますと琉球黒糖は全滅でありますので、四十パーセントにして闇が入る余地のないようにしよう、そうした方が糖業が保護されると云う考を持つものであります。それで四十五パーセントにした場合は欠減料二割、水揚料、その他をもっと見て行くというと闇と太刀打出来そうな値になります。それで四十パーセント、勿論三十五パーセントは絶対にいけません。それで四十パーセントに落着いた訳で、委員会に於てもその点は二日間に亘って論議の結果四十パーセントに落着いたのであります。吉元参議の御意見も糖業保護の面で非常に考慮しなければならない御意見であることは重々分っておりますが、然し台湾が近いところにあると云うことを考えますというと、四十パーセントが糖業保護のためにも、十分その目的を果せるのじゃないか、これ以上になると闇が入って来て黒糖を圧迫しはせんかと云うことになります。委員会に於きましては余程論議致しまして、五十パーセントから四十五パーセント、更に四十パーセントと落着いた訳であります。私は糖業生産地の出身でありますけれども、闇を抑えるために四十パーセントが妥当であると考えるのであります。これは三読会で最後に申上げたいと思いますが、問題は何時入れるかの輸入方法で、これは最初に輸入公表による、政策的に糖業を保護して貰いたい。これを消費税法案には希望を申上げたいと思います。
○吉元榮光君 今與儀参議が言われたことはなるほどという風にも考えますが、今申上げた所の水揚料の一円五十銭が果して妥当であるかどうか、そうすると一袋にすると百五十円欠減が一割と見て二円十銭になる。そうすると包装されているものから一袋当り十斤も減ると云うことは有り得ないといいます。
○議長(泉 有平君) 休憩します。
(午後零時九分休憩)
(午後零時二十四分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。第三条の税率に対する討議は依然続行する形にしておきまして、後の条についての逐条審議を進めたいと思います。
○松田賀哲君 今の欠減その他の諸掛についてでありますが、この草案は財政当局から出ているものでありまして、既に財政当局の承認も得ている訳でありますが、然し未だ腑に落ちんようなところがありますので、財政当局を呼んで改めて向うの意見を聴いたらどうかと思います。
○議長(泉 有平君) 今松田参議の話もありましたが、今日直ちにこの討議を終了すると云うようなことにつきましては、なお税率に疑義の点もありますので、この方は保留しておきます。時間が来ましたので一応休憩致します。
(午後零時二十五分休憩)
(午後零時五十分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
今の砂糖消費税法の逐条審議の続きは今晩の六時から致します。
(午後零時五十一分休憩)
出席者
議 長 泉 有平君
参 議 松田 賀哲君
〃 與儀 達敏君
〃 城間 盛善君
〃 冨名腰尚武君
〃 吉元 榮光君
〃 大濱 國浩君
〃 嘉陽 安春君
〃 田畑 守雄君
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